TOP > 国内特許検索 > 微小カプセル又はビーズの製造方法 > 明細書

明細書 :微小カプセル又はビーズの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和2年11月5日(2020.11.5)
発明の名称または考案の名称 微小カプセル又はビーズの製造方法
国際特許分類 B01J  13/14        (2006.01)
A61K   9/50        (2006.01)
A61K  47/32        (2006.01)
FI B01J 13/14
A61K 9/50
A61K 47/32
国際予備審査の請求
全頁数 23
出願番号 特願2019-538065 (P2019-538065)
国際出願番号 PCT/JP2018/029810
国際公開番号 WO2019/039292
国際出願日 平成30年8月8日(2018.8.8)
国際公開日 平成31年2月28日(2019.2.28)
優先権出願番号 2017161323
優先日 平成29年8月24日(2017.8.24)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】武井 孝行
【氏名】吉田 昌弘
【氏名】大角 義浩
【氏名】早瀬 元
出願人 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110002572、【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C076
4G005
Fターム 4C076AA61
4C076AA63
4C076EE03
4C076EE10
4C076FF70
4C076GG21
4C076GG26
4G005AA01
4G005AB09
4G005AB14
4G005BA01
4G005BB08
4G005BB11
4G005BB19
4G005DA02W
4G005DC10Y
4G005DC34Y
4G005DD04Z
4G005DD08Z
4G005DD12Z
4G005DD15Z
4G005DD47W
4G005EA02
4G005EA03
4G005EA06
4G005EA08
要約 本発明は、内包物質の内包効率、製造効率及び汎用性が高いカプセル又はビーズの製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、表面を複数の固体微粒子で被覆した、内包物質を含むモノマー液滴又はポリマー液滴を平面上に配置する工程と、平面上に配置した前記モノマー液滴又は前記ポリマー液滴を気相中で固化することによりカプセル又はビーズの外殻部を形成するとともに、前記外殻部によって囲まれる領域を形成する工程とを含み、前記領域には前記内包物質が内包されることを特徴とする、微小カプセル又はビーズの製造方法に関する。
特許請求の範囲 【請求項1】
表面を複数の固体微粒子で被覆した、内包物質を含むモノマー液滴又はポリマー液滴を平面上に配置する工程と、平面上に配置した前記モノマー液滴又は前記ポリマー液滴を気相中で固化することによりカプセル又はビーズの外殻部を形成するとともに、前記外殻部によって囲まれる領域を形成する工程とを含み、前記領域には前記内包物質が内包されることを特徴とする、微小カプセル又はビーズの製造方法。
【請求項2】
前記外殻部によって囲まれる前記領域は複数あり、それぞれの前記領域に前記内包物質が内包されることを特徴とする、請求項1に記載の微小カプセル又はビーズの製造方法。
【請求項3】
前記微小カプセル又は前記ビーズから固体微粒子を除去する工程をさらに含む、請求項1又は2に記載の微小カプセル又はビーズの製造方法。
【請求項4】
平面上に配置した前記モノマー液滴を気相中で固化する工程が、前記モノマー液滴を平面上で重合することを含み、平面上に配置した前記ポリマー液滴を気相中で固化する工程が、前記ポリマー液滴中の溶媒を除去することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の微小カプセル又はビーズの製造方法。
【請求項5】
前記モノマーが(メタ)アクリレート、スチレン系モノマー及びジビニルベンゼンから選ばれる少なくとも1種である、請求項4に記載の微小カプセル又はビーズの製造方法。
【請求項6】
ポリマーからなる外殻部と、前記外殻部によって囲まれた領域に内包される内包物質とからなる微小カプセル又はビーズ。
【請求項7】
前記外殻部によって囲まれる前記領域は複数あり、それぞれの前記領域に前記内包物質が内包されることを特徴とする、請求項6に記載の微小カプセル又はビーズ。
【請求項8】
前記外殻部の厚みが略均一であることを特徴とする、請求項6に記載の微小カプセル又はビーズ。
【請求項9】
前記ポリマーが、(メタ)アクリレート、スチレン系モノマー及びジビニルベンゼンから選ばれる少なくとも1種のモノマーから形成されたポリマーである、請求項6に記載の微小カプセル又はビーズ。
【請求項10】
前記外殻部の表面には微粒子が付着していないことを特徴とする、請求項6~9のいずれか1項に記載の微小カプセル又はビーズ。
【請求項11】
前記外殻部の表面には微粒子を除去した痕跡が残存していることを特徴とする、請求項6~9のいずれか1項に記載の微小カプセル又はビーズ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、内包物質を含む微小カプセル又はビーズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農業、工業、医療の各分野において、農薬、接着剤、インク、蓄熱材、医薬品等を内包した直径数mmから数μmの微小カプセル又はビーズが、ハンドリング性の向上、内包物質の外部環境からの保護及び内包物質の放出速度の制御を可能にするために用いられている。
【0003】
内包物質をカプセル等に内包する方法として、界面重合法、その場重合法、液中乾燥法等が知られている。界面重合法では、疎水性モノマーと親水性モノマーを用いて、それらを油水界面で重合反応をさせて粒子を形成させる。また、その場重合法では、内包物質及び壁材としてのモノマーを含む溶液を撹拌により別の液体中に分散させ、液滴状にした後に、モノマーを重合させて内包物質をカプセルに内包する(例えば、特許文献1、2)。また、液中乾燥法では、内包物質が分散又は溶解した溶液を、水又は油の媒体中に分散し、その後、加熱又は減圧によって、ポリマー等の壁材が溶解している溶媒を除去して壁材を形成する(例えば、特許文献3)。しかし、界面重合法では、モノマーの組み合わせが制限される。また、その場重合法や液中乾燥法では、撹拌による応力負荷や各物質同士の親和性により、カプセル壁材を含む液滴が固化してカプセル壁が形成する前に、内包物質が他方の液体中に漏洩してしまうため、内包物質の内包効率は、多くの場合、40%未満にとどまる。
