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明細書 :癌の治療に使用するための組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和2年11月12日(2020.11.12)
発明の名称または考案の名称 癌の治療に使用するための組成物
国際特許分類 A61K  38/22        (2006.01)
A61P  35/04        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
FI A61K 38/22
A61P 35/04
A61P 35/00
A61P 43/00 111
国際予備審査の請求
全頁数 25
出願番号 特願2019-550334 (P2019-550334)
国際出願番号 PCT/JP2018/039951
国際公開番号 WO2019/083023
国際出願日 平成30年10月26日(2018.10.26)
国際公開日 令和元年5月2日(2019.5.2)
優先権出願番号 2017207508
優先日 平成29年10月26日(2017.10.26)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】松井 裕史
【氏名】黒川 宏美
出願人 【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100099759、【弁理士】、【氏名又は名称】青木 篤
【識別番号】100123582、【弁理士】、【氏名又は名称】三橋 真二
【識別番号】100117019、【弁理士】、【氏名又は名称】渡辺 陽一
【識別番号】100141977、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 勝
【識別番号】100150810、【弁理士】、【氏名又は名称】武居 良太郎
【識別番号】100166165、【弁理士】、【氏名又は名称】津田 英直
審査請求 未請求
テーマコード 4C084
Fターム 4C084AA02
4C084AA03
4C084DB56
4C084NA14
4C084ZB26
要約 本発明は、癌の治療に使用するための組成物であって、エリスロポエチンを含み、対象への前記組成物の投与後に抗癌剤が投与される、組成物に関する。
特許請求の範囲 【請求項1】
癌の治療に使用するための組成物であって、
エリスロポエチンを含み、
対象への前記組成物の投与後に抗癌剤が投与される、
組成物。
【請求項2】
対象に前記組成物を投与してから少なくとも1時間後に抗癌剤が投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記癌が、前記抗癌剤に対して耐性を有する癌である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記癌が、前記抗癌剤で治療されたことのない同一の組織由来の癌と比較して、抗癌剤排出トランスポーターの発現量が増大している癌である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物を投与することによって、対象中の癌細胞における抗癌剤排出トランスポーターの発現が抑制される、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記抗癌剤排出トランスポーターがABCトランスポーターである、請求項4又は5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ABCトランスポーターが、ABCB1、ABCG2及びABCC5から成る群から選択される少なくとも1つである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物を投与することによって、対象中の癌細胞からの抗癌剤の排出が抑制される、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物を投与しない対象と比較して、前記組成物を投与した対象において、抗癌剤の効果が増強される、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
癌の治療に使用するための組成物であって、
抗癌剤を含み、
対象へのエリスロポエチンの投与後に前記組成物が投与される、
組成物。
【請求項11】
対象にエリスロポエチンを投与してから少なくとも1時間後に前記組成物が投与される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記癌が、前記抗癌剤に対して耐性を有する癌である、請求項10又は11に記載の組成物。
【請求項13】
前記癌が、前記抗癌剤で治療されたことのない同一の組織由来の癌と比較して、抗癌剤排出トランスポーターの発現量が増大している癌である、請求項10~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
エリスロポエチンを投与することによって、対象中の癌細胞における抗癌剤排出トランスポーターの発現が抑制される、請求項10~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記抗癌剤排出トランスポーターがABCトランスポーターである、請求項13又は14に記載の組成物。
【請求項16】
前記ABCトランスポーターが、ABCB1、ABCG2及びABCC5から成る群から選択される少なくとも1つである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
エリスロポエチンを投与することによって、対象中の癌細胞からの抗癌剤の排出が抑制される、請求項10~16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
エリスロポエチンを投与しない対象と比較して、エリスロポエチンを投与した対象において、抗癌剤の効果が増強される、請求項10~17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
エリスロポエチンを含む、癌細胞における抗癌剤排出トランスポーターの発現を抑制するための組成物。
【請求項20】
エリスロポエチンを含む、癌細胞からの抗癌剤の排出を抑制するための組成物。
【請求項21】
エリスロポエチンを含む、抗癌剤の効果を増強するための組成物。
【請求項22】
癌の治療方法であって、
エリスロポエチンが投与された対象へ抗癌剤を投与する工程
を含む、治療方法。
【請求項23】
癌を有する対象へのエリスロポエチンの投与方法であって、
対象への抗癌剤の投与前にエリスロポエチンを投与する工程
を含む、投与方法。
【請求項24】
癌を有する対象への抗癌剤の投与方法であって、
エリスロポエチンが投与された対象へ抗癌剤を投与する工程
を含む、投与方法。
【請求項25】
癌細胞における抗癌剤排出トランスポーターの発現抑制方法であって、
対象へエリスロポエチンを投与する工程
を含む、方法。
【請求項26】
癌細胞からの抗癌剤の排出抑制方法であって、
抗癌剤の投与前に対象へエリスロポエチンを投与する工程
を含む、方法。
【請求項27】
抗癌剤の効果増強方法であって、
抗癌剤の投与前に対象へエリスロポエチンを投与する工程
を含む、方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の治療に使用するための組成物、癌細胞における抗癌剤排出トランスポーターの発現を抑制するための組成物、癌細胞からの抗癌剤の排出を抑制するための組成物、抗癌剤の効果を増強するための組成物、及び癌の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
<薬剤耐性について>
抗癌剤を用いた化学療法の問題点の1つとして、化学療法を継続することによって癌細胞が抗癌剤に対して耐性を獲得することがある。薬剤耐性となった癌細胞において、抗癌剤の蓄積が減少すること、そして抗癌剤を能動的に細胞外に排出するトランスポーター(例えばABCトランスポーター)の発現が上昇していることが知られている。当該トランスポーターの阻害剤や、当該トランスポーターの発現抑制剤を用いて薬剤耐性を克服し、抗癌剤の効果を回復させる試みがなされている(特許文献1)。
【0003】
<エリスロポエチンについて>
エリスロポエチンは、赤芽球の分化及び増殖に関わるサイトカインである。ある種の癌細胞は細胞表面にエリスロポエチン受容体を発現しており、エリスロポエチンの投与によって癌細胞の増殖が加速することが報告されている(非特許文献1)。また、エリスロポエチン受容体をコードする遺伝子の発現を阻害する物質を用いることで、抗癌剤の治療効果を増強できることが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】国際公開第2009/122639号
【特許文献2】特開2012-162500号公報
【0005】

