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明細書 :新規微細藻類、及びその使用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和2年4月9日(2020.4.9)
発明の名称または考案の名称 新規微細藻類、及びその使用
国際特許分類 C12N   1/12        (2006.01)
C12N   1/13        (2006.01)
A23L  33/10        (2016.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C12N 1/12 ZNAC
C12N 1/12 A
C12N 1/13
A23L 33/10
C12N 15/09 Z
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 87
出願番号 特願2019-557254 (P2019-557254)
公序良俗違反の表示 1.TWEEN
国際出願番号 PCT/JP2018/043696
国際公開番号 WO2019/107385
国際出願日 平成30年11月28日(2018.11.28)
国際公開日 令和元年6月6日(2019.6.6)
優先権出願番号 2017228394
2017228396
2018101753
2018177416
優先日 平成29年11月28日(2017.11.28)
平成29年11月28日(2017.11.28)
平成30年5月28日(2018.5.28)
平成30年9月21日(2018.9.21)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
日本国(JP)
日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】宮城島 進也
【氏名】廣岡 俊亮
出願人 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
個別代理人の代理人 【識別番号】100149548、【弁理士】、【氏名又は名称】松沼 泰史
【識別番号】100163496、【弁理士】、【氏名又は名称】荒 則彦
【識別番号】100161207、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 和純
【識別番号】100147267、【弁理士】、【氏名又は名称】大槻 真紀子
審査請求
テーマコード 4B018
4B065
Fターム 4B018MD10
4B018MD19
4B018MD20
4B018MD23
4B018MD24
4B018MD25
4B018MD26
4B018MD47
4B018ME14
4B018MF07
4B065AA83X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
要約 イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類であって、2倍体の細胞形態と、1倍体の細胞形態と、を有する、藻類。イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類又はその抽出物を含む、栄養成分組成物。
特許請求の範囲 【請求項1】
イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類であって、2倍体の細胞形態と、1倍体の細胞形態と、を有する、藻類。
【請求項2】
前記1倍体の細胞形態が、pH7の条件下で、その細胞が破裂する、請求項1に記載の藻類。
【請求項3】
リブロース1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ大サブユニット遺伝子の塩基配列が、配列番号3又は4に記載の塩基配列と90%以上の同一性を有する、請求項1又は2に記載の藻類。
【請求項4】
シアニジウム・エスピー(Cyanidium sp.)YFU3株(FERM BP-22334)、シアニジウム・エスピー(Cyanidium sp.)HKN1株(FERM BP-22333)、及びこれらの変異株からなる群より選択される、請求項3に記載の藻類。
【請求項5】
形質転換体である、請求項1~4のいずれか一項に記載の藻類。
【請求項6】
前記形質転換体が、セルフクローニングにより作製されたものである、請求項5に記載の藻類。
【請求項7】
前記1倍体の細胞形態である、請求項1~6のいずれか一項に記載の藻類。
【請求項8】
(a)請求項1~6のいずれか一項に記載の藻類であって、2倍体の細胞形態の細胞を培養する工程と、
(b)前記培養中に生じた1倍体の細胞形態の細胞を単離する工程と、
を含む、1倍体の藻類の製造方法。
【請求項9】
前記工程(a)の培養を、温度30~50℃、pH1.0~5.0、及びCO濃度1~3%の条件下で行う、請求項8に記載の1倍体の藻類の製造方法。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項に記載の藻類を含む藻類培養物であって、
前記藻類培養物に含まれる全藻類の細胞数における、前記1倍体の細胞形態の藻類の細胞数の割合が、70~100%である、藻類培養物。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか一項に記載の藻類を、乾燥膨潤処理した、低温処理物。
【請求項12】
イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類又はその抽出物を含む、栄養成分組成物。
【請求項13】
前記藻類が、1倍体の藻類である、請求項12に記載の栄養成分組成物。
【請求項14】
前記藻類が、pH7の条件下で、その細胞が破裂する藻類である、請求項12又は13に記載の栄養成分組成物。
【請求項15】
前記藻類が、シアニディオシゾン属(Cyanidioschyzon)に属する藻類である、請求項12~14のいずれか一項に記載の栄養成分組成物。
【請求項16】
前記藻類が、請求項1~7のいずれか一項に記載の藻類である、請求項12~14のいずれか一項に記載の栄養成分組成物。
【請求項17】
前記藻類が、少なくとも1種の栄養成分の細胞内含有量が高められた形質転換体である、請求項12~16のいずれか一項に記載の栄養成分組成物。
【請求項18】
前記形質転換体が、セルフクローニングにより製造されたものである、請求項17に記載の栄養成分組成物。
【請求項19】
アミノ酸類、ビタミン類、タンパク質、脂質、及び食物繊維からなる群より選択される少なくとも1種の栄養成分を含む、請求項12~18のいずれか一項に記載の栄養成分組成物。
【請求項20】
請求項12~19のいずれか一項に記載の栄養成分組成物を含む、食品。
【請求項21】
機能性食品、又は栄養補助食品である、請求項20に記載の食品。
【請求項22】
請求項12~19のいずれか一項に記載の栄養成分組成物を含む、飼料又はペットフード。
【請求項23】
請求項12~19のいずれか一項に記載の栄養成分組成物を含む、化粧品。
【請求項24】
(a)イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類の細胞を破壊して細胞破壊物を得る工程と、
(b)前記細胞破壊物から少なくとも1種の栄養成分を分離する工程と、
を含む栄養成分の製造方法。
【請求項25】
前記栄養成分が、アミノ酸類、ビタミン類、タンパク質、脂質、及び食物繊維からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項24に記載の栄養成分の製造方法。
【請求項26】
前記アミノ酸類が、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、シスチン、フェニルアラニン、チロシン、スレオニン、トリプトファン、バリン、アルギニン、ヒスチジン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリン、及びγ-アミノ酪酸からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項25に記載の栄養成分の製造方法。
【請求項27】
前記ビタミン類が、ビタミンA、β-カロテン、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンK、ナイアシン、イノシトール、葉酸、及びビオチンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項25に記載の栄養成分の製造方法。
【請求項28】
前記藻類が、1倍体の藻類である、請求項24~27のいずれか一項に記載の栄養成分の製造方法。
【請求項29】
前記藻類が、pH7の条件下で、その細胞が破裂する藻類である、請求項24~28のいずれか一項に記載の栄養成分の製造方法。
【請求項30】
前記藻類が、シアニディオシゾン属(Cyanidioschyzon)に属する藻類である、請求項24~29のいずれか一項に記載の栄養成分の製造方法。
【請求項31】
前記藻類が、請求項1~7のいずれか一項に記載の藻類である、請求項24~29のいずれか一項に記載の栄養成分の製造方法。
【請求項32】
前記藻類が、少なくとも1種の栄養成分の細胞内含有量が高められた形質転換体である、請求項24~30のいずれか一項に記載の栄養成分の製造方法。
【請求項33】
前記形質転換体が、セルフクローニングにより製造されたものである、請求項32に記載の栄養成分の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規微細藻類、及びその使用に関する。より具体的には、新規微細藻類、及び1倍体である前記微細藻類の製造方法等に関する。また、本発明は、栄養成分組成物、及び栄養成分の製造方法に関する。
本願は、2017年11月28日に、日本に出願された特願2017-228394号及び特願2017-228396号、2018年5月28日に、日本に出願された特願2018-101753号、並びに2018年9月21日に、日本に出願された特願2018-177416号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
微細藻類は、陸上植物と比較して、高い二酸化炭素固定能力を有すること、及び農産物と生育場所が競合しないことから、いくつかの種は、大量培養されて、飼料、機能性食品、化粧品材料等として産業的に利用されている。
微細藻類を産業利用する場合には、コスト面等から、屋外で大量培養可能な微細藻類であることが望ましい。しかしながら、屋外で大量培養可能な微細藻類であるためには、環境変動(光、温度等)に耐性を有すること、他の生物が生存できないような条件で培養できること、高密度まで増殖可能であること、等の条件が求められる。そのため、現在までに、産業的に実用化されているのは、クロレラ(Chlorella)、ユーグレナ(Euglena)、ドナリエラ(Dunaliella)、スピルリナ(Spirulina)等の数種に限られている。
上記の藻類種は、高塩濃度、高pH、低pH等の他の生物が生育困難な環境で培養可能である点に特徴がある。これらの藻類種は、アミノ酸類、ビタミン類を豊富に含み、機能性食品やサプリメントの原料として利用されている。
【0003】
一方、単細胞原始紅藻であるイデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類は、硫酸酸性温泉において優先増殖する。イデユコゴメ綱には、シアニディオシゾン(Cyanidioschyzon)属、シアニジウム(Cyanidium)属、及びガルデリア(Galdieria)属があるが(非特許文献1)、1倍体のものとしてはシアニディオシゾン・メロラエ(Cyanidioschyzon merolae)のみが知られている(非特許文献2)。シアニディオシゾン・メロラエは、強固な細胞壁をもたない(非特許文献1、2)。
シアニディオシゾン・メロラエは、極めて単純な細胞小器官セットにより構成されており、ゲノム配列の解読が完了している。そのため、光合成生物の基礎研究のためのモデル生物として利用されており、遺伝子改変技術の開発も進められている(非特許文献3、4)。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Pinto, G. (2007) Cyanidiophyceae: looking back - looking forward, In: J. Seckbach (ed.) Algae and Cyanobacteria in Extreme Environments. Springer, Dordrecht, The Netherlands, pp. 389-397.
【非特許文献2】Misumi O et al. (2005) Cyanidioschyzon merolae Genome. A Tool for Facilitating Comparable Studies on Organelle Biogenesis in Photosynthetic Eukaryotes. Plant Physiol. 137(2): 567-585.
【非特許文献3】Fujiwara T et al.(2013) Gene targeting in the red alga Cyanidioschyzon merolae: single- and multi-copy insertion using authentic and chimeric selection markers. PLOS ONE. Sep 5;8(9):e73608.
【非特許文献4】Fujiwara T et al.(2015) A nitrogen source-dependent inducible and repressible gene expression system in the red alga Cyanidioschyzon merolae. Front Plant Sci. Aug 26;6:657.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、現在までに、産業的に実用化されている微細藻類は、数種の藻類種に限定されている。
【0006】
そこで、本発明は、産業利用が可能な新規微細藻類と、その使用方法とを提供することを課題とする。また、本発明は、栄養成分を豊富に含む微細藻類を用いた栄養成分組成物剤、及び当該微細藻類を用いた栄養成分の製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、2倍体の藻類の細胞から1倍体の細胞を作製する方法、当該方法により作製された1倍体の細胞、及び当該1倍体の細胞を培養して得られる1倍体の藻類の細胞群を提供することを課題とする。
また、1倍体の藻類の細胞からから2倍体の細胞を作製する方法、当該方法により作製された2倍体の細胞、及び当該2倍体の細胞を培養して得られる2倍体の藻類の細胞群を提供することを課題とする。
また、本発明は、1倍体の藻類の細胞を用いて、セルフクローニング又は多重セルフクローニングにより形質転換された藻類細胞を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、イデユコゴメ綱に属する藻類の中には、1倍体の細胞形態を有する世代と、2倍体の細胞形態を有する世代のあるものが存在すること、さらに、イデユコゴメ綱に属する藻類において、強固な細胞壁を有するものは2倍体の細胞であること、さらに、強固な細胞壁を有する2倍体の細胞から強固な細胞壁を有しない細胞を誘導する方法を見出した。さらに、前記方法で得られた強固な細胞壁を有しない細胞が1倍体の細胞形態であることを見出した。さらに、イデユコゴメ綱に属する藻類が、アミノ酸類及びビタミン類等の栄養成分を豊富に含んでいることを見出した。これらの知見に基づき、本発明者らは、以下の発明を完成した。
【0008】
本発明は、以下の態様を含む。
(1)イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類であって、2倍体の細胞形態と、1倍体の細胞形態と、を有する、藻類。
(1-2)イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類であって、2倍体の細胞形態の細胞群からなる、(1)に記載の藻類の細胞群。
(1-3)イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類であって、1倍体の細胞形態の細胞群からなる、(1)に記載の藻類の細胞群。
(1-4)イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類であって、2倍体の細胞形態の細胞群と、1倍体の細胞形態の細胞群とが、混在している、(1)に記載の藻類の細胞群。
(2)前記1倍体の細胞形態が、pH7の条件下で、その細胞が破裂する、(1)に記載の藻類。
(3)リブロース1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ大サブユニット遺伝子の塩基配列が、配列番号1又は2に記載の塩基配列と90%以上の同一性を有する、(1)又は(2)に記載の藻類。
(4)シアニジウム・エスピー(Cyanidium sp.)YFU3株(FERM BP-22334)、シアニジウム・エスピー(Cyanidium sp.)HKN1株(FERM BP-22333)、及びこれらの変異株からなる群より選択される、(3)に記載の藻類。
(5)形質転換体である、(1)~(4)のいずれか一項に記載の藻類。
(6)前記形質転換体が、セルフクローニングにより作製されたものである、(5)に記載の藻類。
(7)前記1倍体の細胞形態である、(1)~(6)のいずれか一項に記載の藻類。
(8)(a)(1)~(6)のいずれか一項に記載の藻類であって、2倍体の細胞形態の細胞(藻類)を培養する工程と、(b)前記培養中に生じた1倍体の細胞形態の細胞(藻類)を単離する工程と、を含む、1倍体の藻類の製造方法。
(9)前記工程(a)の培養を、温度30~50℃、pH1.0~5.0、及びCO濃度1~3%の条件下で行う、請求項8に記載の1倍体の藻類の製造方法。
(10)(1)~(7)のいずれか一項に記載の藻類を含む藻類培養物であって、前記藻類培養物に含まれる全藻類の細胞数における、前記1倍体の細胞形態の藻類の細胞数の割合が、70~100%である、藻類培養物。
(11)(1)~(7)のいずれか一項に記載の藻類を、乾燥膨潤処理した、乾燥膨潤処理物。
【0009】
また、本発明は、以下の態様も含む。
(12)(a)(1)~(7)のいずれか一項に記載の藻類の細胞を破壊して細胞破壊物を得る工程と、(b)前記細胞破壊物から栄養成分を分離する工程と、を含む栄養成分の製造方法。
(13)前記栄養成分が、アミノ酸類、ビタミン類、タンパク質、脂質、及び食物繊維からなる群より選択される少なくとも1種である、(12)に記載の栄養成分の製造方法。
(14)前記アミノ酸類が、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、シスチン、フェニルアラニン、チロシン、スレオニン、トリプトファン、バリン、アルギニン、ヒスチジン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリン、及びγ-アミノ酪酸からなる群より選択される少なくとも1種である、(13)に記載の栄養成分の製造方法。
(15)前記ビタミン類が、ビタミンA、β-カロテン、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK、及びビタミンKからなる群より選択される少なくとも1種である、(13)に記載の栄養成分の製造方法。
(16)前記工程(a)における前記細胞の破壊を、中和処理、低張処理、及び凍結融解処理からなる群より選択される少なくとも1種の処理により行う、(12)~(15)のいずれか一項に記載の栄養成分の製造方法。
(17)前記工程(a)の前に、(1)~(7)のいずれか一項に記載の藻類を、0~5℃の温度で低温処理する工程、を含む、(12)~(16)のいずれか一項に記載の栄養成分の製造方法。
(18)(1)~(7)のいずれか一項に記載の藻類又はその抽出物を含む、栄養成分組成物。
(19)(18)に記載の栄養成分組成物を含む、食品。
(20)機能性食品、又は栄養補助食品である、(19)に記載の食品。
(21)(18)に記載の栄養成分組成物を含む、飼料又はペットフード。
(22)(18)に記載の栄養成分組成物を含む、化粧品。
(23)(1)~(7)のいずれか一項に記載の藻類又はその抽出物を含む、栄養剤。
(24)(23)に記載の栄養剤を含む、食品。
(25)機能性食品、又は栄養剤である、(24)に記載の食品。
(26)(23)に記載の栄養剤を含む、飼料又はペットフード。
(27)(23)に記載の栄養剤を含む、化粧品。
(28)(23)に記載の栄養剤を含む、栄養成分補給用組成物。
(29)食品である、(28)に記載の栄養成分補給用組成物。
(30)機能性食品、又は栄養補助食品である、(29)に記載の栄養成分補給用組成物。
(31)飼料又はペットフードである、(28)に記載の栄養成分補給用組成物。
(32)化粧品である、(28)に記載の栄養成分補給用組成物。
(33)(10)に記載の藻類培養物又はその抽出物を含む、栄養成分組成物。
(34)(33)に記載の栄養成分組成物を含む、食品。
(35)機能性食品、又は栄養補助食品である、(34)に記載の食品。
(36)(33)に記載の栄養成分組成物を含む、飼料又はペットフード。
(37)(33)に記載の栄養成分組成物を含む、化粧品。
(38)(10)に記載の藻類培養物又はその抽出物を含む、栄養剤。
(39)(38)に記載の栄養剤を含む、食品。
(40)機能性食品、又は栄養剤である、(39)に記載の食品。
(41)(38)に記載の栄養剤を含む、飼料又はペットフード。
(42)(38)に記載の栄養剤を含む、化粧品。
(43)(38)に記載の栄養剤を含む、栄養成分補給用組成物。
(44)食品である、(43)に記載の栄養成分補給用組成物。
(45)機能性食品、又は栄養補助食品である、(44)に記載の栄養成分補給用組成物。
(46)飼料又はペットフードである、(43)に記載の栄養成分補給用組成物。
(47)化粧品である、(43)に記載の栄養成分補給用組成物。
(48)(a)(10)に記載の藻類培養物から、藻類を回収する工程と、(b)前記藻類の細胞を破壊して細胞破壊物を得る工程と、(c)前記細胞破壊物から、少なくとも1種の栄養成分を分離する工程と、を含む栄養成分の製造方法。
(49)前記栄養成分が、アミノ酸類、ビタミン類、タンパク質、脂質、及び食物繊維からなる群より選択される少なくとも1種である、(48)に記載の栄養成分の製造方法。
(50)前記アミノ酸類が、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、シスチン、フェニルアラニン、チロシン、スレオニン、トリプトファン、バリン、アルギニン、ヒスチジン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリン、及びγ-アミノ酪酸からなる群より選択される少なくとも1種である、(49)に記載の栄養成分の製造方法。
(51)前記ビタミン類が、ビタミンA、β-カロテン、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK、及びビタミンKからなる群より選択される少なくとも1種である、(49)に記載の栄養成分の製造方法。
(52)前記工程(a)における前記細胞の破壊を、中和処理、低張処理、凍結融解処理、及び乾燥膨潤処理からなる群より選択される少なくとも1種の処理により行う、(48)~(51)のいずれか一項に記載の栄養成分の製造方法。
【0010】
また、本発明は、以下の態様も含む。
(53)イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類又はその抽出物を含む、栄養成分組成物。
(54)前記藻類が、1倍体の藻類である、(53)に記載の栄養成分組成物。
(55)前記藻類が、pH7の条件下で、その細胞が破裂する藻類である、(53)又は(54)に記載の栄養成分組成物。
(56)前記藻類が、シアニディオシゾン属(Cyanidioschyzon)に属する藻類である、(53)~(55)のいずれか一項に記載の栄養成分組成物。
(57)前記藻類が、少なくとも1種の栄養成分の細胞内含有量が高められた形質転換体である、(53)~(56)のいずれか一項に記載の栄養成分組成物。
(58)前記形質転換体が、セルフクローニングにより製造されたものである、(57)に記載の栄養成分組成物。
(59)アミノ酸類、ビタミン類、タンパク質、脂質、及び食物繊維からなる群より選択される少なくとも1種の栄養成分を含む、(53)~(58)のいずれか一項に記載の栄養成分組成物。
(60)(53)~(59)のいずれか一項に記載の栄養成分組成物を含む、食品。
(61)機能性食品、又は栄養補助食品である、(60)に記載の食品。
(62)(53)~(59)のいずれか一項に記載の栄養成分組成物を含む、飼料又はペットフード。
(63)(53)~(59)のいずれか一項に記載の栄養成分組成物を含む、化粧品。
(64)(a)イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類の細胞を破壊して細胞破壊物を得る工程と、(b)前記細胞破壊物から、少なくとも1種の栄養成分を分離する工程と、を含む栄養成分の製造方法。
(65)前記栄養成分が、アミノ酸類、ビタミン類、タンパク質、脂質、及び食物繊維からなる群より選択される少なくとも1種である、(64)に記載の栄養成分の製造方法。
(66)前記アミノ酸類が、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、シスチン、フェニルアラニン、チロシン、スレオニン、トリプトファン、バリン、アルギニン、ヒスチジン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリン、及びγ-アミノ酪酸からなる群より選択される少なくとも1種である、(65)に記載の栄養成分の製造方法。
(67)前記ビタミン類が、ビタミンA、β-カロテン、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンK、ナイアシン、イノシトール、葉酸、及びビオチンからなる群より選択される少なくとも1種である、(65)に記載の栄養成分の製造方法。
(68)前記藻類が、1倍体の藻類である、(64)~(67)のいずれか一項に記載の栄養成分の製造方法。
(69)前記藻類が、pH7の条件下で、その細胞が破裂する藻類である、(64)~(68)のいずれか一項に記載の栄養成分の製造方法。
(70)前記藻類が、シアニディオシゾン属(Cyanidioschyzon)に属する藻類である、(64)~(69)のいずれか一項に記載の栄養成分の製造方法。
(80)前記藻類が、少なくとも1種の栄養成分の細胞内含有量が高められた形質転換体である、(64)~(70)のいずれか一項に記載の栄養成分の製造方法。
(81)前記形質転換体が、セルフクローニングにより製造されたものである、(80)に記載の栄養成分の製造方法。
(82)前記工程(a)における前記細胞の破壊を、中和処理、低張処理、凍結融解処理、及び乾燥膨潤処理からなる群より選択される少なくとも1種の処理により行う、(64)~(81)のいずれか一項に記載の栄養成分の製造方法。
【0011】
また、本発明は、以下の態様も含む。
(83)イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類又はその抽出物を含む、栄養剤。
(84)前記藻類が、1倍体の藻類である、(83)に記載の栄養剤。
(85)前記藻類が、pH7の条件下で、その細胞が破裂する藻類である、(83)又は(84)に記載の栄養剤。
(86)前記藻類が、シアニディオシゾン属(Cyanidioschyzon)に属する藻類である、(83)~(85)のいずれか一項に記載の栄養剤。
(87)前記藻類が、少なくとも1種の栄養成分の細胞内含有量が高められた形質転換体である、(83)~(86)のいずれか一項に記載の栄養剤。
(88)前記形質転換体が、セルフクローニングにより製造されたものである、(87)に記載の栄養剤。
(89)アミノ酸類、ビタミン類、タンパク質、脂質、及び食物繊維からなる群より選択される少なくとも1種の栄養成分を補給するためのものである、(83)~(88)のいずれか一項に記載の栄養剤。
(90)(83)~(89)のいずれか一項に記載の栄養剤を含む、食品。
(91)機能性食品、又は栄養補助食品である、(90)に記載の食品。
(92)(83)~(89)のいずれか一項に記載の栄養剤を含む、飼料又はペットフード。
(93)(83)~(89)のいずれか一項に記載の栄養剤を含む、化粧品。
(94)(83)~(89)のいずれか一項に記載の栄養剤を含む、栄養成分補給用組成物。
(95)食品である、(94)に記載の栄養成分補給用組成物。
(96)機能性食品、又は栄養補助食品である、(95)に記載の栄養成分補給用組成物。
(97)飼料又はペットフードである、(94)に記載の栄養成分補給用組成物。
(98)化粧品である、(94)に記載の栄養成分補給用組成物。
(99)アミノ酸類、ビタミン類、タンパク質、脂質、及び食物繊維からなる群より選択される少なくとも1種の栄養成分を補給するためのものである、(94)~(98)のいずれか一項に記載の栄養成分補給用組成物。
【0012】
また、本発明は、以下の態様も含む。
(100)(a)(1)~(6)のいずれか一項に記載の藻類の、1倍体の細胞形態である細胞を2種類以上混合し、培養する工程と、(b)前記培養中に生じた2倍体の細胞形態の細胞を単離する工程と、を含む、2倍体の藻類の製造方法。
(101)前記藻類が、シアニジウム・エスピー YFU3株(FERM BP-22334)、シアニジウム・エスピー HKN1株(FERM BP-22333)、及びシアニディオシゾン・メロラエ、並びにこれらの変異株からなる群より選択される藻類である、(100)に記載の2倍体の藻類の製造方法。
(102)シアニジウム・エスピー YFU3株(FERM BP-22334)又はその変異株の2倍体の細胞形態の細胞。
(103)シアニジウム・エスピー HKN1株(FERM BP-22333)又はその変異株の2倍体の細胞形態の細胞。
(104)シアニディオシゾン・メロラエの2倍体の細胞形態の細胞。
(105)前記藻類が、ガルデリア属に属する藻類及びシアニジウム属に属する藻類からなる群より選択される藻類である、(8)に記載の1倍体の藻類の製造方法。
(106)ガルデリア(Galdieria)属に属する藻類の1倍体の細胞形態の細胞。
(107)前記ガルデリア属に属する藻類が、Galdieria sulphuraria又はGaldieria partitaである、(106)に記載の1倍体の細胞形態の細胞。
(108)シアニジウム属に属する藻類の1倍体の細胞形態の細胞。
(109)前記シアニジウム属に属する藻類が、シアニジウム・エスピー YFU3株(FERM BP-22334)又はシアニジウム・エスピー HKN1株(FERM BP-22333)である、(108)に記載の1倍体の細胞形態の細胞。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、産業利用が可能な新規微細藻類と、その使用方法とが提供される。また、本発明によれば、栄養成分を豊富に含む微細藻類を用いた栄養成分組成物、及び当該微細藻類を用いた栄養成分の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、2倍体の藻類の細胞から1倍体の細胞を作製する方法、当該方法により作製された1倍体の細胞、及び当該1倍体の細胞を培養して得られる1倍体の藻類の細胞群が提供される。
また、本発明によれば、1倍体の藻類の細胞からから2倍体の細胞を作製する方法、当該方法により作製された2倍体の細胞、及び当該2倍体の細胞を培養して得られる2倍体の藻類の細胞群が提供される。
また、本発明は、1倍体の藻類の細胞を用いて、セルフクローニング又は多重セルフクローニングにより形質転換された藻類細胞が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】実施例2で用いた、形質転換用断片のコンストラクト(EGFP/URACm-Cm断片)を示す。
【図1B】実施例2で用いた、形質転換用断片のコンストラクト(GAD/URACm-Cm断片)を示す。
【図1C】実施例2で用いた、形質転換用断片のコンストラクト(GAD/URACm-Gs断片)を示す。
【図2】実施例2で作製した形質転換株のイムノブロッティングの結果を示す。右図は、SDS-PAGE後のゲルを染色したものである。左図は、抗HA抗体を用いたイムノブロッティングの結果である。
【図3】実施例2で作製した、GAD/URACm-Cm断片形質転換株と、野生株(WT)とを比較した、イムノブロッティングの結果を示す。
【図4】実施例2で作製した、GAD/URACm-Gs断片形質転換株において、グルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子のコピー数を確認した結果を示す。
【図5】シアニディオシゾン・メロラエ 10D及びシアニディウム・カルダリウムRK-1の乾燥膨潤処理を行い、膨潤処理後の細胞懸濁液を遠心分離して得た遠心上清及び遠心沈殿についてSDS-ポリアクリルアミド電気泳動を行った結果を示す。
【図6A】日本国神奈川県足柄下郡箱根町の温泉から単離された微細藻類(シアニジウム・エスピーHKN1株)の写真を示す。シアニジウム・エスピーHKN1株を、MA培地で培養し、静止期となった時期の培養液の写真である。矢印は、静止期に出現したシアニディオシゾン・メロラエ様細胞を示す。
【図6B】日本国神奈川県足柄下郡箱根町の温泉から単離された微細藻類(シアニジウム・エスピーHKN1株)の写真を示す。図6Aの静止期の培養液から単離されたシアニディオシゾン・メロラエ様細胞を示す。
【図7】シアニジウム・エスピーHKN1株、及びシアニジウム・エスピーHKN1株の静止期の培養液から単離されたシアニディオシゾン・メロラエ様細胞の、ゲノムの一領域の配列解析結果を示す。シアニディオシゾン・メロラエ様細胞は、シアニジウム・エスピーHKN1株(2倍体)が減数分裂して生じた1倍体(HKN1株(1倍体))であることが確認された。
【図8】イデユコゴメ綱に属する藻類の顕微鏡写真である。ガルデリア・スルフラリア(Galdieria sulphuraria) 074の顕微鏡写真、(B)はシアニジウム・カルダリウム(Cyanidium caldarium) RK-1、(C)はシアニディオシゾン・メロラエ(Cyanidioschyzon merolae) 10D、(D)はYFU3株(1倍体)、(E)はHKN1株(1倍体)の顕微鏡写真である。スケールバーは5μmを表す。
【図9】YFU3株(1倍体)、HKN1株(1倍体)及びシアニディオシゾン・メロラエにおいて、リボソームDNA ITS1のサイズを比較したアガロース電気泳動の結果を示す。
【図10】葉緑体リブロース1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ大サブユニット遺伝子に基づくイデユコゴメ綱に属する藻類の分子系統樹を示す。各枝の近傍に最尤法によるローカルブートストラップ値(50以上のみ記載、左)及びベイズ法による事後確率(0.95以上のみ記載、右)を示す。既知のシアニディオシゾン・メロラエを点線で囲み、YFU3株及びHKN1株を実線で囲んだ。
【図11】実施例6において作製した、YFU3株(1倍体)及びシアニディオシゾン・メロラエ 10Dのクロラムフェニコール耐性形質転換株の、クロラムフェニコール耐性を示す。
【図12】実施例6において作製した、YFU3株(1倍体)及びシアニディオシゾン・メロラエ 10Dのクロラムフェニコール耐性形質転換株において、ゲノムへのCAT遺伝子の挿入をPCRで確認した結果を示す。
【図13】実施例7で用いた、形質転換用CATベクターのコンストラクト(上図:PCR product)と、HKN1株(1倍体)のゲノムへの挿入位置(下図:Genome)を示す。下図(Genome)中、矢印は、クロラムフェニコール耐性形質転換株のゲノムにおける、mVenus-CAT遺伝子の挿入の確認に用いたプライマーの位置を示す。
【図14】実施例7で作製したクロラムフェニコール形質転換株のゲノムにおける、mVenus-CAT遺伝子の挿入を、PCR及びアガロースゲル電気泳動で確認した結果を示す。
【図15】実施例7で作製したクロラムフェニコール形質転換株の蛍光顕微鏡写真を示す。左図(mVenus)はmVenusの蛍光を検出した蛍光顕微鏡写真であり、中図(Chl)は葉緑体の自家蛍光を検出した蛍光顕微鏡写真であり、右図(merged)は前記2つの蛍光顕微鏡写真をマージしたものである。
【図16】強固な細胞壁を有さない藻類と、細胞壁を有する藻類において、乾燥膨潤処理を行い、膨潤処理後の細胞懸濁液を遠心分離して得た遠心上清及び遠心沈殿についてSDS-ポリアクリルアミド電気泳動を行った結果を示す。
【図17A】HKN1株(1倍体)どうしの掛け合わせにより取得した、強固な細胞壁を有する2倍体様の細胞の顕微鏡写真である。
【図17B】強固な細胞壁を有する2倍体様の細胞、及びHKN1株(1倍体)のDAPI染色の結果を示す。
【図18A】Galdieria sulphuraria SAG108.79の通常の細胞形態(2倍体)(左図)、及び強固な細胞壁を有さない細胞形態(右図)の顕微鏡写真である。
【図18B】Galdieria partita NBRC102759の通常の細胞形態(2倍体)(左図)、及び強固な細胞壁を有さない細胞形態(右図)の顕微鏡写真である。
【図19】Galdieria sulphuraria SAG108.79の強固な細胞壁を有さない細胞形態の、ゲノムの一領域の配列解析結果を示す。2N_allele1(配列番号61)及び2N_allele2(配列番号62)は、それぞれ、Galdieria sulphuraria SAG108.79の通常の細胞形態(2倍体)の各アレルの配列を示す。N_clone1、N_clone2、及びN_clone3は、それぞれ、強固な細胞壁を有さない細胞形態の3つの株で確認されたアレルの配列を示す。
【図20】Galdieria sulphuraria SAG108.79及びGaldieria partita NBRC102759の2倍体の細胞形態、並びに1倍体の細胞形態おいて、乾燥膨潤処理を行い、膨潤処理後の細胞懸濁液を遠心分離して得た遠心上清及び遠心沈殿についてSDS-ポリアクリルアミド電気泳動を行った結果を示す。
【図21】実施例12で用いた、形質転換用断片のコンストラクト(VE/URACm-Cm断片)を示す。
【図22】実施例12で作製した形質転換株のイムノブロッティングの結果を示す。左図(TC-HA)は、抗HA抗体を用いてイムノブロッティングを行った結果を示し、右図(HPT-FLAG)は、抗FLAG抗体を用いてイムノブロッティングを行った結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類]
後述する実施例で示されるように、イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類は、アミノ酸類、ビタミン類、タンパク質、脂質、及び食物繊維等の栄養成分を豊富に含むことが見出された。そのため、本発明は、イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類を用いた、栄養成分組成物、栄養剤、食品、飼料又はペットフード、化粧品等を提供する。また、イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類を用いた、栄養成分の製造方法を提供する。