【0004】
また、内包効率が高いカプセルの製造方法として、スプレードライ法が知られているが、この方法では、得られるカプセルは、直径が数十μm以下のものに限られ、さらに、揮発性物質の内包効率は低い。
【0005】
このような従来法に対し、特許文献4には、内包物質が分散又は溶解したモノマー液滴又はポリマー液滴を撥水撥油性又は撥水性の平板材料上に配置することを特徴とする微小カプセル又はビーズの製造方法が記載されており、気相中でカプセル又はビーズを製造することにより、内包効率が高く、汎用性が高いカプセル又はビーズの製造方法を提供している。
【0006】
しかし、特許文献4に記載される方法では、内包効率の著しい向上が見られるものの、平板材料上に配置された液滴が転がって互いに合一してしまうことがあるため、液滴を高密度で平板材料上に配置することが難しく、製造効率が低くなってしまうことがあり、また、液滴を配置する平板材料は、液滴が濡れ広がらないように撥液性を有していなければならないため、製造方法としての自由度が低いといった問題がある。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開昭54-49984号公報
【特許文献2】特開昭56-51238号公報
【特許文献3】特開2009-292941号公報
【特許文献4】特開2016-87479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、従来のその場重合法や液中乾燥法によるカプセル又はビーズの製造方法では、内包物質の内包効率が低いために、カプセル等の製造コストが高い。また、従来のスプレードライ法によるカプセルの製造方法では、製造可能なカプセルの大きさに制限があり、また、揮発性物質の内包効率が低い。また、撥液性を有する平板材料上でカプセル等を製造する特許文献4の方法では、内包効率の著しい向上が見られるものの、製造効率及び汎用性の面でさらなる改善が望まれている。それ故、本発明は、内包物質の内包効率、製造効率及び汎用性が高いカプセル又はビーズの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するための手段を種々検討した結果、カプセル又はビーズの製造において、表面を複数の固体微粒子で被覆した、内包物質を含むモノマー液滴又はポリマー液滴を用いることにより、内包物質の内包効率、製造効率及び汎用性を高くできることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)表面を複数の固体微粒子で被覆した、内包物質を含むモノマー液滴又はポリマー液滴を平面上に配置する工程と、平面上に配置した前記モノマー液滴又は前記ポリマー液滴を気相中で固化することによりカプセル又はビーズの外殻部を形成するとともに、前記外殻部によって囲まれる領域を形成する工程とを含み、前記領域には前記内包物質が内包されることを特徴とする、微小カプセル又はビーズの製造方法。
(2)前記外殻部によって囲まれる前記領域は複数あり、それぞれの前記領域に前記内包物質が内包されることを特徴とする、前記(1)に記載の微小カプセル又はビーズの製造方法。
(3)前記微小カプセル又は前記ビーズから固体微粒子を除去する工程をさらに含む、前記(1)又は(2)に記載の微小カプセル又はビーズの製造方法。
(4)平面上に配置した前記モノマー液滴を気相中で固化する工程が、前記モノマー液滴を平面上で重合することを含み、平面上に配置した前記ポリマー液滴を気相中で固化する工程が、前記ポリマー液滴中の溶媒を除去することを含む、前記(1)~(3)のいずれかに記載の微小カプセル又はビーズの製造方法。
(5)前記モノマーが(メタ)アクリレート、スチレン系モノマー及びジビニルベンゼンから選ばれる少なくとも1種である、前記(4)に記載の微小カプセル又はビーズの製造方法。
(6)ポリマーからなる外殻部と、前記外殻部によって囲まれた領域に内包される内包物質とからなる微小カプセル又はビーズ。
(7)前記外殻部によって囲まれる前記領域は複数あり、それぞれの前記領域に前記内包物質が内包されることを特徴とする、前記(6)に記載の微小カプセル又はビーズ。
(8)前記外殻部の厚みが略均一であることを特徴とする、前記(6)に記載の微小カプセル又はビーズ。
(9)前記ポリマーが、(メタ)アクリレート、スチレン系モノマー及びジビニルベンゼンから選ばれる少なくとも1種のモノマーから形成されたポリマーである、前記(6)に記載の微小カプセル又はビーズ。
(10)前記外殻部の表面には微粒子が付着していないことを特徴とする、前記(6)~(9)のいずれかに記載の微小カプセル又はビーズ。
(11)前記外殻部の表面には微粒子を除去した痕跡が残存していることを特徴とする、前記(6)~(9)のいずれかに記載の微小カプセル又はビーズ。
【0010】
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2017-161323号の開示内容を包含する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、内包物質の内包効率、製造効率及び汎用性が高いカプセル又はビーズの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の方法の一実施形態を示す工程図である。
【図2】図2は、純粋なテトラデカン及び実施例1で得られたビーズにおけるテトラデカンのDSC測定の結果を示す図である。
【図3】図3は、実施例2で得られたビーズの顕微鏡写真である。
【図4】図4は、実施例3で得られたカプセルの顕微鏡写真である。
【図5】図5Aは、実施例4で得たカプセルの1つを水平方向から撮影した顕微鏡写真であり、図5Bは、実施例4で得たカプセルの1つを垂直方向から撮影した顕微鏡写真である。
【図6】図6は、実施例4で得たカプセルの1つの断面の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。

