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明細書 :低誘虫発光装置、表示装置、低誘虫発光方法及び表示方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和2年12月3日(2020.12.3)
発明の名称または考案の名称 低誘虫発光装置、表示装置、低誘虫発光方法及び表示方法
国際特許分類 A01M  29/10        (2011.01)
H05B  47/155       (2020.01)
H05B  47/165       (2020.01)
G09F  13/02        (2006.01)
G09F  13/00        (2006.01)
FI A01M 29/10
H05B 47/155
H05B 47/165
G09F 13/02
G09F 13/00 M
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 43
出願番号 特願2019-539500 (P2019-539500)
国際出願番号 PCT/JP2018/031611
国際公開番号 WO2019/044780
国際出願日 平成30年8月27日(2018.8.27)
国際公開日 平成31年3月7日(2019.3.7)
優先権出願番号 2017164336
優先日 平成29年8月29日(2017.8.29)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】弘中 満太郎
出願人 【識別番号】504300181
【氏名又は名称】国立大学法人浜松医科大学
【識別番号】511169999
【氏名又は名称】石川県公立大学法人
個別代理人の代理人 【識別番号】100095407、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 満
【識別番号】100132883、【弁理士】、【氏名又は名称】森川 泰司
【識別番号】100165489、【弁理士】、【氏名又は名称】榊原 靖
【識別番号】100173462、【弁理士】、【氏名又は名称】宮本 一浩
審査請求 未請求
テーマコード 2B121
3K273
5C096
Fターム 2B121AA12
2B121DA33
2B121DA34
2B121DA38
2B121DA62
2B121DA63
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2B121EA22
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3K273TA05
3K273TA08
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3K273TA35
3K273TA37
3K273TA47
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3K273UA22
3K273UA24
3K273UA25
3K273VA01
3K273VA03
3K273VA05
3K273VA08
5C096BA03
5C096BC02
5C096CC04
5C096CC06
5C096CC10
5C096CC12
5C096DC18
5C096FA07
5C096FA09
要約 低誘虫発光装置(10)は、発光部(11)と、駆動部(13)と、を備える。低誘虫発光装置(10)を構成する発光部(11)は、光を発光する。低誘虫発光装置(10)を構成する駆動部(13)は、発光部(11)が発する光の強度を制御することで、フリッカー光を生成する。駆動部(13)の制御により生成されたフリッカー光の強度の波形は、発光部(11)が連続光を発する場合よりも誘引率を低下させる対象となる虫の種類に応じた特定の周波数成分を、他の周波数成分よりも多く含む。
特許請求の範囲 【請求項1】
光を発する発光手段と、
前記発光手段が発する光の強度を制御することでフリッカー光を生成する制御手段と、を備え、
前記フリッカー光の強度の波形は、前記発光手段が連続光を発する場合よりも誘引率を低下させる対象の虫の種類に応じた特定の周波数成分を他の周波数成分より多く含む、低誘虫発光装置。
【請求項2】
前記特定の周波数成分は、前記虫の臨界融合頻度より周波数が低い成分である、
請求項1に記載の低誘虫発光装置。
【請求項3】
前記特定の周波数成分は、前記虫の飛翔速度をSとし、前記虫から前記発光手段までの距離をLとした場合において、周波数がS/(2L)Hz以上の成分である、
請求項1又は2に記載の低誘虫発光装置。
【請求項4】
前記特定の周波数成分は、周波数が0.25Hz以上の成分である、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の低誘虫発光装置。
【請求項5】
前記波形のデューティ比は、50%以下である、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の低誘虫発光装置。
【請求項6】
前記フリッカー光は、前記虫によって連続光として視認される光の成分である連続光成分を含む、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の低誘虫発光装置。
【請求項7】
前記フリッカー光の強度の最大値と最小値との差の、前記最大値に対する比率は、50%以上であって、
前記最小値は、2m離れた地点から見て1.0×1010photons/cm/sec以上である、
請求項6に記載の低誘虫発光装置。
【請求項8】
前記フリッカー光の強度の最大値と最小値との差の、前記最大値に対する比率は、15%以下であって、
前記最小値は、2m離れた地点から見て1.0×1010photons/cm/sec以上である、
請求項6に記載の低誘虫発光装置。
【請求項9】
前記フリッカー光は、前記特定の周波数成分に対応する光の成分であるフリッカー成分と、前記連続光成分と、を含み、
前記フリッカー成分と前記連続光成分とは、異なる分光スペクトルを有する、
請求項6乃至8のいずれか一項に記載の低誘虫発光装置。
【請求項10】
前記フリッカー成分の分光スペクトルである第1スペクトルと前記連続光成分の分光スペクトルである第2スペクトルとが重複する部分の面積の、前記第1スペクトルの面積に対する比率は、40%以下であり、
前記重複する部分の面積の、前記第2スペクトルの面積に対する比率は、40%以下である、
請求項9に記載の低誘虫発光装置。
【請求項11】
分光スペクトルのピークのうち、ピーク波長が最短となる第1ピークのピーク波長をW1、前記第1ピークの光強度の値をIn1、ピーク波長が最長となる第2ピークのピーク波長をW2、前記第2ピークの光強度の値をIn2としたときに、W1より短い波長であって分光スペクトルの光強度がIn1/2に等しくなる第1波長から、W2より長い波長であって分光スペクトルの光強度がIn2/2に等しくなる第2波長までの幅を指標値として、
前記フリッカー成分の前記指標値は、前記連続光成分の前記指標値の1/3以下である、
請求項9又は10に記載の低誘虫発光装置。
【請求項12】
前記フリッカー成分の分光スペクトルの、波長が500nmから600nmまでの範囲に対応する光強度の値は、前記連続光成分の分光スペクトルの光強度の値より小さい、
請求項9乃至11のいずれか一項に記載の低誘虫発光装置。
【請求項13】
前記発光手段は、
前記特定の周波数成分を有する光を発する第1発光手段と、
前記連続光成分の光を発する第2発光手段と、
を有する、請求項6乃至12のいずれか一項に記載の低誘虫発光装置。
【請求項14】
前記第1発光手段と前記第2発光手段との間の距離は、5cm以下である、
請求項13に記載の低誘虫発光装置。
【請求項15】
前記第1発光手段は、支持部材の表面上の第1領域に1つ又は複数配置され、
前記第2発光手段は、前記表面上の前記第1領域とは異なる第2領域に1つ又は複数配置される、
請求項13又は14に記載の低誘虫発光装置。
【請求項16】
前記第1発光手段と前記第2発光手段とは、支持部材の上に交互に配置される、
請求項13又は14に記載の低誘虫発光装置。
【請求項17】
前記第1発光手段は、複数配置された前記第2発光手段の少なくとも一部を囲むように複数配置される、
請求項13又は14に記載の低誘虫発光装置。
【請求項18】
前記第1発光手段は、前記第2発光手段により形成される発光面の鉛直下方に配置される、
請求項13又は14に記載の低誘虫発光装置。
【請求項19】
前記第1発光手段は、前記第2発光手段の鉛直上方に配置される、
請求項13又は14に記載の低誘虫発光装置。
【請求項20】
前記第1発光手段と前記第2発光手段とは、被照射面と照射方向との少なくとも一方が異なるように光を照射する、
請求項13乃至19のいずれか一項に記載の低誘虫発光装置。
【請求項21】
前記第1発光手段が発した光を反射する反射手段、をさらに備える、
請求項13乃至20のいずれか一項に記載の低誘虫発光装置。
【請求項22】
光を発する発光手段と、
前記発光手段が発する光の強度を制御することでフリッカー光を生成する制御手段と、
前記フリッカー光が照射される表示手段と、を備え、
前記フリッカー光の強度の波形は、前記発光手段が連続光を発する場合よりも誘引率を低下させる対象の虫の種類に応じた特定の周波数成分を他の周波数成分より多く含む、表示装置。
【請求項23】
前記発光手段の発する光の起点から前記表示手段の視認者に至る経路上で該光を遮る遮光手段、をさらに備える請求項22に記載の表示装置。
【請求項24】
前記発光手段は、
前記特定の周波数成分を有する光を発する第1発光手段と、
前記虫によって連続光として視認される光を発する第2発光手段と、を有し、
前記表示手段は、
前記第1発光手段の発する光が照射される第1表示手段と、
前記第2発光手段の発する光が照射される第2表示手段と、を有し、
前記第1表示手段は、前記第2表示手段の鉛直上方に配置される、
請求項22又は23に記載の表示装置。
【請求項25】
前記発光手段は、
前記特定の周波数成分を有する光を発する第1発光手段と、
前記虫によって連続光として視認される光を発する第2発光手段と、を有し、
前記第1発光手段と前記第2発光手段とは、前記表示手段の被照射面と照射方向との少なくとも一方が異なるように光を照射する、
請求項22又は23に記載の表示装置。
【請求項26】
前記フリッカー光が前記表示手段に照射されたときの前記表示手段の明るさの最大値は、2m離れた地点から見て1.0×1010photons/cm/sec以上である、
請求項22乃至25のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項27】
発光手段が発する光の強度を制御することでフリッカー光を生成する制御ステップ、を含み、
前記フリッカー光の強度の波形は、前記発光手段が連続光を発する場合よりも誘引率を低下させる対象の虫の種類に応じた特定の周波数成分を他の周波数成分より多く含む、低誘虫発光方法。
【請求項28】
発光手段が発する光の強度を制御することでフリッカー光を生成するステップと、
前記フリッカー光を表示手段に照射するステップと、を含み、
前記フリッカー光の強度の波形は、前記発光手段が連続光を発する場合よりも誘引率を低下させる対象の虫の種類に応じた特定の周波数成分を他の周波数成分より多く含む、表示方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、低誘虫発光装置、表示装置、低誘虫発光方法及び表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの虫の複眼は、350nm程度の波長に高い感度をもつ受容体と、530nm程度の波長に高い感度をもつ受容体と、を有している。そのため、ヒトが利用する多くの光に虫が誘引されてしまい、不便を強いられることがある。
【0003】
