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明細書 :遺伝子改変非ヒト動物及びその作製方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-178632 (P2020-178632A)
公開日 令和2年11月5日(2020.11.5)
発明の名称または考案の名称 遺伝子改変非ヒト動物及びその作製方法
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
A01K  67/027       (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
FI C12N 15/09 100
A01K 67/027 ZNA
C12N 5/10
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 25
出願番号 特願2019-084543 (P2019-084543)
出願日 平成31年4月25日(2019.4.25)
発明者または考案者 【氏名】松川 則之
【氏名】小鹿 幸生
出願人 【識別番号】506218664
【氏名又は名称】公立大学法人名古屋市立大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100106909、【弁理士】、【氏名又は名称】棚井 澄雄
【識別番号】100188558、【弁理士】、【氏名又は名称】飯田 雅人
【識別番号】100161207、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 和純
【識別番号】100152272、【弁理士】、【氏名又は名称】川越 雄一郎
審査請求 未請求
テーマコード 4B065
Fターム 4B065AA91X
4B065AA91Y
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA46
要約 【課題】海馬由来コリン作動性神経刺激ペプチド前駆体タンパク質の機能の少なくとも一部が時期特異的又は組織特異的に喪失される遺伝子改変非ヒト動物の提供。
【解決手段】遺伝子改変非ヒト動物は、少なくとも一方のアレルに海馬由来コリン作動性神経刺激ペプチド前駆体タンパク質をコードする遺伝子のコーディング領域の少なくとも一部が第1のリコンビナーゼ認識配列及び第2のリコンビナーゼ認識配列で挟まれており、且つ、時期特異的又は組織特異的に発現を誘導するプロモーター制御下にあるリコンビナーゼをコードする遺伝子を染色体上に有する細胞を含む。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
少なくとも一方のアレルに海馬由来コリン作動性神経刺激ペプチド前駆体タンパク質をコードする遺伝子のコーディング領域の少なくとも一部が第1のリコンビナーゼ認識配列及び第2のリコンビナーゼ認識配列で挟まれており、且つ、
時期特異的又は組織特異的に発現を誘導するプロモーター制御下にあるリコンビナーゼをコードする遺伝子を染色体上に有する細胞を含む、遺伝子改変非ヒト動物。
【請求項2】
前記リコンビナーゼがCreリコンビナーゼであり、前記リコンビナーゼ認識配列がloxP配列である、請求項1に記載の遺伝子改変非ヒト動物。
【請求項3】
前記挟まれた領域が、前記海馬由来コリン作動性神経刺激ペプチド前駆体タンパク質のうち少なくともN末端から93番目から134番目までのアミノ酸残基をコードする塩基配列を含む、請求項1又は2に記載の遺伝子改変非ヒト動物。
【請求項4】
前記挟まれた領域が、前記海馬由来コリン作動性神経刺激ペプチド前駆体タンパク質のうち少なくともN末端から2番目から12番目までのアミノ酸残基をコードする塩基配列を含む、請求項1又は2に記載の遺伝子改変非ヒト動物。
【請求項5】
前記細胞が海馬を構成する神経細胞である、請求項4に記載の遺伝子改変非ヒト動物。
【請求項6】
同種の野生型非ヒト動物と比較して、以下に示すi)~iv)のうち少なくともいずれかの性質を示す、請求項5に記載の遺伝子改変非ヒト動物。
i)コリン作動性シナプスの萎縮;
ii)海馬におけるコリンアセチルトランスフェラーゼの発現の低下;
iii)海馬におけるアセチルコリンの分泌量の低下;
iv)海馬におけるシータ波のパワースペクトル密度の低下
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の遺伝子改変非ヒト動物の作製方法であって、
海馬由来コリン作動性神経刺激ペプチド前駆体タンパク質をコードする遺伝子のコーディング領域の少なくとも一部が第1のリコンビナーゼ認識配列及び第2のリコンビナーゼ認識配列で挟まれた配列を有する発現ベクターを胚性幹細胞に導入し、前記配列からなる核酸と、少なくとも一方のアレルの内因性の海馬由来コリン作動性神経刺激ペプチド前駆体タンパク質をコードする遺伝子の少なくとも一部と、を相同組換えする工程と、
前記相同組換え後の胚性幹細胞を用いて、前記配列からなる核酸を有する第1の遺伝子改変非ヒト動物を得る工程と、
前記第1の遺伝子改変非ヒト動物と、時期特異的又は組織特異的に発現を誘導するプロモーター制御下にあるリコンビナーゼをコードする遺伝子を染色体上に有し、前記第1の遺伝子改変非ヒト動物と同種の第2の遺伝子改変非ヒト動物と、を交配させて、時期特異的又は組織特異的に前記海馬由来コリン作動性神経刺激ペプチド前駆体タンパク質の機能の少なくとも一部が喪失される遺伝子改変非ヒト動物を得る工程と、
を備える作製方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子改変非ヒト動物及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病の中心症状は記憶障害であり、その責任病巣は、側頭葉内側面海馬へのグルタミン酸作動性神経及び前脳基底野-海馬コリン作動性神経と考えられている。神経病理学的特徴は、老人斑、神経原線維変化、顆粒空胞変性、平野小体及び神経細胞死である。家族性アルツハイマー病及びダウン病の研究結果から、老人斑の主要構成成分であるアミロイドベータ(Aβ)タンパクが主病因であるとするアミロイドカスケード仮説(オリゴマー仮説)を基に、世界的に研究が行われているが、未だ不明な点が多く、根本的な治療法の開発には至っていない。
【0003】
一方、コリン仮説を基に創薬されたコリンエステラーゼ阻害剤は、根本的治療法でないとされるが、臨床的にも認知機能を改善することが確認され、現在世界的に治療薬として使用されている。このことからも、認知機能には、中隔核から海馬に投射するコリン作動性神経が重要であることは明らかである。そのため、アルツハイマー病を始めとする認知症のメカニズムの解明及び新規治療薬の開発において、コリン作動性神経の活動は注目すべきものである。しかしながら、アセチルコリンの産生調節及びコリン作動性神経保護のメカニズムは、未だ明らかにされていない。また、上記アミロイドカスケード仮説とコリン仮説との関連性についても不明である。
【0004】
発明者らはこれまでにtarget-derived trophic factor仮説を元に、内側中隔核組織培養系を用いて海馬可溶成分内に特異的に前脳基底野内側中隔核のアセチルコリン産生を促進する因子を明らかにしている。さらに、当該因子が、11アミノ酸残基からなる新規ペプチドであることを確認し、海馬由来コリン作動性神経刺激ペプチド(Hippocampal Cholinergic Neurostimulating Peptide:HCNP)と命名した(例えば、非特許文献1、2参照)。
【0005】
また、発明者らはこれまでに、HCNPには187アミノ酸残基からなる前駆体タンパク質(HCNP precursor protein:HCNPpp)が存在し、HCNPはHCNPppのN末端に存在することを確認している。さらに、HCNPはこのHCNPppから特異的酵素により切断されることも明らかにしている。HCNPppは、HCNPの前駆体タンパク質であるだけでなく、ATP binding protein、フォスファチジルエタノールアミン結合タンパク質(PEBP)、c-Raf Kinase Inhibitory Protein(RKIP)や内因性serine proteaseの阻害剤等、多機能タンパク質であることが報告されている(例えば、非特許文献2~5参照)。
【0006】
さらに、発明者らはこれまでに、生後2週より海馬組織特異的に強発現するカルシウム/カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼII(Ca2+/calmodulin-dependent protein kinase II:CaM Kinase II)プロモーターを用いたHCNPppのトランスジェニックマウス(以下、「HCNPpp Tgマウス」と略記する場合がある)を作製している(例えば、特許文献1参照)。このHCNPpp Tgマウスを用いた電気生理学的検討から、HCNPppの過剰発現が興奮性コリン作動性神経前シナプスの小胞を増加させ、後シナプスのムスカリン受容体を介して、グルタミン酸作動性神経活動である長期増強効果(Long-term potentiation:LTP)の神経活動を促進している可能性が示唆されている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2002-176881号公報
【0008】