【0016】
イデユコゴメ綱は、分類学上、紅色植物門(Rhodophyta)、イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に分類される。イデユコゴメ綱には、現在、シアニディオシゾン(Cyanidioschyzon)属、シアニジウム(Cyanidium)属、及びガルデリア(Galdieria)属の3属が分類されている。本発明の実施形態にかかる栄養成分組成物等では、これら のいずれの属に属する藻類を用いてもよい。
ある藻類が、イデユコゴメ綱に属するか否かの判定は、例えば、18S rRNA遺伝子又は葉緑体rbcL遺伝子の塩基配列を用いた系統解析により行うことができる。系統解析は、公知の方法で行えばよい。
本明細書において「1倍体の細胞形態」とは、観察対象の細胞の遺伝情報が1セットであること、「2倍体の細胞形態」とは、観察対象の細胞の遺伝情報が2セットであることをいう。細胞形態が1倍体であるか2倍体であるかという判定は、細胞のDNA含有量の測定により行うこともできるが、後述する次世代シーケンサーなどにより行うことも出来る。
本明細書において「2倍体の細胞形態と、1倍体の細胞形態と、を有する」とは、イデユコゴメ綱に属する藻類において、天然から採取される細胞が1倍体の細胞形態である場合と、2倍体の細胞形態である場合があること、および、本発明の方法により作出されたこれまでに知られていなかったイデユコゴメ綱に属する藻類において、1倍体の細胞形態である場合と、2倍体の細胞形態ある場合があることをいう。
本明細書において「2倍体の細胞形態の細胞群」及び「1倍体の細胞形態の細胞群」は、クローンの細胞群であってもよく、クローンでない細胞群であってもよい。