そこで、飛翔昆虫の誘引性を低下させるような光に関する技術が提案されている(例えば特許文献1を参照)。特許文献1には、480~520nmの波長帯で発光強度が実質的にゼロとなる照明装置が提案されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2012-174538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、紫青色の波長帯域に青色ピーク波長を有する光をLED(Light Emitting Diode)が出射して、波長変換素子と帯域阻止フィルタとを用いて、480~520nmの波長帯における発光強度をゼロとするものである。このため、特許文献1に記載の技術で得られる照明光の分光スペクトルには、ある程度制限がかかり、光の色を設計する自由度が少ないため、利便性に向上の余地があった。
【0006】
本発明は、上記の事情の下になされたもので、虫の誘引性を低下させつつ利便性の高い光を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る低誘虫発光装置は、
光を発する発光手段と、
前記発光手段が発する光の強度を制御することでフリッカー光を生成する制御手段と、を備え、
前記フリッカー光の強度の波形は、前記発光手段が連続光を発する場合よりも誘引率を低下させる対象の虫の種類に応じた特定の周波数成分を他の周波数成分より多く含む。
【0008】
前記特定の周波数成分は、前記虫の臨界融合頻度より周波数が低い成分であることが望ましい。
【0009】
前記特定の周波数成分は、前記虫の飛翔速度をSとし、前記虫から前記発光手段までの距離をLとした場合において、周波数がS/(2L)Hz以上の成分であることが望ましい。
【0010】
前記特定の周波数成分は、周波数が0.25Hz以上の成分であることが望ましい。
【0011】
前記波形のデューティ比は、50%以下であることが望ましい。
【0012】
前記フリッカー光は、前記虫によって連続光として視認される光の成分である連続光成分を含むことが望ましい。
【0013】
前記フリッカー光の強度の最大値と最小値との差の、前記最大値に対する比率は、50%以上であって、
前記最小値は、2m離れた地点から見て1.0×1010photons/cm/sec以上であることが望ましい。
【0014】
前記フリッカー光の強度の最大値と最小値との差の、前記最大値に対する比率は、15%以下であって、
前記最小値は、2m離れた地点から見て1.0×1010photons/cm/sec以上であることが望ましい。
【0015】
前記フリッカー光は、前記特定の周波数成分に対応する光の成分であるフリッカー成分と、前記連続光成分と、を含み、
前記フリッカー成分と前記連続光成分とは、異なる分光スペクトルを有することが望ましい。
【0016】
前記フリッカー成分の分光スペクトルである第1スペクトルと前記連続光成分の分光スペクトルである第2スペクトルとが重複する部分の面積の、前記第1スペクトルの面積に対する比率は、40%以下であり、
前記重複する部分の面積の、前記第2スペクトルの面積に対する比率は、40%以下であることが望ましい。
【0017】
分光スペクトルのピークのうち、ピーク波長が最短となる第1ピークのピーク波長をW1、前記第1ピークの光強度の値をIn1、ピーク波長が最長となる第2ピークのピーク波長をW2、前記第2ピークの光強度の値をIn2としたときに、W1より短い波長であって分光スペクトルの光強度がIn1/2に等しくなる第1波長から、W2より長い波長であって分光スペクトルの光強度がIn2/2に等しくなる第2波長までの幅を指標値として、
前記フリッカー成分の前記指標値は、前記連続光成分の前記指標値の1/3以下であることが望ましい。
【0018】
前記フリッカー成分の分光スペクトルの、波長が500nmから600nmまでの範囲に対応する光強度の値は、前記連続光成分の分光スペクトルの光強度の値より小さいことが望ましい。
【0019】
前記発光手段は、
前記特定の周波数成分を有する光を発する第1発光手段と、
前記連続光成分の光を発する第2発光手段と、
を有することが望ましい。
【0020】
前記第1発光手段と前記第2発光手段との間の距離は、5cm以下であることが望ましい。
【0021】
前記第1発光手段は、支持部材の表面上の第1領域に1つ又は複数配置され、
前記第2発光手段は、前記表面上の前記第1領域とは異なる第2領域に1つ又は複数配置されることが望ましい。
【0022】
前記第1発光手段と前記第2発光手段とは、支持部材の上に交互に配置されることが望ましい。
【0023】
前記第1発光手段は、複数配置された前記第2発光手段の少なくとも一部を囲むように複数配置されることが望ましい。
【0024】
前記第1発光手段は、前記第2発光手段により形成される発光面の鉛直下方に配置されることが望ましい。
【0025】
前記第1発光手段は、前記第2発光手段の鉛直上方に配置されることが望ましい。
【0026】
前記第1発光手段と前記第2発光手段とは、被照射面と照射方向との少なくとも一方が異なるように光を照射することが望ましい。
【0027】
前記第1発光手段が発した光を反射する反射手段、をさらに備えることが望ましい。
【0028】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る表示装置は、
光を発する発光手段と、
前記発光手段が発する光の強度を制御することでフリッカー光を生成する制御手段と、
前記フリッカー光が照射される表示手段と、を備え、
前記フリッカー光の強度の波形は、前記発光手段が連続光を発する場合よりも誘引率を低下させる対象の虫の種類に応じた特定の周波数成分を他の周波数成分より多く含む。
【0029】
前記発光手段の発する光の起点から前記表示手段の視認者に至る経路上で該光を遮る遮光手段、をさらに備えることが望ましい。
【0030】
前記発光手段は、
前記特定の周波数成分を有する光を発する第1発光手段と、
前記虫によって連続光として視認される光を発する第2発光手段と、を有し、
前記表示手段は、
前記第1発光手段の発する光が照射される第1表示手段と、
前記第2発光手段の発する光が照射される第2表示手段と、を有し、
前記第1表示手段は、前記第2表示手段の鉛直上方に配置されることが望ましい。
【0031】
前記発光手段は、
前記特定の周波数成分を有する光を発する第1発光手段と、
前記虫によって連続光として視認される光を発する第2発光手段と、を有し、
前記第1発光手段と前記第2発光手段とは、前記表示手段の被照射面と照射方向との少なくとも一方が異なるように光を照射することが望ましい。
【0032】
前記フリッカー光が前記表示手段に照射されたときの前記表示手段の明るさの最大値は、2m離れた地点から見て1.0×1010photons/cm/sec以上であることが望ましい。
【0033】
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点に係る低誘虫発光方法は、
発光手段が発する光の強度を制御することでフリッカー光を生成する制御ステップ、を含み、
前記フリッカー光の強度の波形は、前記発光手段が連続光を発する場合よりも誘引率を低下させる対象の虫の種類に応じた特定の周波数成分を他の周波数成分より多く含む。
【0034】
上記目的を達成するため、本発明の第4の観点に係る表示方法は、
発光手段が発する光の強度を制御することでフリッカー光を生成するステップと、
前記フリッカー光を表示手段に照射するステップと、を含み、
前記フリッカー光の強度の波形は、前記発光手段が連続光を発する場合よりも誘引率を低下させる対象の虫の種類に応じた特定の周波数成分を他の周波数成分より多く含む。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、虫の誘引性を低下させつつ利便性の高い光を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態1に係る低誘虫発光装置が使用される場面の例を示す図である。
【図2】実施の形態1に係る低誘虫発光装置の構成を示す図である。
【図3】実施の形態1に係る波形パターンを示す図である。
【図4】波形パターンのスペクトルを示す図である。
【図5】実験環境を示す第1の図である。
【図6】周波数を変えたときの誘引率の変化を示す図である。
【図7】実験環境を示す第2の図である。
【図8】フリッカー光と連続光とで誘引率を比較した図である。
【図9】実施の形態1に係る波形パターンの変形例を示す図である。
【図10】実施の形態2に係る波形パターンを示す図である。
【図11】デューティ比を変えたときの誘引率の変化を示す図である。
【図12】実施の形態2に係る波形パターンの変形例を示す図である。
【図13】実施の形態3に係る波形パターンを示す図である。
【図14】変調深度を変えたときの誘引率の変化を示す図である。
【図15】光強度を変えたときの個体の行動の割合を示す図である。
【図16】実施の形態4に係る低誘虫発光装置の構成を示す図である。
【図17】実施の形態4に係る低誘虫発光装置から出射する光のスペクトルを示す図である。
【図18A】フリッカー光の波長を変えたときの誘引率の変化に関し、フリッカー光を紫外光としたときの波長スペクトルを示す図である。
【図18B】図18Aに示される光を用いた場合においてフリッカー光の周波数を変化させたときの誘引率を示す図である。
【図18C】フリッカー光を青色光としたときの波長スペクトルを示す図である。
【図18D】図18Cに示される光を用いた場合においてフリッカー光の周波数及びデューティ比を変化させたときの誘引率を示す図である。
【図18E】フリッカー光を緑色光としたときの波長スペクトルを示す図である。
【図18F】図18Eに示される光を用いた場合においてフリッカー光の周波数及びデューティ比を変化させたときの誘引率を示す図である。
【図19A】混色光と白色光との選択実験について、連続光のスペクトル、及びフリッカー光と連続光の双方を発光させたときのスペクトルを示す図である。
【図19B】第1の選択実験の結果を示す図である。
【図19C】白色連続光を発する条件を示す図である。
【図19D】第2の選択実験の結果を示す図である。
【図19E】混色光を発する場合を示す図である。
【図19F】第3の選択実験の結果を示す図である。
【図20】実施の形態5に係る低誘虫発光装置の構成を示す図である。
【図21】実施の形態5に係る低誘虫発光装置の変形例を示す第1の図である。
【図22】実施の形態5に係る低誘虫発光装置の変形例を示す第2の図である。
【図23】実施の形態5に係る低誘虫発光装置の変形例を示す第3の図である。
【図24】実施の形態6に係る低誘虫発光装置の構成を示す図である。
【図25】実施の形態6に係る低誘虫発光装置の変形例を示す第1の図である。
【図26】実施の形態6に係る低誘虫発光装置の変形例を示す第2の図である。
【図27】実施の形態7に係る表示装置の構成を示す図である。
【図28】実施の形態8に係る表示装置の構成を示す図である。
【図29】実験環境を示す第3の図である。
【図30】光源の仰俯角を変えたときの誘引率の変化を示す図である。
【図31】表示部に照射する光を示す図である。
【図32】実施の形態9に係る低誘虫発光装置の構成を示す第1の図である。
【図33】実施の形態9に係る低誘虫発光装置の構成を示す第2の図である。
【図34】表示設備を示す図である。
【図35】低誘虫発光装置を適用する場面の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明にあたって、光の強度(明るさ)の単位としては、単位時間における単位面積当たりの光子数である[photons/cm/sec]もしくは[photons/m/sec]を用いる。通常用いられるルーメンやカンデラ等の単位が、ヒトを基準とした心理物理量であって、ヒトとは分光感度が異なる虫によって視認される光の単位として適していないこと、及び、虫が光子を受けた受容体により光を視認する機序を考慮して、光子数を光の強度(明るさ)の単位として採用する。

