TOP > 国内特許検索 > ヘテロ元素含有グラフェン > 明細書

明細書 :ヘテロ元素含有グラフェン

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和2年10月22日(2020.10.22)
発明の名称または考案の名称 ヘテロ元素含有グラフェン
国際特許分類 C01B  32/182       (2017.01)
FI C01B 32/182
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 32
出願番号 特願2019-545161 (P2019-545161)
国際出願番号 PCT/JP2018/036399
国際公開番号 WO2019/066013
国際出願日 平成30年9月28日(2018.9.28)
国際公開日 平成31年4月4日(2019.4.4)
優先権出願番号 2017190683
優先日 平成29年9月29日(2017.9.29)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】齋藤 永宏
出願人 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
個別代理人の代理人 【識別番号】110001070、【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
審査請求
テーマコード 4G146
Fターム 4G146AA01
4G146AA15
4G146AB07
4G146AC01A
4G146AC02A
4G146AC11A
4G146AC11B
4G146AC12A
4G146AC13A
4G146AC13B
4G146AC15A
4G146AC15B
4G146AC16A
4G146AC16B
4G146AC17A
4G146AC17B
4G146AC20B
4G146AC27A
4G146AC27B
4G146AD28
4G146AD35
4G146BA11
4G146BA12
4G146BA40
4G146BB04
4G146BC16
要約 課題は、結晶性の高いヘテロ元素含有グラフェンを提供することである。ここに開示されるヘテロ元素含有グラフェンは、炭素(C)と、ヘテロ元素(X)として窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、イオウ(S)、ホウ素(B)、およびケイ素(Si)からなる群から選択される少なくとも1種の元素と、を含む。そして、制限視野電子回折において、直方晶系および六方晶系のいずれかに属し、単結晶の対称性を備えるスポットが観測される。
特許請求の範囲 【請求項1】
制限視野電子回折において、直方晶系および六方晶系のいずれかに属し、単結晶の対称性を備えるスポットが観測され、
炭素(C)と、ヘテロ元素(X)として窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、イオウ(S)、ホウ素(B)、およびケイ素(Si)からなる群から選択される少なくとも1種の元素と、を含むヘテロ元素含有グラフェン。
【請求項2】
前記スポットは、前記直方晶系に属し、入射方向を[101]とする電子回折像であって、逆格子点11-1、-111、-202、1-1-1、20-2および-1-11の配列を含むことを特徴とする、請求項1に記載のヘテロ元素含有グラフェン。
【請求項3】
X線回折において、(002)面からの回折ピークの半値幅が3度以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載のヘテロ元素含有グラフェン。
【請求項4】
X線回折において、(002)面からの回折ピーク強度I(002)に対する(101)面からの回折ピーク強度I(101)の比(I(101)/I(002))が0.1以上であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のヘテロ元素含有グラフェン。
【請求項5】
X線回折において、(002)面の面間隔は3.5Å以下であることを特徴とする、請求項3または4に記載のヘテロ元素含有グラフェン。
【請求項6】
X線光電子分光法に基づき算出される、炭素(C)とヘテロ元素(X)との原子数比(X/C)が0.1以上であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のヘテロ元素含有グラフェン。
【請求項7】
X線光電子分光法に基づき、窒素の基底面へのドープされている化学結合状態が陽イオン性窒素の可能性が提示でき、ホール効果測定によりキャリアタイプがp型と判定されることを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載のヘテロ元素含有グラフェン。
【請求項8】
励起波長を532nmとするラマン分光分析において、1350cm-1付近に見られるDバンドの強度I(D)と、1580cm-1付近に現れるGバンドの強度I(G)との比(I(D)/I(G))が1以下であり、かつ、前記Gバンドの半値幅が50cm-1以下であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のヘテロ元素含有グラフェン。
【請求項9】
前記ラマン分光分析において、2700cm-1付近に見られる2Dバンドの強度I(2D)と、前記Gバンドの強度I(G)との比(I(2D)/I(G))が0.5以上であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載のヘテロ元素含有グラフェン。
【請求項10】
前記ラマン分光分析において、2700cm-1付近に見られる2Dバンドの半値幅が80cm-1以下である、請求項1~9のいずれか1項に記載のヘテロ元素含有グラフェン。
【請求項11】
当該ヘテロ元素含有グラフェンを支持する基材を含まない、請求項1~10のいずれか1項に記載のヘテロ元素含有グラフェン。
【請求項12】
前記炭素(C)の原子が前記へテロ元素(X)の原子と化学結合し、かつ、前記炭素(C)の原子が主としてsp2結合することで構成されるグラフェンシートを含み、
前記グラフェンシートは、1層からなる単層構造または2層以上5層以下の積層構造を有している、請求項1~11のいずれか1項に記載のヘテロ元素含有グラフェン。
【請求項13】
平均粒子径が1nm以上10μm以下の粉末である、請求項1~12のいずれか1項に記載のヘテロ元素含有グラフェン。
【請求項14】
少なくとも一部に5員環構造を有し、前記5員環が、窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、イオウ(S)、ホウ素(B)およびケイ素(Si)からなる群から選択される少なくとも1種のヘテロ元素(X)と、炭素(C)とにより構成されているヘテロ5員環化合物を、極性非プロトン性溶媒に溶解させて原料含有液を用意すること、および、
前記原料含有液の中でプラズマを発生させることにより、前記ヘテロ5員環化合物を重合させて、ヘテロ元素含有グラフェンを得ること、
を含む、
制限視野電子回折において、直方晶系および六方晶系のいずれかに属し、単結晶の対称性を備えるスポットが観測され、
炭素(C)と、ヘテロ元素(X)として窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、イオウ(S)、ホウ素(B)、およびケイ素(Si)からなる群から選択される少なくとも1種の元素と、を含むヘテロ元素含有グラフェンの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘテロ元素含有グラフェンであって、扁平な形状を示し、透明なP型半導体としての性質を示すヘテロ元素含有グラフェンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、グラフェンの炭素六員環構造中に、炭素以外の異種元素が導入されたヘテロ元素含有グラフェンが注目されている。このヘテロ元素含有グラフェンにおいて、例えば、グラフェンのジグザグエッジの谷の部分に窒素等の異種元素を導入すると、異種元素が隣りの炭素原子に対して物理的・化学的に作用する。その結果、隣の炭素原子が酸素還元特性を発現することが知られている。このことから、ヘテロ元素含有グラフェンは、触媒材料としての利用が検討されている(例えば、特許文献1~3等参照)。
【0003】
特許文献1には、カーボン担体の表面に窒素含有グラファイトが形成された、電極触媒用担体が開示されている。この特許文献1の窒素含有グラファイトは、π電子供給性を有するカーボン担体の表面に形成されている。また特許文献1では、窒素含有グラファイトの結晶性をラマンスペクトルに基づくID/IG値で評価し、このID/IG値が0.8~1.2となり得ることが開示されている。
【0004】
特許文献2には、ソルボサーマル反応によって窒素等のヘテロ原子を含むヘテロ原子含有グラフェンを合成できることが開示されている。特許文献2の実施例には、ヘテロ原子含有グラフェンに窒素原子が14.8原子%の割合でドープされたことが記載されている。しかしながら、特許文献2には、ヘテロ原子含有グラフェンの結晶性に関して何ら開示されていない。
特許文献3には、化学量論比を有するグラファイト状窒化炭素(g-C34)が開示されている。特許文献3に開示されたグラファイト状窒化炭素は、窒素および炭素からなる3つの6員環が互いにC-N結合を共有した三角形の結晶構造を有するメロン((C693)X)が、頂点の窒素原子において重合した構造を有している。
【0005】
また、本発明者らは、特許文献4において、異種元素として10原子%以上の多量の窒素を含むヘテロ原子含有カーボン触媒の製造方法を提供している。これらの手法によると、担体を含まないヘテロ原子含有グラフェンを製造することができる。
【0006】
さらに、特許文献5においては、電極上に酸化還元能を有する炭素触媒が形成されることが示されている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2013-232409号公報
【特許文献2】特開2012-153555号公報
【特許文献3】国際公開第2014/098251号公報
【特許文献4】特開2014-100617号公報
【特許文献5】特開2016-209798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2および4で得られるヘテロ原子含有グラフェンでは、実際には、グラフェンシートへのヘテロ原子のドープ位置がシート端部(エッジ)に偏りがちであった。そしてグラフェンシートの内部(面内)にドープできた場合であっても、ドープする窒素の量が増えれば増えるほど炭素とヘテロ原子の結合角に乱れが生じ、グラフェンシートの平坦性を維持することができなくなるという課題を有していた。換言すると、窒素原子がドープされたグラフェンシートは、原子レベルで湾曲したまま平面状には戻らず、結晶学的に結晶性の良好な窒素含有カーボン触媒は得られていなかった。本発明は上記課題に鑑み、ドープする窒素の量が増えてもグラフェンシートの平坦性を維持でき、透明で、結晶性の高いヘテロ元素含有グラフェンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
結晶性グラファイトおよびグラフェンは六方晶系に属し、六員環構造からなる平坦な結晶構造を有し得る。しかし、グラフェンにヘテロ元素を導入したヘテロ元素含有グラフェンは、炭素とヘテロ元素との結合部位にて結晶構造にひずみが生じ得る。その結果、ヘテロ元素含有グラフェンが、外観で、たとえシート状の形態を有していても、その結晶構造の対称性は低下する場合があったり、結晶ではなくアモルファスであったりしていた。換言すると、従来のヘテロ元素含有グラフェンは、結晶構造に長距離秩序性が見られなかった。この傾向は、ヘテロ元素の導入量が多くなるほど顕著になる。その結果、従来のヘテロ元素含有グラフェンは、例えば、制限視野電子回折において、単結晶の対称性を備えるスポットが観測されることはなかった。これに対し、ここに開示されるヘテロ元素含有グラフェンは、例えば、制限視野電子回折において、直方晶系および六方晶系のいずれかに属する単結晶の対称性を備えるスポットが観測される。換言すると、本発明者らは、結晶学的に高い結晶性を備えるヘテロ元素含有グラフェン(以下、単に「高結晶性ヘテロ元素含有グラフェン」という場合がある。)を創出することに初めて成功した。これにより、高結晶性ヘテロ元素含有グラフェンが提供される。
【0010】
従来技術において、ドープする窒素の量が増えた場合、グラフェンシートの平坦性が維持された、結晶性の高いヘテロ含有グラフェンが得られない。本発明者らは、特定の製造方法を用いてヘテロ元素含有グラフェンを製造したところ、価電子数4の窒素(陽イオン性窒素)が基底面にドープされたヘテロ元素含有グラフェンを製造することができ、そのように製造されたヘテロ元素含有グラフェンが、結晶学的に高い結晶性を備え、透明で、平坦性を有することを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明者らは、結晶学的に高い結晶性を備えるヘテロ元素含有グラフェン(以下、単に「高結晶性ヘテロ元素含有グラフェン」という場合がある。)を創出することに初めて成功した。
【0011】
本発明は、例えば下記(1)~(13)に示すとおりである。
(1)制限視野電子回折において、直方晶系および六方晶系のいずれかに属し、単結晶の対称性を備えるスポットが観測され、
炭素(C)と、ヘテロ元素(X)として窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、イオウ(S)、ホウ素(B)、およびケイ素(Si)からなる群から選択される少なくとも1種の元素と、を含むヘテロ元素含有グラフェン。
【0012】
ヘテロ元素(X)としては、NおよびBから選択される少なくとも1種の元素であることがさらに好ましい。
(2)前記スポットは、前記直方晶系に属し、入射方向を[101]とする電子回折像であって、逆格子点11-1、-111、-202、1-1-1、20-2および-1-11の配列を含むことを特徴とする、(1)に記載のヘテロ元素含有グラフェン。
(3)X線回折において、(002)面からの回折ピークの半値幅が3度以下であることを特徴とする、(1)または(2)に記載のヘテロ元素含有グラフェン。
(4)X線回折において、(002)面からの回折ピーク強度I(002)に対する(101)面からの回折ピーク強度I(101)の比(I(101)/I(002))が0.1以上であることを特徴とする、(1)~(3)のいずれかに記載のヘテロ元素含有グラフェン。
