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明細書 :染色されたポリプロピレン繊維構造物、それを用いた衣料品、および超臨界二酸化炭素流体を染色媒体として用いる染色用染料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6721172号 (P6721172)
登録日 令和2年6月22日(2020.6.22)
発行日 令和2年7月8日(2020.7.8)
発明の名称または考案の名称 染色されたポリプロピレン繊維構造物、それを用いた衣料品、および超臨界二酸化炭素流体を染色媒体として用いる染色用染料
国際特許分類 D06P   1/42        (2006.01)
D06P   3/79        (2006.01)
C09B   1/32        (2006.01)
FI D06P 1/42 A
D06P 3/79 C
C09B 1/32
請求項の数または発明の数 8
全頁数 17
出願番号 特願2019-567844 (P2019-567844)
出願日 平成30年10月11日(2018.10.11)
国際出願番号 PCT/JP2018/037918
国際公開番号 WO2019/146174
国際公開日 令和元年8月1日(2019.8.1)
優先権出願番号 2018011784
優先日 平成30年1月26日(2018.1.26)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 令和2年1月7日(2020.1.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】593165487
【氏名又は名称】学校法人金沢工業大学
【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
【識別番号】504368011
【氏名又は名称】有本化学工業株式会社
発明者または考案者 【氏名】宮崎 慶輔
【氏名】古賀 孝一
【氏名】堀 照夫
【氏名】廣垣 和正
【氏名】田畑 功
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100105924、【弁理士】、【氏名又は名称】森下 賢樹
審査官 【審査官】桜田 政美
参考文献・文献 特開平01-077583(JP,A)
特開昭62-124151(JP,A)
MIYAZAKI, Keisuke et al.,Coloration Technology,2012年,128(1),51-59
宮崎慶輔ほか,染色化学討論会講演要旨集,2006年,46,21-24
MIYAZAKI, Keisuke et al.,Coloration Technology,2012年,128(1),60-67
調査した分野 D06P 1/42
C09B 1/32
D06P 3/79
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】
JP0006721172B2_000012t.gif
(式中、Rは、炭素数4~14の直鎖または分岐アルキル基である。)
で表される青色染料で超臨界二酸化炭素流体を染色媒体として用いて染色されていることを特徴とする染色されたポリプロピレン繊維構造物。
【請求項2】
が、tert-ブチル基、n-オクチル基、n-ドデシル基またはn-テトラデシル基であることを特徴とする請求項1に記載の染色されたポリプロピレン繊維構造物。
【請求項3】
が、n-オクチル基またはn-ドデシル基であることを特徴とする請求項1に記載の染色されたポリプロピレン繊維構造物。
【請求項4】
前記青色染料が、1-(メチルアミノ)-4-[(4-ドデシルフェニル)アミノ]アントラセン-9,10-ジオンであることを特徴とする請求項1に記載の染色されたポリプロピレン繊維構造物。
【請求項5】
布であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の染色されたポリプロピレン繊維構造物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の染色されたポリプロピレン繊維構造物を用いた衣料品。
【請求項7】
下記一般式(1-1):
【化2】
JP0006721172B2_000013t.gif
(式中、R1-1は、炭素数10、12もしくは14の直鎖アルキル基、または炭素数4の分岐アルキル基である。)
で表されるアントラキノン系化合物を含むことを特徴とする超臨界二酸化炭素流体を染色媒体として用いる染色用染料
【請求項8】
1-1がn-ドデシル基であることを特徴とする請求項7に記載の超臨界二酸化炭素流体を染色媒体として用いる染色用染料
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、染色されたポリプロピレン繊維構造物、それを用いた衣料品、およびアントラキノン系化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン樹脂はプロピレンを付加重合させた、結晶性の熱可塑性樹脂である。このポリプロピレン樹脂は石油精製時の廃ガスであるプロピレンを原料としているため廉価であり、水に浮くほどの低密度(0.90~0.92g/cm)であるため軽量であり、吸水・吸湿性がほとんどない(公定水分率0.0%)ため速乾性である。さらに、ポリプロピレン樹脂は耐薬品性、耐擦過性、耐屈曲性、帯電防止性など、非常に多くの優れた特徴・特性を持っている(非特許文献1、2参照)。
【0003】
ポリプロピレンは単純な分岐炭化水素の高分子であり、ペンダント基となるメチル基こそあるものの、染料との化学反応に有効な官能基を有していない。また、ポリプロピレンは結晶が比較的緻密で、極めて疎水性が高く、ほとんど水に膨潤されない。これらの理由により、従来の染色技法を用いたポリプロピレンの着色は極めて困難であるとされてきた。
【0004】
このように着色が困難なポリプロピレン繊維の染色方法として、超臨界(流体)染色と呼ばれる、超臨界二酸化炭素(scCO)を染色媒体として用いて染色する方法が既知である。例えば、特許文献1には、scCOを用いて、ポリエステル繊維材料、ポリプロピレン繊維材料などの疎水性繊維材料を、様々な染料で染色することが開示されている。
【0005】
また、非特許文献3、4には、scCOでポリプロピレン布を染色することが可能である特定の青色と黄色の染料が開示されており、これらの染料によって染色することにより、優れた染色堅牢度を有する染色ポリプロピレン繊維を提供できることが開示されている。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特許第3253649号公報
【0007】

