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明細書 :構造体と細胞塊を連結した構築物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和2年11月12日(2020.11.12)
発明の名称または考案の名称 構造体と細胞塊を連結した構築物
国際特許分類 C12N   5/071       (2010.01)
C12Q   1/02        (2006.01)
A01K  67/027       (2006.01)
A61L  27/38        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61K  35/12        (2015.01)
FI C12N 5/071 ZNA
C12Q 1/02
A01K 67/027
A61L 27/38
A61P 43/00 101
A61K 35/12
国際予備審査の請求
全頁数 22
出願番号 特願2019-550354 (P2019-550354)
国際出願番号 PCT/JP2018/039992
国際公開番号 WO2019/087988
国際出願日 平成30年10月26日(2018.10.26)
国際公開日 令和元年5月9日(2019.5.9)
優先権出願番号 2017208853
優先日 平成29年10月30日(2017.10.30)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】谷口 英樹
【氏名】田所 友美
出願人 【識別番号】505155528
【氏名又は名称】公立大学法人横浜市立大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100098121、【弁理士】、【氏名又は名称】間山 世津子
【識別番号】100107870、【弁理士】、【氏名又は名称】野村 健一
審査請求 未請求
テーマコード 4B063
4B065
4C081
4C087
Fターム 4B063QA05
4B063QQ08
4B063QQ42
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4B065AB01
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4B065CA44
4C081AB13
4C081BA13
4C081CD34
4C081DA02
4C081DA03
4C081DA04
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB33
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4C087CA04
4C087MA32
4C087MA67
4C087NA14
4C087ZB21
要約 複数の組織同士の「組織間相互作用」の人為的誘導・制御系を提供する。構造体と細胞塊を連結した構築物であって、前記構造体は立体構造を有する物体であって、生体の構造及び/又は機能を模倣もしくは類似しうるものである、生体に移植するための前記構築物。
特許請求の範囲 【請求項1】
構造体と細胞塊を連結した構築物であって、前記構造体は立体構造を有する物体であって、生体の構造及び/又は機能を模倣もしくは類似しうるものである、生体に移植するための前記構築物。
【請求項2】
構造体が管腔構造、非管腔構造又はそれらの組み合わせを有する請求項1記載の構築物。
【請求項3】
構造体が、血管、胆管、食道、膵管、気管、気管支、細気管支、尿管、卵管、精管、汗腺、ワルトン管、ステノン管、涙腺、心臓、神経、大脳、中脳、小脳、視床、視床下部、脳下垂体、橋、延髄、眼、舌、歯、皮膚、咽頭、喉頭、胸腺、声帯、胃、十二指腸、小腸、大腸、直腸、肛門、肺、横隔膜、肝臓、胆嚢、膵臓、腎臓、副腎、甲状腺、副甲状腺、脾臓、膀胱、精巣、卵巣、子宮、骨、軟骨、腱、毛包、漿膜、大網、粘膜組織、筋組織及び靭帯からなる群より選択される少なくとも1つである請求項2記載の構築物。
【請求項4】
構造体が生体に由来する請求項3記載の構築物。
【請求項5】
構造体が人工物である請求項3記載の構築物。
【請求項6】
構造体が、シート状構造体、チューブ状構造体及び糸状構造体からなる群より選択される少なくとも1つである請求項2記載の構築物。
【請求項7】
細胞塊が1種類又は2種類以上の細胞を含む請求項1~6のいずれかに記載の構築物。
【請求項8】
細胞塊が、器官芽、スフェロイド、セルアグリゲート及びセルスフェアからなる群より選択される少なくとも1つである請求項1~7のいずれかに記載の構築物。
【請求項9】
