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明細書 :虚血組織に集積するエクソソームおよびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-174573 (P2020-174573A)
公開日 令和2年10月29日(2020.10.29)
発明の名称または考案の名称 虚血組織に集積するエクソソームおよびその製造方法
国際特許分類 C12N   5/0775      (2010.01)
A61K  35/28        (2015.01)
A61P   9/10        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61K  47/62        (2017.01)
A61K  35/32        (2015.01)
A61K  38/18        (2006.01)
A61K  38/02        (2006.01)
C12N  15/12        (2006.01)
FI C12N 5/0775 ZNA
A61K 35/28
A61P 9/10
A61P 43/00 107
A61K 47/62
A61K 35/32
A61K 38/18
A61K 38/02
C12N 15/12
請求項の数または発明の数 11
出願形態 OL
全頁数 15
出願番号 特願2019-078972 (P2019-078972)
出願日 平成31年4月17日(2019.4.17)
発明者または考案者 【氏名】上野 耕司
【氏名】濱野 公一
出願人 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100156443、【弁理士】、【氏名又は名称】松崎 隆
審査請求 未請求
テーマコード 4B065
4C076
4C084
4C087
Fターム 4B065AA91X
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA02
4B065BB25
4B065CA44
4B065CA60
4C076AA95
4C076BB13
4C076CC11
4C076CC26
4C076CC29
4C076CC41
4C076FF70
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA44
4C084CA56
4C084DA16
4C084DB53
4C084DB54
4C084DB55
4C084DB57
4C084DB62
4C084MA66
4C084NA13
4C084ZA36
4C084ZC02
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB46
4C087CA04
4C087CA05
4C087CA16
4C087CA44
4C087MA66
4C087NA13
4C087ZA36
4C087ZB22
4C087ZC02
要約 【課題】 虚血組織および虚血組織周辺に集積し、虚血組織の治療に資することのできるエクソソームの提供を課題とする。
【解決手段】 S100A8、CD72、または、その両方に対するリガンドを膜表面上に提示するエクソソームを提供する。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
S100A8、CD72、または、その両方に対するリガンドを膜表面上に提示するエクソソーム。
【請求項2】
請求項1に記載のエクソソームであって、
CD72に対するリガンドを膜表面上に提示するエクソソーム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエクソソームであって、間葉系幹細胞由来のエクソソーム。
【請求項4】
請求項3に記載のエクソソームであって、歯髄幹細胞由来のエクソソーム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のエクソソームであって、
前記リガンドが、エクソソーム膜表面上に局在するタンパク質またはその一部との融合タンパク質として提示される、エクソソーム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のエクソソームであって、
前記エクソソーム膜表面上に局在するタンパク質がMFG-E8、CD9、CD63、CD81からなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質である、エクソソーム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のエクソソームであって、
前記リガンドが、TLR4、neuroplastin-β、CD36、CD-5、CD-100からなる群より選択される、エクソソーム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のエクソソームであって、
VEGF、HGF、bFGF、PDGF-BB、Angiooietin-1、IL-4からなる群より選択される少なくとも1つの成長因子を内包する、エクソソーム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のエクソソームを含む虚血組織治療剤。
【請求項10】
請求項9に記載の虚血組織治療剤を含む虚血組織治療用組成物であって、経静脈投与用である医薬組成物。
【請求項11】
S100A8、CD72、または、その両方に対するリガンドを膜表面上に提示するエクソソームの製造方法であって、
(i)S100A8、CD72、または、その両方に対するリガンドとエクソソーム膜表面上に局在するタンパク質またはその一部との融合タンパク質を発現する細胞を培養する工程と、
(ii)培養後の培養上清から、前記融合タンパク質を含むエクソソームを回収する工程と
を含む、エクソソームの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、虚血組織に集積するエクソソームおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の細胞移植による治療効果は、移植された細胞が、損傷を受けている組織に生着して分化することで組織を再生するのではなく、移植された細胞が分泌する成長因子による血管新生や、移植された細胞が分泌するケモカイン又はサイトカインにより誘導されたパラクライン効果による組織再生であると報告されており、移植された細胞はエクソソームを分泌することから、エクソソームもパラクライン効果の一つである。
日本で実施されている細胞移植に用いる細胞は、全て患者由来の細胞である自家細胞である。そのため、患者ごとに細胞を培養し、その細胞ごとに品質(無菌試験・エンドトキシン試験・マイコプラズマ否定試験)を検査する必要があるため、コストが高くなることが自家細胞移植のデメリットである。ここで、エクソソームは免疫原性がないと報告されており(非特許文献1)、他家の若い幹細胞が産生するエクソソームを利用した損傷組織の治療方法が検討されている。
【0003】
近年、エクソソームはタンパク、mRNA、microRNAを内包しており、間葉系幹細胞由来のエクソソームの投与が、ラット心筋梗塞モデルにおいて炎症反応を抑制し(非特許文献2)、更に、血管新生を促すこと、また、ヒトCD34陽性幹細胞由来のエクソソームの投与が、免疫不全下肢虚血マウスにおいて、血管新生を誘導することが報告されており(非特許文献3)、また例えば特許文献1は、免疫疾患の治療のためにヒト脂肪幹細胞由来のエクソソームを用いることができる点を示唆している。
【0004】
下肢動脈硬化による狭窄または閉塞が原因で下肢血流が低下することにより生じる疾患として、下肢閉塞性動脈硬化症が知られている。下肢閉塞性動脈硬化症がより進行すると重症下肢虚血肢(CLI)となり、動脈閉塞性疾患に起因する慢性虚血性安静時疼痛、潰瘍、壊疽の症状が生じる。重症虚血肢は治療されなければ下肢切断にいたる病態とされ、重症下肢虚血では6カ月以内に30%が下肢切断に至り,20%が死亡に至るとされている予後不良な疾患で、早期発見、早期治療が必要な疾患である。
重症下肢虚血治療の第一選択は、ステントを使用した血管内治療やバイパス手術であるが、症例によっては、それらの血行再建手術を実施できない患者も存在する。また、手術が成功しても、末梢循環疾患が改善されない症例も存在し、年間約4万人が指又は下肢切断を余儀なくされており、有効な治療法の確立が求められている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特表2018-531979号公報
【0006】