【0038】
実施の形態1.
図1には、本実施の形態に係る低誘虫発光装置10が用いられる場面の一例が示されている。図1に示されるように、低誘虫発光装置10は、道路又は施設を照明する照明装置101の光源として用いられる。一般的に、種々の虫が光に誘引される性質を有しているため、照明装置101にも虫が引き寄せられる。これに対して、低誘虫発光装置10は、虫がちらつきを視認することができる程度に点滅することで、虫の誘引率を低下させる装置である。

【0039】
低誘虫発光装置10は、本実施の形態では、図2に示されるように、いわゆるLED電球である。低誘虫発光装置10は、光を発する発光手段としての発光部11と、発光部11を支持する支持部材としての支持部12と、発光部11を駆動する駆動部13と、光を透過するカバー14と、を有している。

【0040】
発光部11は、光源として複数の発光素子11aを含んで構成される。発光素子11aは、LEDであって、支持部12上の予め定められた位置に並んで配置され、駆動部13から供給される電力に応じて光を発する。発光部11から出射した光は、外部方向へカバー14を透過して、図2中の実線の矢印で示されるように拡散する。支持部12は、樹脂を含んで形成される基板であるが、これには限定されず、主として金属により形成される台座であってもよい。

【0041】
駆動部13は、例えばRC発振回路を含んで構成される電気回路であって、プリント配線基板に実装される。駆動部13は、低誘虫発光装置10の口金から供給される電源電力に基づいてLED11aに電力を供給することにより発光部11を発光させる。そして、駆動部13は、発光部11の発する光の強度を制御することにより、特定の周波数成分を含む波形パターンで光の強度を変化させる。すなわち、駆動部13は、発光部11の発する光の強度を制御する制御手段として機能する。なお、特定の周波数成分は、誘引率を低下させる対象の虫の種類に応じて予め定められる周波数の成分である。本実施の形態では、例えばある種のコウチュウ類の誘引率を低下させるために、そのコウチュウ類のフリッカー光に対する臨界融合頻度である400Hzより周波数が低い100Hzの周波数成分を含む波形パターンが用いられる。臨界融合頻度は、ちらつきを視認することができる周波数に相当し、臨界融合頻度より高い周波数で点滅する光は、連続光として視認される。フリッカー光に対する臨界融合頻度は、電気生理学的に得られる。なお、以下では、臨界融合頻度を、適宜CFF(Critical Fusion Frequency)とも記述する(図6等)。

【0042】
図3には、駆動部13の制御により光強度が変化する波形パターンが例示されている。図3に示される波形パターンは、5msの点灯期間と5msの消灯期間とを有する10msの周期で光が点滅する40msの波形パターンである。点灯期間の波形は矩形波のパルスであって、点灯期間において低誘虫発光装置10が発する光の強度は、約1.0×1013photons/cm/secである。駆動部13は、この波形パターンが繰り返されるように光強度を変化させるため、低誘虫発光装置10は、RC回路を利用して10msの周期で点滅を繰り返すこととなる。

【0043】
図4には、図3に示された波形パターンの振幅スペクトルが示されている。図4からわかるように、図3の波形パターンは、100Hzの周波数成分を含んでいる。詳細には、図3の波形パターンのスペクトルは、100Hzにピークを有し、このピーク値がスペクトルの最大値となっている。

【0044】
以上、説明したように、低誘虫発光装置10は、主として100Hzの周波数成分を他の周波数成分より多く含む波形パターンで光強度を変化させる。100Hzの周波数成分は、ある種のコウチュウ類のフリッカー光に対する臨界融合頻度より周波数が低い成分であるため、低誘虫発光装置10が発する光は、そのコウチュウ類には、ちらついて視認されるフリッカー光となる。以下では、誘引率を低下させる対象となる種類の虫の臨界融合頻度より周波数が低い成分を含む波形パターンで強度が変化する光を、フリッカー光という。本実施の形態に係る低誘虫発光装置10は、光の強度を制御することによりフリッカー光を生成し、コウチュウ類に対応するフリッカー光を発することにより、コウチュウ類の誘引率を低下させることができる。以下、本実施の形態に係る低誘虫発光装置10を用いたときの効果を説明する。

【0045】
図5には、フリッカー光による虫の誘引率が低下する事実を検証するために用いられた実験環境が示されている。発明者等は、30cm四方のLEDパネル光源201(CCS社製LDL-TP-300シリーズ)を60cm四方の黒色背景板202の中心に配置して鉛直線と平行になるように固定し、光源の表面が1.0×1013photons/cm/secの光強度となるよう発光させた。そして、発明者等は、LEDパネル光源201の中心から200cm離れた、地上から100cmの高さの飛翔位置203から、暗順応を1時間以上させたカメムシ(チャバネアオカメムシ)を飛翔させた。飛翔したカメムシの個体がLEDパネル光源201又は黒色背景板202に到達した場合には「誘引」と判定し、到達しない場合には「非誘引」と判定した。なお、飛翔可能な状態としてから1分間以内に飛翔しなかった個体は「飛翔せず」と判定して、誘引率を算出するための個体としては採用しないものとした。また、検証は、黒いカーテンで周囲全面を覆った4m四方の実験室で行われた。実験室の室温は23-25℃であって、湿度は40-80%であった。発明者等は、以上の実験環境において、LEDパネル光源201が発する光の波長、及び、この光の点滅する周波数の条件を変えたときのカメムシの誘引率を検証した。

