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明細書 :半導体基板の製造方法及びそれに用いる下地基板

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-132482 (P2020-132482A)
公開日 令和2年8月31日(2020.8.31)
発明の名称または考案の名称 半導体基板の製造方法及びそれに用いる下地基板
国際特許分類 C30B  29/38        (2006.01)
C30B  25/18        (2006.01)
C23C  16/34        (2006.01)
C23C  16/04        (2006.01)
H01L  21/205       (2006.01)
FI C30B 29/38 D
C30B 25/18
C23C 16/34
C23C 16/04
H01L 21/205
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 16
出願番号 特願2019-029358 (P2019-029358)
出願日 平成31年2月21日(2019.2.21)
発明者または考案者 【氏名】岡田 成仁
【氏名】只友 一行
出願人 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001427、【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4G077
4K030
5F045
Fターム 4G077AA02
4G077AA03
4G077BE15
4G077DB05
4G077EE07
4G077HA02
4G077HA12
4G077TB04
4G077TK08
4K030AA03
4K030AA13
4K030AA17
4K030AA18
4K030BA08
4K030BA38
4K030BB02
4K030BB14
4K030CA04
4K030CA12
4K030FA10
4K030LA14
5F045AA04
5F045AB14
5F045AC12
5F045AC13
5F045AD14
5F045AD15
5F045AF02
5F045AF07
5F045AF09
5F045AF20
5F045BB12
5F045CA10
5F045CA12
5F045CA13
5F045DA53
5F045DB02
5F045EE12
要約 【課題】転位が分散した半導体基板の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体基板の製造方法では、各々、所定方向に沿った断面形状が相対的に小さい三角形を構成するように半導体が結晶成長した複数の小三角ファセット構造21を、それらが所定方向に並んで配設されるように形成し、各々、複数の小三角ファセット構造21のうちの2以上を取り込むとともに、所定方向に沿った断面形状が相対的に大きい三角形を構成するように半導体が結晶成長した複数の大三角ファセット構造22を、それらが所定方向に並んで配設されるように形成する。
【選択図】図3A
特許請求の範囲 【請求項1】
各々、所定方向に沿った断面形状が相対的に小さい三角形を構成するように半導体が結晶成長した複数の小三角ファセット構造を、それらが前記所定方向に並んで配設されるように形成するステップと、
各々、前記複数の小三角ファセット構造のうちの2以上を取り込むとともに、前記所定方向に沿った断面形状が相対的に大きい三角形を構成するように前記半導体が結晶成長した複数の大三角ファセット構造を、それらが前記所定方向に並んで配設されるように形成するステップと、
を含む半導体基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載された半導体基板の製造方法において、
前記複数の大三角ファセット構造のそれぞれの斜めファセット面から、前記半導体がエピタキシャルラテラル成長して相互に隣接する前記大三角ファセット構造間の凹部を埋め込むように第1厚膜成長層を形成するステップと、
前記複数の大三角ファセット構造のそれぞれの上に、前記所定方向に沿った断面形状が逆三角形を構成するように前記半導体が前記大三角ファセット構造の底面と同一の結晶成長面で結晶成長した第2厚膜成長層を形成するステップと、
を更に含み、
前記複数の大三角ファセット構造の上の複数の前記第2厚膜成長層が合体することにより前記第1厚膜成長層を埋設する半導体基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された半導体基板の製造方法において、
前記半導体がGaNである半導体基板の製造方法。
【請求項4】
半導体基板を製造するために用いられる下地基板であって、
基板本体と
前記基板本体上に一定周期で間隔をおいて設けられた複数の長周期マスクと、
前記基板本体上における相互に隣接する前記長周期マスク間に一定周期で間隔をおいて設けられた前記長周期マスクとは構成の異なる複数の短周期マスクと、
を備えた下地基板。
【請求項5】
請求項4に記載された下地基板において、
前記基板本体上に前記複数の長周期マスク及び前記複数の短周期マスクがストライプ状に設けられている下地基板。
【請求項6】
請求項4に記載された下地基板において、
前記基板本体上に、前記長周期マスクが、平面視で相対的に大きい複数の六角形を形成するように設けられているとともに、前記短周期マスクが、前記長周期マスクの各六角形内に、平面視で相対的に小さい複数の六角形を形成するように設けられており、前記複数の長周期マスク及び前記複数の短周期マスクが、前記基板本体上に、三方向にストライプ状に設けられた下地基板。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれかに記載された下地基板において、
前記短周期マスクは、その幅が前記長周期マスクとは構成が異なる下地基板。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板の製造方法及びそれに用いる下地基板に関する。
【背景技術】
【0002】
高効率の発光デバイスやパワーデバイスを得るためには、転位密度の低い高品質なGaN基板が必要である。例えば、特許文献1及び2には、転位密度の低いGaN基板を製造することを目的として、下地基板上に複数のGaNの三角ファセット構造を形成した後、相互に隣接する三角ファセット構造間の凹部を埋め込むように第1厚膜成長層を形成し、複数の三角ファセット構造のそれぞれの上に逆三角形の第2厚膜成長層を形成するとともに、相互に隣接する第2厚膜成長層を合体させて第1厚膜成長層を埋設することが開示されている。また、非特許文献1及び2にも、GaNを低転位化する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2018-30763号公報
【特許文献2】特開2018-30764号公報
【0004】