【非特許文献1】Ojika K., et al., “Purification and structural analysis of hippocampal cholinergic neurostimulating peptide.”, Brain Res., Vol. 572, Issues 1-2, p164-71, 1992.
【非特許文献2】Ojika K., et al., “Hippocampal cholinergic neurostimulating peptides (HCNP).”, Prog Neurobiol., Vol. 60, Issue 1, p37-83, 2000.
【非特許文献3】Matsukawa N., et al., “Increased expression of hippocampal cholinergic neurostimulating peptide-related components and their messenger RNAs in the hippocampus of aged senescence-accelerated mice.”, Neuroscience, Vol. 88, Issue 1, p79-92, 1999.
【非特許文献4】Hengst U., et al., “The Phosphatidylethanolamine-binding Protein Is the Prototype of a Novel Family of Serine Protease Inhibitors.”, J Biol Chem., Vol. 276, No. 1, p535-540, 2001.
【非特許文献5】Yeung K., et al., “Suppression of Raf-1 kinase activity and MAP kinase signalling by RKIP.”, Nature, Vol. 401, No. 6749, p173-177, 1999.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
HCNPppは、細胞分裂及び発生に関連することが明らかになっており、HCNPppをコードする遺伝子に変異を有する又は当該遺伝子を欠損した非ヒト動物は胎生致死である可能性が高い。また、中隔核のコリン作動性神経のアセチルコリン産生を直接制御するメカニズムを示す遺伝子改変非ヒト動物はこれまでに存在しない。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、海馬由来コリン作動性神経刺激ペプチド前駆体タンパク質の機能の少なくとも一部が時期特異的又は組織特異的に喪失される遺伝子改変非ヒト動物及びその作製方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
(1) 少なくとも一方のアレルに海馬由来コリン作動性神経刺激ペプチド前駆体タンパク質をコードする遺伝子のコーディング領域の少なくとも一部が第1のリコンビナーゼ認識配列及び第2のリコンビナーゼ認識配列で挟まれており、且つ、
時期特異的又は組織特異的に発現を誘導するプロモーター制御下にあるリコンビナーゼをコードする遺伝子を染色体上に有する細胞を含む、遺伝子改変非ヒト動物。
(2) 前記リコンビナーゼがCreリコンビナーゼであり、前記リコンビナーゼ認識配列がloxP配列である、(1)に記載の遺伝子改変非ヒト動物。
(3) 前記挟まれた領域が、前記海馬由来コリン作動性神経刺激ペプチド前駆体タンパク質のうち少なくともN末端から93番目から134番目までのアミノ酸残基をコードする塩基配列を含む、(1)又は(2)に記載の遺伝子改変非ヒト動物。
(4) 前記挟まれた領域が、前記海馬由来コリン作動性神経刺激ペプチド前駆体タンパク質のうち少なくともN末端から2番目から12番目までのアミノ酸残基をコードする塩基配列を含む、(1)又は(2)に記載の遺伝子改変非ヒト動物。
(5) 前記細胞が海馬を構成する細胞である、(4)に記載の遺伝子改変非ヒト動物。
(6) 同種の野生型非ヒト動物と比較して、以下に示すi)~iv)のうち少なくともいずれかの性質を示す、(5)に記載の遺伝子改変非ヒト動物。
i)コリン作動性シナプスの萎縮;
ii)海馬におけるコリンアセチルトランスフェラーゼの発現の低下;
iii)海馬におけるアセチルコリンの分泌量の低下;
iv)海馬におけるシータ波のパワースペクトル密度の低下
(7) (1)~(6)のいずれか一つに記載の遺伝子改変非ヒト動物の作製方法であって、海馬由来コリン作動性神経刺激ペプチド前駆体タンパク質をコードする遺伝子のコーディング領域の少なくとも一部が第1のリコンビナーゼ認識配列及び第2のリコンビナーゼ認識配列で挟まれた配列Aを有する発現ベクターを胚性幹細胞に導入し、前記配列Aからなる核酸と、少なくとも一方のアレルの内因性の海馬由来コリン作動性神経刺激ペプチド前駆体タンパク質をコードする遺伝子の少なくとも一部と、を相同組換えする工程と、前記相同組換え後の胚性幹細胞を用いて、前記配列Aからなる核酸を有する第1の遺伝子改変非ヒト動物を得る工程と、前記第1の遺伝子改変非ヒト動物と、時期特異的又は組織特異的に発現を誘導するプロモーター制御下にあるリコンビナーゼをコードする遺伝子を染色体上に有し、前記第1の遺伝子改変非ヒト動物と同種の第2の遺伝子改変非ヒト動物と、を交配させて、時期特異的又は組織特異的に前記海馬由来コリン作動性神経刺激ペプチド前駆体タンパク質の機能の少なくとも一部が喪失される遺伝子改変非ヒト動物を得る工程と、を備える作製方法。
【発明の効果】
【0012】
上記態様の遺伝子改変非ヒト動物及びその作製方法によれば、海馬由来コリン作動性神経刺激ペプチド前駆体タンパク質の機能の少なくとも一部が時期特異的又は組織特異的に喪失される遺伝子改変非ヒト動物及びその作製方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1におけるHCNPppコンディショナルKOマウス用ターゲティングベクターの設計図である。
【図2】実施例1における抗HCNPpp抗体及び抗β-アクチン抗体を用いたウエスタンブロッティングの結果を示す図である。
【図3】実施例1における抗HCNPpp抗体を用いた免疫染色像である。
【図4】実施例2における抗ChAT抗体を用いた免疫染色像である。
【図5】図4の免疫染色像を用いてコリン作動性軸索の体積を定量したグラフである。
【図6】実施例3における抗ChAT抗体及び抗β-アクチン抗体を用いたウエスタンブロッティングの結果を示す図である。
【図7】図6に示すウエスタンブロッティングのバンドを用いてβ-アクチンの発現量に対するChATの発現量の比を算出したグラフである。
【図8】実施例4におけるHCNPpp-KOマウス及び野生型マウスのアセチルコリンの分泌量の経時的な変化を示すグラフである。
【図9】実施例5におけるHCNPpp-KOマウスの脳に埋め込まれたシリコンプローブの撮像である。
【図10】実施例5におけるHCNPpp-KOマウス及び野生型マウスの電気生理学的記録を示すグラフである。
【図11】図10に示す電気生理学的記録から分析されたHCNPpp-KOマウス及び野生型マウスのシータ波の範囲のパワースペクトル密度(PSD)を示すグラフである。
【図12】実施例6におけるHCNPpp-KOマウス及び野生型マウスのオープンフィールドテストの結果を示すグラフである。
【図13】実施例6におけるHCNPpp-KOマウス及び野生型マウスのY字型迷路テストの結果を示すグラフである。
【図14】実施例6におけるHCNPpp-KOマウス及び野生型マウスの新規物体認識テストの結果を示すグラフである。
【図15】実施例6におけるHCNPpp-KOマウス及び野生型マウスの尾懸垂テストの結果を示すグラフである。
【図16】実施例6におけるHCNPpp-KOマウス及び野生型マウスの強制水泳テストの結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態(以下、「本実施形態」という)に係る遺伝子改変非ヒト動物及びその作製方法について、詳細を説明する。

【0015】
<海馬由来コリン作動性神経刺激ペプチド前駆体タンパク質>
海馬由来コリン作動性神経刺激ペプチド前駆体タンパク質(Hippocampal Cholinergic Neurostimulating Peptide precursor protein:HCNPpp)は、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質である。また、マウスHCNPpp(PEBP)のアミノ酸配列は、例えば、Genbankのアクセッション番号NP_061346として開示されており、ヒトHCNPpp(PEBP)のアミノ酸配列は、例えば、Genbankのアクセッション番号NP_002558として開示されている。

【0016】
海馬由来コリン作動性神経刺激ペプチド(Hippocampal Cholinergic Neurostimulating Peptide:HCNP)は、HCNPppのアミノ酸配列のうちN末端から2番目から12番目までの領域に存在する11アミノ酸残基(配列番号2)であり、特異的酵素によりHCNPppから切断される。そのため、少なくとも上記HCNPが存在する領域に変異を有する又は上記領域が欠失している遺伝子改変非ヒト動物を作製することで、HCNP及びHCNPppのアセチルコリン産生調節及びコリン作動性神経保護のメカニズムへの関連性を解析するための有用なツールとなり得る。

【0017】
また、HCNPppはHCNPの前駆体タンパク質であるだけでなく、ATP binding protein、フォスファチジルエタノールアミン結合タンパク質(PEBP)、c-Raf Kinase Inhibitory Protein(RKIP)や内因性serine oriteaseの阻害剤等であることが報告されており、多機能タンパク質である。特に、HCNPppのアミノ酸配列のうちN末端から93番目から134番目までのアミノ酸残基は、c-Rafとの結合に関与する部位として知られている。Rafは、上流キナーゼRasの基質、及びMEKの直接的な活性化因子として働き、Rafの過剰活性化は増殖、分化、及びアポトーシスの調節不全につながり、発がん性Ras変異は種々のヒトがんにおいて同定されている。そのため、少なくとも上記c-Rafとの結合に関与する部位に変異を有する又は上記部位が欠失している遺伝子改変非ヒト動物を作製することで、発生に伴う疾患及びがんモデル動物として利用することができる。

【0018】
<遺伝子改変非ヒト動物>
本実施形態の遺伝子改変非ヒト動物は、少なくとも一方のアレルにHCNPppをコードする遺伝子(以下、「HCNPpp遺伝子」と略記する場合がある)のコーディング領域の少なくとも一部が第1のリコンビナーゼ認識配列及び第2のリコンビナーゼ認識配列で挟まれており、且つ、時期特異的又は組織特異的に発現を誘導するプロモーター制御下にあるリコンビナーゼをコードする遺伝子(以下、「リコンビナーゼ遺伝子」と略記する場合がある)を染色体上に有する細胞を含む。なお、以降において、第1のリコンビナーゼ認識配列及び第2のリコンビナーゼ認識配列に挟まれたHCNPpp遺伝子の少なくとも一部の領域を「配列A」と称する場合がある。