(5)X線回折において、(002)面の面間隔は3.5Å以下であることを特徴とする、(3)または(4)に記載のヘテロ元素含有グラフェン。
(6)X線光電子分光法に基づき算出される、炭素(C)とヘテロ元素(X)との原子数比(X/C)が0.1以上であることを特徴とする、(1)~(5)のいずれかに記載のヘテロ元素含有グラフェン。
(7)X線光電子分光法に基づき、窒素の基底面へのドープされている化学結合状態が陽イオン性窒素の可能性が提示でき、ホール効果測定によりキャリアタイプがp型と判定されることを特徴とする、(1)~(6)のいずれかに記載のヘテロ元素含有グラフェン。
(8)励起波長を532nmとするラマン分光分析において、1350cm-1付近に見られるDバンドの強度I(D)と、1580cm-1付近に現れるGバンドの強度I(G)との比(I(D)/I(G))が1以下であり、かつ、前記Gバンドの半値幅が50cm-1以下であることを特徴とする、(1)~(7)のいずれかに記載のヘテロ元素含有グラフェン。
(9)前記ラマン分光分析において、2700cm-1付近に見られる2Dバンドの強度I(2D)と、前記Gバンドの強度I(G)との比(I(2D)/I(G))が0.5以上であることを特徴とする、(1)~(8)のいずれかに記載のヘテロ元素含有グラフェン。
(10)前記ラマン分光分析において、2700cm-1付近に見られる2Dバンドの半値幅が80cm-1以下である、(1)~(9)のいずれかに記載のヘテロ元素含有グラフェン。
(11)当該ヘテロ元素含有グラフェンを支持する基材を含まない、(1)~(10)のいずれかに記載のヘテロ元素含有グラフェン。
(12)前記炭素(C)の原子が前記へテロ元素(X)の原子と化学結合し、かつ、前記炭素(C)の原子が主としてsp2結合することで構成されるグラフェンシートを含み、
前記グラフェンシートは、1層からなる単層構造または2層以上5層以下の積層構造を有している、(1)~(11)のいずれかに記載のヘテロ元素含有グラフェン。
(13)平均粒子径が1nm以上10μm以下の粉末である、(1)~(12)のいずれかに記載のヘテロ元素含有グラフェン。
(14)少なくとも一部に5員環構造を有し、前記5員環が、窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、イオウ(S)、ホウ素(B)およびケイ素(Si)からなる群から選択される少なくとも1種のヘテロ元素(X)と、炭素(C)とにより構成されているヘテロ5員環化合物を、極性非プロトン性溶媒に溶解させて原料含有液を用意すること、および、
前記原料含有液の中でプラズマを発生させることにより、前記ヘテロ5員環化合物を重合させて、ヘテロ元素含有グラフェンを得ること、
を含む、
制限視野電子回折において、直方晶系および六方晶系のいずれかに属し、単結晶の対称性を備えるスポットが観測され、
炭素(C)と、ヘテロ元素(X)として窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、イオウ(S)、ホウ素(B)、およびケイ素(Si)からなる群から選択される少なくとも1種の元素と、を含むヘテロ元素含有グラフェンの製造方法。
【0013】
この出願は、上記の課題を解決するものとして、ヘテロ元素含有グラフェンを提供する。このヘテロ元素含有グラフェンは、炭素(C)と、ヘテロ元素(X)として窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、イオウ(S)、ホウ素(B)、およびケイ素(Si)からなる群から選択される少なくとも1種の元素と、を含む。そして、制限視野電子回折において、直方晶系および六方晶系のいずれかに属し、単結晶の対称性を備えるスポットが観測される。
【0014】
前述のとおり、従来のヘテロ元素含有グラフェンは、結晶構造に長距離秩序性が見られず、制限視野電子回折において、単結晶の対称性を備えるスポットが観測されることはなかった。これに対し、ここに開示されるヘテロ元素含有グラフェンは、例えば、制限視野電子回折において、直方晶系および六方晶系のいずれかに属する単結晶の対称性を備えるスポットが観測される。これにより、高結晶性ヘテロ元素含有グラフェンが提供される。
【0015】
ここに開示されるヘテロ元素含有グラフェンの好ましい一態様において、上記スポットは、上記直方晶系に属し、入射方向を[101]とする電子回折像において、逆格子点11-1、-111、-202、1-1-1、20-2および-1-11の配列を含むことを特徴とする。上記構成のヘテロ元素含有グラフェンは、六方晶系のグラフェン構造から若干変形した直方晶系の結晶構造を有することで、高い結晶性を安定して維持することができて好ましい。
【0016】
なお、ここに開示されるヘテロ元素含有グラフェンの高結晶性は、さまざまな指標で確認することができる。他の観点から、ここに開示されるヘテロ元素含有グラフェンの好ましい一態様では、炭素(C)と、上記少なくとも1種のヘテロ元素(X)とを含み、そして、X線回折(XRD)における(002)面からの回折ピークの半値幅が3度以下であることを特徴としている。
【0017】
なお、本明細書において、「半値幅」とは、半値全幅(full width at half maximum:FWHM)を意味する。なお、半値幅は、JIS R7651:2007およびJIS K0131:1996などに準じて測定することができる。より具体的には、半値幅は、例えば図5に示したように、スペクトルの所定のピークについてベースラインを作成し、当該ピークのベースラインからの高さ(h)の1/2の高さ(1/2*h)における、当該ピークの幅を計測することで得ることができる。
【0018】
また、ここに開示されるヘテロ元素含有グラフェンの好ましい一態様では、X線回折(XRD)における、(002)面からの回折ピーク強度I(002)と(101)面からの回折ピーク強度I(101)との比(I(002)/I(101))が0.1以上であることを特徴としている。
【0019】
ヘテロ元素含有グラフェンは、上記のとおりのXRD特性によってその高結晶性を特定することもできる。例えば、従来のヘテロ元素含有グラフェンは、XRDによってブロードなハローパターンを示していた。これに対し、ここに開示されるヘテロ元素含有グラフェンは、XRDにおいて結晶性を示すピークが明瞭に観測される。このことにより、ここに開示する技術が提供するヘテロ元素含有グラフェンと、従来頻繁に見られる低結晶性のヘテロ元素含有グラフェンとを、明確に区別することができる。
【0020】
ここに開示されるヘテロ元素含有グラフェンの好ましい一態様において、上記X線回折分析によって算出される(002)面の面間隔は、3.5Å以下である。かかる構成によって、さらに結晶性の良好なヘテロ元素含有グラフェンが提供される。
【0021】
ここに開示されるヘテロ元素含有グラフェンの好ましい一態様において、X線光電子分光(XPS)法に基づき算出される、炭素(C)と、上記の少なくとも1種のヘテロ元素(X)との原子数比(X/C)が0.1以上であることを特徴とする。換言すると、高い結晶性を備えつつ、ヘテロ元素を10原子%以上の高い割合で含むヘテロ元素含有グラフェンが提供される。このような材料は、本発明によって初めて提供されるものである。
【0022】
ここに開示されるヘテロ元素含有グラフェンの好ましい一態様において、XPSの窒素N1sスペクトルから、窒素の基底面へのドープされている化学結合状態が陽イオン性窒素となり、ホール効果測定からそのキャリアタイプがp型と判定できるヘテロ元素含有グラフェンが提供される。
【0023】
ここに開示されるヘテロ元素含有グラフェンの高結晶性は、さらに他の指標で確認することができる。ここに開示されるヘテロ元素含有グラフェンの好ましい一態様では、炭素(C)と、上記少なくとも1種のヘテロ元素(X)とを含み、そして、励起波長を532nmとするラマン分光分析において、1350cm-1付近に見られるDバンドの強度I(D)と、1580cm-1付近に現れるGバンドの強度I(G)との比(I(D)/I(G))が1以下であり、かつ、前記Gバンドの半値幅が50cm-1以下であることを特徴とする。
【0024】
ヘテロ元素含有グラフェンは、上記のとおりのラマン特性によっても、その高結晶性を特定することができる。例えば、従来のヘテロ元素含有グラフェンは、ラマンスペクトルにおけるDバンドのピークがそもそも丸みを帯びており、急峻なピーク(換言すると、ブロードでないピーク)として現れるものではなかった。これに対し、ここに開示されるヘテロ元素含有グラフェンは、例えば、ラマンスペクトルのGバンドを示すピークの半値幅自体が小さい。しかもこのGバンドのピークは、Dバンドを示すピークよりもピーク強度が高くなり得る。このことによっても、ここに開示されるヘテロ元素含有グラフェンの高結晶性を確認することができる。
【0025】
ここに開示されるヘテロ元素含有グラフェンの好ましい一態様では、上記ラマンスペクトルにおいて、2700cm-1付近に見られる2Dバンドの強度I(2D)と、前記Gバンドの強度I(G)との比(I(2D)/I(G))が0.5以上である。2Dバンドは、結晶構造の欠陥に由来するスペクトルではあるものの、アモルファスや結晶性の低いヘテロ元素含有グラフェンのラマンスペクトルには現れない。これによっても、従来にない高結晶性のヘテロ元素含有グラフェンを提供することができる。
【0026】
ここに開示されるヘテロ元素含有グラフェンの好ましい一態様では、上記ラマンスペクトルにおいて、2700cm-1付近に見られる2Dバンドの半値幅が80cm-1以下である。ラマンスペクトルに現れるピークがシャープであることは、その半値幅が小さいことにより評価することができる。したがって、上記構成によってさらに結晶性の高いヘテロ元素含有グラフェンを提供することができる。
【0027】
ここに開示されるヘテロ元素含有グラフェンの好ましい一態様では、当該ヘテロ元素含有グラフェンを支持する基材を含まない。つまり、平坦な支持基材がない状態においてグラフェンにヘテロ元素が導入された場合であっても、ここに開示されるヘテロ元素含有グラフェンは、自身の結晶構造を平坦に維持することができる。これにより、例えば、ヘテロ元素含有グラフェンを各種の機能性材料として用いる場合に、基材による当該機能の低下、効率の低減等を抑制することができる。その結果、一例として、ヘテロ元素含有グラフェンを触媒等として用いる場合、比表面積が増えることに加え、単位重量あたりの触媒活性等の効果が増大するために好ましい。
【0028】
ここに開示されるヘテロ元素含有グラフェンの好ましい一態様では、上記炭素(C)の原子が上記へテロ元素(X)の原子と化学結合し、かつ、上記炭素(C)の原子が主としてsp2結合することで構成されるグラフェンシートを含み、上記グラフェンシートは、1層からなる単層構造または2層以上5層以下の積層構造を有していることを特徴とする。これにより、ホモグラフェンシートの特異な二次元構造に起因した、優れた電気的、機械的および熱的特性を有するヘテロ元素含有グラフェンが提供されるために好ましい。
【0029】
ここに開示されるヘテロ元素含有グラフェンの好ましい一態様では、平均粒子径が1nm以上10μm以下の粉末である。このような平均粒子径が1nm以上10μm以下の粉末の場合、例えば、各種の用途の粉体材料や、ペースト等に調製して利用しやすい形態のヘテロ元素含有グラフェンを提供するために好ましい。
【0030】
さらに他の側面において、ここに開示される技術は、ヘテロ元素含有グラフェンの製造方法を提供する。この製造方法は、以下の工程を含むことを特徴とする。
(1)少なくとも一部に5員環構造を有し、上記5員環が、上記少なくとも1種のヘテロ元素(X)と、炭素(C)とにより構成されているヘテロ5員環化合物を極性非プロトン性溶媒に溶解させて原料含有液を用意すること
(2)上記原料含有液中でプラズマを発生させることにより、上記ヘテロ5員環化合物を重合させて、ヘテロ元素含有グラフェンを得ること。
【0031】
これにより、制限視野電子回折において、直方晶系および六方晶系のいずれかに属し、単結晶の対称性を備えるスポットが観測され、炭素(C)と、ヘテロ元素として窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、イオウ(S)、ホウ素(B)、およびケイ素(Si)からなる群から選択される少なくとも1種の元素と、を含む、結晶性の高いヘテロ元素含有グラフェンを簡便かつ好適に製造することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明のヘテロ元素含有グラフェンは、ドープする窒素の量が多くても、グラフェンシートの平坦性を維持でき、結晶性が高い。このため、本発明のヘテロ元素含有グラフェンは、良好な半導体特性や触媒特性を示すことが期待される。本発明のヘテロ元素含有グラフェンの製造方法は、前記ヘテロ元素含有グラフェンを効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、液中プラズマ発生装置の構成を示す模式図である。
【図2】図2は、粉末(a)~(d)のTEM像と、制限視野電子回折パターンである。
【図3】図3は、粉末(a)~(d)のX線回折パターンを例示した図である。
【図4A】図4Aは、粉末(a)~(d)のワイドスキャンによるXPS分析結果を例示した図である。
【図4B】図4Bは、粉末(a)、(b)のナロースキャンによるXPS分析結果を例示した図である。
【図5】図5は、粉末(a)~(d)のラマンスペクトルを例示した図である。
【図6】図6は、粉末(a)の結晶構造解析シミュレーションの結果を例示した図である。
【図7】図7は、(a)~(c)は、粉末(a)の結晶構造の扁平率の算出方法を説明する図である。
【図8】図8は、ホール効果測定(半導体特性):ホール移動度と温度依存性の関係を示した図である。
【図9】図9は、ホール効果測定(半導体特性):キャリア濃度と温度依存性の関係を示した図である。
【図10】図10は、ホール効果測定(半導体特性):抵抗値と温度依存性の関係を示した図である。
【図11】図11は、窒素含有グラフェン粉末(a)を含む薄膜の透明性を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明のヘテロ元素含有グラフェンについて説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(ヘテロ元素含有グラフェンの構成)以外の事柄であって、本発明の実施に必要な事柄(例えば、各種分析)は、当業者であれば、本明細書および図面に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいてその内容を把握し、本発明を実施することができる。なお、本明細書における数値範囲を示す「M~N」との表記は、M以上N以下を意味する。

