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明細書 :薬剤管理装置、薬剤管理方法及び薬剤管理プログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-197810 (P2020-197810A)
公開日 令和2年12月10日(2020.12.10)
発明の名称または考案の名称 薬剤管理装置、薬剤管理方法及び薬剤管理プログラム
国際特許分類 G16H  20/10        (2018.01)
G06Q  50/26        (2012.01)
G06Q  10/08        (2012.01)
FI G16H 20/10
G06Q 50/26
G06Q 10/08
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2019-102420 (P2019-102420)
出願日 令和元年5月31日(2019.5.31)
発明者または考案者 【氏名】三池 徹
【氏名】阪本 雄一郎
出願人 【識別番号】504209655
【氏名又は名称】国立大学法人佐賀大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100099634、【弁理士】、【氏名又は名称】平井 安雄
審査請求 未請求
テーマコード 5L049
5L099
Fターム 5L049CC35
5L099AA25
要約 【課題】休薬期間の危険性を考慮した薬剤情報を利用して、災害時などに必要となる薬剤の備蓄量などを管理する薬剤管理装置等を提供する。
【解決手段】薬剤管理装置1は、薬剤の物流に関する物流情報11を取得する物流情報取得部21と、投薬が中断された場合に所定の日数以内で投薬が再開されることが望ましい休薬危険薬剤の情報を少なくとも含む薬剤情報記憶部24と、物流情報11から休薬危険薬剤に該当する薬剤の消費量を算出する消費量算出部22と、休薬危険薬剤の消費量の情報に基づいて、当該休薬危険薬剤の必要備蓄量を算出する休薬危険薬剤備蓄量算出部23とを備える。また、薬剤情報記憶部24は、休薬危険薬剤に代わって投薬した場合に休薬危険薬剤を投与した場合と共通の効果が得られるスイッチ薬剤に関する情報を記憶し、休薬危険薬剤の必要備蓄量に基づいて、スイッチ薬剤の必要備蓄量を算出するスイッチ薬剤備蓄量算出部26を備える。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
薬剤の物流に関する物流情報を取得する物流情報取得手段と、
投薬が中断された場合に所定の日数以内で投薬が再開されることが望ましい休薬危険薬剤の情報を少なくとも含む薬剤情報記憶手段と、
前記物流情報から前記休薬危険薬剤に該当する薬剤の消費量を算出する消費量算出手段とを備えることを特徴とする薬剤管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の薬剤管理装置において、
前記休薬危険薬剤の消費量の情報に基づいて、当該休薬危険薬剤の必要備蓄量を算出する休薬危険薬剤備蓄量算出手段を備える薬剤管理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の薬剤管理装置において、
前記薬剤情報記憶手段が、前記休薬危険薬剤に代わって投薬した場合に前記休薬危険薬剤を投与した場合と共通の効果が得られるスイッチ薬剤に関する情報を記憶し、
前記休薬危険薬剤の必要備蓄量に基づいて、前記スイッチ薬剤の必要備蓄量を算出するスイッチ薬剤備蓄量算出手段を備える薬剤管理装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の薬剤管理装置において、
所定の施設にストックされている前記休薬危険薬剤、及び患者が所有している休薬危険薬剤のストック情報を取得するストック薬剤取得手段と、
ストック薬剤取得手段が取得したストック情報に基づいて、所定の地域別のストック情報を算出する地域別ストック情報算出手段と、
地域別のストック情報及び被災者の情報に基づいて、当該地域ごとに前記休薬危険薬剤の過不足を演算する演算手段とを備える薬剤管理装置。
【請求項5】
コンピュータが、
薬剤の物流に関する物流情報を取得する物流情報取得ステップと、
投薬が中断された場合に所定の日数以内で投薬が再開されることが望ましい休薬危険薬剤の情報を少なくとも含む薬剤情報記憶手段の情報に基づいて、前記物流情報から前記休薬危険薬剤に該当する薬剤の消費量を算出する消費量算出ステップとを実行することを特徴とする薬剤管理方法。
【請求項6】
薬剤の物流に関する物流情報を取得する物流情報取得手段、
投薬が中断された場合に所定の日数以内で投薬が再開されることが望ましい休薬危険薬剤の情報を少なくとも含む薬剤情報記憶手段、
前記物流情報から前記休薬危険薬剤に該当する薬剤の消費量を算出する消費量算出手段としてコンピュータを機能させることを特徴とする薬剤管理プログラム。
【請求項7】
薬剤の物流に関する物流情報を取得する物流情報取得手段と、
一の薬剤を投薬した場合と共通の効果が得られるスイッチ薬剤に関する情報を少なくとも含む薬剤情報記憶手段と、
前記物流情報から前記一の薬剤の消費量を算出する消費量算出手段と、
前記一の薬剤の消費量の情報に基づいて、当該一の薬剤の必要備蓄量を前記スイッチ薬剤の流通量を考慮して算出する備蓄量算出手段とを備える薬剤管理装置。
【請求項8】
所定の施設にストックされている薬剤、及び患者が所有している薬剤のストック情報を取得するストック薬剤取得手段と、
ストック薬剤取得手段が取得したストック情報に基づいて、所定の地域別のストック情報を算出する地域別ストック情報算出手段と、
