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明細書 :モリブデンを含有する酸化チタンフォトクロミック材料及び複合体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-128455 (P2020-128455A)
公開日 令和2年8月27日(2020.8.27)
発明の名称または考案の名称 モリブデンを含有する酸化チタンフォトクロミック材料及び複合体
国際特許分類 C09K   9/00        (2006.01)
C08L 101/14        (2006.01)
C08K   3/20        (2006.01)
C01G  23/00        (2006.01)
FI C09K 9/00 D
C08L 101/14
C08K 3/20
C01G 23/00 C
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2019-020568 (P2019-020568)
出願日 平成31年2月7日(2019.2.7)
発明者または考案者 【氏名】山▲崎▼ 鈴子
【氏名】西山 尚登
【氏名】沖村 孝史郎
出願人 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
【識別番号】100096482、【弁理士】、【氏名又は名称】東海 裕作
【識別番号】100188352、【弁理士】、【氏名又は名称】松田 一弘
【識別番号】100113860、【弁理士】、【氏名又は名称】松橋 泰典
【識別番号】100131093、【弁理士】、【氏名又は名称】堀内 真
【識別番号】100150902、【弁理士】、【氏名又は名称】山内 正子
【識別番号】100141391、【弁理士】、【氏名又は名称】園元 修一
【識別番号】100198074、【弁理士】、【氏名又は名称】山村 昭裕
【識別番号】100096013、【弁理士】、【氏名又は名称】富田 博行
審査請求 未請求
テーマコード 4G047
4J002
Fターム 4G047CA05
4G047CB05
4G047CB06
4G047CC03
4G047CD02
4G047CD03
4J002AB03
4J002DE136
4J002FB076
4J002FD206
4J002GC00
要約 【課題】青色を経由せずに黒色に発色する無機系のフォトクロミック材料、これを利用したフィルム等を提供すること。
【解決手段】モリブデンを含有する酸化チタンフォトクロミック材料。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
モリブデンを含有する酸化チタンフォトクロミック材料。
【請求項2】
チタンとモリブデンの総物質量に対するモリブデンの物質量の割合が0.1~3.0%である請求項1記載の酸化チタンフォトクロミック材料。
【請求項3】
紫外線の照射により黒色に発色する請求項1又は2記載の酸化チタンフォトクロミック材料。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の酸化チタンフォトクロミック材料を含有するフォトクロミックゾル。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載の酸化チタンフォトクロミック材料及びバインダー成分を含有するフォトクロミック複合体。
【請求項6】
バインダー成分として水溶性高分子化合物を含有する請求項5記載のフォトクロミック複合体。
【請求項7】
アルコール類を含有する請求項6記載のフォトクロミック複合体。
【請求項8】
グレースケール形成のために用いる請求項5~7のいずれか記載のフォトクロミック複合体。
【請求項9】
請求項1~3のいずれかに記載の酸化チタンフォトクロミック材料及び水溶性高分子化合物を含有するフォトクロミック複合体形成用溶液。
【請求項10】
請求項1~3のいずれかに記載の酸化チタンフォトクロミック材料及び水溶性高分子化合物を含有する分散液を調製し、前記分散液を基板上に塗布して乾燥する、又は前記分散液を型枠に充填して乾燥することを特徴とするフォトクロミック複合体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、モリブデンを含有する酸化チタンフォトクロミック材料、これを含むフォトクロミックゾル、フォトクロミック複合体、フォトクロミック複合体形成用溶液及びフォトクロミック複合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトクロミック色素(光の刺激により色が変化する色素)として、アゾベンゼン、ジアリールエテン等の有機系色素が市販されている。これらの色素における色の変化は光による幾何異性化(シス-トランス異性化)や開閉環反応による吸収ピークのシフトに起因する。しかし、これら有機系のフォトクロミック材料は、無機系のフォトクロミック材料に比べて耐久性が低く、合成も難しい。一方、無機系のフォトクロミック材料としては、古くからハロゲン化銀の銀原子への還元反応が知られており、これはハロゲン化銀写真乳剤の感光による黒化像形成と同じ原理である。しかし、この原理を用いた白黒写真の場合には、反応系外にハロゲンを除いて潜像を安定にするので、元に戻すのは難しく不可逆過程である。また、ハロゲン化銀をガラス等に閉じ込めた場合は、ハロゲンが除去されないので、銀原子を再び酸化して元の状態に戻る過程が共存するため、着色時の暗色は完全な黒色とはならない。サングラスとして実用化されているフォトクロミックガラスは、塩化銀に紫外線が照射されると銀が析出し暗色になる現象を利用したものである。