【非特許文献1】Joachim F, The Oncologist;13(suppl 3):16-20, 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、抗癌剤に対して耐性となった癌に対しても当該抗癌剤を有効に作用させることができ、かつ抗癌剤の効果を増強することができる手段の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、エリスロポエチンを投与することによって癌細胞に存在する抗癌剤排出トランスポーターの発現を抑制することができること、それにより癌細胞からの抗癌剤の排出を抑制することができ、抗癌剤の効果を増強できることを見出し、本発明に至った。
【0008】
本発明は、以下の<1>~<33>を包含する。
<1>
癌の治療に使用するための組成物であって、
エリスロポエチンを含み、
対象への前記組成物の投与後に抗癌剤が投与される、
組成物。
<2>
対象に前記組成物を投与してから少なくとも1時間後に抗癌剤が投与される、<1>に記載の組成物。
<3>
前記癌が、前記抗癌剤に対して耐性を有する癌である、<1>又は<2>に記載の組成物。
<4>
前記癌が、前記抗癌剤で治療されたことのない同一の組織由来の癌と比較して、抗癌剤排出トランスポーターの発現量が増大している癌である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の組成物。
<5>
前記組成物を投与することによって、対象中の癌細胞における抗癌剤排出トランスポーターの発現が抑制される、<1>~<4>のいずれか1つに記載の組成物。
<6>
前記抗癌剤排出トランスポーターがABCトランスポーターである、<4>又は<5>に記載の組成物。
<7>
前記ABCトランスポーターが、ABCB1、ABCG2及びABCC5から成る群から選択される少なくとも1つである、<6>に記載の組成物。
<8>
前記組成物を投与することによって、対象中の癌細胞からの抗癌剤の排出が抑制される、<1>~<7>のいずれか1つに記載の組成物。
<9>
前記組成物を投与しない対象と比較して、前記組成物を投与した対象において、抗癌剤の効果が増強される、<1>~<8>のいずれか1つに記載の組成物。
<10>
癌の治療に使用するための組成物であって、
抗癌剤を含み、
対象へのエリスロポエチンの投与後に前記組成物が投与される、
組成物。
<11>
対象にエリスロポエチンを投与してから少なくとも1時間後に前記組成物が投与される、<10>に記載の組成物。
<12>
前記癌が、前記抗癌剤に対して耐性を有する癌である、<10>又は<11>に記載の組成物。
<13>
前記癌が、前記抗癌剤で治療されたことのない同一の組織由来の癌と比較して、抗癌剤排出トランスポーターの発現量が増大している癌である、<10>~<12>のいずれか1項に記載の組成物。
<14>
エリスロポエチンを投与することによって、対象中の癌細胞における抗癌剤排出トランスポーターの発現が抑制される、<10>~<13>のいずれか1つに記載の組成物。
<15>
前記抗癌剤排出トランスポーターがABCトランスポーターである、<13>又は<14>に記載の組成物。
<16>
前記ABCトランスポーターが、ABCB1、ABCG2及びABCC5から成る群から選択される少なくとも1つである、<15>に記載の組成物。
<17>
エリスロポエチンを投与することによって、対象中の癌細胞からの抗癌剤の排出が抑制される、<10>~<16>のいずれか1つに記載の組成物。
<18>
エリスロポエチンを投与しない対象と比較して、エリスロポエチンを投与した対象において、抗癌剤の効果が増強される、<10>~<17>のいずれか1つに記載の組成物。
<19>
エリスロポエチンを含む、癌細胞における抗癌剤排出トランスポーターの発現を抑制するための組成物。
<20>
エリスロポエチンを含む、癌細胞からの抗癌剤の排出を抑制するための組成物。
<21>
エリスロポエチンを含む、抗癌剤の効果を増強するための組成物。
<22>
癌の治療方法であって、
エリスロポエチンが投与された対象へ抗癌剤を投与する工程
を含む、治療方法。
<23>
癌を有する対象へのエリスロポエチンの投与方法であって、
対象への抗癌剤の投与前にエリスロポエチンを投与する工程
を含む、投与方法。
<24>
癌を有する対象への抗癌剤の投与方法であって、
エリスロポエチンが投与された対象へ抗癌剤を投与する工程
を含む、投与方法。
<25>
癌細胞における抗癌剤排出トランスポーターの発現抑制方法であって、
対象へエリスロポエチンを投与する工程
を含む、方法。
<26>
癌細胞からの抗癌剤の排出抑制方法であって、
抗癌剤の投与前に対象へエリスロポエチンを投与する工程
を含む、方法。
<27>
抗癌剤の効果増強方法であって、
抗癌剤の投与前に対象へエリスロポエチンを投与する工程
を含む、方法。
<28>
癌の治療に使用するための、エリスロポエチンと抗癌剤との組み合わせ剤であって、
対象にエリスロポエチンを投与後に抗癌剤が投与される、
組み合わせ剤。
<29>
癌の治療における使用のためのエリスロポエチンであって、
対象にエリスロポエチンを投与後に抗癌剤が投与される、エリスロポエチン。
<30>
癌の治療における使用のための抗癌剤であって、
対象にエリスロポエチンを投与後に抗癌剤が投与される、抗癌剤。
<31>
癌の治療における使用のためのエリスロポエチンであって、
対象にエリスロポエチンを投与後に抗癌剤が投与される、エリスロポエチン。
<32>
癌の治療に使用するための組成物の製造における、エリスロポエチンの使用であって、
対象への前記組成物の投与後に抗癌剤が投与される、
使用。
<33>
癌の治療に使用するための組成物の製造における、抗癌剤の使用であって、
対象へのエリスロポエチンの投与後に前記組成物が投与される、
使用。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、抗癌剤に対して耐性となった癌に対しても当該抗癌剤を有効に作用させることができる。また、抗癌剤の効果を増強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、ドキソルビシン(DOX)による細胞傷害効果を示す。左がRGK36を用いた結果であり、右がRGK45を用いた結果である。細胞はEPO不含または含有培地で24時間培養した後、各種濃度のDOXで24時間培養した。EPOを添加した場合、RGK36では0.5および1μMで、RGK45は0.5μMのDOXにおいて細胞生存率が有意に減少した。n=4,*:p<0.05,**:p<0.01。
【図2】図2は、RGK36におけるAGCG2の発現をウェスタンブロッティングで評価した結果を示す。EPOの濃度依存的にABCG2の発現が減少した。
【図3】図3は、図2のウェスタンブロッティングにおけるバンドをβ-アクチンで規格化したグラフを示す。EPOの濃度依存的にABCG2の発現が減少した。
【図4】図4は、RGK45を用いた場合における、パクリタキセル(PTX)による細胞傷害効果を示す。細胞はEPO不含または含有培地で24時間培養した後、各種濃度のPTXで24時間培養した。EPOを添加した場合、RGK45は100および1000nMのPTXにおいて細胞生存率が有意に減少した。n=4,*:p<0.05,**:p<0.01。
【図5】図5は、1時間のEPO曝露後、さらに培養されたRGK45中のAGCG2の発現の経時変化をウェスタンブロッティングで評価した結果を示す。曝露24時間後までABCG2の発現が徐々に低下した。
【図6】図6は、図5のウェスタンブロッティングにおけるバンドをβ-アクチンで規格化したグラフを示す。
【図7】図7は、各種抗癌剤による細胞傷害効果を示す。細胞はEPO不含又は含有培地で24時間培養した後、各種濃度の抗癌剤で24時間培養した。すべての抗癌剤においてEPOを添加した場合、細胞生存率が有意に減少した。n = 4, *: p<0.05, **: p<0.01。【図9】図9は、MKN45におけるABCG2及びABCB1の発現をウェスタンブロッティングで評価した結果を示す。EPO曝露により、ABCG2及びABCB1の発現が減少した。(-)はEPOを曝露していない場合の結果を示し、(+)は曝露した場合の結果を示す。
【図10】図10は、ドキソルビシン(DOX)による細胞傷害効果を示す。左が癌細胞であるRGK45を用いた結果であり、右が正常細胞であるRGM1を用いた結果である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<エリスロポエチン>
本発明で使用されるエリスロポエチン(EPO)は、どのようなEPOでも用いることができるが、好ましくは高度に精製されたEPOであり、より具体的には、哺乳動物EPO、特にヒトEPOと実質的に同じ生物学的活性を有するものである。