【0014】
本発明は、微小カプセル又はビーズの製造方法に関する。本発明の微小カプセル又はビーズは、壁材のモノマー液滴又はポリマー液滴から形成されたポリマーからなる外殻部と、前記外殻部によって囲まれた領域に内包される内包物質とからなる。本発明において、カプセルとは、単一又は複数の孔が内部に存在するものをいう。本発明において、ビーズとは、内部に孔が存在せず、全てがマトリクスで埋め尽くされているものをいう。

【0015】
本発明の微小カプセル又はビーズの形状は特に限定されずに、例えば、球状、擬球状又は扁平状形状であるが、より高いカプセル又はビーズの強度の観点から、好ましくは球状である。本発明の微小カプセル又はビーズは、粒径が、例えば、数μm~数cm、好ましくは100μm~5mmである。本発明の微小カプセル又はビーズは、カプセル中で内包物質が1つの核をなす単核型、或いは、カプセル中で内包物質が複数の核をなす多核型のいずれであってもよい。多核型の場合、外殻部によって囲まれる領域が複数あり、それぞれの領域に内包物質が内包されている。本発明の方法は、特に、単核型(中空)のカプセルの製造において、従来の方法では極めて困難であった、全てのカプセルを単核にすることと、外殻部(以下、カプセル壁とも記載する)の厚みを略均一にすることを達成できる点で優れる。

【0016】
本発明の方法は、表面を複数の固体微粒子で被覆した、内包物質を含むモノマー液滴又はポリマー液滴を平面上に配置することを特徴とする。より具体的には、本発明の方法は、表面を複数の固体微粒子で被覆した、内包物質を含むモノマー液滴又はポリマー液滴を平面上に配置する工程(工程1)と、平面上に配置したモノマー液滴又はポリマー液滴を気相中で固化することによりカプセル又はビーズの外殻部を形成するとともに、前記外殻部によって囲まれる領域を形成して微小カプセル又はビーズを得る工程(工程2)とを含む。本発明の方法は、工程2の後に、微小カプセル又はビーズから固体微粒子を除去する工程(工程3)をさらに含んでいてもよい。

【0017】
本発明の方法では、液滴の成形及び固化によるカプセル又はビーズの形成を気相中(大気中)で行うため、内包物質の漏洩を防止することができ、内包物質を高い内包効率でカプセル又はビーズに内包することができる。さらに、本発明の方法では、モノマー液滴又はポリマー液滴の表面を複数の固体微粒子で被覆することにより、液滴が転がりにくく、また軽く接触した程度では互いに合一しないため、液滴を高密度で配置することができ、よって製造効率が高くなり、また、液滴が安定化され、非撥液性の平面上でも濡れ広がらないので、液滴を配置する平面の性質が限定されず、製造方法としての自由度が高い。

【0018】
本発明の方法では、平面上に配置する液滴のサイズを調整することで得られるカプセル又はビーズの粒径を調整することができる。例えば、2μL~10μLの液滴からは1.5mm~3mmの粒径のカプセル又はビーズが得られる。カプセル又はビーズの粒径は、実体顕微鏡又はレーザー回折散乱法によって測定することができる。

【0019】
図1に、本発明の方法の一実施形態を示す工程図を示す。なお、図1では、平面に対して垂直方向の微小カプセル又はビーズの断面図を示している。図1に示すように、本発明の製造方法では、工程1において、内包物質を含むモノマー液滴又はポリマー液滴1の表面を複数の固体微粒子2で被覆した、モノマー液滴又はポリマー液滴を平面上に配置する(図1の左図)。平面上に配置されるモノマー液滴又はポリマー液滴は、内包物質を含むモノマー液滴又はポリマー液滴1の表面を複数の固体微粒子2で被覆した、いわゆるリキッドマーブルの形態である。工程2では、平面上に配置したモノマー液滴又はポリマー液滴を気相中で固化することによりカプセル又はビーズの外殻部を形成するとともに、前記外殻部によって囲まれる領域を形成して、表面を複数の固体微粒子2で被覆した微小カプセル又はビーズ3を得る(図1の中央の図)。微小カプセル又はビーズ3において、内包物質は、モノマー液滴又はポリマー液滴から形成されたポリマーからなる外殻部によって囲まれる領域に内包されている。任意の工程3では、固体微粒子2で被覆した微小カプセル又はビーズ3から固体微粒子2を除去する(図1の右図)。以下で工程1~3の各工程について詳細に説明する。

【0020】
工程1では、表面を複数の固体微粒子で被覆した、内包物質を含むモノマー液滴又はポリマー液滴を調製し、該液滴を平面上に配置する。

【0021】
内包物質は、カプセル又はビーズの用途に応じて選択することができる。内包物質としては、特に限定されずに、油溶性又は水溶性物質のいずれも用いることができる。内包物質は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。

【0022】
油溶性の内包物質としては、特に限定されずに、油溶性の農薬、接着剤、インク、蓄熱材、医薬品等を挙げることができ、例えば、テトラデカン等の冷熱媒体、α-トコフェロール等の脂溶性ビタミン類及び抗酸化剤、ドキソルビシン等の抗がん剤を用いることができる。

【0023】
水溶性の内包物質としては、特に限定されずに、水溶性の農薬、接着剤、インク、蓄熱材、医薬品等を挙げることができ、例えば、水等の溶媒、ウシ血清アルブミン等のタンパク質を用いることができる。

【0024】
内包物質は、揮発性であってもよく、又は、不揮発性であってもよい。本発明の製造方法では、揮発性又は不揮発性の内包物質のいずれも高い内包効率でカプセル又はビーズに内包することができるが、特に、スプレードライ法では内包効率が低い揮発性物質を高い内包効率で内包することができる点で優れる。

【0025】
内包物質は、好ましくは液体であり、そのまま用いることができるが、液体又は固体の内包物質を溶媒に溶解又は分散させて用いることもできる。溶媒は、用いる内包物質に応じて適宜選択することができる。内包物質が油溶性である場合には、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド、ジクロロエタン、ジクロロメタン、ヘキサン、キシレン、酢酸エチル、クロロホルム、ジエチルエーテル等の有機溶媒を用いることができる。内包物質が水溶性である場合には、例えば、水等の溶媒を用いることができる。

【0026】
本発明において、モノマー液滴を用いる場合、モノマーとしては、疎水性モノマー又は親水性モノマーのいずれも用いることができる。

【0027】
本発明において、疎水性モノマーとは、25℃における水に対する溶解度が2重量%未満のモノマーをいう。疎水性モノマーとしては、特に限定されずに、例えば、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート等の単官能アクリレート;エチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能アクリレート;エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n-アミルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート等の単官能メタクリレート;エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート等の多官能メタクリレート;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン系モノマー;及びジビニルベンゼン等が挙げられる。疎水性モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。疎水性モノマーとしては、カプセル又はビーズの壁の機械的強度の観点から、(メタ)アクリレート、スチレン及びジビニルベンゼンが好ましい。本発明において、(メタ)アクリレートとは単官能又は多官能のアクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。