【0003】
さらに、無機系のフォトクロミック材料として、酸化タングステン、酸化モリブデン等の酸化物半導体のフォトクロミズムが知られている。酸化タングステン及び酸化モリブデンでは、光吸収により電荷分離が起こり、伝導帯に励起した電子により6価のタングステンやモリブデンが5価に還元され、分子内に6価と5価が混在すると、原子価間電荷移動遷移が起こり青色に発色する。酸化タングステンの場合には、光照射を続けると、青色→群青色→黒色へと色が変化し、光照射を止めると、空気中の酸素に電子が移動し、タングステンは6価に戻るため退色する。一方、酸化モリブデンは酸素への電子移動が起こりにくいため、退色は極めて遅く、可逆性が極めて低い。酸化タングステンなどの無機酸化物は、熱的、化学的に安定であり、ゾル・ゲル法などにより容易に合成できるという利点がある(特許文献1)。これに対し、同じ酸化物半導体である酸化チタンの場合には、電荷分離により生じた伝導帯電子によるフォトクロミズムは通常は起こらない。これは、ホールとの再結合あるいは励起電子の酸素への移動が速やかに進むためである。酸化チタンによるフォトクロミズムの報告例としては、有機物を共存させてホールを消費させることで、伝導帯に電子が蓄積する状態を作り出して、4価のチタンを3価に還元させて青色発色させる方法、銀イオンを共存させて伝導帯電子により銀を析出させて発色させる方法、酸化タングステンと混合する方法等があるが、酸化チタンナノ粒子のみを用いたフォトクロミズムはこれまで全く報告されていない。
【0004】
上記のとおり、有機系のフォトクロミック材料は耐久性の問題がある。一方、化学的に安定で合成も容易な、酸化タングステンに代表される酸化物半導体の場合には、ほとんどの場合、青色発色である。これらを用いた黒の発色は、光照射とともに青色→群青色→黒色と変化すること、すなわち青色が濃くなることで黒と視認できる。そのため、無機系の材料であり、青色を経由せずに黒色となるフォトクロミック材料が求められていた。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2014-62218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点を解決し、青色を経由せずに黒色に発色する無機系のフォトクロミック材料、これを利用したフィルム等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、酸化タングステン等を用いたフォトクロミズムの研究を従来から行っている。その一方で、酸化チタンナノ粒子に金属イオンを微量ドープすることにより、金属イオンドープ可視光応答型光触媒を合成する研究を行ってきた。本発明者らは、これまで10種類以上の金属イオンをドープしてイオンドープ酸化チタン光触媒粉末を合成してきたが、その研究の中で、偶然、モリブデンイオンを少量含むことで、単独ではフォトクロミズムがみられない酸化チタンゾルにフォトクロミズムがみられることを発見した。しかも、発色時に紫外から赤外にわたるすべての波長領域に吸収が観察され、従来の青色を呈さないことから、新奇な着色現象であると考えられる。発色現象の機構は未だ不明であるが、ゾル状態、固体フィルム状態で、青色を経由せずに速やかに無色透明と黒色の間を可逆的に変化できる光機能性材料を得ることができた。本願発明は、このようにして完成されたものである。
【0008】
すなわち、本発明は以下に示す事項により特定されるものである。
(1)モリブデンを含有する酸化チタンフォトクロミック材料。
(2)チタンとモリブデンの総物質量に対するモリブデンの物質量の割合が0.1~3.0%である上記(1)の酸化チタンフォトクロミック材料。
(3)紫外線の照射により黒色に発色する上記(1)又は(2)の酸化チタンフォトクロミック材料。
(4)上記(1)~(3)のいずれかに記載の酸化チタンフォトクロミック材料を含有するフォトクロミックゾル。
(5)上記(1)~(3)のいずれかに記載の酸化チタンフォトクロミック材料及びバインダー成分を含有するフォトクロミック複合体。
(6)バインダー成分として水溶性高分子化合物を含有する上記(5)のフォトクロミック複合体。
(7)アルコール類を含有する上記(6)のフォトクロミック複合体。
(8)グレースケール形成のために用いる上記(5)~(7)のいずれか記載のフォトクロミック複合体。