【非特許文献1】Xiaohua Zhu et al., “Comprehensive toxicity and immunogenicity studies reveal minimal effects in mice following sustained dosing of extracellular vesicles derived from HEK293T cells” J Extracell Vesicles. 2017, Jun 6;6(1):1324730
【非特許文献2】Xiaomei Tenga et al. “Mesenchymal Stem Cell-Derived Exosomes Improve the Microenvironment of Infarcted Myocardium Contributing to Angiogenesis and Anti-Inflammation” Cell Physiol Biochem 2015; 37: 2415-2424
【非特許文献3】Prabhu Mathiyalagan et al. “Angiogenic Mechanisms of Human CD34+ Stem Cell Exosomes in the Repair of Ischemic Hindlimb” Circ Res. 2017; 120: 1466-1476
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これまでに報告されている重症下肢虚血に対するエクソソームを用いた研究は、免疫不全下肢虚血マウスに対してヒトCD34陽性幹細胞由来のエクソソームを筋注により投与した上記非特許文献3の報告のみである。
臨床応用時の患者への侵襲低減を考慮すると、虚血組織特異的に集積するエクソソームを開発することが出来れば、例えば、経静脈投与で免疫原性のないエクソソームを繰り返し投与することで治療効果の高いcell-free再生医療が可能になると考えた。そこで本発明は、虚血組織特異的に集積するエクソソームの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、エクソソームの膜表面に虚血組織に特異的に発現している細胞表面抗原に対するリガンドを発現させることで、経静脈投与したエクソソームを虚血組織に集積させることができるのではないかと考えた。また、本発明者らはエクソソームの血管新生能にも着目し、当該虚血組織への集積が、血管新生を促すことができるのではないかと考えた。
本発明者らは上記課題を解決するため、虚血組織において特異的に発現している細胞表面抗原を同定し、当該細胞表面抗原に対するリガンドを提示するエクソソームを作製したところ、当該エクソソームを虚血組織およびその周辺組織に集積させることに成功した。
【0009】
本発明は上記知見に基づき完成された発明であり、以下の態様を含む:
本発明の一態様は、
〔1〕S100A8、CD72、または、その両方に対するリガンドを膜表面上に提示するエクソソームに関する。
また、本発明に係るエクソソームの一実施の形態は、
〔2〕上記〔1〕に記載のエクソソームであって、
CD72に対するリガンドを膜表面上に提示することを特徴とする。
また、本発明に係るエクソソームの一実施の形態は、
〔3〕上記〔1〕または〔2〕に記載のエクソソームであって、間葉系幹細胞由来であることを特徴とする。
また、本発明に係るエクソソームの一実施の形態は、
〔4〕上記〔3〕に記載のエクソソームであって、歯髄幹細胞由来であることを特徴とする。
また、本発明に係るエクソソームの一実施の形態は、
〔5〕上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のエクソソームであって、
前記リガンドが、エクソソーム膜表面上に局在するタンパク質またはその一部との融合タンパク質として提示されることを特徴とする。
また、本発明に係るエクソソームの一実施の形態は、
〔6〕上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のエクソソームであって、
前記エクソソーム表面上に局在するタンパク質がMFG-E8、CD9、CD63、CD81からなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質であることを特徴とする。
また、本発明に係るエクソソームの一実施の形態は、
〔7〕上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載のエクソソームであって、
前記リガンドが、TLR4、neuroplastin-β、CD36、CD-5、CD-100からなる群より選択されることを特徴とする。
また、本発明に係るエクソソームの一実施の形態は、
〔8〕上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載のエクソソームであって、
VEGF、HGF、bFGF、PDGF-BB、Angiooietin-1、IL-4からなる群より選択される少なくとも1つの成長因子を内包することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は別の態様において、
