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明細書 :高温耐性能が増強した酢酸菌

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-162500 (P2020-162500A)
公開日 令和2年10月8日(2020.10.8)
発明の名称または考案の名称 高温耐性能が増強した酢酸菌
国際特許分類 C12N   1/20        (2006.01)
C12N  15/54        (2006.01)
FI C12N 1/20 ZNAA
C12N 15/54
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 16
出願番号 特願2019-067218 (P2019-067218)
出願日 平成31年3月29日(2019.3.29)
発明者または考案者 【氏名】白井 睦訓
【氏名】荻野 英賢
出願人 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
審査請求 未請求
テーマコード 4B065
Fターム 4B065AA02X
4B065AA02Y
4B065AC02
4B065BA16
4B065CA10
4B065CA42
要約 【課題】高温において増殖能力が向上した微生物の提供。
【解決手段】染色体中の以下の(a)~(c)のいずれか記載の遺伝子が破壊、又は当該遺伝子の発現を抑制した酢酸菌。(a)特定の配列からなる塩基配列がコードする、二成分制御系を構成するヒスチジンキナーゼ遺伝子;(b)特定の配列からなる塩基配列がコードする、二成分制御系を構成する応答制御因子kdpE遺伝子;(c)特定の配列からなる塩基配列がコードする、LysRタイプ転写調節因子遺伝子。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
染色体中の以下の(a)~(c)のいずれか記載の遺伝子が破壊、又は当該遺伝子の発現を抑制した酢酸菌。
(a)配列番号1に示す塩基配列、又は配列番号1に示す塩基配列と90%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、二成分制御系を構成するヒスチジンキナーゼをコードする遺伝子;
(b)配列番号2に示す塩基配列、又は配列番号2に示す塩基配列と90%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、二成分制御系を構成する応答制御因子kdpEをコードする遺伝子;
(c)配列番号3若しくは4に示す塩基配列、又は配列番号3若しくは4に示す塩基配列と90%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、LysRタイプ転写調節因子をコードする遺伝子;
【請求項2】
染色体中の(a)~(c)のいずれかの遺伝子の全部又は一部が欠失していることを特徴とする請求項1記載の酢酸菌。
【請求項3】
酢酸菌が、アセトバクター属に属する酢酸菌であることを特徴とする請求項1又は2記載の酢酸菌。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高温耐性能が増強した酢酸菌に関する。
【背景技術】
【0002】
酢酸菌(Acetobacter pasteurianus)は、伝統的に造酢などに用いられている有用微生物である。この酢酸菌は、アルコール及び酢酸に対する耐性や、多種類の有機物の代謝や、多糖、免疫賦活化剤及び食品添加物をはじめとする有用二次代謝産物の生産など非常に多彩な機能を持つ。そのため、ゲノム解析も進められており、本発明者らは、伝統的に工業利用されれきた造酢株である酢酸菌Acetobacter pasteurianus 3283株(IFO 3208-01株)及び同菌株の高温育種耐性株(IFO 3283-01-42C株)の全ゲノム配列を決定した(非特許文献1参照)。
【0003】
酢酸菌のなかでも、特にアセトバクター属(Acetobacter)やグルコンアセトバクター属(Gluconacetobactor)に属する酢酸菌が工業的な酢酸発酵に利用されている。アセトバクター属酢酸菌の培養においては、発酵温度が30℃より高くなると急激に生育能力及び酢酸発酵能力が低下する。このため、通常の発酵は25℃~30℃で行われる。しかし、夏期には気温が30℃以上になること、また、発酵によって熱が発生するため、酢酸発酵が進むにつれて発酵槽が40~45℃以上となってしまうことがある。したがって発酵槽を25℃~30℃に保つための冷却設備が必要となるが、その費用負担は大きい。
【0004】
そこで、高温適応能力を有する変異株の開発が進められている。たとえば、タイで耐熱性発酵微生物を分離し、段階的に培養温度を繰り返し培養することにより39~41℃での適応能力が付与された、酢酸発酵能力を有する酢酸菌(特許文献1、非特許文献2参照)や、marR遺伝子又はpermease遺伝子を破壊し、高温下での生育能力や酢酸発酵能力を備えた、酢酸生産能が向上した酢酸菌の育種方法(特許文献2参照)が開示されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2010-110298号公報
【特許文献2】特開2014-064477号公報
【0006】