(9)上記(1)~(3)のいずれかに記載の酸化チタンフォトクロミック材料及び水溶性高分子化合物を含有するフォトクロミック複合体形成用溶液。
(10)上記(1)~(3)のいずれかの酸化チタンフォトクロミック材料及び水溶性高分子化合物を含有する分散液を調製し、前記分散液を基板上に塗布して乾燥する、又は前記分散液を型枠に充填して乾燥することを特徴とするフォトクロミック複合体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のフォトクロミック材料は、無機系材料であるため有機系材料に比べて耐久性に優れ、さらに青色を経由せずに黒色に発色することができる。また、青色発色し青色が濃くなることで黒と視認できる酸化物半導体と異なり、光照射が弱いときでも、広い波長領域にわたって光を吸収するために、黒っぽく発色するので、照射光の強度や照射時間をコントロールすることで、透明からグレー、黒色へと色調を変化させることができる。本発明のフォトクロミックゾル、フォトクロミック複合体及びフォトクロミック複合体形成用溶液は、本発明のフォトクロミック材料を含有するものであり、上記効果を同様に示す。また、本発明のフォトクロミック複合体の製造方法は、上記効果を有するフォトクロミック複合体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、2.0atom%Mo-TiOゾルのフォトクロミズムを示すグラフであり、紫外光照射経過時間毎のゾルの吸収スペクトルを示すグラフである。
【図2】図2は、紫外光照射98分後の2.0atom%Mo-TiOゾルの発色状態を示す写真である。
【図3】図3は、0.6atom%Mo-TiOゾルのフォトクロミズムを示すグラフであり、紫外光照射経過時間毎のゾルの吸収スペクトルを示すグラフである。図3(a)は、調製2日後のゾルを使用した例であり、図3(b)は、調製30日後のゾルを使用した例である。
【図4】図4は、0.6atom%Mo-TiO/EG/MCフィルムのフォトクロミズムを示すグラフであり、紫外光照射経過時間毎のゾルの吸収スペクトルを示すグラフである。図4(a)は、EG/Ti(モル比)=12のフィルムを使用した例であり、図4(b)は、EG/Ti(モル比)=6のフィルムを使用した例であり、図4(c)は、EG/Ti(モル比)=12のフィルムを使用した場合のフィルムの発色状態を示す写真である。
【図5】図5は、0.6atom%Mo-TiO/EG/MCフィルム(EG/Ti(モル比)=12のフィルム、EG/Ti(モル比)=6のフィルム)の614nmでの吸光度の紫外光照射時間による変化を示したグラフである。
【図6】図6(a)は、0.6atom%Mo-TiO/EG/MCフィルムのフォトクロミズムによる吸収スペクトル変化を示すグラフである。図6(b)は、フィルムの紫外光照射時間による発色状態を示す写真である。上から光照射70分後、60分後、50分後、40分後、30分後、20分後、10分後、照射前である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の酸化チタンフォトクロミック材料は、モリブデンを含有する酸化チタン(以下、「Mo-酸化チタン」ともいう。)からなるフォトクロミック材料である。酸化チタンのモリブデンの含有量は、フォトクロミック材料として使用できる程度のフォトクロミズムを発現する限り特に制限されるものではないが、チタンとモリブデンの総物質量に対するモリブデンの物質量の割合が0.1~3.0%であることが好ましく、0.1~2.0%であることがより好ましい。本発明におけるモリブデンを含有する酸化チタンは、酸化チタンの構造中にモリブデンを含有し、酸化チタンの結晶構造中又はアモルファス構造中にモリブデンを含有する。本発明の酸化チタンフォトクロミック材料は、Mo-酸化チタン粒子からなるものであり、Mo-酸化チタン粒子の粒子径は、フォトクロミズムを発現できる限り特に制限されるものではないが、例えば、10nm以下のものを好適に使用することができる。前記Mo-酸化チタン粒子は、フォトクロミズムを発現するフォトクロミック粒子である。また、本発明の酸化チタンフォトクロミック材料の粒子形状は、特に制限されるものではないが、例えば、球状等の粒子を使用することができる。本発明の酸化チタンフォトクロミック材料は、紫外線を照射すると青色を経由せずに黒色に発色し、太陽光中の紫外線でも発色できる。本発明の酸化チタンフォトクロミック材料は、水等の分散媒に分散させて使用することもできる。本発明のフォトクロミックゾルは、分散媒に本発明の酸化チタンフォトクロミック材料を分散させたものである。分散媒としては、本発明の酸化チタンフォトクロミック材料を分散させることができるものであれば特に制限されないが、分散性の良さ、Mo-酸化チタン粒子の製造工程からそのまま調製できることから、水が好ましい。本発明のフォトクロミックゾルは、紫外線を照射すると青色を経由せずに黒色となる。ただし、Mo-酸化チタン粒子そのままの状態や、Mo-酸化チタン粒子が水に分散したゾルの場合、Mo-酸化チタン粒子が空気に触れると酸化して退色するため、窒素ガス等で酸素を除去した状態で紫外線を照射すると明りょうな黒色となる。