【0046】
図6には、誘引率の検証結果が示されている。図6中のゼロHzの周波数の光は、連続光を意味し、カメムシにとっては周波数を高くしてちらつきを視認することができない光と同等であるため、ゼロHzの結果を横軸において高周波数側に配置している。図6に示されるように、波長が375nm、450nm、470nm、525nm、590nm、630nmの単色光、及び460nmと570nmの波長の混色光を用いたいずれの条件においても、周波数が低くなるほど誘引率が低下している。特に、周波数がCFFより低いときに、誘引率の低下が顕著になる。飛翔したカメムシはいずれも光源方向に向かうことから、この現象は、光の忌避ではなく、光源に対するカメムシの目標定位が阻害された結果と考えられる。このことから、虫の臨界融合頻度より低い周波数で点滅する光は、虫の誘引率を低下させるものと推察される。

【0047】
また、発明者等は、フリッカー光と連続光との選択実験を行った。この選択実験は、図7に示されるように、図5の実験環境にLEDパネル光源204を中心に配置した黒色背景板205を追加した実験環境で行われた。LEDパネル光源204及び黒色背景板205は、飛翔位置203から見てLEDパネル光源201との角度が60°になるとともに、飛翔位置からの距離が200cmとなるように配置された。発明者等は、この実験環境において、LEDパネル光源201,204の双方に紫外光を発光させて、一方を連続光源とし、他方を、明るさを同じくした30Hzの周波数のフリッカー光源とした。

【0048】
選択実験の結果、図8に示されるように、すべての個体が連続光源に誘引された。このことから、連続光源とフリッカー光源との双方が発光している場合には、昆虫は圧倒的に連続光源に誘引されるといえる。すなわち、フリッカー光源は、連続光源より、虫の誘引率が低いことがわかる。

【0049】
なお、誘引率は周波数がCFFより低い時に小さくなると前述したが、連続光には周波数がCFFより高い光を含むこととした。CFFより周波数が高いと昆虫は光源からの光を連続した光と認識するからである。一方、連続光とは周波数が0又は0に近い光を指す。そこで、発明者等は、周波数が0からどこまで高い光からが、誘引率を低下させるかを考察した。

【0050】
昆虫の誘引率が低い理由を、昆虫が飛翔中に光源を見失うことによる定位阻害だと仮定すると、光源が明るい時に飛び立った昆虫が光源に到達する飛翔時間の間に光源が暗くなれば昆虫が光源を見失い定位阻害が発生する可能性が高まることとなる。従って、CFFより低い周波数であって、誘引率を下げる効果の生じる最も低い周波数は、光源と昆虫との距離と、昆虫の飛翔時間をパラメーターとして、昆虫が光源に到達する間に光が明から暗に変化する時間に相当する周波数となる。

【0051】
これの数式化を試みるに、昆虫の飛翔の速度をSとし、光源までの距離をLとし、光源の光強度が正弦波状になっているとし、昆虫が光源の最も明るい時に飛び立ったとし、光源が最も暗い時に光源にぎりぎり到達したとすると、まず、昆虫が光源に到達する時間はL/Sになる。この時間は明から最も暗くなるまでの時間であるので、光源の光の1周期の時間は2L/Sになる。従って周波数はS/(2L)となる。このことから、誘引率を下げる効果のある周波数は、S/(2L)以上であってCFF以下であるといえる。なお、低誘虫発光装置10を設計する際には、低誘虫発光装置10から、誘引率を低下させる対象となる昆虫までの最長の距離をLとすればよい。例えば、図1に例示される低誘虫発光装置10について、3m以内の昆虫の誘引性を低下させたい場合には、Lを3mとすればよい。

【0052】
図5の実験系においては、カメムシの平均な飛翔速度が1m/sであり、光源までの距離が2mであるので、上記式に適用すると0.25Hzとなる。従ってカメムシの場合には、0.25Hz以上CFF以下の周波数にて誘引率を低下させる効果があるといえる。

【0053】
以上の実験からわかるように、本実施の形態に係る低誘虫発光装置10は、フリッカー光を発することにより、虫の誘引率を低下させることができる。虫の誘引率が低い低誘虫発光装置10を、例えば夜間に用いられる照明として用いる場合には、虫が照明に集まってしまい照明の本来の用途を妨げるような状況を避けることができる。例えば、自動販売機や店舗の出入り口の照明に低誘虫発光装置10を用いることで、昆虫やクモ類が集まることによる不快感を低下させ、これらの虫による設備の汚損を軽減することができる。さらに、虫の誘引率を低下させるため、虫を捕獲したり殺処分したりすることがない。これにより、積極的に虫を誘引する捕虫器に比べて生態系への影響を小さくすることができる。

【0054】
また、低誘虫発光装置10は、100Hzの周波数で点滅した。この周波数は、ヒトの臨界融合頻度に相当する60Hzより高いため、低誘虫発光装置10の光はヒトにとっては連続光として視認される。このため、ヒトの視界をちらつかせることなく、ヒトの快適な環境を維持することができる。

【0055】
また、臨界融合頻度は、虫の種類によって異なるため、誘引率を低下させる対象の虫の種類に応じた周波数で点滅させることが好ましい。例えば、動物の臨界融合頻度はおおよそ10~400Hzの範囲内にあって、クモ類の臨界融合頻度は約10Hzであって、飛翔性昆虫の臨界融合頻度は、100~300Hz程度であることが知られている。

【0056】
また、フリッカー光が主として含む周波数成分によって虫の誘引率を低下させるため、光の色を設計する自由度が高い。このため、虫の誘引性を低下させつつ利便性の高い光を得ることができる。

【0057】
なお、本実施の形態で光強度が変化する波形パターンは、図3に示されたものに限られず、変形してもよい。図9には、波形パターンの変形例が示されている。図9に例示される波形パターンは、5msの点灯期間と5msの消灯期間とを組み合わせて形成されるものであり、その振幅スペクトルは、100Hzの周波数成分を相対的に多く含むこととなる。

【0058】
また、同一の波形の波形パターンが繰り返される場合を説明したが、これには限定されない。例えば、100Hzの周波数成分を相対的に多く含んでいるが波形は異なる波形パターンを組み合わせて、光強度を変化させてもよい。これにより、低誘虫発光装置10は、擬周期的に点滅することとなる。

【0059】
また、光強度が変化する波形パターンが、特定の周波数成分を含むものとして説明したが、周波数成分に着目することなく、少なくとも一又は複数の一定の長さ以上の点灯期間と、一又は複数の一定の長さ以上の消灯期間と、の双方を含むものとして波形パターンを規定してもよい。一定の長さは、誘引率を低下させる対象の虫の臨界融合頻度に応じた長さであり、上述のコウチュウ類の誘引率を低下させる場合には、1.25ms以上の点灯期間及び1.25ms以上の消灯期間を含んでいればよい。このように波形パターンを規定すれば、RC発振回路に代えてタイマー回路を用いて駆動部13を構成することができる。

【0060】
また、駆動部13が光強度を制御する制御手段として機能する場合を説明したが、これには限定されない。例えば、一定の光量で発光する発光部11の周囲に鏡等の反射板を配置して、この反射板を発光部11の中心を軸として回転させれば、低誘虫発光装置10は回転灯となる。この回転の周波数を100Hzとすれば、虫がフリッカー光を視認するとともにヒトは連続光を視認することとなる。

【0061】
また、矩形波からなる波形パターンで光強度が変化する場合を説明したが、これには限定されない。虫がちらつきを視認することができれば、三角波や正弦波に代表される種々の波形を用いた波形パターンで光の強度を変化させてもよい。また、光の強度の波形が、臨界融合頻度より周波数が低い特定の周波数成分を他の周波数成分より多く含んで構成されるものとして説明した。この波形は、特定の周波数成分のみから構成されてもよい。換言すると、他の周波数成分は、ゼロに等しくてもよい。すなわち、光の強度の波形は、特定の周波数の正弦波であってもよい。

【0062】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2について図面を参照しつつ説明する。なお、実施の形態1と同一又は同等の構成については、同等の符号を用いるとともに、その説明を省略又は簡略する。本実施の形態に係る低誘虫発光装置10は、光強度が変化する波形パターンのデューティ比が、予め規定された値に設定される点で、実施の形態1に係るものと異なっている。

【0063】
図10には、本実施の形態に係る光強度の波形パターンが示されている。この波形パターンは、実施の形態1に係る図3の波形パターンと類似した波形を有しており、5ms以上の消灯期間と5ms以下の点灯期間とで構成される10msの周期が繰り返される波形パターンである。デューティ比は、パルスが現れる周期T1とパルス幅T2とを用いてT1/T2として算出される。本実施の形態に係る波形パターンは、このデューティ比が予め定められた基準値以下となるように設定される。この基準値は、例えば50%である。

【0064】
以上、説明したように、本実施の形態に係る波形パターンは、デューティ比が基準値以下となるように定められた。この波形パターンで明滅する低誘虫発光装置10は、虫の誘引率を低下させることができる。以下、本実施の形態に係る低誘虫発光装置10を用いたときの効果を説明する。