構造体と細胞塊の組み合わせが、血管と器官芽、胆管と器官芽、食道と器官芽、膵管と器官芽、気管と器官芽、気管支と器官芽、細気管支と器官芽、尿管と器官芽、卵管と器官芽、精管と器官芽、汗腺と器官芽、ワルトン管と器官芽、ステノン管と器官芽、涙腺と器官芽、心臓と器官芽、神経と器官芽、大脳と器官芽、中脳と器官芽、小脳と器官芽、視床と器官芽、視床下部と器官芽、脳下垂体と器官芽、橋と器官芽、延髄と器官芽、眼と器官芽、舌と器官芽、歯と器官芽、皮膚と器官芽、咽頭と器官芽、喉頭と器官芽、胸腺と器官芽、声帯と器官芽、胃と器官芽、十二指腸と器官芽、小腸と器官芽、大腸と器官芽、直腸と器官芽、肛門と器官芽、肺と器官芽、横隔膜と器官芽、肝臓と器官芽、胆嚢と器官芽、膵臓と器官芽、腎臓と器官芽、副腎と器官芽、甲状腺と器官芽、副甲状腺と器官芽、脾臓と器官芽、膀胱と器官芽、精巣と器官芽、卵巣と器官芽、子宮と器官芽、骨と器官芽、軟骨と器官芽、腱と器官芽、毛包と器官芽、漿膜と器官芽、大網と器官芽、粘膜組織と器官芽、筋組織と器官芽及び靭帯と器官芽からなる群より選択される少なくとも1つの組み合わせである請求項1~8のいずれかに記載の構築物。
【請求項10】
器官芽が、肝芽、肺オルガノイド、気道上皮オルガノイド、腸オルガノイド、膵臓オルガノイド、腎臓オルガノイド、脳オルガノイド、気道オルガノイド、胃オルガノイド、甲状腺オルガノイド、胸腺オルガノイド、精巣オルガノイド、食道オルガノイド、皮膚オルガノイド、神経オルガノイド、卵管オルガノイド、卵巣オルガノイド、唾液腺オルガノイド、眼胞オルガノイド、眼杯オルガノイド、膀胱オルガノイド、前立腺オルガノイド、軟骨オルガノイド、心臓オルガノイド、骨組織オルガノイド、筋組織オルガノイド及びがんオルガノイドからなる群より選択される少なくとも1つである請求項9記載の構築物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の構築物を非ヒト動物に移植することを含む、組織又は臓器の作製方法。
【請求項12】
請求項1~10のいずれかに記載の構築物をヒト又は非ヒト動物に移植することを含む、組織又は臓器の再生又は機能回復方法。
【請求項13】
請求項1~10のいずれかに記載の構築物を非ヒト動物に移植することを含む、非ヒトキメラ動物の作製方法。
【請求項14】
請求項1~10のいずれかに記載の構築物、請求項11記載の方法で作製された組織及び臓器、並びに請求項13記載の方法で作製された非ヒトキメラ動物からなる群より選択される少なくとも1つを用いて、薬剤を評価する方法。
【請求項15】
請求項1~10のいずれかに記載の構築物を含む、再生医療用組成物。
【請求項16】
組織又は臓器を作製するために用いられる請求項15記載の組成物。
【請求項17】
組織及び/又は臓器の再生及び/又は機能回復を行うために用いられる請求項15記載の組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体と細胞塊を連結した構築物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒューマン・バイオロジー、再生医療、薬剤評価などの諸分野において、ヒト臓器に類似した3次元構造と生体機能を有するオルガノイド(臓器類似体)の人為的創出技術が求められている。
【0003】
オルガノイドの創出は、胚性幹細胞(ES細胞)を材料とした胚様体(Embryoid body)の作製に代表されるような、未分化細胞の3次元培養による自律的な多系列細胞分化に基づく組織構造体の創出が古典的に行われてきた[非特許文献1:Eiraku M et al., Nature, 2011]。この手法により初期胚の再構成は実現化できたものの、任意の臓器形成などを人為的・計画的に再現性を担保して実施することは困難であった。その後、任意の臓器形成の実現化を目指し、未分化細胞や変異導入細胞を用いて生体内の上皮構造に類似したオルガノイドを作製すること[非特許文献2:Sato T et al., Nature, 2009]、上皮と間質を共に有するオルガノイドを作製すること[非特許文献3:Spence JR et al., Nature, 2011]、内部に血管網を有するオルガノイドを作製することなどが行われており[非特許文献4:Takebe T et al., Nature, 2013; 非特許文献5:Takebe T et al., Cell Stem Cell, 2015、特許文献1:WO2013/047639]、細胞間相互作用を活用した自己組織化の誘導・制御法が確立しつつある。
【0004】
一方、このような細胞間相互作用を活用した自己組織化の誘導・制御の限界も明らかになりつつある。すなわち、上皮シート構造や毛細血管網などの微細な組織構造を人為的に再構成することは可能ではあるものの、例えば上皮シートと構造的に連結する複雑な導管構造や、毛細血管網に連結する太い細小動静脈以上の大血管系などの再構成には成功していない。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】Eiraku M et al., Nature 472, pp51-56, 2011
【非特許文献2】Sato T et al., Nature 459, pp262-265, 2009
【非特許文献3】Spence JR et al., Nature 470, pp105-109, 2011
【非特許文献4】Takebe T et al., Nature 499, pp481-484, 2013
【非特許文献5】Takebe T et al., Cell Stem Cell 16, pp556-565, 2015
【0006】