【非特許文献1】M Ahmed,Polypropylene fibers,science and technology(Amsterdam;New York:Elsevier Scientific Pub.Co.,1982).
【非特許文献2】J Akrman and J Prikryl,J.Appl.Polym.Sci.,62(1996)235.
【非特許文献3】K.Miyazaki et al.,Color.Technol.,128(2012),51-59.
【非特許文献4】K.Miyazaki et al.,Color.Technol.,128(2012),60-67.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1は、分散染料や油溶性染料等の中性の色素を包括的に開示し、染色の対象となる疎水性合成繊維も包括的に列挙しているに過ぎない。実際には、特許文献1に記載の染料を用いてポリプロピレン繊維構造物を染色しても、染料のほとんどは全く染着しないか、染着しても、染色されたポリプロピレン繊維構造物の染色堅牢度が著しく悪い。
【0009】
一般に、異なる色相の染料を配合して染色した繊維構造物の染色堅牢度は、単品で染色した場合に比べ劣化する傾向にあることが知られている。この現象は通常、配合した染料の退色の度合いが揃っていない場合や変退色による色相変化が相殺されない場合に顕著にみられる。例えば、耐光性が極めて優れた黄色染料と耐光性がやや劣る青色染料とを用いて調色して緑色の繊維構造物を得た場合、もしくは変退色が褐色化を経て緩やかに淡色化する黄色染料と変退色が単純に淡色化する青色染料とを用いて調色して緑色の繊維構造物を得た場合、その繊維構造物の耐光堅牢度を評価すると同系色への退色(淡色化)にとどまらず、黄色方向へ変色(色相変化)する。色相変化は淡色化に比べて変退色評価に与える影響が大きいため、色相変化が大きいと変退色が顕著になり、耐光堅牢度は劣化する。したがって、いずれの場合においても繊維構造物の配合染色に三原色として用いる青色染料には、非常に高い耐光性が求められる。
【0010】
非特許文献4に記載の青色染料の耐光性は、非特許文献3に記載の黄色染料に比べ高い。しかしながら、両者を配合染色して得られた緑色のポリプロピレン繊維構造物の耐光堅牢度は劣化する。そのため、ポリプロピレン繊維構造物の配合染色に三原色として用いる青色染料として、より耐光性の高いものが望まれている。
【0011】
本発明は、こうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、優れた耐光堅牢度を有し、減法混色三原色を構成し得る青色を示す染料で染色されたポリプロピレン繊維構造物、および該染色されたポリプロピレン繊維構造物の製造が可能な青色染料の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のある態様は、下記一般式(1):
【化1】
JP0006721172B2_000002t.gif
(式中、Rは、炭素数4~14の直鎖もしくは分岐アルキル基である。)
で表される青色染料で染色されていることを特徴とする染色されたポリプロピレン繊維構造物である。
【0013】
上記一般式(1)中、Rが、tert-ブチル基、n-オクチル基、n-ドデシル基またはn-テトラデシル基であってもよい。また、Rが、n-オクチル基またはn-ドデシル基であってもよい。
【0014】
また、上記染色されたポリプロピレン繊維構造物が布であってもよい。
【0015】
本発明の他の態様は、上記染色されたポリプロピレン繊維構造物を用いた衣料品である。
【0016】
本発明のさらに他の態様は、下記一般式(1-1):
【化2】
JP0006721172B2_000003t.gif
(式中、R1-1は、炭素数10、12もしくは14の直鎖アルキル基、または炭素数4の分岐アルキル基である。)
で表されるアントラキノン系化合物である。一般式(1-1)中、R1-1がn-ドデシル基であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、優れた耐光堅牢度を有し、減法混色三原色を構成し得る青色を示す染色されたポリプロピレン繊維構造物、および該染色されたポリプロピレン繊維構造物の製造が可能な青色染料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例における超臨界流体染色プロセスのための装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態にかかる染色されたポリプロピレン(PP)繊維構造物は、下記一般式(1):
【化3】
JP0006721172B2_000004t.gif
(式中、Rは、炭素数4~14の直鎖もしくは分岐アルキル基である。)
で表される青色染料で染色されている。該染色されたポリプロピレン繊維構造物は、減法混色三原色の青色を示すことができる。さらに、該染色されたポリプロピレン繊維構造物は、洗濯堅牢度、耐光堅牢度、昇華堅牢度のいずれも優れている。特に、該染色されたポリプロピレン繊維構造物は、非特許文献4に記載の青色染料で染色したポリプロピレン繊維構造物と比較して耐光堅牢度が優れている。そのため、一般式(1)で表される青色染料と他の色の染料とを配合して染色して得られたポリプロピレン繊維構造物では、配合染色による耐光堅牢度の劣化が少ない。

