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明細書 :water-in-oilエマルション培養における蛍光を用いた細胞増殖検出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和2年11月12日(2020.11.12)
発明の名称または考案の名称 water-in-oilエマルション培養における蛍光を用いた細胞増殖検出方法
国際特許分類 C12Q   1/6806      (2018.01)
C12Q   1/02        (2006.01)
C12N  15/11        (2006.01)
C12N   1/20        (2006.01)
FI C12Q 1/6806 ZNAZ
C12Q 1/02
C12N 15/11 Z
C12N 1/20 A
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 25
出願番号 特願2019-548165 (P2019-548165)
公序良俗違反の表示 1.SPAN
2.TWEEN
国際出願番号 PCT/JP2018/037257
国際公開番号 WO2019/073902
国際出願日 平成30年10月4日(2018.10.4)
国際公開日 平成31年4月18日(2019.4.18)
優先権出願番号 2017197980
優先日 平成29年10月11日(2017.10.11)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】大田 悠里
【氏名】斉藤 加奈子
【氏名】▲高▼木 妙子
【氏名】常田 聡
【氏名】宮本 龍樹
【氏名】森田 雅宗
【氏名】松倉 智子
【氏名】野田 尚宏
出願人 【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
審査請求
テーマコード 4B063
4B065
Fターム 4B063QA18
4B063QQ06
4B063QQ42
4B063QR32
4B063QR39
4B063QR55
4B063QR75
4B063QS24
4B063QX02
4B065AA26X
4B065AC15
要約 微生物が増殖したドロップレットを非侵襲的に検出・分取を可能とする方法の提供を課題とする。
本発明は、ドロップレット内の微生物の増殖を検出する方法であって、(a)微生物を含むドロップレットを作製する工程と、(b)ドロップレット中で微生物を培養する工程と、(c)ドロップレット内の微生物の増殖を検出する工程であって、(c1)微生物より体外に分泌または放出された物質に作用して蛍光を生じる蛍光修飾核酸プローブを用いて、蛍光修飾核酸プローブが生じる蛍光を測定するか、または、(c2)微生物の自家蛍光を測定する工程とを含み、蛍光が検出された前記ドロップレットは、インタクトの微生物を含む、検出方法に関する。
特許請求の範囲 【請求項1】
W/Oエマルションにおけるドロップレット内の微生物の増殖を検出する方法であって、
(a)微生物を含むドロップレットを作製する工程と
(b)前記ドロップレット中で微生物を培養する工程と
(c)前記ドロップレット内の微生物の増殖を検出する工程であって、前記微生物より体外に分泌または放出された物質に作用して蛍光特性の変化を生じる蛍光修飾核酸プローブを用いて、前記蛍光修飾核酸プローブが生じる蛍光を測定する工程と
を含み、
蛍光特性の変化が検出された前記ドロップレットが、インタクトかつ増殖した微生物を含むドロップレットであることを示す、検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の検出方法であって、
前記(c)の検出工程における前記蛍光修飾核酸プローブが前記微生物より体外に分泌または放出されたRNaseまたはDNaseの作用により蛍光特性に変化を生じるものである、検出方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の検出方法であって、
前記(c)の検出工程がマイクロ流路上で行われる、検出方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の検出方法であって、
前記微生物が環境由来である、検出方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の検出方法であって、
前記微生物が人工的に作製されたものではない、検出方法。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載の検出方法であって、
前記微生物が遺伝子組換え微生物である、検出方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の検出方法であって、
前記(a)ドロップレットを作製する工程が、二種以上の微生物を含むドロップレットを作製する工程である、検出方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の検出方法であって、
前記(a)ドロップレットを作製する工程が、微生物を一細胞単位で含むドロップレットを作製する工程であって、
前記(c)の検出工程において蛍光特性の変化が検出された前記ドロップレットが、インタクトかつ増殖した微生物であって、単一の細胞由来の微生物を含むものである、検出方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の検出方法であって、
前記(c)の検出工程において前記蛍光修飾核酸プローブは、
(ア)前記(a)のドロップレットの作製工程において、ドロップレット中に封入されるか、または、
(イ)前記(c)の検出工程の前に、微生物を含むドロップレットと蛍光修飾核酸プローブを含むドロップレットとを合一させることにより、微生物を含むドロップレット中に封入される、検出方法。
【請求項10】
請求項9に記載の検出方法であって、
前記蛍光修飾核酸プローブがFRET型蛍光修飾核酸プローブである、検出方法。
【請求項11】
W/Oエマルションからインタクトかつ増殖した微生物を含むドロップレットを回収する方法であって、
(i)微生物を含むドロップレットを作製する工程と
(ii)前記ドロップレット中で微生物を培養する工程と
(iii)前記ドロップレット内の微生物の増殖を検出する工程であって、
前記微生物より分泌または放出された物質に作用して蛍光特性に変化を生じる蛍光修飾核酸プローブを用いて、前記蛍光修飾核酸プローブが生じる蛍光を測定するか、または、
微生物の自家蛍光を測定する工程と
(iv)蛍光特性の変化を検出したドロップレットを回収する工程と
を含む、回収方法。
【請求項12】
請求項11に記載の回収方法であって、
前記(iii)および(iv)の工程をさらに1回または複数回繰り返す、回収方法。
【請求項13】
請求項11または12に記載の回収方法であって、前記(iv)の回収工程の後に
(v)前記ドロップレットから微生物を回収することを含む、回収方法。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか一項に記載の検出方法、または、請求項11~13のいずれか一項に記載の回収方法に使用されるキットであって、
W/Oエマルション水相用の培養液と
W/Oエマルション油相用の油成分と
W/Oエマルションを安定化するための界面活性剤と
蛍光修飾核酸プローブと
を含む、キット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、water-in-oil(W/O)エマルションを用いた微生物の培養・検出・分取の方法に関する。特に、微生物が増殖したドロップレットを見出す手法として、微生物による自家蛍光を用いた手法およびシグナル検出用レポーター分子として蛍光修飾核酸を用いた方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境中には様々な微生物が生息しており、私たちはこれら微生物の活性や微生物が産生する物質を利用してきた。しかしながら、環境中の微生物の99%は未だ培養に成功しておらず、生物資源の多くは手付かずのままとなっている。これら未知微生物を培養することで、環境中での微生物の生理学的特性を明らかにするだけでなく、医学・産業の発展にも応用されることが期待される。
近年、微生物の分離・培養法の一つとして、W/Oエマルションを用いた手法が注目されつつある(非特許文献1および非特許文献2)。本手法では、油相中に水滴(微生物培養培地を使用)を分散させ、各水滴(ドロップレット)を一つの培養場として用いる。マイクロ流路を用いることにより、数分で数十万~数百万単位のドロップレットを作製することが可能となりハイスループット化が見込まれる。また、水相中に存在する微生物数とドロップレット数の調整により、一細胞が封入されたドロップレットを作ることができれば、シングルセルからの培養が可能となる(非特許文献3)。
本手法を用いて微生物を培養する場合、1つのドロップレットあたりの細胞数はポワソン分布に従う。1つのドロップレットに一細胞が入る確率を高くしていくにつれ、微生物が存在しないドロップレットが生じる確率も高くなる。この時、微生物の増殖が見られるドロップレットを選択的に分取することができれば各微生物の解析、スケールアップ等に活用できる。微生物が存在するドロップレットの検出には細胞内分子と反応する蛍光基質が使用されてきたが、これらは同時に細胞破砕が必要となるので、微生物を生きたまま分取することができない(非特許文献4、非特許文献5)。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】Kaminski T. S. et al., “Droplet microfluidics for microbiology: techniques, applications and challenges” Lab on a Chip, 2016; 16, 2168-2187
【非特許文献2】Jiang C. Y. et al., “High-Throughput Single-Cell Cultivation on Microfluidic Streak Plates” Applied and Environmental Microbiology, 2016; 82, 2210-2218)
【非特許文献3】Boedicker J. Q. et al., “Detecting bacteria and determining their susceptibility to antibiotics by stochastic confinement in nanoliter droplets using plug-based microfluidics” Lab on a Chip, 2008; 8, 1265-1272
【非特許文献4】Kang D. K. et al., “Rapid detection of single bacteria in unprocessed blood using Integrated Comprehensive Droplet Digital Detection” Nature Communications, 2014; 5, 5427
【非特許文献5】Lyu F. et al., “Quantitative detection of cells expressing BlaC using droplet-based microfluidics for use in the diagnosis of tuberculosis” Biomicrofluidics, 2015; 9, 044120