【0017】
イデユコゴメ綱に属する藻類の中でも、シアニディオシゾン・メロラエは、強固な細胞壁を有さないことが知られていた。シアニディオシゾン・メロラエ以外のイデユコゴメ綱に属する藻類の多くは、強固な細胞壁を有する細胞形態の藻類細胞として見出されていた。後述する実施例で示すように、これらの強固な細胞壁を有する細胞は、2倍体であることが確認された。しかしながら、後述する本発明の一実施形態にかかる方法に従えば1倍体の細胞形態の藻類細胞を作出することができ、当該作出された1倍体の藻類細胞は強固な細胞壁を有さないことが多い。そのような強固な細胞壁を有さない1倍体の細胞形態の藻類細胞は、中和処理、低張処理、凍結融解処理などの比較的温和な処理により、細胞を破壊することができる。なお、本明細書において、「強固な細胞壁を有さない」とは、下記(A)~(C)の細胞破裂処理のいずれかで細胞破裂を生じることを意味する。

【0018】
(A)藻類細胞をpH7の等張液に懸濁し、1週間以上放置する。
(B)藻類細胞を蒸留水に懸濁し、1分以上放置する。
(C)藻類細胞の乾燥処理を行い、pH7の等張液に懸濁する。
上記(A)~(C)において、藻類細胞が培養細胞である場合、各処理を行う前に、遠心分離等により培地を除去し、等張液等で藻類細胞を洗浄してもよい。
上記(A)及び(C)において、等張液としては、10%スクロース及び20mMのHEPESを含むpH7の緩衝液が挙げられる。
上記(C)において、乾燥処理としては、冷蔵庫内(4℃)での乾燥、凍結乾燥等が挙げられる。乾燥処理には、遠心分離により回収した藻類細胞の沈殿を用いる。冷蔵庫内で乾燥する場合、乾燥処理時間は、藻類細胞の量によるが、3日以上が例示される。

【0019】
また、細胞破裂が生じたか否かは、上記(A)~(C)の細胞破裂処理後の藻類細胞懸濁液を遠心分離(1,500×g、3分)し、藻類細胞懸濁液中の全タンパク質量に対する、遠心上清中のタンパク質量の割合を求めることにより、判定することができる。具体的には、下記式により求められる破裂率が、20%以上である場合に、細胞破裂が生じたと判定することができる。