【0012】
本発明で使用されるEPOは、いかなる方法で製造されたものでもよく、例えば、ヒト由来の抽出物から精製して得られた天然のヒトEPOや、あるいは遺伝子工学的手法により大腸菌、イースト菌、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、C127細胞、COS細胞、ミエローマ細胞、BHK細胞、昆虫細胞、などに産生せ、種々の方法で抽出し、分離及び精製したヒトEPOを使用することができる。本発明において使用されるエリスロポエチンは、遺伝子工学的手法により製造されたEPOが好ましく、哺乳動物細胞(特にCHO細胞)を用いて製造されたEPOが好ましい。

【0013】
遺伝子組換え法により得られるEPOには、天然由来のEPOとアミノ酸配列が同じであるもの、あるいは当該アミノ酸配列中の1または複数のアミノ酸を欠失、置換、付加したものであって、天然由来のEPOと同様の生物学的活性を有するものであってもよい。アミノ酸の欠失、置換、付加などは当業者に公知の方法により行うことが可能である。例えば、当業者であれば、部位特異的変異誘発法を用いて、EPOのアミノ酸に適宜変異を導入することにより、EPOと機能的に同等なポリペプチドを調製することができる。また、アミノ酸の変異は自然界においても生じうる。一般的に、置換されるアミノ酸残基においては、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に置換されることが好ましい。例えばアミノ酸側鎖の性質としては、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(G、A、V、L、I、P)、水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(S、T、Y)、硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(C、M)、カルボン酸及びアミド含有側鎖を有するアミノ酸(D、N、E、Q)、塩基含有側鎖を有するアミノ離(R、K、H)、芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(H、F、Y、W)を挙げることができる(括弧内はいずれもアミノ酸の一文字標記を表す)。あるアミノ酸配列に対する1又は複数個のアミノ酸残基の欠失、付加及び/又は他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を有するポリペプチドがその生物学的活性を維持することはすでに知られている。

【0014】
本発明で使用されるEPOは、EPOと他のタンパク質との融合タンパク質であってもよい。融合ポリペプチドを作製するには、例えば、EPOをコードするDNAと他のタンパク質をコードするDNAをフレームが一致するように連結してこれを発現ベクターに導入し、宿主で発現させればよい。本発明のEPOとの融合に付される他のタンパク質は、特に限定されない。

【0015】
本発明で使用されるEPOは、化学修飾したEPOであってもよい。化学修飾したEPOの例として、例えば、ポリエチレングリコールなどにより化学修飾されたEPO、糖鎖のついていないEPOをポリエチレングリコールなどにより化学修飾したもの、その他、ビタミンB12など、無機あるいは有機化合物等の化合物を結合させたEPOなどを挙げることができる。

【0016】
さらに、本発明で使用されるEPOは、EPO誘導体であってもよい。ここでEPO誘導体とは、EPO分子中のアミノ酸を修飾したEPO又はEPO分子中の糖鎖を修飾したEPOのことをいう。EPO分子中の糖鎖の修飾としては、糖鎖の付加、置換、欠失などが含まれる。EPO分子中のアミノ酸の修飾としては、カルバミル化、ビオチン化、アミジン化、アセチル化、グアニジン化などを挙げることができる。修飾されるアミノ酸残基は特に限定されず、例えば、リジン、アルギニン、グルタミン酸、トリプトファンなどを挙げることができる。