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、微生物が増殖したドロップレットを非侵襲的に検出・分取を可能とする方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ドロップレット内の微生物を非侵襲的に検出する手法として、微生物による自家蛍光を用いた手法およびシグナル検出用レポーター分子として蛍光修飾核酸を用いた手法について着想した。自家蛍光を用いた手法では、ラベルフリーの状態で微生物細胞によって代謝されたNADHやフラビンといった自家蛍光分子の検出を試みた。一方で蛍光修飾核酸は微生物細胞を侵襲せずに、ドロップレット内で微生物の分泌・放出したヌクレアーゼによって分解を受け、生じたシグナルの検出を試みた。上記手法について鋭意検討したところ、二つの手法ともに、微生物を含むドロップレット内の微生物の増殖を検出できることを見出した。さらに微生物の増殖を検出できたドロップレットをシグナルの違いにより回収できた。本発明は上記知見により完成されたものである。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
本発明は、一態様において、
〔1〕W/Oエマルションにおけるドロップレット内の微生物の増殖を検出する方法であって、
(a)微生物を含むドロップレットを作製する工程と
(b)前記ドロップレット中で微生物を培養する工程と
(c)前記ドロップレット内の微生物の増殖を検出する工程であって、前記微生物より体外に分泌または放出された物質に作用して蛍光特性の変化を生じる蛍光修飾核酸プローブを用いて、前記蛍光修飾核酸プローブが生じる蛍光を測定する工程と
を含み、
蛍光特性の変化が検出された前記ドロップレットが、インタクトかつ増殖した微生物を含むドロップレットであることを示す、検出方法に関する。
また、本発明の検出方法は、一実施の形態において、
〔2〕上記〔1〕に記載の検出方法であって、
前記(c)の検出工程における前記蛍光修飾核酸プローブが前記微生物より体外に分泌または放出されたRNaseまたはDNaseの作用により蛍光特性に変化を生じるものであることを特徴とする。
また、本発明の検出方法は、一実施の形態において、
〔3〕上記〔1〕または〔2〕に記載の検出方法であって、
前記(c)の検出工程がマイクロ流路上で行われることを特徴とする。
また、本発明の検出方法は、一実施の形態において、
〔4〕上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の検出方法であって、
前記微生物が環境由来であることを特徴とする。
また、本発明の検出方法は、一実施の形態において、
〔5〕上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の検出方法であって、
前記微生物が人工的に作製されたものではないことを特徴とする。
また、本発明の検出方法は、一実施の形態において、
〔6〕上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の検出方法であって、
前記微生物が遺伝子組換え微生物であることを特徴とする。
また、本発明の検出方法は、一実施の形態において、
〔7〕上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の検出方法であって、
前記(a)ドロップレットを作製する工程が、二種以上の微生物を含むドロップレットを作製する工程であることを特徴とする。
また、本発明の検出方法は、一実施の形態において、
〔8〕上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の検出方法であって、
前記(a)ドロップレットを作製する工程が、微生物を一細胞単位で含むドロップレットを作製する工程であって、
前記(c)の検出工程において蛍光特性の変化が検出された前記ドロップレットが、インタクトかつ増殖した微生物であって、単一の細胞由来の微生物を含むものであることを特徴とする。
また、本発明の検出方法は、一実施の形態において、
〔9〕上記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の検出方法であって、
前記(c)の検出工程において前記蛍光修飾核酸プローブは、
(ア)前記(a)のドロップレットの作製工程において、ドロップレット中に封入されるか、または、
(イ)前記(c)の検出工程の前に、微生物を含むドロップレットと蛍光修飾核酸プローブを含むドロップレットとを合一させることにより、微生物を含むドロップレット中に封入されることを特徴とする。
また、本発明の検出方法は、一実施の形態において、
〔10〕上記〔9〕に記載の検出方法であって、
前記蛍光修飾核酸プローブがFRET型蛍光修飾核酸プローブであることを特徴とする。
また、本発明は、別の態様において、
〔11〕 W/Oエマルションからインタクトかつ増殖した微生物を含むドロップレットを回収する方法であって、
(i)微生物を含むドロップレットを作製する工程と
(ii)前記ドロップレット中で微生物を培養する工程と
(iii)前ドロップレット内の微生物の増殖を検出する工程であって、
前記微生物より分泌または放出された物質に作用して蛍光特性に変化を生じる蛍光修飾核酸プローブを用いて、前記蛍光修飾核酸プローブが生じる蛍光を測定するか、または、
微生物の自家蛍光を測定する工程と
(iv)蛍光特性の変化を検出したドロップレットを回収する工程と
を含む、回収方法に関する。
また、本発明の回収方法は、一実施の形態において、
〔12〕上記〔11〕に記載の回収方法であって、
前記(iii)および(iv)の工程をさらに1回または複数回繰り返すことを特徴とする。
また、本発明の回収方法は、一実施の形態において、
〔13〕上記〔11〕または〔12〕に記載の回収方法であって、前記(iv)の回収工程の後に
(v)前記ドロップレットから微生物を回収することを含むことを特徴とする。
また、本発明は、別の態様において、
〔14〕上記〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の検出方法、または、上記〔11〕~〔13〕のいずれかに記載の回収方法に使用されるキットであって、
W/Oエマルション水相用の培養液と
W/Oエマルション油相用の油成分と
W/Oエマルションを安定化するための界面活性剤と
蛍光修飾核酸プローブと
を含む、キットに関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の検出方法によれば、ドロップレット内で増殖した微生物を非侵襲的に検出することが可能となる。また、検出したドロップレットに含まれる微生物は、他のドロップレットに含まれる微生物と区別して分取することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明に使用する蛍光修飾核酸の蛍光原理を示す模式図である。
【図2】図2は、大腸菌培養液による蛍光強度の変化を示すグラフである。図2左側のグラフは混合直後を示し、図2右側のグラフは37℃でインキュベーション4時間行った際の蛍光強度の値を示す。
【図3】図3は、ドロップレット内における蛍光修飾核酸の反応を示す。また、なお、図3(A)~(F)はそれぞれ、(A)LB+蛍光修飾核酸区、(B)LB+蛍光修飾核酸区、(C)LB+蛍光修飾核酸区、(D)LB+蛍光修飾核酸+RNaseA区、(E)LB+蛍光修飾核酸+RNaseA区、(F)LB+蛍光修飾核酸+RNaseA区を示す。図3(A),(D)は位相差観察画像、図3(B),(E)は暗視野観察画像、図3(C),(F)は蛍光観察画像をそれぞれ示し、図3(G)は(A)と(D)の混合位相差画像、図3(H)は(A)と(D)の混合暗視野画像、図3(I)は(A)と(D)の混合蛍光画像を示す。
【図4】図4は、蛍光修飾核酸を含む大腸菌培養W/Oエマルションの画像を示す。図4(A)~(F)はそれぞれ、(A)作製直後の位相差画像、(B)作製直後の暗視野画像、(C)作製直後の蛍光画像、(D)24h培養後の位相差画像、(E)24h培養後の暗視野画像、および、(F)24h培養後の蛍光画像を示す。
【図5】図5は、蛍光修飾核酸を含む大腸菌培養W/Oエマルションを24時間培養後、On-chip Sortを用いた測定により得られたドットプロットを示す。
【図6】図6は、蛍光修飾核酸を含む大腸菌培養W/Oエマルションを24時間培養してソーティングした後のドロップレットの画像((a)位相差、(b)暗視野、(c)蛍光視野)を示す
【図7】図7は、大腸菌培養W/Oエマルションの画像を示す。図4(A)~(F)はそれぞれ、(A)作製直後の位相差画像、(B)作製直後の暗視野画像、(C)作製直後の蛍光画像、(D)24h培養後の位相差画像、(E)24h培養後の暗視野画像、および、(F)24h培養後の蛍光画像を示す。
【図8】図8は、大腸菌培養W/Oエマルションを24時間培養後、On-chip Sortを用いた測定により得られたドットプロットを示す。
【図9】図9は蛍光修飾核酸を含むBacillus subtilis培養W/Oエマルションの画像を示す。図9(A)~(F)はそれぞれ、(A)作製直後の明視野画像、(B)作製直後の暗視野画像、(C)作製直後の蛍光画像、(D)48h培養後の明視野画像、(E)48h培養後の暗視野画像、および、(F)48h培養後の蛍光画像を示す。
【図10】図10は、蛍光修飾核酸を含むB.subtilis培養W/Oエマルションを48時間培養後、On-chip Sortを用いた測定により得られた蛍光ヒストグラムを示す。
【図11】図11は、蛍光修飾核酸を含むB.subtilis培養W/Oエマルションを48時間培養してソーティングした後のドロップレットの画像((a)明視野、(b)暗視野、(c)蛍光視野)を示す。
【図12】図12は蛍光修飾核酸を含むStreptomyces aureofaciens培養W/Oエマルションの画像を示す。図12(A)~(F)はそれぞれ、(A)作製直後の明視野画像、(B)作製直後の暗視野画像、(C)作製直後の蛍光画像、(D)48h培養後の明視野画像、(E)48h培養後の暗視野画像、および、(F)48h培養後の蛍光画像を示す。
【図13】図13は、蛍光修飾核酸を含むS.aureofaciens培養W/Oエマルションを48時間培養後、On-chip Sortを用いた測定により得られた蛍光ヒストグラムを示す。
【図14】図14は、蛍光修飾核酸を含むS.aureofaciens培養W/Oエマルションを48時間培養してソーティングした後のドロップレットの画像((a)明視野、(b)暗視野、(c)蛍光視野)を示す。
【図15】図15は蛍光修飾核酸を含むBradyrhizobium japonicum培養W/Oエマルションの画像を示す。図15(A)~(F)はそれぞれ、(A)作製直後の明視野画像、(B)作製直後の暗視野画像、(C)作製直後の蛍光画像、(D)6d培養後の明視野画像、(E)6d培養後の暗視野画像、および、(F)6d培養後の蛍光画像を示す。
【図16】図16は、蛍光修飾核酸を含むB.japonicum培養W/Oエマルションを6日間培養後、On-chip Sortを用いた測定により得られた蛍光ヒストグラムを示す。
【図17】図17は、蛍光修飾核酸を含むB.japonicum培養W/Oエマルションを6日間培養してソーティングした後のドロップレットの画像((a)明視野、(b)暗視野、(c)蛍光視野)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、一態様において、W/Oエマルションにおけるドロップレット内の微生物の増殖を検出する方法であって、
(a)微生物を含むドロップレットを作製する工程と
(b)前記ドロップレット中で微生物を培養する工程と
(c)前記ドロップレット内の微生物の増殖を検出する工程であって、
(c1)前記微生物より体外に分泌または放出された物質に作用して蛍光を生じる蛍光修飾核酸プローブを用いて、前記蛍光修飾核酸プローブが生じる蛍光を測定するか、または、
(c2)微生物の自家蛍光を測定する工程と
を含み、
蛍光特性の変化が検出された前記ドロップレットが、インタクトかつ増殖した微生物を含むドロップレットであることを示す、検出方法に関する。