【0035】
ここに開示されるヘテロ元素含有グラフェンは、炭素(C)と、ヘテロ元素として、窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、イオウ(S)、ホウ素(B)およびケイ素(Si)からなる群から選択される少なくとも1種の元素(X)と、を含む。ここで後述するが、ヘテロ元素含有グラフェンは、概略的には、グラフェンシートを主構造としている。そして上記ヘテロ元素は、炭素と化学結合して、このグラフェンシートを構成している。このことに基づき、ここに開示されるヘテロ元素含有グラフェンは結晶性を備え、特に従来にない高い結晶性を示すものとして特徴づけられる。このように特徴づけられるグラフェンのヘテロ元素としては、窒素(N)とホウ素(B)からなる群から選択されることが好ましい。

【0036】
以下にまず、ヘテロ元素含有グラフェンの構成について説明し、その後、結晶性について詳しく説明する。
本発明のヘテロ元素含有グラフェンは、下記化学構造式1に例示されるように、炭素原子を主体として構成されるシート状のグラフェン構造(炭素六員環構造)中に、炭素原子の代わりにヘテロ元素が導入されたものであり、エッジにヘテログラフェンが配置されている構造のものではない。ここで、式1中、白丸は炭素を示し、黒丸はヘテロ元素を示す。炭素原子は、主としてsp2結合することによってグラフェンシートを構成している。ヘテロ元素の位置は、式1に示すように、エッジではなく、厳密には限定されないがグラフェンの平面構造の内部に配置される。ヘテロ元素の位置は、ヘテログラフェンを製造するために用いられる原料、製造方法により位置を変更することができる。窒素の原子の位置によっては、ヘテログラフェンの結晶性、透明性、平坦性に影響する。