【非特許文献1】Shirai et.al., Nucleic AcidsResearch, 2009, Vol.37, No.17
【非特許文献2】Matsutani M et. al., J Biotechnol.165(2):109-119 (2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、高温において増殖能力が向上した微生物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
酢酸菌A. pasteurianusのゲノムの情報解析は、食酢業界やゲノム情報源の展開に大きく貢献するだけでなく、産業利用可能な有用遺伝子の探索にも寄与する。すなわち、(1)菌膜多糖形成機構(菌膜多糖、新規多糖の生成の分子機構)、(2)酢酸耐性機構、さらに、(3)酢酸発酵に有害な酢酸過酸化機構、(4)呼吸鎖およびそのエネルギー代謝全般や生育制御系、等をゲノム情報から解明することで、全く新しい有用遺伝子が探索できる可能性も考えられる。そこで、本発明者らは、産業有用性が高いが遺伝学的に解明が進んでいない酢酸菌の示す特異な現象を、発酵生理学・生化学及び遺伝生化学のレベルで明らかにする研究を進めていた。かかる研究の中で、転写調節因子LysR、2成分制御系ヒスチジンキナーゼ又は2成分制御系の応答制御因子kdpEの発現が酢酸菌の高温耐性能に関与することを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1)染色体中の以下の(a)~(c)のいずれか記載の遺伝子が破壊、又は当該遺伝子の発現を抑制した酢酸菌。
(a)配列番号1に示す塩基配列、又は配列番号1に示す塩基配列と90%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、二成分制御系を構成するヒスチジンキナーゼをコードする遺伝子;
(b)配列番号2に示す塩基配列、又は配列番号2に示す塩基配列と90%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、二成分制御系を構成する応答制御因子kdpEをコードする遺伝子;
(c)配列番号3若しくは4に示す塩基配列、又は配列番号3若しくは4に示す塩基配列と90%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、LysRタイプ転写調節因子をコードする遺伝子;
(2)染色体中の(a)~(c)のいずれかの遺伝子の全部又は一部が欠失していることを特徴とする上記(1)記載の酢酸菌。
(3)酢酸菌が、アセトバクター属に属する酢酸菌であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の酢酸菌。
【発明の効果】
【0010】
本発明の酢酸菌を用いることで、高温で培養しても増殖が可能となり、培養時のコストを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施例に用いた菌株の名称、特徴、及び入手源を示す図である。
【図2】本実施例に用いたプラスミドの名称、構造、及び入手源を示す図である。
【図3】本実施例に用いたプライマーの名称、ターゲット遺伝子、及び塩基配列を示す図である。
【図4A】本実施例に用いたpRCプラスミドの構築方法を示す図である。
【図4B】本実施例に用いたpRC-PompA_13830、pRC-PompA_13890、pRC-PompA_15910_15920、pRC-PompA_15910、及びpRC-PompA_15920プラスミドの構築方法を示す図である。
【図4C】本実施例に用いたpRC-PompA_15930_15950、及びpRC-PompA_15960プラスミドの構築方法を示す図である。
【図4D】本実施例に用いたpΔ03790、pΔ13830、pΔ13890、及びpΔ41700プラスミドの構築方法を示す図である。
【図5】温度感受性菌株(IFO3283-01)及び高温耐性菌株(IFO3283-01-42C)の網羅的mRNA発現解析により得られた、トランスクリプトームのマッピング結果を示す図である。
【図6】41℃の温度条件下で、高温耐性菌株(IFO3283-01-42C)において温度感受性菌株(IFO3283-01)よりも発現が低い遺伝子を示す図である。
【図7】41℃の温度条件下で、高温耐性菌株(IFO3283-01-42C)において温度感受性菌株(IFO3283-01)よりも発現が高い遺伝子を示す図である。
【図8】温度感受性菌株(IFO3283-01)及び高温耐性菌株(IFO3283-01-42C)の網羅的mRNA発現解析により得られた、MAプロットを示す図である。グラフ中のスポットは各遺伝子の発現レベルを、(LogIFO3283-01-42C+LogIFO3283-01)/2対fold-change(LogIFO3283-01-42C-LogIFO3283-01)として示している。30℃における▲、41℃における◆で示されるスポットが有意に変化した遺伝子を示す(FDR<0.01)。
【図9】LysRタイプ転写調節因子遺伝子が、A. pasteurianusの高温耐性に及ぼす影響を調べた結果を示す図である。図中、「IFO3283-01-42C+13830」及び「IFO3283-01-42C+13890」は、IFO3283-01-42CにLysRタイプ転写調節因子遺伝子(APA01_13830又はAPA01_13890)を導入した菌株をそれぞれ示す。なお、「IFO3283-01-42C+13830」は図1中の「A.pasteurianus IFO 3283-01-42C-PompA-APA01_13830」に対応し、「IFO 3283-01-42C+13890」は、図1中の「A.pasteurianus IFO 3283-01-42C-PompA-APA01_13890」に対応する。
【図10】LysRタイプ転写調節因子遺伝子又はそのホモログ遺伝子の破壊が、A.pasteurianusの高温耐性に及ぼす影響を調べた結果を示す図である。図中、「IFO3283-01Δ13890」及び「IFO3283-01Δ13830」は、IFO3283-01において、LysRタイプ転写調節因子遺伝子であるAPA01_13890又はAPA01_13830を破壊した菌株をそれぞれ示し、「IFO3283-01Δ03790」及び「IFO3283-01Δ41700」は、LysRタイプ転写調節因子遺伝子(APA01_13830)のホモログであるAPA01_03790又はAPA01_41700を破壊した菌株をそれぞれ示す。なお、、「IFO3283-01Δ13890」は図1中の「A.pasteurianus IFO 3283-01ΔAPA01_13890」に対応し、「IFO3283-01Δ13830」は図1中の「A.pasteurianus IFO 3283-01ΔAPA01_13830」に対応し、「IFO3283-01Δ3790」は図1中の「A.pasteurianus IFO 3283-01ΔAPA01_03790」に対応し、「IFO3283-01Δ41700」は図1中の「A.pasteurianus IFO 3283-01ΔAPA01_41700」に対応する。
【図11】本発明の遺伝子破壊A. pasteurianus菌株における、APA01_03270、APA01_03290、APA01_15320、APA01_15500、APA01_05860、APA01_06250、APA01_07420、APA01_16430、及びAPA01_15920のmRNA発現量を調べた結果を示す図である。
【図12】本発明の遺伝子破壊A. pasteurianus菌株における、APA01_15910、及びAPA01_15960のmRNA発現量を調べた結果を示す図である。
【図13】本発明の遺伝子過剰発現A. pasteurianus菌株の、温度感受性試験の結果を示す図である。図中、「IFO3283-01-42C+15960」は、IFO3283-01-42CにおいてAPA01_15960を過剰発現させた菌株を、「IFO3283-01-42C+15930_15950」は、IFO3283-01-42CにおいてAPA01_15930-APA01_15950を過剰発現させた菌株を、「IFO3283-01-42C+15910_15920」はIFO3283-01-42CにおいてAPA01_15910-APA01_15920を過剰発現させた菌株をそれぞれ示す。また、図中、「IFO3283-01-42C+15920」及び「IFO3283-01-42C+15910」は、IFO3283-01-42CにおいてAPA01_15910又はAPA01_15920を剰発現させた菌株をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明における酢酸菌としては、染色体上の以下の(a)~(c)のいずれか記載の遺伝子が破壊、又は当該遺伝子の発現を抑制した酢酸菌であればよく、かかる酢酸菌を用いれば高温での培養も可能となり、培養時のコストを低減することが可能となる。
(a)配列番号1に示す塩基配列、又は配列番号1に示す塩基配列と90%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、二成分制御系を構成するヒスチジンキナーゼをコードする遺伝子;
(b)配列番号2に示す塩基配列、又は配列番号2に示す塩基配列と90%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、二成分制御系を構成する応答制御因子kdpEをコードする遺伝子;
(c)配列番号3若しくは4に示す塩基配列、又は配列番号3若しくは4に示す塩基配列と90%以上の配列同一性を有する塩基配列からなり、LysRタイプ転写調節因子をコードする遺伝子;