【0028】
本発明において、親水性モノマーとは、25℃における水に対する溶解度が2重量%以上のモノマーをいう。親水性モノマーとしては、特に限定されずに、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルアルコール、アクリルアミド、メタクリロキシエチルホスフェート等が挙げられる。親水性モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。

【0029】
モノマー液滴は、モノマー成分及び内包物質以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、特に限定されずに、例えば、モノマーを溶解又は分散するための溶媒、熱重合開始剤又は光重合開始剤等の重合開始剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、難燃剤、可塑剤、ワックス等を挙げることができる。

【0030】
熱重合開始剤としては、特に限定されずに、例えば、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)2-メチルプロピオンアミド]、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)等のアゾ化合物;t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン等の過酸化物等が挙げられる。これらの中で、アゾ化合物が好ましく、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)がより好ましい。熱重合開始剤の配合量は、モノマーに対して0.01~5mol%の範囲が好ましい。

【0031】
光重合開始剤としては、特に限定されずに、ジエトキシアセトフェノン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン系化合物;2,4,6-トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系化合物;ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系化合物;10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン等が挙げられる。光重合開始剤の配合量は、モノマーに対して0.01~5mol%の範囲が好ましい。

【0032】
光重合開始剤は、モノマーの硬化反応をより効率的に行なうために、必要に応じて、光重合促進剤と組み合わせてモノマー液滴に使用することができる。光重合促進剤としては、特に限定されずに、例えば、4-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸n-ブトキシエチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル等の安息香酸系化合物、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン等の第3級アミン化合物を挙げることができる。光重合促進剤の配合量は、モノマーに対して0.01~5mol%の範囲が好ましい。

【0033】
本発明において、ポリマー液滴を用いる場合、ポリマーとしては、特に限定されずに、本発明において用いることができるモノマー由来のポリマーを用いることができ、例えば、前記の疎水性モノマー又は親水性モノマー由来のポリマー、好ましくはポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレン及びポリジビニルベンゼンを用いることができる。また、ポリ乳酸やポリグリコール酸、乳酸とグリコール酸の共重合体、ポリカプロラクトン等も用いることができる。ポリマーは、通常、有機溶媒等の溶媒に溶解してポリマー溶液の形態で用いられる。有機溶媒は、用いるポリマーに応じて選択され、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド、ジクロロエタン、ジクロロメタン、ヘキサン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、クロロホルム、ジエチルエーテル等が挙げられる。

【0034】
ポリマー液滴は、ポリマー成分、溶媒及び内包物質以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、特に限定されずに、例えば、界面活性剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、難燃剤、可塑剤、ワックス等を挙げることができる。

【0035】
モノマー液滴又はポリマー液滴の表面を被覆する固体微粒子は、該液滴を平面上に安定に配置するために用いられる。従って、本発明の方法により得られるカプセル又はビーズは、カプセル又はビーズ壁が固体微粒子から形成されるものではない。固体微粒子は、モノマー液滴又はポリマー液滴より小さい粒径を有する。固体微粒子の粒径は、モノマー液滴又はポリマー液滴を被覆するのに十分に小さければ特に限定されないが、好ましくは0.01μm~500μmであり、より好ましくは1μm~300μmである。本発明において、固体微粒子の粒径とは、実体顕微鏡又はレーザー回折散乱法によって測定した個数基準の平均粒径をいう。固体微粒子の粒径がこの範囲であると、モノマー液滴又はポリマー液滴全体又はほぼ全体を被覆することができ、液滴の合一を回避できるため、液滴を高密度で配置することができ、よって製造効率が高くなる。なお、モノマー液滴又はポリマー液滴は、濡れ広がることなく平面上に配置できればよいため、液滴の一部が固体微粒子で被覆された形態でもよい。モノマー液滴又はポリマー液滴の粒径(直径)が例えば1mm~3mm程度の場合、固体微粒子の粒径は例えば1μm~300μmである。

【0036】
固体微粒子は、モノマー液滴又はポリマー液滴を安定に被覆するために、該液滴に対して適度な濡れ性を有することが好ましい。固体微粒子は、好ましくは撥液性であり、すなわち撥水撥油性又は撥水性である。本発明において、撥水撥油性とは、撥水性及び撥油性を有することをいう。固体微粒子は、少なくとも微粒子表面が、液滴に対する適度な濡れ性を有していればよく、好ましくは撥水撥油性又は撥水性を有する。

【0037】
撥水性の固体微粒子は、特に限定されずに、例えば70°以上、好ましくは100°以上の水に対する接触角を有する。撥水性の固体微粒子としては、例えば、テフロン(登録商標)、アルキル化シリカ粒子、カーボンブラック、ポリフッ化ビニリデン、ポリ[2-(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート]等の微粒子を挙げることができる。

【0038】
上記の撥水性の固体微粒子の他に、撥水性の固体微粒子として、例えばポリシロキサン構造を有するエアロゲル又はキセロゲルのシリコーン製モノリス体を用いることができる。該シリコーン製モノリス体は、例えば、2官能性のアルコキシシランと、3官能性のアルコキシシラン又は4官能性以上のアルコキシシラン類との両方を出発原料とし、ゾルゲル反応によりこれらのシランを共重合させることで得ることができる。このようなシリコーン製モノリス体として、ビニルトリメトキシシラン及びメチルビニルジメトキシシランから得られ、下記式(1)の構造:

【0039】
【化1】
JP2019039292A1_000003t.gif
を有するエアロゲル又はキセロゲルのシリコーン製モノリス体を挙げることができる。このような材料は早瀬らの報告(Angew Chem Int Ed Engl.2013, 52 (41), 10788-10791)に記載されている。撥水性の固体微粒子は、撥水性に加えて撥油性を有していてもよい。