【0020】
(青色染料)
本発明の染色されたポリプロピレン繊維構造物を構成する青色染料は、上記一般式(1)で表される化合物である。該化合物は、減法混色三原色を構成し得る青色にポリプロピレン繊維構造物を良好に染めることができる。また、該化合物で染色されたポリプロピレン繊維構造物は、洗濯堅牢度、耐光堅牢度、昇華堅牢度のいずれも良好である。特に、該化合物は、非特許文献4に記載の青色染料よりも耐光性に優れていることから、該化合物と他の色の染料とを配合してポリプロピレン繊維構造物を染色した場合でも、得られたポリプロピレン繊維構造物の耐光堅牢度の劣化が少ない。さらに、上記一般式(1)で表される染料は固体であるため、取り扱いが容易で、染色の程度(色の濃淡)の微調整が可能であり、工業的生産に有利である。

【0021】
染色されたポリプロピレン繊維構造物の洗濯堅牢度と昇華堅牢度をより良好なものとするためには、Rは、tert-ブチル基、n-オクチル基、n-ドデシル基またはn-テトラデシル基であることが好ましい。これらの中でも、色強度と染色堅牢度の両立の観点から、Rは、n-オクチル基またはn-ドデシル基であることがより好ましい。

【0022】
上記一般式(1)で表される染料は公知となっている処方、その一例として特許第2024094号公報等を代表とする一般的な処方に従って、市販の1-メチルアミノ-4-ブロモアントラキノンと市販のアルキル基で置換されたアニリンとを反応させることによって製造できる。類似の報告例が多いことから例として挙げた参考特許文献処方の限りではない。

【0023】
(アントラキノン系化合物)
本発明の他の実施形態は、下記一般式(1-1)で表されるアントラキノン系化合物である。
【化4】
JP0006721172B2_000005t.gif
式中、R1-1は、炭素数10、12もしくは14の直鎖アルキル基、または炭素数4の分岐アルキル基である。該化合物は、新規であり、減法混色三原色を構成し得る青色にポリプロピレン繊維構造物を良好に染めることが可能な青色染料として用いることができる。さらに、上記一般式(1)で表される化合物と同様に、一般式(1-1)で表される化合物で染色されたポリプロピレン繊維構造物は、洗濯堅牢度、耐光堅牢度、昇華堅牢度のいずれにも優れる。また、一般式(1-1)で表される化合物を他の染料と配合してポリプロピレン繊維構造物染色した場合でも、得られたポリプロピレン繊維構造物の耐光堅牢度の劣化が少ない。

【0024】
染色されたポリプロピレン繊維構造物の洗濯堅牢度と昇華堅牢度をより良好なものとするためには、R1-1は、tert-ブチル基、n-ドデシル基、またはn-テトラデシル基であることが好ましい。これらの中でも、色強度と染色堅牢度の両立の観点から、R1-1はn-ドデシル基であることがより好ましい。

【0025】
本実施の形態にかかるアントラキノン系化合物は、例えば、上述した一般式(1)の化合物の製造方法と同様にして製造できる。

【0026】
(ポリプロピレン繊維構造物)
本発明におけるポリプロピレン繊維構造物はポリプロピレン繊維を含む。ここで、ポリプロピレン繊維はポリプロピレン樹脂を含む限り、特に限定されない。ポリプロピレン樹脂単独から構成される繊維を用いてポリプロピレン繊維構造物を形成してもよく、またはポリプロピレン樹脂に他のポリマー成分を配合および/または接合し調製した繊維を用いてポリプロピレン繊維構造物を形成してもよい。