地域別のストック情報及び被災者の情報に基づいて、当該地域ごとに薬剤の過不足を演算する演算手段とを備えることを特徴とする薬剤管理装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、災害などの緊急時に備えて薬剤に関する情報を管理する薬剤管理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模な災害が頻発しており、災害が発生した場合の対策等が少しずつ進んできた。災害自体は避けられないものの、被害を最小限に抑えたり災害後の生活を安定させ、できるだけ早く元の状態に戻すための様々な対策が考えられている。一例として、医療に関する従来技術を以下に示す。
【0003】
災害などが発生した場合の医師の派遣や個人の健康情報を管理する技術として、例えば特許文献1、2に示す技術が開示されている。特許文献1に示す技術は、災害医療情報センターの集中管理装置は災害発生時に、医師が携帯している携帯端末に緊急信号を送信し、緊急信号を受信した携帯端末は、GPSを利用して自己の所在地を検出して、その位置情報を集中管理装置1に通知し、通知を受けた集中管理装置は、収集した被災情報、予め保有する地図情報や医師情報及び通知された医師の位置情報とに基づき、各病院に派遣する医師の割当を行い、医師に派遣指示を行うものである。また、所定地域に存在する病院が保有する医薬品等の情報を予め格納し、持参すべき医薬品等の情報を医師に通知することが開示されている。
【0004】
特許文献2に示す技術は、行政側に設置される防災システムサーバと、救急隊員が使用する個人健康情報照会端末とが通信網により接続されて構成され、個人健康情報照会端末は、救急隊員が自分のカードと救助した患者の持つ市民カードの内容を読み込ませることにより、市民カード内に記録されている、あるいは、防災システムサーバ内にデータベースとして格納されているその人の健康情報である病歴、治療歴、薬品に対するアレルギーの有無等の情報、必要によりカルテの情報を表示出力するものである。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開平11-94584号公報
【特許文献2】特開平10-224165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
過去の災害の経験から、特に医薬品に関していくつかの問題が指摘されている。第1に備蓄対象薬剤が不明確であるという問題がある。すなわち、例えば急性期医療に求められる薬剤については備蓄対象として考慮されているが、慢性疾患に対する休薬(薬を止めること)が非常に危険であるという概念がなく、備蓄対象薬剤として考慮されていない。第2に備蓄対象薬剤が不明確のため、ローリングストック方式に該当しない薬剤も備蓄候補とされ、備蓄施設(例えば、病院、薬局、避難所等)の負担が大きくなるという問題がある。第3に地域が有する薬剤資源が一元化されていないため資源の有効活用が難しく、災害時の自助共助が有効に行えないという問題がある。自助共助は物流が完全に停滞してしまった場合の最終的なバックアッププランになり得るものであるにも関わらず、情報が一元化されていないことでそれらのバックアップ資源を有効活用できない。
【0007】
上記特許文献1、2に示す技術は、これらの問題を解決できるものではない。
【0008】
本発明は、休薬期間の危険性を考慮した薬剤情報を利用して、災害時などに必要となる薬剤の備蓄量などを管理する薬剤管理装置等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る薬剤管理装置は、薬剤の物流に関する物流情報を取得する物流情報取得手段と、投薬が中断された場合に所定の日数以内で投薬が再開されることが望ましい休薬危険薬剤の情報を少なくとも含む薬剤情報記憶手段と、前記物流情報から前記休薬危険薬剤に該当する薬剤の消費量を算出する消費量算出手段とを備えるものである。
【0010】
このように、本発明に係る薬剤管理装置においては、薬剤の物流に関する物流情報を取得し、投薬が中断された場合に所定の日数以内で投薬が再開されることが望ましい休薬危険薬剤の情報を少なくとも含む薬剤情報記憶手段に基づいて、前記物流情報から前記休薬危険薬剤に該当する薬剤の消費量を算出するため、これまで考慮されていなかった休薬危険薬剤という概念で薬剤を分類し、その消費量を正確に算出することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態に係る薬剤管理装置のハードウェア構成図である。
【図2】第1の実施形態に係る薬剤管理装置の機能ブロック図である。
【図3】薬剤物流情報の管理システムのシステム概要図である。
【図4】第1の実施形態に係る薬剤管理装置における薬剤情報記憶部に記憶されている休薬危険薬剤の情報の一例を示す図である。
【図5】第1の実施形態に係る薬剤管理装置におけるスイッチ薬剤のスイッチ情報を示す第1の図である。
【図6】第1の実施形態に係る薬剤管理装置におけるスイッチ薬剤のスイッチ情報を示す第2の図である。
【図7】第1の実施形態に係る薬剤管理装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】第2の実施形態に係る薬剤管理装置の機能ブロック図である。
【図9】患者保有情報を取得する場合の処理の一例を示す図である。
【図10】区分された地域の一例を示す図である。
【図11】第2の実施形態に係る薬剤管理装置において薬剤の過不足の演算結果を示す第1の図である。
【図12】第2の実施形態に係る薬剤管理装置において薬剤の過不足の演算結果を示す第2の図である。
【図13】第2の実施形態に係る薬剤管理装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を説明する。また、本実施形態の全体を通して同じ要素には同じ符号を付けている。