【0020】
【数1】
JP2019107385A1_000002t.gif

【0021】
あるいは、藻類細胞懸濁液中の藻類細胞を光学顕微鏡(例えば、倍率600倍)で観察し、細胞破裂が生じている細胞の割合が、藻類細胞全体の10%程度以上、好ましくは20%程度以上である場合に、細胞破裂が生じたと判断してもよい。

【0022】
上記(A)~(C)の細胞破裂処理では、pH7の等張液を用いることができるため、上記(A)~(C)のいずれかの細胞破裂処理で細胞破裂が生じる細胞は、pH7の条件下で細胞破裂が生じる細胞であるということができる。
シアニディオシゾン属に属する藻類に限らず、pH7の条件下で、その細胞が破裂する藻類であれば、栄養成分の抽出が容易であるため好ましい。また、後述する栄養剤等に藻類細胞のまま配合した場合であっても、栄養剤摂取後に藻類細胞内の栄養成分が吸収されやすいという利点もある。したがって、本実施形態の栄養成分組成物では、イデユコゴメ綱に属し、pH7の条件下で、その細胞が破裂する藻類を、好適に用いることができる。
pH7の条件下で、その細胞が破裂する藻類であるか否かは、pH7の緩衝液等に藻類細胞を浸漬し、10~30分程度観察して、藻類細胞が破裂するか否かを確認することにより、判定することができる。
藻類細胞が強固な細胞壁を有さない場合、光学顕微鏡による観察(例えば、倍率600倍)では、通常、細胞壁が観察されない。
シアニディオシゾン・メロラエは、通常、pH6以下の条件で温和な低張処理を行っても細胞破裂を生じない。そのため、pH6以下の条件での温和な低張処理により細胞破裂が生じるか否かは、強固な細胞壁を有さない藻類であるか否かの判定には影響しない。

【0023】
イデユコゴメ綱に属する藻類の中でも、シアニディオシゾン属、とりわけシアニディオシゾン・メロラエに属する藻類は、1倍体であるという特徴を有する。そして、強固な細胞壁を有さない。そのため、シアニディオシゾン属、とりわけシアニディオシゾン・メロラエに属する藻類は、遺伝子組換技術を用いて、比較的容易に、形質転換を行うことができる。例えば、後述する実施例で示すように、遺伝子組換技術を用いて、栄養成分の細胞内含有量が高められた形質転換体を作製することもできる。
シアニディオシゾン属、とりわけシアニディオシゾン・メロラエに属する藻類に限らず、1倍体の藻類であれば、比較的容易に、形質転換を行うことができるため好ましい。例えば、後述する2倍体の細胞形態と1倍体の細胞形態とを有する、イデユコゴメ綱に属する藻類であって、1倍体の細胞形態をとっている藻類細胞もまた、比較的容易に、形質転換を行うことができるため好ましい。したがって、本発明の実施形態にかかる栄養成分組成物等では、イデユコゴメ綱に属する、1倍体の藻類を、好適に用いることができる。
藻類が1倍体であることの判定は、同一遺伝子座のコピー数を確認することにより行うことができる。すなわち、同一遺伝子座のコピー数が1であれば、1倍体であると判定される。
また、例えば、次世代シーケンサー等を用いて、藻類が1倍体であることの判定を行うこともできる。例えば、次世代シーケンサー等で全ゲノムのシーケンスリードを取得し、それらのシーケンスリードをアセンブルした後、アセンブルして得られた配列に対して、シーケンスリードをマッピングする。2倍体ではアレルごとの塩基の違いがゲノム上の様々な領域で見つかるが、1倍体では1アレルしか存在しないため、その様な領域は見つからない。
また、藻類がホモ2倍体である場合には、細胞のDNA含量を測定することにより、1倍体であるか、2倍体であるかを判定することができる。1倍体の細胞のDNA含有量は、2倍体の細胞のDNA含有量の1/2倍である。

【0024】
イデユコゴメ綱に属する1倍体の藻類であって、且つpH7の条件下で細胞破裂を生じる藻類としては、シアニディオシゾン属に属する藻類が挙げられる。シアニディオシゾン属には、現在、シアニディオシゾン・メロラエ(Cyanidioschyzon merolae)の1種のみが分類されている。したがって、シアニディオシゾン・メロラエは、本発明の実施形態にかかる栄養成分組成物等で用いる藻類の好適な例である。
さらに、本発明により得られた従来知られていなかったシアニディオシゾン・メロラエ以外の1倍体のシアニディオシゾン属に属する藻類だけでなく、1倍体のガルデリア属、1倍体のシアニジウム属に属する藻類も好適な例である。

【0025】
イデユコゴメ綱に属する藻類は、高温(30~55℃)・酸性(pH0.1~3.0)条件下において、高密度(30g/L程度)まで増殖することができる。そのような高温・酸性環境下では、他の生物は生育困難であるため、イデユコゴメ綱に属する藻類は、屋外大量培養に適している。
また、イデユコゴメ綱に属する藻類は、高温・酸性条件下のみならず、中温環境(15~30℃)、中性環境(pH6程度)などの比較的広い範囲の環境条件下で増殖可能である。そのため、地域や季節に応じて培養条件を変更することも可能であり、この点でも、屋外大量培養に適している。
さらに、高塩耐性もあり、高塩(300 mM NaCl)条件下でも増殖可能である。また、増殖可能な光強度の範囲も広く、5~1500μmol/msの範囲で高密度に増殖することができ、強光下でも増殖可能である。

【0026】
後述する実施例で示すように、イデユコゴメ綱に属する藻類は、アミノ酸類、ビタミン類、タンパク質、脂質、食物繊維等の栄養成分を豊富に含有する。特に、アミノ酸類及びビタミン類は、従来利用されている藻類(クロレラ、ユーグレナ、スピルリナ)と比較しても、高濃度に含有することが確認されている。また、その成分組成も特異的である。したがって、イデユコゴメ綱に属する藻類を用いることにより、アミノ酸類、ビタミン類、タンパク質、脂質、及び食物繊維からなる群より選択される栄養成分、特に、アミノ酸類やビタミン類等の栄養成分を豊富に含む栄養成分組成物、及び栄養剤等を製造することができる。

【0027】
本明細書において、「アミノ酸類」とは、アミノ基及びカルボキシ基を有する有機化合物を意味する。
イデユコゴメ綱に属する藻類が含有するアミノ酸類としては、例えば、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、シスチン、フェニルアラニン、チロシン、スレオニン、トリプトファン、バリン、アルギニン、ヒスチジン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリン、γ-アミノ酪酸等が挙げられる。イデユコゴメ綱に属する藻類は、従来利用されている藻類と比較して、総アミノ酸含有量が高い点に特徴があり、個々のアミノ酸の含有量についても概ね高い傾向にある。
イデユコゴメ綱に属する藻類の総アミノ酸類の含有量としては、例えば、60~80g/100g乾燥重量が例示される。また、イデユコゴメ綱に属する藻類は、γ-アミノ酪酸を含有する点にも特徴がある。イデユコゴメ綱に属する藻類のγ-アミノ酪酸の含有量としては、例えば、0.1~0.3g/100g乾燥重量が例示される。なお、本明細書において、「総アミノ酸含有量」とは、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、シスチン、フェニルアラニン、チロシン、スレオニン、トリプトファン、バリン、アルギニン、ヒスチジン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、プロリン、及びセリンの含有量を合計した値を意味する。

【0028】
本明細書において、「ビタミン類」とは、生物の生存に必要な栄養素のうち、炭水化物、タンパク質、及び脂質以外の有機化合物を意味する。
イデユコゴメ綱に属する藻類が含有するビタミン類としては、例えば、ビタミンA、β-カロテン、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンK、ナイアシン、イノシトール、葉酸、ビオチン等が挙げられる。これらの中でも、イデユコゴメ綱に属する藻類は、従来利用されている藻類と比較して、β-カロテン、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンK、及び葉酸の含有量が特に高い点に特徴がある。
イデユコゴメ綱に属する藻類の各ビタミン類の含有量としては、例えば、β-カロテンの含有量としては200~250mg/100g乾燥重量、ビタミンCの含有量としては40~70mg/100g乾燥重量、ビタミンEの含有量としては150~180mg/100g乾燥重量、ビタミンKの含有量としては3000~5000μg/100g乾燥重量、ビタミンKの含有量としては4000~7000μg/100g乾燥重量、葉酸の含有量としては3500~6500μg/100g乾燥重量が、それぞれ例示される。

【0029】
イデユコゴメ綱に属する藻類の中でも、強固な細胞壁を有さないものは、ヒト又はヒト以外の動物に摂取された場合に、上記のような栄養成分が効率よく体内に吸収され得る。また、イデユコゴメ綱に属する藻類から、栄養成分を含む抽出物を調製する場合も、強固な細胞壁を有さないものは、上記(A)~(C)の細胞破裂処理等の簡易な操作で、当該抽出物を調製することができる。

【0030】
イデユコゴメ綱に属する藻類は、硫酸酸性温泉などの硫酸酸性環境において優先増殖するため、硫酸酸性温泉などから単離して入手することができる。また、イデユコゴメ綱に属する藻類は、カルチャー・コレクション等から入手してもよい。例えば、シアニディオシゾン・メロラエは、国立研究開発法人国立環境研究所微生物系統保存施設(日本国茨城県つくば市小野川16-2)、American Type Culture Collection(ATCC;10801 University Boulevard Manassas, VA 20110 USA)等から入手することができる。

【0031】
イデユコゴメ綱に属する藻類は、微細藻類培養用の培地を用いて培養することができる。培地としては、特に限定されないが、窒素源、リン源、微量元素(亜鉛、ホウ素、コバルト、銅、マンガン、モリブデン、鉄など)等を含む無機塩培地が例示される。例えば、窒素源としては、アンモニウム塩、硝酸塩、亜硝酸塩等が挙げられ、リン源としては、リン酸塩等が挙げられる。そのような培地としては、例えば、2×Allen培地(Allen MB. Arch. Microbiol. 1959 32: 270-277.)、M-Allen培地(Minoda A et al. Plant Cell Physiol. 2004 45: 667-71.)、MA2培地(Ohnuma M et al. Plant Cell Physiol. 2008 Jan;49(1):117-20.)、改変M-Allen培地等が挙げられる。

【0032】
イデユコゴメ綱に属する藻類は、上記のとおり、比較的幅広い培養条件で高密度に増殖させることができる。pH条件としては、pH1.0~6.0を例示することができ、pH1.0~5.0が好ましい。屋外で培養する場合には、他の生物の増殖を防ぐために、酸性度が高い条件で培養することが好ましく、そのような条件としてはpH1.0~3.0が挙げられる。
温度条件としては、15~50℃を例示することができ、30~50℃が好ましい。屋外で培養する場合には、他の生物の増殖を防ぐために、高温で培養することが好ましく、そのような条件としては35~50℃が挙げられる。
光強度としては、5~2000μmol/msを例示することができ、5~1500μmol/msが好ましい。屋外で培養する場合には、太陽光下で培養すればよい。室内で培養する場合には、連続光で培養してもよく、明暗周期(10L:14Dなど)を設けてもよい。

【0033】
培養により増殖させたイデユコゴメ綱に属する藻類は、遠心分離やろ過等の公知の方法により回収し、適宜、洗浄、乾燥等を行って、本実施形態の栄養剤に用いることができる。

【0034】
なお、イデユコゴメ綱に属する藻類は、自然界から単離されたものに限定されず、天然のイデユコゴメ綱に属する藻類に変異が生じたものであってもよい。変異は、自然発生的に生じたものであってもよく、人為的に生じたものであってもよい。例えば、自然界から単離されたシアニディオシゾン・メロラエは、1倍体の細胞形態を有するが、ゲノムサイズが小さく(約16Mbp)、ゲノム配列の解読が完了しているため(Matsuzaki M et al., Nature. 2004 Apr 8;428(6983):653-7.)、遺伝子改変を行いやすい。したがって、シアニディオシゾン・メロラエを遺伝子改変して生じた形質転換体は、イデユコゴメ綱に属する藻類の好適な例である。また、シアニディオシゾン・メロラエに限らず、遺伝子改変可能であれば、イデユコゴメ綱に属する藻類の形質転換体を、イデユコゴメ綱に属する藻類として、本発明の実施形態にかかる栄養成分組成物等に用いてもよい。例えば、後述するように、天然から単離されるガルデリア属に属する藻類及びシアニジウム属に属する藻類は強固な細胞壁を有する2倍体の細胞形態を有するが、本発明の方法により1倍体の細胞形態とすることが出来るので、1倍体の細胞形態と、2倍体の細胞形態とを有する。いずれの細胞形態も細胞群として用いても良い。これらの藻類の1倍体の細胞形態の細胞のうち、アニディオシゾン・メロラエと同様に強固な細胞壁を持たない細胞は、遺伝子改変を行いやすい。したがって、ガルデリア属又はシアニジウム属に属する藻類の1倍体の細胞形態の細胞または強固な細胞壁を持たない細胞を遺伝子改変して生じた形質転換体もまた、イデユコゴメ綱に属する藻類の好適な例である。より具体的には、シアニディオシゾン・メロラエのほかにはガルデリア属の1倍体、シアニジウム属の1倍体、シアニディオシゾン・メロラエ以外のシアニディオシゾン属の1倍体、シアニジウム属の1倍体を用いることが好ましい。また、これらのうちで強固な細胞壁を持たない細胞を用いることがより好ましい。また、強固な細胞壁を持たないイデユコゴメ綱に属する2倍体も好ましい。