【0027】
上記ポリプロピレン繊維から、当分野にて既知の方法に従って、様々な形態のポリプロピレン繊維構造物を製造することができる。ポリプロピレン繊維構造物の形態としては、例えば、糸状構造物(フィラメント糸、紡績糸、スリット糸、スプリット糸等)、綿(わた)状構造物、紐状構造物、布状構造物(織物、編物、不織布、フェルト、タフト等)およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。また、市販のポリプロピレン繊維構造物も使用することができる。また、ポリプロピレン繊維にポリエステルなどの他の繊維を混紡および/または混繊して繊維構造物を製造してもよい。

【0028】
(染色されたポリプロピレン繊維構造物の製造方法)
本発明の染色されたポリプロピレン繊維構造物は、超臨界二酸化炭素流体を用いて、上記一般式(1)または上記一般式(1-1)で表される染料で上記ポリプロピレン繊維構造物を染色することによって製造できる。超臨界二酸化炭素流体を媒体としてポリプロピレン繊維構造物を染色する方法は、当業者に既知である。例えば、非特許文献3、4に記載されている超臨界二酸化炭素流体による染色法に従って、ポリプロピレン繊維構造物の染色を行うことができる。

【0029】
上記一般式(1)または上記一般式(1-1)で表される染料で染色されたポリプロピレン繊維構造物は減法混色三原色の青色を呈することができる。なお、「減法混色三原色の青色」の範囲は当分野において周知であり、色の三属性(色相、明度、彩度)のうち色相(H値)で青として許される範囲すべてを指す。色知覚の属性のうち、色相を尺度化した色相H(JIS Z8721:1993)が10Bを中心として10BGから10PBの範囲である。

【0030】
上記一般式(1)または上記一般式(1-1)で表される染料と、例えば、非特許文献3に記載されている黄色染料、該黄色染料の化学構造をその性質に影響を与えない程度に改変した黄色染料、および下記一般式(2)で表される赤色染料の少なくとも1種と組み合わせてポリプロピレン繊維構造物を染色して、染色されたポリプロピレン繊維構造物を製造してもよい。この場合、ポリプロピレン繊維構造物を自在な色調に染色することができる。
【化5】
JP0006721172B2_000006t.gif
式中、Rはそれぞれ独立に、炭素数4~8の分岐アルキル基、および炭素数9~19のアリールアルキル基からなる群より選ばれる1種であり、nは1~3である。前記分岐アルキル基は第四級炭素原子を含み、前記アリールアルキル基のアルキル部分は第四級炭素原子を含む。ここで、「第四級炭素原子」は、本明細書で使用するとき、4個の他の炭素原子に結合している炭素原子を意味する。

【0031】
ここで、上記一般式(2)で表される赤色染料は、減法混色三原色を構成し得る赤色にポリプロピレン繊維構造物を良好に染めることができ、かつ洗濯堅牢度、耐光堅牢度、昇華堅牢度のいずれも良好である。さらに、上記一般式(2)中、Rの上記アルキル基および上記アリールアルキル基中のアルキル部分が分岐状であり、かつ第四級炭素原子を含むことで、染色堅牢度がより優れた染料が得られる。さらに、上記一般式(2)で表される染料は固体であるため、取り扱いが容易で、染色の程度(色の濃淡)の微調整が可能であり、工業的生産に有利である。

【0032】
第四級炭素原子を含む上記分岐アルキル基の例としては、2-メチルプロパン-2-イル(tert-ブチル)基、2-メチルブタン-2-イル(tert-アミル)基、2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル(tert-オクチル)基、2-メチルヘプタン-2-イル基が挙げられる。これらのうち、染色の際の残留染料がより少なく、染色堅牢度がより優れていることから、2-メチルプロパン-2-イル基、2-メチルブタン-2-イル基、2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル基が好ましい。

【0033】
第四級炭素原子を含む上記アリールアルキル基の例としては、2-フェニルプロパン-2-イル(クミル)基、2-フェニルブタン-2-イル基、2-(o-トルイル)プロパン-2-イル基、1,1-ジフェニルプロピル基、1,1,1-トリフェニルメチル基(トリチル基)が挙げられる。なお、上記アリールアルキル基の炭素数は9または10が好ましい。

【0034】
n=2または3である場合、2つまたは3つのRはそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい。