【0040】
撥水撥油性の固体微粒子は、特に限定されずに、例えば70°以上、好ましくは100°以上の水に対する接触角及び例えば70°以上、好ましくは100°以上のn-ヘキサデカンに対する接触角を有する。撥水撥油性の固体微粒子は、好ましくは150°以上の水に対する接触角及び140°以上のn-ヘキサデカンに対する接触角を有する。

【0041】
撥水撥油性の固体微粒子としては、特に限定されずに、例えば、ポリシロキサン構造及びパーフルオロアルキル構造を有する材料、好ましくは、ポリシロキサン構造及びパーフルオロアルキル構造を有するエアロゲル又はキセロゲルのシリコーン製モノリス体を用いることができる。該シリコーン製モノリス体は、例えば、上記式(1)の構造を有するシリコーン製モノリス体のビニル基にフッ化アルキル鎖を付加することにより得られる。フッ化アルキル鎖の付加は、例えば、チオール-エンクリック反応により、上記式(1)の構造を有するシリコーン製モノリス体とアルキルチオールとを反応させることにより行うことができる。このような材料として、早瀬らの報告(Angew Chem Int Ed Engl.2013, 52 (41), 10788-10791)に記載されている、撥水撥油性を示す柔軟多孔性材料であるマシュマロゲルを用いることができる。

【0042】
上記の撥水撥油性の固体微粒子の他に、撥水撥油性の固体微粒子として、例えば、パーフルオロアルキル基で表面を修飾したカーボン、ポリフッ化ビニリデン等の微粒子を用いることができる。

【0043】
モノマー又はポリマーと固体微粒子の組み合わせとしては、液滴を固体微粒子で安定的に被覆するために、モノマー又はポリマーが疎水性であり、固体微粒子が撥水撥油性であるか、或いは、モノマー又はポリマーが親水性であり、固体微粒子が撥水撥油性又は撥水性であることが好ましい。

【0044】
表面を複数の固体微粒子で被覆した、内包物質を含むモノマー液滴又はポリマー液滴の調製において、内包物質をモノマー液滴又はポリマー液滴に添加するタイミングは、該液滴を固体微粒子で被覆する前後のいずれでもよい。すなわち、内包物質を含むモノマー液滴又はポリマー液滴を得た後、該液滴を固体微粒子で被覆してもよく、又は、内包物質を含まないモノマー液滴又はポリマー液滴を固体微粒子で被覆した後、該液滴に内包物質を添加してもよい。内包物質を含むモノマー液滴又はポリマー液滴を固体微粒子で被覆する場合、内包物質を含むモノマー液滴又はポリマー液滴は、内包物質とモノマー又はポリマー溶液等を混合する等して、内包物質が溶解又は分散した、モノマー又はポリマーの溶液又は懸濁液を調製し、これを滴下することで得ることができる。モノマー液滴又はポリマー液滴を固体微粒子で被覆した後に内包物質を液滴に添加する場合、該液滴の形状を破壊しないような方法で加えればよく、例えば、液体の内包物質や内包物質の溶液を注射針等を用いて液滴に注入することで行うことができる。

【0045】
本発明において、内包物質を含むモノマー液滴又はポリマー液滴とは、モノマー液滴又はポリマー液滴中に内包物質が存在していればよく、その形態は特に限定されずに、内包物質が該液滴中で溶解又は分散した形態であってもよいし、或いは、内包物質が該液滴中に単核で存在している形態であってもよい。

【0046】
本発明において、モノマー液滴又はポリマー液滴中の内包物質の含有量は、特に限定されずに、例えばモノマー又はポリマーの重量に対して0.01~90重量%であり、好ましくは1~80重量%である。

【0047】
複数の固体微粒子によるモノマー液滴又はポリマー液滴の表面の被覆は、特に限定されずに、例えば、モノマー又はポリマーの溶液又は懸濁液を滴下して液滴を調製し、液滴表面に固体微粒子の粉末をまぶす、固体微粒子の粉末に液滴を埋没させる、又は固体微粒子の粉末上で液滴を転がす等して、液滴を固体微粒子で処理することにより行うことができる。滴下するモノマー又はポリマーの溶液又は懸濁液は、前記の通り内包物質を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。

【0048】
モノマー液滴又はポリマー液滴は平面上に配置される。モノマー液滴又はポリマー液滴を配置する、平面を有する材料は、平面部分を有し、液滴を安定に配置することができればその形状及び材質は特に限定されない。例えば、ガラスシャーレ、ビーカー等の容器や任意の材質の平板材料等を用いることができる。本発明では、モノマー液滴又はポリマー液滴の表面を複数の固体微粒子で被覆することにより、平面の有する性質を問わず液滴を安定に配置できる。

【0049】
本発明の工程2では、平面上に配置したモノマー液滴又はポリマー液滴を気相中(大気中)で固化することによりカプセル又はビーズの外殻部を形成するとともに、前記外殻部によって囲まれる領域を形成して、内包物質が、前記外殻部によって囲まれる領域に内包された微小カプセル又はビーズを得る。カプセル又はビーズの外殻部は、壁材のモノマー液滴又はポリマー液滴から形成されたポリマーからなる。本発明では、モノマー液滴又はポリマー液滴を気相中で固化することで、内包物質の漏洩を防止することができ、内包物質の内包効率が高くなる。工程2で得られる微小カプセル又はビーズは、固体微粒子で被覆した形態である。微小カプセル又はビーズは、固体微粒子で被覆した形態で用いてもよいが、好ましくは、下記の工程3により固体微粒子を除去して用いる。

【0050】
本発明の方法において、モノマー液滴を用いる場合、好ましくは、内包物質を含むモノマー液滴を気相中、平面上で重合(硬化)して該液滴を固化させ、内包物質が、モノマーから形成されたポリマーからなる外殻部によって囲まれる領域に内包されたカプセル又はビーズを得る。