【0013】
本明細書における酢酸菌は、野生型の酢酸菌と比較して40℃~42℃、好ましくは41℃の高温条件下において培養した場合に増殖能力が高い酢酸菌である。上記増殖能力は、例えば、野生型の酢酸菌及び評価対象の酢酸菌を41℃条件下で、YPGDアガロース培地(上記非特許文献1)等の一般的な酢酸菌培養培地で48時間培養した後の増殖を確認する方法や、YPGD液体培地で48時間培養した後の濁度を測定し、その濁度を指標として確認する方法を挙げることができる。培地の濁度は、例えばクレットサマーソン光電光度計(ベルアート社製)を用いて測定することができる。

【0014】
配列番号1に示す塩基配列からなる、二成分制御系を構成するヒスチジンキナーゼ遺伝子は、アセトバクター・パスツリアナス IFO 3283-01株の染色体に含まれる遺伝子であり、NCBI(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/)においてLocus tag:APA01-RS08045(Old locus tag:APA-1_15910)、Gene ID:8435607として登録されている。なお、「二成分制御系(two-component system)」とは、細菌の細胞膜に主に存在しており、自己リン酸化活性を示すヒスチジンキナーゼと、リン酸化されたヒスチジンキナーゼと相互作用して応答制御因子から構成されるものである。

【0015】
配列番号2に示す塩基配列からなる、二成分制御系を構成する応答制御因子kdpE遺伝子は、アセトバクター・パスツリアナス IFO 3283-01株の染色体に含まれる遺伝子であり、上記NCBIにおいてLocus tag:APA01_RS08050(Old locus tag:APA-1_15920)、Gene ID:8435608として登録されている。