【0009】
ここで、本明細書において、W/Oエマルションとは連続相である油相中に、分散相として微粒子状の水滴(ドロップレット)が存在している状態をいう。
また、本明細書において「ドロップレット」とは、エマルション中の区画化された水滴をいう。
W/Oエマルションを構成する水相は、油相と混和しない親水性の液体であればよい。このような水相に用いることのできる溶液としては、以下に限定されないが、例えば、LB、R2Aなどを挙げることができる。また、湖沼水や海水をそのまま水相として用いることもできる。
W/Oエマルションを構成する油相は、水相と混和しない疎水性の液体であればよい。このような油相は公知であり、以下に限定されないが、例えば、FC40、Novec7500、ミネラルオイルなど、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。
W/Oエマルションを安定化させるために、界面活性剤を水相あるいは油相、もしくはその両方に添加する必要がある。用いられる界面活性剤には、例えば、水相用の界面活性剤としてはSpan80、Tween20など、油相用の界面活性剤としてはPico-surf1、Krytoxなど、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。水相または油相に添加される界面活性剤の濃度は、用いる界面活性剤の種類や所望するドロップレットの大きさ等の条件により適宜調整することができる。
本発明に用いられるW/Oエマルションは、エマルション中に区画化されたドロップレット内で微生物が増殖でき、かつ、微生物の増殖を検出可能なものであれば制限されない。また、W/Oエマルション中に含まれるドロップレットの大きさも、微生物が増殖でき、かつ、微生物の増殖を検出可能なものである限り特に制限されない。
上記の水相および油相からなるW/Oエマルションの作製方法は公知であり、例えば、QX100(Bio-RAD)などの市販の装置を用いて作成することができる。