【0051】
モノマー液滴の重合は、通常のモノマーの重合方法により行うことができるが、熱重合及び光重合が好ましい。内包物質が揮発性物質又は水溶性物質である場合には、内包効率が向上するため、光重合が好ましい。

【0052】
熱重合の反応条件は、用いるモノマー及び内包物質の種類に応じて適宜選択されるが、例えば、反応温度は30~80℃であり、反応時間は0.5~20時間である。

【0053】
光重合の反応条件は、用いるモノマー及び内包物質の種類に応じて適宜選択されるが、例えば、380~780nm、好ましくは430~485nmの可視光照射下にて、反応温度は0~50℃、好ましくは室温付近の温度(20~25℃)であり、反応時間は0.02~60分間である。

【0054】
本発明の方法において、ポリマー液滴を用いる場合、平面上に配置したポリマー液滴を、例えば乾燥して固化することにより、内包物質が、ポリマーからなる外殻部によって囲まれる領域に内包されたカプセル又はビーズを得ることができる。ポリマー液滴の乾燥は、例えばポリマー液滴中の溶媒を蒸発等により除去することで行うことができる。ポリマー液滴の乾燥は、ポリマー液滴中の溶媒を蒸発等により除去できる条件であれば特に限定されないが、例えば1~101324Paの減圧条件下にて行われる。ポリマー液滴の乾燥は、大気中、室温(25℃)で行ってもよい。また、ポリマー液滴の乾燥前にポリマー液滴を凍結してもよい。ポリマー液滴の乾燥は、該液滴に振盪処理、好ましくは水平方向の振盪処理(旋回振盪)を施すことで行うこともできる。

【0055】
本発明の工程3は、工程2に続いて行うことができる任意の工程である。本発明の方法では、好ましくは、工程2の後に工程3を行う。工程3では、工程2で得られた、固体微粒子で被覆した微小カプセル又はビーズから固体微粒子を除去する。固体微粒子の除去は、例えば紙製のウエス等の布等で拭き取ることや高圧気体を吹きかけることにより行うことができる。工程3を行った場合、得られる微小カプセル又はビーズの外殻部の表面には微粒子が付着していない。また、工程3を行った場合、得られる微小カプセル又はビーズの外殻部の表面には、微粒子を除去した痕跡が残存していてもよい。微粒子の付着及び微粒子を除去した痕跡は、例えば、微小カプセル又はビーズを顕微鏡によって観察することにより確認できる。

【0056】
本発明では、一実施形態において、単核型の球状微小カプセルを製造できる。本発明の方法では、従来の方法では極めて困難であった、全てのカプセルを単核とし、また、外殻部に相当するカプセル壁の厚みを略均一にすることを達成できる。よって、本発明は、単核型の球状微小カプセルの製造方法にも関する。

【0057】
この実施形態において、本発明の単核型(中空)の球状微小カプセルの製造方法は、前記の工程1及び2を含み、すなわち、表面を複数の固体微粒子で被覆した、内包物質を含むモノマー液滴又はポリマー液滴を平面上に配置する工程(工程1)と、平面上に配置したモノマー液滴又はポリマー液滴を気相中で固化することによりカプセル又はビーズの外殻部を形成するとともに、前記外殻部によって囲まれる領域を形成して微小カプセル又はビーズを得る工程(工程2)とを含み、微小カプセル又はビーズから固体微粒子を除去する工程(工程3)をさらに含んでいてもよい。各工程の詳細については前記と同様である。この実施形態では、モノマー液滴を用いることが好ましい。

【0058】
この実施形態では、工程1の表面を複数の固体微粒子で被覆した、内包物質を含むモノマー液滴又はポリマー液滴の調製において、内包物質をモノマー液滴又はポリマー液滴に添加するタイミングは、該液滴を固体微粒子で被覆する前および被覆した後のいずれでもよい。モノマー液滴又はポリマー液滴への内包物質の添加は、単核型のカプセルを得るために、内包物質が液滴中で溶解しないような方法で行うことが好ましく、例えば内包物質を注射針を用いて液滴に注入することにより行うことができる。

【0059】
この実施形態では、カプセルを単核にするために、内包物質は、モノマー液滴又はポリマー液滴に溶解しないことが好ましい。このような内包物質とモノマーの組み合わせとしては、例えば油溶性の内包物質と親水性モノマーの組み合わせや、水や水溶液のような水溶性の内包物質と、(メタ)アクリレートのような疎水性モノマーの組み合わせがある。このような内包物質とポリマーの組み合わせとしては、例えば油溶性の内包物質と親水性ポリマーの組み合わせや、水溶性の内包物質と疎水性ポリマーの組み合わせがある。

【0060】
この実施形態では、モノマー液滴又はポリマー液滴を気相中で固化する工程2において、該液滴に振盪処理、好ましくは水平方向の振盪処理(旋回振盪)を施すことが好ましい。これによって、真球度合い及びカプセル壁の厚みの均一度合いが高いカプセルが得られる。真球度合い及びカプセル壁の厚みの均一度合いが高いカプセルは、中空部分の体積を増加させる際の不可避なカプセル強度の低下を最小限に抑えることができるという点で好ましい。この工程では、振盪速度及び固化開始までの振盪時間を調整することで、真球度合い及びカプセル壁の厚みの均一度合いが最適化されたカプセルを得ることができる。具体的には、振盪処理を水平方向の振盪処理(旋回振盪)にて行う場合、振盪速度が120~140rpm、好ましくは約130rpmにて、固化開始までの振盪時間を0秒とする(すなわち、振盪開始と同時に固化を開始する)と、真球度合いが高くより球状であり、カプセル壁の厚みが略均一な単核型の球状カプセルが得られる。好ましい実施形態において、モノマー液滴を光重合により固化し、この場合、振盪速度約130rpm且つ光重合開始までの振盪時間0秒とすることが好ましい。