【0019】
上述したように、HCNPppは細胞分裂及び発生に関連することが明らかになっており、HCNPpp遺伝子に変異を有する又は当該遺伝子を欠損した遺伝子改変非ヒト動物は胎生致死である可能性が高い。そのため、本実施形態の遺伝子改変非ヒト動物では、後述する実施例に示すように、リコンビナーゼ/リコンビナーゼ認識配列システムを利用して、時期特異的又は組織特異的にHCNPppの機能の少なくとも一部を喪失させることで、致死性を回避することができる。

【0020】
また、本実施形態の遺伝子改変非ヒト動物では、組織特異的にHCNPppの機能の少なくとも一部を喪失させることで、各種モデル非ヒト動物として利用することができる。具体的には、例えば、海馬組織特異的にHCNPppの機能の少なくとも一部を喪失させることで、コリン作動性神経解析モデル非ヒト動物として利用することができる。また、例えば、消化器系や呼吸器系等の特定の臓器特異的にHCNPppの機能の少なくとも一部を喪失させることで、特定の臓器におけるがんモデル非ヒト動物として利用することができる。

【0021】
また、本実施形態の遺伝子改変非ヒト動物では、時期特異的、具体的には、発生初期の各時期にHCNPppの機能の少なくとも一部を喪失させることで、発生に伴う疾患モデル非ヒト動物として利用することができる。

【0022】
上記細胞の種類としては特に限定されず、非ヒト動物を構成する細胞のうち、神経細胞であってもよく、所望の疾患を発症する組織や臓器を構成し細胞分裂能を有する細胞であってもよい。例えば、本実施形態の遺伝子改変非ヒト動物をコリン作動性神経解析モデル動物として利用する場合には、海馬を構成する神経細胞等が挙げられる。海馬を構成する神経細胞としては、例えば、錐体細胞や介在細胞(インターニューロン)がある。介在細胞としては、籠細胞、軸索軸索間細胞、重層状細胞等が挙げられ、中でも、錐体細胞であることが好ましい。

【0023】
本実施形態の遺伝子改変非ヒト動物は、上記細胞を1以上含むことができ、上記細胞のみから構成されていてもよい。後述する作製方法に示すように、胚性幹細胞を使用することで遺伝子改変非ヒト動物を容易に作製できることから、本実施形態の遺伝子改変非ヒト動物は、上記細胞のみから構成されることが好ましい。本実施形態の遺伝子改変非ヒト動物は、上記細胞のみから構成される場合であっても、リコンビナーゼが発現しない限り、染色体上においてHCNPpp遺伝子を欠損させる組換えは起きない。よって、例えば、リコンビナーゼ遺伝子を時期特異的又は組織特異的に発現を誘導するプロモーター制御下におくことで、所望の時期又は組織において、組換えを起こすことができる。

【0024】
また、本実施形態の遺伝子改変非ヒト動物は、上記配列Aを少なくとも一方のアレルに有することができ、両方のアレルに有してもよいが、HCNPppの機能をより顕著に喪失させることから、両方のアレルに有することが好ましい。

【0025】
HCNPpp遺伝子において、第1のリコンビナーゼ認識配列及び第2のリコンビナーゼ認識配列が挿入される位置は、HCNPpp遺伝子のコーディング領域であってもよく、ノンコーディング領域であってもよい。挿入位置がHCNPpp遺伝子のコーディング領域であってもHCNPppが発現し、野生型のHCNPppと実質的に同等の機能を有するが、より野生型のHCNPppに近しい機能を有することから、HCNPpp遺伝子のノンコーディング領域が好ましい。

【0026】
また、配列Aは、HCNPpp遺伝子のコーディング領域の少なくとも一部が第1のリコンビナーゼ認識配列及び第2のリコンビナーゼ認識配列で挟まれた配列であり、HCNPpp遺伝子のコーディング領域の全てが第1のリコンビナーゼ認識配列及び第2のリコンビナーゼ認識配列で挟まれた配列であってもよい。或いは、HCNPpp遺伝子のコーディング領域は、第1エクソン、第2エクソン、第3エクソン及び第4エクソンの4つのエクソンからなることから、上記エクソンのうち少なくとも1つのエクソンが第1のリコンビナーゼ認識配列及び第2のリコンビナーゼ認識配列で挟まれた配列であってもよく、後述する実施例に示すように、第1エクソン、第2エクソン及び第3エクソンが第1のリコンビナーゼ認識配列及び第2のリコンビナーゼ認識配列で挟まれた配列であってもよい。

【0027】
また、上述のとおり、HCNPは、HCNPppのアミノ酸配列のうちN末端から2番目から12番目までの領域に存在する11アミノ酸残基であることから、配列Aは、少なくとも上記アミノ酸残基をコードする塩基配列を含んでもよい。配列Aが上記配列を含むことにより、リコンビナーゼ発現下で上記アミノ酸残基をコードする領域を欠失させることができる。

【0028】
また、上述のとおり、HCNPppのアミノ酸配列のうちN末端から93番目から134番目までのアミノ酸残基は、c-Rafとの結合に関与する部位として知られていることから、配列Aは、少なくとも上記アミノ酸残基をコードする塩基配列を含んでもよい。配列Aが上記配列を含むことにより、リコンビナーゼ発現下で上記アミノ酸残基をコードする領域を欠失させることができる。

【0029】
対象となる非ヒト動物としては、特に限定されず、サル、イヌ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター等が挙げられ、中でも、マウス、ラット、モルモット、ハムスター等の齧歯類が好ましい。

【0030】
<遺伝子非ヒト動物の作製方法>
本実施形態の遺伝子改変非ヒト動物は、例えば、以下の工程を含む方法により作製することができる。
HCNPpp遺伝子のコーディング領域の少なくとも一部が第1のリコンビナーゼ認識配列及び第2のリコンビナーゼ認識配列で挟まれた配列Aを有する発現ベクターを胚性幹細胞に導入し、前記配列Aからなる核酸と、少なくとも一方のアレルの内因性の海馬由来コリン作動性神経刺激ペプチド前駆体タンパク質をコードする遺伝子の少なくとも一部と、を相同組換えする工程;
前記相同組換え後の胚性幹細胞を用いて、前記配列Aからなる核酸を有する第1の遺伝子改変非ヒト動物を得る工程;
前記第1の遺伝子改変非ヒト動物と、時期特異的又は組織特異的に発現を誘導するプロモーター制御下にあるリコンビナーゼ遺伝子を染色体上に有する第2の遺伝子改変非ヒト動物と、を交配させて、時期特異的又は組織特異的にHCNPppの機能の少なくとも一部が喪失される遺伝子改変非ヒト動物を得る工程

【0031】
本実施形態の製造方法により、HCNPppの機能の少なくとも一部が時期特異的又は組織特異的に喪失される遺伝子改変非ヒト動物を作製することができる。

【0032】
[リコンビナーゼ認識配列]
本明細書において、「リコンビナーゼ認識配列」とは、特定のリコンビナーゼがリコンビナーゼ認識配列を認識し、その部分でDNAの組換えを起こす現象を利用した、いわゆるリコンビナーゼ/リコンビナーゼ認識配列システムにおけるリコンビナーゼ認識配列を意味する。

【0033】
[リコンビナーゼ/リコンビナーゼ認識システム]
リコンビナーゼ/リコンビナーゼ認識配列システムとしては、公知のシステムを適宜選択して使用することができ、例えば、バクテリオファージP1由来のCreリコンビナーゼと、Creリコンビナーゼが認識する34塩基対のloxP配列を利用したCre/loxPシステム、酵母由来のFLPリコンビナーゼと、FLPリコンビナーゼが認識するFRT配列を利用したFLP/FRTシステム、ジゴサッカロマイセス・ロキシー(Zygosaccharomyces rouxii)由来のRリコンビナーゼと、Rリコンビナーゼが認識するRS配列を利用したR/RSシステム等が挙げられる。したがって、本実施形態の製造方法で用いるリコンビナーゼ認識配列としては、loxP配列、FRT配列、RS配列等が挙げられる。

【0034】
loxP配列としては、5’-ATAACTTCGTATAGCATACATTATACGAAGTTAT-3’(配列番号3)で表される塩基配列の他、例えば、5’-ATAACTTCGTATAGTATACATTATACGAAGTTAT-3’(lox511、配列番号4)、5’-ATAACTTCGTATAGGATACTTTATACGAAGTTAT-3’(lox2272、配列番号5)、5’-ATAACTTCGTATATACCTTTCTATACGAAGTTAT-3’(loxFAS、配列番号6)等の変異loxP配列等を使用することができる。

【0035】
FRT配列としては、例えば、5’-GAAGTTCCTATTCTCTAGAAAGTATAGGAACTTC-3’(配列番号7)等の塩基配列を使用することができる。

【0036】
RS配列としては、例えば、5’-TTGATGAAAGAATAACGTATTCTTTCATCAA-3’(配列番号8)等の塩基配列を使用することができる。

【0037】
染色体上にリコンビナーゼ認識配列が存在しても、特定のリコンビナーゼが存在しない限り組換えは起きない。したがって、例えば、リコンビナーゼを時期特異的又は組織特異的に発現する非ヒト動物と、リコンビナーゼ認識配列が導入された同種の非ヒト動物とを交配させることにより、そのF1動物において、リコンビナーゼによる組換えを時期特異的又は組織特異的に生じさせることができる。

