TOP > 国内特許検索 > ロボット手術に用いられる医療器具 > 明細書

明細書 :ロボット手術に用いられる医療器具

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-174695 (P2020-174695A)
公開日 令和2年10月29日(2020.10.29)
発明の名称または考案の名称 ロボット手術に用いられる医療器具
国際特許分類 A61B  17/34        (2006.01)
A61B  17/02        (2006.01)
FI A61B 17/34
A61B 17/02
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 9
出願番号 特願2019-077095 (P2019-077095)
出願日 平成31年4月15日(2019.4.15)
発明者または考案者 【氏名】柴尾 和徳
出願人 【識別番号】506087705
【氏名又は名称】学校法人産業医科大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100099508、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 久
【識別番号】100182567、【弁理士】、【氏名又は名称】遠坂 啓太
【識別番号】100197642、【弁理士】、【氏名又は名称】南瀬 透
審査請求 未請求
テーマコード 4C160
Fターム 4C160AA12
4C160AA20
4C160FF45
4C160MM22
要約 【課題】ロボット手術において、空気漏れを防止し、モノポーラエネルギーなどによる組織の熱傷を防止する医療器具を提供する。
【解決手段】ロボット手術用のプラットフォーム11は、樹脂製の樹脂部111、112、113を有し、樹脂部の遠位端である板状部112から、近位端である板状部111への導電性を有する導電部を備える。導電部は、樹脂部の表面に設けられ、帯電防止の表面抵抗以下の表面抵抗の導電性を有する導電性膜とすることができる。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
ロボット手術用のプラットフォーム、トロッカー、及びトロッカー固定具からなる群から選択されるいずれかの医療器具であり、
前記医療器具が樹脂製の樹脂部を有し、前記樹脂部の遠位端と近位端との間に導電性を有する導電部を備える医療器具。
【請求項2】
前記樹脂部が、透明部を有する請求項1記載の医療器具。
【請求項3】
前記導電部が、前記樹脂部の表面に設けられ、帯電防止のための表面抵抗以下の表面抵抗率の導電性を有する導電性膜である請求項1または2記載の医療器具。
【請求項4】
前記導電性膜が透明である、請求項3記載の医療器具。
【請求項5】
前記導電部が、前記樹脂部に導電性材料を包埋することで導電性を有する樹脂部である請求項1~4のいずれかに記載の医療器具。
【請求項6】
前記導電部が、前記樹脂部の前記遠位端側と前記近位端側との間に設けられた導電部材である請求項1~5のいずれかに記載の医療器具。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット手術に用いられるプラットフォームやトロッカー、トロッカー固定具といった医療器具に関する。
【背景技術】
【0002】
胸腔や腹腔等の手術にあたって低侵襲性や正確な動作ができることから、内視鏡下ロボット手術支援システムなどのロボット手術が実用化されている。ロボット手術として広く普及している装置では、例えば臍部から金属製のトロッカーを挿入し、金属製の固定具で腹壁に固定後、気腹して手術を行っている。しかし、金属製のトロッカーや固定具は、臍部との密着性が低く、空気漏れが生じてその対応が必要になるなど、手術時間を延長する原因となっている。一方で、空気漏れを防止するために、金属製のトロッカーや固定具を臍部に過度に密着させると、臍部皮膚の糜爛や壊死の原因となる。
【0003】
これらの一般的な対策として、例えば、樹脂製のプラットフォームを用いて金属製のトロッカーを挿入する手法が行われている。また、他にも樹脂製のトロッカーと固定具を用いてさらに金属製トロッカーを樹脂製のトロッカーに挿入するトロッカーイントロッカーと呼ばれる手法が行われている。非特許文献1、2はこれらの手法に用いることができる器具の例を開示している。
【0004】
特許文献1~3はトロッカー(トラカールやトロカールと呼ばれる場合がある)等を開示するものである。例えば、特許文献1は、体壁に刺針される内針と、この内針の外側に設けられた外套管と、この外套管の基端部に設けられ後端に口金を有する手元部と、この手元部の内部に設けられた気密弁とを有するトラカールにおいて、前記気密弁を前記口金に対して相対変位可能に設けたことを特徴とするトラカールを開示している。
【0005】
特許文献2は、体壁に刺針される内針と、この内針の外側に設けられた外套管とを有するトラカールにおいて、前記外套管の外表面に保水牲を有するカバー部材を設けたことを特徴とするトラカールを開示している。
【0006】
特許文献3は、内部貫通通路を有するトロカールカニューレにおいて、細長いトロカールカニューレ管と、該カニューレ管を取り付けるためのトロカールカニューレ取手とを具備し、該トロカールカニューレ管とトロカールカニューレ取手の内部通路が、管と取手を通して可視であるトロカールカニューレを開示している。
【0007】
特許文献4は、トロッカー固定具の一例を示すものである。特許文献4は、内視鏡下外科手術においてトラカール管を体壁に固定するための体腔側固定具であって、トラカール管外周部に着脱自在に装着される抜止め手段と、該抜止め手段を体外部より操作可能な操作手段とを具備したことを特徴とするトラカール固定具を開示している。
【0008】
特許文献5は、プラットフォームの一例を示すものである。特許文献5は、外科用アクセス装置において、開創器であって、体腔内へと組織を貫通する通路を形成するために、前記開創器を通って延びる開口部を有する、開創器と、前記開創器に連結され、中を延びる長さ方向軸を定めるハウジングであって、前記ハウジングは、前記開創器の前記開口部と連絡している複数の剛性シールポートを有し、各シールポートは、その中にシール要素を有し、前記ハウジングの前記長さ方向軸とゼロより大きい角度を成す中心軸を有する、ハウジングと、を含む、外科用アクセス装置を開示している。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開平5-285156号公報
【特許文献2】特開平5-285155号公報
【特許文献3】特開平7-250810号公報
【特許文献4】特開2002-224129号公報
【特許文献5】特開2010-82449号公報
【0010】