〔9〕上記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載のエクソソームを含む虚血組織治療剤に関する。
また、本発明は別の態様において、
〔10〕上記〔9〕に記載の虚血組織治療剤を含む虚血組織治療用組成物であって、経静脈投与用である虚血組織治療用組成物に関する。
また、本発明は別の態様において、
〔11〕S100A8、CD72、または、その両方に対するリガンドを膜表面上に提示するエクソソームの製造方法であって、
(i)S100A8、CD72、または、その両方に対するリガンドとエクソソーム膜表面上に局在するタンパク質またはその一部との融合タンパク質を発現する細胞を培養する工程と、
(ii)培養後の培養上清から、前記融合タンパク質を含むエクソソームを回収する工程と
を含む、エクソソームの製造方法に関する。
また、本発明は別の態様において、
〔12〕S100A8、CD72、または、その両方に対するリガンドを膜表面上に提示するエクソソームを対象に投与することを含む、虚血に関連する状態を有する対象の治療方法に関する。
また、本発明は別の態様において、
〔13〕虚血に関連する状態を有する対象の治療において用いられるS100A8、CD72、または、その両方に対するリガンドを膜表面上に提示するエクソソーム。
また、本発明は別の態様において、
〔14〕虚血組織治療剤の製造におけるS100A8、CD72、または、その両方に対するリガンドを膜表面上に提示するエクソソームの使用に関する。
【発明の効果】
【0011】
これまでの基礎研究では、動物モデルにおいて、エクソソームの局所投与は血管新生を誘導することが報告されているが、局所投与ではこれまでの細胞移植の方法と変わりはなく、エクソソームの特徴を活かしきれていない。
エクソソームは免疫原性がないことから、他家細胞由来のエクソソームを利用可能である。そして、エクソソームは体内において、遠隔臓器の情報伝達ツールであると考えられていることから、虚血組織および虚血組織周辺に発現している細胞表面抗原に対するリガンドをエクソソームの膜表面に持たせることで、エクソソームを体内に投与すると、体内を循環して、虚血組織および虚血組織周辺に集積することが予想される。本発明に係るエクソソームによれば、虚血組織および虚血組織周辺に当該エクソソームを集積させることが可能となる。そして、エクソソームの持つ、血管新生能力により、虚血組織および虚血組織周辺で血管が新生されることで、循環障害から回復できると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、下記実施例1で試験した歯髄幹細胞由来エクソソームを虚血肢に投与した際の血流量を示す画像(図1左)および健側肢との血流比を示すグラフ(図1右)である。グラフ中、血流比は健側肢(右足)の値を1.0にした時の、虚血肢(左足)の相対値を示している。
【図2】図2は、下記実施例3で試験した虚血組織および非虚血組織のPCR array(Angiogenesis、Cell Surface Markers、およびChemokines & Receptors)の結果を示すヒートマップである。
【図3】図3は、下記実施例3で試験した虚血組織および非虚血組織のPCR array結果のうち、虚血組織に対して5倍以上の発現量が増加していた非虚血組織の遺伝子について発現比を示すグラフである。
【図4】図4は、下記実施例4で試験したマウス虚血下肢組織および健側下肢組織におけるCD72の発現量を示すグラフである。左のグラフから、結紮より1日、4日、7日後の組織におけるCD72発現量の測定結果を示す。
【図5】図5は、下記実施例9で試験したマウス虚血下肢組織に対するCD-5またはCD-100を提示するエクソソーム投与の集積結果を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は一態様において、S100A8、CD72、または、その両方に対するリガンドを膜表面上に提示するエクソソームを提供する。
本明細書において「エクソソーム」とは、細胞由来の膜質二重膜からなる小胞を指す。エクソソームはほとんどの細胞種から放出され、多くの体液で見つけることができ、mRNA若しくはmicroRNAなどの核酸や、タンパク質を内包している。本発明に係るエクソソームは、好ましい実施の形態において、間葉系幹細胞由来のエクソソームである。間葉系幹細胞由来のエクソソームは、抗炎症作用や創傷の治癒促進効果を有する点、間葉系幹細胞は無血清培養可能であるためエクソソームを回収しやすい点、また間葉系幹細胞はがん化のリスクがほとんどないため、そのエクソソームも安全性が高いことが示唆され、種々の成長因子を内包している点において好ましい。さらに、本発明に係るエクソソームは、他の好ましい実施の形態において、CD9、CD63、CD81などのテトラスパニンファミリーのタンパク質のいずれかを膜表面に発現しているエクソソームである。本発明に係るエクソソームのサイズとしては、例えば直径20~140nmを挙げることができる。