【0038】
[発現ベクター]
本実施形態の作製方法で用いる発現ベクターは、HCNPpp遺伝子のコーディング領域の少なくとも一部が第1のリコンビナーゼ認識配列及び第2のリコンビナーゼ認識配列で挟まれた配列Aを有し、染色体上の内因性のHCNPpp遺伝子と相同組換えを起こした後、染色体上に導入されたHCNPpp遺伝子を発現させるように構成されているものであれば特に限定されない。

【0039】
第1のリコンビナーゼ認識配列及び第2のリコンビナーゼ認識配列は、上述したリコンビナーゼ/リコンビナーゼ認識配列システムが作動した場合に、HCNPpp遺伝子の少なくとも一部が切り出されるように配置することが好ましい。従って、第1のリコンビナーゼ認識配列及び第2のリコンビナーゼ認識配列は、HCNPpp遺伝子の少なくとも一部を挟んで同方向に配置することが好ましい。これにより、リコンビナーゼを作用させた組織において、少なくとも一方のアレルに導入されたHCNPpp遺伝子の少なくとも一部を欠失させることができる。

【0040】
発現ベクターとしては特に制限されず、例えば、pBR322、pBR325、pUC12、pUC13等の大腸菌由来のプラスミド;pUB110、pTP5、pC194等の枯草菌由来のプラスミド;pSH19、pSH15等の酵母由来プラスミド;λファージ等のバクテリオファージ;アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス等のウイルス;及びこれらを改変したベクター等を用いることができる。

【0041】
上記の発現ベクターにおいて、対象遺伝子の発現用プロモーターとしては特に制限され
ず、例えば、EF1αプロモーター、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、HSV-tkプロモーター等を使用することができる。

【0042】
上記の発現ベクターは、更に、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、複製起点等を有していてもよい。

【0043】
上記発現ベクターを、例えば、一般に形質転換に用いられる方法を用いて、非ヒト動物由来の胚性幹細胞(ES細胞)に導入する。使用する胚性幹細胞としては、例えば、マウス由来である場合、TT2細胞、AB-1細胞、J1細胞、R1細胞、E14.1細胞、RW-4細胞等が挙げられる。発現ベクターの導入方法としては、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、DEAE-デキストラン方等の公知の方法を使用することができる。

【0044】
当該胚性幹細胞において、染色体上の内因性のHCNPpp遺伝子と上記HCNPpp遺伝子のコーディング領域の少なくとも一部が第1のリコンビナーゼ認識配列及び第2のリコンビナーゼ認識配列で挟まれた配列Aからなる核酸とが相同組換えされる。この胚性幹細胞をレシピエント非ヒト動物の卵管内に移植する。次いで、発生した個体から、体細胞及び生殖細胞中の少なくとも一方のアレルに配列Aからなる核酸が組み込まれた個体を選別することにより、目的とする第1の遺伝子改変非ヒト動物を得ることができる。

【0045】
また、生殖細胞中の少なくとも一方のアレルに配列Aからなる核酸が組み込まれた個体を、野生型の非ヒト動物と交配させることにより得られたF1動物から、ヘテロ接合体を得ることができる。更に、上記のヘテロ接合体同士を交配させ、得られたF1動物から、ホモ接合体を得ることができる。

【0046】
ヘテロ接合体又はホモ接合体の選択は、例えば、F1動物から採取した染色体DNAをサザンハイブリダイゼーション又はPCR法によりスクリーニングすることにより行うことができる。

【0047】
次いで、得られたヘテロ接合体又はホモ接合体(好ましくは、ホモ接合体)の第1の遺伝子改変非ヒト動物と、時期特異的又は組織特異的に発現を誘導するプロモーター制御下にあるリコンビナーゼ遺伝子を染色体上に有する第2の遺伝子改変非ヒト動物と、を交配させて、時期特異的又は組織特異的にHCNPppの機能の少なくとも一部が喪失される遺伝子改変非ヒト動物を得る。この場合、得られたF1動物において、時期特異的又は組織特異的に発現を誘導するプロモーターが働く部位においてのみ時期特異的又は組織特異的にHCNPpp遺伝子の少なくとも一部の欠失を誘導することができる。また、リコンビナーゼを発現するためのプロモーターを適切に選択することにより、所望の時期特異的又は組織特異的なHCNPpp遺伝子の少なくとも一部の欠失を誘導することができる。

【0048】
[リコンビナーゼ]
リコンビナーゼとしては、上述したリコンビナーゼ/リコンビナーゼ認識配列システムにおけるリコンビナーゼを用いることができ、第1の遺伝子改変非ヒト動物に導入されたリコンビナーゼ認識配列に対応するリコンビナーゼを用いる。

【0049】
リコンビナーゼとしては、バクテリオファージP1由来のCreリコンビナーゼ、酵母由来のFLPリコンビナーゼ、ジゴサッカロマイセス・ロキシー由来のRリコンビナーゼ等が挙げられる。

【0050】
Creリコンビナーゼとして、Creリコンビナーゼと変異エストロゲン受容体の融合タンパク質であるCre-ERタンパク質を用いてもよい。Cre-ERタンパク質は通常細胞質に存在するが、エストロゲン誘導体であるタモキシフェンと結合することにより核内に移行し、loxP配列に対して組換えを起こす。これを利用して、得られた遺伝子改変非ヒト動物にタモキシフェンを全身投与又は局所投与することにより、Creリコンビナーゼを作用させる時期又は組織を調節することも可能である。

【0051】
[プロモーター]
時期特異的な発現を可能にするプロモーターの具体例としては、例えば、Neuron specific enolase遺伝子(マウスの場合では、生後3日以降に神経細胞内で発現)、Pcp2遺伝子(マウスの場合では、生後6日以降に小脳プルキンエ細胞内で発現)のプロモーター等が挙げられる。また、組織特異的な発現を可能にするプロモーターの具体例としては、例えば、アルブミン遺伝子(肝細胞で特異的に発現)、インスリン遺伝子(膵β細胞で特異的に発現)、Nestin遺伝子(神経幹細胞及びグリア細胞に特異的に発現)のプロモーター等が挙げられる。時期特異的及び組織特異的な発現を可能にするプロモーターの具体例としては、例えば、カルシウムカルモジュリン依存性タンパク質キナーゼII(CaMKII)遺伝子(マウスの場合では、生後2週間以降に海馬組織の神経細胞に特異的に発現)のプロモーター等が挙げられる。

【0052】
例えば、コリン性神経解析モデル動物を作製する場合には、神経の分化後又は神経細胞の分裂停止後に、リコンビナーゼ遺伝子が発現し核内で作用するように構成することができる。具体的には、後述する実施例に示すように、CaMKII遺伝子のプロモーターの制御下であるCre-ERタンパク質をコードする遺伝子を有するマウスにおいて、生後3か月齢にタモキシフェンを投与することで、海馬の神経細胞内で発現したCre-ERタンパク質が細胞質から核内へ移行し、コリン性神経解析モデル動物を作製することができる。

【0053】
リコンビナーゼ自体は、特に個体に毒性を示さないため、第2の遺伝子改変非ヒト動物の作製方法は、例えば、トランスジェニック法、ノックイン法等を用いて作製することができる。トランスジェニック法では、時期特異的又は組織特異的に発現を誘導するプロモーター制御下にあるリコンビナーゼ遺伝子を外部から導入する方法である。ノックイン法では、時期特異的又は組織特異的に発現を誘導する内在性プロモーターの後ろに相同組換えでリコンビナーゼ遺伝子を導入する方法である。

【0054】
上記トランスジェニック法又はノックイン法等を用いて、時期特異的又は組織特異的に発現を誘導するプロモーター制御下にあるリコンビナーゼ遺伝子を胚性幹細胞に導入する。この胚性幹細胞をレシピエント非ヒト動物の卵管内に移植する。次いで、発生した個体から、体細胞及び生殖細胞中の少なくとも一方のアレルに時期特異的又は組織特異的に発現を誘導するプロモーター制御下にあるリコンビナーゼ遺伝子が組み込まれた個体を選別することにより、目的とする第2の遺伝子改変非ヒト動物を得ることができる。

【0055】
また、生殖細胞中の少なくとも一方のアレルに時期特異的又は組織特異的に発現を誘導するプロモーター制御下にあるリコンビナーゼ遺伝子が組み込まれた個体を、野生型の非ヒト動物と交配させることにより得られたF1動物から、ヘテロ接合体を得ることができる。更に、上記のヘテロ接合体同士を交配させ、得られたF1動物から、ホモ接合体を得ることができる。

【0056】
ヘテロ接合体又はホモ接合体の選択は、例えば、F1動物から採取した染色体DNAをサザンハイブリダイゼーション又はPCR法によりスクリーニングすることにより行うことができる。

【0057】
リコンビナーゼを時期特異的又は組織特異的に作用させる別の方法として、例えば、上述した第1の遺伝子改変非ヒト動物に、リコンビナーゼの発現ベクター又はリコンビナーゼタンパク質を直接投与することが挙げられる。投与は全身投与であってもよく、局所投与であってもよい。リコンビナーゼの発現ベクター又はリコンビナーゼタンパク質を投与する時期又は投与する組織を調節することにより、リコンビナーゼを作用させる時期又は組織を調節することができる。