【0013】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係る薬剤管理装置について、図1ないし図7を用いて説明する。本実施形態に係る薬剤管理装置は、投薬が中断された場合に所定の日数以内で投薬が再開されることが望ましい休薬危険薬剤の情報を少なくとも含む薬剤情報を利用することで、災害等の緊急事態においても被災者の健康状態を出来るだけ維持できるように薬剤情報を管理するものである。

【0014】
図1は、本実施形態に係る薬剤管理装置のハードウェア構成図である。薬剤管理装置1のコンピュータは、CPU111、RAM112、ROM113、ハードディスク(HDとする)114、通信I/F115及び入出力I/F116を備える。ROM113やHD114には、オペレーティングシステム、プログラム、データベース等が格納されており、必要に応じてプログラムがRAM112に読み出され、CPU111により実行される。

【0015】
通信I/F115は、装置間の通信を行うためのインタフェースである。入出力I/F116は、タッチパネル、キーボード、マウス等の入力機器からの入力を受け付けたり、プリンタやディスプレイ等にデータを出力するためのインタフェースである。この入出力I/F116は、必要に応じて光磁気ディスク、CD-R、DVD-R等のリムーバブルディスク等に対応したドライブを接続することができる。各処理部はバスを介して接続され、情報のやり取りを行う。なお、上記ハードウェアの構成はあくまで一例であり、必要に応じて変更可能である。