【0035】
イデユコゴメ綱に属する藻類の形質転換体としては、特に限定されないが、例えば、少なくとも1種の栄養成分の細胞内含有量が高められた形質転換体が挙げられる。細胞内含有量が高められる栄養成分の好適な例としては、アミノ酸類、ビタミン類、タンパク質、脂質、及び食物繊維からなる群より選択される少なくとも1種の栄養成分が挙げられる。すなわち、野生株と比較して、アミノ酸類、ビタミン類、タンパク質、脂質、及び食物繊維からなる群より選択される少なくとも1種の栄養成分の細胞内含有量が高い、イデユコゴメ綱に属する藻類の形質転換体が好ましく例示される。本明細書において、「野生株」とは、形質転換の対象となった元の細胞であって、形質転換が行われていない細胞を意味する。
これらの中でも、アミノ酸類及びビタミン類からなる群より選択される少なくとも1種の栄養成分が好ましい。そのような形質転換体は、野生株と比較して、特定の栄養成分の細胞内含有量が高いため、当該栄養成分を豊富に含有する栄養成分組成物及び栄養剤等を調製することができる。上記栄養成分の細胞内含有量を高める方法は、特に限定されない。
例えば、目的とする栄養成分の合成経路のいずれかの反応を触媒する酵素の発現量が多くなるように遺伝子改変を行ってもよい。酵素の発現量を多くする遺伝子改変の方法としは、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。そのような方法としては、例えば、当該酵素をコードする遺伝子(以下、「酵素遺伝子」という。)を導入する方法、当該酵素遺伝子の発現を促進する因子をコードする遺伝子を導入する方法、当該酵素遺伝子の発現を阻害する因子をコードする遺伝子を破壊する方法、等が挙げられる。なお、酵素遺伝子を藻類細胞に導入する場合には、当該酵素遺伝子のプロモーター配列に替えて、導入する藻類細胞において発現量の多い遺伝子のプロモーターを用いてもよい。酵素は、目的とする栄養成分の合成経路のいずれかの反応を触媒する酵素であれば、特に限定されないが、目的とする栄養成分の合成酵素、目的とする栄養成分の前駆体の合成酵素、等が挙げられる。なお、「栄養成分の前駆体」は、目的とする栄養成分の合成経路において、当該栄養成分が合成される前の段階までに生成されるいずれの化合物であってもよい。

【0036】
栄養成分の細胞内含有量を高める方法は、例えば、目的とする栄養成分の合成経路のいずれかの反応を阻害する因子(以下、「阻害因子」という。)の発現量を少なくするような遺伝子改変であってもよい。阻害因子の発現量を少なくする方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。そのような方法としては、例えば、阻害因子をコードする遺伝子を破壊する方法、阻害因子をコードする遺伝子の発現を抑制する因子をコードする遺伝子を導入する方法、阻害因子をコードする遺伝子の発現を促進する因子をコードする遺伝子を破壊する方法、等が挙げられる。

【0037】
例えば、グルタミン酸デカルボキシラーゼは、γ-アミノ酪酸の合成酵素である。そのため、グルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子の発現量が多くなるように、イデユコゴメ綱に属する藻類の遺伝子改変を行うことにより、γ-アミノ酪酸の細胞内含有量が高められた形質転換体を得ることができる。また、ホモゲンチジン酸フィチルトランスフェラーゼ及びトコフェロールシクラーゼは、ビタミンEの生合成経路上の反応を触媒する酵素である。すなわち、ホモゲンチジン酸フィチルトランスフェラーゼは、2-メチル-6-フィチルベンゾキノンを合成する酵素であり、トコフェロールシクラーゼは、γ-トコトリエノールを合成する酵素である。そのため、これらの酵素遺伝子のいずれか又は両方の発現量が多くなるように、イデユコゴメ綱に属する藻類の遺伝子改変を行うことにより、ビタミンEの細胞内含有量が高められた形質転換体を得ることができる。なお、ビタミンEの細胞内含有量を高めるために、ビタミンEの生合成経路上の他の反応を触媒する酵素の発現量が多くなるようにしてもよい。他の栄養成分についても同様に、目的とする栄養成分の生合成経路上のいずれかの反応(好ましくは生合成経路上の律速となっている反応)を触媒する酵素の発現量を多くすることにより、当該栄養成分の細胞内含有量を高めることができる。
これらの合成酵素遺伝子の配列情報はGenBank等の公知の配列データベースより取得可能である。なお、シアニディオシゾン・メロラエのグルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(CMF072C)の配列を配列番号3に、アミノ酸配列を配列番号4に示す。
また、シアニディオシゾン・メロラエのホモゲンチジン酸フィチルトランスフェラーゼ遺伝子(CMN202C)の配列を配列番号5に、アミノ酸配列を配列番号6に示す。また、シアニディオシゾン・メロラエのトコフェロールシクラーゼ遺伝子(CML326C)の配列を配列番号7に、アミノ酸配列を配列番号8に示す。

【0038】
例えば、前記のような栄養成分の合成酵素遺伝子(例、グルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子)を、イデユコゴメ綱に属する藻類に導入することにより、当該栄養成分の細胞内含有量が高められた形質転換体を得ることができる。導入遺伝子に用いるプロモーターは、当該合成酵素遺伝子のプロモーターであってもよく、他の遺伝子のプロモーターであってもよい。他の遺伝子のプロモーターを用いる場合、導入対象である藻類細胞において発現量が高い遺伝子のプロモーターが好ましい。シアニディオシゾン・メロラエの場合、そのようなプロモーターとしては、例えば、APCC(CMO250C)のプロモーター(例、-600~-1;「-1」は開始コドンの直前のヌクレオチドを示す。)、CPCC(CMP166C)のプロモーター、Catalase(CMI050C)のプロモーター等が挙げられる。
これらのプロモーターの配列情報はGenBank等の公知の配列データベースより取得可能である。なお、シアニディオシゾン・メロラエのAPCCのプロモーター配列を配列番号9に、シアニディオシゾン・メロラエのCPCC(CMP166C)のプロモーター配列を配列番号10に、シアニディオシゾン・メロラエのCatalase(CMI050C)のプロモーター配列を配列番号11に示す。

【0039】
イデユコゴメ綱に属する藻類の中でも、シアニディオシゾン・メロラエは、セルフクローニングが可能な藻類である(Fujiwara et al., PLoS One. 2013 Sep 5;8(9):e73608)。なお、「セルフクローニング」とは、細胞に導入する核酸として、(1)当該細胞が由来する生物と同一の分類学上の種に属する生物の核酸、及び(2)自然条件において当該細胞が由来する生物の属する分類学上の種との間で核酸を交換する種に属する生物の核酸、のみを用いる、遺伝子組換技術をいう。セルフクローニングにより作製された形質転換体は、カタルヘナ議定書における遺伝子組換え生物の対象から除外されているため、野外でも培養可能である。したがって、セルフクローニングによるイデユコゴメ綱に属する藻類の形質転換体は、本実施形態の栄養剤に用いる藻類として好適である。中でも、セルフクローニングによるシアニディオシゾン・メロラエの形質転換体が好ましい。

【0040】
シアニディオシゾン・メロラエにおいてセルフクローニングを行う方法は、特に限定されないが、選択マーカーとして、URA5.3遺伝子(CMK046C)を用いる方法が挙げられる。シアニディオシゾン・メロラエには、ウラシル栄養要求性の変異株であるシアニディオシゾン・メロラエ M4株(Minoda et al., Plant Cell Physiol. 2004 Jun;45(6):667-71.)が存在する。シアニディオシゾン・メロラエ M4株は、URA5.3遺伝子に変異を有しており、ウラシルを合成することができない。そのため、シアニディオシゾン・メロラエ M4株は、ウラシルを含まない培地では生育できない。そこで、シアニディオシゾン・メロラエ M4株を親株とし、選択マーカーに野生株のURA5.3遺伝子を用いることにより、セルフクローニングを行うことができる。より具体的には、シアニディオシゾン・メロラエ野生株(例えば、10D株)のURA5.3遺伝子セットに、シアニディオシゾン・メロラエの任意の遺伝子セットを連結し、シアニディオシゾン・メロラエ M4株に導入する。その後、ウラシルを含まない培地で培養することにより、任意の遺伝子セットが導入された細胞を得ることができる。なお、上記において、「遺伝子セット」とは、任意のプロモーターと、目的遺伝子のORFと、任意の3’UTRと、が連結されたものを意味する。なお、3’UTRは、特に限定されず、目的遺伝子の3’UTRであってもよく、他の遺伝子の3’UTRを用いてもよい。よく用いられる3’UTRとしては、β-チューブリンの3’UTRが例示される。選択マーカーは、URA5.3遺伝子に限定されず、他の栄養要求性に関連する遺伝子であってもよい。

【0041】
上記のように栄養要求性関連遺伝子を選択マーカーとして用いて遺伝子改変を行った場合、藻類細胞に導入された栄養要求性関連遺伝子をノックアウトすることにより、再度、同じ栄養要求性関連遺伝子を選択マーカーとして、遺伝子改変を行うことができる。すなわち、多重セルフクローニングが可能である。選択マーカーとして導入した栄養要求性関連遺伝子のノックアウト方法は、特に限定されず、公知のノックアウト技術を用いればよい。ノックアウト技術としては、例えば、相同組換え、遺伝子編集技術等が挙げられる。
例えば、上記のように、シアニディオシゾン・メロラエにおいては、URA5.3遺伝子(CMK046C)を選択マーカーとし、シアニディオシゾン・メロラエ M4株を親株として、セルフクローニングを行うことが得きる。形質転換されていない細胞は、ウラシルを含まない培地では生育できないため、形質転換後の細胞をウラシルを含まない培地で培養することにより、形質転換体を選抜することができる。さらに、セルフクローニングを行う場合には、相同組換え等の公知のノックアウト技術により、URA5.3遺伝子をノックアウトする。例えば、導入したURA5.3遺伝子全体を欠失させてもよく、URA5.3遺伝子を部分的に欠失させてもよく、URA5.3遺伝子に点変異を導入してもよい。URA5.3遺伝子のノックアウト株は、ウラシル及び5-フルオロチン酸(5-FOA)を含む培地で培養することにより、選抜することができる。URA5.3遺伝子を正常に発現する株では、URA5.3遺伝子の遺伝子産物により、ウラシル及び5-FOAが、毒性のある5-フルオロウラシルに変換されるためである。このようにして得たURA5.3ノックアウト株を親株とすれば、再度、URA5.3遺伝子を選択マーカーとして用いて、セルフクローニングを行うことができる。同様の操作を繰り返し行うことにより、所望の回数のセルフクローニングを行うことが可能である。

【0042】
イデユコゴメ綱に属する藻類に任意の核酸を導入する方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、ポリエチレングリコール法、リポフェクション法、マイクロインジェクション法、DEAEデキストラン法、遺伝子銃法、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法などが挙げられる。

【0043】
イデユコゴメ綱に属する藻類の形質転換を行う場合、導入核酸は、核ゲノム、葉緑体ゲノム、及びミトコンドリアゲノムのいずれかに挿入してもよい。導入核酸をゲノムに挿入する場合、ゲノムの特定の位置に挿入してもよく、ランダムにゲノムに挿入してもよい。
ゲノムの特定の位置に導入核酸を挿入する方法としては、相同組換えを用いることができる。例えば、シアニディオシゾン・メロラエでは、全ゲノム配列の解読が終了しているため(Matsuzaki M et al., Nature. 2004 Apr 8;428(6983):653-7.)、ゲノム上の所望の位置に導入核酸を挿入することが可能である。シアニディオシゾン・メロラエにおける導入遺伝子の挿入位置は、特に限定されないが、例えば、CMD184CとCMD185Cとの間の領域が例示される。