【非特許文献1】Journal of Crystal Growth 350 (2012) 44-49 Huiyuan Geng, Haruo Sunakawa, Norihiko Sumi, Kazutomi Yamamoto, A. Atsushi Yamaguchi, Akira Usui Growth and strain characterization of high quality GaN crystal by HVPE
【非特許文献2】Journal of Crystal Growth 305 (2007) 377-383 Kensaku Motoki, Takuji Okahisa, Ryu Hirota, Seiji Nakahata,Koji Uematsu, Naoki Matsumoto Dislocation reduction in GaN crystal by advanced-DEEP
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、転位が分散した半導体基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、各々、所定方向に沿った断面形状が相対的に小さい三角形を構成するように半導体が結晶成長した複数の小三角ファセット構造を、それらが前記所定方向に並んで配設されるように形成するステップと、各々、前記複数の小三角ファセット構造のうちの2以上を取り込むとともに、前記所定方向に沿った断面形状が相対的に大きい三角形を構成するように前記半導体が結晶成長した複数の大三角ファセット構造を、それらが前記所定方向に並んで配設されるように形成するステップとを含む半導体基板の製造方法である。
【0007】
本発明は、半導体基板を製造するために用いられる下地基板であって、基板本体と、前記基板本体上に一定周期で間隔をおいて設けられた複数の長周期マスクと、前記基板本体上における相互に隣接する前記長周期マスク間に一定周期で間隔をおいて設けられた前記長周期マスクとは構成の異なる複数の短周期マスクと、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の小三角ファセット構造を形成し、各々、その複数の小三角ファセット構造のうちの2以上を取り込んだ複数の大三角ファセット構造を形成することにより、転位が分散した半導体基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】実施形態に係る半導体基板の製造方法で用いる下地基板の斜視図である。
【図1B】実施形態に係る半導体基板の製造方法で用いる下地基板の平面図である。
【図1C】図1BにおけるIC-IC断面図である。
【図2A】小三角ファセット構造形成ステップにおける下地基板上の結晶成長状態を示す斜視図である。
【図2B】小三角ファセット構造形成ステップにおける下地基板上の結晶成長状態を示す断面図である。
【図3A】大三角ファセット構造形成ステップにおける下地基板上の結晶成長状態を示す斜視図である。
【図3B】大三角ファセット構造形成ステップにおける下地基板上の結晶成長状態を示す断面図である。
【図4A】厚膜成長ステップの前半における下地基板上の結晶成長状態を示す断面図である。
【図4B】厚膜成長ステップの変形例の前半における下地基板上の結晶成長状態を示す断面図である。
【図5A】厚膜成長ステップの後半における下地基板上の結晶成長状態を示す断面図である。
【図5B】厚膜成長ステップの変形例の後半における下地基板上の結晶成長状態を示す断面図である。
【図6】下地基板の変形例の平面図である。
【図7A】実施例1で用いた下地基板の平面図である。
【図7B】実施例2で用いた下地基板の平面図である。
【図7C】実施例3で用いた下地基板の平面図である。
【図8】下地基板上にGaNを結晶成長させたときのタイミングチャートである。
【図9】下地基板上に結晶成長させたGaNの断面の蛍光顕微鏡像である。
【図10】転位密度の分布を求める方法の説明図である。
【図11】GaN層の表面のA~E領域での転位密度の分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。