【0061】
本発明は、前記の製造方法によって得られる微小カプセル又はビーズも含む。

【0062】
本発明の微小カプセル又はビーズは、ポリマーからなる外殻部と、前記外殻部によって囲まれた領域(中空領域)に内包される内包物質とからなる。本発明において、外殻部は、モノマー液滴又はポリマー液滴を気相中で固化することにより形成される。モノマー液滴を用いる場合、外殻部を構成するポリマーは、好ましくは、モノマー液滴を重合して形成される。したがって、外殻部を構成するポリマーは、モノマー液滴について前記のモノマーを重合して形成されたポリマー、又はポリマー液滴について前記のポリマーである。好ましくは、外殻部を構成するポリマーは、(メタ)アクリレート、スチレン系モノマー及びジビニルベンゼンから選ばれる少なくとも1種のモノマーから形成されたポリマーである。本発明の微小カプセル又はビーズに用いることができる内包物質は、製造方法について前記の通りである。

【0063】
微小カプセル又はビーズは、カプセル中で内包物質が1つの核をなす単核型、或いは、カプセル中で内包物質が複数の核をなす多核型のいずれであってもよい。多核型の場合、外殻部によって囲まれる領域が複数あり、それぞれの領域に内包物質が内包されている。

【0064】
一実施形態において、微小カプセル又はビーズは単核型である。好ましい実施形態において、微小カプセル又はビーズは単核型であり、外殻部の厚みは略均一である。微小カプセル又はビーズは、好ましくは、実施例に記載される外殻部(カプセル壁)の厚みの均一度合いの評価において、変動係数の平均値が0.4未満であり、好ましくは0.3未満であり、より好ましくは0.2未満である。