【0010】
本発明の方法を適用可能な微生物としては、ドロップレット内で増殖可能であり、かつ、分泌物を蛍光修飾核酸プローブで検出可能、または、自家蛍光を検出可能な微生物であれば特に制限されず、例えば、大腸菌、枯草菌、放線菌などを挙げることができる。微生物は、環境由来の微生物であってもよく、または遺伝子導入などが施された組換え微生物など、人工的に作製されたものであってもよい。

【0011】
一実施の形態においては、微生物は環境由来のものである。本発明の方法は、例えば、土壌等の環境中に含まれる微生物群を対象とすることができる。環境中に含まれる微生物群をドロップレットに封入させることで、各ドロップレットに含まれる微生物ごとの性質に応じた増殖を検出でき、異なる増殖能を示すドロップレットごとに単離や分取することができる。特に、一細胞ごとに微生物をドロップレット中に封入することで、異なる増殖能を示す微生物を含むドロップレットごとに単離が可能となる。

【0012】
また、別の実施の形態においては、微生物は人工的に作製されたものではない。すなわち、本発明の検出方法は、一実施の形態において、
W/Oエマルションにおけるドロップレット内の微生物の増殖を検出する方法であって、
(a)微生物を含むドロップレットを作製する工程と
(b)前記ドロップレット中で微生物を培養する工程と
(c)前記ドロップレット内の微生物の増殖を検出する工程であって、
(c1)前記微生物より体外に分泌または放出された物質に作用して蛍光を生じる蛍光修飾核酸プローブを用いて、前記蛍光修飾核酸プローブが生じる蛍光を測定するか、または、
(c2)微生物の自家蛍光を測定する工程と
を含み、
蛍光特性の変化が検出された前記ドロップレットが、インタクトかつ増殖した微生物を含むドロップレットであることを示す、検出方法(ただし、前記微生物が人工的に作製されたものである検出方法を除く)である。