【0012】
本発明の酸化チタンフォトクロミック材料を製造する方法は、酸化チタン粒子にモリブデンを共存させ、モリブデンを含有する酸化チタン粒子を製造できる方法であれば特に制限されるものではないが、製造方法として例えば以下の方法を挙げることができる。モリブデン酸ナトリウム等のモリブデン酸の塩の水溶液に、濃硝酸等の酸を加えてpHを調整し、チタンテトライソプロポキシド等のチタンのアルコキシドをスターラーで撹拌しながら滴下して、一定期間撹拌を続けることによりコロイド水溶液(ゾル)を調製することができる。撹拌は、4~6日程度行うことが好ましい。得られたゾルは、透析膜等により硝酸イオン等の不純物を除去することが好ましい。こうして、Mo-酸化チタン粒子が分散したゾルが得られる。ゾル中のMo-酸化チタン粒子を分離して使用してもよく、ゾル状態のまま使用してもよい。また、Mo-酸化チタン粒子を結晶化させずにアモルファス状態で使用してもよい。

【0013】
本発明のフォトクロミック複合体は、本発明の酸化チタンフォトクロミック材料及びバインダー成分を含有することを特徴とする。本発明における複合体とは、酸化チタンフォトクロミック材料及びバインダー成分を含有し、一定の形状に成形されたものを意味し、前記形状は特に制限されるものではない。前記複合体は、例えば、基材の表面に付着した状態の膜、単独で使用可能なフィルム、種々の形状に成形された成形体を含む。バインダーとしては、複合体の成形を促進するものであれば特に制限されるものではないが、水溶性高分子化合物が好ましい。本発明における水溶性高分子化合物は、特に限定されるものではないが、例えば、天然の水溶性高分子化合物、半合成の水溶性高分子化合物、合成の水溶性高分子化合物等を挙げることができる。

【0014】
天然の水溶性高分子化合物としては、例えば、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアーガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(カッソウエキス)、デンプン、グリチルリチン酸等の植物系高分子;キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子;コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子を挙げることができる。半合成の水溶性高分子化合物としては、例えば、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子化合物;メチルセルロース、エチルセルロース等のアルキルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース;メチルヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルアルキルセルロース;ニトロセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、結晶セルロース、TEMPO酸化セルロースナノファイバー、セルロース粉末等のセルロース系高分子化合物;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子を挙げることができる。合成の水溶性高分子化合物としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル系高分子、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子化合物;ポリエチレングリコール20,000、ポリエチレングリコール6,000、ポリエチレングリコール4,000等のポリオキシエチレン系高分子化合物;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、PEG/PPGメチルエーテル等の共重合体系高分子化合物;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系高分子化合物を挙げることができる。これらは一種単独または二種以上を混合して用いることができる。また、これらのうち、アルキルセルロースが好ましく、メチルセルロースが特に好ましい。これら水溶性高分子化合物の重量平均分子量(Mw)は、本発明の複合体を作製することができる限り特に制限されないが、500~500,000,000で水溶性のものが好ましく、より好ましくは1,000~500,000である。

【0015】