【0037】
本発明のヘテログラフェンは、その製造原料、製造工程、そして生成物が高い結晶性を備えることから考えて、ヘテロ元素は、エッジに集中的に配置される構造ではなく、炭素六員環のうち対向する2つの位置(パラ位)に含まれていると考えられる。たとえば、ヘテロ元素が窒素である場合、下記化学構造式2に例示されるようになる。本発明のヘテログラフェンにおいては、炭素と同じ価電子数4である陽イオン性窒素が導入されることが好ましい。また、本発明のヘテログラフェンにおいては、陰イオン性ホウ素が導入されることが好ましい。これらのヘテログラフェンが平面構造をとるのは、グラフェンを構成する炭素原子と同様に、sp2構造と同様の電子配置がヘテロ原子においても実現しているためであると考えられる。さらに、ヘテロ原子が窒素の場合、窒素の価電子数4で窒素-炭素結合に関与するため、窒素は正イオンとなる。後述するように本発明の窒素含有ヘテログラフェンは正孔の移動による半導体、いわゆるP型半導体となる。

【0038】
【化1】
JP2019066013A1_000003t.gif

【0039】
【化2】
JP2019066013A1_000004t.gif

【0040】
上記説明からもわかるように、本明細書において、「グラフェンシート」とは、厳密に炭素原子のみからなるシート状のグラフェンに限定されず、当該グラフェンシートの炭素原子に置き換えて上記へテロ元素を含む態様のものを包含する。ここに開示されるヘテロ元素含有グラフェン(高結晶性ヘテロ元素含有グラフェン)について言う「グラフェンシート」は、へテロ元素を含む態様のものであり得る。

【0041】
また、本明細書における「ヘテロ元素含有グラフェン」は、上記グラフェンシート1枚により構成されていてもよいし、2枚、3枚、4枚、5枚、あるいはそれ以上の複数枚のグラフェンシートが積層されて構成されていてもよい。また、異なる層数のグラフェンシートが混合されていてもよい。グラフェンシートの特異な二次元構造に起因した性質がより強く反映された高結晶性ヘテロ元素含有グラフェンを得るとの観点からは、このグラフェンシートの平均層数は5枚以下程度であることが好ましく、例えば、4枚以下、3枚以下、2枚以下、1枚であってよい。本発明のヘテログラフェンは後述のプラズマを用いる反応により製造することができる。積層数は、プラズマの条件を変えることにより調整することが可能である。すなわち、単位時間あたりのエネルギー量を大きくすると、グラフェンシートの平均総数を増やすことができ、単位時間あたりのエネルギー量を小さくすると、グラフェンシートの平均総数を減らすことができ、例えば平均5枚以下にすることができる。

【0042】
なお、従来のグラフェンシートの積層数が数枚程度以下にまで減少すると、グラフェンシートの平坦性は損なわれてしまう。例えば、炭素原子のみからなるホモグラフェンシートであっても、単独ではシートの平坦性を保つことは困難であることが知られている。そして、グラフェンシートの炭素原子に代えて、ヘテロ元素が少しでも(例えば、数原子%程度)導入されると、グラフェンシートの平坦性はより一層損なわれてしまう。例えば、窒素が数原子%以下で導入されたヘテロ元素含有グラフェンであっても、良好な結晶性は得られていない。その結果、例えば従来のグラフェンシートが湾曲したり、結晶格子は変形したりしている。

【0043】
これに対し、ここに開示されるヘテロ元素含有グラフェンは、高い結晶性を保ったまま、グラフェンシート中にヘテロ元素が導入されている。その導入量は厳密には制限されないが、ヘテロ元素は、例えば、炭素(C)に対するヘテロ元素(X)の原子数比(X/C)で0.1以上、すなわち10原子%以上の割合で導入することが出来、好ましくは、12原子%以上であってもよいし、より好ましくは13原子%以上であってもよいし、さらに好ましくは15原子%以上であってもよい。また、本発明のヘテロ元素含有グラフェンはヘテロ元素の導入量が多いにもかかわらず、従来のヘテロ元素含有グラフェンよりも高い結晶性を有している。ここに開示されるヘテロ元素含有グラフェンは従来には知られていない、全く新しい材料であるといえる。ヘテロ元素の導入量の上限は特に制限されない。窒素原子はグラフェンの平面構造を維持した状態においてイオン性で存在し、ホール伝導のキャリアとなるため、多く導入できればキャリア密度を上げることが可能になる。しかしながら、グラフェンの本質的な物理的・化学的性質を維持し、グラフェンシートの平面性を損ねないようにヘテロ元素を安定して導入するとの観点からは、ヘテロ元素の導入量はおおよそ30原子%以下とすることが好適な例として挙げられる。ヘテロ元素含有グラフェンにおいて、炭素原子に対する各へテロ元素の導入量は、例えば、X線光電子分光(XPS)法に基づき算出することができる。例えば、後述の実施例の手法に準じて好適に算出することができる。窒素の導入量は、原料分子の窒素含有比率、反応温度、反応時間、放電電圧により調節することができる。窒素含有比率を上げるためには、窒素の導入量を増やせば良いが、反応温度を上げる、放電電圧を上げる、又は反応時間を長くすることは、窒素の導入量が減少する傾向を導く。

【0044】
なお、多環芳香族炭化水素の一種であって、ベンゼン環が環状に6個つながった構造を有するコロネンは、平面分子であることが知られている。しかしながら、コロネンの化学式はC2412であり、結晶構造が長距離秩序性を備えているとはいえない。そこで、コロネンのような炭化水素との区別が必要となる場合、ここに開示される高結晶性ヘテロ元素含有グラフェンの炭素数は、例えば、30以上と規定することができ、50以上が適切であり、100以上が好ましく、500以上がより好ましく、1000以上が特に好ましい。グラフェンの炭素数は、後述のプラズマを用いる製造時の条件を制御することで調節できる。製造時の単位時間あたりのエネルギー量を小さくすると、長距離秩序性を備えた結晶構造を保ったまま構成炭素数を増やしていくことが出来る。さらに、グラフェンは均一な反応相が確保されている状態で製造できることが好ましい。

【0045】
本明細書において、「高結晶性」(高い結晶性)とは、結晶構造が長距離秩序性を有していることを言う。本発明のヘテログラフェンにおいては、長距離秩序性とは二次元結晶であることをいう。本発明のヘテログラフェンの長距離秩序性は、従来の同組成の材料と比較して、結晶構造の長距離秩序性が相対的に高い。任意材料が、高結晶性を備えているかどうかの判断は、例えば、以下のいずれか1以上の分析手法を利用することにより、適宜行うことができる。以下、各手法によるヘテロ元素含有グラフェンの高結晶性の判断について説明する。

【0046】
(1)電子回折パターンによる評価
(2)XRDパターンの回折ピークの半値幅
(3)ラマンスペクトルの半値幅
(1)電子回折パターン
各種材料の結晶学的情報は、電子回折を利用することで得ることができる。例えば、その材料が単結晶か、多結晶か、アモルファスかは、電子回折パターンを確認することで判断することができる。ここで、特殊な材料を除き、多くの材料は多結晶である。また、たとえ単結晶に近い材料であっても、材料内に析出相や分域構造、結晶構造の乱れがある場合等には、電子回折パターンには複雑なスポット配列や、過剰なスポット配列が現れ得る。しかし、多結晶材料であっても、微視的に見れば単結晶の領域の集まりともみなし得る。ここに開示される高結晶性ヘテロ元素含有グラフェンは、制限視野電子回折パターンにおいて、直方晶系および六方晶系のいずれか一方に属するものであって、単結晶の対称性を備えるスポットを示すものとして把握することができる。

【0047】
ヘテロ元素含有グラフェンは、炭素のみからなるホモグラフェンと同じ六方晶系に属していてもよいし、ヘテロ元素の導入によって六方晶系から結晶格子が変形した結晶系に属していてもよい。このような結晶系の一つは、直方晶系である。ヘテロ元素の導入量が多くなるほど単位格子の変形量が増大する。このことから、高結晶性ヘテロ元素含有グラフェンは、典型的には、直方晶系に属する。なお、本発明者は、このような単位格子の変形は長距離秩序性を備えることから、高結晶性ヘテロ元素含有グラフェンの結晶の平坦性は良好に維持することができると考える。

【0048】
また、単結晶材料の電子回折パターンでは、当該単結晶の対称性に従った回折スポットの配列が得られる。例えば、ヘテロ元素含有グラフェンが上記の直方晶系である場合を例にすると、入射方向を[101]方位にしたとき、この結晶構造に特徴的な電子回折パターンが得られる。ヘテロ元素含有グラフェンの結晶構造における長距離秩序性が高い場合は、その電子回折パターンは、逆格子点11-1、-111、-202、1-1-1、20-2および-1-11に対応する電子回折スポットの配列を含む。多結晶材料の電子回折パターンは、複数の単結晶から得られる電子回折パターンの重ね合わせである。したがって、単結晶材料の電子回折パターンは、一つの結晶の対象性に従った電子回折パターンのみが得られる。