【0065】
図11には、発明者等がデューティ比の誘引率への影響を検証した結果が示されている。この検証結果は、図5に示された実験環境において、周波数及びデューティ比の条件を変えたときのカメムシの誘引率を検証して得た結果である。図11からわかるように、120Hzの周波数ではデューティ比を変えても誘引率に大きな変化はないが、60Hz及び30Hzの周波数では、デューティ比が低くなるほど誘引率が低下している。特に、デューティ比が50%以下となったときに、誘引率が顕著に低下している。

【0066】
この検証結果からわかるように、臨界融合頻度の値よりも小さな周波数で点滅させる場合には、デューティ比を例えば50%の基準値以下とした波形パターンで光の強度を変化させることで、低誘虫発光装置10が虫の誘引率を確実に低下させることが期待される。

【0067】
なお、デューティ比を算出するためのパルス幅は、パルスの半値全幅として規定される。図12には、正弦波を整流することで生成されたパルスを用いる場合における、パルス幅T2が示されている。図12のパルスを用いる場合には、パルス幅T2/周期T1の値が50%より小さいため、虫の誘引率を低下させることができると考えられる。

【0068】
実施の形態3.
次に、本発明の実施の形態3について図面を参照しつつ説明する。なお、実施の形態1と同一又は同等の構成については、同等の符号を用いるとともに、その説明を省略又は簡略する。本実施の形態に係る低誘虫発光装置10は、光量をゼロとする消灯期間に代えて光量が少ない減灯期間を設けて、低誘虫発光装置10から出射する光が虫によって連続光として視認される光の成分である連続光成分を含む点で、実施の形態1に係るものと異なっている。

【0069】
図13には、本実施の形態に係る光強度の波形パターンが示されている。図13中、連続光成分に対応する領域には、ハッチングが付されている。この波形パターンは、5msの減灯期間と5msの点灯期間とで構成される10msの周期が繰り返される波形パターンであって、その変調深度は、予め定められた基準値に基づいて設定される。例えば、変調深度は、50%の基準値以上、又は15%の基準値以下に設定される。変調深度MD(Modulation Depth)は、光の強度の最大値Vmaxと最小値Vminとの差の、最大値Vmaxに対する比率であって、MD=(Vmax-Vmin)/Vmaxという演算式により算出される。

【0070】
本実施の形態に係る駆動部13は、減灯期間において発光部11に流れる電流を制限することにより、減灯期間における光強度を弱くする。ただし、減灯期間において低誘虫発光装置10の発する光の強度は、1.0×1010photons/cm/sec以上に設定される。

【0071】
以上、説明したように、本実施の形態に係る低誘虫発光装置10が発する光は、連続光成分を含み、光強度が変化する波形パターンの変調深度は、基準値に基づいて設定された。この波形パターンで光強度が変化する低誘虫発光装置10は、虫の誘引率を低下させることができる。以下、本実施の形態に係る低誘虫発光装置10を用いたときの効果を説明する。

【0072】
図14には、発明者等が変調深度の誘引率への影響を検証した結果が示されている。この検証結果は、図5に示された実験環境において、周波数及び変調深度の条件を変えたときのカメムシの誘引率を検証して得た結果である。図14中、ゼロHzは連続光を意味し、「MD」は変調深度を表す。図14からわかるように、変調深度が大きくなるほど誘引率が低下している。特に、変調深度が50%以上となったときに、誘引率が顕著に低下している。ここで、連続光での誘引率は約80%であり、変調深度が50%のときの誘引率は約60%である。すなわち、連続光の条件に比して、変調深度が50%以上になると誘引率が25%(=(80-60)/80)以上低下することとなり、誘引率の低下がある程度保証されるものと考えられる。

【0073】
この検証結果からわかるように、変調深度を例えば50%の基準値以上とした波形パターンで光強度を変化させることで、低誘虫発光装置10が虫の誘引率を確実に低下させることが期待される。

【0074】
なお、変調深度が15%以上になると、ヒトがちらつきを認識することができることが知られている。そのため、ヒトの臨界融合頻度より周波数が低い波形パターンであっても、変調深度の値を15%以下に設定すれば、ヒトにちらつきを視認させることなく、虫の誘引率をある程度低下させることができる。

【0075】
また、発明者等は、虫が視認することができる光強度について検証した。この検証は、具体的には、図5に示される実験環境で、LEDパネル光源201の光強度を変化させるたびに、飛翔位置からカメムシを1個体ずつ計40個体放ち、「誘引」、「非誘引」及び「飛翔せず」の割合を得ることで行われた。図15に示される検証結果からわかるように、LEDパネル光源201の表面の明るさが1.0×1010photons/cm/sec以下になると、カメムシの誘引率が顕著に減少するとともに、「飛翔せず」と判定された個体が急増している。このことから、カメムシが視認することができる発光体の光強度の下限はおおよそ1.0×1010photons/cm/secであるといえる。さらに、カメムシと同様の飛翔性昆虫についても、おおよそ同様の下限値になると考えられる。

【0076】
図13に示された波形パターンに関して、減灯期間における光の強度が虫によって視認されないほど暗くなると、虫によって視認される波形パターンは、実質的に変調深度が100%となってしまい、変調深度を基準値に基づいて設定する効果がなくなるおそれがある。そのため、減灯期間において低誘虫発光装置10の発する光の強度は、上述の下限値である1.0×1010photons/cm/sec以上とすることが適当である。

【0077】
なお、誘引率を低下させる対象の虫が、低誘虫発光装置10から遠方に位置している場合には、この虫が視認する波形パターンの変調深度が100%になると考えられる。変調深度が100%になれば、図14に示されるように、誘引率が大きく低下する。このため、上述の下限値の設定は、特に、低誘虫発光装置10の比較的近傍に位置している虫の誘引率を確実に低下させるために有効である。

【0078】
また、低誘虫発光装置10が発する光が、減灯期間における光量と同等の連続光である連続光成分を含むものとして説明したが、これには限定されない。例えば、この連続光成分は、誘引率を低下させる対象の虫の臨界融合頻度より周波数が高い光の成分であって、この虫が実質的に連続光として視認する成分であればよい。同様に、フリッカー光の点灯期間における光も、臨界融合頻度より周波数が高い光の成分であってもよい。また、変調深度を15%以下とする場合には、周波数がゼロの周波数成分が他の周波数成分より支配的になるといえるが、フリッカー光のうち連続光成分を除く光が、虫に応じた周波数成分を他の周波数成分より多く含んでいればよい。

【0079】
実施の形態4.
次に、本発明の実施の形態4について図面を参照しつつ説明する。なお、実施の形態3と同一又は同等の構成については、同等の符号を用いるとともに、その説明を省略又は簡略する。本実施の形態に係る低誘虫発光装置10は、発光部11が2種類の発光素子を有している点で、実施の形態3に係るものと異なっている。

【0080】
本実施の形態に係る発光部11は、図16に示されるように、フリッカー光を発する第1発光手段としての発光素子11aと、連続光を発する第2発光手段としての発光素子11bと、を有している。低誘虫発光装置10から出射するフリッカー光は、発光素子11aから出射するフリッカー成分と、発光素子11bから出射する連続光成分とを含んで構成されることとなる。発光素子11bは、発光素子11aとは異なる特性のLEDである。詳細には、発光素子11aは、緑色光を発するLEDであって、発光素子11bは、白色光を発するLEDである。駆動部13は、発光素子11aに断続的に電力を供給することで発光素子11aにフリッカー光を出力させて、発光素子11bに連続的に電力を供給することで発光素子11bに連続光を出力させる。

【0081】
図17には、発光素子11a,11bそれぞれが発する光の波長スペクトルが示されている。図17において、線L1は、発光素子11aによるフリッカー成分の分光スペクトルを表し、線L2は、発光素子11bによる連続光成分の分光スペクトルを表す。図17に示されるように、フリッカー成分と連続光成分とは、分光スペクトルが異なっている。

【0082】
また、図17において、領域A1は、フリッカー成分のスペクトル全体に相当し、領域A2は、連続光成分のスペクトル全体に相当し、領域A3は、フリッカー成分のスペクトルと連続光成分のスペクトルが重複する部分の領域に相当する。フリッカー成分のスペクトルは、領域A1の面積に対する領域A3の面積の比率が予め定められた第1基準値以下となるように設定され、連続光成分のスペクトルは、領域A2の面積に対する領域A3の面積の比率が予め定められた第2基準値以下となるように設定される。第1基準値及び第2基準値は、例えば40%である。すなわち、重複部分の面積が40%以下となる程度に、フリッカー成分と連続光成分とのスペクトルが異なっている。図17に示される例では、領域A1の面積に対する領域A3の面積の比率は、約33.5%であって、領域A2の面積に対する領域A3の面積の比率は、約33.0%である。