【0058】
<使用用途>
本実施形態の遺伝子改変非ヒト動物は、HCNPpp及びHCNPの時期特異的又は組織特異的な機能を解析するために使用することができる。

【0059】
本実施形態の遺伝子改変非ヒト動物は、例えば、HCNPppが関与していると推定されている疾患、例えば、がん、発生において発症する疾患(例えば、前立腺がん、肝がん、膵がん、黒色腫等)、認知症(特に、アルツハイマー型認知症や血管性認知症)における時期特異的又は組織特異的な遺伝子機能の解析や、それら疾患の創薬基盤研究のために使用することができる。

【0060】
本実施形態の遺伝子改変非ヒト動物において、例えば、海馬特異的にHCNPppの少なくとも一部の機能が喪失されている場合には、後述する実施例に示すように、同種の野生型非ヒト動物と比較して、以下に示すi)~iv)のうち少なくともいずれかの性質を示すことが好ましい。
i)コリン作動性シナプスの萎縮;
ii)海馬におけるコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)の発現の低下;
iii)海馬におけるアセチルコリンの分泌量の低下;
iv)海馬におけるシータ波のパワースペクトル密度(PSD)の低下

【0061】
なお、ここでいう「コリン作動性シナプスの萎縮」とは、上記遺伝子改変非ヒト動物において、同種の野生型非ヒト動物と比較して、ChATを発現しているコリン作動性シナプスの体積が低下していることを意味する。具体的には、同種の野生型非ヒト動物のChATを発現しているコリン作動性シナプスの体積に対する遺伝子改変非ヒト動物の当該体積の比率が、100%未満であり、90%以下が好ましく、80%以下がより好ましく、70%以下がさらに好ましい。ChATを発現しているコリン作動性シナプスの体積は、例えば、後述する実施例に示す方法を用いて、測定することができる。

【0062】
海馬におけるChATの発現量の低下比率として、同種の野生型非ヒト動物の海馬におけるChATの発現量に対する遺伝子改変非ヒト動物の当該発現量の比率が、100%未満であり、90%以下が好ましく、80%以下がより好ましく、70%以下がさらに好ましい。海馬におけるChATの発現量は、例えば、後述する実施例に示すように、海馬組織の細胞破砕液の上清を作製した後、当該上清について抗ChAT抗体を用いたウエスタンブロッティングを行なうことで定量することができる。

【0063】
本実施形態の遺伝子改変非ヒト動物において、海馬におけるアセチルコリンの分泌量は、後述する実施例に示すように、測定開始から経時的に減少し、測定開始位から5時間後には10pmol/L以下程度まで減少する。また、海馬におけるアセチルコリンの分泌量の減少比率として、同種の野生型非ヒト動物の海馬におけるアセチルコリンの分泌量に対する遺伝子改変非ヒト動物の当該分泌量の比率が、100%未満であり、95%以下が好ましく、90%以下がより好ましく、80%以下がさらに好ましい。海馬におけるアセチルコリンの分泌量は、例えば、後述する実施例に示すように、マイクロダイアライシス法及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を組み合わせることで定量することができる。

【0064】
海馬におけるシータ波のPSDの低下比率として、同種の野生型非ヒト動物の海馬におけるシータ波のPSDに対する遺伝子改変非ヒト動物の当該PSDの比率は、100%未満であり、80%以下が好ましく、70%以下がより好ましく、60%以下がさらに好ましい。海馬におけるシータ波のPSDについては、例えば、後述する実施例に示すように、非ヒト動物の脳にシリコンプローブを植込み、Omniplexシステムを用いた電気生理学的記録を行なうことで定量することができる。