【0035】
上記一般式(2)で表される化合物は、下記一般式(3)で表される化合物であってもよい。
【化6】
JP0006721172B2_000007t.gif
式中、R~Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数4~8の分岐アルキル基、および炭素数9~19のアリールアルキル基からなる群より選ばれる1種である。前記分岐アルキル基は第四級炭素原子を含み、前記アリールアルキル基のアルキル部分は第四級炭素原子を含み、R~Rのうち少なくとも1つが前記分岐アルキル基または前記アリールアルキル基である。

【0036】
染色堅牢度をより向上させることができることから、フェノキシ基上の置換基の数は2個であること、すなわち、上記一般式(2)中、nが2であることが好ましい。また、同様の理由により、上記一般式(3)中、R~Rのうち2つがそれぞれ独立に前記分岐アルキル基または前記アリールアルキル基であり、残りの1つが水素原子であることが好ましい。

【0037】
染色した際の残留染料がより少なく、染色の程度を再現性よく調整できることから、Rが前記分岐アルキル基であり、nが1または2であることが好ましい。また、同様の理由により、上記一般式(3)中、R~Rがそれぞれ独立に水素原子または前記分岐アルキル基であり、かつR~Rのうち1つまたは2つが前記分岐アルキル基であることが好ましい。特に、染色堅牢度がより優れたものとなり、染色の際の残留染料がより少なくなることから、上記一般式(2)中、Rが前記分岐アルキル基であり、nが2であることがより好ましい。同様の理由により、上記一般式(3)中、R~Rのうち2つがそれぞれ独立に前記分岐アルキル基であり、残りの1つが水素原子であることがより好ましい。

【0038】
特に好ましくは、上記赤色染料は、上記一般式(2)のRが2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル基であり、nが1であり、フェノキシ基の4位にRが存在する化合物、または上記一般式(2)のRが2-メチルプロパン-2-イル基もしくは2-メチルブタン-2-イル基であり、nが2であり、フェノキシ基の2位および4位にRが存在する化合物である。これらの化合物は、優れた染色堅牢度と染色性を有し、特に染色の際に染料が残留せず、再現性よく染色の色をコントロールすることが可能である。

【0039】
上記一般式(2)で表される赤色染料は公知であり、当業者に既知の方法に従って製造できる。例えば、Dyes and Pigments,95,2012,201-205に記載されているような公知の条件下で、市販の1-アミノ-2-ブロモ-4-ヒドロキシアントラセン-9,10-ジオンと市販の分岐アルキル基またはアリールアルキル基で置換されたフェノールとを反応させることによって製造できる。

【0040】
(染色されたポリプロピレン繊維構造物の用途)
本発明の染色されたポリプロピレン繊維構造物の用途としては特に限定されないが、例えば、衣服、下着、帽子、靴下、手袋、スポーツ用衣料等の衣料品、座席シート等の車両内装材、カーペット、カーテン、マット、ソファーカバー、クッションカバー等のインテリア用品などが挙げられる。本発明の染色された繊維構造物は、自在な色調を表現できることから、衣料品に好適に用いることができる。