【0049】
なお、透過型電子顕微鏡を用いた電子回折パターンの場合、単結晶については、規則正しく並んだ回折斑点(スポット)が得られる。単結晶材料の電子線回折パターンは、例えば、オーバーラップのない明瞭なスポットを含み得る。多結晶では、同心円状の円環が得られる。非晶質ではブロードな円環状の電子回折パターンが得られる。電子回折パターンが単結晶の対称性を示しているかどうかは、回折斑点が得られるかどうかによって、当業者であれば適切に判断することができる。本発明のヘテロ元素含有グラフェンは、例えば、入射方向を[101]方位にしたときの電子回折パターンにおいて、上記逆格子点のスポット配列を含むことが好ましい。さらには、上記逆格子点のスポット配列を含み、その他の結晶秩序性を示すスポット配列を含まないことがより好ましい。

【0050】
本発明の高結晶性のヘテロ元素含有グラフェンの単位胞は、グラフェンの単位胞がやや変形したような形態であり得る。この単位胞の変形の度合いは、例えば、数%以内(例えば3%以内)に収まる程度のものであり得る。このような高結晶性ヘテロ元素含有グラフェンの単位胞は、例えば、以下の格子条件を満たすものとすることができる。

【0051】
a≠b
a=4.000~4.300Å
b=2.300~2.500Å
c=6.600~7.200Å
α=β=γ=90°
(2)XRD法
XRD法による結晶性の評価は、従来より広く行われている。一般に、粉末XRD分析によって得られるXRDパターンのうち、その結晶性化合物に帰属されるXRDピークの半値幅が小さければ小さい程、その化合物は結晶性が高いものであることが知られている。したがって、この半値幅は、高結晶性との観点から、小さいことが好ましい。ここに開示される高結晶性のヘテロ元素含有グラフェンについて、XRD法により得られるXRDパターンのうち、当該化合物に帰属されるXRDピークの半値幅が、総じて、従来から知られている窒素、硫黄、酸素、ホウ素などのヘテロ元素含有グラフェンについて得られる当該XRDピークの半値幅よりも小さい。本発明の高結晶性ヘテロ元素含有グラフェンについて粉末XRD分析によって得られるXRDパターンのうち、炭素六員環構造に帰属される(002)面からのXRDピークの半値幅は、3度(°)以下であることが好ましく、2.8度以下がより好ましく、2.6度以下がさらに好ましく、例えば2.5度以下であってよい。

【0052】
一般の結晶性化合物についてのXRDピークでは、半値幅が1度以下、例えば0.5度以下になるなど、十分に小さくなりうる。結晶性の炭素材料には、結晶性が発達したグラファイトとダイヤモンドとがある。しかしながら、炭素材料には、無定形炭素、アモルファスカーボン等と呼ばれる結晶性の低い材料も多く存在する。本発明のヘテロ元素含有グラフェンについては、(002)面からのXRDピークの半値幅が3度以下である場合、相対的に十分に高い結晶性を備えたものであると判断することができる。

【0053】
なお、ここで、(002)面からのXRDピークが極めて小さければ、上記3度以下の半値幅は容易に満たしうる。また、結晶性の低いヘテロ元素含有グラフェンほど、(002)面からのXRDピークも小さくなりうる。そこで、本発明の高結晶性の判断を行う際は、(002)面からの回折ピーク強度I(002)に対する(101)面からの回折ピーク強度I(101)の比(I(101)/I(002))が0.1以上であることが好ましい。(002)面からのXRDピーク強度が高いことで、ピーク強度比(I(101)/I(002))は,容易に0.1以上を実現する。このように、(002)面からのXRDピーク強度が高く、半値幅が低いことにより、へテロ元素含有グラフェンの結晶性が高いと判断することができる。

【0054】
本発明の高結晶性ヘテロ元素含有グラフェンは、グラフェンシートの数が少ないために、結晶構造における積層規則性が低い。そのため、厳密には、天然黒鉛のXRDパターンに見られるhkl回折線に相当するピークが見られずに、00l回折線とhk回折線のみが観測されうる。このような場合、本明細書においては、上記「(101)面」との表記を、「(10)面」のように置き換えて読むことができる。
(3)ラマンスペクトル
単層グラフェンシート(モノグラフェン)はグラファイトと同様に2重縮退したEgモードがラマン活性であり、ラマンスペクトルには、第1に、1580cm-1付近に一次のEgバンド、すなわちGバンドが観測される。ラマンスペクトルにこのGバンドが観測されることで、高結晶性ヘテロ元素含有グラフェンが、sp2炭素からなるグラフェンシートを含むことを確認することができる。このほかに、グラフェンシートのラマンスペクトルには、いくつかの特徴的なピークがあることが知られている。例えば、グラファイト構造に乱れや欠陥が生じると、Dバンドに加えて、本来不活性なバンドが1350cm-1付近や1620cm-1付近に、それぞれDバンド、D’バンドと呼ばれるピークとして出現する。ヘテロ元素含有グラフェンの場合は、ヘテロ元素がグラフェン構造に導入されていることによって、グラファイト構造に乱れが生じ得る。その結果、ヘテロ元素含有グラフェンのラマンスペクトルには、DバンドやD’バンド等が出現することがあり、また、Gバンドを含めたこれらのピークはブロードとなり得る。

【0055】
ここで、ここに開示される高結晶性ヘテロ元素含有グラフェンについては、高結晶性との観点から、Gバンドの半値幅が小さいことが観測される。本発明の高結晶性ヘテロ元素含有グラフェンについて、ラマンス分光分析により得られるラマンスペクトルのうち、Gバンドの半値幅は、総じて、従来のヘテロ元素含有グラフェンについて得られるラマンシフトのGバンドよりも小さい。例えば、高結晶性ヘテロ元素含有グラフェンについて得られる励起波長を532nmとするラマンスペクトルのうち、Gバンドに帰属されるピークの半値幅は、50cm-1以下(例えば50cm-1未満)であり得る。Gバンドに帰属されるピークの半値幅は、45cm-1以下がより好ましく、40cm-1以下がさらに好ましく、例えば35cm-1以下であってよい。

【0056】
なお、本発明の高結晶性ヘテロ元素含有グラフェンのラマンスペクトルには、2700cm-1付近(Dバンドの2倍音)に、グラフェンシートの層数に関連するといわれる2Dバンドに由来するピークが観測される場合がある。一般に、2Dバンドのピークは、モノグラフェンについては鋭いものの、グラフェンシートの層数が増えるに連れてブロード化し、5層以上のグラフェンシートではバルクのHOPGのスペクトルとほぼ一致するといわれている。また、モノグラフェンの2Dバンドは、Gバンドよりも高い強度を示すものの、層数が5層程度まで増えるにつれて2Dバンドに対するGバンドの強度は強くなるといわれている。しかし、この2Dバンドは、アモルファスや結晶性の低いヘテロ元素含有グラフェンのラマンスペクトルには現れ難い。本発明の高結晶性ヘテロ元素含有グラフェンは、ラマンスペクトルにおいて、2700cm-1付近に見られる2Dバンドの強度I(2D)と、Gバンドの強度I(G)との比(I(2D)/I(G))は、通常0.5以上であり、比(I(2D)/I(G))は、0.6以上がより好ましく、0.7以上がさらに好ましく、0.8以上が特に好ましい。また、高結晶性ヘテロ元素含有グラフェンにおけるグラフェンシートの層数を比較的少なくすることができる。その場合、I(2D)/I(G)の上限は特にはないが、比(I(2D)/I(G))は、おおよそ5以下とすることができ、例えば1以下(例えば1未満。)とすることもできる。

【0057】
さらに、本発明の高結晶性ヘテロ元素含有グラフェンは、ラマンスペクトルの2Dバンドの半値幅も狭いほうがよい。2Dバンドに帰属されるピークの半値幅は、通常、80cm-1以下(例えば80cm-1未満)であり、75cm-1以下がより好ましく、70cm-1以下がさらに好ましく、例えば65cm-1以下であってよい。

【0058】
本発明の高結晶性のヘテロ元素含有グラフェンの具体的な形状は特に制限されないが、例えば、平均粒子径が1nm以上10μm以下の粉末として提供される。高結晶性ヘテロ元素含有グラフェンの平均粒子径は、5nm以上であってよく、10nm以上とすることができ、100nm以上としてもよい。高結晶性ヘテロ元素含有グラフェンの平均粒子径は、5μm以下であってよく、3μm以下であってもよく、1μm以下であってもよい。本発明のヘテロ含有グラフェンが二次元結晶であるという観点から、平均粒子径は大きい方が好ましい。平均粒子径は、後述のプラズマを用いる製造時の条件を制御することで調節できる。粒子径は反応温度が低いと大きくはならない。粒子径の観点からは、プラズマの単位時間のエネルギーが小さいほど好ましい。

【0059】
また、高結晶性ヘテロ元素含有グラフェンは、自身を支持する基材を含まない。これによって、軽量で、単位重量あたりの機能性(例えば、半導体特性、触媒活性等)に優れた材料が提供される。