【特許文献1】WO2013/047639
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上皮シートと構造的に連結する複雑な導管構造や、毛細血管網に連結する太い細小動静脈以上の大血管系などの再構成を達成するためには、細胞間相互作用だけではなく、複数の組織同士の「組織間相互作用」の人為的誘導・制御系の開発が極めて重要である。
【0008】
本発明は、複数の組織同士の「組織間相互作用」の人為的誘導・制御系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
生体移植において、移植片が血管と吻合するためには血管化オルガノイド内の血管のリモデリングが必要であり、移植から血液灌流が起こるまで数日の時間を要する。本発明者らは、移植後さらに早い段階での移植組織への血液灌流を実現するために、オルガノイドと大血管・人工血管を含めた血管系構造体との融合体をin vitroで創出することに成功し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の要旨は以下の通りである。
(1)構造体と細胞塊を連結した構築物であって、前記構造体は立体構造を有する物体であって、生体の構造及び/又は機能を模倣もしくは類似しうるものである、生体に移植するための前記構築物。
(2)構造体が管腔構造、非管腔構造又はそれらの組み合わせを有する(1)記載の構築物。
(3)構造体が、血管、胆管、食道、膵管、気管、気管支、細気管支、尿管、卵管、精管、汗腺、ワルトン管、ステノン管、涙腺、心臓、神経、大脳、中脳、小脳、視床、視床下部、脳下垂体、橋、延髄、眼、舌、歯、皮膚、咽頭、喉頭、胸腺、声帯、胃、十二指腸、小腸、大腸、直腸、肛門、肺、横隔膜、肝臓、胆嚢、膵臓、腎臓、副腎、甲状腺、副甲状腺、脾臓、膀胱、精巣、卵巣、子宮、骨、軟骨、腱、毛包、漿膜、大網、粘膜組織、筋組織及び靭帯からなる群より選択される少なくとも1つである(2)記載の構築物。
(4)構造体が生体に由来する(3)記載の構築物。
(5)構造体が人工物である(3)記載の構築物。
(6)構造体が、シート状構造体、チューブ状構造体及び糸状構造体からなる群より選択される少なくとも1つである(2)記載の構築物。
(7)細胞塊が1種類又は2種類以上の細胞を含む(1)~(6)のいずれかに記載の構築物。
(8)細胞塊が、器官芽、スフェロイド、セルアグリゲート及びセルスフェアからなる群より選択される少なくとも1つである(1)~(7)のいずれかに記載の構築物。
(9)構造体と細胞塊の組み合わせが、血管と器官芽、胆管と器官芽、食道と器官芽、膵管と器官芽、気管と器官芽、気管支と器官芽、細気管支と器官芽、尿管と器官芽、卵管と器官芽、精管と器官芽、汗腺と器官芽、ワルトン管と器官芽、ステノン管と器官芽、涙腺と器官芽、心臓と器官芽、神経と器官芽、大脳と器官芽、中脳と器官芽、小脳と器官芽、視床と器官芽、視床下部と器官芽、脳下垂体と器官芽、橋と器官芽、延髄と器官芽、眼と器官芽、舌と器官芽、歯と器官芽、皮膚と器官芽、咽頭と器官芽、喉頭と器官芽、胸腺と器官芽、声帯と器官芽、胃と器官芽、十二指腸と器官芽、小腸と器官芽、大腸と器官芽、直腸と器官芽、肛門と器官芽、肺と器官芽、横隔膜と器官芽、肝臓と器官芽、胆嚢と器官芽、膵臓と器官芽、腎臓と器官芽、副腎と器官芽、甲状腺と器官芽、副甲状腺と器官芽、脾臓と器官芽、膀胱と器官芽、精巣と器官芽、卵巣と器官芽、子宮と器官芽、骨と器官芽、軟骨と器官芽、腱と器官芽、毛包と器官芽、漿膜と器官芽、大網と器官芽、粘膜組織と器官芽、筋組織と器官芽及び靭帯と器官芽からなる群より選択される少なくとも1つの組み合わせである(1)~(8)のいずれかに記載の構築物。
(10)器官芽が、肝芽、肺オルガノイド、気道上皮オルガノイド、腸オルガノイド、膵臓オルガノイド、腎臓オルガノイド、脳オルガノイド、気道オルガノイド、胃オルガノイド、甲状腺オルガノイド、胸腺オルガノイド、精巣オルガノイド、食道オルガノイド、皮膚オルガノイド、神経オルガノイド、卵管オルガノイド、卵巣オルガノイド、唾液腺オルガノイド、眼胞オルガノイド、眼杯オルガノイド、膀胱オルガノイド、前立腺オルガノイド、軟骨オルガノイド、心臓オルガノイド、骨組織オルガノイド、筋組織オルガノイド及びがんオルガノイドからなる群より選択される少なくとも1つである(9)記載の構築物。
(11)(1)~(10)のいずれかに記載の構築物を非ヒト動物に移植することを含む、組織又は臓器の作製方法。
(12)(1)~(10)のいずれかに記載の構築物をヒト又は非ヒト動物に移植することを含む、組織又は臓器の再生又は機能回復方法。
(13)(1)~(10)のいずれかに記載の構築物を非ヒト動物に移植することを含む、非ヒトキメラ動物の作製方法。
(14)(1)~(10)のいずれかに記載の構築物、(11)記載の方法で作製された組織及び臓器、並びに(13)記載の方法で作製された非ヒトキメラ動物からなる群より選択される少なくとも1つを用いて、薬剤を評価する方法。
(15)(1)~(10)のいずれかに記載の構築物を含む、再生医療用組成物。
(16)組織又は臓器を作製するために用いられる(15)記載の組成物。
(17)組織及び/又は臓器の再生及び/又は機能回復を行うために用いられる(15)記載の組成物。
【0011】
本発明は、複数のオルガノイド間の「組織間相互作用」の新たな人為的制御系の提供、並びにその人為的制御系により作製される臓器類似体や臓器を提供するものである。さらに、複数オルガノイドと大血管などの異種構造体との「組織間相互作用」の人為的制御系を提供、並びにその人為的制御系により作製される臓器類似体や臓器を提供するものである。また、本発明は単純な生体組織間の相互作用制御系の提供にとどまらず、人工血管などの高分子構造体に代表されるような化学物質や金属等により作製された人工物との相互作用の制御系の提供、ならびにその人為的制御系により作製される臓器類似体や臓器を含むものである。
【0012】
複数のオルガノイド間の「組織間相互作用」の新たな人為的制御系の提供については、Cyfuse社特許[WO2008/123614、WO2014/141528、WO2014/148647]や既報論文[Birey F et al., Nature 545, pp54-59, 2017:脳外套オルガノイドと脳外套下部オルガノイドの融合による脳作製]とは全く異なる手法であり、進歩性を有している。構造体ならびに人工物との「相互作用」の人為的制御系の提供、その人為的制御系により作製される臓器類似体や臓器については明らかに新規性を有するものである。本発明は、ヒト臓器に類似した3次元構造と生体機能を有するオルガノイド(臓器類似体)の人為的創出技術を革新的に発展させる重要技術である。
本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願、特願2017-208853の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、複数のオルガノイド間の「組織間相互作用」の新たな人為的制御系と複数オルガノイドと大血管などの構造体との「組織間相互作用」の人為的制御系が提供された。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】hiPSC肝芽とマウス大血管の融合。
【図2】hiPSC肝芽への血管/胆管付与技術。
【図3】hiPSC肝芽と人工血管の融合。
【図4】大血管融合肝芽のin vivo機能解析。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。