【0041】
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが、これらの実施例は本発明を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0042】
(材料)
ポリプロピレン布は、三菱レイヨン(株)(現 三菱ケミカル(株))から入手した。入手したポリプロピレン布は染色堅牢度の測定に適した密な二段ニット(ポリプロピレン布No.2;250g/m;190dtex/48firamentsの糸;ウェール2×33/2.54cm;コース2×34/2.54cm)であった。この二段ニットを、ソーダ灰(工業用グレード,2g/dm)、1g/dm界面活性剤(Daisurf MOL-315;第一工業製薬(株))、0.5g/dmキレート剤(Sizol FX-20;第一工業製薬(株))を用いて、液流染色機にて、水系で80℃で精練した。その後、ポリプロピレン布No.2を遠心脱水し、切開したものを前処理として130℃でヒートセットした。
【実施例】
【0043】
木綿糸(30/綿番手)を、クロバー(株)から購入した。染色プロセスにおいて、超臨界流体を拡散させ、ポリプロピレン布を包むために3種の綿布を使用した。1種は、ガーゼ構造を有し(綿布No.1:縦糸30本/2.54cm,横糸30本/2.54cm)、第2のものは、片面フランネル構造を有していた(綿布No.2)。これらの布はピップフジモト(株)から購入した。第3のものは、平織構造を有し(綿布No.3:縦糸45本/2.54cm,横糸45本/2.54cm;製品名「山東晒」)、(株)長谷川綿行から購入した。
【実施例】
【0044】
液体二酸化炭素(>99.5%)を、宇野酸素(株)から入手した。
【実施例】
【0045】
試験に使用した染料1~9の化学構造を下表1に示す。
【表1-1】
JP0006721172B2_000008t.gif
【表1-2】
JP0006721172B2_000009t.gif
【実施例】
【0046】
染料1、2、4、7、8、9は、試作合成品として有本化学工業(株)から入手した。染料3、5、6は、以下の合成例に従い、合成した。いずれの染料も固体の形態であった。ここで示す合成例において、反応溶剤としてN-メチルピロリドン(以下、NMPとする。)もしくはイソブタノールを使用しているが、この限りではない。
【実施例】
【0047】
(合成例1:1-(メチルアミノ)-4-[(4-tert-ブチルフェニル)アミノ]アントラセン-9,10-ジオン)
1-メチルアミノ-4-ブロモアントラキノン47g、酢酸カリウム19g、p-t-ブチルアニリン67g、およびNMP48gを撹拌しながら約90℃まで昇温した。90℃に到達後、塩化第一銅0.71gおよびNMP2gを加えた。さらに140℃まで昇温し、140℃で2時間反応させた。反応終了後、反応液を撹拌しながら自然冷却し、反応液温度65℃付近でメタノール150gを加えた。引き続き撹拌しながら冷却し、析出した染料を反応液温度35℃以下で吸引ろ過にて採取した。次に、得られた染料をメタノール85g中で1時間以上撹拌した。その後、吸引ろ過にて染料を取り出した。さらに取り出した染料を約60℃の湯300g,濃塩酸8g中で1時間以上撹拌し、吸引ろ過にて目的の染料を得た。この際、ろ液のpHが中性域になるまで湯による洗浄を行った。得られた染料のWetケーキは70℃で乾燥した。
収量50.1g,収率87.4%(HPLC純度94.952%)
【実施例】
【0048】
(合成例2:1-(メチルアミノ)-4-[(4-ドデシルフェニル)アミノ]アントラセン-9,10-ジオン)
1-メチルアミノ-4-ブロモアントラキノン47g、酢酸カリウム17g、p-n-ドデシルアニリン59g、およびイソブタノール48gを撹拌しながら約90℃まで昇温した。90℃に到達後、塩化第一銅0.36gおよびイソブタノール2gを加えた。さらに113℃まで昇温し、113℃で5時間反応させた。反応終了後、反応液を撹拌しながら自然冷却し、反応液温度65℃付近でメタノール100gを加えた。引き続き撹拌しながら冷却し、析出した染料を反応液温度35℃以下で吸引ろ過にて採取した。次に、得られた染料をメタノール250g中で1時間以上撹拌した。その後、吸引ろ過にて染料を取り出した。さらに取り出した染料を約60℃の湯200g,濃塩酸8g中で1時間以上撹拌し、吸引ろ過にて目的の染料を得た。この際、ろ液のpHが中性域になるまで湯による洗浄を行った。得られた染料のWetケーキは70℃で乾燥した。
収量59.8g,収率80.8%(HPLC純度97.459%)
【実施例】
【0049】
(合成例3:1-(メチルアミノ)-4-[(4-テトラデシルフェニル)アミノ]アントラセン-9,10-ジオン)