【0016】
配列番号3に示す塩基配列からなる、LysRタイプ転写調節因子遺伝子は、アセトバクター・パスツリアナス IFO 3283-01株の染色体に含まれる遺伝子であり、上記NCBIにおいてLocus tag:APA01-RS06980(Old locus tag:APA-1_13830)、Gene ID:8435434として登録されている。なお、「LysRタイプ転写調節因子(LysR type transcriptional
regulator)」とは、DNAに結合して転写を調節するタンパク質である。上記非特許文献1に記載のように、酢酸菌の染色体中にLysRタイプ転写調節因子遺伝子をコードする塩基配列は10か所以上存在していることが知られている。

【0017】
配列番号4に示す塩基配列からなる、LysRタイプ転写調節因子遺伝子は、アセトバクター・パスツリアナス IFO 3283-01株の染色体に含まれる遺伝子であり、上記NCBIにおいてLocus tag:APA01-RS01905(Old locus tag:APA-1_03790)、Gene ID:8434617として登録されている。

【0018】
本明細書において、「90%以上の配列同一性」とは、配列同一性が90%以上であることを意味し、好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、さらにより好ましくは99%以上、最も好ましくは100%の配列同一性を意味する。

【0019】
上記酢酸菌としては特に制限されないが、アセトバクター・パスツリアヌス、アセトバクター・アセチ(A.aceti)、アセトバクター・アルトアセチゲネス(A.altoacetigenes)等のアセトバクター属、グルコンアセトバクター属、グルコノバクター属、タンチカロエニア属、アサイア属、アシドモナス属、グラニュリバクター属に属する細菌を挙げることができ、好ましくはアセトバクター属、より好ましくはアセトバクター・パスツリアナスを挙げることができる。

【0020】
本発明における、「(a)~(c)のいずれか記載の遺伝子が破壊した」とは、(a)~(c)のいずれか記載の遺伝子が改変され、その遺伝子本来の機能を低下又は欠失させることを意味する。遺伝子を改変する方法としては、対象となる遺伝子をコードする塩基配列情報に基づき、かかる遺伝子をコードする塩基配列の全部又は一部の塩基の欠失、置換、若しくは挿入をさせる方法や、かかる遺伝子に紫外線照射やニトロソグアニジン等の突然変異誘導物質処理により突然変異を誘導する方法を挙げることができる。なお、遺伝子をコードする塩基配列の全部又は一部の塩基の欠失、置換、若しくは挿入は、相同組換え技術や、遺伝子編集ヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼタンパク質(ZFN)、TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、若しくはCRISPR-Cas9の組み合わせを利用したゲノム編集技術等により行うことができる。

【0021】
本明細書において、「遺伝子の全部又は一部が欠失」とは、遺伝子を構成する全ての塩基が欠失、又は遺伝子を構成する塩基のうち、例えば95%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは50%以上、さらに好ましくは30%以上、さらに好ましくは10%以上、さらに好ましくは5%以上の塩基が欠失することを意味する。

【0022】
本発明における、「(a)~(c)のいずれか記載の遺伝子の発現を抑制した」とは、(a)~(c)のいずれか記載の遺伝子の発現量が低下若しくは発現を失うことを意味する。遺伝子の発現を抑制する方法としては、対象となる遺伝子をコードする塩基配列情報に基づき設計され、前記対象となる遺伝子の発現を抑制するsiRNA、shRNA、miRNA又はリボザイムを用いる方法を挙げることができる。

【0023】
(a)~(c)のいずれか記載の遺伝子が破壊、又は発現が抑制したか否かは、ターゲットとする遺伝子をPCRによって増幅して確認する方法や、破壊又は発現を抑制した遺伝子のmRNAの発現量やかかる遺伝子がコードするタンパク質の量を公知の遺伝子解析手法若しくはタンパク質解析手法により解析する方法によって確認することができる。