【0016】
本発明は、構造体と細胞塊を連結した構築物であって、前記構造体は立体構造を有する物体であって、生体の構造及び/又は機能を模倣もしくは類似しうるものである、生体に移植するための前記構築物を提供する。
本発明において、構造体は、立体構造を有する物体であって、生体の構造及び/又は機能を模倣もしくは類似しうる。構造体は、生体の組織及び/又は臓器の全部又は一部の構造及び/又は機能をin vitroの段階で模倣もしくは類似しているものであってもよいし、in vitroの段階で模倣もしくは類似していなくても、生体に移植した後に(in vivoの段階で)模倣もしくは類似するものであってもよい。

【0017】
構造体は、細胞塊と由来を同じくするものでもよいし(同種)、細胞塊と由来を異にするものであってもよい(異種)。
構造体としては、細胞塊と由来が同じあるいは異なる生物に由来する生体組織や臓器、人工組織や臓器などを例示することができ、構造体は、管腔構造、非管腔構造又はそれらの組み合わせを有するものであるとよく、生体に由来するものであっても、人工物であってもよい。具体的には、血管、胆管、食道、膵管、気管、気管支、細気管支、尿管、卵管、精管、汗腺、ワルトン管、ステノン管、涙腺、心臓、神経、大脳、中脳、小脳、視床、視床下部、脳下垂体、橋、延髄、眼、舌、歯、皮膚、咽頭、喉頭、胸腺、声帯、胃、十二指腸、小腸、大腸、直腸、肛門、肺、横隔膜、肝臓、胆嚢、膵臓、腎臓、副腎、甲状腺、副甲状腺、脾臓、膀胱、精巣、卵巣、子宮、骨、軟骨、腱、毛包、漿膜、大網、粘膜組織、筋組織及び靭帯などの生体組織や臓器、人工血管、人工気管、細胞シートなどの人工組織や臓器などを例示することができるが、これらに限定されるわけではない。構造体は、シート状構造体、チューブ状構造体、糸状構造体などの形状をとりうる。構造体が人工物である場合、生体適合性の材料で形成されているとよい。生体適合性の材料としては、金属(例えば、ステンレス鋼、コバルト合金、チタン合金など)、ガラス、セラミック、合成高分子(例えば、ナイロン、ポリプロピレン、ポリジオキサノン、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレート、テフロン(登録商標)など)、生体由来材料(例えば、絹、コラーゲン、脱細胞組織)などを例示することができるが、これらに限定されるわけではない。また、構造体は、生体の構造及び/又は機能を模倣もしくは類似しうるものであれば、器官芽、スフェロイド、セルアグリゲート、セルスフェアなどの細胞集合体(細胞塊)や細胞集合体同士が融合したものであってもよい。

【0018】
構造体が模倣もしくは類似しうる生体の構造及び/又は機能は、特に限定されるものではなく、生体に存在する構造や生体の中で起こるいかなる機能であってもよく、生体組織や臓器の全部又は一部の構造、細胞の働きや細胞同士の相互作用、また、細胞が構成されてできた組織や臓器の働きや組織・臓器間の相互作用などを挙げることができるが、これらに限定されるわけではない。また、生体組織や臓器の欠損部の補填や生体組織や臓器の損傷部の補強なども生体機能の概念に含まれるものとする。生体の構造及び/又は機能を模倣もしくは類似する程度は、大きくても、小さくてもよく、その程度の大きさは問わない。

【0019】
細胞塊は、器官芽(オルガノイド)、スフェロイド、セルアグリゲート、セルスフェアなど、いかなる細胞の集合体であってもよく、1種類の細胞を含むものであっても、2種類以上の細胞を含むものであってもよい。また、細胞集合体同士が融合したものであってもよい。「器官芽」とは、成熟することで器官に分化することができる構造体であって、その一例として、WO2013/047639では、臓器細胞、血管細胞(好ましくは、血管内皮細胞)、及び未分化間葉系細胞若しくはそれから分化した細胞の三種類の細胞から器官芽を作製する方法が開示されており、本発明では、この方法で作製した器官芽を好適に用いることができる。「臓器細胞」とは、臓器を構成する機能細胞、又は機能細胞へと分化する未分化細胞をいう。「未分化な臓器細胞」としては、例えば、腎臓、心臓、肺臓、脾臓、食道、胃、甲状腺、副甲状腺、胸腺、生殖腺、脳、脊髄などの器官に分化可能な細胞などであってもよく、脳、脊髄、副腎髄質、表皮、毛髪・爪・皮膚腺、感覚器、末梢神経、水晶体などの外胚葉性器官に分化可能な細胞、腎臓、尿管、心臓、血液、生殖腺、副腎皮質、筋肉、骨格、真皮、結合組織、中皮などの中胚葉性器官に分化可能な細胞、肝臓、膵臓、腸管、肺、甲状腺、副甲状腺、尿路などの内胚葉性器官に分化可能な細胞などを挙げることができる。当業者間で使用されている用語のうち、hepatoblast、hepatic progenitor cells、pancreatoblast、hepatic precursor cells、pancreatoblast、 pancreatic progenitors、pancreatic progenitor cells、pancreatic precursor cells、endocrine precursors、intestinal progenitor cells、intestinal precursor cells、intermediate mesoderm、metanephric mesenchymal precursor cells、multipotent nephron progenitor、renal progenitor cell、cardiac mesoderm、cardiovascular progenitor cells、cardiac progenitor cells、(JR. Spence, et al. Nature.;470(7332):105-9.(2011)、Self, et al. EMBO J.; 25(21): 5214-5228.(2006)、J. Zhang, et al. Circulation Research.; 104: e30-e41(2009)、G. Lee, et al. Nature Biotechnology 25, 1468 - 1475 (2007))などは、未分化な臓器細胞に含まれる。未分化な臓器細胞は、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性幹細胞(ES細胞)などの多能性幹細胞から公知の方法に従って作製することができる。血管細胞は、血管を構成する細胞又はそのような細胞に分化できる細胞であり、分化したものであっても、未分化なものであってもよい。血管細胞は、臍帯静脈などの血管組織から分離することができるが、血管組織から分離された細胞に限定されることはなく、iPS細胞やES細胞などの全能性あるいは多能性を有する細胞から分化誘導されたものであってもよい。血管細胞としては、血管内皮細胞が好ましい。「血管内皮細胞」とは、血管内皮を構成する細胞、又はそのような細胞に分化することのできる細胞をいう。血管内皮細胞は、分化したものであっても、未分化なものであってもよい。当業者間で使用されている用語のうち、endothelial cells、umbilical vein endothelial cells、endothelial progenitor cells、endothelial precursor cells、vasculogenic progenitors、hemangioblast(HJ. joo, et al. Blood. 25;118(8):2094-104.(2011))などは血管内皮細胞に含まれる。「間葉系細胞」とは、主として中胚葉に由来する結合織に存在し、組織で機能する細胞の支持構造を形成する結合織細胞であるが、間葉系細胞への分化運命が決定しているが、まだ間葉系細胞へ分化していない細胞も含む概念である。間葉系細胞は、分化したものであっても、未分化なものであってもよい。当業者間で使用されている用語のうち、mesenchymal stem cells、mesenchymal progenitor cells、mesenchymal cells(R. Peters, et al. PLoS One. 30;5(12):e15689.(2010))などは間葉系細胞に含まれる。間葉系細胞は、iPS細胞やES細胞などの全能性あるいは多能性を有する細胞から分化誘導したものであってもよいし、骨髄、脂肪等の体細胞由来の細胞であってもよい。後述の実施例では、iPS細胞から分化誘導した肝前駆細胞、間葉系幹細胞及び臍帯静脈由来血管内皮細胞から作製した肝芽を用いた。