【0016】
図2は、本実施形態に係る薬剤管理装置の機能ブロック図である。薬剤管理装置1は、薬剤の物流情報を管理している管理センターから物流情報11を取得する物流情報取得部21と、薬剤情報記憶部24に記憶されている休薬危険薬剤の情報、及び物流情報取得部21が取得した物流情報に基づいて当該休薬危険薬剤の消費量を算出する消費量算出部22と、被害予測情報記憶部25に記憶されている被害予測に関する情報、及び消費量算出部22で算出された休薬危険薬剤の消費量の情報に基づいて当該休薬危険薬剤の備蓄量を算出する休薬危険薬剤備蓄量算出部23と、休薬危険薬剤の消費量の情報、休薬危険薬剤に代わる同等の効能を有するスイッチ薬剤の情報、被害予測に関する情報、及び休薬危険薬剤の備蓄量の情報に基づいて、スイッチ薬剤の備蓄量を算出するスイッチ薬剤備蓄量算出部26と、休薬危険薬剤やスイッチ薬剤の算出された備蓄量の情報をディスプレイ12などに出力する出力制御部27とを備える。

【0017】
各構成について、以下詳細に説明する。図3は、薬剤物流情報の管理システムのシステム概要図である。ここでは一例として佐賀県内における薬剤物流情報の管理システムを示している。薬剤の物流情報は、県内の各地域における病院や薬局(調剤薬局、ドラッグストア等)に薬剤を卸す各卸問屋(ここでは、卸問屋A~C)が取り扱った薬剤の情報が情報管理センターに集約されて一元管理されている。物流情報取得部21は、この情報管理センターに集約されている薬剤の情報を取得することで、県内における薬剤の物流情報11を取得することが可能となっている。

【0018】
図4は、薬剤情報記憶部24に記憶されている休薬危険薬剤の情報の一例を示す図である。薬剤情報記憶部24には、日本国内で販売されている全ての薬剤に関する最新情報が個々に記憶されている。本実施形態においては、その中で、特に休薬危険薬剤Xと準休薬危険薬剤Yとが分類されて記憶されていることを利用して災害時の対応に備える。ここで言う休薬危険薬剤Xとは、例えば48時間以内に再開することが望ましい薬剤で、準休薬危険薬剤Yとは、例えば7日以内に再開することが望ましい薬剤のことである。

【0019】
具体的には、例えば、糖尿病治療薬である「1類:インスリン製剤」、「2類:1類以外の糖尿病治療薬」、抗不整脈薬である「1類:アミオダロン」、「2類:1類以外の抗不整脈薬」、ホルモン製剤である「1類:ADH・甲状腺・ステロイドホルモン」、高血圧薬である「1類:ワルファリン・DOAC」、「2類:1類以外の抗血圧薬」、抗てんかん薬等が、休薬危険薬剤Xや準休薬危険薬剤Yに分類されている。

【0020】
なお、これらの休薬危険薬剤Xや準休薬危険薬剤Yの概念は、発明者らにより初めて定義されたものであり、48時間や7日の期間は任意に設定してもよい。また、休薬危険薬剤X及び準休薬危険薬剤Yの2種類の休薬危険薬剤に限らず、第1~第n休薬危険薬剤のように重要度に応じて任意の分類数で分類するようにしてもよい。

【0021】
この他に、図4において図示しないが、薬剤情報記憶部24にはスイッチ薬剤に関する情報も含まれている。スイッチ薬剤については詳細を後述するが、休薬危険薬剤Xや準休薬危険薬剤Yと共通の効能を有しており、単独又は複数のスイッチ薬剤を組み合わせることで休薬危険薬剤Xや準休薬危険薬剤Yに代わって利用できる薬剤のことである。特に、災害時などにおいては、休薬危険薬剤Xや準休薬危険薬剤Yのうち普段の流通量が少ないものや薬剤単価が高いものに代わることができるような、安価で流通量が多いスイッチ薬剤の情報が非常に重要なものとなる。

【0022】
消費量算出部22は、上述したように物流情報取得部21が取得した薬剤の物流情報と、薬剤情報記憶部24で分類されている休薬危険薬剤Xや準休薬危険薬剤Yの情報とを利用することで、休薬危険薬剤Xや準休薬危険薬剤Yの1日単位の消費量を算出する。