【0013】
本発明の検出方法は、(a)微生物を含むドロップレットを作製する工程を含む。
上記工程(a)において、微生物を含むドロップレットが作製される。
このとき、ドロップレット内に封入される微生物は、一つの種に由来するものであってもよく、また、二種以上の微生物が封入されていてもよい。
すなわち、本発明の検出方法は、一実施の形態において、(a)ドロップレットを作製する工程を、二種以上の微生物を含むドロップレットを作製する工程とすることができる。一つのドロップレット内に二種以上の微生物を含むことにより、一つのドロップレット内に封入された微生物間の相互作用の影響について検証することが可能となる。

【0014】
また、ドロップレット内に封入される微生物の数は、一細胞単位で封入されてもよく、または、二細胞以上の複数の細胞単位で封入されても良い。
すなわち、本発明の検出方法は、一実施の形態において、(a)ドロップレットを作製する工程が、微生物を一細胞単位で含むドロップレットを作製する工程とすることができる。これにより、蛍光特性の変化が検出されたドロップレット内には、インタクトかつ増殖した微生物であって、単一の細胞由来の微生物が含まれることになる。特に、複数種の微生物を含む試料から特定の微生物種の単離を目的とする場合、ドロップレット内には一細胞単位で微生物を含むことが好ましい。なお、1つのドロップレット内に微生物が一細胞ずつ含まれるように、W/Oエマルションを作製する方法は公知である(例えば、非特許文献3)。ドロップレット内に微生物が一細胞単位で含まれる限り製造方法は制限されないが、例えば、ポワソン分布に従い、水相中に存在する微生物数とドロップレット数の調整をすることで、一細胞が封入されたドロップレットを作製することができる。このようなドロップレット内に含まれる微生物は、単一の細胞由来の微生物である。よって、複数の微生物種を含む微生物群を試料とした場合、異なる増殖能を示すドロップレットごとに選択的に分取することで、各微生物の解析、スケールアップに寄与することができる。
また、ドロップレット内に二種以上の微生物を封入する際にも、各種ごとに一細胞単位でドロップレット内に微生物を封入させることもできる。
また、上述のように、本発明の検出方法は、一実施の形態において、(a)ドロップレットを作製する工程が、微生物を二細胞以上で含むドロップレットを作製する工程とすることができる。各ドロップレット中に複数の細胞を封入することで、検出可能な微生物数までの増殖に必要な培養時間を抑えることができ好ましい。また、共生関係を持つ微生物同士が同一ドロップレットに封入された場合、微生物相互間作用等によって増殖が促進されるという効果も期待される。

【0015】
本発明の検出方法は、(b)上記工程(a)において作製されたドロップレット中で微生物を培養する工程を含む。
W/Oエマルション中のドロップレットを用いて微生物を培養する方法は公知であり、マイクロ流路上など当業者であれば適宜培養に必要な装置を選択して培養することができる。培養条件についても、ドロップレットに含まれる微生物が増殖できる条件であれば特に制限されず、当業者であれば、培養の目的や培養の対象となる微生物に応じて適宜好ましい培養条件を設定することができる。以下に限定されないが、例えば、温度条件は4~95℃とすることができ、培養時間は最大85日間行うことができる。

【0016】
本発明の検出方法は、(c)ドロップレット内の微生物の増殖を検出する工程を含む。また、工程(c)の検出工程は、(c1)微生物より体外に分泌または放出された物質に作用して蛍光を生じる蛍光修飾核酸プローブを用いて、蛍光修飾核酸プローブが生じる蛍光を測定するか、または、(c2)微生物の自家蛍光を測定することにより行われる。
ここで、本明細書における「微生物より体外に分泌または放出された物質」とは、核酸関連酵素などを意味し、具体的にはRNase、DNaseなどを挙げることができる。
また、「上記微生物より体外に分泌または放出された物質に作用して蛍光を生じる蛍光修飾核酸プローブ」とは蛍光修飾核酸であり、以下に制限されないが、例えば、FRET型蛍光修飾核酸プローブ、PET型蛍光修飾核酸プローブなどを挙げることができる。
FRET型蛍光修飾核酸プローブを蛍光修飾核酸プローブとして用いる際には、市販のものを用いることができ、例えば、下記表1に記載のものを使用することができる。
【表1】
JP2019073902A1_000003t.gif