【0020】
構造体と細胞塊の組み合わせとしては、血管と器官芽、胆管と器官芽、食道と器官芽、膵管と器官芽、気管と器官芽、気管支と器官芽、細気管支と器官芽、尿管と器官芽、卵管と器官芽、精管と器官芽、汗腺と器官芽、ワルトン管と器官芽、ステノン管と器官芽、涙腺と器官芽、心臓と器官芽、神経と器官芽、大脳と器官芽、中脳と器官芽、小脳と器官芽、視床と器官芽、視床下部と器官芽、脳下垂体と器官芽、橋と器官芽、延髄と器官芽、眼と器官芽、舌と器官芽、歯と器官芽、皮膚と器官芽、咽頭と器官芽、喉頭と器官芽、胸腺と器官芽、声帯と器官芽、胃と器官芽、十二指腸と器官芽、小腸と器官芽、大腸と器官芽、直腸と器官芽、肛門と器官芽、肺と器官芽、横隔膜と器官芽、肝臓と器官芽、胆嚢と器官芽、膵臓と器官芽、腎臓と器官芽、副腎と器官芽、甲状腺と器官芽、副甲状腺と器官芽、脾臓と器官芽、膀胱と器官芽、精巣と器官芽、卵巣と器官芽、子宮と器官芽、骨と器官芽、軟骨と器官芽、腱と器官芽、毛包と器官芽、漿膜と器官芽、大網と器官芽、粘膜組織と器官芽、筋組織と器官芽及び靭帯と器官芽などの組み合わせを例示することができるが、これらに限定されるわけではない。
器官芽としては、肝芽、肺オルガノイド、気道上皮オルガノイド、腸オルガノイド、膵臓オルガノイド、腎臓オルガノイド、脳オルガノイド、気道オルガノイド、胃オルガノイド、甲状腺オルガノイド、胸腺オルガノイド、精巣オルガノイド、食道オルガノイド、皮膚オルガノイド、神経オルガノイド、卵管オルガノイド、卵巣オルガノイド、唾液腺オルガノイド、眼胞オルガノイド、眼杯オルガノイド、膀胱オルガノイド、前立腺オルガノイド、軟骨オルガノイド、心臓オルガノイド、骨組織オルガノイド、筋組織オルガノイド、がんオルガノイドなどを例示することができるが、これらに限定されるわけではない。

【0021】
本発明において、細胞塊と構造体は、集合、凝集、融合、吻合などのいかなる様式で連結されてもよく、構造体と細胞塊の連結は生体の構造及び/又は機能を模倣もしくは類似するための結合であればよい。

【0022】
構造体に連結した細胞塊は機能を発揮しているとよい。さらに、構造体と細胞塊が連結することで、細胞塊間の相互作用及び細胞塊と構造体との相互作用が高まり、細胞塊の機能が向上しうる。例えば、細胞塊が連結した構造体において、細胞塊は血管網を伴って構造体と融合することにより、細胞塊と構造体との相互作用が高まり、構造体に連結した細胞塊の機能が高まることが期待される。

【0023】
構造体と細胞塊を連結させるには、いかなる方法を用いてもよく、例えば、構造体上で細胞塊同士を近接させて配置し、培養することで連結することができる。構造体は、細胞接着表面を有することが好ましい。あるいはまた、細胞塊同士を融合させた後に構造体と連結させてもよい。培養期間は、1~30日であるとよく、1~10日が好ましい。構造体と細胞塊を連結させた後、適当な期間(例えば、1~30日、好ましくは、5~14日)培養することで構築物(構造体と細胞塊の連結体)を成熟させることができる。培養は、回分培養、半回分培養(流加培養)、連続培養(灌流培養)のいずれの方法でもよいが、灌流培養が好ましい。また、静置培養、通気培養、攪拌培養、振盪培養、回転培養のいずれであってもよい。

【0024】
細胞塊が連結した構造体をヒト又は非ヒト動物に移植することにより、例えば、移植された組織や臓器に血管網が構築され、血液灌流が開始し、高度に秩序だった組織構造を有する組織や臓器が創出されうる。移植の対象となる動物は、ヒトの他、実験動物、愛玩動物、使役動物、競走馬、闘犬などに利用される動物、具体的には、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、イヌ、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ニワトリ、サメ、エイ、ギンザメ、サケ、エビ、カニなどの非ヒト動物を挙げることができる。また、非ヒト動物は、免疫拒絶反応を回避するために、免疫不全動物であるとよい。細胞塊が連結した構造体の移植部位は、移植可能であればどの部位であってもよいが、血管、頭蓋内、腸間膜、肝臓、脾臓、腎臓、腎被膜下、門脈上などを例示することができる。細胞塊が連結した構造体を生体(ヒト、非ヒト動物など)に移植することにより、機能が喪失あるいは低下した組織や臓器を再生させることができ、また、非ヒト動物中でヒト組織や臓器を作製させれば、創薬スクリーニングに利用することができる。

【0025】
あるいはまた、構造体と細胞塊を連結した構築物をin vitroで培養して、機能をさらに向上させ、これを臓器類似体あるいは臓器として、ヒューマン・バイオロジー、再生医療、創薬スクリーニングなどに利用してもよい。

【0026】
本発明は、構造体と細胞塊を連結した構築物を非ヒト動物に移植することを含む、組織又は臓器の作製方法を提供する。

【0027】
また、本発明は、構造体と細胞塊を連結した構築物をヒト又は非ヒト動物に移植することを含む、組織又は臓器の再生又は機能回復方法を提供する。

【0028】
構造体と細胞塊を連結した構築物を非ヒト動物に移植し、生着させることにより、非ヒトキメラ動物を作製することができる。よって、本発明は、構造体と細胞塊を連結した構築物を非ヒト動物に移植することを含む、非ヒトキメラ動物の作製方法を提供する。構造体と細胞塊を連結した構築物を移植した非ヒト動物(例えば、マウス)は、細胞塊の由来生物種(例えば、ヒト)の生理機能を模倣しうる。