【0023】
休薬危険薬剤備蓄量算出部23は、被害予測情報記憶部25に記憶されている被害予測に関する情報と、消費量算出部22が算出した休薬危険薬剤Xや準休薬危険薬剤Yの1日の消費量の情報とを用いて、災害時に必要となる休薬危険薬剤Xや準休薬危険薬剤Yの備蓄量を算出する。具体的には、例えば被害予測情報記憶部25に記憶されている被害予想ルールを以下の通りとする。
・資源使用患者の分布は平均値とする。
・患者教育は無いものとする。
・倒壊及び燃焼は資源消失とする。
・停電範囲は県の予想から推定する。
・死亡している可能性があっても医療資源を必要とすると仮定する。
・備蓄量は必要量より多めに見積もる。

【0024】
ここで、被害予測情報記憶部25には地域ごとの人口分布や予想被災者数なども記憶されているとする。これらの情報を用いて、例えば以下のような備蓄量の算出を行う。

【0025】
【数1】
JP2020197810A_000003t.gif

【0026】
上記の式においては、被災地域の全ての人が被災患者となった場合が想定されており、その場合は多めに見積もって被災地域1日の消費薬剤量の2倍の薬剤があれば備蓄量として十分である。つまり、一切の物流が遮断されて復旧に5日程度要すると仮定した場合、休薬危険薬剤Xは48時間以内に再開することが望ましいことを考慮すると、最低でも5日のうちの3日分を外部からの流通がない状態で乗り切る必要がある。つまり、上記の式に当て嵌めると休薬危険薬剤Xの必要な備蓄量は被災地域の6日分の消費薬剤量となる。

【0027】
なお、上記の備蓄量の算出はあくまで一例を示したものであり、これに限られるものではなく、地域、環境、災害の種類、規模等に応じて様々な想定で総合的に備蓄量が算出されることが望ましい。

【0028】
図5及び図6は、上述したスイッチ薬剤のスイッチ情報を示す図であり、図5は抗血栓薬I類、図6は抗てんかん薬のスイッチ情報の一例を示している。以下、スイッチ薬剤へのスイッチング処理について説明する。図5において、抗血栓薬I類として、図5(A)の表に示す5つの代表的な薬剤がある。このうちワルファリンは古くから使用されていた薬剤であり、実績もあり腎機能への影響がない。すなわち、腎機能に注意が必要な人や元々ワルファリンを使用している人は、災害時であっても抗血栓薬としてワルファリンを使用しなければならない。一方、プラザキサカプセル、リクシアナ錠、イグザレルト錠及びエリキュース錠は後発品であり、いずれも抗血栓薬として同等の効能を有しているが腎機能への影響が懸念される。つまり、腎機能に問題がない人であれば、プラザキサカプセル、リクシアナ錠、イグザレルト錠及びエリキュース錠のいずれを飲んでも抗血栓薬として同等の効能が得られる。

【0029】
以上のことから、災害時に必要とされる抗血栓薬I類の備蓄薬剤としては、ワルファリンと、プラザキサカプセル、リクシアナ錠、イグザレルト錠及びエリキュース錠のいずれか1つ(ここでは、流通量の多さや服用回数などを考慮して仮にリクシアナ錠をスイッチ薬剤とする)とが備蓄されていれば乗り切ることが可能である(図5(B)を参照)。そして、薬剤に応じて用法容量が異なることから、それぞれのプラザキサカプセル、リクシアナ錠、イグザレルト錠の用法容量をスイッチ薬剤であるリクシアナ錠の用法容量に変換して記憶する(図5(C)、(D)を参照)。これらの情報を用いることで、スイッチ薬剤の効率的且つ効果的な備蓄量を求めることが可能となる。

【0030】
また、図6は、抗てんかん薬のスイッチ情報であり、図6(A)に示す代表的な薬剤は全てイーケプラ(用法容量1000mg/day(朝、夕))で代用可能であり、備蓄薬剤としては、図6(A)に示す各薬剤のスイッチ薬剤としてイーケプラのみを備蓄しておけば良い。