【0011】
実施形態に係る半導体基板の製造方法は、下地基板準備工程と半導体結晶成長工程とを備える。なお、以下では、GaNを半導体とするGaN基板の製造例を示すが、特にこれに限定されるものではなく、半導体がAlGaN、InGaN、InAlGaN、InAlN、InN等であってもよい。

【0012】
(下地基板準備工程)
下地基板準備工程では、GaN基板を製造するために用いられる図1A~1Cに示すような下地基板10を準備する。下地基板10は、基板本体11と、各々、その上に設けられた長周期マスク12及び短周期マスク13とを備える。

【0013】
基板本体11は、マスク間に露出する本体表面が、後にそこから結晶成長させる同一の半導体のGaNで構成されていることが好ましい。したがって、基板本体11は、GaN基板、又は、例えば、サファイア基板、ZnO基板、SiC基板等の基材表面にGaN膜が設けられたものであることが好ましい。基板表面を構成するGaNの主面は、特に限定されるものではないが、c面であることが好ましい。なお、基板本体11は、例えば、サファイア基板、ZnO基板、SiC基板等であってもよい。

【0014】
長周期マスク12は、例えば、二酸化珪素(SiO)、窒化珪素(SiNx)等で形成されている。長周期マスク12は、基板本体11上に、複数が一定周期Pで間隔Wをおいて一方向に平行にストライプ状に延びるように設けられている。長周期マスク12は、幅方向が基板本体11のa軸方向又はm軸方向に一致するように設けられていることが好ましい。

【0015】
長周期マスク12の幅wは、好ましくは10μm以上100μm以下、より好ましくは10μm以上50μm以下、更に好ましくは10μm以上20μm以下である。長周期マスク12の幅wは、長さ方向に一定であることが好ましい。

【0016】
相互に隣接する長周期マスク12間の間隔Wは、好ましくは100μm以上3000μm以下、より好ましくは100μm以上1000μm以下、更に好ましくは100μm以上900μm以下、より更に好ましくは100μm以上500μm以下である。相互に隣接する長周期マスク12間の間隔Wは、長さ方向に一定であることが好ましい。相互に隣接する長周期マスク12間の間隔Wは、長周期マスク12の幅wよりも大きいことが好ましい。相互に隣接する長周期マスク12間の間隔Wの長周期マスク12の幅wに対する比(W/w)は、好ましくは5以上50以下、より好ましくは5以上25以下、更に好ましくは10以上25以下である。

【0017】
長周期マスク12の幅w及び相互に隣接する長周期マスク12間の間隔Wの和、すなわち、長周期マスク12の周期Pは、好ましくは100μm以上1000μm以下、より好ましくは100μm以上500μm以下である。長周期マスク12の厚さは、好ましくは10nm以上500nm以下、より好ましくは10nm以上200nm以下である。

【0018】
短周期マスク13は、例えば、二酸化珪素(SiO)、窒化珪素(SiNx)等で形成されている。短周期マスク13は、基板本体11上に長周期マスク12及び短周期マスク13を同時形成する観点から、長周期マスク12と同一材料で形成されていることが好ましい。短周期マスク13は、基板本体11上における相互に隣接する長周期マスク12間に、長周期マスク12と平行に、複数が一定周期Pで間隔Wをおいて一方向に平行にストライプ状に延びるように設けられている。

【0019】
短周期マスク13は、その幅wが長周期マスク12とは構成が異なる。短周期マスク13の幅wは、長周期マスク12の幅wよりも小さいことが好ましい。短周期マスク13の幅wは、好ましくは1μm以上15μm以下、より好ましくは2μm以上10μm以下、更に好ましくは3μm以上5μm以下である。短周期マスク13の幅wの長周期マスク12の幅wに対する比(w/w)は、好ましくは1/10以上1/2以下である。短周期マスク13の幅wは、長さ方向に一定であることが好ましい。

【0020】
相互に隣接する短周期マスク13間の間隔Wは、好ましくは10μm以上80μm以下、より好ましくは15μm以上60μm以下、更に好ましくは20μm以上40μm以下である。相互に隣接する短周期マスク13間の間隔Wは、相互に隣接する長周期マスク12間の間隔Wよりも短いが、前者の後者に対する比(W/W)は、好ましくは1/10以上1/2以下、より好ましくは1/5以上1/2以下である。相互に隣接する短周期マスク13間の間隔Wは、長さ方向に一定であることが好ましい。相互に隣接する短周期マスク13間の間隔Wは、幅方向の両端の短周期マスク13のそれぞれと、それに隣接した長周期マスク12との間隔と同一であることが好ましい。つまり、相互に隣接する長周期マスク12間の間隔Wが複数の短周期マスク13によって等分割されていることが好ましい。