【0017】
<抗癌剤排出トランスポーター>
本明細書において、抗癌剤排出トランスポーターとは、細胞内に存在する抗癌剤を細胞外へ能動的に排出することができる、膜タンパク質である。薬剤耐性となった癌細胞において、抗癌剤排出トランスポーターの発現が上昇していることが知られている。本発明は、エリスロポエチンを投与することによって癌細胞中の抗癌剤排出トランスポーターの発現量が低下するという発見に基づく。抗癌剤排出トランスポーターとしては、例えば、ABCトランスポーター(例えば、ABCB1、ABCB4、ABCC1、ABCC2、ABCC4、ABCC10、ABCC5、ABCG2)、及びアミノ酸トランスポーターを挙げることができる。好ましくは、ABCトランスポーターであり、より好ましくは、ABCB1、ABCG2及びABCC5から選択される少なくとも1つである。

【0018】
<抗癌剤>
本発明で使用される抗癌剤は、癌細胞中の抗癌剤排出トランスポーターによって排出されるものである限り、特に限定されない。例えば、以下のものを使用することができる。
アルキル化剤:カルボコン、ブスルファン、ニムスチン、シクロフォスファミドなど
代謝拮抗剤:メトトレキサート、メルカプトプリン、シタラビン、フルオロウラシル、テガフール、5-フルオロウラシル(5-FU)など
抗生物質:アクチノマイシンD、ブレオマイシン、アドリアマイシン、マイトマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシンなど
微小管阻害剤:ドセタキセル、パクリタキセル、ビノレルビン、ビンクリスチン、ビンブラスチンなど
トポイソメラーゼ阻害剤:イリノテカン、ポドフィロトキシン誘導体、エトポシドなど
血管新生阻害剤:ベバシズマブ、ソラフェニブ、スニチニブなど
金属錯体:シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、オキサリプラチンなど

【0019】
<エリスロポエチンを含む本発明の組成物>
一態様において、本発明は、癌の治療に使用するための組成物であって、エリスロポエチンを含み、対象への前記組成物の投与後に抗癌剤が投与される組成物である。また別の態様において、本発明は、エリスロポエチンを含む、癌細胞における抗癌剤排出トランスポーターの発現を抑制するための組成物である。また別の態様において、本発明は、エリスロポエチンを含む、癌細胞からの抗癌剤の排出を抑制するための組成物である。また別の態様において、本発明は、エリスロポエチンを含む、抗癌剤の効果を増強するための組成物である。これらを合わせて、以下で「エリスロポエチンを含む本発明の組成物」とも呼ぶ。

【0020】
エリスロポエチンを含む本発明の組成物の投与により、対象中の癌細胞における抗癌剤排出トランスポーターの発現が抑制される。当該トランスポーターの発現の抑制によって、対象中の癌細胞からの抗癌剤の排出が抑制され、癌細胞中に抗癌剤が蓄積される。その結果、エリスロポエチンを含む本発明の組成物を投与しない対象と比較して、前記組成物を投与した対象において、抗癌剤の効果が増強される。

【0021】
本明細書において、「抗癌剤の効果の増強」とは、抗癌剤の治療効果である癌の縮小率又は癌細胞の減少率が、抗癌剤単独で使用した場合と比較して少なくとも5%以上、好ましくは少なくとも10%以上であることを意味する。

【0022】
(投与対象)
エリスロポエチンを含む本発明の組成物の投与対象は、ヒト又は非ヒト哺乳動物である。非ヒト哺乳動物としては具体的には、マウス、ラット、イヌ、サル、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジなどが挙げられる。好ましくは、投与対象はヒトである。本発明の、癌細胞における抗癌剤排出トランスポーターの発現を抑制するための組成物、癌細胞からの抗癌剤の排出を抑制するための組成物及び抗癌剤の効果を増強するための組成物は、インビトロでヒト又は非ヒト哺乳動物の細胞に対して使用することもできる。したがって、これらの組成物の投与対象はヒト細胞又は非ヒト哺乳動物細胞であってもよい。

【0023】
(治療されるべき癌の種類)
本明細書において、「癌」とは、上皮性細胞からなる悪性腫瘍(癌腫)、非上皮性細胞からなる悪性腫瘍(肉腫)、及び造血器腫瘍を意味する。一般に、造血器腫瘍以外のほとんどの癌は腫瘍塊を形成するので固形腫瘍とも呼ばれる。エリスロポエチンを含む本発明の組成物を用いて治療されるべき癌の種類は特に限定されず、癌腫として、脳腫瘍、皮膚癌、頸頭部癌、食道癌、肺癌、胃癌、十二指腸癌、乳癌、前立腺癌、子宮頸癌、子宮体癌、膵臓癌、肝臓癌、大腸癌、結腸癌、膀胱癌、および卵巣癌などが例示される。また、肉腫としては、骨肉腫、軟骨肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、および血管肉腫などが例示される。さらに、造血器腫瘍として、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫を含む悪性リンパ腫;急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病及び慢性リンパ性白血病を含む白血病;ならびに多発性骨髄腫が例示される。

【0024】
また、エリスロポエチンを含む本発明の組成物を用いて治療されるべき癌は、当該組成物の投与後に投与される抗癌剤に対して耐性を有さない癌であってもよいし、耐性を有する癌であってもよい。好ましくは、当該抗癌剤に対して耐性を有する癌である。本明細書において、ある抗癌剤に対する「耐性」は、自然耐性(すなわち、癌が当該抗癌剤に対して最初から応答しないこと)及び獲得耐性(すなわち、癌が以前に応答していた当該抗癌剤に対して応答しなくなること)を含む。また、ある抗癌剤に対する薬剤耐性癌が、当該抗癌剤と構造的及び/又は機能的に関連する、これまで曝露されたことのない別の抗癌剤に対して耐性を示す現象(多剤耐性)を含む。ある抗癌剤に対して耐性であるか否かは、例えば当該抗癌剤に対する癌細胞の生存率(例えばIC50)に基づいて決定することができる。抗癌剤に対して良好な応答を示す対象に対して本発明の組成物を使用することで、当該抗癌剤に対して不応となるまでの時期を延長することができる。また、抗癌剤に対して不応となった対象に対して本発明の組成物を使用することで、当該抗癌剤に対する応答性を回復し、予後を改善することができる。