【0029】
さらに、本発明は、構造体と細胞塊を連結した構築物、構造体と細胞塊を連結した構築物から作製された組織及び臓器、並びに構造体と細胞塊を連結した構築物を移植した非ヒトキメラ動物からなる群より選択される少なくとも1つを用いて、薬剤を評価する方法を提供する。薬剤の評価としては、例えば、薬物代謝の評価(例えば、薬物代謝プロファイルの予測)、薬効評価(例えば、医薬品として有効な薬剤をスクリーニングすることなど)、毒性評価、薬物相互作用評価などを挙げることができる。

【0030】
薬物代謝の評価は、ヒト由来の細胞から作製された細胞塊を対象として、構造体と細胞塊を連結した構築物、構造体と細胞塊を連結した構築物から作製された組織及び臓器、並びに構造体と細胞塊を連結した構築物を移植した非ヒトキメラ動物において、医薬品の候補化合物を投与したのちの生物試料を採取・解析することにより、ヒト型の薬物代謝プロファイルを取得することができる。これにより従来の技術では達成が極めて難しかったヒトでの医薬品の分布・代謝・排泄過程を予測することが可能となり、安全で効果のある医薬品の開発を飛躍的に加速できるものと期待される。

【0031】
医薬品として有効な薬剤のスクリーニングは、ヒト由来の細胞から作製された細胞塊を対象として、構造体と細胞塊を連結した構築物、構造体と細胞塊を連結した構築物から作製された組織及び臓器、並びに構造体と細胞塊を連結した構築物を移植した非ヒトキメラ動物を用いて、新規の医薬品候補化合物を投与することにより解析することが可能となる。これにより、従来のin vitro試験では不十分であった、実際ヒトに投与した際の薬効の予測精度を大幅に改善できる可能性が期待される。

【0032】
毒性評価は、構造体と細胞塊を連結した構築物、構造体と細胞塊を連結した構築物から作製された組織及び臓器、並びに構造体と細胞塊を連結した構築物を移植した非ヒトキメラ動物を用いて、被験物質を投与したのちに、組織障害マーカーなどを測定することにより、障害予測の精度向上が可能となる。

【0033】
薬物相互作用評価は、構造体と細胞塊を連結した構築物、構造体と細胞塊を連結した構築物から作製された組織及び臓器、並びに構造体と細胞塊を連結した構築物を移植した非ヒトキメラ動物を用いて、複数の薬剤を投与したのちに、その後の各薬剤の分布・代謝・排泄過程などの薬物動態や毒性評価、薬効評価を行うことにより行うことができる。

【0034】
また、本発明は、構造体と細胞塊を連結した構築物を含む、再生医療用組成物を提供する。

【0035】
本発明の組成物を生体内に移植し、組織又は臓器を作製することができる。また、本発明の組成物を生体内に移植し、組織又は臓器の再生又は機能回復を行うことができる。

【0036】
本発明の組成物が生体に移植された後、構造体と細胞塊を連結した構築物は血管網を有する組織又は臓器に分化しうる。その血管網には血液灌流が生じうる。血管網に血液灌流が生じることにより、成体組織と同等若しくはそれに近い高度に秩序だった組織構造を有する組織・臓器を創出することが可能となると考えられる。

【0037】
本発明の組成物には、FGF2、HGF、VEGFなどの組織血管化促進剤、移植に伴う止血用ゼラチンスポンジ(商品名:スポンゼル、アステラス株式会社)、および、移植組織の固定に用いるボルヒール(帝人ファーマ株式会社)・ベリプラスト(CSLベーリング株式会社)・タココンブ(CSLベーリング株式会社)、コラーゲン、マトリゲルなどの組織接着剤などを添加してもよい。

【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
〔実施例1〕
実験方法
・ヒト誘導性多能性幹細胞(iPSC)の培養法
細胞培養ディッシュあるいは細胞培養プレートをiMatrix-511 (Nippi, 0.7~0.9 μg/cm2)で37℃、1時間コーティングし、PBSで洗浄した。凍結保存ヒトiPSC(TkDA3株又は1231A3株,それぞれ東京大学、京都大学iPS細胞研究所より提供)を37℃のお湯に2分間浸漬し、手で振盪しながら融解させた。細胞保存液の9倍量のAK02培地 (Ajinomoto)に細胞保存液を懸濁し、150-200 x g, 5分間の遠心操作を行った。細胞上清を除き、AK02培地にY-27632 (WAKO, 10 uM)を加えた培地に細胞を懸濁し、0.36~1.8 x 103 cells/cm2の濃度でヒトiPSCを播種した。培養1日目にAK02培地に交換し、以降1日おきに培地交換を行った。継代に関しては、直径10cmの細胞培養ディッシュで一週間培養したヒトiPSCをPBSで洗浄した後、Accutase (Innovative Cell Technology) 2 mlを加え37℃で5分から10分間処理し、細胞を剥離した。AK02培地2 mlを加えて、15 mlのチューブに細胞を移し、150-200 x g, 5 minの遠心操作を行った。細胞上清を除き、AK02培地にY-27632 (10 uM)を加えた培地に細胞を懸濁し、0.36~1.8 x 103 cells/cm2の濃度でヒトiPSCを播種した。

