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明細書 :メベンダゾール及び/もしくはイトラコナゾール又はその塩を含有する、肺高血圧症の予防又は治療剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和2年11月26日(2020.11.26)
発明の名称または考案の名称 メベンダゾール及び/もしくはイトラコナゾール又はその塩を含有する、肺高血圧症の予防又は治療剤
国際特許分類 A61K  31/4184      (2006.01)
A61K  31/496       (2006.01)
A61P  11/00        (2006.01)
A61P   9/12        (2006.01)
FI A61K 31/4184
A61K 31/496
A61P 11/00
A61P 9/12
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 14
出願番号 特願2019-558191 (P2019-558191)
国際出願番号 PCT/JP2018/044306
国際公開番号 WO2019/111829
国際出願日 平成30年11月30日(2018.11.30)
国際公開日 令和元年6月13日(2019.6.13)
優先権出願番号 2017233034
優先日 平成29年12月5日(2017.12.5)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】下川 宏明
【氏名】佐藤 公雄
【氏名】大村 淳一
【氏名】菊池 順裕
【氏名】黒澤 亮
出願人 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C086
Fターム 4C086BC39
4C086BC60
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA42
4C086ZA59
要約 本発明が解決すべき課題は、これまで肺高血圧症の治療効果について知られていなかった化合物を有効成分とする新規の肺高血圧症予防又は治療剤を提供することである。本発明は、メベンダゾール及びイトラコナゾールからなる群より選択される少なくとも一種又はその塩を含有する、肺高血圧症の予防又は治療剤を提供する。
特許請求の範囲 【請求項1】
メベンダゾール及びイトラコナゾールからなる群より選択される少なくとも一種又はその塩を含有する、肺高血圧症の予防又は治療剤。
【請求項2】
メベンダゾール又はその塩を含有する、請求項1に記載の肺高血圧症の予防又は治療剤。
【請求項3】
経口投与剤である、請求項1又は2に記載の肺高血圧症の予防又は治療剤。
【請求項4】
被験者にメベンダゾール及びイトラコナゾールからなる群より選択される少なくとも一種又はその塩の有効量を投与することを含む、肺高血圧症を予防又は治療する方法。
【請求項5】
肺高血圧症の予防又は治療における使用のためのメベンダゾール及びイトラコナゾールからなる群より選択される少なくとも一種又はその塩。
【請求項6】
肺高血圧症の予防又は治療剤を製造するための、メベンダゾール及びイトラコナゾールからなる群より選択される少なくとも一種又はその塩の使用。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2017年12月05日に出願された、日本国特許出願第2017-233034号明細書(その開示全体が参照により本明細書中に援用される)に基づく優先権を主張する。本発明は、肺高血圧症の予防又は治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
肺高血圧症は、心臓から肺に血液を送る肺動脈の血圧が高くなり心臓及び肺の機能に障害をもたらす疾患であり、一般に「高血圧」と言われる症状とは全く異なる疾患である。また、肺高血圧症は致死性の高い重篤な疾患であるため、その治療法の開発が急がれている。
【0003】
従来、肺高血圧症の治療としては、カテーテルで血管を広げる治療、血栓を取り除く外科出術等の処置がされているが、より侵襲性の低い治療法が望まれている。また、投薬治療としては、血管拡張剤等が知られているが(非特許文献1等)、かかる治療法で救えない患者は依然として多く、さらなる肺高血圧症治療剤の開発が強く望まれている。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】J Clin Invest. 2012;122(12): 4306-4313
【非特許文献2】Satoh et al., Circ. Res. 2014, 115, 738-750.
【非特許文献3】Satoh et al., Cardiovasc. Res. 2009, 81, 226-234.
【非特許文献4】Satoh et al., Circulation, 2006, 113, 1442-1450.
【非特許文献5】Shimizu et al., Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 2013, 33, 2780-2791.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、これまで肺高血圧症の治療効果について知られていなかった化合物を有効成分とする新規の肺高血圧症予防又は治療剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる状況の下、本発明者らは数千種類の化合物について検討した結果、メベンダゾール及び/又はイトラコナゾールが、肺高血圧症の原因の一つと言われる、肺動脈平滑筋細胞の異常増殖を抑制すること、及び肺高血圧症の予防治療効果を有することを見出した。本発明は、かかる新規の知見に基づくものである。
【0007】
従って、本発明は、以下の項を提供する:
項1.メベンダゾール及びイトラコナゾールからなる群より選択される少なくとも一種又はその塩を含有する、肺高血圧症の予防又は治療剤。
【0008】
項2.メベンダゾール又はその塩を含有する、項1に記載の肺高血圧症の予防又は治療剤。
【0009】
項3.経口投与剤である、項1又は2に記載の肺高血圧症の予防又は治療剤。
【0010】
項4-1.被験者にメベンダゾール及びイトラコナゾールからなる群より選択される少なくとも一種又はその塩の有効量を投与することを含む、肺高血圧症を予防又は治療する方法。
【0011】
項4-2.メベンダゾール又はその塩を含有する、項4-1に記載の方法。
【0012】
項4-3.経口投与剤である、項4-1又は4-2に記載の方法。
【0013】
項5-1.肺高血圧症の予防又は治療における使用のためのメベンダゾール及びイトラコナゾールからなる群より選択される少なくとも一種又はその塩。
【0014】
項5-2.メベンダゾール又はその塩である、項5-1に記載の化合物又はその塩。
【0015】
項5-3.肺高血圧症の予防又は治療がメベンダゾール及びイトラコナゾールからなる群より選択される少なくとも一種又はその塩の経口投与により行われる、項5-1又は5-2に記載の化合物又はその塩。
【0016】
項6-1.肺高血圧症の予防又は治療剤を製造するための、メベンダゾール及びイトラコナゾールからなる群より選択される少なくとも一種又はその塩の使用。
【0017】
項6-2.メベンダゾール及びイトラコナゾールからなる群より選択される少なくとも一種又はその塩が、メベンダゾール又はその塩である、項6-1に記載の使用。
【0018】
項6-3.肺高血圧症の予防又は治療剤が経口投与剤である、項6-1又は6-2に記載の使用。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、これまで肺高血圧症の治療効果について知られていなかった化合物であるメベンダゾール若しくはその塩及び/又はイトラコナゾール若しくはその塩を有効成分として用いることによって、新規の肺高血圧症の予防又は治療剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1における右心室収縮期圧の測定結果を示す。
【図2】実施例2における右心室収縮期圧(RVSP)、右心室肥大(RVH)の測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
肺高血圧症の予防又は治療剤
本発明は、メベンダゾール及びイトラコナゾールからなる群より選択される少なくとも一種又はその塩を含有する、肺高血圧症の予防又は治療剤を提供する。本明細書においては、メベンダゾール及びイトラコナゾールからなる群より選択される少なくとも一種の化合物を総称して単に化合物Aと略することもある。従って、本発明は、化合物A又はその塩を含有する、肺高血圧症の予防又は治療剤を提供する。