【0021】
相互に隣接する短周期マスク13間の間隔Wは、短周期マスク13の幅wよりも大きいことが好ましい。相互に隣接する短周期マスク13間の間隔Wの短周期マスク13の幅wに対する比(W/w)は、好ましくは2以上20以下、より好ましくは5以上15以下、更に好ましくは8以上12以下である。相互に隣接する短周期マスク13間の間隔Wの短周期マスク13の幅wに対する比(W/w)は、相互に隣接する長周期マスク12間の間隔Wの長周期マスク12の幅wに対する比(W/w)よりも小さいことが好ましい。

【0022】
短周期マスク13の幅w及び相互に隣接する短周期マスク13間の間隔Wの和、すなわち、短周期マスク13の周期Pは、好ましくは10μm以上80μm以下、より好ましくは15μm以上60μm以下、更に好ましくは20μm以上40μm以下である。短周期マスク13の厚さは、好ましくは10nm以上500nm以下、より好ましくは10nm以上200nm以下である。短周期マスク13の厚さは、基板本体11上に長周期マスク12及び短周期マスク13を同時形成する観点から、長周期マスク12の厚さと同一であることが好ましい。なお、長周期のマスク12を選択成長させれば、短周期マスク13の厚さを、長周期のマスク12の厚さよりも薄くすることも可能である。

【0023】
(半導体結晶成長工程)
半導体結晶成長工程では、気相成長装置を用い、反応室において、気相成長法のHVPE法(ハイドライド気相成長法:Hydride Vapor Phase Epitaxy)により、下地基板10の長周期マスク12及び短周期マスク13を設けた側の表面に原料ガスを接触させることにより半導体のGaNを結晶成長させる。原料ガスには、Ga源ガスとしてGaとHClガスとから得られるGaClガスが挙げられ、N源ガスとしてNHガスが挙げられる。また、キャリアガスとして例えばHガスやNガスが挙げられる。

【0024】
実施形態に係る半導体基板の製造方法の半導体結晶成長工程は、小三角ファセット構造形成ステップ、大三角ファセット構造形成ステップ、及び厚膜成長ステップを含む。

【0025】
<小三角ファセット構造形成ステップ>
小三角ファセット構造形成ステップでは、図2A及びBに示すように、下地基板10のマスク間に露出した基板本体11の本体表面を起点としてGaNを結晶成長させる。このとき、GaNは、長周期マスク12及び短周期マスク13により結晶成長が規制され、マスク間に露出した基板本体11の本体表面からエピタキシャル成長する。したがって、マスク間に露出した基板本体11の本体表面がGaNのc面であれば、GaNがc面成長する。そして、GaNは、各マスク間において、結晶成長するに従って所定方向である長周期マスク12及び短周期マスク13の幅方向の寸法が両側から漸次狭くなった後に最終的に線状に収束する。

【0026】
以上のようにして、下地基板10上に、各々、長周期マスク12及び短周期マスク13の幅方向に沿った断面形状が相対的に小さい三角形を構成するようにGaNが結晶成長した突条の複数の小三角ファセット構造21を、それらが長周期マスク12及び短周期マスク13の幅方向に並んで配設されるように形成する。ここで、本出願における「三角形」は、3本の線分の辺で構成された三角形の他、3本の辺のうちの少なくとも1本が弓形に外向きに膨出又は内向きに没入した略三角形も含む。

【0027】
小三角ファセット構造形成ステップでのGaNの結晶成長条件は、小三角ファセット構造21の形成に好適なように適宜選択すればよい。

【0028】
<大三角ファセット構造形成ステップ>
大三角ファセット構造形成ステップでは、図3A及びBに示すように、小三角ファセット構造21上にGaNを結晶成長させる。このとき、GaNは、小三角ファセット構造21の表面からエピタキシャル成長する。そして、GaNは、各長周期マスク12間において、それらの間に形成された小三角ファセット構造21を全て取り込み、結晶成長するに従って長周期マスク12及び短周期マスク13の幅方向の寸法が両側から漸次狭くなった後に最終的に線状に収束する。