【非特許文献1】A Newly Developed Oval-shaped Port Device (E・Z ACCESS Oval Type) for Use in Reduced Potr Surgery: Initial Clinical Experiences with Cholecyctectomy. Surg Technol Int. 2013 Jul 17; XXIII:76-80 Shibao K, Sato N, Higure A, Yamaguchi K.
【非特許文献2】A new oval multichannel port to facilitate reduced port distal gastrectomy. Minim Invasive Ther Allied Tchnol.2015 Jun;24(3):135-40.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1~5や、非特許文献1~2のようなトロッカーやその固定具、プラットフォームなどが開示されており、ロボット手術への利用が行われている。また、これらのほかにもロボット手術において、樹脂製のプラットフォームやトロッカー、固定具等を用いる手法では、特定の使用条件下で、エンドスコープを介してモノポーラエネルギーが接触組織へ伝達され、熱傷をもたらす可能性があることが報告されている。このようなリスクは、患者の術後回復が遅延する原因ともなる可能性があり、これを避けるように配慮しながら手術を行うことは医師にも余計な負担となる。ロボット手術を行うにあたり、このような熱傷が生じるリスクを低減することが求められている。しかしながら、特許文献1~5や、非特許文献1~2のようなトロッカーやその固定具、プラットフォームは必ずしもロボット手術を前提としたものではなく、また、モノポーラエネルギーが接触組織へ伝達され、熱傷をもたらす可能性などの認識もなく、これらに最適な構成を有しているものとはいえない部分があった。
【0012】
係る状況下、本発明は、ロボット手術において、空気漏れを防止し、モノポーラエネルギーなどによる組織の熱傷を防止する医療器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
【0014】
<1> ロボット手術用のプラットフォーム、トロッカー、及びトロッカー固定具からなる群から選択されるいずれかの医療器具であり、
前記医療器具が樹脂製の樹脂部を有し、前記樹脂部の遠位端と近位端との間に導電性を有する導電部を備える医療器具。
<2> 前記樹脂部が、透明部を有する<1>記載の医療器具。
<3> 前記導電部が、前記樹脂部の表面に設けられ、帯電防止のための表面抵抗以下の表面抵抗の導電性を有する導電性膜である<1>または<2>記載の医療器具。
<4> 前記導電性膜が透明である、<3>記載の医療器具。
<5> 前記導電部が、前記樹脂部に導電性材料を包埋することで導電性を有する樹脂部である<1>~<4>のいずれかに記載の医療器具。
<6> 前記導電部が、前記樹脂部の前記遠位端と前記近位端との間に設けられた導電部材である<1>~<5>のいずれかに記載の医療器具。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ロボット手術において、空気漏れを防止し、モノポーラエネルギーなどによる組織の熱傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明にかかるロボット手術のプラットフォームの一例を示す概要図である。
【図2】本発明にかかるトロッカーおよびトロッカー固定具の一例を示す概略図である。
【図3】本発明にかかるトロッカーの他の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。