【0083】
また、分光スペクトルの広がりを示す指標値について、フリッカー成分の指標値P1は、連続光成分の指標値P2との比率が第3基準値以下となるように設定される。この第3基準値は、例えば1/3である。

【0084】
分光スペクトルの広がりを示す指標値は、分光スペクトルのピークのうち、ピーク波長が最短となる第1ピークのピーク波長をW1、第1ピークの光強度の値をIn1、ピーク波長が最長となる第2ピークのピーク波長をW2、第2ピークの光強度の値をIn2としたときに、W1より短い波長であって分光スペクトルの光強度がIn1/2に等しくなる第1波長から、W2より長い波長であって分光スペクトルの光強度がIn2/2に等しくなる第2波長までの幅として規定される。このピーク波長W1,W2、光強度In1,In2は、図17において、連続光成分に対応するものが示されている。なお、図17中のIn1a、In2aはそれぞれ、In1、In2の半値に等しい。

【0085】
この指標値を、図17中のフリッカー成分のように、単峰性のスペクトルに適用すると、ピークの光強度In0の半値In0aに光強度が等しくなる波長の幅ということができる。この幅は、いわゆる半値全幅に相当する。すなわち、上記の指標値は、半値全幅を、多峰性のスペクトルにも適用できるように一般化したものといえる。このため、上記の指標値は、図17のフリッカー成分に例示される単峰性のスペクトルにも当然適用することができ、適用した場合には指標値は半値全幅に等しい。なお、連続光成分のスペクトルが図17に例示されるように多峰性である場合を説明したが、連続光成分のスペクトルが単峰性である場合にも、指標値に基づくスペクトルを設計することができる。すなわち、上述のような指標値を用いることで、連続光成分とフリッカー成分とのそれぞれが単峰性及び多峰性のスペクトルのどちらであっても、上述の第3基準値に基づくスペクトルを設計することができる。また、各ピークの半値に対応する波長のうち2つの波長を組み合わせ、波長の差が最大になる組み合わせの波長の差として指標値を規定してもよい。

【0086】
以上、説明したように、本実施の形態に係る発光部11は、フリッカー光を発する発光素子11aと連続光を発する発光素子11bとを有している。これにより、減灯期間においては単に発光素子11aを消灯すればよいため、連続光を容易に生成することができる。

【0087】
また、発光素子11a,11bが発する光の分光スペクトルは、異なる。このため、低誘虫発光装置10が発する光を構成するフリッカー成分のスペクトルと連続光成分のスペクトルとは、異なるものとなる。これにより、低誘虫発光装置10は、虫の誘引率を低下させることができる。以下、本実施の形態に係る低誘虫発光装置10を用いたときの効果について説明する。

【0088】
図18A~18Fには、発明者等が単色のフリッカー光と白色の連続光とを組み合わせたときの誘引率を検証した結果が示されている。この検証は、図5の実験環境において、LEDパネル光源201の内部の発光素子の半数をフリッカー光の光源とし、他方を連続光の光源として行われた。ここで、LEDパネル光源201は、例えば、後述する図26に示す低誘虫発光装置40を30cm四方の平板状にしたものに相当する。図18Aは、フリッカー光を紫外光としたときの波長スペクトルを示し、図18Bは、図18Aに示される光を用いた場合においてフリッカー光の周波数を変化させたときの誘引率を示している。図18Cは、フリッカー光を青色光としたときの波長スペクトルを示し、図18Dは、図18Cに示される光を用いた場合においてフリッカー光の周波数及びデューティ比を変化させたときの誘引率を示している。図18Eは、フリッカー光を緑色光としたときの波長スペクトルを示し、図18Fは、図18Eに示される光を用いた場合においてフリッカー光の周波数及びデューティ比を変化させたときの誘引率を示している。

【0089】
なお、図18A,18C,18Eにおいて、実線は連続光のスペクトルを示し、破線はフリッカー光と連続光の双方を発光させたときのスペクトルを示す。破線と実線とで囲まれた部分がフリッカー光のスペクトルに相当し、破線の値から実線の値を減じて得る差がフリッカー光の強度に相当する。また、図18B,18D,18FでゼロHzは、フリッカー光が用いられず、スペクトルが異なる2つの連続光が組み合わされる条件を意味する。図18B,18D,18F中の「DR」は、デューティ比(Duty Ratio)を意味する。本実施の形態に係る低誘虫発光装置10が発する光のスペクトルは(図17参照)、図18Eに示されるものに対応する。

【0090】
図18B,18D,18Fからわかるように、フリッカー光の色に関わらず、フリッカー光が点滅すると、連続光のみを虫が視認する場合(ゼロHz)よりも誘引率が低下している。また、図18D,18Fからわかるように、デューティ比が小さくなるほど、誘引率が小さくなっている。また、図18B,18D,18Fを比較すると、フリッカー光を緑色光にすると、紫外光及び青色光にした場合よりも誘引率の低下が顕著である。

【0091】
さらに、発明者等は、緑色フリッカー光と白色連続光との混色光と、白色光と、を同時に提示してカメムシに選択させる選択実験を複数行った。第1の選択実験は、図7に示される実験環境において、一方の光源が図18Eに示される混色光を発するとともに、他方の光源が図19Aに示される白色連続光と白色フリッカー光とを含む光を発する条件で行われた。なお、図19Aにおいて実線は連続光のスペクトルを示し、破線はフリッカー光と連続光の双方を発光させたときのスペクトルを示す。また、図19Aに示される光は、実質的に、白色の変調深度が50%の光に等しい。図19Bには、この第1の選択実験の結果が示されている。図19Bからわかるように、白色連続光に組み合わせるフリッカー光として、白色フリッカー光を採用するよりも、緑色フリッカー光を採用する方が、虫の誘引率が低下している。

【0092】
第2の選択実験は、図7に示される実験環境において、一方の光源が図18Eに示される混色光を発するとともに、他方の光源が図19Cに示される白色連続光を発する条件で行われた。図19Dには、この第2の選択実験の結果が示されている。図19Dからわかるように、白色連続光のみを提示する光源よりも、緑色フリッカー光を追加して提示する光源の方が、虫の誘引率が低下している。

【0093】
第3の選択実験は、図7に示される実験環境において、一方の光源が図18Eに示される混色光を発するとともに、他方の光源が図19Eに示される白色フリッカー光を発する条件で行われた。図19Fには、この第3の選択実験の結果が示されている。図19Fからわかるように、白色連続光と緑色フリッカー光との混色光を提示した光源は、白色フリッカー光のみを提示した光源よりも、虫の誘引率が増加している。

【0094】
図18A~18F,19A~19Fに示された実験結果から、低誘虫発光装置10が放つ光に含まれるフリッカー成分と連続光成分のスペクトル形状が異なる場合にも、虫の誘引率をある程度低下させることがわかる。これにより、虫の誘引率を低下させつつ、ヒトが視認する光の色を用途に応じて容易に設定することができる。例えば、青色フリッカー光と白色連続光との混色光は、虫にはちらついて視認されるとともに、ヒトには青みがかった連続光として視認される。これによれば、低誘虫発光装置10が発する光について、特定の波長の光強度をゼロとすることなく、虫の誘引率を低下させることができるため、光の色を設計する自由度をある程度確保することができる。

【0095】
また、本実施の形態では、連続光とフリッカー光のスペクトルの面積に基づいて、ある程度異なるスペクトルが設定された。これにより、図19Bに示されるように、虫の誘引率をより低下させることが期待される。

【0096】
また、本実施の形態では、フリッカー成分と連続光成分それぞれのスペクトルの広がりを示す指標値に基づいて、ある程度異なるスペクトルが設定された。図19Bに示されるように、フリッカー成分が比較的狭い波長帯域に集中していれば、虫の誘引率をより低下させることが期待される。このため、フリッカー成分の指標値と連続光成分の指標値との比率を第3基準値以下とすることで、虫の誘引率をより低下させることが期待される。

【0097】
なお、緑色は、ヒトの視感度が高い色である。このため、フリッカー光の色として、緑色成分の小さい色を採用すれば、ヒトがちらつきを感じにくくなると考えられる。そこで、500nmから600nmの範囲に対応するフリッカー成分のスペクトルの値を、連続光成分のスペクトルより小さい値にすることで、ヒトがちらつきを感じることが少なくなると期待される。さらに、500nmから600nmの範囲に対応するフリッカー成分のスペクトルの値を、ゼロとしてもよい。すなわち、フリッカー成分のスペクトルは、500nmから600nmの範囲の波長の光を含まなくてもよい。この場合にも、連続光成分については500nmから600nmの範囲の波長の光を含んでいてもよいため、光の色を設計する自由度を確保することができる。

【0098】
また、フリッカー成分の波長スペクトルのピークに対応する波長は、節足動物の可視域である300~700nmの範囲内で任意に設定可能である。特に、ピークに対応する波長を紫外領域に設定すれば、ヒトにフリッカー成分が視認されることがなくなる。