【0025】
また、ある抗癌剤に対して癌細胞が耐性を獲得したことの指標として、癌細胞中に存在する抗癌剤排出トランスポーターの発現量の増大が挙げられる。好ましくは、エリスロポエチンを含む本発明の組成物を用いて治療されるべき癌は、当該組成物の投与後に投与される抗癌剤で治療されたことのない同一の組織由来の癌(対照癌)と比較して、抗癌剤排出トランスポーターの発現量が増大しており(好ましくは統計的に有意に増大しており)、例えば、抗癌剤排出トランスポーターの発現量が対照癌と比較して1.2倍以上、1.4倍以上、1.6倍以上、1.8倍以上、2倍以上、3倍以上、4倍以上又5倍以上増大しており、最大で10倍又は20倍増大している。抗癌剤排出トランスポーターの発現量の比較は、例えばウェスタンブロッティングによって行うことができる。

【0026】
(エリスロポエチンを含む本発明の組成物と抗癌剤との投与間隔)
エリスロポエチンを含む本発明の組成物と抗癌剤の投与順序は、特に限定されるものではなく、エリスロポエチンを含む本発明の組成物の投与後又は投与前に抗癌剤が投与されてもよいし、エリスロポエチンを含む本発明の組成物と抗癌剤とが同時に投与されてもよい。好ましくは、エリスロポエチンを含む本発明の組成物を対象に投与してから少なくとも1時間後に抗癌剤が投与され、より好ましくは、本発明の組成物を治療対象に投与してから1~72時間後、1~48時間後、1~36時間後、1~24時間後、1~12時間後、6~72時間後、6~48時間後、6~36時間後、6~24時間後、6~12時間後、12~72時間後、12~48時間後、12~36時間後、12~24時間後、18~72時間後、18~48時間後、18~36時間後、18~24時間後、24~72時間後、24~48時間後、24~36時間後、36~72時間後、又は36~48時間後に抗癌剤が投与される。このような投与間隔を採用することで、癌細胞中の抗癌剤排出トランスポーターの発現が十分に抑制され、その結果、癌細胞が抗癌剤に良好に応答するようになる。

【0027】
(投与経路及び投与量)
本発明のエリスロポエチンを含む本発明の組成物の投与経路は、経口及び非経口投与のいずれでもよい。好ましくは非経口投与である。非経口投与としては具体的には、注射投与、経鼻投与、経肺投与、経皮投与などが挙げられる。注射投与としては、例えば、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射などが挙げられる。例えば注射投与によって本発明の医薬組成物を全身または局部的に投与できる。また、患者の年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。投与量としては、例えば、一回の投与につき体重1kgあたり0.0001mg~1,000mgの範囲でエリスロポエチンの投与量が選択できる。あるいは、例えば、患者あたり0.001mg/body~100,000mg/bodyの範囲でエリスロポエチンの投与量が選択され得る。しかしながら、本発明の医薬組成物の投与量は、これらに制限されるものではない。

【0028】
(製剤化)
本発明の組成物は、常法に従って製剤化することができ(例えば、Remington's Pharmaceutical Science, latest edition, Mark Publishing Company, Easton, U.S.A)、医薬的に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよい。例えば界面活性剤、賦形剤、着色料、着香料、保存料、安定剤、緩衝剤、懸濁剤、等張化剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤などが挙げられる。更にこれらに制限されず、その他常用の担体が適宜使用できる。具体的には、軽質無水ケイ酸、乳糖、結晶セルロース、マンニトール、デンプン、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、白糖、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類などを担体として挙げることができる。

【0029】
<抗癌剤を含む本発明の組成物>
一態様において、本発明は、癌の治療に使用するための組成物であって、抗癌剤を含み、対象へのエリスロポエチンの投与後に抗癌剤が投与される組成物である。

【0030】
抗癌剤を含む本発明の組成物の投与前に対象に投与されるエリスロポエチンは、上記の「エリスロポエチンを含む本発明の組成物」の形態で使用されてもよい。したがって一実施形態において、本発明は、癌の治療に使用するための組成物であって、抗癌剤を含み、上記の「エリスロポエチンを含む本発明の組成物」の対象への投与後に抗癌剤が投与される、組成物である。

【0031】
抗癌剤を含む本発明の組成物の投与対象、治療されるべき癌の種類、投与経路及び製剤化については、「エリスロポエチンを含む本発明の組成物」について上記した投与対象、治療されるべき癌の種類、投与経路及び製剤化と同様である。

【0032】
(抗癌剤を含む本発明の組成物とエリスロポエチンとの投与間隔)
抗癌剤を含む本発明の組成物とエリスロポエチンの投与順序は、特に限定されるものではなく、エリスロポエチンの投与後又は投与前に抗癌剤を含む本発明の組成物が投与されてもよいし、抗癌剤を含む本発明の組成物とエリスロポエチンとが同時に投与されてもよい。好ましくは、エリスロポエチンを対象に投与してから少なくとも1時間後に抗癌剤を含む本発明の組成物が投与され、より好ましくは、エリスロポエチンを治療対象に投与してから1~72時間後、1~48時間後、1~36時間後、1~24時間後、1~12時間後、6~72時間後、6~48時間後、6~36時間後、6~24時間後、6~12時間後、12~72時間後、12~48時間後、12~36時間後、12~24時間後、18~72時間後、18~48時間後、18~36時間後、18~24時間後、24~72時間後、24~48時間後、24~36時間後、36~72時間後、又は36~48時間後に抗癌剤を含む本発明の組成物が投与される。

【0033】
(投与量)
本発明の組成物の投与量としては、例えば、一回の投与につき体重1kgあたり0.0001mg~1,000mgの範囲で抗癌剤の投与量が選択できる。あるいは、例えば、患者あたり0.001mg/body~100,000mg/bodyの範囲で抗癌剤の投与量が選択され得る。しかしながら、本発明の組成物の投与量は、これらに制限されるものではない。