【0018】
[本発明の医療器具]
本発明の医療器具は、ロボット手術用のプラットフォーム、トロッカー、及びトロッカー固定具からなる群から選択されるいずれかの医療器具であり、前記医療器具が樹脂製の樹脂部を有し、前記樹脂部の遠位端と近位端との間に導電性を有する導電部を備える。本発明の医療器具によれば、ロボット手術において、空気漏れを防止し、モノポーラエネルギーなどによる組織の熱傷を防止することができる。

【0019】
本発明の医療器具は、ロボット手術用のプラットフォームやトロッカー、トロッカー固定具に関する。これらは、ロボット手術を行うにあたって、臍部などの体壁に設ける開口部に取り付けられ、この開口部を通して手術用の器具を操作等するために設置される器具である。

【0020】
これらの医療器具は、体壁に取り付けて用いられるが、その体壁と接触する部分に、シリコーン樹脂などの樹脂製の樹脂部を有する。この樹脂部により、樹脂が体壁と接触したとき体壁に合わせて比較的柔軟に変形したり、体壁と密着させても体壁への損傷が少ないことから、ロボット手術中の気腹した体内からの空気漏れを防止することができる。

【0021】
ロボット手術に用いられるトロッカーは、臍部などにロボット手術用の器具を差し込むための器具として設置される器具である。このトロッカーは、従来、特にロボット手術用としては金属製のものとして開発されてきていた。しかし、金属製のトロッカーは、体壁が薄いヒトに用いると体内から空気漏れが生じたり、空気漏れを防止するために強く体壁に押し付けると長時間の手術によって糜爛や壊死が生じる恐れがある。このような金属製のトロッカーに代えて、従来、手術を行うときになどに用いられていたプラットフォームなどとも呼ばれる器具を利用したり、トロッカーの一部を樹脂製とするものなどが提案されている。また、体壁の内側にリング状に膨張させて体壁の内外で固定するようなトロッカー固定具などと併用するものが提案されてきている。

【0022】
しかし、これらの樹脂部を有する構造としてロボット手術を行うと、特殊な条件のとき、体内の組織に熱傷が生じる場合があることが指摘され始めている。この組織の熱傷は、体壁の内側(体内)の手術用の器具に生じた静電気が、樹脂部により絶縁されて樹脂部周辺で帯電し、この帯電が組織の一部に集中的に流れたときに発生するものと考えられる。本発明は、樹脂部に導電性の構造を設けて樹脂部周辺で生じる可能性がある静電気をロボット手術用の機械のペイシェントカートのアーム等に放出させることで、組織の熱傷を抑制する構成としたものである。

【0023】
[第一の実施形態]
図1は、本発明の第一の実施形態にかかる医療器具を説明するための概要図である。この第一の実施形態にかかる医療器具は、ロボット手術用のプラットフォームである。プラットフォーム11は、トロッカー21、22等を挿入するための構造である。また、プラットフォーム11はトロッカーに限られず他の手術用の器具等を挿入するために用いてもよい。