【0024】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの
例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0025】
[材料と方法]
(1)菌株、培地、培養条件、及びプラスミド
本実施例において使用した全ての菌株を図1に示す。遺伝子操作のための大腸菌(Escherichia coli:E. coli)株はluria-bertani medium(Sambrook, J., E.F.Fritsch and T.Maniatis. (1989). Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd edn. Cold Spring Harbor, NY: Cold Spring Harbor Laboratory Press.)を用いて培養した。
【実施例1】
【0026】
アセトバクター属酢酸菌(A. pasteurianus)及び組換え菌株は、1.0%酵母エキス、1.0%ポリペプトン、2.0%グリセロール、及び0.5%グルコースを含むYPGD培地を用いて、30℃又は41℃で培養した。また、RNAシークエンス(RNA-seq)及び定量PCR(Quantitative PCR:qPCR)のためのA. pasteurianusは、上記YPGD培地によって対数増殖期(OD600=0.5)まで培養した。必要に応じて、大腸菌用の培地にはカナマイシンを最終濃度50μg/mLとなるように、A. pasteurianus用の培地にはカナマイシンを最終濃度25μg/mLとなるように添加した。また、本明細書において使用した全てのプラスミドを図2に示す。プラスミドの作製は、QIAprep Spin Miniprep kit(キアゲン社製)を用い、キットに添付の使用説明書に沿って行った。
【実施例1】
【0027】
(2)RNAシークエンスライブラリの作製
RNeasy Mini kit(キアゲン社製)を用いてA. pasteurianusから全RNAを抽出し、さらに、Ribo-zero rRNA Removal Kit for Gram-negative bacteria(Epicentre社製)を用いてリボソームRNA(rRNA)を除去した。サンプルは、対数増殖期(OD600=0.5)の培養物(n=3)から採取した。rRNAを除去した全RNAは、分光光度計(NanoDrop, ND-1000;Thermo Fisher Scientific社製)により定量し、ゲル電気泳動及びキャピラリー電気泳動(Bioanalyzer;Agilent Technologcies社製)により純度を確認した。RNA(200ng以上)を、RNaseIIIを用いて37℃で10分間処理して断片化し、スピンカラムにより精製した。逆転写反応では、RNAにアダプターをライゲートさせた後、ArrayScript(Thermo Fisher Scientific社製)を用いてcDNAを合成した。磁気ビーズ(AMPure XP;Beckman Coulter Inc社製)を用いて精製した後、DNAポリメラーゼAmpliTaq(Thermo Fisher Scientific社製)及びバーコード標識3’プライマーを用いて、cDNAを15サイクル増幅した。PureLink PCR Nano columnにより増幅産物を精製した後に、かかる増幅産物の濃度及び純度を、Taqman(登録商標)を用いた定量PCR及びBioanalyzerによりそれぞれ測定した。
【実施例1】
【0028】
(3)SOLiD5500によるRNA配列解析
SOLiD EZ Bead Emulsifier(Thermo Fisher Scientific社製)及びE20ビーズを用い、使用説明書に従って8pmolのcDNAライブラリを乳化し、さらに、SOLiD EZ Bead
Amplifier(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて増幅した。PCR産物とビーズの混合物をSOLiD Enricher(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて濃縮し、NanoDropにより定量した。ビーズ(3.6×10ビーズ)が混在したcDNAをSOLiD5500シークエンサーにアプライし、全DNA配列を自動反応により決定した。配列の生データはDRA研究アクセッション番号DRA006305としてDDBJデータベースにデポジットされた。バイオプロジェクトIDはPRJDB6481である。
【実施例1】
【0029】
(4)リード解析
参照ゲノム(GenBankアクセッション番号:AP011121)に対するショートリード配列のマッピング、及びリードのカウントは、市販のCLC Genomics Workbench(CLC Bio社製)を用いて行った。RNA-Seq解析は次のパラメータにより行った。リードのトリミングについては、「ambiguous limit」を2に、「minimum number of
nucleotides in the reads」を2に、「quality limit」を0.01にそれぞれ設定した。リードのマッピングについては、「number of mismatch」を2に、「number of insertions」を3に、「number of deletions」を3に、「number of color
errors」を3にそれぞれ設定した。RPKM(Reads Per Kilobase of exon
Model per million mapped reads)は、Mortazaviらの論文(Mortazavi, A., Williams, B. A., McCue, K., Schaeffer, L. & Wold,
B. (2008). Mapping and quantifying mammalian transcriptomes by RNA-Seq. Nat
Methods 5, 621-628.)の手法を用いて算出した。
【実施例1】
【0030】
(5)発現変動遺伝子解析