【0029】
以上のようにして、下地基板10上に、各々、長周期マスク12間の小三角ファセット構造21を全て取り込むとともに、長周期マスク12及び短周期マスク13の幅方向に沿った断面形状が相対的に大きい三角形を構成するようにGaNが結晶成長した突条の複数の大三角ファセット構造22を、それらが長周期マスク12及び短周期マスク13の幅方向に並んで配設されるように形成する。なお、この大三角ファセット構造形成ステップは、小三角ファセット構造形成ステップと同時進行であってもよい。

【0030】
大三角ファセット構造形成ステップでのGaNの結晶成長条件は、小三角ファセット構造形成ステップと同一であってもよく、大三角ファセット構造22の形成に好適なように適宜選択すればよい。

【0031】
<厚膜成長ステップ>
厚膜成長ステップでは、大三角ファセット構造22上にGaNを結晶成長させる。このとき、図4Aに示すように、GaNは、複数の大三角ファセット構造22のそれぞれの斜面の斜めファセット面からエピタキシャルラテラル成長(Epitaxial Lateral Overgrowth:以下「ELO成長」という。)して相互に隣接する大三角ファセット構造22間の凹部を埋め込むように第1厚膜成長層23を形成する(第1厚膜成長ステップ)。それと同時に、GaNは、複数の大三角ファセット構造22のそれぞれの上に、その頂上に連続して、大三角ファセット構造22の底面、したがって、下地基板10の表面のマスク間に露出した基板本体11の本体表面と同一の結晶成長面で結晶成長し、結晶成長に伴って長周期マスク12及び短周期マスク13の幅方向の寸法が両側に漸次拡大し、長周期マスク12及び短周期マスク13の幅方向に沿った断面形状が逆三角形を構成するように第2厚膜成長層24を形成する(第2厚膜成長ステップ)。そして、これらの第1及び第2厚膜成長層23,24に加え、小三角ファセット構造21及び大三角ファセット構造22を含み、全体として単一のGaN層20(半導体層)が構成される。

【0032】
また、下地基板10の構成及びGaNの結晶成長条件を適宜選択すれば、図4Bに示すように、GaNは、複数の大三角ファセット構造22のそれぞれの斜面の斜めファセット面からELO成長して相互に隣接する大三角ファセット構造22間の凹部を埋め込むように第1厚膜成長層23を形成する(第1厚膜成長ステップ)。しかる後、GaNは、第1厚膜成長層23の形成とともに、複数の大三角ファセット構造22のそれぞれの上に、大三角ファセット構造22の頂上から間隔をおいて、大三角ファセット構造22の底面と同一の結晶成長面で結晶成長し、結晶成長に伴って長周期マスク12及び短周期マスク13の幅方向の寸法が両側に漸次拡大し、長周期マスク12及び短周期マスク13の幅方向に沿った断面形状が逆三角形を構成するように第2厚膜成長層24を形成する(第2厚膜成長ステップ)。そして、これらの第1及び第2厚膜成長層23,24に加え、小三角ファセット構造21及び大三角ファセット構造22を含んで、全体として単一のGaN層20(半導体層)が構成される。

【0033】
ここで、本出願における「逆三角形」は、3本の線分の辺で構成された逆三角形の他、3本の辺のうちの少なくとも1本が弓形に外向きに膨出又は内向きに没入した略逆三角形も含む。

【0034】
第1及び第2厚膜成長層23,24におけるGaNの結晶成長が進むと、図5A(図4Aに対応)及び5B(図4Bに対応)に示すように、第1厚膜成長層23による相互に隣接する大三角ファセット構造22間の凹部の埋め込みが完了し、それに続いて、複数の大三角ファセット構造22の上の複数の第2厚膜成長層24が合体することにより第1厚膜成長層23を埋設し、最終的に、小三角ファセット構造21及び大三角ファセット構造22並びに第1及び第2厚膜成長層23,24を含むGaN層20の表面の平坦化が図られる。

【0035】
厚膜成長ステップでのGaNの結晶成長条件は、小三角ファセット構造形成ステップ又は大三角ファセット構造形成ステップと同一であってもよく、第1及び第2厚膜成長層23,24の形成に好適なように適宜選択すればよい。