【0017】
表1に記載のFRET型蛍光修飾核酸プローブは、5’末端および3’末端にそれぞれ蛍光基および消光基を有する。例えば、一実施の形態において、表1に記載のFRET型蛍光修飾核酸プローブは5’末端にAlexa488、3’末端にBHQ1の修飾を有する。その他、FRET型蛍光修飾核酸プローブに用いることのできる蛍光基、消光基、および、それらの組み合わせは公知のものを使用することができる。以下に限定されないが、蛍光基としてはFAM、TET、HEXなど、消光基としてはDabcyl、Eclipse、BHQ2などを挙げることができ、代表的な組み合わせの使用例としては、FAM/Dabcyl(蛍光基/消光基)などを挙げることができる。通常はFRETにより消光状態が維持されているが、微生物により体外に放出された酵素により核酸の切断が生じるとFRETが解消され、蛍光強度が上昇する(図1)(Kelemen B. R. et al., “Hypersensitive substrate for ribonucleases” Nucleic Acids Research, 1999; 27, 3696-3701、Sato S. and Takenaka S., “Highly Sensitive Nuclease Assays Based on Chemically Modified DNA or RNA” Sensors, 2014; 14, 12437-12450)。また、FRET型蛍光修飾核酸プローブの塩基配列部分は、FRETによる消光状態を維持することが可能な配列であって、検出対象酵素が認識して切断あるいは結合するような内部配列を含むようにして設計することができる。微生物が産生するRNaseまたはDNaseを標的とする際、当業者であればドロップレット内に封入する微生物に応じて標的とする具体的なRNaseまたはDNaseを選択し、当該RNaseまたはDNaseが認識して切断あるいは結合する内部配列を含むようにFRET型蛍光修飾核酸プローブを設計することができる。
なお、大腸菌、枯草菌、放線菌などの微生物はRNaseI、RNaseY、RNaseEなどのRNaseを複数種有していることが知られており、各微生物により保有するRNaseのパターンが異なる。またRNaseはその種類ごとに配列特異性が異なり、例えば、大腸菌が保有するRNaseIは配列特異性を有さず、バチルス属(Bacillus)が保有するRNaseYはssRNAのA/U部分を優先的に分解し、ブラディリゾビウム属(Bradyrhizobium)が保有するRNaseEはssRNAのA/U部分を優先的に分解する。このように微生物が体外に放出するRNaseを標的とする場合、ドロップレット内に封入する微生物ごとに標的とするRNaseを選択し、FRET型蛍光修飾核酸プローブがRNaseIの非存在下ではFRETによる消光状態を維持し、標的とし選択したRNase存在下では当該RNaseによって切断されることが可能な任意のリボヌクレオチド配列を含むように設計すればよい。FRET型蛍光修飾核酸プローブは、複数種のRNaseの認識配列を含んでいてもよいし、特定のRNaseの認識配列のみを含むように設計してもよい。当業者であれば、標的とするRNaseおよびその認識配列の選択とFRET型蛍光修飾核酸プローブの設計は公知の情報に基づいて適宜行うことができる。
本発明の好ましい一実施の形態において、蛍光修飾核酸プローブは微生物由来RNaseによるRNA切断が生じると蛍光強度が増大するものである。本発明で微生物が産生するRNaseを標的とする利点は5つあげられる。まず、RNaseはあらゆる生物に保存されており、検出できる微生物種を限定しない。2つ目として、RNAを切断する際に特殊な環境(温度、pH、塩濃度等)やバッファーを必要としないRNaseも存在するため、通常培養環境下で検出可能である。3つ目として、RNaseは非常に安定した酵素であり、一度反応系に含まれれば高感度に活性を検出することが可能である。4つ目として、蛍光修飾核酸プローブの切断反応は細胞外で生じるため、細胞非侵襲的な検出が可能となる。最後に5つ目として、本発明で使用する核酸プローブは水溶性であり、オイルに溶け出すことや近傍のドロップレットに移動することなく、封入されたドロップレット内に維持されるため長期間の検出が可能である。
蛍光修飾核酸プローブが生じる蛍光を測定する方法は、当業者であれば市販の装置を用いて適宜行うことができる。本発明の検出方法においては、微生物より体外に分泌または放出された物質に作用して蛍光を生じる蛍光修飾核酸プローブを用いて、蛍光修飾核酸プローブが生じる蛍光を測定することにより、ドロップレット内の微生物の増殖を検出することできる。

【0018】
(c)の検出工程において蛍光修飾核酸プローブを使用する場合、蛍光の測定前に、ドロップレット内に蛍光修飾核酸プローブを封入する。蛍光修飾核酸プローブの封入のタイミングは、ドロップレット内の微生物の増殖を検出できる限り制限されず、具体的には、下記(ア)または(イ)のタイミングで封入することができる:
(ア)(a)のドロップレットの作製工程において、蛍光修飾核酸プローブをドロップレット中に封入する、または、
(イ)(c)の検出工程の前に、微生物を含むドロップレットと蛍光修飾核酸プローブを含むドロップレットとを合一させることにより、蛍光修飾核酸プローブを、微生物を含むドロップレット中に封入する。
(ア)ドロップレットの作製工程において、蛍光修飾核酸プローブをドロップレット中に封入する場合には、ドロップレット作製直前に、水相として使用する溶液に蛍光修飾核酸プローブを混合するようにすればよい。
また、(イ)微生物を含むドロップレットと蛍光修飾核酸プローブを含むドロップレットとを合一させる手法は、例えば、W/Oエマルションディスタビライザー存在下でこれら2つのドロップレット同士を会合させるようにして行うことができる。

【0019】
また、本明細書において「微生物の自家蛍光」とは微生物および培地が特定の蛍光色素で標識されていない状態で励起光を照射した時に検出できる蛍光をいう。微生物の自家蛍光は公知であり、以下に制限されないが、例えば、NADH、フラビン、アミノ酸からの蛍光をいう。本発明の検出方法においては、微生物の自家蛍光を測定することにより、ドロップレット内の微生物の増殖を検出することできる。また、当業者であれば適宜対象とする微生物の自家蛍光を測定することができる。

【0020】
本発明の検出方法により蛍光が検出されたドロップレットは、非侵襲的な手法により微生物の増殖を検出するため、インタクトかつ増殖した状態の微生物を含むドロップレットを検出することができる。
ここで、本明細書において「インタクトの微生物」というとき、本微生物の細胞膜が維持されており、増殖が可能であり、生理活性を示す状態にある微生物をいう。すなわち、「インタクトの微生物」からは、細胞溶解液等の処理により細胞膜が溶解した状態の微生物は除かれる。また、本明細書において「増殖した微生物」とは、上記(c)の検出工程における検出限界を超えて増殖した微生物をいう。ドロップレット作製時に封入される微生物数は検出限界未満であり、培養工程によりドロップレット内の微生物が増殖することで検出限界を超える。

【0021】
また、(c)ドロップレット内の微生物の増殖を検出する工程は、一実施の形態において、マイクロ流路上で行うことができる。これにより市販のセルソーターなどと組み合わせることで、ハイスループットに蛍光の検出と検出結果に応じた分取が可能になる。