【0044】
イデユコゴメ綱に属する藻類の変異株の好ましい具体例としては、以下の(1)~(18)が例示されるが、これらに限定されない。
(1)野生株と比較して、γ-アミノ酪酸及びビタミンEからなる群より選択される少なくとも1種の栄養成分の細胞内含有量が高い、イデユコゴメ綱に属する藻類の形質転換体。
(2)野生株と比較して、グルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子の発現量が高い、(1)に記載のイデユコゴメ綱に属する藻類の形質転換体。
(3)グルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子を含む核酸が発現可能な状態で導入された、(2)に記載のイデユコゴメ綱に属する藻類の形質転換体。
(4)前記核酸が、イデユコゴメ綱に属する藻類の細胞内で機能するプロモーターと、前記プロモーターに機能的に連結されたグルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子を含む、(3)に記載のイデユコゴメ綱に属する藻類の形質転換体。
(5)野生株と比較して、ホモゲンチジン酸フィチルトランスフェラーゼ遺伝子及びトコフェロールシクラーゼ遺伝子からなる群より選択される少なくとも1種の発現量が高い、(1)に記載のイデユコゴメ綱に属する藻類の形質転換体。
(6)ホモゲンチジン酸フィチルトランスフェラーゼ遺伝子及びトコフェロールシクラーゼ遺伝子からなる群より選択される少なくとも1種を含む核酸が発現可能な状態で導入された、(5)に記載のイデユコゴメ綱に属する藻類の形質転換体。
(7)前記核酸が、イデユコゴメ綱に属する藻類の細胞内で機能するプロモーターと、前記プロモーターに機能的に連結されたホモゲンチジン酸フィチルトランスフェラーゼ遺伝子を含む、(6)に記載のイデユコゴメ綱に属する藻類の形質転換体。
(8)前記核酸が、イデユコゴメ綱に属する藻類の細胞内で機能するプロモーターと、前記プロモーターに機能的に連結されたトコフェロールシクラーゼ遺伝子、を含む、(6)又は(7)に記載のイデユコゴメ綱に属する藻類の形質転換体。
(9)前記プロモーターが、APCCプロモーター、CPCCプロモーター、及びCatalaseプロモーターからなる群より選択される、(4)、(7)及び(8)のいずれかに記載のイデユコゴメ綱に属する藻類の形質転換体。
(10)前記核酸が、分類学上の別種に属する細胞に由来する塩基配列を含まない、(3)、(4)、及び(6)~(9)のいずれかに記載のイデユコゴメ綱に属する藻類の形質転換体。
(11)前記核酸が、栄養要求性関連遺伝子を選択マーカーとして、細胞に導入されたものである、(10)に記載のイデユコゴメ綱に属する藻類の形質転換体。
(12)前記核酸が、栄養要求性関連遺伝子を選択マーカーとして、前記栄養要求性関連遺伝子のノックアウト細胞に導入されたものである、(10)に記載のイデユコゴメ綱に属する藻類の形質転換体。
(13)前記イデユコゴメ綱に属する藻類が、シアニディオシゾン属に属する藻類である、(1)~(12)のいずれかに記載のイデユコゴメ綱に属する藻類の形質転換体。
(14)前記イデユコゴメ綱に属する藻類が、シアニディオシゾン・メロラエである、(13)に記載のイデユコゴメ綱に属する藻類の形質転換体。
(15)前記栄養要求性遺伝子がURA5.3遺伝子である、(14)に記載のイデユコゴメ綱に属する藻類の形質転換体。
(16)前記イデユコゴメ綱に属する藻類が、ガルデリア属に属する藻類の1倍体の細胞形態の細胞である、(1)~(12)のいずれかに記載のイデユコゴメ綱に属する藻類の形質転換体。
(17)前記ガルデリア属に属する藻類が、Galdieria sulphuraria、又はGaldieria partitaである、(16)に記載のイデユコゴメ綱に属する藻類の形質転換体。
(18)前記イデユコゴメ綱に属する藻類が、シアニジウム属に属する藻類の1倍体の細胞形態の細胞である、(1)~(12)のいずれかに記載のイデユコゴメ綱に属する藻類の形質転換体。

【0045】
本明細書において、「機能的に連結」とは、第一の塩基配列が第二の塩基配列に十分に近くに配置され、第一の塩基配列が第二の塩基配列又は第二の塩基配列の制御下の領域に影響を及ぼしうることを意味する。例えば、遺伝子がプロモーターに機能的に連結するとは、当該遺伝子が、当該プロモーターの制御下で発現するように連結されていることを意味する。「発現可能な状態」とは、遺伝子が導入された細胞内で、該遺伝子が転写・翻訳され得る状態にあることを指す。

【0046】
[イデユコゴメ綱に属する藻類の抽出物]
本発明の実施形態にかかる藻類の抽出物は、1種類のイデユコゴメ綱に属する藻類から抽出されているものを指すが、2種類以上のイデユコゴメ綱に属する藻類から抽出されているものや、未破壊のイデユコゴメ綱の細胞が混在していてもよく、また、イデユコゴメ綱に属さない藻類の抽出物や細胞が混在していても良い。
本発明の実施形態にかかる栄養成分組成物等では、イデユコゴメ綱に属する藻類に替えて、又はイデユコゴメ綱に属する藻類と共に、イデユコゴメ綱に属する藻類の抽出物を用いてもよい。イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類の抽出物も、イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類と同様に、アミノ酸類、ビタミン類、タンパク質、脂質、及び食物繊維等の栄養成分を豊富に含み得る。そのため、本発明は、イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類の抽出物を用いた、栄養成分組成物、栄養剤、食品、飼料又はペットフード、化粧品等もまた提供する。

【0047】
本明細書において、「イデユコゴメ綱に属する藻類の抽出物」とは、イデユコゴメ綱に属する藻類の細胞に対して、物理的処理又は化学的処理を行って、細胞内の成分を抽出したものをいう。例えば、イデユコゴメ綱に属する藻類の抽出物は、物理的処理又は化学的処理によって、イデユコゴメ綱に属する藻類の細胞を破壊した細胞破壊物であってもよい。また、イデユコゴメ綱に属する藻類の抽出物は、前記細胞破壊物を濃縮したものであってもよく、前記細胞破壊物から固形分を除去したものであってもよく、前記細胞破壊物から一部の成分を分離したものであってもよい。

【0048】
細胞に対する物理的処理又は化学的処理の方法は、特に限定されず、細胞の破壊に一般的に用いられる方法を用いることができる。物理的処理としては、例えば、ガラスビーズ、乳鉢、超音波処理、フレンチプレス、ホモジナイザー等による細胞破壊が挙げられる。
化学的処理としては、例えば、中和処理、低張処理、凍結融解処理、乾燥膨張処理等が挙げられる。より具体的には、上記(A)~(C)の細胞破裂処理が例示される。
細胞破壊物を濃縮する場合、濃縮方法は特に限定されず、一般的に用いられる濃縮方法を用いればよい。細胞破壊物の濃縮方法としては、例えば、乾燥、凍結乾燥、減圧乾燥等が挙げられる。
細胞破壊物から固形分を除去する場合、固形分の除去方法は特に限定されず、固形分の除去等に一般的に用いられる方法を用いることができる。固形分の除去方法としては、例えば、ろ過、遠心分離等が挙げられる。
細胞破壊物から一部の成分を分離する場合、分離方法は特に限定されず、生化学物質の分離・精製等に一般的に用いられる方法を用いることができる。分離方法としては、例えば、塩析、透析、溶媒抽出、吸着、カラムクロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ等が挙げられる。これらの方法は、単独で用いてもよく、2種以上の処理を組み合わせて用いてもよい。ただし、単一の成分に精製されたものは、「イデユコゴメ綱に属する藻類の抽出物」からは除かれる。イデユコゴメ綱に属する藻類の抽出物は、好ましくは、イデユコゴメ綱に属する藻類の細胞成分を10種以上、より好ましくは15種以上、さらに好ましくは20種以上含む。好ましくは、イデユコゴメ綱に属する藻類の抽出物は、アミノ酸類、ビタミン類、タンパク質、脂質、及び食物繊維からなる群より選択される栄養成分を含み、より好ましくは、アミノ酸類、及びビタミン類からなる群より選択される栄養成分を含む。アミノ酸類の具体例としては、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、シスチン、フェニルアラニン、チロシン、スレオニン、トリプトファン、バリン、アルギニン、ヒスチジン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリン、γ-アミノ酪酸等が挙げられる。ビタミン類の具体例としては、ビタミンA、β-カロテン、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンK、ナイアシン、イノシトール、葉酸、ビオチン等が挙げられる。

【0049】
[2倍体の細胞形態と1倍体の細胞形態とを有する藻類]
1実施形態において、本発明は、イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類であって、2倍体の細胞形態と、1倍体の細胞形態と、を有する、藻類、を提供する。

【0050】
本実施形態の藻類は、イデユコゴメ綱に属する藻類であることに加えて、2倍体の細胞形態と、1倍体の細胞形態と、を有するという特徴を備える。従来、イデユコゴメ綱に属する藻類では、シアニディオシゾン属に属する藻類において1倍体のものが知られていた。しかし、イデユコゴメ綱に属する藻類では、2倍体の細胞形態と1倍体の細胞形態の両方を有するものは、これまでに知られていなかった。すなわち、イデユコゴメ綱に属するシアニディオシゾン属に属すシアニディオシゾン・メロラエにおいては、1倍体のもののみが天然から採取され、また、他のイデユコゴメ綱に属する藻類であるガルデリア属、シアニジウム属については2倍体のもののみが天然から採取されていた。本発明は、イデユコゴメ綱に属する藻類の2倍体の細胞形態の細胞から作出された1倍体の細胞形態を有する藻類、2個以上の1倍体細胞から生じる2倍体の細胞形態を有する藻類を提供する。本明細書においてはかかる事情につき、「2倍体の細胞形態と1倍体の細胞形態の両方を有する」と表現する。

【0051】
一方、本実施形態の藻類は、2倍体の細胞形態と1倍体の細胞形態との両方を有する。
本実施形態の藻類において、1倍体の細胞形態は、2倍体の細胞形態が減数分裂することにより生じる。そして、1倍体の細胞は、2個の細胞の接合により、2倍体の細胞を生じると考えられる。そのため、本実施形態の藻類においては、所望の形質を有する1倍体の細胞同士を接合させることにより、それらの形質を併せ持つ2倍体の細胞を作製することができる。
例えば、1倍体の細胞では、2倍体の細胞に比べて、遺伝子組換技術を用いた形質転換体の作製が容易である。そのため、1倍体の細胞を用いて任意の形質を有する形質転換体を複数作製し、任意の形質を有する形質転換体同士を掛け合わせることにより、それらの形質を併せ持つ2倍体を作製することが考えられる。
本実施形態の藻類は、1倍体の細胞のみからなる細胞群で生育することができる。
本実施形態の藻類は、2倍体の細胞のみからなる細胞群で生育することができる。
また、後述の実施例からも明らかなように、2倍体の細胞から1倍体の細胞を作出することも、2種以上の1倍体の細胞から2倍体の細胞を作出することもできる。また、2倍体の細胞から1倍体の細胞を作出する場合に、または1倍体の細胞から2倍体の細胞を作出する場合に、1倍体の細胞と2倍体の細胞とが混在する場合がある。

【0052】
藻類が2倍体であるか、1倍体であるかの判定は、上記「[イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類]」で例示した方法で行うことができる。
また、藻類が2倍体及び1倍体の両方の細胞形態を有することの判定は、例えば、以下のような方法により行うことができる。まず、2倍体の細胞形態のものを静止期になるまで培養し、静止期のまま培養を継続したときに、2倍体のものとは異なる形態の細胞が出現するかを確認する。2倍体のものとは異なる形態の細胞が出現した場合には、その細胞を採取し、その細胞が1倍体の細胞であるかを確認する。その結果、1倍体の細胞であれば、当該藻類が、2倍体及び1倍体の両方の細胞形態を有すると、判定することができる。

【0053】
本実施形態の藻類においては、少なくとも一方の細胞形態が、強固な細胞壁を有さないことが好ましい。強固な細胞壁を有さないことにより、中和処理、低張処理、凍結融解処理などの比較的温和な処理により、細胞を破壊することができる。強固な細胞壁を有さない藻類であるか否かの判定は、上記「[イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類]」で記載した方法により行うことができる。