【0034】
<治療方法及び投与方法>
一態様において、本発明は、癌の治療方法であって、エリスロポエチンが投与された対象へ抗癌剤を投与する工程を含む、治療方法である。また別の態様において、本発明は、癌を有する対象への抗癌剤の投与方法であって、エリスロポエチンが投与された対象へ抗癌剤を投与する工程を含む、投与方法である。また別の態様において、本発明は、癌を有する対象への抗癌剤の投与方法であって、エリスロポエチンが投与された対象へ抗癌剤を投与する工程を含む、投与方法である。

【0035】
本発明の治療方法及び投与方法で使用されるエリスロポエチン及び抗癌剤はそれぞれ、上記の「エリスロポエチンを含む本発明の組成物」及び「抗癌剤を含む本発明の組成物」であってもよい。

【0036】
本発明の治療方法及び投与方法における、投与対象、治療されるべき癌の種類、及び投与経路は、「エリスロポエチンを含む本発明の組成物」について上記した投与対象、治療されるべき癌の種類及び投与経路と同様である。投与量は、「エリスロポエチンを含む本発明の組成物」及び「抗癌剤を含む本発明の組成物」について上記した投与量と同様である。

【0037】
(エリスロポエチンと抗癌剤との投与間隔)
本発明の治療方法及び投与方法において、抗癌剤とエリスロポエチンの投与順序は、特に限定されるものではなく、抗癌剤の投与後又は投与前にエリスロポエチンが投与されてもよいし、抗癌剤とエリスロポエチンとが同時に投与されてもよい。好ましくは抗癌剤の投与前にエリスロポエチンが投与される。抗癌剤の投与前にエリスロポエチンが投与される場合、エリスロポエチンと抗癌剤との投与間隔は、好ましくは、少なくとも1時間であり、より好ましくは、1~72時間、1~48時間、1~36時間、1~24時間、1~12時間、6~72時間、6~48時間、6~36時間、6~24時間、6~12時間、12~72時間、12~48時間、12~36時間、12~24時間、18~72時間、18~48時間、18~36時間、18~24時間、24~72時間、24~48時間、24~36時間、36~72時間、又は36~48時間である。

【0038】
<抗癌剤排出トランスポーターの発現抑制方法>
一態様において、本発明は、癌細胞における抗癌剤排出トランスポーターの発現抑制方法であって、対象へエリスロポエチンを投与する工程を含む、方法である。当該方法で使用されるエリスロポエチンは、上記の「エリスロポエチンを含む本発明の組成物」であってもよい。また、当該方法における対象、治療されるべき癌の種類、並びに投与経路は、「エリスロポエチンを含む本発明の組成物」について上記した対象、治療されるべき癌の種類及び投与経路と同様である。エリスロポエチンの投与量は、「エリスロポエチンを含む本発明の組成物」について上記した投与量と同様である。なお、本発明の抗癌剤排出トランスポーターの発現抑制方法は、インビトロでヒト又は非ヒト哺乳動物の細胞に対して使用することもできる。したがって、投与対象はヒト又は非ヒト哺乳動物の細胞であってもよい。

【0039】
<抗癌剤の排出抑制方法>
一態様において、本発明は、癌細胞からの抗癌剤の排出抑制方法であって、抗癌剤の投与前に対象へエリスロポエチンを投与する工程を含む、方法である。当該方法で使用されるエリスロポエチン及び抗癌剤はそれぞれ、上記の「エリスロポエチンを含む本発明の組成物」及び「抗癌剤を含む本発明の組成物」であってもよい。また、当該方法における対象、治療されるべき癌の種類、並びに投与経路は、「エリスロポエチンを含む本発明の組成物」について上記した対象、治療されるべき癌の種類及び投与経路と同様である。エリスロポエチン及び抗癌剤の投与量は、「エリスロポエチンを含む本発明の組成物」及び「抗癌剤を含む本発明の組成物」について上記した投与量と同様である。当該方法におけるエリスロポエチンと抗癌剤との投与間隔は、「本発明の治療方法及び投与方法」について上記した投与間隔と同様である。なお、本発明の抗癌剤の排出抑制方法は、インビトロでヒト又は非ヒト哺乳動物の細胞に対して使用することもできる。したがって、投与対象はヒト又は非ヒト哺乳動物の細胞であってもよい。

【0040】
<抗癌剤の効果増強方法>
一態様において、本発明は、抗癌剤の効果増強方法であって、抗癌剤の投与前に対象へエリスロポエチンを投与する工程を含む、方法である。当該方法で使用されるエリスロポエチン及び抗癌剤はそれぞれ、上記の「エリスロポエチンを含む本発明の組成物」及び「抗癌剤を含む本発明の組成物」であってもよい。また、当該方法における対象、治療されるべき癌の種類、並びに投与経路は、「エリスロポエチンを含む本発明の組成物」について上記した対象、治療されるべき癌の種類及び投与経路と同様である。エリスロポエチン及び抗癌剤の投与量は、「エリスロポエチンを含む本発明の組成物」及び「抗癌剤を含む本発明の組成物」について上記した投与量と同様である。当該方法におけるエリスロポエチンと抗癌剤との投与間隔は、「本発明の治療方法及び投与方法」について上記した投与間隔と同様である。なお、本発明の抗癌剤の効果増強方法は、インビトロでヒト又は非ヒト哺乳動物の細胞に対して使用することもできる。したがって、投与対象はヒト又は非ヒト哺乳動物の細胞であってもよい。