【0014】
本明細書において「間葉系幹細胞」とは骨芽細胞、軟骨芽細胞及び脂肪芽細胞等の間葉系の細胞全て又はいくつかへの分化が可能な幹細胞又はその前駆細胞の集団を意味する。より具体的には、歯髄幹細胞、骨髄由来幹細胞、脂肪組織由来幹細胞等が挙げられる。本発明の好ましい実施形態としては、間葉系幹細胞は歯髄幹細胞であり、歯髄幹細胞由来のエクソソームを好適に用いることができる。歯髄幹細胞は乳歯から単離可能であるため、細胞採取の方法として低侵襲であり、健康で若いドナーからの細胞であることから、そのエクソソームには細胞増殖に必要な成長因子、microRNA等が多く内包されている可能性が高く、これらの点において歯髄幹細胞由来のエクソソームを用いることが好ましい。
本発明のエクソソームを調製するために用いる細胞(間葉系幹細胞、歯髄幹細胞など)の由来はヒトに限られず、その他の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、サル、ヒツジ、ウシ、ウマ)であってもよい。

【0015】
本明細書において「S100A8」とは、炎症関連の機能を有するタンパク質である。本発明者らは、S100A8が虚血組織において高発現していることを見出した。本発明のエクソソームは、S100A8に対するリガンドを膜表面上に提示しているため、S100A8を高発現している組織や細胞へ集積することが可能である。「S100A8」は一実施の形態において、マウスおよびヒトにおけるS100A8である。マウスにおけるS100A8としてはアクセッション番号NP_038678.1で特定されるポリペプチド(配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド)であり、ヒトにおけるS100A8としてはアクセッション番号NP_002955.2、NP_001306127.1、NP_001306130.1、NP_001306125.1、又はNP_001306126.1で特定されるポリペプチド(配列番号2~6に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド)である。
また、本明細書において「CD72」とは、免疫応答の機能を有するタンパク質である。本発明者らは、CD72が虚血組織において高発現していることを見出した。本発明のエクソソームは、CD72に対するリガンドを膜表面上に提示しているため、CD72を高発現している組織や細胞へ集積することが可能である。「CD72」は一実施の形態において、マウスおよびヒトにおけるCD72である。マウスにおけるCD72としてはアクセッション番号NP_031680.2で特定されるポリペプチド(配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド)であり、ヒトにおけるCD72としてはアクセッション番号NP_001773.1で特定されるポリペプチド(配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド)である。

【0016】
ここで本明細書において「S100A8」および「CD72」には、虚血組織または細胞において高発現する限りにおいて、上記のポリペプチドに対するパラログやオルソログ、その他の変異体も含む。例えば、配列番号1~8のいずれかに示されるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、付加及び/又は逆位等の変異が加えられたアミノ酸配列であってもよい。
ここで、1個または数個とは、好ましくは1~30個、より好ましくは1~20個、さらに好ましくは1~10個、特に好ましくは1~5個である。かかる変異としては保存的変異が好ましく、代表的なものとしては保存的置換である。保存的置換とは、置換部位のアミノ酸の化学的性質(疎水性アミノ酸、極性アミノ酸、塩基性アミノ酸など)が類似するアミノ酸への置換をいう。上記のようなアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、または逆位等には、遺伝子が由来する微生物の個体差、種の違いに基づく場合などの天然に生じる変異(mutant又はvariant)によって生じるものも含まれる。

【0017】
本明細書において「S100A8またはCD72に対するリガンド」とは、虚血組織において発現しているS100A8またはCD72に特異的に高い親和性を有するも分子である。このようなリガンドはエクソソームの膜表面に提示可能なリガンドであって、当該エクソソームをS100A8またはCD72が発現する組織または細胞へ集積可能な分子であれば特に制限されず、公知のリガンドやS100A8またはCD72に対して親和性を有する分子としてスクリーニングの結果得られた分子であってもよい。S100A8に対するリガンドとしては、以下に制限されないが、例えば、TLR4、neuroplastin-β、CD36、を挙げることができ、また、CD72に対するリガンドとしては、以下に制限されないが、例えば、CD-5、CD-100を挙げることができる。CD-5およびCD-100は、一実施の形態において、ヒトにおけるCD-5またはCD-100である。ヒトCD-5またはヒトCD-100は、それぞれアクセッション番号NP_055022.2またはNP_006369.3で特定されるポリペプチド(配列番号9または10に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド)である。「CD-5」および「CD-100」は、CD72に特異的な親和性を有する限りにおいて、上記のポリペプチドに対するパラログやオルソログ、その他の変異体も含む。例えば、配列番号配列番号9または10に示されるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、付加及び/又は逆位等の変異が加えられたアミノ酸配列であってもよい。

【0018】
本発明に係るエクソソームは、上記リガンドをその膜表面上に提示する。リガンドをエクソソームの膜表面上に提示させる方法は、例えば、エクソソームを回収する特定の細胞において、エクソソーム膜表面上に局在するタンパク質またはその一部とリガンドとの融合タンパク質を発現させることにより、当該細胞より細胞外へ放出されたエクソソームの膜表面上に融合タンパク質としてリガンドを局在させることができる。このとき、エクソソームの膜表面上に提示するリガンドは、S100A8に対するリガンド、CD72に対するリガンド、またはその両方であってもよい。

【0019】
「エクソソーム膜表面上に局在するタンパク質」としてはエクソソーム膜表面上に局在を示し、リガンドとの融合タンパク質として発現された際に当該リガンドをエクソソーム膜表面上に提示できるタンパク質であればよく、例えば、MFG-E8を挙げることができる。好ましい一実施の形態において、エクソソーム膜表面上に局在するタンパク質はMFG-E8のC1C12ドメインであるXStampである。エクソソーム膜表面上に局在するタンパク質との融合タンパク質をエクソソーム表面上に提示する手法は、下記実施例に示すような公知のキットおよび手法に準じて作製することができる。