【0054】
本実施形態の藻類では、2倍体及び1倍体の細胞形態の少なくとも一方が、強固な細胞壁を有さないものであることが好ましいが、1倍体の細胞形態が、強固な細胞壁を有さないことがより好ましい。すなわち、1倍体の細胞形態が、上記(A)~(C)のいずれかの細胞破裂処理で、その細胞が破裂することが好ましい。
細胞が強固な細胞壁を有さない場合、光学顕微鏡による観察(例えば、倍率600倍)では、通常、細胞壁が観察されない。本実施形態の藻類は、通常、2倍体の細胞形態の細胞は強固な細胞壁を有するが、1倍体の細胞形態は強固な細胞壁を有さない。

【0055】
後述する実施例で示すように、本実施形態の藻類は、アミノ酸類、ビタミン類、タンパク質、脂質、食物繊維等の栄養成分を豊富に含有する。特に、アミノ酸類及びビタミン類は、従来利用されている藻類(クロレラ、ユーグレナ、スピルリナ)と比較しても、高濃度に含有することが確認されている。したがって、後述する栄養剤や栄養成分の製造方法に利用することができる。

【0056】
本実施形態の藻類が含有するアミノ酸類としては、例えば、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、シスチン、フェニルアラニン、チロシン、スレオニン、トリプトファン、バリン、アルギニン、ヒスチジン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリン、γ-アミノ酪酸等が挙げられる。本実施形態の藻類は、従来利用されている藻類と比較して、総アミノ酸含有量が高い点に特徴があり、個々のアミノ酸の含有量についても概ね高い傾向にある。

【0057】
例えば、本実施形態の藻類における総アミノ酸含有量は、50g/100g乾燥重量以上であることが好ましい。総アミノ酸含有量の範囲としては、例えば、50~70g/100g乾燥重量が例示される。なお、本明細書において、「総アミノ酸含有量」とは、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、シスチン、フェニルアラニン、チロシン、スレオニン、トリプトファン、バリン、アルギニン、ヒスチジン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、プロリン、及びセリンの含有量を合計した値を意味する。
本実施形態の藻類におけるイソロイシンの含有量としては、1.5g/100g乾燥重量以上が好ましい。イソロイシン含有量の範囲としては、例えば、1.5~5g/100g乾燥重量が挙げられる。
本実施形態の藻類におけるロイシンの含有量としては、4.5g/100g乾燥重量以上が好ましい。イソロイシン含有量の範囲としては、例えば、4.5~8g/100g乾燥重量が挙げられる。
本実施形態の藻類におけるリジンの含有量としては、2.5g/100g乾燥重量以上が好ましい。リジン含有量の範囲としては、例えば、2.5~6g/100g乾燥重量が挙げられる。
本実施形態の藻類におけるメチオニンの含有量としては、0.5g/100g乾燥重量以上が好ましい。メチオニン含有量の範囲としては、例えば、0.5~4g/100g乾燥重量が挙げられる。
本実施形態の藻類におけるシスチンの含有量としては、0.5g/100g乾燥重量以上が好ましい。シスチン含有量の範囲としては、例えば、0.5~3g/100g乾燥重量が挙げられる。
本実施形態の藻類におけるフェニルアラニンの含有量としては、1.5g/100g乾燥重量以上が好ましい。フェニルアラニン含有量の範囲としては、例えば、1.5~5g/100g乾燥重量が挙げられる。
本実施形態の藻類におけるチロシンの含有量としては、2.0g/100g乾燥重量以上が好ましい。チロシン含有量の範囲としては、例えば、2.0~5g/100g乾燥重量が挙げられる。
本実施形態の藻類におけるスレオニンの含有量としては、2.0g/100g乾燥重量以上が好ましい。スレオニン含有量の範囲としては、例えば、2.0~5g/100g乾燥重量が挙げられる。
本実施形態の藻類におけるトリプトファンの含有量としては、0.5g/100g乾燥重量以上が好ましい。トリプトファン含有量の範囲としては、例えば、0.5~3g/100g乾燥重量が挙げられる。
本実施形態の藻類におけるバリンの含有量としては、2.5g/100g乾燥重量以上が好ましい。バリン含有量の範囲としては、例えば、2.5~6g/100g乾燥重量が挙げられる。
本実施形態の藻類におけるアルギニンの含有量としては、4.5g/100g乾燥重量以上が好ましい。フェニルアラニン含有量の範囲としては、例えば、4.5~8g/100g乾燥重量が挙げられる。
本実施形態の藻類におけるヒスチジンの含有量としては、0.5g/100g乾燥重量以上が好ましい。ヒスチジン含有量の範囲としては、例えば、0.5~3g/100g乾燥重量が挙げられる。
本実施形態の藻類におけるアラニンの含有量としては、3.5g/100g乾燥重量以上が好ましい。アラニン含有量の範囲としては、例えば、3.5~7g/100g乾燥重量が挙げられる。
本実施形態の藻類におけるアスパラギン酸の含有量としては、4.5g/100g乾燥重量以上が好ましい。アスパラギン酸含有量の範囲としては、例えば、4.5~8g/100g乾燥重量が挙げられる。
本実施形態の藻類におけるグルタミン酸の含有量としては、5.5g/100g乾燥重量以上が好ましい。グルタミン酸含有量の範囲としては、例えば、5.5~9g/100g乾燥重量が挙げられる。
本実施形態の藻類におけるグリシンの含有量としては、2.0g/100g乾燥重量以上が好ましい。グリシン含有量の範囲としては、例えば、2.0~5.5g/100g乾燥重量が挙げられる。
本実施形態の藻類におけるプロリンの含有量としては、1.5g/100g乾燥重量以上が好ましい。プロリン含有量の範囲としては、例えば、1.5~5g/100g乾燥重量が挙げられる。
本実施形態の藻類におけるセリンの含有量としては、2.0g/100g乾燥重量以上が好ましい。セリン含有量の範囲としては、例えば、2.0~5g/100g乾燥重量が挙げられる。
本実施形態の藻類におけるγ-アミノ酪酸の含有量としては、0.05g/100g乾燥重量以上が好ましい。γ-アミノ酪酸の含有量の範囲としては、例えば、0.05~0.3g/100g乾燥重量が挙げられる。

【0058】
本実施形態の藻類が含有するビタミン類としては、例えば、ビタミンA、β-カロテン、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンK、葉酸等が挙げられる。
これらの中でも、本実施形態の藻類は、従来利用されている藻類と比較して、β-カロテン、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンK、及び葉酸の含有量が特に高い点に特徴がある。

【0059】
本実施形態の藻類におけるビタミンAの含有量としては、8mg/100g乾燥重量以上が好ましい。ビタミンAの含有量の範囲としては、例えば、8~20mg/100g乾燥重量が挙げられる。
本実施形態の藻類におけるβ-カロテンの含有量としては、100mg/100g乾燥重量以上が好ましい。β-カロテンの含有量の範囲としては、例えば、100~200mg/100g乾燥重量が挙げられる。
本実施形態の藻類におけるビタミンCの含有量としては、20mg/100g乾燥重量以上が好ましい。ビタミンCの含有量の範囲としては、例えば、20~50mg/100g乾燥重量が挙げられる。
本実施形態の藻類におけるビタミンEの含有量としては、80mg/100g乾燥重量以上が好ましい。ビタミンEの含有量の範囲としては、例えば、80~150mg/100g乾燥重量が挙げられる。
本実施形態の藻類におけるビタミンKの含有量としては、4000μg/100g乾燥重量以上が好ましい。ビタミンKの含有量の範囲としては、例えば、4000~8000μg/100g乾燥重量が挙げられる。
本実施形態の藻類におけるビタミンKの含有量としては、1000μg/100g乾燥重量以上が好ましい。ビタミンKの含有量の範囲としては、例えば、1000~3000μg/100g乾燥重量が挙げられる。
本実施形態の藻類における葉酸の含有量としては、1500μg/100g乾燥重量以上が好ましい。葉酸の含有量の範囲としては、例えば、1500~4000μg/100g乾燥重量が挙げられる。

【0060】
本実施形態の藻類は、微細藻類培養用の培地を用いて培養することができる。培養は、上記「[イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類]」で記載した方法と同様に行うことができる。

【0061】
本実施形態の藻類は、酸性温泉排水を用いた培地で培養することもできる。「酸性温泉排水」とは、温泉施設から排出される酸性の排水を意味する。酸性温泉排水としては、特に限定されないが、pH1.0~4.0であることが好ましく、pH1.0~3.0であることがより好ましい。また、「酸性温泉排水を用いた培地」とは、酸性温泉排水に窒素源、リン源、微量元素等を添加して調製した培地を意味する。酸性温泉排水を用いた培地としては、酸性温泉排水に窒素源を添加したものが好ましく、窒素源及びリン源を添加したものがより好ましい(例えば、Hirooka S and Miyagishima S.Y. (2016) Cultivation of Acidophilic Algae Galdieria sulphuraria and Pseudochlorella sp. YKT1 in Media Derived from Acidic Hot Springs. Front Microbiol. Dec 20;7:2022.参照)。 窒素源としては、アンモニウム塩(硫酸アンモニウム等)、尿素、硝酸塩(硝酸ナトリウム等)等が挙げられるが、アンモニウム塩、尿素が好ましく、アンモニウム塩がより好ましい。窒素源の添加量としては、例えば、窒素添加量として1~50mMを挙げることができる。窒素源の添加量は、窒素添加量として5~40mMが好ましく、10~30mMがより好ましい。リン源としては、リン酸塩(リン酸二水素カリウム等)が挙げられる。リン源の添加量としては、リン添加量として0.1~10mMを挙げることができる、リン源の添加量は、リン添加量として0.5~5mMが好ましく、1~3mMがより好ましい。本実施形態の藻類は、酸性温泉排水を用いた培地で培養することもできるため、酸性温泉排水の有効利用が可能であり、且つ低コストで培養することができる。
本実施形態の藻類が、ガルデリア属に属する藻類である場合、上記の窒素源としては、アンモニア塩、尿素が好ましく、アンモニア塩がより好ましい。本実施形態の藻類が、シアニジウム属に属する藻類である場合、上記の窒素源としては、アンモニア塩、硝酸塩が好ましく、アンモニア塩がより好ましい。

【0062】
(YFU3株、HKN1株)
本実施形態の藻類の具体例としては、例えば、シアニジウム・エスピー(Cyanidium sp.)YFU3株(FERM BP-22334)(以下、「YFU3株」という。)、及びシアニジウム・エスピー(Cyanidium sp.)HKN1株(FERM BP-22333)(以下、「HKN1株」という。)、並びにこれらの近縁種、変異株、及び子孫が挙げられる。

【0063】
YFU3株及びHKN1株は、いずれも、2倍体の細胞形態と、1倍体の細胞形態とを有する。以下、YFU3株について、2倍体の細胞形態と1倍体の細胞形態とを区別して記載する場合には、2倍体の細胞形態を「YFU3株(2倍体)」、1倍体の細胞形態を「YFU3株(1倍体)」と記載する。同様に、HKN1株について、2倍体の細胞形態と1倍体の細胞形態とを区別して記載する場合には、2倍体の細胞形態を「HKN1株(2倍体)」、1倍体の細胞形態を「HKN1株(1倍体)」と記載する。単に、「YFU3株」又は「HKN1株」と記載する場合には、2倍体の細胞形態及び1倍体の細胞形態の両方を包含するものとする。

【0064】
YFU3株(1倍体)は、日本国大分県由布市の温泉の高温酸性水より単離された単細胞紅藻である。YFU3株は、2017年6月28日付で、受託番号FERM P-22334として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に寄託され、受託番号FERM BP-22334として、2018年5月23日付で国際寄託に移管されている。
HKN1株は、日本国神奈川県足柄下郡箱根町の温泉の高温酸性水より単離された単細胞紅藻である。HKN1株(1倍体)は、2017年6月28日付で、受託番号FERM P-22333として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託され、受託番号FERM BP-22333として、2018年5月23日付で国際寄託に移管されている。

【0065】
YFU3株及びHKN1株は、いずれも、クロロフィルaに加えて、青色色素であるフィコシアニンを有するため、青緑色を呈している。YFU3株及びHKN1株は、いずれも、高温酸性環境で好適に増殖し、至適温度は約42℃、至適pHはpH2付近である。

【0066】
YFU3株(2倍体)及びHKN1株(2倍体)の細胞の大きさは、いずれも、約4μmである。また、YFU3株(1倍体)及びHKN1株(1倍体)の細胞の大きさは、いずれも、約2μmである。また、YFU3株(2倍体)及びHKN1株(2倍体)は、いずれも、強固な細胞壁を有する。すなわち、pH7の条件下で細胞破裂を生じない。一方、YFU3株(1倍体)及びHKN1株(1倍体)は、いずれも、強固な細胞壁を有さない。すなわち、pH7の条件下で細胞破裂を生じる。