【0099】
実施の形態5.
次に、本発明の実施の形態5について図面を参照しつつ説明する。なお、実施の形態1と同一又は同等の構成については、その説明を省略又は簡略する。本実施の形態に係る低誘虫発光装置30は、フリッカー光を発光する素子と連続光を発光する素子とが局在して配置される点で、実施の形態1に係る低誘虫発光装置10と異なっている。

【0100】
低誘虫発光装置30は、図20に示されるように、直管型の照明装置である。低誘虫発光装置30は、光を発する発光部31と、発光部31を支持する支持部32と、発光部31を駆動する駆動部33と、光を透過するカバー34と、を有している。

【0101】
発光部31は、フリッカー光を発する複数の発光素子31aと、連続光を発する複数の発光素子31bと、を有している。支持部32の表面は、発光素子31aが配置される第1領域B1と、発光素子31bが配置される第2領域B2と、を有している。第1領域B1及び第2領域B2の形状はいずれも、長方形であって、互いに重複しない。図20では、発光素子31aが発するフリッカー光が破線の矢印で模式的に示されていて、発光素子31bが発する連続光が実線の矢印で模式的に示されている。

【0102】
以上、説明したように、低誘虫発光装置30は、発光素子31aが第1領域B1に配置され、発光素子31bが第2領域B2に配置されて構成された。これにより、連続光とフリッカー光との照射方向に偏りが生じる。そのため、例えば虫が飛来する屋外側にフリッカー光を主として照射し、照明対象の施設側に連続光を主として照射するように低誘虫発光装置30を設置すれば、虫の誘引率を効果的に低下させることができる。

【0103】
なお、第1領域B1に配置される発光素子31aは、1つであってもよいし、第2領域B2に配置される発光素子31bは、1つであってもよい。また、図21に示されるように、電球型の低誘虫発光装置10の支持部12の第1領域B1上にフリッカー光を発する発光素子11aを配置し、第2領域B2上に連続光を発する発光素子11bを配置してもよい。このような低誘虫発光装置10を適当な方向に設置すれば、低誘虫発光装置30と同様に、虫の誘引率を効果的に低下させることができる。

【0104】
また、図22に示されるように、半球状の支持部12の第1領域B1にフリッカー光を発する発光素子11aを多数埋め込んで配置し、第2領域B2に連続光を発する発光素子11bを多数埋め込んで配置することにより、電球型の低誘虫発光装置10aを構成してもよい。このように構成された低誘虫発光装置10aから照射されるフリッカー光と連続光とは、その照射方向と被照射面とが分離される。すなわち、フリッカー光の照射方向と連続光の照射方向とが重複することはなく、フリッカー光による被照射面と連続光による被照射面とが重複することもない。これにより、虫の飛来方向にフリッカー光のみを照射して、誘引率を効果的に低下させることができる。

【0105】
また、図23に示されるように、シート状の低誘虫発光装置40の支持部42の第1領域B1上にフリッカー光を発する発光素子41aを配置し、第2領域B2上に連続光を発する発光素子41bを配置してもよい。このような低誘虫発光装置40を例えば支柱や木等の柱状体に巻き付ければ、虫の誘引率が低く、容易に脱着することができる照明装置となる。図23中の駆動部43は、発光素子41a,41bの光強度を変化させる駆動回路である。

【0106】
図20中の第1領域B1及び第2領域B2の形状は、長方形であったが、長方形以外の多角形、円形又は楕円形であってもよいし、例えば図21に示される半円形のように曲線と直線とを組み合わせて形成される形状であってもよい。これらの形状は、凸多角形で近似可能であることが望ましい。また、重複しない第1領域B1及び第2領域B2のうち、第1領域B1にフリッカー光を発光する素子を配置し、第2領域B2に連続光を発光する素子を配置するものとして説明したが、第1領域B1及び第2領域B2を、発光素子によって形成される領域ということもできる。例えば、フリッカー光を発光する素子を内部に含むような面積が最小の凸多角形で規定される第1領域B1と、連続光を発光する素子を内部に含むような面積が最小の凸多角形で規定される第2領域B2とが、互いに重複しないように素子を配置してもよい。

【0107】
実施の形態6.
次に、本発明の実施の形態6について図面を参照しつつ説明する。なお、実施の形態5と同一又は同等の構成については、同等の符号を用いるとともに、その説明を省略又は簡略する。本実施の形態に係る低誘虫発光装置30は、フリッカー光を発光する素子と連続光を発光する素子とが交互に配置される点で、実施の形態5に係るものと異なっている。

【0108】
低誘虫発光装置30は、図24に示されるように、支持部32上に交互に配置される発光素子31aと発光素子31bとを有している。発光素子31aはフリッカー光を発光し、発光素子31bは連続光を発光する。発光素子31aと発光素子31bとの間の距離D1は、予め定められた基準値以下に設定される。この基準値は、例えば5cmである。本実施の形態に係る発光素子31aはいずれも、最も近い発光素子32bとの間の距離が3cmとなるように配置される。

【0109】
以上、説明したように、本実施の形態に係る低誘虫発光装置30では、発光素子31a,31bが交互に配置された。これにより、フリッカー光と連続光とが素子の近傍で混光し、特定の変調深度の光を効率よく生成することができる。ひいては、低誘虫発光装置30の発光面全体に虫の誘引率が低くなる効果を付与することができる。

【0110】
また、発光素子31aと発光素子31bとの間の距離D1は、予め定められた基準値としての5cm以下に設定された。虫がフリッカー光源と連続光源とを分離して視認した場合には、フリッカー光源については誘引率が低いといえるが、連続光源については誘引率が高く、虫が連続光源に誘引されることが考えられる。虫を誘引する距離は3m程度より近い距離であることが知られており、3m離れた場所における虫の眼の分解能は5cm程度である。このため、距離D1を5cm以下とすることで、虫が発光素子31a,31bを弁別することなく併せて1つの光源として認識し、結果として低誘虫発光装置30の誘引率を確実に低下させることができる。

【0111】
なお、図25に示されるように、電球型の低誘虫発光装置10において、円板状の支持部12の円周に沿って発光素子11a,11bを交互に配置してもよい。また、図26に示されるように、シート状の低誘虫発光装置40において、支持部表面のX軸及びY軸方向に沿って、発光素子41a,41bを交互に配置してもよい。

【0112】
発光する素子が単に交互に配置されるものとして説明したが、2種の発光素子それぞれによって形成される領域が重複するように発光素子が配置されるということもできる。例えば、フリッカー光を発光する素子を内部に含むような面積が最小の凸多角形で規定される第1領域と、連続光を発光する素子を内部に含むような面積が最小の凸多角形で規定される第2領域とが、互いに重複するように素子を配置してもよい。この際に、重複する部分の面積は、例えば、第1領域の面積の90%以上であって、第2領域の面積の90%以上としてもよい。

【0113】
実施の形態7.
次に、本発明の実施の形態7について図面を参照しつつ説明する。なお、実施の形態1と同一又は同等の構成については、その説明を省略又は簡略する。

【0114】
本実施の形態に係る表示装置500は、図27に示されるように、夜間に作動するための低誘虫発光装置50を有する自動販売機である。低誘虫発光装置50は、発光部51と、発光部51の光強度を変化させる駆動部53と、を有している。発光部51は、フリッカー光を発する発光素子51aと、連続光を発する発光素子51bと、を有している。ここで、発光素子51bは、商品サンプルが載置される表示部505を照明したり利用者が押すためのボタンを照明したりするために用いられる。一方、発光素子51aは、発光素子51bを実質的に含む表示部505を囲むように、複数配置される。

【0115】
以上、説明したように、本実施の形態に係る表示装置500では、連続光を発する発光素子51bを囲むように表示部505の四方に発光素子51aが複数配置された。虫は、明るい面のエッジに誘引されることが知られている。このため、通常は、連続光が照射され発光面となる表示部505のエッジに虫が誘引される。しかしながら、表示装置500は、表示部505の周囲にフリッカー光源を配置することで、エッジへの誘引効果を低減している。これにより、表示装置500への虫の誘引率を低下させることができる。

【0116】
なお、発光素子51aは、表示部505を完全に囲むように配置されなくてもよい。例えば、図27中、発光素子51aは、表示部505を囲むように、表示部505の上方を除く左右及び下方に配置されてもよい。すなわち、発光素子51aは、表示部505を囲む位置の少なくとも一部に配置されていればよい。また、発光素子51aは、すべての表示部505を囲むように配置されたが、少なくとも一部の表示部505を囲むように配置されてもよい。例えば、広告を表示する表示部505は、商品サンプルを載置する表示部505に比して、虫の誘引率を低下させる優先度が低い場合がある。このため、広告を表示する表示部505を除く他の表示部505を囲むように発光素子51aが配置されてもよい。