【0020】
また、本発明に係るエクソソームは血管新生を促す成長因子を内包することが好ましい。エクソソームに内包される血管新生を促す成長因子としては、以下に制限されないが、例えば、VEGF、HGF、bFGF、PDGF-BB、Angiooietin-1、および、IL-4などを挙げることができる。一実施の形態において本発明に係るエクソソームは、VEGF、HGF、bFGF、PDGF-BB、Angiooietin-1、および、IL-4からなる群より選択される少なくとも1つの成長因子を内包する。さらに好ましい実施の形態において本発明に係るエクソソームは、VEGF、HGF、bFGF、PDGF-BB、Angiooietin-1、および、IL-4の全ての成長因子を内包する。これらの成長因子は、エクソソームを放出する細胞が内在的に発現している成長因子であってもよく、または、遺伝子導入などにより導入された外来遺伝子由来の成長因子や組み換えタンパク質であってもよい。

【0021】
本発明は一態様において、S100A8、CD72、または、その両方に対するリガンドを膜表面上に提示するエクソソームからなる虚血組織治療剤を提供する。
本明細書において「虚血組織」とは、血流が低下した状態にある組織をいう。虚血組織においては、血流の低下に伴って組織の崩壊が生じる。本発明に係る虚血組織治療剤は、このような虚血組織において血管新生を促し血流の改善効果を奏するものである。治療対象疾患としては、例えば、末梢の血管疾患、閉塞性動脈硬化症など、心疾患、狭心症・心筋梗塞など、腎疾患、腎炎など、肺疾患、神経疾患等があげられるが、その他血管新生の誘導が有効な疾患であれば特に制限はない。治療対象は虚血組織以外にも、厳密には必ずしも虚血組織とは言えなくても、機能の良い血管が新たに形成または再編成されることで治療効果が得られるような病態や疾病をすべて含んでも良い。

【0022】
また、本発明は一態様において、S100A8、CD72、または、その両方に対するリガンドを膜表面上に提示するエクソソームからなる虚血組織治療剤を含む医薬組成物を提供する。本発明に係る医薬組成物は、虚血組織治療用医薬組成物である。「医薬組成物」という用語は、本明細書で使用する場合、治療上有効量の本発明に係る虚血組織治療剤および少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤を含んでなる組成物を指す。医薬組成物には、賦形剤の他、薬学的に許容可能な担体、希釈剤、ビヒクルなどを含まれていても良い。
本明細書において「薬学的に許容可能な賦形剤」または「薬学的に許容可能な担体」、「薬学的に許容可能な希釈剤」または「薬学的に許容可能なビヒクル」とは、任意の毒性のない固体、半固体または液体のフィラー、希釈剤、封入材料または製剤助剤を指す。薬学的に許容可能な担体は、使用された用量および濃度で被験者にとって本質的に毒性が無く、処方物の他の成分と相溶性を有する。好適な担体には、限定することなく、水、デキストロース、グリセロール、食塩水、エタノールおよびそれらの組合せが含まれる。担体は、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、または処方物の効果を増強するアジュバントなどの追加の薬剤が含まれていてもよい。

【0023】
特に好ましい実施態様では、本発明の医薬組成物は、直腸、鼻、口腔、膣、皮下、皮内、静脈内、腹腔内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、くも膜下腔内、病巣内もしくは頭蓋内の経路を介した投与のために製剤化される。また、本発明による医薬組成物は、例えば溶液、懸濁液および乳液などの注入可能な形態として調製することができる。
好ましい実施の形態において、本発明に係る医薬組成物は、経静脈投与用である虚血組織治療用組成物である。本発明により提供されるエクソソームによれば、経静脈投与によっても虚血組織およびその周辺組織への集積を可能とし、これにより効果的な虚血組織の治療が可能となる。すなわち、虚血組織および虚血組織周辺の血流を改善する治療薬として利用することが可能である。
細胞移植治療は全身麻酔または腰椎麻酔下で数十から100カ所に細胞が筋注されるが、本発明により提供されるエクソソームを用いた治療は、経静脈でエクソソームを投与して、虚血組織にエクソソームが集積して血管新生を促す治療法であり、低侵襲である。また、現在の細胞移植は単回投与であるが、経静脈投与のエクソソーム治療は複数回実施可能であることから、強力な血管新生を促すことが可能である。

【0024】
また、本発明は一態様において、S100A8、CD72、または、その両方に対するリガンドを膜表面上に提示するエクソソームの製造方法を提供する。当該エクソソームの製造方法は、下記(i)および(ii)の工程を含む:
(i)S100A8、CD72、または、その両方に対するリガンドとエクソソーム膜表面上に局在するタンパク質またはその一部との融合タンパク質を発現する細胞を培養する工程、
(ii)培養後の培養上清から、前記融合タンパク質を含むエクソソームを回収する工程。