【0022】
本発明の有効成分であるメベンダゾール[CAS No.31431-39-7、メチル (5-ベンゾイル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)カルバメート(methyl (5-benzoyl-1H-benzo[d]imidazol-2-yl)carbamate)]は、下記構造を有する公知の物質である:

【0023】
【化1】
JP2019111829A1_000003t.gif

【0024】
本発明の有効成分であるメベンダゾールの塩は、酸付加塩と塩基との塩を包含する。酸付加塩の具体例として、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酢酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩等の有機酸塩、及びグルタミン酸塩、アスパラギン酸塩等の酸性アミノ酸塩が挙げられる。塩基との塩の具体例としては、ナトリウム塩、カリウム塩又はカルシウム塩のようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩、ピリジン塩、トリエチルアミン塩のような有機塩基との塩、リジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸との塩が挙げられる。

【0025】
本発明の有効成分であるイトラコナゾール[CAS No.84625-61-6、4-(4-(4-(4-(((2R,4S)-2-((1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)メチル)-2-(2,4-ジクロロフェニル)-1,3-ジオキソラン-4-イル)メトキシ)フェニル)ピペラジン-1-イル)フェニル)-2-(sec-ブチル)-2,4-ジヒドロ-3H-1,2,4-トリアゾール-3-オン(4-(4-(4-(4-(((2R,4S)-2-((1H-1,2,4-triazol-1-yl)methyl)-2-(2,4-dichlorophenyl)-1,3-dioxolan-4-yl)methoxy)phenyl)piperazin-1-yl)phenyl)-2-(sec-butyl)-2,4-dihydro-3H-1,2,4-triazol-3-one)]は、下記構造を有する公知の物質である:

【0026】
【化2】
JP2019111829A1_000004t.gif

【0027】
本発明の有効成分であるイトラコナゾールの塩は、酸付加塩と塩基との塩を包含する。酸付加塩の具体例として、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酢酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩等の有機酸塩、及びグルタミン酸塩、アスパラギン酸塩等の酸性アミノ酸塩が挙げられる。塩基との塩の具体例としては、ナトリウム塩、カリウム塩又はカルシウム塩のようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩、ピリジン塩、トリエチルアミン塩のような有機塩基との塩、リジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸との塩が挙げられる。

【0028】
本発明において、化合物A又はその塩のうち、メベンダゾール又はその塩が好ましい。

【0029】
本発明の有効成分である化合物A及びその塩は、水和物又は溶媒和物の形で存在することもあるので、これらの水和物及び溶媒和物もまた本発明の有効成分である化合物に包含される。

【0030】
溶媒和物を形成する溶媒としては、エタノール、プロパノール等のアルコール、酢酸等の有機酸、酢酸エチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類、アセトン等のケトン類、DMSO等が例示される。これらの溶媒は、1種単独で、又は2種以上を混合溶媒として用いることができる。

【0031】
本発明においては、本発明の有効成分である化合物A又はその塩そのものを肺高血圧症の予防又は治療剤として用いても、薬学的に許容される各種担体(例えば、等張化剤、キレート剤、安定化剤、pH調節剤、防腐剤、抗酸化剤、溶解補助剤、粘稠化剤等)と組み合わせた医薬組成物として用いてもよい。

【0032】
等張化剤としては、例えば、グルコース、トレハロース、ラクトース、フルクトース、マンニトール、キシリトール、ソルビトール等の糖類、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等の無機塩類等が挙げられる。これらの等張化剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。

【0033】
キレート剤としては、例えば、エデト酸二ナトリウム、エデト酸カルシウム二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、エデト酸カルシウム等のエデト酸塩類、エチレンジアミン四酢酸塩、ニトリロ三酢酸又はその塩、ヘキサメタリン酸ソーダ、クエン酸等が挙げられる。これらのキレート剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。

【0034】
安定化剤としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム等が挙げられる。

【0035】
pH調節剤としては、例えば、塩酸、炭酸、酢酸、クエン酸等の酸が挙げられ、さらに水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩又は炭酸水素塩、酢酸ナトリウム等のアルカリ金属酢酸塩、クエン酸ナトリウム等のアルカリ金属クエン酸塩、トロメタモール等の塩基等が挙げられる。これらのpH調節剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。

【0036】
防腐剤としては、例えば、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等のパラオキシ安息香酸エステル、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム等の第4級アンモニウム塩、アルキルポリアミノエチルグリシン、クロロブタノール、ポリクォード、ポリヘキサメチレンビグアニド、クロルヘキシジン等が挙げられる。これらの防腐剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。

【0037】
抗酸化剤としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、乾燥亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、濃縮混合トコフェロール等が挙げられる。これらの抗酸化剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。

【0038】
溶解補助剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、グリセリン、D-ソルビトール、ブドウ糖、プロピレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール、D-マンニトール等が挙げられる。これらの溶解補助剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。

【0039】
粘稠化剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルメロースナトリウム、キサンタンガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。これらの粘稠化剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。

【0040】
また、上記医薬組成物は、化合物A又はその塩以外に、肺高血圧症の予防又は治療作用を有するとされている化合物をさらに含んでいてもよい。肺高血圧症の予防又は治療作用を有することが知られている化合物としては、例えば、プロスタサイクリン製剤(エポプロステノール等)、PDE5阻害薬(タダラフィル等)、エンドセリン受容体拮抗薬(ボセンタン等)が挙げられる。これらの化合物は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。