・iPSCからの肝前駆細胞への分化誘導法
細胞培養ディッシュあるいは細胞培養プレート(Thermo Fisher Scientific)をiMatrix-511 (Nippi, 0.4~0.6 μg/cm2)で37℃、1時間コーティングし、PBSで洗浄した。直径10cmの細胞培養ディッシュで一週間培養したヒトiPSCをPBS洗浄後にAccutase 1 mlを加え37℃で5分から10分間処理し、細胞を剥離した。1 mlのAK02培地を加えて、15 mlのチューブに細胞を移し、150-200 x g, 5分の遠心操作を行った。細胞上清を除き、RPMI培地 (WAKO)にペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco, 1%)、B27 (Gibco, 2%)、Wnt3a (R&D, 50 ng/ml)、Activin A (100 ng/ml)、Y-27632 (10 uM)を加えた培地に細胞を懸濁し、ラミニンコートしたディッシュに8.4 x 104 cells/cm2の密度で播種した。培養1日目と3日目に、RPMI培地にペニシリン/ストレプトマイシン(1%)、B27 (2%)、Wnt3a (50 ng/ml)、Activin A (100 ng/ml)、Sodium Butyrate (0.5 mM)を加えた培地に交換した。培養4日目にRPMI培地にペニシリン/ストレプトマイシン(1%)、B27 (2%)、Wnt3a (50 ng/ml)、Activin A (100 ng/ml) を加えた培地に交換した。培養6日目の細胞を、内胚葉細胞Definitive Endoderm (DE)とした。培養6日目と培養8日目に、RPMI培地にペニシリン/ストレプトマイシン(1%)B27 (2%)、basic FGF (10 ng/ml)を加えた培地に交換した。培養10日目の細胞を、肝前駆体細胞Hepatic Endoderm (HE)とした。

・ヒト間葉系幹細胞(MSC)の培養法
MSCGM培地(Lonza)に懸濁したMesenchymal Stem cells (以下MSCと記載, Lonza, 3-5 x 105 cells)を、細胞培養ディッシュ (直径10cm)に播種した。3日に1回培地交換を行った。7日後にPBSで洗浄後、2 mlのTrypsin/EDTA (Gibco)を加え37℃で5分処理し、細胞剥離を行った。MSCGM培地を2 ml加えて、15 mlのチューブに細胞を移し、150-200 x g, 5 minの遠心操作を行った。細胞上清を除き、HCM (EGF不含)培地 (Lonza)にFBS Gold (MP Biomedicals) 5%、HGF 10 ng/ml、Oncostatin M (R&D) 20 ng/ml、Dexamethazon 100 nMを添加した培地とEGM培地を1:1の割合で混合した培地(HCM/EGM混合培地)に細胞を懸濁し、肝芽の作製に供した。

・ヒト臍帯静脈由来血管内皮細胞(HUVEC)の培養法
EGM培地(Lonza)又はEGM-2培地(Lonza)に懸濁したKusabira Orange標識Human Umbilical Vein Endothelial Cells (HUVECと記載, Lonza, 3-5 x 105 cells)を、細胞培養ディッシュ (直径10cm)に播種した。3日に1回培地交換を行った。7日後にPBSで洗浄後、2 mlのTrypsin/EDTA (Gibco)を加え37℃で5分処理し、細胞剥離を行った。EGM培地又はEGM-2培地を2 ml加えて、15 mlのチューブに細胞を移し、150-200 x g, 5分の遠心操作を行った。細胞上清を除き、HCM/EGM混合培地に細胞を懸濁し、肝芽の作製に供した。

・肝芽作製法
iPSC肝芽の作製に関しては、マイクロパターンウェルプレートElplasia RB 500 400 NA (クラレ)24ウェルプレート1ウェル当たりヒトiPSC由来DE又はヒトiPSC由来DE又はHE 2.3 x 105 cellsとHUVEC 1.6 x 105 cellsとMSC 1.6 x 105 cellsをHCM/EGM混合培地に懸濁し播種した。

・肝芽-大血管/人工血管/胆管/腸管の融合体創出法
肝芽作製24時間後、マイクロパターンウェルプレートElplasia RB 500 400 NA (クラレ)より小型肝芽を回収した。12ウェルセルカルチャーインサート(Thermo Fisher Scientific)または6ウェルセルカルチャーインサート(Thermo Fisher Scientific)上に、大血管(マウス大動脈、ラット大腿動脈、ラット大腿静脈、ヒト臍帯動脈)、ブタ胆管、マウス胎仔腸管、または人工血管(Triplex, テルモ; PTFE多孔質チューブ, 中興化成工業)を設置し、回収した肝芽同士を近接させて配置した。あるいは、小型肝芽を融合させた後に大血管/胆管/腸管や人工血管と融合することも可能である。試料は蛍光顕微鏡BZ-X710(Keyence)、共焦点顕微鏡SP5又はSP8を用いて写真撮影を行った。人工血管に融合した肝芽は、融合後9日目に回収し、定量的RT-PCRに供して機能評価を行った。

・定量的RT-PCRを用いた大血管付与肝芽の機能評価
Elplasia RB 500 400 NA(クラレ)で作製した小型肝芽とCell culture insert(Corning)上で培養した融合肝芽を培養後10日目に回収し、PureLink RNA mini kit (Thermo Fisher Scientific)を用いてRNAを精製した。cDNA合成はiScript cDNA Synthesis Kit (Bio-Rad)を用いて行い、THUNDERBIRD Probe qPCR Mix(Takara)とLightCycler(登録商標) 480 (Roche Life Science)を用いて遺伝子の増幅・検出を行った。遺伝子発現の補正は、Eukaryotic 18S rRNA Endogenous Control (VICTM/MGB probe, primer limited)を使用した。その他遺伝子のプライマー情報を以下に示す。hAlb, probe#27, forward primer: aatgttgccaagctgctga(配列番号1); reverse primer: cttcccttcatcccgaagtt(配列番号2), hAFP, probe#61, forward primer: TCCTTGTAAGTGGCTTCTTGAAC(配列番号3); reverse primer: TGTACTGCAGAGATAAGTTTAGCTGAC(配列番号4), hCD31, probe#46, forward primer: cattgttcccggtttcca(配列番号5); reverse primer: cagagagaccggctgtgg(配列番号6).