【0025】
ここで、「(i)S100A8、CD72、または、その両方に対するリガンドとエクソソーム膜表面上に局在するタンパク質またはその一部との融合タンパク質を発現する細胞を培養する工程」はS100A8、CD72、または、その両方に対するリガンドとエクソソーム膜表面上に局在するタンパク質またはその一部との融合タンパク質が膜表面上に提示されたエクソソームを培養細胞から培養液中に放出させる工程である。
このような細胞は、S100A8、CD72、または、その両方に対するリガンドとエクソソーム膜表面上に局在するタンパク質またはその一部との融合タンパク質をコードするベクターを、エクソソームを産生させるための細胞へ導入することにより調製することができる。このような細胞の調製方法は公知の手法に順じて行うことができる。例えば、以下の方法に限定されないが、当該融合タンパク質をコードするレンチウイルスベクターをポリブレンとともに共培養して細胞に接触させることにより、当該融合タンパク質を内包したエクソソームを産生する細胞を調製することができる。当該融合タンパク質をコードするレンチウイルスベクターの調製方法も当業者に公知である。
エクソソームを産生させるための培養は、通常の細胞培養と同様の条件にて行うことができる。培養液は、培養する細胞ごとに細胞培養に適した培養液を適宜選択すればよい。エクソソームを細胞に産生させる培養は、特に制限されないが、3~14日程度行うことが好ましい。

【0026】
本発明に係るエクソソームの製造方法は、上記(i)の工程の後、「(ii)培養後の培養上清から、前記融合タンパク質を含むエクソソームを回収する工程」を含む。
培養上清からエクソソームを回収する方法は、培地を遠心分離機にかけて、細胞および夾雑物を除去して上澄みを回収することによって得られる。当該遠心分離は、例えば、1000 rpm~3000rpmで2~10分の条件で行うことができる。その後、市販のエクソソームを単離するキット(Total Exosome Isolation(ThermoFisherScientific))を用いてさらに精製したエクソソームを回収してもよいし、超遠心分離(例えば、100.000g~1.000.000g、30分~12時間)によりエクソソームを精製・回収してもよい。

【0027】
本発明は一態様として、S100A8、CD72、または、その両方に対するリガンドを膜表面上に提示するエクソソームを対象に投与することを含む、虚血に関連する状態を有する対象の治療方法を提供する。
本明細書において「虚血に関連する状態」とは、上記に列挙する具体的な虚血性疾患(末梢の血管疾患、閉塞性動脈硬化症など、心疾患、狭心症・心筋梗塞など、腎疾患、腎炎など、肺疾患、神経疾患等)に罹患している状態に加えて、機能の良い血管が新たに形成または再編成されることで治療効果が得られるような病態や疾病に罹患している状態を含む。
対象に投与されるエクソソームは虚血組織治療剤であってもよく、虚血組織治療用組成物の形態としてもよい。対象に投与されるエクソソームは、治療有効量を投与することができる。治療有効量は、研究者、医師又は他の臨床医などが求める、組織系、動物又はヒトにおける生物学的又は医薬的応答(治療を受ける疾患又は障害の症状の緩和又は改善を含める)を誘発する、S100A8、CD72、または、その両方に対するリガンドを膜表面上に提示するエクソソームの量である。生物学的又は医薬的応答は以下に限定されないが、例えば、虚血組織における血流の改善であり、虚血組織における血流の改善が観察可能なレベルでのS100A8、CD72、または、その両方に対するリガンドを膜表面上に提示するエクソソームの量とすることができる。