発現変動遺伝子(DEGs)は、リード数データ及びDESeqパッケージ(Anders, S. & Huber, W. (2010). Differential expression analysis for sequence countdata. Genome Biol 11, R106.)を用いて同定した。上記DESeqパッケージは上記DEGsを同定するためにfalse discovery rate(FDR)を使用した。本解析においては、FDRが0.01未満の遺伝子をDEGsと見なした。
【実施例1】
【0031】
(6)定量PCR
対数増殖期(OD600=0.5)にあるA. pasteurianusの各株から、RNeasy Mini kit (キアゲン社製)を用いて全RNAを抽出した。RNase-Free DNase RQ1処理により(プロメガ社製)、全RNAからゲノムDNAを除去した。具体的には、5μgの全RNAに1ユニットのRNase-Free DNase RQ1を加え、37℃で30分間処理した。処理後の全RNAをRNeasy Mini(キアゲン社製)を用いて精製した。逆転写酵素ReverTra Ace(TOYOBO社製)を用い、PC-818サーマルサイクラー(ASTEC社製)において逆転写反応を行った。具体的には、2.5pmolの9merランダムプライマー(タカラバイオ社製)及び200ユニットの逆転写酵素ReverTra Aceを含む、40μの反応液中で200ngの全RNAの逆転写を行った。
【実施例1】
【0032】
また、定量PCRは、SYBR Green PCR Master Mixを用いて、StepOnePlus
qPCRサーマルサイクラー(Thermo Fisher Scientific社製)において行った。具体的には、各ターゲット遺伝子に対して、1.25ngのcDNAを用いてqPCRを行った。
【実施例1】
【0033】
検量線は、IFO3283-01のcDNAを用いて、各遺伝子に対して作成し、ターゲットmRNAの量を相対的に定量した。各サンプルにおいて、ターゲットmRNAは16SリボソームRNAの発現に対して標準化した。全てのqPCR実験はデュプリケイトで行った。
【実施例1】
【0034】
(7)組換えプラスミドの構築
本実施例に使用した全てのプライマーを図3に示す。PCRは、Prime Star HS(タカラバイオ社製)を用い、その使用説明書に従って、PC-818サーマルサイクラー(ASTEC社製)において行った。全てのプラスミドの構築は図4A~Dに示すとおりに行った。
【実施例1】
【0035】
(8)組換え菌株の作製
ライゲーションした組換えプラスミドを用いて、E. coliの形質転換を行った。コンピテント細胞はInoue法(Inoue, H., Nojima, H. & Okayama, H. (1990). High efficiency transformation of Escherichia coli with plasmids. Gene 96, 23-28.)によって作製した。ターゲット遺伝子を除去するために、配列番号64に示すプライマーinsF及び配列番号65に示すプライマーinsR(図3)を用いたPCRにより、プラスミド(pΔ03790、pΔ13830、pΔ13890、又はpΔ41700)の関連領域を増幅した。具体的には、A. pasteurianusを18℃のYPGD培養液中で対数増殖期(OD600=0.5)まで培養し、遠心分離(5000G、5分間)によって回収した。7%のジメチルスルホキシド(DMSO)を含むTBバッファー(12.4mM
PIPES、21.3mM CaCl、311.8mM KCl、80.7mM MnCl、pH6.8)によりペレットを懸濁した後に、1μgのPCR断片を加え、42℃で90秒間ヒートショックを行った。ヒートショック後のA. pasteurianusにYPGDブロスを加えて、30℃で2時間インキュベートした。かかる溶液を、カナマイシンを含むYPGDアガロースプレートに塗布し、30℃で48時間インキュベートした。ターゲット遺伝子の欠損は、適切なプライマーを用い、組換え菌株コロニーをテンプレートとして用いたPCRによって確認した。
【実施例1】
【0036】
(9)温度感受性試験
培養後の各菌株を、同一の細胞数となるように希釈し、30℃又は41℃のYPGDアガロースプレートにスポットした。
【実施例2】
【0037】
[網羅的mRNA発現解析のためのRNA-seq]
酢酸菌IFO3283-01及びIFO3283-01-42C(非特許文献1参照)をそれぞれ30℃及び41℃で培養した後に、RNA-seqを用いて網羅的mRNA発現解析を行い、IFO3283-01-42Cの高温耐性に寄与する遺伝子を同定した。これまでの研究において、Azumaらは制限温度として42℃における高温耐性を調べ、IFO3283-01が40.5℃又はそれ以上の環境では増殖しないことを非特許文献1において報告している。このため、本発明者らは、高温が遺伝子発現に及ぼす影響を最小化するために、制限温度として41℃を選択した。以上の解析によるトランスクリプトームのマッピング結果を図5に、FDR<0.01の発現変動遺伝子(DEGs)は図6及び図7に、MAプロット(30℃におけるIFO3283-01 vs 41℃におけるIFO3283-01-42C)は図8にそれぞれ示す。
【実施例2】
【0038】
41℃で増殖させたIFO3283-01-42Cにおいて、IFO3283-01よりも発現が低い遺伝子は、APA01_03260、APA01_03270、APA01_03280、APA01_03290、APA01_15320、APA01_15490、APA01_15500、APA01_15920、APA01_15940、APA01_15950、及びAPA01_15960であった。なお、「APA01-XXXXX」とは、非特許文献1のSupplemental Table S2において記載されているIFO3283-01の染色体の位置を表す。これらの遺伝子のいくつかは、ゲノム上でクラスターを形成していると考えられた。そのようなクラスターとしては、APA01_03260-APA01_03270-APA01_03280、APA01_15490-APA01_15500、及びAPA01_15920-APA01_15940-APA01_15950-APA01_15960(APA01_15910からAPA01_15960の遺伝子クラスターの一部)を挙げることができる(図6)。
【実施例2】
【0039】