本発明の複合体は、ヒドロキシ基を有する水溶性化合物(ただし、上記水溶性高分子化合物として配合されたものを除く)を含有してもよい。本発明におけるヒドロキシ基を有する水溶性化合物は、上記水溶性高分子化合物以外の比較的低分子量の化合物であり、これらを添加することで、光応答性がより向上し、光に応答してより速く発色する。また、複合体の柔軟性が向上し、透明性が向上する。ヒドロキシ基を有する水溶性化合物としては、ヒドロキシ基を1個又は複数個有し、水溶性であり、かつ、好ましくは、膜を室温~40℃程度で乾燥する時に蒸発しないものであれば有機化合物でも無機化合物でもよく、例えば、有機化合物としては、酸素原子を連結基として有していてもよいヒドロキシ基を有する炭化水素、有機酸類等が挙げられ、無機化合物としてはリン酸、ホウ酸等の酸類が挙げられる。中でも、アルコール類、有機酸類が好ましい。

【0016】
「ヒドロキシ基を有する炭化水素」の「炭化水素」としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等が挙げられる。脂肪族炭化水素としては、例えば、エチル、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ヘプタデカン、オクタデカン等のアルカン類;エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、ノネン、デセン、ブタジエン、イソプレン等のアルケン類;エチン、プロピン、ブチン、ペンチン等のアルキン類を挙げることができる。脂環式炭化水素としては、例えばシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等を挙げることができる。

【0017】
ヒドロキシ基を有する水溶性化合物として、下記にアルコール類を例示する。本発明におけるアルコール類としては、炭素数2以上の、好ましくは炭素数2~30の水溶性の多価アルコールが挙げられる。一価のアルコールも、水溶性で室温~40℃程度で蒸発しないものであれば可能である。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、ネオペンチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキサントリオール、ジ(トリメチロールプロパン)、ジペンタエリスリトール、トリヒドロキシステアリルアルコール、3-ブテン-1-オール等の脂肪族アルコール;シクロペンタントリオール、シクロヘキサントリオール、シクロヘキサンヘキサオール等の環状アルコールを挙げることができる。これらは一種単独または二種以上を混合して用いることができ、沸点が100℃以上であることが好ましい。二価又は三価のアルコールを含有することがより好ましく、エチレングリコール、グリセリンがさらに好ましい。

【0018】
芳香族炭化水素としては、例えばベンゼン、ナフタレン等を挙げることができ、ヒドロキシ基を有する水溶性芳香族炭化水素としては、フェノール、カテコール、ピロガロール等を挙げることができる。酸素原子を連結基として有する炭化水素は、上記炭化水素の分子内に酸素原子を1個又は2個以上有する化合物を意味する。ヒドロキシ基を有する、酸素原子を連結基として有する炭化水素としては、例えば、グルコース、マルトース等の糖類等を挙げることができる。

【0019】
ヒドロキシ基を有する水溶性化合物として、下記に有機酸類を例示する。本発明における有機酸類としては、例えば、炭素数1以上の、好ましくは炭素数1~10のカルボン酸類もしくはスルホン酸類を挙げることができる。カルボン酸類としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2-メチル酪酸、n-ヘキサン酸、3,3-ジメチル酪酸、2-エチル酪酸、4-メチルペンタン酸、n-ヘプタン酸、2-メチルヘキサン酸、n-オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等を挙げることができる。スルホン酸類としては、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸等を挙げることができる。

【0020】
本発明の複合体における酸化チタンフォトクロミック材料と水溶性高分子化合物の割合は、本発明の複合体を形成できる限り特に限定されるものではないが、強度を向上させ、光応答性を向上させる観点から、水溶性高分子化合物は、酸化チタンフォトクロミック材料100質量部に対して、30~150質量部が好ましく、60~120質量部がより好ましい。水溶性高分子化合物の添加量が上記範囲より多いと、本発明の複合体の強度が増すものの、粘度が高くなって空気を含み、複合体の白濁が強くなる。他方、水溶性高分子化合物の添加量が上記範囲より少ないと、複合体の強度が弱くなる。また、ヒドロキシ基を有する水溶性化合物を配合する場合は、ヒドロキシ基を有する水溶性化合物は、複合体を取り扱いやすくし、フォトクロミズム性をより向上させる観点から、酸化チタンフォトクロミック材料100質量部に対して、20~200質量部が好ましい。ヒドロキシ基を有する水溶性化合物の添加量が上記範囲より多いと、形成する複合体に水分を多く含有し、フィルム及び成形体が扱いづらくなる。他方添加量が上記範囲より少ないと、複合体のフォトクロミズム性の向上の効果や、柔軟性や透明性の向上の効果が充分に得られない。