【0028】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0029】
(実施例1. 虚血肢に対するエクソソーム投与の血流改善効果)
本実施例では、虚血肢を有するマウスに対してエクソソームを投与することにより、エクソソーム投与による虚血組織における血流への影響を評価した。具体的には、以下のようにして試験および評価を行った。
Balb/cマウスの左大腿部の動静脈を結紮し、左側の下肢に虚血肢を有する下肢虚血マウスを作製した。結紮から1日後、下肢虚血マウスの左大腿部に対してエクソソーム(30μg)を筋注により投与した。投与したエクソソームは下記のようにして調製したものを用いた。歯髄幹細胞(ロンザジャパン社)は、CiMS-sAF (#87-072 株式会社細胞科学研究所)を2%含有するCiMS-BM(#87-070 株式会社細胞科学研究所)の培養液を用いて5日間培養した。5日間の培養後、その培養上清を遠沈管に移し、2000 rpm、5分で遠心処理した。遠心後の培養上清から、Total Exosome Isolation (from cell culture media) (ThermoFisherScientific)を用いてエクソソームを回収し、PBSで懸濁した。PBS懸濁液中のタンパク濃度は、MicroBCA Protein Assay kit (#23235 ThermoScientific)を用いて定量した。また、対照群の下肢虚血マウスにはエクソソームの代わりに生理食塩水を筋注より投与した。
エクソソームの投与から7日後、下肢虚血マウスの虚血肢と健側肢における血流をlaser speckle perfusion imaging system (OMEGA ZONE, Omega Wave)で測定すると共に虚血肢と健側肢との血流比を算出した。結果を図1に示す。生理食塩水を投与した対照群では健側肢と比較して血流量が低下していた。一方、エクソソーム投与群では、健側肢と比較して同程度まで血流量が改善していた。
【実施例】
【0030】
(実施例2. 重症下肢虚血組織および非虚血組織からのRNA抽出)
閉塞性動脈硬化症を患い、重症下肢虚血組織及び虚血周辺組織を含む箇所を切断した患者4名より、それぞれ重症下肢虚血組織、虚血周辺組織、および、非虚血組織(切断した箇所近傍)を採取した。採取したそれぞれの組織はRNAlater RNA Stabilization Reagent(キアゲン社)に浸し、-80℃で凍結保存した。凍結保存した組織からRNeasy Mini Kit(キアゲン社)を用いてtolal RNAを抽出した。
【実施例】
【0031】
(実施例3. PCR array解析による重症下肢虚血組織に特異的に発現している細胞表面抗原の同定)
上記の実施例2.で抽出したtotal RNAからRT2 First Strand Kit(キアゲン社)を用いてcDNAを作製した。
得られたcDNAを用いてmRNAの発現レベルをPCR array解析し、重症下肢虚血組織に特異的に発現している細胞表面抗原を同定した。PCR arrayには、RT SYBR Green ROX qPCR MastermixならびにPCR array(キアゲン社)Angiogenesis(# PAHS-024Z)、Cell Surface Markers(# PAHS-055Z)、およびChemokines & Receptors(# PAHS-022Z)を用いた。
PCR arrayのヒートマップの結果を図2に示す。またPCR arrayデータから虚血組織および虚血周辺組織において、非虚血組織よりも発現が5倍以上上昇した遺伝子としてS100A8、CD72、CXCL1、SERPLNE1、および、CXCL5の5つの遺伝子を同定することができた。また上記5つの遺伝子について、虚血周辺組織と非虚血組織との発現比をグラフ化したところ(図3)、特にS100A8およびCD72の発現の差が顕著に高かった。
【実施例】
【0032】
(実施例4. マウス虚血下肢組織におけるCD72の発現量の評価)
Balb/cマウス(雄)の左大腿動脈を外科的手法で結紮した。結紮して、1、4、7日後のマウスの両側の大腿部の一部の組織を採取した。左大腿より採取した組織を虚血下肢組織とし、右大腿より採取した組織を健側下肢組織とした。
採取した各組織からRNeasy Mini Kit(キアゲン社)を用いてtotal RNAを抽出し、PrimeScript(登録商標) RT Master Mix (Perfect Real Time)(タカラバイオ社)を用いてcDNAを作製した。SYBR(登録商標) Select Master Mix(ThermoFisherScientific)の試薬を用いてqPCRをStepOnePlus(ThermoFisherScientific)で実施した。CD72遺伝子および内在性コントトール遺伝子としてのACTB遺伝子に対するプライマーを下記表1に示す。
【表1】
JP2020174573A_000002t.gif
結果を図4に示す。図4に示すように、虚血組織側におけるCD72の発現は、健側下肢組織と比較して増加していた。また、結紮から時間が経過するごとに虚血組織側におけるCD72の発現量は顕著な増加を示した。
【実施例】
【0033】
(実施例5. CD72のリガンドであるCD5とCD100のクローニング)
CD72に対するリガンドとして知られているCD5およびCD100をエクソソームの膜表面上に発現させることで、虚血組織へのエクソソーム集積させることを着想した。そのための準備として、CD5およびCD100のクローニングを行った。
ヒト健常者から血液を採血し、BDバキュティナ採血管(日本ベクトン・ディッキンソン社)を用いて末梢血単核球を分離した。その末梢血単核球からRNeasy Mini Kit(キアゲン社)を用いてtotal RNAを抽出し、PrimeScript(登録商標) RT Master Mix (Perfect Real Time)(タカラバイオ社)を用いてcDNAを作製した。得られたcDNAをテンプレートとして、TaKaRa Ex Taq(登録商標)(タカラバイオ社)と以下のプライマー(表2)を用いて、CD5およびCD100を増幅した。
【表2】
JP2020174573A_000003t.gif
【実施例】
【0034】
得られたPCR産物は、DNA Ligation Kit <Mighty Mix>(タカラバイオ社)を用いて、T-Vector pMD20(タカラバイオ社)に挿入した。得られたプラスミドをE.coliに導入し、アンピシリン(100 μg/mL)下で増えたE.coliから、QIAprep Spin Miniprep Kit (キアゲン社)を用いてプラスミドを抽出した。