【0065】
なお、上記遺伝子改変非ヒト動物において、後述する実施例に示すように、認知機能の低下が見られなかった。そのため、グルタミン酸作動性神経の機能低下を引き起こすことを目的として、上記遺伝子改変非ヒト動物に、さらに、アミロイドベータ凝集体を投与する、又は虚血条件下におくことで、認知症モデル非ヒト動物として応用することもできる。認知症モデル非ヒト動物の作製方法として具体的には、例えば、上記遺伝子改変非ヒト動物の海馬スライスを用いて、還流液中に人工的に作成したアミロイドベータ凝集体を添加して電気生理学的及び薬理学的実験を行なう方法や、上記遺伝子改変非ヒト動物とアミロイド遺伝子改変非ヒト動物(例えば、家族性遺伝子異常ノックイン非ヒト動物等)とを交配させて認知症モデル非ヒト動物等を作製する方法が挙げられる。或いは、上記遺伝子改変非ヒト動物について、頸動脈のコイルによる狭窄モデルを作製することで虚血条件下におく方法等が挙げられる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0067】
[材料及び方法]
(動物)
動物実験は、名古屋市立大学大学院医学研究科獣医使用委員会によって承認され(許可番号09-151)、日本政府によって公表された実験動物の使用に関するガイドライン(法律第105号、1973年10月)に準拠して行なった。
HCNPpp-KOマウスは後述する実施例に記載の方法により作製した。ウエスタンブロッティング試験には10匹の雄マウス[72~74週齢、野生型マウス(n=5)、ホモ接合性のHCNPpp-KOマウス(n=5)]を使用した。局所フィールド電位(LFP)試験には22匹の雄マウス[73~90週齢、野生型マウス(n=10)、ホモ接合性のHCNPpp-KOマウス(n=12)]を使用した。行動試験には30匹の雄マウス[56週齢、野生型マウス(n=15)、ホモ接合性のHCNPpp-KOマウス(n=15)]を使用した。
以降に示す各試験で用いられたマウスは、12時間の明/暗サイクル(08:00~20:00に点灯)下で、特定の病原体のない状態で飼育し、食物と水を自由に摂取させた。
【実施例】
【0068】
(免疫組織化学分析)
18~22ヶ月齢のマウス脳(野生型:n=3、HCNPpp-KOマウス:n=3)を4%パラホルムアルデヒド含有リン酸緩衝液(以下、「PB」と略記する場合がある;pH7.4)中で固定化した後、30%スクロース含有PB溶液中で平衡化し、クライオスタット(Leica Microsystems製、Bensheim、Germany)を用いて20μmに切断した。
【実施例】
【0069】
次いで、切片を1%ウシ血清アルブミン(BSA)/PBS-Tween 20(PBST)で1/500倍に希釈したウサギポリクローナル抗マウス/ラットHCNP(HCNPpp)抗体と共に4℃で一晩インキュベートした。次いで、切片に結合した1次抗体をAlexa Fluor 488結合ロバ抗ウサギIgG二次抗体(Thermo Fisher Scientific製、日本)を用いて検出した。蛍光シグナルは、Axiovision蛍光顕微鏡(Zeiss製、Oberkochen、Germany)又はA1Rsiレーザー共焦点顕微鏡(Nikon製、東京、日本)を用いて検出した。
【実施例】
【0070】
なお、後述する実施例において、シータ波の測定に用いられたシリコンプローブは、2%のDiI(親油性蛍光染料、D-282;Thermo Fisher Scientific製、Waltham、USA)でコーティングした。脳切片を上記と同様の方法を用いて作製し、マウントする前に、1分間DAPI(0.25μg/mL、Sigma製、MO、USA)で染色した。
【実施例】
【0071】
(ウエスタンブロッティング)
深部ペントバルビタール麻酔下で、各マウスをPBSで経心臓的に灌流した。各マウスから脳を取り出して氷上に配置した後、両側海馬を解剖し、直ちに液体窒素中で凍結させ、使用するまで-80℃で保管した。
【実施例】
【0072】
5匹のホモ接合性のHCNPpp-KOマウス及び5匹の野生型同腹仔それぞれからの凍結海馬を30 mM Tris-HCl(pH8.5)、7Mの尿素、2Mのチオ尿素、4w/v%の3-[(3-Cholamidopropyl)dimethylammonio]propanesulfonate (両性界面活性剤;CHAPS)、及び プロテアーゼ阻害剤カクテル (Roche Applied Science製、Indianapolis、USA)を含む4倍容量の溶解緩衝液中でホモジナイズした。細胞破砕液を氷上で60分間インキュベートした後、4℃で15,000×gで3分間遠心し、上清を得た。得られた上清のタンパク質含有量をBradfordアッセイ(Pierce製、Rockford、USA)で測定した後、上清を使用するまで-80℃で保存した。
【実施例】
【0073】
各上清(10μg)を10%SDS-PAGEゲルの各レーンにロードし、電気泳動を行なった。その後、転写緩衝液として25mMのTris、192mMのグリシン、0.1%のSDS及び10%のメタノールを用いて、サンプルをHybond-P膜(GE Healthcare製、東京、日本)に移した。次いで膜を上記「免疫組織化学分析」に記載のウサギポリクローナル抗マウス/ラットHCNP(HCNPpp)抗体(1/50,000倍希釈)又はマウスモノクローナル抗β-アクチン抗体(Sigma製、MO、USA)(1/50,000倍希釈)と共にインキュベートした。次に、膜をHRP結合抗ウサギIgG抗体又はHRP結合抗マウスIgG抗体でプローブした。免疫反応性のバンドを、ECLアドバンスウエスタンブロッティング検出キット(GE Healthcare製、東京、日本)を用いて視覚化し、ImageQuant LAS4000(GE Healthcare製、東京、日本)を用いて記録した。ウエスタンブロッティングによる検出結果を、Amersham Imager 600 Analysis Software(GE Healthcare製、東京、日本)を用いて定量した。
【実施例】
【0074】
(形態学的分析)
通常の組織学的検査のために、海馬及び中隔領域から厚さ4μmであり、ホルマリン固定し、パラフィン包埋した切片をヘマトキシリン-エオシン(HE)で、又はKluver-Barrera法若しくはMethenamin-Bodian法で染色した。海馬の前方から後方にかけて複数の組織片を右脳から採取した。
【実施例】
【0075】
(海馬コリン作動性軸索の定量化)
ブレグマ(矢状縫合と冠状縫合との交点)を基準として約-2.3mmに位置する冠状脳の厚さ20μmの切片におけるコリン作動性軸索の体積を、同一切片におけるCA1領域及び二次視覚皮質に焦点を合わせて計算した。コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)の免疫蛍光染色の前に、製造元の指示に従って各切片をTrueBlack Lipofuscin Autofluorescence Quencher(Biotium Inc.、CA、USA)で処理した。具体的には、TrueBlackを70%エタノールを用いて1倍に希釈し、切片を1%BSA/PBS中で20分間、次にTrueBlack中で1分間インキュベートし、次いでPBSですすいだ。ChATの免疫蛍光染色のために、1次抗体としてヤギ抗ChAT(ポリクローナル)抗体(1/100倍希釈;Merck-Millipore製、MA、USA)を含有する1%BSA/PBS中で切片を一晩インキュベートした。次に、切片をPBSですすぎ、二次抗体としてAlexa Fluor 584結合ロバ抗ヤギIgG抗体(1/500倍希釈;Thermo Fisher Scientific製、MA、USA)と共に暗所で1時間インキュベートした。次いで、PBSですすいだ後、切片をSuperfrost APS被覆ガラス顕微鏡スライド(Matsunami Glass Industry製、大阪、日本)にマウントし、暗所で室温で乾燥させ、カバーガラスをかけた。上記免疫染色の各工程において、PBSによる洗浄工程は5分間の洗浄を3回繰り返し、洗浄工程及びインキュベーション工程は全て回転振盪機上で室温で実施した。
【実施例】
【0076】
コリン作動性神経線維の全ての蛍光画像化は、60×1.4 NAプランアポクロマート油浸レンズ及び4×デジタルズームを備えたA1Rsiレーザー共焦点顕微鏡(Nikon製、東京、日本)を用いて行った。同一切片のCA1領域の上昇層及び二次視覚野のII/III層内の各切片について、0.4μm間隔で8μm厚のZスタックを得た。画像をIMARIS 9.2.0(Bitplane製、Zurich、Switzerland)に移した。各領域におけるAlexa Fluor 584の蛍光により可視化されたコリン作動性軸索の体積の推定値を得るために、IMARIS 9.2.0を用いて、デコンボリューションされた共焦点Zスタックを三次元でレンダリングし、ChAT陽性の軸索によって占められる総体積を経験的に最適化されたバッチプロトコルを用いて計算し、次いで、手動で個別に最適化された開始点及びシードピクセル閾値を除く全ての画像に自動で当該バッチプロトコルを適用した。総体積(μm3)を画像毎/被験者毎に合計し、次いで、エクセルスプレッドシートにエクスポートした。
【実施例】
【0077】
(外科的処置)
全てのマウスをケタミン(74mg/kg)及びキシラジン(10mg/kg)の腹腔内注射によって麻酔を投与した。手術中、マウスを加温パッドの上に置き、次いで、目の軟膏(タリビッド眼軟膏0.3%、参天製薬株式会社製、大阪、日本)を用いて、角膜の乾燥を防いだ。頭蓋骨表面を露出させるための切開を行なう前に、局所麻酔薬(2%のリドカイン、キシロカインゼリー2%、アストラゼネカ株式会社製、大阪、日本)を頭蓋骨上の皮膚に塗った。皮膚を70%アルコールで消毒し、頭蓋骨を露出させて洗浄した。その後、ヘッドプレートを歯科用セメント(「フジリュートBC(商品名)」、GC製、東京、日本;徳山歯科、東京、日本)でしっかりと取り付けた。LFP記録の前日にマウスを回復させた。
【実施例】
【0078】
LFP試験において、脳浮腫を予防するために、手術の1時間前にデキサメタゾンリン酸ナトリウム(1.32mg/kg)を腹腔内投与した。1%イソフルラン麻酔下で、頭蓋骨を削り取り、直径約2mmの円形開頭術(ブレグマを基準として後方2mm、外側1.3mmを中心とする円)を左背側海馬上で行なった。
【実施例】
【0079】
(マイクロダイアライシス)
マイクロダイアライシス法及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を組み合わせて、海馬におけるアセチルコリンの放出量を定量した。
約1年齢の雌野生型マウス(n=18)及びホモ接合性のHCNPpp-KOマウス(n=17)を使用した。マイクロダイアライシスシステムとしては、Eicon社製のA-I型カニューレシステムを使用し、ガイドカニューレAG-4、透析プローブA-I-4-01を使用した。ガイドカニューレを植え込む前に、麻酔としてケタミン(74mg/kg)及びキシラジン(10mg/kg)を腹腔内注射によって投与した。マウス海馬へのガイドカニューレの植込み位置は、ブレグマを基準として前後(anterior-posterior:AP)軸で+3.1mm、内側外側(medial-lateral:ML)軸で+2.5mm、PaxinosとFranklinの脳アトラスを参考にして背腹(dorsal-ventral:DV)軸で0.8mm以上1.0mm以下の位置である。