【0021】
ヒドロキシ基を有する水溶性化合物がアルコール類の場合には、複合体の光応答性をより向上させる観点から、アルコール類/Mo-酸化チタン(モル比)は、例えば、エチレングリコール/Mo-酸化チタンの場合は、エチレングリコール/チタン(モル比)は、2.0以上が好ましく、3.0以上がより好ましく、5.0以上が更に好ましい。また、エチレングリコール/チタン(モル比)は、18.0以下が好ましく、15.0以下が好ましく、13.0以下が更に好ましい。

【0022】
(フォトクロミック複合体の製造方法)
本発明のフォトクロミック複合体を製造する方法は、特に制限されるものではないが、例えば、本発明の酸化チタンフォトクロミック材料及び水溶性高分子化合物を含有する分散液を調製し、これを基材上に塗布して乾燥することや、流し込む等により型枠に充填して乾燥することで作製することができる。前者の場合、基材に密着した膜を形成することや、基材上に成形した膜を剥離することにより単独で使用可能なフィルムを作製することなどができる。後者の場合、型枠の形状の成形体を作製することができる。乾燥温度は、使用するバインダーの種類や、必要とされるMo-酸化チタンの結晶状態(結晶質又はアモルファス)に応じて適宜選択できる。本発明のフォトクロミック複合体形成用溶液は、本発明の酸化チタンフォトクロミック材料及び水溶性高分子化合物を含有することを特徴とする。本発明のフォトクロミック複合体形成用溶液の溶媒としては、酸化チタンフォトクロミック材料が分散し、水溶性高分子化合物が溶解する溶媒であれば特に制限されないが、水が好ましい。本発明のフォトクロミック複合体形成用溶液は、Mo-酸化チタン粒子及び水溶性高分子化合物を含有し、Mo-酸化チタン粒子が分散した分散液であることが好ましい。

【0023】
(フォトクロミック複合体形成用溶液の調製)
本発明の酸化チタンフォトクロミック材料及び水溶性高分子化合物を含有するフォトクロミック複合体形成用溶液を製造する方法は、特に制限されるものではないが、例えば、Mo-酸化チタンコロイドと水溶性高分子化合物を混合することにより調製することができる。これらの混合にあたっては、必要に応じて加熱、撹拌、超音波処理等を行う。本発明のフォトクロミック複合体形成用溶液の調製においては、Mo-酸化チタン粒子を複合体形成用溶液中に均一に分散させるために、Mo-酸化チタンコロイド水溶液を用いることが好ましい。Mo-酸化チタンコロイド水溶液としては、上記段落0012で作製したMo-酸化チタンゾルを使用することができる。Mo-酸化チタンのゾル中の濃度としては、特に限定されないが、例えば、0.01~0.60mol/L程度のゾルを使用することができ、好ましくは0.01~0.30mol/L、より好ましくは0.01~0.20mol/L程度のゾルを使用することができる。Mo-酸化チタンゾルの濃度は、誘導結合プラズマ発光分光分析等によって求めることができる。このようにして調製したMo-酸化チタンゾルと水溶性高分子化合物を混合する。本発明の複合体形成用溶液中の水溶性高分子化合物の濃度は、複合体を形成できる限り特に限定されないが、例えば、0.1~10質量%程度とすることができる。さらに、必要に応じてヒドロキシ基を有する水溶性化合物を混合する。複合体形成用溶液中のヒドロキシ基を有する水溶性化合物の濃度は、複合体を形成できる限り特に限定されないが、例えば、0.1~10質量%程度とすることができる。複合体形成用溶液中の各成分の配合比は、上記複合体中の各成分の配合比と同様である。

【0024】
(フォトクロミック複合体の作製)
上記で調製した複合体形成用溶液を用いて、従来公知の方法によりフォトクロミック複合体を作製することができる。たとえば、フォトクロミック膜を作製する場合、ガラスやテフロン(登録商標)基板上に、従来公知の方法により複合膜形成用溶液を塗布、印刷などの手段により成膜し、次いで乾燥してゲル化させることにより作製することができる。乾燥の条件はアルコール類が蒸発しない温度で乾燥すればよく、常圧下、室温~40℃の温度範囲で乾燥してもよいし、蒸発しにくいアルコール類を用いれば加熱乾燥してもよい。膜の作製に用いる基材は、特に限定されるものではなく、例えば、ガラスや金属等の無機基材や、樹脂等の有機基材を含む従来公知の基材を用いることができる。本発明のフォトクロミック複合膜は、耐久性に十分な厚みを有しているが、さらに耐久性を高めるためや、ガラス等との接着性などの新たな物性を得ることを目的として、保護層や接着層等のその他の層を設けることができる。その他の層を設ける場合、当該層は、本発明の複合膜の上部及び/又は下部に設けられてよいが、当該その他の層の組成物を本発明の複合膜の構成成分と同時に塗布して成膜してもよい。また、剥離性の良い基材上に膜を成膜し、これを剥離することにより単独で使用可能なフィルムを作製することができる。また、フォトクロミック成形体を作製する場合、上記で調製した複合体形成用溶液を型枠内に流し込み、これを乾燥させることにより、所定の形状の成形体を作製することができる。型枠に使用する基材や乾燥温度等は、膜の作製の場合と同様である。