41℃で増殖させたIFO3283-01-42Cにおいて、IFO3283-01よりも発現が高い遺伝子は、APA01_05860、APA01_06250、APA01_07420、APA01_16330、APA01_16340、APA01_16350、APA01_16370、APA01_16380、APA01_16390、APA01_16400、APA01_16410、APA01_16420、及びAPA01_16430であった。これらの遺伝子のうち、APA01_16330、APA01_16340、APA01_16350、APA01_16370、APA01_16380、APA01_16390、APA01_16400、APA01_16410、APA01_16420、及びAPA01_16430はゲノム上でクラスター(APA01_16330からAPA01_16430の遺伝子クラスターの一部)を形成していると考えられた(図7)。
【実施例2】
【0040】
また、以下の実施例5で述べるように、APA01_03270、APA01_03290、APA01_15320、APA01_15500、APA01_15920、APA01_05860、APA01_06250、APA01_07420、及びAPA01_16430の発現はqPCRによってさらに確認した(図11)。その結果、上記解析結果と同様の結果が、RNA-seq解析によっても認められた。以上のことから、41℃で増殖させたIFO3283-01-42Cでは、IFO3283-01と比較して、様々な遺伝子の発現が変動することが明らかとなった。このような遺伝子の変動には、IFO3283-01-42Cにおける92kbの広域ゲノム欠損領域においてコードされる転写調節因子が関与している可能性が考えられた。
【実施例3】
【0041】
[LysRタイプ転写調節因子APA01_13830の再導入による、IFO3283-01-42Cの高温耐性の消失]
2つのLysRタイプ転写調節因子(APA01_13830及びAPA01_13890)は、IFO3283-01-42Cにおける92kbの広域ゲノム欠損領域においてコードされている。これらの2つの遺伝子が、高温耐性の表現型に及ぼす影響を調べるために、それぞれの遺伝子をクローン化してIFO3283-01-42Cに導入し、温度感受性試験を行った。
【実施例3】
【0042】
この試験では、APA01_13830及びAPA01_13890を発現させるためにompRプロモーターを用いた。なぜなら、ompRは30℃及び41℃の温度条件において、IFO3283-01及びIFO3283-01-42Cに常に発現しているからである(30℃でのIFO3283-01におけるompRのRPKM=91486、41℃でのIFO3283-01におけるompRのRPKM=47865、30℃でのIFO3283-01-42におけるompRのRPKM=147280、41℃でのIFO3283-01-42におけるompRのRPKM=77976)。
【実施例3】
【0043】
温度感受性試験の結果、IFO3283-01-42C、及び、APA01_13890を発現するように形質転換されたIFO3283-01-42C(IFO3283-01-42C+13890と名付けた)は、41℃において耐熱性を示すことが明らかとなった(図9 上から2段目、4段目。一方、IFO3283-01及びAPA01_13830により形質転換されたIFO3283-01-42C(IFO3283-01-42C+13830と名付けた)は、41℃において温度感受性を示すことが明らかとなった(図9 上から1段目、3段目)。これらの結果から、LysRタイプ転写調節因子APA01_13830の欠損が、IFO3283-01-42Cにおける高温耐性の一因となっていることが明らかとなった。
【実施例4】
【0044】
[APA01_13830の破壊による、IFO3283-01株の高温耐性獲得]
A. pasteurianusにおける高温耐性へのAPA01_13830の関与を確認するために、カナマイシン耐性カセットのダブルクロスオーバーによる相同組換えを介して、IFO3283-01株のAPA01_13830を欠損するように破壊し、温度感受性試験を行った。APA01_13830破壊IFO3283-01(IFO3283-1Δ13830と名付けた)は、IFO3283-01-42Cと類似した高温耐性を示した(図10)。この結果から、APA01_13830の欠損が、IFO3283-01-42Cにおける高温耐性の主な原因となることが示唆された。
【実施例4】
【0045】
また、IFO3283-01のゲノムには、APA01_13830のホモログが複数認められる。これらのホモログのうち、APA01_03790はAPA01_13830と高い類似性を示す(e値=4e-31)。そこで、本発明者らはAPA01_03790を破壊して、高温耐性に及ぼす影響を調べた。APA01_03790破壊IFO3283-01(IFO3283-01Δ03790と名付けた)は、IFO3283-01Δ13830及びIFO3283-01-42Cと比較して、部分的な高温耐性を示した(図10)。
【実施例4】
【0046】
さらに、IFO3283-01プラスミド中でコードされているAPA01_41700も、APA01_13830と高い類似性を示す(e値=5e-36)。このため、本発明者らはAPA01_41700を破壊して、高温耐性に及ぼす影響を調べた。しかし、APA01_41700破壊IFO3283-01(IFO3283-01Δ41700と名付けた)は、IFO3283-01と同様に、高温耐性を示さなかった(図10)。また、本発明者らはAPA01_13890破壊IFO3283-01(IFO3283-01Δ13890と名付けた)を作製してその高温耐性を調べた。図10に示すように、IFO3283-01Δ13890は、IFO3283-01と同様に、高温耐性を示さなかった。
【実施例4】
【0047】
これらの結果から、APA01_13830(LysRタイプ転写調節因子遺伝子)、及びAPA01_03790(IFO3283-01のゲノム上に存在するAPA01_13830のホモログ遺伝子)の欠損によって、A. pasteurianusが高温耐性を獲得することが示唆された。参照のために、以下の表1に実施例4において作製された遺伝子破壊A. pasteurianus株をまとめた。
【実施例4】
【0048】
【表1】
JP2020162500A_000002t.gif