【0065】
好ましくは、微小カプセル又はビーズの外殻部の表面には微粒子が付着していない。また、微小カプセル又はビーズの外殻部の表面には微粒子を除去した痕跡が残存していてもよい。微粒子を除去した痕跡とは、前記の微小カプセル又はビーズの製造方法の工程3において、外殻部の表面に存在する固体微粒子を、例えば紙製のウエス等の布等で拭き取ることや高圧気体を吹きかけることにより除去した場合に残存する痕跡をいう。微小カプセル又はビーズにおける微粒子の付着及び微粒子を除去した痕跡は、例えば、微小カプセル又はビーズを顕微鏡によって観察することにより確認できる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0067】
(固体微粒子の調製)
固体微粒子として、早瀬らの報告(Angew Chem Int Ed Engl.2013, 52 (41), 10788-10791)にしたがい、撥水撥油性を示す柔軟多孔性材料であるマシュマロゲルを作製した。
【実施例】
【0068】
具体的には、ガラス容器中の5mMの酢酸水溶液15mLに、塩化n-ヘキサデシルトリメチルアンモニウム0.8gと尿素5gを加え、混合した。次いで、ビニルトリメトキシシラン0.0210mol及びメチルビニルジメトキシシラン0.0140molを加え、30分間スターラーで撹拌した。その後、この溶液を密封容器に移し、80℃でゲル化を行うと同時に尿素の加水分解による塩基性条件下で2日間熟成した。得られたウェットゲルを水/イソプロピルアルコール(1:1)溶液に含浸させた後、イソプロピルアルコールにて洗浄し、乾燥した。
【実施例】
【0069】
次いで、チオール-エンクリック反応により、得られたゲルのビニル基にフッ化アルキル鎖を付加した。具体的には、上記のゲル0.5gを、10%(v/v)濃度の1H,1H,2H,2H-パーフルオロデカンチオール及び0.1%(w/v)濃度の2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)を含む2-プロパノール溶液50mlに浸し、60℃で10時間反応させた。得られたゲルを2-プロパノールで洗浄し、乾燥して固体状のマシュマロゲルを得た。得られたマシュマロゲルの水に対する接触角は160°であり、n-ヘキサデカンに対する接触角は151°であった。
【実施例】
【0070】
得られたマシュマロゲルを乳鉢を用いてすり潰し、粒径(直径)100μm以下の微粒子粉末とした。マシュマロゲル微粒子の粒径は、実体顕微鏡により測定した。
【実施例】
【0071】
(実施例1)
内包物質としてテトラデカンを用い、壁材モノマーとしてトリメチロールプロパントリメタクリレートを用いた。トリメチロールプロパントリメタクリレートに、光重合開始剤としてカンファーキノン(1mol%)及び重合促進剤として4-(ジメチルアミノ)安息香酸エチル(1mol%)を溶解した。続いて、得られた溶液に、トリメチロールプロパントリメタクリレート:テトラデカンの重量比が4:6となるようにテトラデカンを加えた。得られた溶液の5μLの液滴をマシュマロゲル微粒子粉末上に滴下し、粉末上で転がして、マシュマロゲル微粒子粉末を液滴にまぶして、表面全体がマシュマロゲル微粒子で被覆されたモノマー液滴(リキッドマーブル)を作製した。リキッドマーブルをガラスシャーレ上に配置した。リキッドマーブルは安定であり、濡れ広がることなく、また、平面上に複数個配置しても合一することなく高密度で配置できた。リキッドマーブルの1つに対し、20℃にて、波長430~485nm及び強度1200mW/cm以上の可視光を2分間照射することでモノマーの光重合を行い、モノマー液滴を固化して、テトラデカンをトリメチロールプロパントリメタクリレートから形成されたポリマー内に内包する球状の固体ビーズを得た。ビーズ表面のマシュマロゲル微粒子をキムワイプ(日本製紙クレシア製)で拭き取ることにより除去した。得られたビーズのテトラデカンの内包効率(=カプセル内に内包された量/仕込み量×100)は100±3%であり、高効率で内包できることが示された。ビーズの粒径は2mmであった。
【実施例】
【0072】
実施例1で得られたビーズの表面特性を評価した。ビーズ表面のマシュマロゲル微粒子を除去する前後のビーズをそれぞれ水に入れたところ、マシュマロゲル微粒子で表面が被覆されたビーズは水に沈まず、撥水性を示したが、マシュマロゲル微粒子を除去したビーズは水に沈み、撥水性を示さなかった。
【実施例】
【0073】
実施例1で得られたビーズにおけるテトラデカン(内包されたテトラデカン)の熱特性を示差走査熱量測定(DSC)(DSC-60、島津製作所製)により評価した。比較として、ビーズに内包されていない純粋なテトラデカンの熱特性を測定した。結果を表1及び図2に示す。図2は、純粋なテトラデカン及び実施例1で得られたビーズにおけるテトラデカンのDSC測定の結果を示す。
【実施例】
【0074】
【表1】
JP2019039292A1_000004t.gif
【実施例】
【0075】
表1及び図2より、実施例1のビーズ中のテトラデカンは、テトラデカン固有の熱特性を保持していることが示された。
【実施例】
【0076】
(実施例2)
内包物質のテトラデカンをα-トコフェロールに代え、トリメチロールプロパントリメタクリレート:α-トコフェロールの重量比を9:1とし、可視光の照射時間を4分間に変えた以外は実施例1と同様にしてα-トコフェロールが内包された球状の固体ビーズを得た。実施例2で得られたビーズの顕微鏡写真を図3に示す。得られたビーズのα-トコフェロールの内包効率は103±3%であり、粒径は2mmであった。
【実施例】
【0077】
(実施例3)
内包物質として蒸留水を用い、壁材ポリマーとしてポリスチレンを用いた。トルエンにポリスチレン(7.5重量%)を溶解した。得られたポリスチレン溶液7mLに蒸留水3mLを加え、撹拌することでポリスチレン溶液中に蒸留水を分散させた。その溶液10mLをマシュマロゲル微粒子粉末上に滴下し、マシュマロゲル微粒子粉末を液滴にまぶして、表面全体がマシュマロゲル微粒子で被覆されたポリマー液滴(リキッドマーブル)を作製した。リキッドマーブルを底面直径30mmのビーカーに入れ、25℃で1時間、200rpmにて旋回震盪することでリキッドマーブルからトルエンを蒸発させて、ポリマー液滴を固化して、蒸留水をポリスチレン中に内包する球状の固体カプセルを得た。実施例3で得られたカプセルの顕微鏡写真を図4に示す。得られたカプセルの蒸留水の内包効率は91±5%であり、粒径は2mmであった。
【実施例】
【0078】
(実施例4)
単核型(中空)の球状カプセルを調製した。具体的には、トリメチロールプロパントリメタクリレートに、カンファーキノン(1mol%)及び4-(ジメチルアミノ)安息香酸エチル(1mol%)を溶解した。得られた溶液の8μLの液滴をマシュマロゲル微粒子粉末上に滴下し、粉末上で転がして、マシュマロゲル微粒子粉末を液滴にまぶして、表面全体がマシュマロゲル微粒子で被覆されたモノマー液滴(リキッドマーブル)を作製した。続いて、蒸留水2μLをリキッドマーブル中にリキッドマーブルの形を壊さないようにして注射針を用いて注入し、この液滴を底面直径30mmのビーカーに入れ、ビーカーを所定の振盪速度にて旋回震盪した。旋回震盪開始から所定時間経過後に、光束24WのLEDライトを1.5分間照射することによりモノマーを光重合させて液滴を固化させた。旋回震盪速度(0~190rpm)及び旋回震盪開始から光照射までの旋回震盪時間(0~30秒)を変化させ、球状且つ壁厚みが均一な単核型カプセルを調製できる条件を選定した。カプセルが球状かどうかは、以下のようにして求めたカプセルの真球度合いにより評価した。
【実施例】
【0079】
具体的には、まず、平面上のカプセルを水平方向(真上)及び垂直方向(真横)から撮影した顕微鏡写真を得た。図5Aは、実施例4で得たカプセルの1つを水平方向から撮影した顕微鏡写真であり、図5Bは、実施例4で得たカプセルの1つを垂直方向から撮影した顕微鏡写真である。カプセルの水平方向及び垂直方向から撮影した各顕微鏡写真において、図中に示す箇所の直径を測定し、その中で最長の直径をaとし、最短の直径bとし、カプセルの真球度合いを、下記式:真球度合い(%)=最短直径b/最長直径a×100により求めた。カプセルの真球度合いが100%に近いほど、そのカプセルは真球に近い、すなわち、より球状であることを表す。光照射までの旋回震盪時間及び旋回震盪速度がカプセルの真球度合いに及ぼす影響を表2に示す。
【実施例】
【0080】
【表2】
JP2019039292A1_000005t.gif
【実施例】
【0081】
カプセルの壁厚みの均一度合いは以下のようにして求めた。まず、カプセルの断面図の顕微鏡写真を得た。図6は、実施例4で得たカプセルの1つの断面の顕微鏡写真である。図6に示すように、カプセルの断面図の8ヶ所(A~H)で、カプセル半径A~Hに対する壁厚みa~hの割合(a/A~h/H)を算出し、それらの値の平均値及び標準偏差を算出した。続いて、その標準偏差を平均値で割った変動係数(標準偏差/平均値)を求めた。10個のカプセルで同様の操作を行い、その変動係数の平均値及び標準偏差を求めた。変動係数の平均値及び標準偏差が小さい程、カプセルの壁厚みはより均一である。光照射までの旋回震盪時間及び旋回震盪速度がカプセルの壁厚みの均一度合いに及ぼす影響を表3に示す。
【実施例】
【0082】
【表3】
JP2019039292A1_000006t.gif
【実施例】
【0083】
表2及び表3より、光照射までの旋回震盪時間が0秒、及び旋回震盪速度が130rpmにおいて、カプセルが最も真球に近くより球状であり、壁厚みが最も均一である単核型の球状カプセルを作製できたことが示された。
【符号の説明】
【0084】
1 内包物質を含むモノマー液滴又はポリマー液滴
2 固体微粒子
3 微小カプセル又はビーズ
【符号の説明】
【0085】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5