抽出したプラスミドは、制限酵素であるNheI(タカラバイオ社)とEcoRI(タカラバイオ社)で処理し、切り出されたDNA配列は、XStamp cloning and expression lentivector MSCV-Leader-MCS-C1C2-EF1-Puro (System Biosciences, LLC、#XSTP710PA-1)に挿入した。得られたプラスミドをE.coliに導入し、アンピシリン(100 μg/mL)下で増えたE.coliから、PureLinkTM HiPure Plasmid Midiprep Kit(インビトロジェン社)を用いてプラスミドを抽出した。
【実施例】
【0035】
(実施例6. Xpack-Luciferaseウイルス液の作製)
ルシフェラーゼを目的の細胞由来エクソソームに導入するために、エクソソーム膜の内側を標的とするペプチド配列であるXPackとLuciferaseとの融合タンパク質を発現するレンチウイルスベクターを含むウイルス液を下記のように調製した。
ウイルス液を産生させるための293T細胞(RIKEN BRC)は、5%FBS(ThermoFisherScientific)を含むDMEM(ThermoFisherScientific)10mLの培養液で、10 cm dishを用いて培養した。培養により細胞密度が、70~90%の状態になったときに、XPack MSCV-XP-Luciferase-EF1-Puro Expression Lentivector(System Biosciences, LLC、#XPAK732PA-1)およびpPACKH1 Packaging Plasmid Mix (SBI社、# LV500A-1)のプラスミドを、X-tremeGENETM HP DNA Transfection Reagent(ロッシュ社)およびOpti-MEM(登録商標) I Reduced Serum Media(ThermoFisherScientific)を用いて293T細胞に導入した。プラスミドを293T細胞に導入後、一晩培養した後に培地交換を実施した。それから更に3日間培養した培養上清をウイルス液として回収した。
【実施例】
【0036】
(実施例7. XStamp-CD5およびXStamp-CD100ウイルス液の作製)
CD5およびCD100を目的の細胞由来エクソソームに導入するために、エクソソーム膜表面に局在するMFG-E8のC1C12ドメインであるXStampとCD5またはCD100との融合タンパク質を発現するレンチウイルスベクターを含むウイルス液を下記のように調製した。
ウイルス液を産生させるための293T細胞(RIKEN BRC)は、5%FBS (ThermoFisherScientific)を含むDMEM (ThermoFisherScientific)10mLの培養液で、10 cm dishを用いて培養した。培養により細胞密度が、70~90%の状態になったときに、(1)XStamp (XStamp cloning and expression lentivector MSCV-Leader-MCS-C1C2-EF1-Puro (SBI社、#XSTP710PA-1)およびpPACKH1 Packaging Plasmid Mix (SBI社、# LV500A-1)、(2)XStamp-CD5(上記実施例5.で作製したXStamp-CD5が挿入されたプラスミドおよびpPACKH1 Packaging Plasmid Mix (SBI社、# LV500A-1))、または、(3)XStamp-CD100(上記実施例4.で作製したXStamp-CD100が挿入されたプラスミドおよびpPACKH1 Packaging Plasmid Mix (SBI社、# LV500A-1))の3つのうちのいずれかのプラスミドの組み合わせを、X-tremeGENETM HP DNA Transfection Reagent(ロッシュ社)およびOpti-MEM(登録商標) I Reduced Serum Media(ThermoFisherScientific)を用いて293T細胞に導入した。プラスミドを293T細胞に導入後、一晩培養した後に培地交換を実施した。それから更に3日間培養した培養上清をウイルス液として回収した。
【実施例】
【0037】
(実施例8. CD-5またはCD-100を含むエクソソームの調製)
歯髄幹細胞が分泌する培養上清中の成長因子および培養上清中に分泌されたエクソソーム内の成長因子をR&D Systems ELISA Kitsで測定すると、歯髄幹細胞由来エクソソーム内にはVEGF等の血管新生に関与する成長因子が内包されていた。そこで本実施例においては、歯髄幹細胞由来のエクソソームを用いた。歯髄幹細胞(ロンザジャパン社)は、上記実施例6.で作製したXpack-Luciferaseのウイルス液とポリブレン10μg/mlで3日間共培養し、Xpack-Luciferaseを産生する歯髄幹細胞を調製した。共培養の培養液にはADSC-4(コージンバイオ社)を用いた。
次いで、Xpack-Luciferaseを産生する歯髄幹細胞は、上記実施例7.で作製したXStamp、XStamp-CD5、XStamp-CD100のそれぞれのウイルス液およびポリブレン10μg/mlの存在下で3日間共培養することで、エクソソームの膜表面に特異的な分子を提示するエクソソームを産生する歯髄幹細胞を調製した。
共培養後さらに3日間培養を行い、更に、その歯髄幹細胞の培養液を交換して4日後の培養上清を遠沈管に移し、2000 rpm、5分で遠心した。その遠心後の培養上清から、Total Exosome Isolation (from cell culture media) (ThermoFisherScientific)を用いて、エクソソームを回収し、PBSで懸濁した。回収したエクソソームの濃度は、CD9 / CD63 ELISA キット (ヒト由来エクソソーム定量用)(コスモバイオ社)を用いて定量(80~150 pg/mL)した。
【実施例】
【0038】
(実施例9. マウス虚血下肢組織に対するCD-5またはCD-100を含むエクソソーム投与の評価)
Balb/cマウス(雄)の左大腿動脈を外科的手法で結紮した。結紮して、6日後のマウスの尾静脈から上記実施例8.で作製したエクソソーム(マウス1匹に10pg)を投与した。エクソソームを投与して24時間後に、マウス1匹にD-Luciferin 3mg(住商ファーマインターナショナル株式会社)を腹腔内に投与した。D-Luciferin投与から5分後に、IVIS imaging system(パーキンエルマー社)で露光時間5分間ルシフェラーゼを測定した。
その結果、膜表面にCD5とCD100を提示させたエクソソームは、動脈の結紮に作製された虚血組織に集積しているのが観察された(図5)。一方、Xstampのみを提示するエクソソームは虚血組織への集積を観察できなかった。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4