【0022】
また、本発明は、別の態様において、
W/Oエマルションからインタクトかつ増殖した微生物を含むドロップレットを回収する方法であって、
(i)微生物を含むドロップレットを作製する工程と
(ii)前記ドロップレット中で微生物を培養する工程と
(iii)前記ドロップレット内の微生物の増殖を検出する工程であって、
前記微生物より分泌または放出された物質に作用して蛍光を生じる蛍光修飾核酸プローブを用いて、前記蛍光修飾核酸プローブが生じる蛍光を測定するか、または、
微生物の自家蛍光を測定する工程と
(iv)蛍光を検出したドロップレットを回収する工程と
を含む、回収方法を提供する。
本発明の回収方法において、工程(i)~(iii)は、上記検出方法の工程(a)~(c)に準じて行うことができる。

【0023】
また、本発明の回収方法は、微生物の増殖を示す蛍光を検出した後、(iv)蛍光を検出したドロップレットを回収する工程を含む。
ドロップレット群より、蛍光が検出された、または、蛍光が検出されなかったドロップレットを分取または回収する手法は公知である。当業者であれば、ドロップレット群を培養および蛍光検出に供している器具(マイクロ流路や培養ディッシュなど)に応じて、適宜好ましい回収方法を選択することができる。以下に制限されないが、例えば、市販のチップ式セルソーターを利用して、蛍光強度が上昇したドロップレットをソーティングすることができる。

【0024】
また、本発明は、別の態様において、上記検出方法または上記回収方法に使用されるキットを提供する。
本発明のキットは、W/Oエマルション水相用の培養液と、W/Oエマルション油相用の油成分と、W/Oエマルション安定化のための界面活性剤と蛍光修飾核酸プローブとを含むことを特徴とする。本発明のキットには、上記の構成以外のものも含まれてよく、培養等に用いるマイクロ流路、培養皿などが含まれていても良い。