・ラット大腿動脈へのラット大腿血管付与肝芽移植
免疫不全ラット(F344/NJcl-rnu/rnu)は、日本クレア株式会社より購入した。別のラットの大腿動脈を採取し、大血管付与肝芽を作製した。免疫不全ラットはイソフルラン吸入麻酔下、大腿動脈に大血管付与肝芽を端々吻合することにより移植した。移植後1週間ごとにラット頸動脈より血液を採取し、血中のヒトアルブミン濃度の測定を行った。移植3週間後に移植片を回収し、組織解析を行った。

・パラフィン切片作製法
回収された組織は、4%パラホルムアルデヒド/リン酸緩衝液(PBS)中で16時間固定を行った。固定組織をPBSで3回洗浄した後、70%エタノール、95%エタノール、100%エタノール(2回)にそれぞれ30分以上振盪しながら浸漬することにより組織の脱水を行う。その後、50%エタノール/キシレン溶液、100%キシレン溶液、100%パラフィン溶液(2回)中それぞれ65℃で30分以上振盪しながら浸漬した後、パラフィンに包埋した。包埋した組織サンプルは、ミクロトームで7~10 μmの厚さに薄切を行った。

・ヘマトキシリン・エオジン染色
パラフィン切片をキシレン、100%エタノール、95%エタノール、70%エタノール、ミリQ水と段階を経て脱パラフィン、親水化を行う。流水で洗浄した後、ヘマトキシリン溶液で3~5分間染色し、流水で洗浄した後、エオジン溶液で2~5分間染色を行う。流水で洗浄した後、アルコールによる脱水を行い、キシレンで透徹した後にサンプルに非水溶性封入剤をのせ、カバーガラスで覆い封入を行った。

・免疫組織化学的解析
パラフィン切片をキシレン、100%エタノール、95%エタノール、70%エタノール、ミリQ水と段階を経て脱パラフィン、親水化を行う。10 mMクエン酸緩衝液(pH 6.0)中、121℃、15分間の抗原賦活化処理を行った後、3% 過酸化水素水/メタノール液中10分間処理し、内在性のペルオキシダーゼを不活性化した。Blocking One溶液(Nacalai Tesque)でブロッキングを室温1時間行った後、希釈した1次抗体と室温1時間または4℃一晩反応させた。PBSで3回洗浄した後、HRP標識あるいは蛍光標識された2次抗体と室温30分以上反応させた。PBSで3回洗浄後、蛍光標識された2次抗体の場合は、DAPIにより核染色を行った後に封入し、顕微鏡観察を行った。HRP標識された2次抗体の場合はDAB Reagent (Vector)で2~10分間反応させ、発色を行った。精製水で洗浄した後、ヘマトキシリンで3分間染色し、10分間の流水で洗浄した後に0.1% Sodium Bicarbonateで5分間反応させ、アルコールによる脱水を行い、キシレンで透徹した後にサンプルに非水溶性封入剤をのせ、カバーガラスで覆い封入を行った。

・ELISA解析
ラットより採取した血液を4℃, 1,500 x gで20分間遠心を行った上清、または回収した培養液をELISA解析に供する。Human Albumin ELISA Quantitation Set (Bethyl Laboratories, Inc.)のプロトコールに従って解析を行った。

結果
結果を図1~4に示す。
・ヒトiPSC肝芽とマウス大血管の融合
マウス大血管は、生後8週のマウスより調製した。ヒトiPSC肝芽(以下、hiPSC肝芽)をマウス大血管に貼り付け、経時的に観察した(図1A)。その結果、融合15日後においてもマウス大血管周囲にhiPSC肝芽が融合している様子が観察された(図1A-D)。融合15日後には、hiPSC肝芽由来血管網構造の形成が認められた(図1B、1G)。大血管付与hiPSC肝芽はHNF4A(図1E)やAFP(図1F)などの肝分化マーカーの発現が認められ、ヒトCD31陽性の血管形成も認められた(図1G)。

・ヒトiPSC肝芽と血管/胆管/腸管の融合
ヒトiPSC肝芽はヒト臍帯動脈、ラット大腿動脈、ラット大腿静脈、ブタ胆管、マウス胎仔腸と融合可能であり、肝芽内に血管網が形成されることが示された(図2A-E)。ラット大腿静脈付与肝芽の組織解析により、肝芽内の細胞はヒト由来であることが示され、肝芽内の血管網は管状構造を形成していることが明らかとなった(図2F)。ラット大腿静脈付与肝芽は、大血管を付与していない肝芽と比較して分泌したヒトアルブミン値が2.36倍上昇していた(図2G, n = 4, p < 0.03, unpaired t-test)。

・ヒトiPSC肝芽と人工血管の融合
人工血管(Triplex, テルモ;PTFE多孔質チューブ, 中興工業)と肝芽をセルカルチャーインサート上に近接させて配置し、肝芽の融合を経時的に観察した(図3A、3B)。その結果、融合3日後において人工血管周囲における肝芽の融合が観察され、血管網構造の形成が認められた(図3C)。培養10日目の人工血管付与肝芽を回収して遺伝子発現解析を行ったところ、大血管を付与していない肝芽と比較して人工血管付与肝芽においてAFP、Alb、CD31の遺伝子発現上昇が認められた(図3D)。

・ラット大腿動脈付与肝芽のin vivo移植解析
培養9-11日目のラット大腿動脈付与肝芽を、免疫不全ラット(F344/NJcl-rnu/rnu)の大腿動脈に血管吻合により移植を行った(図4A)。血液灌流前の肝芽は白色を呈しているが、血液灌流後には肝芽内に血液が行き渡り、赤色を呈することが示された(図4A、4B)。移植3週間後にも組織の生着が認められた(図4C)。移植前のラット大腿動脈付与肝芽を組織学的解析に供した結果、動脈周囲に大量のヒト組織の存在が認められた(図4D)。移植後においても、動脈周囲に大量のヒト組織の存在が認められた(図4E)。ラット大腿動脈付与肝芽のin vivoにおける機能を測定するため、経時的に採血を行い、ラット血中におけるヒトアルブミン量を測定した(図4F)。その結果、移植後7日後、14日後、21日後共にヒトアルブミンが検出され、ラット大腿動脈付与肝芽が生体内で機能していることが示唆された。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、ヒューマン・バイオロジー、再生医療、薬剤評価などに利用できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3