【0041】
医薬組成物の実施形態において、組成物中の化合物A又はその塩の含有量は特に限定されず、化合物Aの含有量換算で、例えば、90質量%以上、70質量%以上、50質量%以上、30質量%以上、10質量%以上、5質量%以上、1質量%以上等の条件から適宜設定できる。

【0042】
製剤形態は、特に限定されず、例えば錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤等の経口投与剤;注射剤(静脈注射、筋肉注射、局所注射等)、含嗽剤、点滴剤、外用剤(軟膏、クリーム、貼付薬、吸入薬)、座剤等の非経口投与剤等の各種製剤形態を挙げることができる。上記製剤形態のうち、好ましいものとしては、例えば、経口投与剤(錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤等)、外用剤(吸入薬、軟膏、クリーム、貼付薬等)等が挙げられる。

【0043】
本発明において、化合物A又はその塩の投与量は、投与経路、患者の年齢、体重、症状等によって異なり一概に規定できないが、化合物Aの投与量として、成人に対する1日投与量が通常、約5000mg以下、好ましくは約1000mg以下になる量とすればよい。また、本発明によれば、化合物Aは低用量でも効果を奏するため、化合物Aの投与量として、成人に対する1日投与量が、約100mg以下、約10mg以下、約8mg以下、約5mg以下等であってもよい。化合物A又はその塩の投与量の下限も特に限定されず、例えば、化合物Aの投与量として、成人に対する1日投与量が通常、0.1mg以上、好ましくは0.5mg以上の範囲で適宜設定できる。1日1回投与する場合は、1製剤中にこの量が含まれていればよく、1日3回投与する場合は、1製剤中にこの3分の1量が含まれていればよい。

【0044】
本発明の肺高血圧症の予防又は治療剤は、哺乳動物等の患者に投与される。哺乳動物としては、ヒト、サル、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ等が挙げられる。

【0045】
本発明の肺高血圧症の予防又は治療剤は、少なくとも肺動脈平滑筋細胞の異常増殖を抑制することにより肺高血圧症を予防、治療緩和する。従って、本発明は、化合物A又はその塩を含む肺動脈平滑筋細胞の増殖抑制剤も提供する。
尚、本発明の有効成分であるメベンダゾールは、抗寄生虫薬として日本を含め世界中で広く用いられているが、肺高血圧症に対する効果については全く知られていない。また、尚、本発明の有効成分であるイトラコナゾールは、抗真菌薬として用いられているが、肺高血圧症に対する効果については全く知られていない。従って、本発明における化合物A又はその塩による肺動脈平滑筋細胞の異常増殖抑制効果及び肺高血圧症の予防又は治療効果は従来技術から予想し得ないものである。尚、肺動脈平滑筋細胞の異常増殖抑制剤の有効成分、製剤形態、投与量等は、肺高血圧症の予防又は治療剤と同様である。