【0031】
なお、本実施形態においては、少なくとも休薬危険薬剤Xや準休薬危険薬剤Yに代わるスイッチ薬剤の情報が薬剤情報記憶部24に記憶されているが、当然、休薬危険薬剤Xや準休薬危険薬剤Yに限らず、あらゆる薬剤についてスイッチ薬剤の情報が含まれるようにしてもよい。

【0032】
スイッチ薬剤備蓄量算出部26は、薬剤情報記憶部24に格納されている上述したスイッチ薬剤に関する情報を利用して、備蓄量の算出を行う。休薬危険薬剤備蓄量算出部23が算出した休薬危険薬剤の備蓄量では、必要な備蓄量を正確に算出することが可能であるものの、日常の流通量やコストを考慮した場合に避難所を管理する自治体や病院等の備蓄施設の負担が大きくなる場合がある。また、備蓄していた休薬危険薬剤自体が災害被害による紛失してしまう可能性もある。そのため、スイッチ薬剤備蓄量算出部26の算出結果にしたがって、休薬危険薬剤Xや準休薬危険薬剤Yを出来るだけスイッチ薬剤に切り替え、安価で流通量が多いスイッチ薬剤とすることで、ローリング方式での備蓄が可能となり、極めて効率的に薬剤の消費及び備蓄を行うことが可能となる。

【0033】
休薬危険薬剤備蓄量算出部23やスイッチ薬剤備蓄量算出部26で算出された備蓄量の情報は、出力制御部27によりディスプレイ12などに表示され、管理者はこれらの演算結果に基づいて備蓄薬剤の準備を行う。

【0034】
次に、本実施形態に係る薬剤管理装置の動作について説明する。図7は、本実施形態に係る薬剤管理装置の動作を示すフローチャートである。まず、物流情報取得部21が情報管理センターから薬剤の物流情報11を取得する(S1)。薬剤情報記憶部24に記憶されている休薬危険薬剤の情報と取得した物流情報とに基づいて、消費量算出部22が休薬危険薬剤の消費量を算出する(S2)。休薬危険薬剤備蓄量算出部23が、休薬危険薬剤の消費量の情報、被害予測情報記憶部25に格納されている災害における被害予測に関する情報、薬剤情報記憶部24に格納されている休薬危険薬剤等の情報を用いて、災害による休薬危険薬剤の紛失量なども考慮した休薬危険薬剤(休薬危険薬剤X及び休薬危険薬剤Y)の備蓄量(備蓄必要量)を算出する(S3)。スイッチ薬剤備蓄量算出部26が、休薬危険薬剤の消費量の情報、休薬危険薬剤の備蓄量の情報、薬剤情報記憶部24に記憶された薬剤に関する情報、及び被害予測情報記憶部25に記憶された被害予測に関する情報に基づいて、休薬危険薬剤の備蓄量のうちスイッチ薬剤で代用できる分については、当該スイッチ薬剤の備蓄必要量を算出する(S4)。出力制御部27が、ステップS3やS4の算出結果をディスプレイ12などの媒体に出力して(S5)、処理を終了する。

【0035】
このように、本実施形態に係る薬剤管理装置1においては、薬剤の物流に関する物流情報11を取得し、投薬が中断された場合に所定の日数以内で投薬が再開されることが望ましい休薬危険薬剤(例えば、休薬危険薬剤Xや準休薬危険薬剤Y)の情報を少なくとも含む薬剤情報記憶部24に基づいて、消費量算出部22が、物流情報11から休薬危険薬剤に該当する薬剤の消費量を算出するため、これまで考慮されていなかった休薬危険薬剤という概念で薬剤を分類し、その消費量を正確に算出することが可能になる。

【0036】
また、休薬危険薬剤の消費量の情報に基づいて、休薬危険薬剤備蓄量算出部23が当該休薬危険薬剤の必要備蓄量を算出するため、災害等が発生した場合であっても休薬危険薬剤を不足することなく供給することが可能となる。