本発明のフォトクロミック複合体、例えば、フォトクロミック膜、フォトクロミックフィルム、フォトクロミック成形体等は、紫外線によるフォトクロミズム性に優れるので、暴露している紫外線量を示す紫外線インディケーターとして使用することができる。また、本発明のフォトクロミック膜は、偽造を防止したい対象物に形成すると、太陽光中の紫外線で発色するため対象物の真贋を判別することができ、偽造防止用に使用することができる。ここで、膜とは、様々なパターンに形成された膜を含み、フォトクロミック複合体形成用溶液を用いて印字することもでき、また複合体を繊維等に埋め込むこともできる。本発明のフォトクロミック複合体は、上記の紫外線センサー及び偽造防止の他、表示素子、書き消し可能なリライタブルペーパー等に使用でき、暗時と光照射時のコントラストが明瞭となる利点があるため、上記用途に限らず黒色顔料が必要とされる各種分野で使用でき、例えば、遮光性フィルム、プラズマディスプレイ、液晶モニター等のディスプレイなどで使用できる。ディスプレイ分野では、例えば、高コントラスト実現のための遮光層形成用途等に使用できる。また、光照射強度や光照射時間の制御により、透明から黒色まで滑らかなグレースケールでの発色が可能であるため、医療用画像モニター等のグレースケールが必要とされる分野で、グレースケール形成のために用いるフォトクロミック複合体の用途に使用できる。
【実施例】
【0025】
以下に、実施例において本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。なお、実施例においてゾル中のMo-TiOの測定は、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(Agilent Technologies 5110 ICP-OES)を用いて行い、吸収スペクトルの測定は、紫外可視分光光度計(島津製作所製、UV-1800)を用いて行った。また、粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡(日本電子社製、JEM-2100)を用いて行った。
【実施例】
【0026】
[実施例1]
(2.0atom%Mo-TiOゾルの調製)
平底フラスコ内で0.2401gのNaMoO・2HOを180mLの超純水(ミリポア社製、超純水製造装置Integral 10で製造)に溶解させ、濃硝酸1.3mLを加えた。スターラーで攪拌しながら、チタンテトライソプロポキシド(TTIP)15mLを滴下した。暗所下で6日間攪拌して、コロイド水溶液(ゾル)を調製した。これを、洗浄した透析膜(分画分子量3500)に入れて、2750mLの超純水に浸し、スターラーで攪拌しながら8時間透析した。なお、透析に用いる水は1時間ごとに新しい超純水に交換した。8時間透析後のゾル中に含まれるTiOとMoイオン濃度を誘導結合プラズマ発光分光分析装置で測定したところ、それぞれ0.21mol/L、0.0042mol/Lであった。これを以後、2.0atom%Mo-TiOゾルと表記する。ここでatom%は、TiとMoの総物質量に対するMoの物質量の割合を意味する。ゾル中の2.0atom%Mo-TiO粒子の粒子径は、透過型電子顕微鏡で観察したところ10nm以下であった。
【実施例】
【0027】
(フォトクロミズムの評価)
得られた2.0atom%Mo-TiOゾルを石英セルに入れて、窒素ガスを30分間通じて酸素を除去した後、照射光強度を18mW/cmに調整した超高圧水銀ランプ(λmax=365nm)を用いて紫外光を照射し、最初の10分間は1分毎、10分以降は8分毎に吸収スペクトルを測定した。参照セルには超純水を入れた。図1に各時間における吸収スペクトル変化を示す。最も吸光度の低いスペクトルが光照射直前に測定したものである。紫外光照射により紫外部から赤外部の広範囲にわたって吸光度が増加し、540nm付近に吸収ピークが観察された。吸光度は紫外光照射時間の経過と共に増加した。図2は、光照射98分後の真っ黒に着色したゾルの写真である。発色後のゾルは、蓋を開けて空気にさらすことで、元の透明ゾルに戻った。
【実施例】
【0028】
[実施例2]
(0.6atom%Mo-TiOゾルの調製)
0.0591gのNaMoO・2HOを用いて、実施例1と同様にゾルを調製した。8時間透析後のゾル中に含まれるTiOとMoイオン濃度を誘導結合プラズマ発光分析で測定したところ、それぞれ0.20mol/L、0.0012mol/Lであった。これを以後、0.6atom%Mo-TiOゾルと表記する。ゾル中の0.6atom%Mo-TiO粒子の粒子径は、透過型電子顕微鏡で観察したところ10nm以下であった。
(フォトクロミズムの評価)
得られた0.6atom%Mo-TiOゾルを、調製2日後に石英セルに入れて、実施例1と同様に、紫外光を照射し、20秒毎に吸収スペクトルを測定した結果を図3(a)に示す。540nm付近に吸収ピークが観察され、540nm付近の吸光度は紫外光照射時間の経過と共に増加した。図3(b)は、調製30日後に同じ実験を実施した際の結果である。調製2日後と同様な結果が得られており、ゾルが劣化しないことが判明した。両者共に空気にさらすことで、元の透明ゾルに戻った。