【0060】
[高結晶性ヘテロ元素含有グラフェンの製造方法]
高結晶性ヘテロ元素含有グラフェンは、以下の手順で好適に製造することができる。
<1> 少なくとも一部に5員環構造を有し、この5員環が、ヘテロ元素(X)と、炭素(C)とにより構成されているヘテロ5員環化合物を原料化合物として用意する。ここで、ヘテロ元素とは、窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、イオウ(S)およびホウ素(B)からなる群から選択される少なくとも1種である。
<2> 次に、用意した原料化合物を、極性非プロトン性溶媒に溶解させて原料含有液を調製する。
<3> そして原料含有液中でプラズマを発生させることにより、上記ヘテロ5員環化合物を開環させて重合させる。

【0061】
ここで、後述の実施例にも示したが、本発明の高結晶性ヘテロ元素含有グラフェンを得るためには、原料化合物と、極性非プロトン性溶媒との組み合わせが好適である。好適な組み合わせでない場合は、従来技術と同様に、結晶性の低いヘテロ元素含有グラフェンが合成される。また、好適な組み合わせから外れると、相対的に、グラフェンへのヘテロ元素の取り込みが抑制されたり、結晶性の高くない(例えばアモルファス)ヘテロ元素含有グラフェンが得られたりしてしまう。

【0062】
原料化合物としてのヘテロ5員環化合物は、ヘテロ元素の種類にもよるため一概には言えないが、例えば、5員環の1,3位にヘテロ元素を含む複素環式芳香族化合物であることが好ましい。ヘテロ元素は、1位と3位とで同じであってもよいし、異なっていてもよい。好ましくは同一の元素である。また、ヘテロ5員環化合物は、ヘテロ元素として窒素を含む化合物であることが好ましい。ヘテロ5員環化合物としては、例えば、5員環の1,3位に窒素を含むアミンであることが好ましく、例えばイミダゾール系の化合物を好ましく用いることができる。また、ヘテロ5員環化合物は、イオン性化合物であることも好ましい。そのようなイオン性化合物としては、例えば、水に溶解して、ヘテロ5員環化合物に含まれるのと同じへテロ元素と炭素とを含むイオンをアニオンとして有する塩であることが好ましい。このようなイオン性化合物とは、例えば、シアン酸塩、チオシアン酸塩、シアミナドなどである。ヘテロ5員環化合物の好適例としては、例えば、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアナート等のイミダゾリウム塩が挙げられる。

【0063】
極性非プロトン性溶媒は、上記原料化合物を溶解しやすく、プロトン供給性を有しないものを好ましく用いることができる。かかる極性非プロトン性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。極性非プロトン性溶媒に上記ヘテロ5員環化合物を溶解することで、原料含有液を調製することができる。

【0064】
次いで、原料化合物の重合および炭素化の反応場として、原料含有液中に液中プラズマを発生させる。後述の実施例で説明するが、図1の液中プラズマ発生装置10により液2中の電極6間にパルス電圧を印加することで、電極6間に非平衡のソリューションプラズマ4が形成される。ソリューションプラズマ(プラズマ相)4は、電極6間に形成される気相中に形成されている。このようなプラズマ反応場は、電極6間に定常的に維持されている。プラズマ反応場では、プラズマ相から液相に向かって、高いエネルギーを有した電子、イオン、ラジカル等の活性種が供給される。一方、液相から気相およびプラズマ相に向けては、液相に含まれる原料化合物が供給される。そしてこれらは、主として液相と気相の界面において接触(衝突)する。これによって、原料化合物が重合されて炭素化され、高結晶性ヘテロ元素含有グラフェンが製造される。

【0065】
発生したプラズマは容器の壁と相互作用をするため、プラズマの安定性という観点からは、壁からの距離を適切に保つ必要がある。また、電極6が液面から離れるほど、ヘテロ含有グラフェンの収量が増大する。そのため、用いる反応装置の大きさや、原料、溶媒などに応じて収量を増大させるためには、それらの配置を調節する必要がある。そのように電極6の配置などを調節することによって、本発明のヘテログラフェンの収量は、1~30%とすることができ、好ましくは10~30%、より好ましくは20~30%とすることができる。

【0066】
液中プラズマの発生条件は、例えば、電圧(二次電圧):約1kV~2kV、周波数:約10kHz~30kHz、パルス幅:約0.5μs~3μsの範囲とするとよい。さらに、安定したソリューションプラズマの発生を可能とするために、原料含有液の電気伝導度は300μS・cm-1~3000μS・cm-1程度の範囲であるのが好ましい。より詳細な液中プラズマの発生条件等については、特許文献2の開示を参照することができるため、重ねての説明は省略する。

【0067】
以上、好適な実施形態に基づき高結晶性ヘテロ元素含有グラフェンとその製造方法について説明したが、本発明はこれらの例に限定されず、適宜に態様を変化して行うことができる。例えば、原料化合物を含む液には、本願発明の目的を損ねない範囲において、原料化合物以外の化合物が含まれていても良い。また、ソリューションプラズマの発生に際しては、必ずしもタングステンからなる針状電極を用いる必要はなく、例えば、他の導電性材料からなる任意の形状の電極を用いるようにしても良い。さらには、電極を用いることなく、低インダクタンスの誘導コイルによりソリューションプラズマを発生するようにしても良い。また、液中プラズマは、ソリューションプラズマ(グロー放電プラズマ)によるものに限定されず、例えば、液中でのアーク放電プラズマ等を利用して実施しても良い。