1-メチルアミノ-4-ブロモアントラキノン10.9g、酢酸カリウム3.93g、p-n-テトラデシルアニリン15g、およびイソブタノール10gを撹拌しながら約90℃まで昇温した。90℃に到達後、塩化第一銅0.16gおよびイソブタノール5gを加えた。さらに113℃まで昇温し、113℃で4時間反応させた。反応終了後、反応液を撹拌しながら自然冷却し、反応液温度75℃付近でメタノール35gを加えた。引き続き撹拌しながら冷却し、析出した染料を反応液温度35℃以下で吸引ろ過にて採取した。次に、得られた染料をメタノール35g中で1時間以上撹拌した。その後、吸引ろ過にて染料を取り出した。さらに取り出した染料を約60℃の湯120g,濃塩酸4g中で1時間以上撹拌し、吸引ろ過にて目的の染料を得た。この際、ろ液のpHが中性域になるまで湯による洗浄を行った。得られた染料のWetケーキは70℃で乾燥した。
収量15.5g,収率85.5%(HPLC純度95.766%)
【実施例】
【0050】
(超臨界流体染色プロセス)
上記染料1~9を用いて、下記の方法に従ってポリプロピレン布の染色し、各染料のポリプロピレン繊維に対する染色能を評価した。また、染色槽の内壁に析出した染料の有無も確認した。紙ワイプ上に残ったものと内壁に析出したものとをあわせた槽内残留染料について評価した。さらに、各染料について染色堅牢度を評価するための染色布を作成した。ポリプロピレン布No.2を、20×150cmに切断し、重さを量った(約75g)。綿布No.1、2および3を、それぞれ、20×100cm、20×75cm、20×35cmに切断した。最初に、綿布No.1および2を順番に、パンチ穴(直径3mm、穴数/面積1.87/cm、有効幅190mm)を有するステンレススチールシリンダー(幅220mm;外径30mm、内径26mm)に巻いた。ポリプロピレン布No.2染色に対するパンチ穴の直接的な影響を避けるために、これらの布をアンダークロスとして用いた。アンダークロスは、流体がパンチング穴から直線的に通過することを避け、被染物により均一に流れるようにした。次いで、ポリプロピレン布No.2および綿布No.3を順番に巻いた。綿布No.3は、槽からの放射熱によりポリプロピレン布が縮むのを防いだ。巻き上げたロールは端を綿糸で緩く縛ることで固定した。
【実施例】
【0051】
超臨界流体染色のための装置を図1に示す。超臨界流体染色装置200は、液体COボンベ201、フィルター202、冷却ジャケット203、高圧ポンプ204、予熱器205、圧力ゲージ206~208、磁気駆動部209、DCモータ210、安全弁211、212、冷却器213、停止弁214~218、ニードル弁219、加熱器220から構成される。布試料を巻き付けたシリンダー221を高圧ステンレススチール槽222(容積2230cm)に入れた。紙ワイプ(KimWipes S-200、日本製紙クレシア株式会社製)で包んだ染料223(ポリプロピレン被染物の質量の0.3%:すなわち0.3%omf)を、槽222内のシリンダー221の上の流体通路に置いた。
【実施例】
【0052】
槽222の弁を閉じ、120℃に加熱した。染色温度に達した後、液体二酸化炭素(1.13kg)を、ポンプ204によって、冷却ジャケット203を介して槽222に流した。二酸化炭素流体を、槽222の底部に取り付けたステンレススチールのインペラ224と磁気駆動部209で循環させた。磁気駆動部209の回転速度は750rpmであった。流体の流れ方向は、シリンダー221の内側から外側であった。
【実施例】
【0053】
温度、圧力循環速度がある一定の値(すなわち、120℃、25MPa、750rpm)に達した後、これらの条件を60分間維持して、ポリプロピレン布を染色した。放出速度を制御し、15分間かけて圧力を25MPaから大気圧へ低下させた。循環は、槽内圧がほぼ臨界圧(8.0~7.4MPa)に低下するまで続けた。その後、染色したポリプロピレン布を槽222から取り出した。
【実施例】
【0054】
循環を継続して緩やかに放圧する操作によりポリプロピレン布の表面上に析出した染料は除去される。したがって、大過剰とならない染料濃度であれば、後の洗浄プロセスが不要となる。染料が表面析出すると異常に低い性能を示す傾向にある摩擦堅牢度(JIS L0849、II型、添付白布:綿)は、この放圧操作により正常となる。本発明の実施例では、乾摩擦、湿摩擦いずれも4-5級から5級を示した。本実施例で使用したポリプロピレン布No.2を染料1~9を用いて染色した場合の染色能は、すべて良好であった。また、槽内残留染料はいずれの染料も残留なし(痕跡量)であった。
【実施例】
【0055】
(洗濯堅牢度)
洗濯堅牢度試験を、添付白布に多繊交織布(交織1号:JIS L0803:2005;綿、ナイロン、アセテート、毛糸、レーヨン、アクリル、絹およびポリエステルで織られた布)を使用して、JIS L0844:2005 A-2法(ISO 105-C02:1989 試験2に基づく)によって実施した。多繊交織布の汚染では、最も汚染されたナイロン部分の評価を示した。また、布への汚染だけでなく、試験液の汚染も、ISO 105-D01:1993を参照して評価した。試験液の汚染の評価では、容器内に残存する試験液を濾紙に通過させた。濾過した試験液の汚染の着色を、汚染評価用のグレースケールでの透過光を用いて、白色カードの前に置いたガラス製試験管(直径25mm)内で、未使用の試験液のものと比較した。