【0041】
本明細書において言及される全ての文献はその全体が引用により本明細書に取り込まれる。

【0042】
以下に説明する本発明の実施例は例示のみを目的とし、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。本発明の趣旨を逸脱しないことを条件として、本発明の変更、例えば、本発明の構成要件の追加、削除及び置換を行うことができる。
【実施例】
【0043】
実施例1
エリスロポエチン(EPO)曝露後におけるドキソルビシン(DOX)の癌細胞傷害効果
(1)細胞培養
ラット正常胃粘膜細胞の癌様変異株であるRGK36及びRGK45を使用した。RGK36及びRGK45はいずれも、本発明者によって樹立された細胞株であり、国際公開第2007/018182号に開示されたRGK1細胞株からクローニングされたものである。RGK36及びRGK45を、10%FBS、ペニシリンとストレプトマイシン含有DMEM/F12(Sigma, D6421)を用い、37℃、5%CO2環境下で培養した。
(2)細胞増殖試験
RGK36とRGK45を、96 well plate (日本ジェネティクス、TrueLine)に103 cell/wellの濃度で播種し、一晩培養した。培養後、10 U/mLのEPO(R&D systems, 1306-RE-010)を添加し24時間培養した。24時間後、0, 0.25, 0.5および1 μMのDOX(Wako, 046-21523)含有培地で24時間培養した。培養後、PBSで細胞を2回洗浄し、Cell Counting Kit-8 (Dojindo, CK04)を用いて細胞増殖試験を行った。
【実施例】
【0044】
結果を図1に示す。RGK36とRGK45はどちらもDOXの濃度依存的に細胞生存率が低下した。またEPOを添加した場合、RGK36では0.5および1 μMで、RGK45は0.5 μMのDOXにおいて細胞生存率が有意に減少することが分かった。
【実施例】
【0045】
実施例2
ウェスタンブロッティングによるABCG2の発現量の評価
RGK36を60 mm dishで培養した。細胞を0, 5及び10 U/mLのEPO含有培地で24時間培養した。PBSで3回洗浄した後、1%プロテアーゼ阻害カクテル(Thermo Fisher Scientific, #78415)含有RIPA bufferで処理しタンパク質を回収した。タンパク質40 μLに対し、100 mM DTT(Wako, 040-29223)含有LDS sample buffer (Thermo Fisher Scientific, NP0007)を40 μL添加し、95℃で10分間処理した。サンプルをゲルにアプライした後、30 mAで95分間電気泳動した。泳動後、ろ紙(ATO, CB-09A)PVDFメンブレン(BioRad, 162-0177)、ゲル、ろ紙の順で重ね、90 mAで45分間転写した。転写後、5%スキムミルク(雪印メグミルク)を用い、シェイクしながら1時間ブロッキングした。ブロッキング後、0.1%ABCG2抗体(Sigma-aldrich, SAB4300689)含有Solution 1溶液(TOYOBO, NKB-201)にメンブレンを浸し、4℃で一晩静置した。その後TBSTで3回洗浄し、0.1%anti-rabbit IgG-HRP抗体(CST, 7074)含有Solution 2(TOYOBO, NKB-301)にメンブレンを浸し、シェイクした。1時間後、メンブレンをTBSTで3回洗浄した後ルミノイメージアナライザで撮影した。撮影後、stripping buffer (Thermo Fisher Scientific, #46430)で抗体を剥離し、blocking bufferで1時間ブロッキングした。ブロッキング後、0.1% β-actin抗体(CST, 4967)含有Solution 1溶液にメンブレンを浸し、4℃で一晩静置した。その後TBSTで3回洗浄し、0.1%anti-rabbit IgG-HRP抗体含有Solution 2にメンブレンを浸し、シェイクした。1時間後、メンブレンをTBSTで3回洗浄した後、ルミノイメージアナライザで撮影した。
【実施例】
【0046】
結果を図2及び3に示す。EPOの添加により濃度依存的にABCG2の発現が減少することが分かった。
【実施例】
【0047】
実施例3
エリスロポエチン(EPO)曝露後におけるパクリタキセル(PTX)の癌細胞傷害効果
(1)細胞培養
ラット正常胃粘膜細胞の癌様変異株であるRGK45を、10%FBS、ペニシリンとストレプトマイシン含有DMEM/F12(Sigma-aldrich, D6421)を用い、37℃、5%CO2環境下で培養した。
(2)細胞増殖試験
RGK45を96 well plate (日本ジェネティクス、TrueLine)に103 cell/wellの濃度で播種し、一晩培養した。培養後、10 U/mLのEPO(R&D systems, 1306-RE-010)を添加し24時間培養した。24時間後、0, 1, 10, 100および1000 nMのPTX(Wako, 169-18611)含有培地で24時間培養した。培養後、PBSで細胞を2回洗浄し、Cell Counting Kit-8 (Dojindo, CK04)を用いて細胞増殖試験を行った。
【実施例】
【0048】
結果を図4に示す。PTXの濃度依存的に細胞生存率が低下した。またEPOを添加した場合、RGK45は100および1000 nMのPTXにおいて細胞生存率が有意に減少することが分かった。
【実施例】
【0049】
実施例4
エリスロポエチン(EPO)曝露後におけるABCG2発現の経時変化
RGK45を100 ng/mLのEPO含有培地にて1時間培養した。その後、上清をアスピレーションで捨てた。得られた細胞に培地を加え、6時間、12時間、24時間、48時間培養した(培地を加えずにその後の処理を行ったものを「0時間」とする)。その後、上清をアスピレーションで捨て、PBSで3回洗浄した後、1%プロテアーゼ阻害カクテル(Thermo Fisher Scientific, #78415)含有RIPA bufferで処理し、タンパク質を回収した。タンパク質40 μLに対し、100 mM DTT(Wako, 040-29223)含有LDS sample buffer (Thermo Fisher Scientific, NP0007)を40 μL添加し、95℃で10分間処理した。サンプルをゲルにアプライした後、30 mAで95分間電気泳動した。泳動後、ろ紙(ATO, CB-09A)PVDFメンブレン(BioRad, 162-0177)、ゲル、ろ紙の順で重ね、90 mAで45分間転写した。転写後、5%スキムミルク(雪印メグミルク)を用い、シェイクしながら1時間ブロッキングした。ブロッキング後、0.1%ABCG2抗体(Sigma, SAB4300689)含有Solution 1溶液(TOYOBO, NKB-201)にメンブレンを浸し、4℃で一晩静置した。その後TBSTで3回洗浄し、0.1%anti-rabbit IgG-HRP抗体(CST, 7074)含有Solution 2溶液(TOYOBO, NKB-301)にメンブレンを浸し、シェイクした。1時間後、メンブレンをTBSTで3回洗浄した後、ルミノイメージアナライザで撮影した。撮影後、stripping buffer (Thermo Fisher Scientific, #46430)で抗体を剥離し、blocking bufferで1時間ブロッキングした。ブロッキング後、0.1% β-actin抗体(CST, 4967)含有Solution 1溶液にメンブレンを浸し、4℃で一晩静置した。その後TBSTで3回洗浄し、0.1%anti-rabbit IgG-HRP抗体含有Solution 2にメンブレンを浸し、シェイクした。1時間後、メンブレンをTBSTで3回洗浄した後、ルミノイメージアナライザで撮影した。