【実施例】
【0080】
露出した脳表面の乾燥を防ぎ、記録中のノイズを減らすために、露出した脳の表面に人工髄液(ACSF)(組成:147mMのNa+、4mMのK+、2.3mMのCa2+、155mMのCl-、及び100nMのエゼリン(アセチルコリンエステラーゼ阻害剤))を加えた。1μL/minの灌流速度で透析プローブより灌流した。
【実施例】
【0081】
カニューレの植込み等の施術後、数週間以上の安静期間を置き、マイクロダイアライシスを施行した。施術日は、1時間前よりマウスを施行ゲージに移し、透析プローブをガイドカニューレから挿入した。次いで、ACSFの灌流を開始し、HPLC測定も開始した。2時間はマイクロダイアライシスを安定させるために、回収サンプルのピークの測定値を記録せず、2時間後から測定値を記録した。12時間以上ピークが安定して認められたもの(野生型マウス(n=6)及びホモ接合性のHCNPpp-KOマウス(n=6))について解析を行なった。なお、HPLC測定の条件は以下に示すとおりである。
【実施例】
【0082】
・分離条件
カラム:EICOMPAK AC-GEL、直径2.0mm×長さ150mm
移動相:1Lあたり、50mM KHCO3、300mgのデカンスルホン酸ソーダ及び50mgのEDTA2Na
流速:150μL/min
【実施例】
【0083】
・検出条件
作用電極:白金電極(WE-PT)
参照電極:Ag/AgCl(RE-500)
ガスケット:GS-50
印加電圧:+450mV vs Ag/AgCl
時定数:1.5秒
【実施例】
【0084】
(電気生理学的記録)
電気生理学的記録の前に、マウスに麻酔として1%イソフルランを投与した。露出した脳表面の乾燥を防ぎ、記録中のノイズを減らすために、露出した脳の表面にACSF(組成:125mMのNaCl、3.5mMのKCl、1.25mMのNaH2PO4、26mMのNaHCO3、2mMのCaCl2、2mMのMgCl2、及び15mMのD-グルコース)を加えた。次いで、177μm2の記録部位を有する16チャンネルシリコンプローブ(A1-16-25-177、NeuroNexus Technologies製、Ann Arbor、USA)を定位的に挿入し、マイクロコントローラを使用して標的位置まで段階的に挿入した。左側のCA1領域の錐体細胞層の神経活動は、軟膜から1100μm以上1500μmの深さで記録された。定位座標は、PaxinosとFranklinの脳アトラスを参考にして決定した。すべてのインビボでのLFP記録は、Omniplexシステム(Plexon製、Dallas、USA)を使用して、1kHzでデジタルダウンサンプリングし、0.05Hz以上200Hz以下のハンドパスでフィルタリングした。信号の前処理として、フーリエノッチフィルタ(帯域幅<1Hz)を介した信号の測定及び60Hzのラインノイズの除去を行なった。海馬の錐体細胞層への近接は、(1)プローブの付加さ、(2)活動電位の放電の存在、及び(3)記録部位の上下のシータ周波数におけるLFPの位相反転、によって判断した。【0085】
ピラミッド状層にあると推定される各LFPを3分間記録した。記録されたLFPデータをオフラインソーター(Plexon製、Dallas、USA)によって抽出し、各LFPデータセットのパワースペクトル密度(PSD)をNeuroExplorer(Plexon製)で分析した。同時に異なる電極で記録されたLFPの平均PSDを分析して、シータ波の範囲のPSD(シータパワー)を計算した。なお、シータ波の範囲は3Hz以上12Hz以下と定義された。
【実施例】
【0086】
(行動評価)
以下の行動評価において、群間の差異は、スチューデントのt検定を用いて統計的有意性について調べた。
【実施例】
【0087】
(1)オープンフィールドテスト
各マウスを、木材製のオープンフィールド装置(長さ30cm×幅30cm×高さ30cm)に入れ、15分間自由に装置を探索させた。新たな試験が始まる前に、オープンフィールド装置を70%エタノール溶液で洗浄し、ペーパータオルを使用して乾燥させた。移動した総距離を、コンピューターで操作されたEthoVision XTシステム(Noldus製、Wageningen、オランダ)を使用して記録した。中央区域(長さ15cm×幅15cm×高さ15cm)で過ごした時間及び中央区域の交差数もまた、不安様行動のマーカーとして記録された。
【実施例】
【0088】
(2)Y字型迷路テスト
公知の方法に従い、Y字型迷路テストを行ない、短期記憶を評価した。Y字型迷路は3本の灰色のプラスチック製のアーム(長さ40cm×幅10cm×高さ12cm)を用いて作製した。1時間の馴化後、各マウスをアームの先に置き、8分間迷路を自由に探検した。試験中、行動を記録した。入ったアームの数と順番はビデオファイルから数えた。順番に3本のアームのそれぞれに入ることは交替として定義した。交替率は次式により算出した。
【実施例】
【0089】
交替率(%)= [実際の交替回数/総アームエントリー数-2]×100
【実施例】
【0090】
(3)新規物体認識テスト
新規物体認識テストは、齧歯類が慣れ親しんでいるものとは異なる新規物体を探索するという先天的傾向に基づく試験である。マウスをオープンフィールド装置に入れ、試験前に15分間、物体なしの状態で装置に慣れさせた。各試験後に、装置を70%エタノールで洗浄し、ペーパータオルを使用して乾燥させた。臭いの影響を排除するために、装置をファンで2分間乾燥させた。物体認識は、各物体に費やされた時間量(マウスの鼻がその物体に向けられている時間、及びその前肢がその物体に触れている時間のうち少なくともいずれかの時間)として記録された。試験期間(T1:10分間)では、2つの同じ物体(左右のピラミッド)を壁から5cm離れた対象位置に配置した。保持期間(T2:10分間)では、2つの異なる物体(ピラミッド(右)及び新しい物体として三角柱(左))が提示された。T1及びT2の間に、各物体を探索するのに費やした時間を記録した。T1とT2との間に24時間の間隔を置いた後、全てのマウスを試験に供した。
【実施例】
【0091】
(4)尾懸垂テスト
公知の方法に従い、尾懸垂テストを行ない、うつ病様の行動を評価した。各マウスについて、床上50cmの地点で外科用テープを用いて尾を吊り下げて、行動を8分間記録した。不動時間は、コンピューターで操作されたEthoVision XTシステムを用いて自動的に測定した。上記システムで計測されたモビリティスコアが5%未満の場合、マウスは不動であると決定された。
【実施例】
【0092】
(5)強制水泳テスト
公知の方法に従い、強制水泳テストを行なった。各マウスを16cmの水(24±1℃)で満たしたプラスチック製のシリンダー(直径14cm)に8分間入れて、不動時間をコンピューターで操作されたEthoVision XTシステムを用いて自動的に測定した。上記システムで計測されたモビリティスコアが10%未満の場合、マウスは不動であると決定された。
【実施例】
【0093】
(データ分析)
平均±SEMとして表されるデータは、スチューデントのt検定又はウィルコクソンの順位和検定を用いて分析された。
【実施例】
【0094】
[実施例1]
(HCNPppコンディショナルノックアウトマウスの作製)
HCNPppは細胞分裂及び発生に関連することが明らかになっており、胎生致死を回避するために、CreERT/loxP組換えシステムを用いたコンディショナルノックアウト(KO)マウスを作製した。
まず、Bac cloneからPCR法により、Long arm部、LoxP エクソン部、及びshort arm部を作製し、pBSII SKに導入した後に、4つのエクソンからなるHCNPpp遺伝子に2つのloxP配列が挿入されたターゲティングベクターを構築した(図1参照:DTA-long-loxP-Exon-FRT-NeO-FRT-loxP-short)。第1のloxP配列を第1のエクソンの上流に導入し、第2のloxP配列及びネオマイシン耐性遺伝子(以下、「Neo遺伝子」と略記する場合がある)を第3のエクソンと第4のエクソンとの間にあるイントロンに導入した。Neo遺伝子は、2つのフリッパーゼリコンビナーゼ標的(FRT)配列に隣接していた(図1参照)。図1に示すように、当該ターゲティングベクターは、HCNPpp 遺伝子のExon1からExon3までを削る設計となっている。上流loxpは、転写開始点及びpromoter領域は傷つけないように、kozakコンセンサス配列を考慮しExon1の開始コドンから上流12bp の位置に挿入した。また、NeoカセットはFLP-FRT systemで飛ばし、目的のExon1からExon3まではCre-loxp systemで飛ばす設計となっている。野生型C57BL/6マウス(日本SLCから購入)に由来する胚性幹細胞を線状化したターゲティングベクターでトランスフェクションし、サザンブロッティング法により組換えを確認した。次いで、トランスジーンによる相同組換えが正しく行なわれた胚性幹細胞を胚盤胞に注入してキメラマウスを作製した。次いで、得られたキメラマウスと野生型C57BL/6マウス(日本SLCから購入)と交配させて、loxP-HCNPpp-loxP配列(以下、「floxed HCNPpp」又は「fHCNPpp」と称する場合がある)についてヘテロ接合性のマウスを公知の方法で作製した。ヘテロ接合性及びホモ接合性のfHCNPppマウスは、胚期及び周産期に生存可能であった。
【実施例】
【0095】
次いで、ホモ接合性のfHCNPppマウスを、ホモ接合性のカルシウム/カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼII(CaM Kinase II)プロモーター駆動Cre融合ERT(CreERT)遺伝子改変マウスと交配させて、ヘテロ接合性のHCNPpp-KOマウス(CreERT/+, fHCNPpp/+)及びホモ接合性のHCNPpp-KOマウス(CreERT/+, fHCNPpp+/+)を作製した。なお、ERTは改変されたエストロゲンレセプターであって、通常細胞質に存在し、正常のエストロゲンとは結合せず、タモキシフェンと結合することで細胞質から核内に移行するものである。また、対照として野生型(WT)マウスも準備した。
【実施例】
【0096】
5日間、3ヶ月齢のマウスの腹腔内に1mg/kgのタモキシフェンを毎日注射した後、ヘテロ接合性のHCNPpp-KOマウス、ホモ接合性HCNPpp-KOマウス及び野生型マウスを作製した。なお、3ヶ月齢のマウスでは神経回路がすでに形成されているため、タモキシフェンを投与しても致死性を回避することができた。
【実施例】
【0097】