【0117】
また、発光素子51aが、表示部505の少なくとも鉛直下方に配置されていれば、表示装置500は、虫の誘引率を低下させることができる。表示装置500のように連続光により発光する表示面がある場合には、特に鉛直下方のエッジに虫が誘引されることが知られている。フリッカー光を発する発光素子51aを、連続光が照射される表示部505の鉛直下方に配置することで、表示面の下方に誘引される虫の誘引率を低下させることができる。

【0118】
なお、発光素子51bと一体的に構成される表示部505を囲むように発光素子51aが配置される場合を説明したが、これには限定されない。例えば、連続光を発するユニットがデジタルサイネージ等の発光面である場合には、この発光面を囲むようにフリッカー光源を配置すれば、虫の誘引率を低下させることができる。同様に、少なくとも発光面の鉛直下方にフリッカー光源が配置されていれば、虫の誘引率を低下させることができると考えられる。

【0119】
また、フリッカー光源は、発光面に隣接して配置されることが望ましい。例えば、表示面とフリッカー光源との間の距離を5cm以下とすればよい。また、商品サンプルが載置される表示部505を照明したり利用者が押すためのボタンを照明したりするための発光手段として、連続光を発する発光素子51bを採用した例について説明したが、フリッカー光を発する発光素子51aを採用してもよい。

【0120】
実施の形態8.
次に、本発明の実施の形態8について図面を参照しつつ説明する。なお、実施の形態7と同一又は同等の構成については、同等の符号を用いるとともに、その説明を省略又は簡略する。

【0121】
本実施の形態に係る表示装置500は、図28に示されるように、表示部505から鉛直上方にある程度離れた位置に配置された発光素子51aを有している。フリッカー光を発するユニットを追加する場合や構造上の制約がある場合等で、連続光源の近傍にフリッカー光源を配置することが困難な場合がある。そのような場合には、フリッカー光源を連続光源の鉛直上方に配置することで、虫の誘引率を低下させることができる。以下、フリッカー光源を連続光源の鉛直上方に配置する効果について説明する。

【0122】
発明者等は、図29に示されるように、地上から90cm離れた飛翔位置206を設定し、この飛翔位置206から90cm離れた1つのLED光源にカメムシが誘引される誘引率を、飛翔位置206から見たLED光源の仰俯角を90°,45°,0°,-45°,-90°に変更して検証した。図30には、検証結果が示されている。図30からわかるように、仰俯角が45°及び90°の場合に誘引率が高く、カメムシは、飛翔位置206より鉛直上方に位置する光源に誘引される傾向がある。このため、カメムシと同様の飛翔性昆虫は、ある程度離れた光源が複数配置されている場合には、高い位置にある光源に強く誘引されると推察される。したがって、フリッカー光源を連続光源から例えば5cm以上離して配置する場合には、連続光源の鉛直上方に配置することで、誘引率を低下させることが期待される。

【0123】
また、表示装置500は、図27に示されるように、上下方向に複数の表示部505を有している。表示部505の周囲にフリッカー光源を配置することに代えて、最上部の表示部505を照明する光源の一部又は全部をフリッカー光源として、他の表示部505を照明する光源を連続光源としてもよい。これにより、虫の誘引率を低下させることが期待される。この場合、表示部505は、発光素子51a,51bの少なくとも一方を利用して商品サンプル等の表示対象物に照明光を当てることにより表示する表示手段として構成される。

【0124】
表示部505を照明する光源の一部又は全部をフリッカー光源とする場合には、虫にちらつきを視認させるために、照明光が照射されている表示部505の明るさの最大値が、1.0×1010photons/cm/sec以上であることが望ましい。また、表示部505を照明する光源の一部又は全部をフリッカー光源とする場合には、照射方向と被照射面との少なくとも一方をフリッカー光源と連続光源とで異なるものとすることで、虫にちらつきを効果的に視認させることができると考えられる。例えば、図31に示されるように、発光素子51aが発するフリッカー光で表示部505を広く照らし、発光素子が発する連続光で商品サンプルを中心に照らすことで、虫がちらつきを視認しやすくなる。

【0125】
また、表示装置500は、図31に示されるように、発光素子51a,51bを起点とする光が表示部505の視認者U1に至る経路上で遮光する遮光手段としての遮光部55を有していてもよい。遮光部55が遮光すれば、視認者U1にとって眩しい直接光は視認されることなく、表示部505に照射された間接光のみを視認することとなる。

【0126】
実施の形態9.
次に、本発明の実施の形態9について図面を参照しつつ説明する。なお、実施の形態5と同一又は同等の構成については、その説明を省略又は簡略する。本実施の形態に係る低誘虫発光装置60は、フリッカー光を反射する反射手段としての反射板を有している点で、低誘虫発光装置30(図20参照)と異なっている。

【0127】
低誘虫発光装置60は、図32に示されるように、支持部62の手前側の面上に配置された複数の発光素子61bと、支持部62の奥側の面上に配置された複数の発光素子61aと、駆動部63と、発光素子61aの発する光を手前側に反射する反射板66と、を有している。発光素子61aは、フリッカー光を発し、発光素子61bは、連続光を発する。発光素子61aと発光素子61bとは、発光部61を構成する。

【0128】
図33には、低誘虫発光装置60の断面図が示されている。図33に示されるように、点線の矢印で示されるフリッカー光は、反射板66で反射して手前側に拡散する。そして、フリッカー光は、発光素子61bが発した連続光と混光する。

【0129】
以上、説明したように、低誘虫発光装置60によれば、反射板66で反射したフリッカー光が外部に出射する。このため、虫は、発光素子61aが発したフリッカー光を、面積が広い反射板66を介して視認することとなる。これにより、フリッカー光が強調されて虫によって視認されるため、虫の誘引率を効率的に低下させることが期待される。また、虫が視認するフリッカー光には、反射板66で反射して発光素子61bの近傍を通過した光が含まれるため、フリッカー光と連続光とが弁別して認識されることがない。これにより、虫が連続光源に誤って誘引されることがない。

【0130】
本発明は、上記の各実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更は勿論可能である。

【0131】
例えば、図34に示される広告看板に対して低誘虫発光装置を適用して表示設備700を構成することができる。この表示設備700は、広告内容が表示される表示部705と、表示部705を照明する発光部71と、を有している。発光部71は、フリッカー光源である発光ユニット71aと、連続光源である発光ユニット71bと、を有している。なお、既存の夜間照明付き看板に、低誘虫発光装置に相当する発光ユニット71aを追加して、表示設備700を構成してもよい。

【0132】
また、図35に示されるように、フリッカー光の照射方向と連続光の照射方向とが異なる低誘虫発光装置10a(図22参照)の設置位置の近傍に、壁等の広い面がある場合には、この面にフリッカー光を照射して反射させることで、上記実施の形態9と同様な効果を得ることができる。

【0133】
また、上記実施の形態では、発光手段としてLEDを採用した例を説明したが、これには限定されず、蛍光灯及び白熱灯に代表される他の発光素子を発光手段として採用してもよい。

【0134】
また、低誘虫発光装置10等によって実行される低誘虫発光方法は、発光手段が発する光の強度を制御することでフリッカー光を生成する制御ステップ、を含む。この低誘虫発光方法を、既設の照明設備に適用してもよい。また、表示装置500等によって実行される表示方法は、発光手段が発する光の強度を制御することでフリッカー光を生成するステップと、フリッカー光を表示手段に照射するステップと、を含む。この表示方法を、既設の表示装置に適用してもよい。

【0135】
また、上記実施の形態で説明した構成は、任意に組み合わせてもよい。

【0136】
本発明は、広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能である。また、上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。つまり、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。

【0137】
この出願は、2017年8月29日に出願された日本国特許出願特願2017-164336号に基づく。本明細書中に日本国特許出願特願2017-164336号の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参照として取り込むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明は、利便性の高い光を得ることに適している。
【符号の説明】
【0139】
10,10a,30,40,50,60 低誘虫発光装置
11,31,51,61,71 発光部
11a,11b,31a,31b,41a,41b,51a,51b,61a,61b 発光素子
12,32,42,62 支持部
13,33,43,53,63 駆動部
14,34 カバー
55 遮光部
66 反射板
71 発光部
71a,71b 発光ユニット
101 照明装置
201,204 LEDパネル光源
202,205 黒色背景板
203,206 飛翔位置
500 表示装置
505,705 表示部
700 表示設備
A1~A3 領域
B1 第1領域
B2 第2領域
L1,L2 線
U1 視認者
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18A】
17
【図18B】
18
【図18C】
19
【図18D】
20
【図18E】
21
【図18F】
22
【図19A】
23
【図19B】
24
【図19C】
25
【図19D】
26
【図19E】
27
【図19F】
28
【図20】
29
【図21】
30
【図22】
31
【図23】
32
【図24】
33
【図25】
34
【図26】
35
【図27】
36
【図28】
37
【図29】
38
【図30】
39
【図31】
40
【図32】
41
【図33】
42
【図34】
43
【図35】
44