【実施例】
【0056】
(耐光堅牢度)
染色したポリプロピレン布の耐光堅牢度を、JIS L0842(第3露光法)に準拠し、評価した。耐光堅牢度試験を、紫外線カーボンアーク灯光を用いて、3級および/または4級について第3露光法で実施した。
【実施例】
【0057】
(昇華堅牢度)
染色したポリプロピレン布の昇華堅牢度を、JIS L0854に準拠し、添付白布にはナイロン(単一繊維布(I)7号:JIS L0803:2005)を用いて評価した。
【実施例】
【0058】
(測色)
染色されたポリプロピレン布の測色には、分光測色計(CM-600d:コニカミノルタジャパン(株)製)を用いた。分光反射率の測定条件は、無蛍光白色紙上に試料を4枚重ねにし、測定径φ8mm、観察条件2°視野、観察光源D65、測定波長範囲400~700nm、測定波長間隔10nm、正反射光を除く(SCE:Specular Component Exclude)とした。分光反射率からCIE1976Lに準拠してL、a、bの値を求めた。さらに、JIS Z8721:1993に準拠して、D65光源における色相Hを求めた。
【実施例】
【0059】
(実施例1~11、比較例1~4、参考例1~4)
染料1~9を単独で使用した染色の試験結果を表2に示す。染料3、5および7の青色染料のそれぞれと、染料8の黄色染料または染料9の赤色染料とを配合して染色した試験結果を表3に示す。
【表2】
JP0006721172B2_000010t.gif
【表3】
JP0006721172B2_000011t.gif
【実施例】
【0060】
表2に示されるように、染料2~6のそれぞれを単独で使用して染色した実施例1~5のポリプロピレン布は、いずれも耐光堅牢度が4級以上であった。これは、耐光堅牢度を良好なものとするためには、染料の化学構造は、アントラキノン環の1位の置換基がメチルアミノ基、4位の置換基が炭素数4~14の直鎖または分岐アルキル基で置換されたフェニルアミノ基であることを要することを示す。中でも、実施例2~5の染色されたポリプロピレン布は、洗濯堅牢度および昇華堅牢度にも優れていた。また、式(1)のフェニル基上のアルキル置換基の炭素数が異なる染料2~6を同質量で用いて染色した実施例1~5のうち、染料6で染色した実施例5のポリプロピレン布では、モル吸光係数がほぼ同じで分子量が大きくなるため、実施例1~4のものに比べ、その色が淡かった。一方、非特許文献4に記載の青色染料である染料7で染色した比較例2、3のポリプロピレン布は、実施例1~5のものよりも耐光堅牢度が劣化していた。特に、より低い濃度で染色した比較例3では、耐光堅牢度がより劣化した。
【実施例】
【0061】
一般衣料では、洗濯堅牢度、耐光堅牢度、昇華堅牢度が3級以上であることが要求される。表3に示されるように、青色の染料3または染料5と黄色の染料8とを配合して染色した実施例6~9、青色の染料5と赤色の染料9とを配合して染色した実施例10、11では、槽内残留染料が少なく、洗濯堅牢度、耐光堅牢度、昇華堅牢度のいずれも3級以上であり、一般衣料で要求される基準を満たしていた。黄色の染料8で染めたポリプロピレン布は、光照射による変退色が褐色化を経て緩やかに淡色化するため、染料8と他の色の染料とで配合染色した実施例6~9の耐光堅牢度が、染料8で単品染色したものである参考例1~3のものよりも高かった。これに対して、単品染色で耐光堅牢度が本発明の青色染料より劣る青色の染料7と、黄色の染料8とを配合して染色した比較例3のポリプロピレン布では、耐光堅牢度が3級未満であり、一般衣料で要求される基準を満たさなかった。
【実施例】
【0062】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや工程の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、衣服、下着、帽子、靴下、手袋、スポーツ用衣料等の衣料品、座席シート等の車両内装材、カーペット、カーテン、マット、ソファーカバー、クッションカバー等のインテリア用品などに利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
200 超臨界流体染色装置、 201 液体CO2ボンベ、 202 フィルター、 203 冷却ジャケット、 204 高圧ポンプ、 205 予熱器、 206,207,208 圧力ゲージ、 209 磁気駆動部、 210 DCモータ、 211,212 安全弁、 213 冷却器、 214,215,216,217,218 停止弁、 219 ニードル弁、 220 加熱器、 221 シリンダー、 222 高圧ステンレススチール槽、223 紙ワイプで包んだ染料、224 インペラ。
図面
【図1】
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