【0024】
プラットフォーム11は、図1における体壁側の板状部112と、アーム側の板状部111と、これらの板状部の間に設けられた筒状部113を有する。体壁側の板状部112の中央には開口部1121が設けられており、この開口部1121は体壁の開腹部分301に挿入され、手術中に体内で使用する手術用の器具を挿入したり取り出すための領域となる。また、アーム側の板状部111は手術用の器具を挿入するとき、所定の位置に留めるための基点となる部分を固定するものとなる。また、これらの板状部111、112と筒状部113との間は中空となっており、この中空の部分でアーム側の板状部から体壁側の板状部の開口部への各器具の導線を調整する。
ロボット手術用の機械のペイシェントカートのアームに取り付けた手術用の器具などは、このプラットフォーム11を介して使用される。このため、プラットフォーム11などの医療器具において、ロボット手術用の機械のペイシェントアームにより近いほうの端部を、近位端とよぶ。プラットフォーム11のアーム側の板状部111は、近位端である。
また、プラットフォーム11などの医療器具において、近位端よりも離れた患者側に配置されたり患者と接触したりする側の端部を、遠位端とよぶ。プラットフォーム11の体壁側の板状部112は、遠位端である。

【0025】
このプラットフォーム11は、その全体がシリコーン樹脂製の樹脂部である。なお、プラットフォーム11の樹脂部はシリコーン樹脂を例にするが、本発明に係る医療器具の樹脂部は、シリコーン樹脂製に限られず、各種プラスチック製や、シリコーンゴム製、樹脂ゴム製などの各種樹脂を用いて成形された部分を含む。また、適宜、ねじ部材などの金属部材などと組み合わせたものとしてもよい。金属部材等を用いるときも、本発明の医療器具に係るプラットフォームは、樹脂部の遠位端と近位端との間に導電性を有する導電部を備えるものとする。

【0026】
このプラットフォーム11は、トロッカーや、手術用の器具などを挿入等するための構造を有するものであればよい。図1のプラットフォーム11においては、アーム側の板状部111は開閉しやすい素材のものとしており任意の位置や方向から手術用の器具などを挿入することができる。なお、この板状部111には、複数の開口部をあらかじめ設けその開口部に筒状などの導入部を設け、これらの導入部を通して、各種器具の挿入等行う構造としてもよい。また、板状部111は、自在に取り外しできる分離型としてもよいし、筒状部113と一体となった一体型としてもよい。このプラットフォーム11の形状は、例えば、シリコーン樹脂製の単孔式用プラットフォームEZアクセス楕円型などを用いることができる。

【0027】
プラットフォーム11は、シリコーン樹脂製でその構造を成形したものを基材として、その内外の表面部分全体に、導電性膜を設けたものである。この導電性膜により、プラットフォーム11の遠位端と近位端との間に導電性を有する。この導電性膜は、帯電防止ができる表面抵抗率以下の導電性を有する。これにより、プラットフォーム11を通して挿入して使用するモノポーラインストゥルメントの電気メスなどの手術用の器具によって、樹脂部や体壁、体内周辺で帯電が生じようとしても、プラットフォーム11を通電し帯電が防止される。よって、これらの電気メス等が体内で組織や臓器等に接触しても、意図しない熱傷が生じることを防止することができる。

【0028】
このプラットフォーム11の樹脂部は、透明としてもよい。透明とすることで、挿入する器具の配置や、体壁に対する距離等を把握しやすく、手術の操作を行いやすい。また、手術に伴い、体内から所定の組織や臓器を取り出す必要があるとき、目視でもその確認ができる点でも優れている。なお、樹脂部は、内部が視認できる範囲で半透明のものとしてもよい。また、樹脂部の内部を確認する必要性が低いときは、透明ではないものを用いてもよい。