【0046】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例】
【0047】
実施例1
肺高血圧症の動物実験で汎用されるモデルである低酸素誘発性肺高血圧マウスに対して、イトラコナゾール又はメベンダゾールを静脈投与した。具体的には、まず、8週齢の雄の野生型マウス(C57/BL6マウス、各群、n=10)を、透明なアクリル板のボックスに入れた。低酸素発生装置(帝人、日本)を使用し、酸素濃度を10%に管理し、12時間ごとに暗転を入れ替える調整をした。低酸素刺激は3週間行っており、この間、イトラコナゾール(イトラコナゾールとしては、100mgのイトラコナゾールを6.7mlのジメチルスルホキシドに溶解し、当該イトラコナゾールのジメチルスルホキシド溶液を超純水(mQ or ultrapure water)と混合して100mlとした溶液を用いた)を、1日1回、20mg/kg/dayの用量で静脈注射した。Vihicle群として、食事としてイトラコナゾールに代えてジメチルスルホキシドと超純水との1:15の(V/V)混合液を静脈注射する以外、上記と同様にして低酸素刺激を行う試験を行った。また、イトラコナゾールに代えて、メベンダゾール(メベンダゾールとしては、100mgのメベンダゾールを6.7mlのジメチルスルホキシドに溶解し、当該メベンダゾールのジメチルスルホキシド溶液を超純水(mQ or ultrapure water)と混合して100mlとした溶液を用いた)を25mg/kg/dayの用量で静脈注射する以外、上記と同様にして、低酸素誘発性肺高血圧マウスに対するメベンダゾール投与試験を行った。
【実施例】
【0048】
評価方法: 肺高血圧症の評価
3週間の低酸素刺激後、イソフルランの麻酔下で、マウスの頸静脈から、1.2Frのカテーテル(SciSense Inc, Ontario, Canada)を挿入し右心室に留置することで、右心室収縮期圧を測定した。結果を図1に示す。なお、上記試験前におけるVehicle群、イトラコナゾール投与群及びメベンダゾール投与群の平均体重は、それぞれ16.3±0.2g、16.8±0.3g、16.8.±0.3gであった。また、上記試験後におけるVehicle群、イトラコナゾール投与群及びメベンダゾール投与群の平均体重は、それぞれ18.±0.2g、17.2±0.2g、17.5±0.2gであった。
【実施例】
【0049】
結果および考察
イトラコナゾール又はメベンダゾールを静脈注射混餌投与された群においては、有意な右心室収縮期圧及び右心室肥大の改善がみられた(図1)。
【実施例】
【0050】
実施例2
メベンダゾールの肺動脈性肺高血圧(PAH)に対する治療効果をさらに評価するために、別の肺高血圧動物モデルを用いた。具体的には以下の通り:
方法
動物試験
本試験においては、コントロールには、ビヒクル処理した群を用いた。Sugen/低酸素誘発高血圧モデルラットを肺高血圧(PH)の評価に用いた(非特許文献2)。肺高血圧の発症を評価するために、右心室収縮期圧(RVSP)、右心室肥大(RVH)を測定した(非特許文献2~4)。
右心カテーテルについては、1.4-F(ラット)圧測定用カテーテル(トランソニック・サイセンス社)を右内頸静脈より挿入し、右心室でRVSPを測定した(非特許文献5)。
Sugen/低酸素モデルにおいては、ラット(Sprague-Dawley,雄,6週齢)にVEGF受容体阻害剤SU5416(Sigma-Aldrich, St Louis, MO)を、イソフラン麻酔下で皮下注射し(20mg per kg body weight)、次いで、低酸素(10%O)に3週間曝露した。所定の期間、以下の処置をした後、ラットをイソフルラン(1.5%)で麻酔し、右心カテーテルを行った。全てのデータは、PowerLab data acquisition system (AD Instruments, Bella Vista, Australia)を用いて分析し、連続する50回拍分以上を平均した(非特許文献2~5)。
【実施例】
【0051】
右心室肥大の評価
心臓を摘出し、右心室自由壁(RV)、左心室(LV)及び心室中隔から切り離した。左心室と心室中隔(LV+Septum)の重量に対する右心室自由壁(RV)重量の比[RV/(LV+S)]を測定して、RVHの程度を評価した(非特許文献2)。
【実施例】
【0052】
Sugen/低酸素誘発PHラットに対するメベンダゾール処置
ラット(Sprague-Dawley、雄、6週齢)に、VEGF受容体阻害剤SU5416(Sigma-Aldrich)を、イソフラン麻酔下で皮下注射し(20mg per kg body weight)、次いで、低酸素(10%O)に3週間曝露した(hypoxia+SU5416)。day21に、ラットにランダムに、通常酸素下(21%O)で、2週間、メベンダゾール(25mg per kg body weight)又はビヒクル(メベンダゾール溶液に代えて、ジメチルスルホキシド投与した)を1日1回静脈注射した。ビヒクルを投与した群をビヒクルコントロールと示す。メベンダゾール群とビヒクルコントロール群とで体重に有意な差はなかった。day35に、ラットをイソフラン(1.0%)で麻酔し、RVSP及びRVHを測定することによりPHの発症を評価した。
【実施例】
【0053】
結果
14日間のメベンダゾールの投与は、体重に影響しなかった。しかし、メベンダゾール処置により、ビヒクルコントロールと比較してRVSP及びRVHは低下した(図2)。上記のように、メベンダゾールは、動物モデルのPHをin vivoで緩和した。パラメータの比較は、one-way又はtwo-way ANOVA及び多重比較のためのTukey’s HSD検定にて行った。
図面
【図1】
0
【図2】
1