HCNPpp-KOマウスの脳の海馬におけるHCNPppの減少を明らかにするために、上記記載の方法に従ったウエスタンブロッティング及び免疫組織化学分析により、タモキシフェン投与の15ヶ月後の18ヶ月齢のマウスにおけるHCNPppの発現量を調べた。結果を図2(ウエスタンブロッティング)及び図3(免疫組織化学分析)に示す。なお、図2において、「Cb」とは小脳、「Cx」とは皮質、「St」とは基底核、「Hp」とは海馬である。また、「W」は野生型マウスであり、「He」はヘテロ接合性のHCNPpp-KOマウスであり、「Ho」はホモ接合性HCNPpp-KOマウスである。
【実施例】
【0098】
図2から、ホモ接合性のHCNPpp-KOマウスの海馬において、野生型の同腹仔と比較して、HCNPppの発現量が有意に減少していた(P<0.01)。 これらのことから、ホモ接合性のHCNPpp-KOマウスの海馬において、HCNPppの発現が下方制御されていることが示唆された。
【実施例】
【0099】
次に、HCNPpp-KOマウスにおけるHCNPppの低下の脳構造への影響を確認した。脳切片のHE染色では、野生型マウスとホモ接合性のHCNPpp-KOマウスとの脳において形態学的な変化は認められなかった(図示せず)。その後、Kluver-Barrera法及びMethenamin-Bodian法で脳切片を染色し、光学顕微鏡で軸索及びミエリン鞘を観察したが、野生型マウス及びホモ接合性のHCNPpp-KOマウスの海馬及び内側中隔核において、軸索及びミエリン鞘に有意な差はなかった(図示せず)。
これらの結果から、ホモ接合性のHCNPpp-KOマウスの海馬及び内側中隔核の基本的な形態学的な構造は野生型マウスのものと変わらないことが示唆された。
【実施例】
【0100】
[実施例2]
(HCNPpp-KOマウスにおけるコリン作動性シナプスの萎縮)
アセチルコリンを含む神経伝達物質は、シナプス終末を維持することができる。海馬は中隔から海馬采/脳弓を介してコリン作動性の入力の大部分(最大90%)を受け取っており、このコリン作動性の入力は、上昇層を通って、海馬に入る。従って、上昇層へのコリン作動性ニューロンの投射が、HCNPpp-KOマウスにおいて減少するものと仮説を立てた。
【実施例】
【0101】
この仮説を検証するために、IMARIS 9.2.0ソフトウェア(Bitplane製、Zurich、Switzerland)を使用して、抗ChAT抗体を用いた免疫染色を行ない、CA1領域の上昇層中のコリン作動性軸索の体積を定量した。免疫染色像を図4に示す。図4において、スケールバーは、10μmである。コリン作動性軸索を定量したグラフを図5に示す。図4及び図5において、「SO」は上昇層、「Cx」は皮質である。
【実施例】
【0102】
図4及び図5から、CA1領域の上昇層中のChAT陽性の軸索の体積は、HCNPpp-KOマウスにおいて有意に減少した(野生型マウス:961.7±42.5μm3(n=36)、HCNPpp-KOマウス:637.2±25.0μm3(n=36)、P<0.0001、ウィルコクソンの順位和検定)。一方、二次視覚野(内部対照領域)中のChAT陽性の軸索の体積は、野生型マウスとHCNPpp-KOマウスとの間に有意差はなかった(野生型マウス:786.4±36.1μm(n=36)、HCNPpp-KOマウス:822.6±34.0μm3(n=36)、P=0.417、ウィルコクソンの順位和検定)。
【実施例】
【0103】
[実施例3]
(HCNPpp-KOマウスにおけるコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)の発現量の低下)
HCNPpp-KOマウス及び野生型マウスの海馬の細胞破砕液から得られたサンプルを用いて、上記記載の方法に従い、ウエスタンブロッティングを行なった。結果を図6に示す。また、図6に示すバンドからβ-アクチンの発現量に対するChATの発現量の比を算出し、グラフ化したものを図7に示す。
【実施例】
【0104】
図6及び図7から、HCNPpp-KOマウスにおいてChATの発現量は有意に低下した。
【実施例】
【0105】
[実施例4]
(HCNPpp-KOマウスにおけるアセチルコリンの分泌量の低下)
上記記載の方法(マイクロダイアライシス法)に従い、HCNPpp-KOマウス及び野生型マウスのアセチルコリンの分泌量の経時的な変化を測定した。結果を図8に示す。
【実施例】
【0106】
図8から、HCNPpp-KOマウスにおいてアセチルコリンの分泌量は有意に低下した。なお、HCNPpp-KOマウスにおいてアセチルコリンの分泌量が0とならなかったのは、HCNPのみがアセチルコリンの分泌の制御に関与しているわけではなく、神経成長因子(NGF)及び脳由来神経栄養因子(BDNF)等のその他因子が関与しているためであると推察された。
【実施例】
【0107】
[実施例5]
(HCNPpp-KOマウスにおけるシータパワーの低下)
ブローカ対角帯-中隔縦束(MSDB)の神経細胞は、MSDBでの伝達を介して海馬でのシータリズムを生成しており、それら神経細胞の発火もまたCA1領域の錐体細胞層におけるシータ振動を増強している。HCNPがアセチルコリンに関連する海馬の機能に寄与しているかどうかについて検討するために、麻酔下のHCNPpp-KOマウス及び野生型マウスのCA1領域の錐体細胞層におけるLFPを記録し、シータパワーを分析した。10匹の野生型マウスの同腹仔と、12匹のホモ接合性のHCNPpp-KOマウスを用いた。歯科用セメントを使用してヘッドプレートを頭蓋骨にしっかりと取り付け、そして翌日、吸入1%イソフルラン麻酔下で左海馬の上の開頭術を実施した。シリコンプローブを定位的に挿入し、CA1領域の錐体細胞層のLFPをマウスあたり4部位以上10部位以下程度記録した。局在を確認するために、シリコンプローブを2%のDiI溶液(Thermo Fisher Scientific製、Waltham、USA)で塗装した(図9参照;図9中、「Pyr」は錐体細胞層(stratum pyramidale)、「Rad」は放線状層(stratum radiatum)、「LM」は網状分子層(stratum lacunosum-moleculare)、「DG」は歯状回(dentate gyrus)である。)。上記記載の方法(電気生理学的記録)に従い、PSDはLFPデータから計算した。結果を図10(2Hz以上14Hz以下の範囲でのPSD)及び図11(シータ波の範囲でのPSD)に示す。
【実施例】
【0108】
図10及び図11から、ホモ接合性のHCNPpp-KOマウスでは、野生型マウスと比較して、シータ波(3Hz以上12Hz以下)の出力が有意に低かった(野生型マウス:4.11±0.39×10-4mV2/Hz(n=70回の試験)、HCNPpp-KOマウス:2.29±0.24×10-4mV2/Hz(n=72回の試験)、P<0.0001、ウィルコクソンの順位和検定)。【実施例】
【0109】
[実施例6]
(HCNPpp-KOマウスにおける行動評価)
自発的行動、記憶機能、不安及びうつを評価するために、上記記載の方法に従い、5つの行動評価、すなわち、オープンフィールドテスト、Y字型迷路テスト、新規物体認識テスト、尾懸垂テスト及び強制水泳テストをマウスに施した。それぞれのテストの結果を図12~16に示す。
【実施例】
【0110】
オープンフィールドテストでは、移動した総距離及び中央区域で過ごした時間を、それぞれ自発的行動及び不安様行動のパラメータとして記録した。図12から、野生型マウス及びHCNPpp-KOマウスにおいて、群間に有意差は見られなかった(総距離(図12の左側のグラフ):野生型マウス3,564.7±189.0cm、HCNPpp-KOマウス3,435.0±210.1cm、P=0.65、スチューデントのt検定、中央区域で過ごした時間(図12の右側のグラフ):野生型マウス132.8±20.1秒、HCNPpp-KOマウス149.8±16.9秒、P=0.52、スチューデントのt検定)。
【実施例】
【0111】
Y字型迷路テストでは、異なるアームへ進入する割合(交替率)が短期記憶の指標として使用される。
図13から、野生型マウス及びHCNPpp-KOマウスにおいて、総進入数(図13の右側のグラフ)はほぼ同等であった(野生型マウス27.4±2.4カウント、HCNPpp-KOマウス27.2±2.2カウント、P=0.95、スチューデントのt検定)。ホモ接合性のHCNPpp-KOマウスでは交替率(図13の左側のグラフ)が野生型マウスよりも低い傾向であったが、有意ではなかった(野生型マウス68.0±3.6秒、HCNPpp-KOマウス63.5±1.7秒、P=0.26、スチューデントのt検定)。
【実施例】
【0112】
新規物体認識テストでは、保持期間内に新規物体を探索するのに費やされた時間の割合が、物体認識記憶の指標として使用される。
図14から、ホモ接合性のHCNPpp-KOマウスでは、総探索時間(図14の右側のグラフ)が野生型マウスよりも短い蛍光があったが(野生型マウス18.8±3.5秒、HCNPpp-KOマウス13.2±3.3秒、P=0.26、スチューデントのt検定)、新規物体を探索する時間の割合(図14の左側のグラフ)は、両群でほぼ同等であった(野生型マウス66.0±2.9%、HCNPpp-KOマウス67.3±4.9%、P=0.82、スチューデントのt検定)。
【実施例】
【0113】
尾懸垂テストでは、不動時間がうつ病様の行動の指標として使用される。尾懸垂テスト中に2分間隔で不動時間を測定した。
図15の左側のグラフから、ホモ接合性のHCNPpp-KOマウスでは、0分から2分まで及び2分から4分までに、それぞれ不動時間の減少傾向又は有意な減少傾向が見られた(0分から2分まで:野生型マウス20.7±2.6秒、HCNPpp-KOマウス13.0±3.3秒、P=0.08、スチューデントのt検定、2分から4分まで:野生型マウス76.2±3.9秒、HCNPpp-KOマウス58.9±6.3秒、P=0.03、スチューデントのt検定)。しかしながら、総不動時間(図15の右側のグラフ、0分から8分までの期間中)では、有意差は認められなかった(P=0.12、スチューデントのt検定)。
【実施例】
【0114】
同様に、うつ病様の行動の指標として使用される強制水泳テストでは、図16の左側のグラフから、不動時間は、野生型マウス及びHCNPpp-KOマウスの間に有意差は見られず、総不動時間(図16の右側のグラフ、0分から8分までの期間中)についても、群間に有意差は見られなかった(野生型マウス247.5±17.0秒、HCNPpp-KOマウス222.6±21.8秒、P=0.38、スチューデントのt検定)。
【実施例】
【0115】
これらの結果から、野生型マウス及びホモ接合性のHCNPpp-KOマウスにおいて、認知行動、不安及び抑うつ行動に有意差はないことが示唆された。
【実施例】
【0116】
行動評価について、上記結果となった理由としては、ホモ接合性のHCNPpp-KOマウスでは、グルタミン酸作動性神経の機能低下にまで至っていないためであると推察された。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本実施形態の遺伝子改変非ヒト動物及びその作製方法によれば、海馬由来コリン作動性神経刺激ペプチド前駆体タンパク質の機能の少なくとも一部が時期特異的又は組織特異的に喪失される遺伝子改変非ヒト動物及びその作製方法を提供することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15