【0029】
この導電性膜は、例えば、導電性材料として市販されている種々の材質を用いることができる。例えば、PTO膜(リンドープ酸化スズ)や、有機フッ素化合物、イオン液体、TO膜(酸化スズ膜)、ATO膜(アンチモンドープ酸化スズ)、シリカ/ATO二層膜、白色導電膜、ITO膜(スズドープ酸化インジウム膜)、シリカ/ITO二層膜などの膜を用いることができる。これらを、適宜、分散媒等に分散させた組成物等に、プラットフォーム11の基材となる構造を成形したものを接触させ、乾燥やUV照射等の固定化を行って、その表面に導電性膜を設ける。

【0030】
この導電性膜は、透明なものであることが好ましく、例えば、TO膜(酸化スズ)、PTO膜(リンドープ酸化スズ)や、有機フッ素化合物、イオン液体、ATO膜(アンチモンドープ酸化スズ)、シリカ/ATO二層膜、ITO膜(スズドープ酸化インジウム膜)、シリカ/ITO二層膜などの膜が好ましく用いられる。透明な導電性膜とすることで、樹脂部の透明部から内部を視認等することができる。

【0031】
また、この導電性膜の導電性は、表面抵抗率(Ω/□)に換算して、帯電防止のための導電性の指標とされている1.0×1010以下が好ましく、1.0×109以下がより好ましく、1.0×108以下とすることがより好ましい。また、その厚みは、それぞれの膜の種類に応じて、適宜設定することができる。例えば、0.3μm~100μmや、0.5~30μm等とすることができる。表面抵抗率(Ω/□)は下限を設けなくともよいが、電気メス等に意図しない電気の流れが生じる可能性があるため、10×101以上や、10×102以上のような下限を設けてもよい。

【0032】
導電性膜は、遠位端である体壁側から、近位端である操作機器側まで樹脂部を渡って設けられていればよく、プラットフォーム11の全体に設けてもよいし、部分的に設けてもよい。また、樹脂部分は応力がかかったり、変形する場合があるため、追随性を有するものであることが好ましい。

【0033】
[第二の実施形態]
図2は、本発明にかかる医療器具の第二の実施形態を説明するための概要図である。図2は、トロッカー12と、トロッカー固定具13を体壁31に開口部311を設けて取り付ける状態を説明する略断面図である。

【0034】
トロッカー12は、体壁31の開口部311から、トロッカー先端部122を挿入し、円錐台状部を有するコーン121を体壁31に押し当てるように位置を決める。トロッカー12には、アーム側の挿入口123側から、手術用の器具等を適宜挿し込み、トロッカー12の筒状部を通して体壁31の開口部311を通過し、体内32での手術を行うことができる。この挿入口123は、トロッカー12の近位端であり、トロッカー先端部122はトロッカー12の遠位端である。

【0035】
トロッカー固定具13は、体壁31の体内32側に配置されて用いられる。トロッカー固定具13はリング状の形状を有する固定具である。トロッカー先端部122を体内32内に配置した状態で、トロッカー先端部122の筒状部の周囲に配置し、開口部311よりも拡げたものとする。これにより、体壁31の内側のトロッカー固定具13と、体壁31の外側のコーン121により、体壁31を挟み込むものとなり、トロッカー12が固定される。トロッカー固定具13は体壁31内で用いられるため、体壁31側がロボット手術用の機械のペイシェントカートのアームにより近いほうとなるため、体壁31と接触する図2のおける上部が近位端であり、より体内の奥部に配置されている下部が遠位端である。

【0036】
トロッカー12と、トロッカー固定具13は、シリコーン樹脂などの樹脂製の構造を有する。トロッカー固定具13はその全体をシリコーン樹脂製とすることができる。また、トロッカー12のコーン121やトロッカー先端部122、挿入口123等は、シリコーン樹脂や熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等で成形されたものとしてもよい。また、適宜、ねじ部材などの金属部材などと組み合わせたものとしてもよい。金属部材等も用いるとき、本発明の医療器具に係るトロッカーやトロッカー固定具は、樹脂部の遠位端と近位端との間に導電性を有する導電部を備えるものとする。