【0025】
以下に、具体的な実施例を示すが、本発明の核酸アプタマーは以下に開示するものに限定されない。また、本明細書中で引用する文献の内容は、本明細書に参照として組み込まれる。
【実施例】
【0026】
(試験例1:大腸菌培養液による蛍光修飾核酸への影響評価)
蛍光修飾核酸(DR-Ale-UACAU)(日本バイオサービス)1μMと、(i)大腸菌を含まないLB培養液、(ii)大腸菌を含むLB培養液(OD600=2.77)、または、(iii)大腸菌を含まないLB培養液にRNaseA 2.5ng/μLを添加したものをそれぞれ混合しトータル20μLとした。混合直後および37℃で4時間インキュベーション後の蛍光強度をLight Cycler480(Roche)を用いて測定した。(i)LBと蛍光修飾核酸(DR-Ale-UACAU)を混合した時には蛍光強度は低いまま維持されていた。一方、(ii)大腸菌培養液と蛍光修飾核酸(DR-Ale-UACAU)を混合した場合には時間が経つと蛍光強度の上昇が見られた。(iii)RNaseAを添加した時には高い蛍光強度が維持されていた(図2)。このことから大腸菌培養液によって蛍光修飾核酸の切断、続く蛍光強度の上昇が生じることが明らかとなった。
【実施例】
【0027】
(試験例2:ドロップレット内における蛍光修飾核酸の反応)
ドロップレット内において蛍光修飾核酸(R-Ale-UCUCG)(日本バイオサービス)の切断による蛍光強度の変化を調べた。(i)LB培養液に蛍光修飾核酸(R-Ale-UCUCG)1μMのみを添加した溶液、または、(ii)LB培養液に蛍光修飾核酸(R-Ale-UCUCG)1μMとRNaseA 5ng/μLをそれぞれ添加した溶液を水相として、DG oil(Bio-RAD)とFC-40(3M)を油相として、Pico-surf1(Dolomite, final 1%)を界面活性剤として使用してW/Oエマルションを作製した。W/Oエマルション作製装置QX100(Bio-RAD)を使用したところ、直径130μm程度の大きさのドロップレットが作製できた。それぞれのW/Oエマルションを顕微鏡によって蛍光観察をしたところ、蛍光修飾核酸のみの系において蛍光強度は上昇せず、RNaseAを添加した系において蛍光強度の上昇が見られ、これら2系のW/Oエマルションを蛍光の強さで区別することができた(図3)。
【実施例】
【0028】
(試験例3:蛍光修飾核酸を用いた微生物増殖の検出および分取)
蛍光修飾核酸の蛍光を測定することによりドロップレット内における微生物増殖の検出を試みた。W/Oエマルションの水相には蛍光修飾核酸(R-Ale-UCUCG)1μMを混入した大腸菌培養液(LB培養液)を用いた。また、油相にはDG oil(Bio-RAD)とFC-40(3M)を使用した。界面活性剤としてPico-surf1(Dolomite, final 1%)を使用した。大腸菌培養液は、ポワソン分布で90%以上のドロップレットに大腸菌が0細胞、残りのドロップレットに一細胞以上が含まれるように濃度調整を行った。W/Oエマルション作製装置QX100(Bio-RAD)を使用したところ、直径130μm程度の大きさのドロップレットが作製できた。作製したW/Oエマルションは1.5mLチューブに回収し、37℃で24時間静置培養した。W/Oエマルション作製直後および24時間培養後に顕微鏡観察を行なったところ、一部のドロップレットにて大腸菌の増殖および蛍光強度の上昇が確認できた(図4)。On-chip Sort(株式会社オンチップ・バイオテクノロジーズ)を用いた蛍光検出を行なったところ、一部蛍光強度の高いドロップレット集団が生じていた(図5)。蛍光強度の高いドロップレット集団を分取し、顕微鏡観察を行なった結果、大腸菌が増殖したドロップレットが濃縮された(図6)。
【実施例】
【0029】
(試験例4:自家蛍光を用いた微生物増殖の検出および分取)
ドロップレット内の微生物の自家蛍光を測定することで微生物の増殖を検出可能か検証した。W/Oエマルションの水相には、ポワソン分布で90%以上のドロップレットに大腸菌が0細胞、残りのドロップレットに一細胞以上が含まれるように濃度調整を行った大腸菌培養液を用いた。油相にはDG oil (Bio-RAD)とFC-40 (3M)を使用した。界面活性剤としてPico-surf1(Dolomite, final 1%)を使用した。W/Oエマルション作製装置QX100(Bio-RAD)を使用したところ、直径130μm程度の大きさのドロップレットが作製できた。作製したW/Oエマルションは1.5mLチューブに回収し、37℃で24時間静置培養した。W/Oエマルション作製直後および24時間培養後に顕微鏡観察を行なったところ、一部のドロップレットにて大腸菌の増殖および蛍光強度の上昇が確認できた(図7)。On-chip Sort(株式会社オンチップ・バイオテクノロジーズ)を用いた蛍光測定を行なったところ、一部蛍光強度の高いドロップレット集団が生じていた(図8)ことから蛍光強度の差による分取が可能であると示唆される。
【実施例】
【0030】
(試験例5:蛍光修飾核酸を用いた微生物増殖の検出および分取)
蛍光修飾核酸の蛍光を測定することによりドロップレット内における微生物増殖の検出を試みた。W/Oエマルションの水相には蛍光修飾核酸(R-Ale-UCUCG) 200nMを混入したBacillus subtilis培養液(LB培養液)を用いた。また、油相にはNovec7500を使用した。界面活性剤としてPico-surf1(Dolomite, final 1%)を使用した。B.subtilis培養液は、ポワソン分布で50%程度のドロップレットにB.subtilisが0細胞、残りのドロップレットに一細胞以上が含まれるように濃度調整を行った。W/Oエマルション作製装置QX100(Bio-RAD)を使用したところ、直径130μm程度の大きさのドロップレットが作製できた。作製したW/Oエマルションは1.5mLチューブに回収し、30℃で48時間静置培養した。W/Oエマルション作製直後および48時間培養後に顕微鏡観察を行ったところ、一部のドロップレットにてB.subtilisの増殖および蛍光強度の上昇が確認できた(図9)。48時間培養後にOn-chip Sortを用いた蛍光検出を行なったところ、一部蛍光強度の高いドロップレット集団が生じていた(図10)。蛍光強度の高いドロップレット集団を分取し、顕微鏡観察を行なった結果、B.subtilisが増殖したドロップレットが濃縮された(図11)。
【実施例】
【0031】
(試験例6:蛍光修飾核酸を用いた微生物増殖の検出および分取)
蛍光修飾核酸の蛍光を測定することによりドロップレット内における微生物増殖の検出を試みた。W/Oエマルションの水相には蛍光修飾核酸(R-Ale-UCUCG) 200nMを混入したStreptomyces aureofaciens培養液(LB培養液)を用いた。また、油相にはNovec7500を使用した。界面活性剤としてPico-surf1(Dolomite, final 1%)を使用した。S.aureofaciens培養液は、ポワソン分布で80%程度のドロップレットにS.aureofaciensが0細胞、残りのドロップレットに一細胞以上が含まれるように濃度調整を行った。W/Oエマルション作製装置QX100を使用したところ、直径130μm程度の大きさのドロップレットレットが作製できた。作製したW/Oエマルションは1.5mLチューブに回収し、28℃で48時間静置培養した。W/Oエマルション作製直後および48時間培養後に顕微鏡観察を行なったところ、一部のドロップレットにてS.aureofaciensの増殖および蛍光強度の上昇が確認できた(図12)。48時間培養後にOn-chip Sort(株式会社オンチップ・バイオテクノロジーズ)を用いた蛍光検出を行なったところ、一部蛍光強度の高いドロップレット集団が生じていた(図13)。蛍光強度の高いドロップレット集団を分取し、顕微鏡観察を行なった結果、S.aureofaciensが増殖したドロップレットが濃縮された(図14)。
【実施例】
【0032】
(試験例7:蛍光修飾核酸を用いた微生物増殖の検出および分取)
蛍光修飾核酸の蛍光を測定することによりドロップレット内における微生物増殖の検出を試みた。W/Oエマルションの水相には蛍光修飾核酸(R-Ale-UCUCG)200nMを混入したBradyrhizobium japonicum培養液(NBRC805培養液)を用いた。また、油相にはNovec7500を使用した。界面活性剤としてPico-surf1(Dolomite,final 1%)を使用した。B.japonicum培養液は、ポワソン分布で95%程度のドロップレットにB.japonicumが0細胞、残りのドロップレットに一細胞以上が含まれるように濃度調整を行った。W/Oエマルション作製装置QX100(Bio-RAD)を使用したところ、直径130μm程度の大きさのドロップレットが作製できた。作製したW/Oエマルションは1.5mLチューブに回収し、28℃で6日間静置培養した。W/Oエマルション作製直後および6日間培養後に顕微鏡観察を行なったところ、一部のドロップレットにてB.japonicumの増殖および蛍光強度の上昇が確認できた(図15)。On-chip Sortを用いた蛍光検出を行なったところ、一部蛍光強度の高いドロップレット集団が生じていた(図16)。蛍光強度の高いドロップレット集団を分取し、顕微鏡観察を行なった結果、B.japonicumが増殖したドロップレットが濃縮された(図17)。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本技術を環境サンプルに応用できれば、環境微生物を増殖速度ごとに分離培養することが可能になる。環境微生物中で同一の基質を使用し、増殖速度の異なる微生物群においては、増植速度の遅い微生物は増殖速度が速い微生物に淘汰される。本手法の一応用例としては、同一基質を使用する微生物間の競合を緩和させ、これまで淘汰されてきた微生物を分離培養するアプローチを提供する。また環境中には異種微生物間相互作用を利用した増殖制御を行う微生物も数多く存在する。同一ドロップレット内に複数種の微生物が封入され、微生物間相互作用が働くことによって、それぞれの微生物の増殖が促進されることが期待される。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
8
【図10】
9
【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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