【0036】
以上のようにして下地基板10上に作製したGaN層20に水平方向に亀裂を入れて下地基板10から分離することにより半導体基板のGaN基板を得ることができる。この実施形態に係る半導体基板の製造方法によれば、上記の通り、下地基板10上に、複数の小三角ファセット構造21を形成し、各々、その複数の小三角ファセット構造21のうちの2以上を取り込んだ複数の大三角ファセット構造22を形成することにより、転位が分散したGaN基板を製造することができる。これは、小三角ファセット構造21からのELO成長及び大三角ファセット構造22からのELO成長の2回のELO成長により、転位の集中と分散とが2回起こったためであると考えられる。

【0037】
得られたGaN基板は、半導体発光素子(LED)、半導体レーザ(LD)、太陽電池、その他の電子デバイス等に用いることができる。このGaN基板は、転位が分散しているので、リーク電流を低減することができるという観点から、パワーデバイスに用いることが特に好適である。

【0038】
なお、上記実施形態では、各々、一方向にストライプ状に延びる長周期マスク12及び短周期マスク13が設けられた下地基板10を用いたが、特にこれに限定されるものではなく、例えば、図6に示すように、基板本体11上に、平面視で相対的に大きい複数の六角形のハニカム形状を形成するように長周期マスク12が設けられるとともに、長周期マスク12の各六角形内に、平面視で相対的に小さい複数の六角形のハニカム形状を形成するように短周期マスク13が設けられ、したがって、三方向にストライプ状に延びる長周期マスク12及び短周期マスク13が設けられた下地基板10を用いてもよい。

【0039】
また、上記実施形態では、短周期マスク13が長周期マスク12と幅が異なる構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、短周期マスク13が長周期マスク12と幅が同一で且つ厚さが異なる構成であってもよい。