【0037】
さらに、休薬危険薬剤に代わって投薬した場合に当該休薬危険薬剤を投与した場合と共通の効果が得られるスイッチ薬剤に関する情報を薬剤情報記憶部24が記憶し、休薬危険薬剤の必要備蓄量に基づいて、スイッチ薬剤備蓄量算出部26がスイッチ薬剤の必要備蓄量を算出するため、休薬危険薬剤が高価であったり、流通量が少なく災害が発生した際に在庫の確保が難しいような場合であっても、安価で流通量が多いようなスイッチ薬剤を代用して休薬期間を補うことが可能になる。

【0038】
(本発明の第2の実施形態)
本実施形態に係る薬剤管理装置について、図8ないし図13を用いて説明する。本実施形態に係る薬剤管理装置は、地域ごとに流通している薬剤を一元管理することで、災害時などにおいて薬剤を有効活用できるものである。すなわち、物流が完全に停滞したような場合であっても、既に流通している薬剤の量を把握して分配することで物流停滞期を乗り切るものである。なお、本実施形態において前記第1の実施形態と重複する説明は省略する。

【0039】
図8は、本実施形態に係る薬剤管理装置の機能ブロック図である。薬剤管理装置1は、予め小地域に区分された地域別情報を記憶する地域別情報記憶部82と、施設別にストックされている薬剤の情報である施設別ストック情報13、及び既に患者に処方された薬剤で当該患者が保有している薬剤のストック情報である患者保有情報14から、地域別情報記憶部82で定義されている地域ごとに、当該地域別の薬剤ストック情報を取得して地域別情報記憶部82に格納する地域別ストック情報取得部81と、地域別ストック情報取得部81に記憶された地域別の薬剤ストック情報、実際に受けた被害の情報である被災者情報15、及び被害予測情報記憶部25に記憶された被害予測に関する情報に基づいて、薬剤の過不足を演算する過不足演算部83と、過不足の演算結果をディスプレイ12に出力したり備蓄基地16に送信する出力制御部27とを備える。

【0040】
各構成について、以下詳細に説明する。図9は、患者保有情報14を取得する場合の処理の一例を示す図である。患者の携帯電話やスマートフォンなどの携帯端末には、予め医療情報を個々に管理するためのアプリケーションがインストールされており、個人の基本的な情報、健康状態、医療情報等が管理されている(図9(A)を参照)。なお、図9においては、一例として糖尿病患者向けの支援アプリを記載している。このようなアプリケーションは、災害時の治療において非常に重要であり、今後多く普及することが強く望まれている。ここでは、アプリケーションを用いた場合の情報取得について説明するが、患者の薬剤ストック情報は他にも調剤薬局のシステムやお薬手帳アプリなどから取得することが可能である。

【0041】
図9において、災害が発生した際には災害時モードとなり、現在地を含めて患者本人の薬剤の状況を送信できるモードとなっている(図9(B)を参照)。図9(B)では患者本人が使用するための薬剤の有無を送信すると共に、薬剤がある場合には、それを共有することに同意するかどうかと、薬剤の保存状態を送信できるようになっている。残薬の種類や量については、図9(A)の通常時モードにおいて管理されている情報を用いることで容易に割り出すことが可能である。このようなアプリケーションを用いることで、患者保有情報14を取得することが可能となる。また、施設別ストック情報13については、施設別に薬剤の在庫が管理されているため、それらの情報を収集することで容易に取得することが可能である。

【0042】
なお、上述したように、図9に示すアプリケーションはあくまで一例を示したものであり、患者がストックしている薬剤の情報は様々な方法を収集できるようにしてもよい。

【0043】
地域別情報記憶部82は、予め区画された地域別に薬剤のストック情報を記憶するものであり、予め区画された地域とは、例えば図10に示すような消防署を拠点とする地域である。消防署は建物の構造、設備、全国の分散度合などを考慮した場合に災害時の物流拠点として適した施設である。図10(A)に示すように消防署を拠点とした最小単位を1つの地域として予め区画し、この地域ごとに地域別情報記憶部82にて情報管理を行う。より具体的には、図10(B)に示すように、災害時に大きな拠点となる病院(災害時に拠点となる設備や備蓄等が充実した大病院等であって、例えば大学病院などが含まれる)から消防署を経由して各地域の避難所や被災者の自宅に不足した物資等を運搬することで、できるだけ物流効率を上げることが可能となる。