【0068】
また本発明によって提供される高結晶性ヘテロ元素含有グラフェンは、結晶性が改善されている。このことにより、電気伝導性や触媒活性を始めとする高結晶性ヘテロ元素含有グラフェンの各種特性が改善され得る。その結果、例えば、電子伝導性を示す高結晶性ヘテロ元素含有グラフェンと、n型またはp型の半導体特性を有する高結晶性ヘテロ元素含有グラフェンとを作り分けることが可能になる。これにより、例えば、軽量でフレキシブルな半導体チップの開発が可能となる。また、さまざまな半導体チップの開発が可能となり、フレキシブル半導体デバイスの実現の一助となりうる。
【実施例】
【0069】
次に、本発明に関する実施例を示すが、本発明を、かかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
[ヘテロ元素含有グラフェンの製造]
原料化合物として、窒素含有5員環有機分子である1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナド(EMIM-DCA、C8H11N5、CAS登録番号:370865-89-7)を用意した。また、溶媒として以下の4とおりの有機溶剤(a)~(d)を用意した。そして原料化合物と溶媒とを1:9の質量比で混合し、原料化合物を溶解することで、原料化合物含有液(a)~(d)を調製した。
【実施例】
【0070】
有機溶剤
(a)N,N-ジメチルホルムアミド(DMF、(CH3)2NCHO)
(b)アセトニトリル(CH3CN)
(c)ベンゼン(C6H6)
(d)トルエン(C6H5CH3)
次いで、図1に示す液中プラズマ発生装置10を用い、それぞれの原料化合物含有液中でソリューションプラズマ4を発生させた。液中プラズマ発生装置10は、原料化合物含有液2を収容するガラス製ビーカーからなる容器5と、容器5に固定された一対のプラズマ発生電極6と、電極6に電圧を印加する電源8とを備えている。電極6は、直径1.0mmのタングステンワイヤ(ニラコ社製)によって構成され、電極間距離は0.3mmに設定されている。ワイヤは、先端部を露出させ、その他の部分はフッ素樹脂からなる絶縁部材9で被覆した。電源8には、バイポーラ直流電源を用いた。
【実施例】
【0071】
上記で用意した原料化合物含有液(a)~(d)から選ばれる原料化合物含有液2を、容器5に入れてマグネチックスターラーからなる撹拌装置7によって撹拌した。原料化合物含有液2の量は、対向電極6部分が原料化合物含有液2の中程に浸漬されるように調整した。その後、外部電源8(バイポーラパルス直流電源)から電極6(電極0.1mm)間に所定のパルス電圧を印加することで、液中の電極6間にプラズマを発生させた。パルス電圧条件は、端子間電圧:+1500V→0V→-1500V→0V→+1500V、繰り返し周波数:200kHz、パルス幅:1μs、とし、原料化合物含有液2中で5分間プラズマを発生させた。
【実施例】
【0072】
原料化合物含有液(a)~(d)はいずれも無色透明であったが、プラズマの発生直後から黄色みを帯び、約5分後には褐色ないしは黒色の不透明な液に変化した。この変色は、原料化合物が重合してグラファイト骨格を形成したためであると考えられる。そしてプラズマ処理後の原料化合物含有液を乾燥させることで、黒色の粉末を得た。以下、原料化合物含有液(a)~(d)からそれぞれ得られた窒素含有グラフェン粉末(a)~(d)を下記の分析に供し、その結晶構造等について調べた。
【実施例】
【0073】
[制限視野電子回折分析]
窒素含有グラフェン粉末(a)~(d)について制限視野電子回折分析を行うことで、各粉末の結晶構造を調べた。分析装置としては、日本電子(株)製の高分解能透過型電子顕微鏡(TEM)JEM-2500SEを用い、電子回折パターンの取得およびTEM観察を行った。制限視野回折像条件は、電子線加速電圧を200kV、視野領域を約350nm、カメラ長を300cmとした。なお、本装置は、回折パターンをスロースキャンCCDカメラによってデジタル信号として取り込み、液晶ディスプレイ上に表示する。CCDチップの解像度は3413ピクセル/m×3413ピクセル/mであり、カメラのフレームサイズは640ピクセル×536ピクセルである。観察に際しては、まずTEM機能にて粉末中の一粒の粒子を選択し、電子回折パターンを見ながら試料のX軸、Y軸の傾斜をコントロールして結晶方位を合わせ、もっとも明瞭な電子回折パターンが得られた位置にてTEM像を取得した。以上の結果を図2に示した。
【実施例】
【0074】
[X線回折分析]
窒素含有グラフェン粉末(a)~(d)について粉末X線回折を行うことで、各粉末の結晶構造を調べた。X線回折分析装置としては、(株)リガク製のSmartLab(9kW)を用い、以下の分析条件にて分析を行った。X線のパターンを図3に示す。
【実施例】
【0075】
X線源:Cu-Kα線
X線発生電流:200mA
X線発生電圧:45kV
スリット角:0.5°
スリット幅:1.0mm
2θ=10~80°
ステップ間隔:0.02°
ステップ測定時間:3s
[X線光電子分光分析]
窒素含有グラフェン粉末(a)~(d)についてX線光電子分光(XPS)分析を行い、各粉末を構成する元素の特定と、その化学状態とを調べた。具体的には、全エネルギー範囲(0~1100eV)にて試料を走査し、高感度に定性分析するワイドスキャン分析を行ったのち、394~406eVの狭いエネルギー範囲を走査するナロースキャン分析を行うことで、粉末中の窒素原子の結合状態を調べた。XPS分析装置としては、アルバック・ファイ株式会社製のVersaProbe IIを用い、以下の分析条件にて分析を行った。
【実施例】
【0076】
X線源:Mg-Kα線
X線発生電流:1.7mA
X線発生電圧:25kV
[ラマン分光分析]
窒素含有グラフェン粉末(a)~(d)についてラマン分光分析を行い、粉末を構成する物質の種類や状態を調べた。ラマン分光分析装置としては、日本分光(株)製のNRS-100を用い、以下の分析条件にて分析を行った。
【実施例】
【0077】
励起波長:532nm
出力:2mW
露光時間:10秒
平均回数:5回
[評価]
[制限視野電子回折分析]
図2(a)~(d)に、窒素含有グラフェン粉末(a)~(d)のTEM像と、制限視野電子回折分析により得られた電子回折パターンとを示した。なお、TEM像は、それぞれ任意の倍率である。
【実施例】
【0078】
窒素含有グラフェン粉末(a)~(d)は、いずれも同一の原料化合物EMIM-DCAから得られた試料であるが、この原料化合物を溶解させた溶剤の種類が異なる。図2(a)に示されるように、溶剤としてDMFを用いて得た窒素含有グラフェン粉末(a)の電子回折パターンは、正六角形がやや拉げた形の単一の結晶の対称性を示すスポットが得られることが確認された。このことから、窒素含有グラフェン粉末(a)は単結晶からなることがわかった。また、図2(b)に示されるように、溶剤としてアセトニトリルを用いて得た粉末(b)の電子回折パターンは、同心円状のデバイリングを形成し、測定領域内に様々な角度で結晶が存在することが確認された。つまり、粉末(b)は多結晶を含むことがわかった。一方、図2(c)、(d)に示されるように、溶剤としてベンゼンを用いて得た粉末(c)およびトルエンを用いて得た粉末(d)の電子回折パターンは、いずれも同心円状のハローパターンを形成し、明瞭な回折スポットは観測されない。このことから、粉末(c)および(d)は、結晶構造を有さないアモルファスであることがわかった。また、ソリューションプラズマを用いたヘテロ元素含有炭素質材料の製造においては、原料化合物を溶解させる有機溶剤の種類によって、生成される化合物の結晶性に差異が生じる。
[XRD分析]
図3に、得られた窒素含有グラフェン粉末(a)~(d)のX線回折パターンを示した。窒素含有グラフェン粉末(a)については、2θ=26°付近に(002)面からの回折ピークが、2θ=42~50°付近に(10)面からの回折ピークが観測されることが確認された。しかしながら、粉末(b)~(d)についてはブロードなピークが僅かに見られる程度であり、粉末(b)~(d)は結晶構造がないか、あっても長距離秩序性がほぼ見られないアモルファスであることがわかった。この結果は、電子回折分析の結果からも支持される。
【実施例】
【0079】
[XPS分析]
次に、図4Aに得られた窒素含有グラフェン粉末(a)~(d)のXPS分析のワイドスキャン分析の結果を示した。図4Aに示されるように、窒素含有グラフェン粉末(a)~(d)の全てのXPSスペクトルについて、結合エネルギーが285eV付近にC1sピークが、398eV付近にN1sピークが、531eV付近にO1sピークが観測されることが確認できた。窒素含有グラフェン粉末(a)~(d)はいずれも炭素(C)、窒素(N)および酸素(O)を含む材料であることが確認できた。ただし、窒素含有グラフェン粉末(a)~(d)のC1sピークは鋭く大きいものの、N1sピークおよびO1sピークは窒素含有グラフェン粉末(a)~(d)の順に小さくなっていることがわかった。そこで、各粉末の炭素(C)、窒素(N)および酸素(O)の総量を100原子%としたときの各元素の割合を下記の表1に示した。
【実施例】
【0080】
【表1】
JP2019066013A1_000005t.gif
【実施例】
【0081】
表1に示されるように、窒素含有グラフェン粉末(a)(c)(d)においては酸素含有量が5~7原子%とやや少なめであるのに対し、溶剤としてアセトニトリルを用いて得られた粉末(b)は酸素含有量が10原子%超と多いことがわかった。また、窒素含有量については、粉末(c)(d)は2原子%以下と少ないのに対し、窒素含有グラフェン粉末(a)、(b)においてはそれぞれ13.4原子%、7.1原子%と比較的多いことがわかった。このことから、ソリューションプラズマを用いたヘテロ元素含有炭素質材料の製造においては、原料化合物を溶解させる有機溶剤の種類によって、生成される化合物の組成も異なりうることがわかった。例えば窒素含有グラフェン粉末(a)については、窒素含有量が10原子%超過と多く、酸素含有量が5.5%未満と少なく抑えられることがわかった。
【実施例】
【0082】
次いで、窒素含有量がある程度多い窒素含有グラフェン粉末(a)および(b)について、ナロースキャン分析を行った結果を図4Bに示した。結合エネルギーが395~405eVの領域では、高解像度でスキャンすることで、さまざまな結合状態の窒素原子スペクトルが観察できる。そこで、XPS分析に基づくN1sピークのナロースキャンスペクトルを、窒素原子の4通りの結合状態を示すピークに分離して示した。すなわち、N1sピークを、(1)398.5eV近傍のピリジン型の結合ピークと、(2)400.5±0.2eV近傍のピロール型(N5)ピークと、(3)401.2±0.2eV近傍の陽イオン性(N+)ピークと、(4)402.9±0.2eV近傍のピリドン型(NOX)ピークと、に分離した。窒素含有グラフェン粉末(a)および(b)には、4通りの全ての結合状態の窒素原子が含まれていることが確認できた。また具体的には示さないが、図4Bから解るように、窒素含有グラフェン粉末(a)および(b)においては、ピリジン型窒素および陽イオン性窒素が比較的多く含まれるが、ピリジン型窒素はエッジにのみ導入されうるため、面内に導入された主要な窒素は陽イオン性窒素である。陽イオン性窒素が多く含まれることで、グラフェンシートの端部ではなく内部に窒素原子が導入されているといえる。