【0040】
また、上記実施形態では、長周期マスク12及び短周期マスク13の2種のマスクを設けた下地基板10を用いて小三角ファセット構造21及び大三角ファセット構造22の二段階で三角ファセット構造を形成する構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、短周期マスク間に一定周期で間隔をおいて第3のマスクを設けた下地基板を用いて三段階で三角ファセット構造を形成する構成であってもよく、更に4種以上のマスクを設けた下地基板を用いて多段階で三角ファセット構造を形成する構成であってもよい。
【実施例】
【0041】
(GaN層の形成)
以下の実施例1~3及び比較例のGaN層の形成実験を行った。なお、表1には、それぞれで用いた下地基板の構成を示す。
【実施例】
【0042】
<実施例1>
主面がc面のサファイア基板上にMOVPE法で厚さ3μm程度のGaN膜をエピタキシャル成長させた基板本体11上に、各々、a軸方向に延びるようにストライプ状に延びるSiOの長周期マスク12及び短周期マスク13を設けた下地基板10を作製した。図7Aに示すように、長周期マスク12の幅wを10μm及び長周期マスク12間の間隔Wを200μmとした。短周期マスク13の幅wを3μm及び短周期マスク13間の間隔Wを26μmとし、長周期マスク12間の間隔Wを短周期マスク13で7等分に分割した。
【実施例】
【0043】
そして、この下地基板上にHVPE法でGaNを結晶成長させた。具体的には、図8に示すように、まず、Nガスを流しながら、下地基板の温度を500℃まで昇温した。下地基板の温度が500℃になったとき、Nガスを停止するとともに、Hガス及びNHガスを流し始めた。Hガス及びNHガスを流しながら、下地基板の温度を更に1040℃まで昇温した。しかる後、Hガス及びNHガスに加えてHClガスを流し始め、HClガスを180分間流して下地基板上にGaNを結晶成長させた(第1ステップ)。このとき、HClガスの流量を0.40slm及びNHガスの流量を24.0slmとした(V/III比=60)。
【実施例】
【0044】
次いで、HClガスの供給時間が180分になったときにHClガスを停止し、その後、Hガス及びNHガスを継続して流しながら、下地基板の温度を1100℃まで昇温した。下地基板の温度が1100℃になったとき再びHClガスを流し始め、HClガスを330分間流してGaNを結晶成長させた(第2ステップ)。このとき、HClガスの流量を0.80slm及びNHガスの流量を8.0slmとした(V/III比=10)。
【実施例】
【0045】
続いて、HClガスの供給時間が330分になったときHClガスを停止し、Hガス及びNHガスを継続して流しながら、下地基板の温度を1000℃まで下げた。下地基板の温度が1000℃になったとき再びHClガスを流し始め、HClガスを30分間流してGaNを結晶成長させた(第3ステップ)。このとき、HClガスの流量は0.26slm及びNHガスの流量は8.0slmとした(V/III比=30)。
【実施例】
【0046】
HClガスの供給時間が30分になったときHClガスを停止し、Hガス及びNHガスを継続して流しながら、下地基板の温度を300℃まで下げた。下地基板の温度が300℃になったとき、Hガス及びNHガスを停止するとともに、Nガスを流し始め、そのまま室温まで冷却した。
【実施例】
【0047】
第1~第3ステップのGaNの結晶成長により、図9に示すように、下地基板上には、小三角ファセット構造及び大三角ファセット構造並びに第1及び第2厚膜成長層を含む表面が平坦なGaN層が形成された。なお、第1ステップの結晶成長条件は、小三角ファセット構造及び大三角ファセット構造の形成に好適なものであり、第2及び第3ステップの結晶成長条件は、第1及び第2厚膜成長層の形成による表面の平坦化に好適なものである。
【実施例】
【0048】
<実施例2>
図7Bに示すように、短周期マスク13の幅wを5μm及び短周期マスク13間の間隔Wを36μmとし、長周期マスク12間の間隔Wを短周期マスク13で5等分に分割した下地基板10を用いたことを除いて実施例1と同様にしてGaN層を形成した。
【実施例】
【0049】
<実施例3>
図7Cに示すように、短周期マスク13の幅wを4μm及び短周期マスク13間の間隔Wを47μmとし、長周期マスク12間の間隔Wを短周期マスク13で4等分に分割した下地基板10を用いたことを除いて実施例1と同様にしてGaN層を形成した。
【実施例】
【0050】
<比較例>
長周期マスクのみを設け、短周期マスクを設けていない下地基板を用いたことを除いて実施例1~3と同様にしてGaN層を形成した。この比較例では、第1~第3ステップのGaNの結晶成長により、下地基板上には、大三角ファセット構造並びに第1及び第2厚膜成長層を含む表面が平坦なGaN層が形成された。
【実施例】
【0051】
【表1】
JP2020132482A_000003t.gif
【実施例】
【0052】
(転位密度の分布)
実施例1~3及び比較例のそれぞれで得られたGaN層の表面について、図10に示すように、長周期マスク12の1ピッチ分の60μm幅の部分を、長周期マスクの幅方向に5等分に分割し、各々、21μm×60μmの長方形のA領域、B領域、C領域、D領域、及びE領域とした。そして、A~E領域のそれぞれについて、表面のCL像の暗点密度から転位密度を求めた。また、A~E領域の平均転位密度を算出した。
【実施例】
【0053】
図11は、A~E領域での転位密度の分布を示す。これによれば、図7A~Cに示すような基板本体11上に長周期マスク12及び短周期マスク13を設けた下地基板10を用い、小三角ファセット構造及び大三角ファセット構造を形成してGaN層を構成した実施例1~3では、A~E領域間に転位密度の大きなばらつきは認められず、したがって、転位が分散していることが分かる。一方、基板本体上に長周期マスクのみを設けた下地基板を用い、大三角ファセット構造のみを形成してGaN層を構成した比較例では、A~E領域間に転位密度の大きなばらつきが認められ、転位が偏在していることが分かる。
【実施例】
【0054】
表2は、実施例1~3及び比較例の平均転位密度を示す。これによれば、実施例1~3の方が比較例よりも平均転位密度が低く、したがって、実施例1~3では、転位が分散しているのに加えて、全体として低転位化されていることが分かる。
【実施例】
【0055】
【表2】
JP2020132482A_000004t.gif

【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、半導体基板の製造方法及びそれに用いる下地基板の技術分野について有用である。
【符号の説明】
【0057】
10 下地基板
11 基板本体
12 長周期マスク
13 短周期マスク
20 GaN層
21 小三角ファセット構造
22 大三角ファセット構造
23 第1厚膜成長層
24 第2厚膜成長層
図面
【図1A】
0
【図1B】
1
【図1C】
2
【図2A】
3
【図2B】
4
【図3A】
5
【図3B】
6
【図4A】
7
【図4B】
8
【図5A】
9
【図5B】
10
【図6】
11
【図7A】
12
【図7B】
13
【図7C】
14
【図8】
15
【図9】
16
【図10】
17
【図11】
18