【0044】
地域別情報記憶部82には、上記のような消防署を拠点とする地域ごとに当該地域内の施設で管理されている薬剤の在庫情報や、地域内にいる住民が保有している薬剤の情報が収集されて管理される。

【0045】
過不足演算部83は、地域別情報記憶部82に管理されている地域ごとの薬剤管理情報、実際に被災した被災者に関する被災者情報15、及び予め登録されている被害予測情報記憶部25の情報に基づいて、実際の被害状況や今後想定される被害の拡大から現状における薬剤の過不足、又は将来的な薬剤の過不足を地域ごとに演算する。図11及び図12は、薬剤の過不足の演算結果を示す図である。図11において、A消防校区では、被害の状況や被害の拡大予測を考慮し、薬剤不足情報に対して薬剤ストック情報が上回っており、十分に薬剤があるという結果が出ている。これは、例えば、比較的被害が小さく、且つ患者同士で多くの薬剤を共有する場合に実現できる。

【0046】
一方、図12において、B消防校区では、被害の状況や被害の拡大予測を考慮し、薬剤ストック情報に対して薬剤不足情報が上回っており、薬剤が不足しているという結果が出ている。これは、例えば、比較的被害が大きく、患者が紛失した薬剤も多い場合にこのような結果となる。図12に示すような薬剤不足の演算結果が出力された場合は、その情報が備蓄拠点(図10(B)における災害拠点病院に相当)に送信され、必要量の薬剤が最寄の消防署を経由して被災者に配布される。

【0047】
次に、本実施形態に係る薬剤管理装置の動作について説明する。図13は、本実施形態に係る薬剤管理装置の動作を示すフローチャートである。まず、地域別ストック情報取得部81が、施設別ストック情報13、患者保有情報14、及び地域別情報記憶部82に記憶されている地域情報に基づいて、当該地域ごとに薬剤のストック情報を収集し(S1)、収集された薬剤のストック情報を地域別情報記憶部82に地域別に格納する(S2)。過不足演算部83が実際に被災した被災者情報15を取得し(S3)、地域別に薬剤の過不足を演算する(S4)。薬剤が不足している地域がある場合は、その地域を管轄とする備蓄基地16に対して薬剤の不足情報を送信して(S5)、処理を終了する。

【0048】
このように、本実施形態に係る薬剤管理装置においては、備蓄施設にストックされている薬剤、及び患者が所有している薬剤のストック情報を取得し、取得したストック情報に基づいて、所定の地域別のストック情報を算出し、地域別のストック情報及び被災者の情報に基づいて、当該地域ごとに薬剤の過不足を演算するため、災害により物流が完全に停滞してしまったような場合であっても、自助共助により資源を有効活用して災害発生直後からある程度物流が復旧するまでの期間を乗り切る可能性を高めることができる。

【0049】
なお、本実施形態においては、管理対象となる薬剤を全ての薬剤としてもよいし、前記第1の実施形態において主な管理対象となっている休薬危険薬剤を管理対象としてもよい。後者の場合は、休薬危険薬剤について地域別に過不足の演算が行われ、必要に応じて備蓄基地16からの補充が行われる。このとき、第1の実施形態において説明したように、スイッチ薬剤を利用して不足分の薬剤が補われるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 薬剤管理装置
11 物流情報
12 ディスプレイ
13 施設別ストック情報
14 患者保有情報
15 被害者情報
16 備蓄基地
21 物流情報取得部
22 消費量算出部
23 休薬危険薬剤備蓄量算出部
24 薬剤情報記憶部
25 被害予測情報記憶部
26 スイッチ薬剤備蓄量算出部
27 出力制御部
81 地域別ストック情報取得部
82 地域別情報記憶部
83 過不足演算部
111 CPU
112 RAM
113 ROM
114 ハードディスク
115 通信I/F
116 入出力I/F
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
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【図5】
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【図6】
5
【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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