【実施例】
【0050】
結果を図5及び6に示す。EPOに曝露後、ABCG2の発現が徐々に低下した。
【実施例】
【0051】
実施例5
エリスロポエチン(EPO)曝露後における抗癌剤の癌細胞傷害効果
(1)細胞培養
ヒト由来胃癌細胞MKN45 (RIKEN BRC、寄託番号RCB1001)を、10%FBS、ペニシリン、及びストレプトマイシン含有RPMI1640(Wako)を用い、37℃、5%CO2環境下で培養した。ラット正常胃粘膜細胞の癌様変異株であるRGK45を、10%FBS、ペニシリン、及びストレプトマイシン含有DMEM/F12(Sigma, D6421)を用い、37℃、5%CO2環境下で培養した。
【実施例】
【0052】
(2)細胞増殖試験
MKN45を、96 well plate(TrueLine, TR5003)に2 x 104 cell/wellの濃度で播種し、一晩培養した。培養後、10 U/mLのEPO(フナコシ, 287-TC-500)を添加し、24時間培養した。24時間後、各種抗癌剤含有培地で24時間培養した。抗癌剤とその濃度を表1に示す。培養後、Cell Counting Kit-8 (Dojindo, CK04)を用いて細胞増殖試験を行った。
【表1】
JP2019083023A1_000003t.gif
【実施例】
【0053】
結果を図7に示す。MKN45はいずれの抗癌剤も濃度依存的に細胞生存率が低下した。またEPOを添加した場合、すべての抗癌剤において細胞生存率が有意に減少した。
【実施例】
【0054】
(3)ウェスタンブロッティング
MKN45またはRGK45を、60 mm dishに106 cellの濃度で播種し、一晩培養した。培養後、MKN45を10 U/mLのEPOを添加し、24時間培養した。RGK45は0, 0.01, 0.1, 1, 10 U/mLのEPO含有培地で24時間培養した。24時間後、細胞はPBSで三回洗浄し1% Protease Inhibitor Cocktail(Thermo, 78415)含有RIPA bufferで細胞溶解液を調整した。その後15000 rpmで15分間遠心処理し、上清をサンプルとした。サンプルは2倍希釈したNuPAGE LDS Sample Buffer(Thermo, NP0007)に2-mercaptoethanolを5%含有させたバッファーと1:1で混合し、95度で5分間ボイルした。その後サンプルは氷上で静置し、4-12% NuPAGE Bis-Tris Precast Gel(Thermo, NP0323BOX)を用いて100 Vで70分間電気泳動した。電気泳動後、PVDFメンブレン(BioRad, 1620177)を用いて1.2 mA/cm2で1時間転写した。転写後、TBSTで洗浄し、PVDF Blocking Reagent(TOYOBO, NYPBR01)で1時間ブロッキングした。ブロッキング後15分間TBSTで3回洗浄した。その後、Solution 1(TOYOBO, NKB-101)を用いて一次抗体を1000倍希釈し、4℃の冷蔵庫で一晩静置した。一次抗体処理後、15分TBSTで3回洗浄した。その後Solution 2(TOYOBO, NKB-101)を用いて二次抗体を3000倍希釈し室温で1時間シェイクした。二次抗体処理後、15分TBSTで3回洗浄しHRPを用いてイメージングした。一次抗体、二次抗体のリストを表2に示す。
【表2】
JP2019083023A1_000004t.gif
【実施例】
【0055】
結果を図8及び9に示す。RGK45において、ABCG2、ABCB1及びABCC5の発現がEPOの濃度依存的に低下した(図8)。RGK45において、EPO曝露によりABCB1から排泄される抗癌剤であるPTXの細胞傷害性が増強されるが、この効果はEPO曝露によるトランスポーターの発現低下に起因すると考えられる。
【実施例】
【0056】
MKN45についても、EPO曝露によりABCG2及びABCB1の発現が低下した(図9)。DOXの排泄に関するABCG2とPTXの排泄に関するABCB1の発現が、EPO曝露により低下することから、EPO曝露による抗癌剤の増強効果は排泄トランスポーターの発現低下に起因していると考えられる。
【実施例】
【0057】
実施例6
エリスロポエチン(EPO)曝露後におけるDOXの癌細胞特異的傷害効果
(1)細胞培養
10%FBS、ペニシリン及びストレプトマイシン含有DMEM/F12(Thermo、11330-032)を用いて、ラット正常胃粘膜細胞RGM1(RIKEN BRC、寄託番号RCB0876)を37℃、5%CO2環境下で培養した。また、10%FBS、ペニシリン及びストレプトマイシン含有DMEM/F12(Sigma-aldrich, D6421)を用いて、RGK45を37℃、5%CO2環境下で培養した。
(2)細胞増殖試験
RGM1及びRGK45を、96 well plate (日本ジェネティクス、TrueLine)に103 cell/wellの濃度で播種し、一晩培養した。培養後、10 U/mLのEPO(R&D systems, 1306-RE-010)を添加し、24時間培養した。24時間後、500nMのDOX(Wako, 169-18611)含有培地で24時間培養した。培養後、PBSで細胞を2回洗浄し、Cell Counting Kit-8 (Dojindo, CK04)を用いて細胞増殖試験を行った。
【実施例】
【0058】
結果を図10に示す。EPO曝露によるDOXの細胞傷害効果は、癌細胞(RGK45)において有意に増強された。しかし、当該細胞傷害効果は正常細胞(RGM1)では生じないことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明を利用することによって、抗癌剤に対して耐性となった癌に対しても抗癌剤を有効に作用させることができる。また、抗癌剤の効果を増強することができる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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