【0037】
トロッカー12や、トロッカー固定具13の樹脂部には、導電性材料が包埋されており、これらは導電性を有する。これにより、体内32側のトロッカー先端部122から、トロッカー固定具13、ハウジング121を通って、挿入口123側のロボット手術装置側までのこれらの間に導電性を有する。これにより、トロッカー12を通して使用する手術用の器具によって、体壁31や体内32周辺で静電気が生じようとしても、トロッカー12やトロッカー固定具13を通電し帯電が防止される。よって、手術用の器具等が体内で組織や臓器等に接触しても、意図しない熱傷が生じることを防止することができる。

【0038】
トロッカー12や、トロッカー固定具13の樹脂部には、カーボン系、金属系、金属酸化物系、金属被覆系、金属酸化物被覆系などの導電性材料を包埋したものを用いる。これらは、樹脂組成物にこれらの導電性材料を混合して成形することで包埋させた状態の樹脂部とすることができる。より具体的には、カーボンファイバーや、導電性酸化スズ、導電性酸化チタンなどを用いることができる。トロッカー12やトロッカー固定具13の導電性は、前述の第一の実施形態に準じるものとすることができ、表面抵抗率(Ω/□)に換算して、1.0×1010以下が好ましく、1.0×109以下がより好ましく、1.0×108以下とすることがより好ましい。表面抵抗率には適宜下限を設けてもよい。導電性材料を包埋させる量は、その導電性材料の種類や、導電性を示す範囲等を考慮して適宜設定される。

【0039】
[第三の実施形態]
図3は、本発明にかかる医療器具の第三の実施形態を説明するための概要図である。図3は、トロッカー14を体壁31に開口部311を設けて取り付ける状態を説明する略断面図である。トロッカー14はトロッカー固定具13を用いずに、体壁31の外側から体壁31に押し付けるように固定されている。

【0040】
トロッカー14は、第二の実施形態のトロッカー12に準じる構成を有するものであり、線状の導電部材144をトロッカー14の形状に合わせて沿うように設けたものである。導電部材144は、体内側の遠位端であるトロッカー先端部142から、ハウジング141、ロボット手術機械のペイシェントカートのアーム側の近位端である挿入口143まで設けられ、これらの間に導電性を有する。導電部材144は、トロッカー14の形状に追随できる線状部材等を適宜用いることができ、例えば、金属線などを用いることができる。体壁31や体内32周辺で静電気が生じても、導電部材144を通電し帯電が防止される。よって、これらの電気メス等が体内32で組織や臓器等に接触しても、意図しない熱傷が生じることを防止することができる。

【0041】
これらの第一の実施形態~第三の実施形態に例示するような各種医療器具に用いる、導電性膜や導電性材料の包埋、導電部材などは、単独で用いてもよく、適宜、組み合わせて、より導電性が高いものとしたり、導電性が安定するものとしたり、各材料等の使用量を低減したものとしてもよい。また、本発明に係る医療器具は、ロボット手術や腹腔鏡下手術におけるモノポーラ電気メス等を使用するときの容量効果等を防ぐことを目的として帯電防止等の導電性を備えるものである。このため、手術目的や手術の工程に応じて、本発明に係る医療器具使用する機器が変わる場合でも、それらの機器に対して継続して効果を示す。このため個別の機器に一体化された構成のものよりも取り扱い性に優れている。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の医療器具は、ロボット手術用の医療器具として製造等実施されるものであり、産業上有用である。
【符号の説明】
【0043】
11 プラットフォーム
111、112 板状部
1121 開口部
113 筒状部
12、14、21、22 トロッカー
121、141 ハウジング
122、142 トロッカー先端部
123、143 挿入口
13 トロッカー固定具
31 体壁
311 開口部
32 体内
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2