【実施例5】
【0049】
[IFO3283-01Δ13830における、二成分制御系因子APA01_15920のダウンレギュレート]
IFO3283-01-42Cの高温耐性に関連する遺伝子を同定するために、qPCRによって高温耐性菌株IFO3283-01-42C、温度感受性菌株IFO3283-01、及びAPA01-13830欠損IFO3283-01(IFO3283-01Δ13830)における、30℃又は41℃培養条件下での以下の(a)~(i)の遺伝子発現を調べた。
(a)トランスポーターEamAであるAPA01_03270(APA01_03260-APA01_03280遺伝子クラスターによりコードされる);
(b)仮想タンパク質であるAPA01_03290;
(c)仮想タンパク質であるAPA01_15320;
(d)アスパラギン酸:アラニンアンチポーターであるAPA01_15500(APA01_15490-APA01_15500遺伝子クラスターによりコードされる);
(e)仮想タンパク質であるAPA01_05860;
(f)イソクエン酸デヒドロゲナーゼであるAPA01_06250;
(g)NADH-キノン酸化還元酵素chain MであるAPA01_07420;
(h)NADH-キノン酸化還元酵素chain AであるAPA01_16430(APA01_16330-APA01_16430遺伝子クラスターによりコードされる);
(i)二成分制御系因子KdpEであるAPA01_15920(APA01_15910-APA01_15960遺伝子クラスターによりコードされる);
【実施例5】
【0050】
図11に示すように、41℃条件下で、IFO3283-01Δ13830における、上記(a)~(h)の発現は、IFO3283-01-42Cではなく、IFO3283-01と類似していた。一方、41℃条件下で、IFO3283-01Δ13830における上記(i)の発現はIFO3283-01ではなく、IFO3283-01-42Cと類似している、すなわちIFO3283-01Δ13830においてAPA01_15920(二成分制御系因子KdpE)は41℃の培養条件下ではダウンレギュレートされていることが明らかとなった。
【実施例5】
【0051】
30℃条件下でのAPA01_15920(二成分制御系因子KdpE)の発現比はIFO3283-01Δ13830、IFO 3283-01、及びIFO3283-01-42Cの間でほぼ同一であった(図11)。
【実施例5】
【0052】
また、APA01_15910(二成分制御系因子ヒスチジンキナーゼ)やAPA01_15960(仮想タンパク質)の発現比もIFO3283-01-42Cではなく、IFO3283-01及びIFO3283-01Δ13830と類似していた(図12)。
【実施例5】
【0053】
以上の結果から、APA01_15910-APA01_15960遺伝子クラスターによりコードされる遺伝子の発現レベルの変化が、A. pasteurianusの高温耐性獲得に関与することが示唆された。
【実施例6】
【0054】
[二成分制御系センサー及び応答因子APA01_15910-15920の過剰発現による、IFO3283-01-42Cの高温耐性の低下]
APA01_15910-APA01_15960遺伝子クラスターに含まれる遺伝子をIFO3283-01-42Cにおいて過剰発現させ、高温耐性に寄与する遺伝子を同定するための試験を行った。APA01_15960又はAPA01_15930-APA01_15950を過剰発現させたIFO3283-01-42C(それぞれIFO3283-01-42C+15960、IFO3283-01-42C+15930_15950と名付けた)では、41℃においてIFO3283-01-42Cと同程度の高温耐性が認められた(図12)。一方、APA01_15910-APA01_15920を過剰発現させたIFO3283-01-42C(IFO3283-01-42C+15910_15920と名付けた)では、41℃において温度感受性が認められた(図13)。
【実施例6】
【0055】
続いて、APA01_15910又はAPA01_15920を剰発現させたIFO3283-01-42Cを作製し(それぞれIFO3283-01-42C+15910、IFO3283-01-42C+15920と名付けた)、41℃の条件下で高温耐性を調べた結果、両方の株でIFO3283-01-42Cと同程度の高温耐性が認められた(図13)。
【実施例6】
【0056】
以上の結果から、APA01_15910-APA01_15960遺伝子クラスターに含まれる遺伝子のうち、二成分制御系遺伝子APA01_15910-15920が高温耐性に関与することが示唆された。また、IFO3283-01-42Cの高温耐性を抑制するためには、APA01_15910及びAPA01_15920のいずれかの発現を抑制すればよいことが示唆された。参照のために、以下の表2に実施例6において作製された遺伝子過剰発現A. pasteurianus株をまとめた。
【実施例6】
【0057】
【表2】
JP2020162500A_000003t.gif
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4A】
3
【図4B】
4
【図4C】
5
【図4D】
6
【図5】
7
【図6】
8
【図7】
9
【図8】
10
【図9】
11
【図10】
12
【図11】
13
【図12】
14
【図13】
15