【実施例】
【0029】
[実施例3]
(フィルムの調製)
実施例2で調製した0.6atom%Mo-TiOゾル20mL をそれぞれ4つのビーカーにとり、エチレングリコール(EG)1.3、2.0、2.7、3.4mL(モル比:EG/Ti=6、9、12、15)、メチルセルロース(MC)0.3gをそれぞれ加え、約55℃の湯浴中で、ガラス棒を用いてメチルセルロースを分散させ、5分間超音波処理した。その後、氷浴中でスターラーを用いて攪拌し、得られた溶液を、疎水化処理を施したシャーレの上にキャストし、40℃で1日乾燥させて膜を得た。結果を表1にまとめる。表1のとおり透明な膜が得られたが、本成膜条件の場合、モル比(EG/Ti)が15のときは、水分を多く含んだ含水フィルムとなった。
【実施例】
【0030】
【表1】
JP2020128455A_000003t.gif
【実施例】
【0031】
図4(a)はモル比(EG/Ti)=12、図4(b)はモル比(EG/Ti)=6で作製した0.6atom%Mo-TiO/EG/MCフィルムの超高圧水銀ランプ(強度18.3mW/cm、λmax=365nm)照射下での吸収スペクトル変化を示す。フィルムは、ゾルとは異なり、空気中でも黒く発色した。測定は光照射5分ごとに行った。図4(c)には、70分後の黒色化したフィルムの写真も示した。吸収ピーク付近である614nmでの吸光度の時間変化を図5に示した。モル比(EG/Ti)=12の方がわずかに発色が速いが、大差はないことがわかる。両フィルム共に、暗所に1日放置することにより退色した。
【実施例】
【0032】
[実施例4]
(フィルムの調製)
実施例2と同様ではあるが、透析を3日間行って調製した0.5atom%のMo-TiOゾル20mL(ゾル中の0.5atom%のMo-TiOの濃度は0.20mol/L、粒子径は10nm以下)にモル比(EG/Ti)=12となるようにEG(2.7mL)を添加し、さらに添加するMC量を0.3gとしてフィルムを作製した。なお、透析は1日1回水を交換し、乾燥に用いたシャーレの大きさは、内径93mmである。
【実施例】
【0033】
[実施例5]
(0.6atom%Mo-TiO-EG-MC膜フォトクロミズム)
実施例3と同様な手法で、0.6atom%Mo-TiOゾル20mLにエチレングリコール2.7mL(EG/Ti=12)、メチルセルロース0.3gを加え、フィルムを作製した。これを1×3cm程度に切り、石英セルの側面に貼りつけて、超高圧水銀ランプ(照射光強度:18.3mW/cm)を用いて、空気中で紫外光を照射した。10分ごとに吸収スペクトルを測定した。なお、参照セルには空の石英セルを用いた。結果を図6に示す。図6(a)は作製したフィルムのフォトクロミズムによる吸収スペクトル変化を示すグラフである。図6(b)は文字の上にフィルムを置き照射時間を変えたものを並べた写真であり、上から光照射70分後、60分後、50分後、40分後、30分後、20分後、10分後、照射前である。図6(a)及び(b)にみられるように、光照射直後からフィルムは黒っぽく変色し、灰色を経由して光を全く透過しない黒色へと変化した。実験後、フィルムを暗所に1日放置すると、退色した。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の酸化チタンフォトクロミック材料は、紫外線により無色透明と黒色の間を可逆に変化できる光機能性材料である。そのため、着色を利用した紫外線センサー、表示素子、書き消し可能なリライタブルペーパー、偽造防止等の用途に利用できる。特に、本発明の酸化チタンフォトクロミック材料は、酸化タングステン等の酸化物半導体による青色発色と比較すると黒色であることから、暗時と光照射時のコントラストが明瞭となる利点があるため、上記用途に限らず黒色顔料が必要とされる各種分野で利用でき、例えば、遮光性フィルム、プラズマディスプレイ、液晶モニター等のディスプレイなどの用途で利用できる。ディスプレイ分野では、例えば、高コントラスト実現のための遮光層形成用途等に利用できる。また、本発明の酸化チタンフォトクロミック材料は、光照射強度や光照射時間の制御により、透明から黒色まで滑らかなグレースケールでの発色が可能であるため、医療用画像モニター等のグレースケールが必要とされる分野の用途でも利用もできる。本発明の酸化チタンフォトクロミック材料は、その使用形態により、ゾル、複合体形成用溶液、膜、フィルム、成形体等の複合体などとして使用することができ、上記利用目的、用途等に応じて各種形態を利用することができる。
図面
【図1】
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【図2】
1
【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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