【実施例】
【0083】
[ラマン分光分析]
図5に、得られた窒素含有グラフェン粉末(a)~(d)のラマンスペクトルを示した。全ての窒素含有グラフェン粉末(a)~(d)について、グラフェンの特徴的なピークの一つであり、グラファイト構造(炭素六員環構造)に由来するGバンドが1580cm-1付近に、構造の乱れと欠陥に起因するDバンドが1350cm-1付近に見られることが確認できた。窒素含有グラフェン粉末(a)のGバンドおよびDバンドは比較的急峻なピークを形成しており、ラマンスペクトルからも窒素含有グラフェン粉末(a)の結晶性の高さがうかがえる。本発明者らの知見によると、ヘテロ元素を導入したグラフェン(特には、基材上に形成されていない自立グラフェン)については、Gバンドが先端のとがったピークとして現れることはこれまで報告されていない。窒素含有グラフェン粉末(a)のGバンドの半値幅(FWHM)は34.0cm-1であった。しかしながら、粉末窒素含有グラフェン粉末(b)、(c)、(d)になるにつれてピークがブロードとなり、結晶化度がより低くなることがわかった。おおよそ粉末(c)、(d)はアモルファスであるといえ、電子回折分析等の結果と一致する。
【実施例】
【0084】
また、窒素含有グラフェン粉末(a)については、2つのフォノンが関与した2次のラマン散乱バンド(2Dバンド)が2700cm-1付近に明瞭に確認された。粉末(a)の2Dバンドの半値幅(FWHM)は68.2cm-1であった。この2Dバンドは、粉末(b)にわずかに確認できるものの、窒素含有グラフェン粉末粉末(c)、(d)については観測できなかった。粉末(a)については、その他にも、1620cm-1付近に欠陥に起因するD’バンドや、2446cm-1付近にD+D”の結合モード、また2950cm-1付近にD+D’の結合モードが観測され、グラフェンよりも複雑な結晶構造を有することが予想される。
【実施例】
【0085】
以下の表2に、窒素含有グラフェン粉末粉末(a)~(d)のラマンスペクトルにおけるDバンドとGバンドの強度比(I(D)/I(G))と、粉末(a)のラマンスペクトルにおける2DバンドとGバンドの強度比(I(2D)/I(G))を示した。アモルファス状態の粉末(c)、(d)のI(D)/I(G)は、0.86~0.87であった。そして粉末窒素含有グラフェン粉末(c)、(d)よりも結晶性が高いと考えられる粉末(a)、(b)のI(D)/I(G)は、それぞれ0.74、0.99という結果であった。一般に、I(D)/I(G)はR値とも呼ばれ、炭素質材料の黒鉛化度の評価に利用される指標である。しかしながら、最近の研究では、R値はさまざまな要因に依存して複雑な挙動を示すため、すべての炭素材料に対して万能でないことが明らかとなっている。本例においては、結晶性が大幅に低く、明瞭なDバンドおよびGバンドが得られないような試料については、このI(D)/I(G)が結晶性の指標としては機能しないことが確認できた。一方で、結晶性の比較的高い粉末(a)については、ラマンスペクトルが結晶性を明瞭に反映したものとなっており、I(D)/I(G)が1未満(例えば0.8以下)の低い値となる。換言すると、グラフェン構造の欠陥の少なさ、延いては結晶性の高さを示し得るといえる。
【実施例】
【0086】
【表2】
JP2019066013A1_000006t.gif
【実施例】
【0087】
[結晶構造解析]
以上のことから、原料化合物としてEMIM-DCAを用い、溶媒としてDMFを用いることで、結晶性に優れたヘテロ元素含有グラフェンが得られることがわかった。そこで、窒素含有グラフェン粉末(a)の電子回折パターンとXRDパターンとから、更に詳細な結晶構造解析を行った。図6に、結晶構造解析のシミュレーションの結果を示した。図中の矢印で示したスポットが、実際に得られた電子回折スポット(図2(a)参照)である。図中の矢印で示されていないスポット(黒丸)が、グラフェン(グラファイト)結晶構造から理論的に得られる回折スポットである。また、グラフェン(グラファイト)の回折スポットの作成に用いた単位胞の格子条件と、窒素含有グラフェン粉末(a)の電子回折パターンに基づく結晶構造解析の結果とを、下記の表3に示した。
【実施例】
【0088】
【表3】
JP2019066013A1_000007t.gif
【実施例】
【0089】
図6に示すように、窒素含有グラフェン粉末(a)の電子回折パターンは、おおよそグラファイトの電子回折パターンと類似のスポットを形成しているが、その形態はやや扁平に拉げている。構造解析の結果、図6の電子回折パターンは、直方晶系の特徴である[101]方位からの回折像を示すものであることがわかった。そしてスポットのずれ量から、窒素含有グラフェン粉末(a)の結晶構造における単位胞は、表3に示されるように、平面格子におけるグラフェンの理想的な六員環構造が、直方晶系におけるa軸方向に潰れるように変形したものであることがわかった。同時に、直方晶系の対称性にしたがって決定される単位胞のa軸の格子定数は約4Åにまで伸張されている。このように窒素含有グラフェン粉末(a)の平面格子の大きさが拡大したことにより、(002)面の面間隔d002は3.428Åとなり、(101)面の面間隔d101は2.097Åとなった。このことは、図3に示したXRD回折パターンにおける、26°付近の(002)面からの回折ピークの半値幅が2.59°と、グラフェンの(002)面からの回折ピークについて得られるであろう半値幅よりも大きくなったことと整合する。
【実施例】
【0090】
そこで、窒素含有グラフェン粉末(a)の結晶構造における単位胞の扁平率を算出した。図7(a)~(c)に、単位胞の扁平率の算出方法を説明するための電子回折パターンを示した。図7(a)は、電子線回折分析で得た回折スポットに逆格子点を記した図である。図7(b)は、図7(a)の回折スポット(逆格子点)に、単位胞の原点から延びる逆格子ベクトルA~Dを記入した図である。図7(c)は、図6に示したグラフェンの理論的に得た電子回折パターンに逆格子ベクトルA~Dを記入した図である。この図7(c)は、ヘテロ元素を導入する前のグラフェンの逆格子ベクトルに相当する。図7(b)(c)の逆格子ベクトルA~Dは、それぞれ、原点と逆格子点(-111)、(020)、(11-1)、(20-2)とを繋ぐベクトルである。窒素含有グラフェン粉末(a)とグラフェンの逆格子ベクトルA,C,Dの長さを、各逆格子ベクトルの長さに対する相対長さとして、下記表4に示した。また、ヘテロ元素を導入前のグラフェンに対して、窒素含有グラフェン粉末(a)における逆格子ベクトルの変形度を、当該ベクトルの方向での扁平率として次式により算出した。
【実施例】
【0091】
扁平率=(窒素含有グラフェン粉末(a)の逆格子ベクトルの長さ)/(シミュレーションされたグラファイトの逆格子ベクトルの長さ)×100
【実施例】
【0092】
【表4】
JP2019066013A1_000008t.gif
【実施例】
【0093】
窒素含有グラフェン粉末(a)の単位胞の扁平率は、(20-2)方向について102.4%であり、(11-1)方向について98.3%と、斜めに拉げることが確認された。しかしながら、この扁平率は、いずれも方向にも約3%以内に収まっており、ここに開示される高結晶性ヘテロ元素含有グラフェンは、ヘテロ元素を多量に導入してもグラフェンの結晶構造をわずかに変形させるにとどめ、高結晶性を良好に維持できるということがわかった。
[ホール効果]
窒素含有グラフェン粉末(a)の半導体特性を測定した。測定装置は、東陽テクニカ8400ACLR/OW型を用いた。
【実施例】
【0094】
所定のサイズのモールドに粉末試料を入れ、50 MPaでプレスして得られた成型体を測定試料とした。その後、測定試料の膜厚は、マイクロメータを用いて計測した。
測定試料は 、アルゴン雰囲気下、280℃で前処理をした。
【実施例】
【0095】
測定条件は、以下の通りである。
測定条件(室温測定)
H3
サイズ:4mm×4mm×118μm
温度:290.2K
電流:7mA
磁場:0.3744T(交流250mHz)
H4
サイズ:5mm×5mm×117μm
温度:290.5K
電流:7mA
磁場:0.5T(直流)
H5
サイズ:5mm×5mm×185μm
温度:287.8K
電流:7mA
磁場:0.3744T(交流250mHz)
また、H4については、以下のように温度可変測定を行った。結果を表5に示す。
【実施例】
【0096】
温度可変測定
H4
サンプルサイズ:5mm×5mm×117μm(厚さ)
電流:7mA
磁場:0.5T(交流,周波数250mHz)
温度範囲(290K-20K, 10点,1/Tで等間隔測定)
測定の結果を図8~図10に示した。
【実施例】
【0097】
半導体特性の温度依存性については、温度上昇に従いホール移動度及びキャリア密度は上昇した。一方、シート抵抗は減少した。この温度依存性は、従来の半導体特性の温度依存性と一致する。室温からヘリウム温度域において、相転移は見られなかった。幅広い温度域で、陽イオン性窒素がキャリアとして安定であった。
【実施例】
【0098】
【表5】
JP2019066013A1_000009t.gif
【実施例】
【0099】
このホール効果測定結果から、本発明の高結晶性ヘテログラフェンのキャリアタイプはp型であり、そのキャリア密度は1018cm-3以上であることが分かる。陽イオン性窒素がドープされたことにより、平面性が維持できたとともに、電子ではなくホールがドープされたことを示している。従来の窒素ドープグラフェンがn型であることは、従来のドープ窒素は陽イオン性窒素の割合が少なく、平面性が維持できていなかったことを示している。また、ヘリウム温度から常温までの範囲で、ホール移動度、キャリ濃度、シート抵抗が単調変化していることは、本温度範囲では、構造相転移は発生せず、構造的に安定であることを示している。
[可視UVスペクトル]
窒素含有グラフェン粉末(a)を石英上で溶媒により分散させて乾燥させて得たキャストフィルムの薄膜の可視UVスペクトルを測定した。結果を図11に示す。この薄膜は、窒素を含む半導体の性質を示すが、400nm以上の可視領域で80%以上の透過率を示した。
【実施例】
【0100】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。ここで開示される発明には上述の具体例を様々に変形、変更したものが含まれ得る。
【符号の説明】
【0101】
2 液(液相)
4 ソリューションプラズマ
5 容器
6 電極
7 撹拌装置
8 外部電源
9 絶縁部材
10 液中プラズマ発生装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4A】
3
【図4B】
4
【図5】
5
【図6】
6
【図7】
7
【図8】
8
【図9】
9
【図10】
10
【図11】
11