【0067】
なお、YFU3株(1倍体)及びHKN1株(1倍体)の細胞は、シアニディオシゾン・メロラエ(Cyanidioschyzon merolae)の細胞に類似している(図8参照)。シアニディオシゾン・メロラエは、従来、イデユコゴメ綱に属する藻類の中で、強固な細胞壁を有さない、1倍体の藻類として、唯一知られている種である。本明細書においては、シアニディオシゾン・メロラエの細胞に類似した細胞を、「シアニディオシゾン・メロラエ様細胞」と記載することがある。

【0068】
YFU3株(2倍体)を静止期に入るまで培養し、静止期のまま培養を継続すると、幾つかのYFU3株(2倍体)が減数分裂し、1細胞のYFU3株(2倍体)から、4細胞のYFU3株(1倍体)生じる。同様に、HKN1株(2倍体)を静止期に入るまで培養し、静止期のまま培養を継続すると、幾つかのHKN1株(2倍体)が減数分裂し、1細胞のHKN1株(2倍体)から、4細胞のHKN1株(1倍体)生じる。YFU3株(1倍体)及びHKN1株(1倍体)は、いずれも、二分裂により、1倍体の細胞形態を維持したまま増殖することができる。

【0069】
本実施形態の藻類の好適な例としては、上記YFU3株及びHKN1株のほか、YFU3株又はHKN1株の近縁種であって、2倍体の細胞形態と、1倍体の細胞形態と、を有する、藻類が挙げられる。YFU3株及びHKN1株の近縁種である藻類としては、例えば、rbcL遺伝子の塩基配列が、YFU3株又はHKN1株のrbcL遺伝子の塩基配列と、90%以上の同一性を有する藻類が挙げられる。YFU3株のrbcL遺伝子の塩基配列を配列番号1に示す。また、HKN1株のrbcL遺伝子の塩基配列を配列番号2に示す。したがって、rbcL遺伝子の塩基配列が、配列番号1又は2に記載の塩基配列と、90%以上の同一性を有する藻類もまた、本実施形態の藻類の好適な例として挙げられる。当該藻類が有するrbcL遺伝子の塩基配列と、配列番号1又は2に記載の塩基配列との同一性は、95%以上であることが好ましく、97%以上であることがより好ましく、98%以上であることがさらに好ましく、99%以上であることが特に好ましい。
藻類が有するrbcL遺伝子の塩基配列は、公知の方法により得ることができる。例えば、対象とする藻類の細胞から公知の方法によりDNAを抽出し、PCR法等によりrbcL遺伝子のDNA断片を増幅し、増幅したDNA断片の塩基配列をDNAシーケンサーで解析することにより、対象とする藻類のrbcL遺伝子の塩基配列を得ることができる。rbcL遺伝子を増幅するためのプライマーとしては、例えば、本明細書の実施例で用いたプライマー等が挙げられる。

【0070】
本実施形態の藻類の好適な例としては、YFU3株又はHKN1株の変異株であって、2倍体の細胞形態と、1倍体の細胞形態と、を有する、藻類、もまた挙げられる。本明細書において、「変異株」とは、自然発生的又は人為的に、元の藻類株のゲノム(核ゲノム、葉緑体ゲノム、ミトコンドリアゲノムを含む。以下、同じ。)に変異が生じた藻類株を意味する。ゲノムに変異を生じさせる人為的手法は、特に限定されず、紫外線照射、放射線照射、亜硝酸などによる化学的処理;遺伝子導入、ゲノム編集などの遺伝子工学的手法等を例示することができる。なお、本明細書において、「YFU3株の変異株」とは、YFU3株のゲノムに変異が生じた藻類株であって、2倍体の細胞形態と、1倍体の細胞形態と、を有する藻類株を指す。また、HKN1株の変異株」とは、HKN1株のゲノムに変異が生じた藻類株であって、2倍体の細胞形態と、1倍体の細胞形態と、を有する藻類株を指す。
YFU3株の変異株としては、YFU3株の全ゲノムに対する変異の割合が、全ゲノム中の10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、2%以下又は1%以下であることが特に好ましい。
HKN1株の変異株としては、HKN1株の全ゲノムに対する変異の割合が、全ゲノム中の10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、2%以下又は1%以下であることが特に好ましい。
上記において、全ゲノムに対する変異の割合は、2倍体の細胞形態同士の全ゲノム、又は1倍体の細胞形態同士の全ゲノムを比較して算出するものとする。

【0071】
上記の中でも、YFU3株又はHKN1株の近縁種又は変異株としては、YFU3株又はHNK1株が有する栄養成分組成と類似の栄養成分組成を有するものが好ましい。
例えば、YFU3株及びHKN1株は、アミノ酸類及びビタミン類を豊富に含有する点に特徴がある。そのため、アミノ酸類又はビタミン類の含有量が、YFU3株及びHKN1株と類似するものが好ましい。アミノ酸類及びビタミン類の含有量としては、上記に例示した含有量が挙げられる。

【0072】
YFU3株又はHKN1株の変異株の具体例としては、遺伝子工学的手法を用いて遺伝子改変した形質転換体が挙げられる。遺伝子改変は、2倍体の細胞形態及び1倍体の細胞形態のいずれで行ってもよいが、1倍体の細胞形態で行う方が容易である。遺伝子改変の種類は、特に限定されず、任意の改変であってよい。

【0073】
例えば、YFU3株又はHKN1株の形質転換体の例としては、少なくとも1種の栄養成分の細胞内含有量が高められた形質転換体が挙げられる。細胞内含有量が高められる栄養成分の好適な例としては、アミノ酸類、ビタミン類、タンパク質、脂質、及び食物繊維からなる群より選択される少なくとも1種の栄養成分が挙げられる。すなわち、野生株と比較して、アミノ酸類、ビタミン類、タンパク質、脂質、及び食物繊維からなる群より選択される少なくとも1種の栄養成分の細胞内含有量が高い、YFU3株又はHKN1株の形質転換体が好ましく例示される。
これらの中でも、アミノ酸類及びビタミン類からなる群より選択される少なくとも1種の栄養成分が好ましい。そのような形質転換体は、野生株と比較して、特定の栄養成分の細胞内含有量が高いため、当該栄養成分を豊富に含有する栄養剤を調製することができる。
栄養成分の細胞内含有量を高める方法は、特に限定されず、任意の方法を用いることができる。例えば、上記「[イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類]」で例示した方法と同様の方法が挙げられる。 例えば、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、ホモゲンチジン酸フィチルトランスフェラーゼ、及びトコフェロールシクラーゼ等の栄養成分合成に関与する任意の酵素遺伝子の発現量が多くなるように、YFU3株又はHKN1株を改変することにより、任意の栄養成分の細胞内含有量を高めることができる。

【0074】
これらの合成酵素遺伝子の配列情報は、公知の方法により、対象遺伝子をクローニングし、クローニングした対象遺伝子の配列解析を行うことにより、取得することができる。
例えば、イデユコゴメ綱に属する藻類が有する公知の同種遺伝子の配列情報に基づいて、プライマーを設計し、YFU3株又はHKN1株のゲノムを鋳型として、PCR等により対象遺伝子の増幅断片を得てもよい。あるいは、公知のイデユコゴメ綱に属する藻類が有する同種遺伝子の配列情報に基づいて、プローブを設計し、YFU3株又はHKN1株のcDNAライブラリーをスクリーニングしてもよい。
また、導入遺伝子として、導入細胞で機能する限り、他種の生物の遺伝子を用いてもよい。例えば、イデユコゴメ綱に属する藻類の公知の遺伝子を用いてもよい。公知遺伝子の配列情報は、GenBank等の公知の配列データベースより取得可能である。例えば、シアニディオシゾン・メロラエのグルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(CMF072C)、ホモゲンチジン酸フィチルトランスフェラーゼ遺伝子(CMN202C)、及びトコフェロールシクラーゼ遺伝子(CML326C)等を利用可能である。

【0075】
例えば、前記のような栄養成分の合成酵素遺伝子(例、グルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子)を、YFU3株又はHKN1株に導入することにより、当該栄養成分の細胞内含有量が高められた形質転換体を得ることができる。導入遺伝子に用いるプロモーターは、当該合成酵素遺伝子のプロモーターであってもよく、他の遺伝子のプロモーターであってもよい。他の遺伝子のプロモーターを用いる場合、導入対象である藻類細胞において発現量が高い遺伝子のプロモーターが好ましい。そのようなプロモーターとしては、例えば、APCC(CMO250C)のプロモーター、CPCC(CMP166C)のプロモーター、Catalase(CMI050C)のプロモーター等が挙げられる。プロモーターは、導入細胞で機能する限り、導入細胞と同種の生物に由来するものであってもよく、他種の生物に由来するものであってもよい。
公知の遺伝子のプロモーターを用いる場合、その配列情報はGenBank等の公知の配列データベースより取得可能である。

【0076】
YFU3株又はHKN1株の形質転換体は、任意の核酸を導入したものであり得るが、セルフクローニングにより作製されたものであることがより好ましい。例えば、イデユコゴメ綱に属する藻類の中でも、シアニディオシゾン・メロラエでは、セルフクローニングの手法が確立されている(Fujiwara et al., PLoS One. 2013 Sep 5;8(9):e73608)。そのため、YFU3株又はHKN1株においても、シアニディオシゾン・メロラエにおける方法と同様の方法により、セルフクローニングを行うことができる。

【0077】
セルフクローニングを行う方法は、特に限定されないが、栄養要求性の変異株を用いる方法が挙げられる。例えば、シアニディオシゾン・メロラエでは、選択マーカーとして、URA5.3遺伝子(CMK046C)を用いる方法が提案されている。上記「[イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類]」参照)。

【0078】
YFU3株及びHKN1株においても、公知の遺伝子ノックアウト技術等により、栄養要求性関連遺伝子をノックアウトして、栄養要求性変異株を作製することにより、当該ノックアウト対象の遺伝子を選択マーカーとして、セルフクローニングを行うことができる。ノックアウト技術としては、特に限定されず、公知の方法を用いればよい。ノックアウト技術としては、例えば、相同組換え、遺伝子編集技術等が挙げられる。ノックアウト対象とする遺伝子は、当該遺伝子のノックアウトにより栄養要求性が変化するものであれば、特に限定されない。ノックアウト対象の遺伝子としては、例えば、オロチジン-5’-デカルボキシラーゼ等が挙げられる。

【0079】
また、上記のように栄養要求性関連遺伝子を選択マーカーとして用いて遺伝子改変を行った場合、藻類細胞に導入された栄養要求性関連遺伝子をノックアウトすることにより、再度、同じ栄養要求性関連遺伝子を選択マーカーとして、遺伝子改変を行うことができる。すなわち、多重セルフクローニングが可能である。選択マーカーとして導入した栄養要求性関連遺伝子のノックアウト方法は、特に限定されず、公知のノックアウト技術を用いればよい。ノックアウト技術としては、例えば、相同組換え、遺伝子編集技術等が挙げられる。
例えば、上記のように、シアニディオシゾン・メロラエにおいては、URA5.3遺伝子(CMK046C)を選択マーカーとし、シアニディオシゾン・メロラエ M4株を親株として、セルフクローニングを行うことが得きる。YFU3株及びHKN1株においても、URA5.3遺伝子ノックアウト株を作製すれば、当該ノックアウト株は、ウラシルを含まない培地では生育できない。これを親株として、URA5.3遺伝子を導入して形質転換し、当該形質転換細胞をウラシルを含まない培地で培養することにより、形質転換体を選抜することができる。さらに、セルフクローニングを行う場合には、相同組換え等の公知のノックアウト技術により、URA5.3遺伝子を再度ノックアウトする。URA5.3遺伝子の再ノックアウト株は、ウラシル及び5-フルオロチン酸(5-FOA)を含む培地で培養することにより、選抜することができる。URA5.3遺伝子を正常に発現する株では、URA5.3遺伝子の遺伝子産物により、ウラシル及び5-FOAが、毒性のある5-フルオロウラシルに変換されるためである。このようにして得たURA5.3再ノックアウト株を親株とすれば、再度、URA5.3遺伝子を選択マーカーとして用いて、セルフクローニングを行うことができる。同様の操作を繰り返し行うことにより、所望の回数のセルフクローニングを行うことが可能である。URA5.3遺伝子のノックアウトは、URA5.3遺伝子全体を欠失させてもよく、URA5.3遺伝子を部分的に欠失させてもよく、URA5.3遺伝子に点変異を導入してもよい。

【0080】
YFU3株又はHKN1株に任意の核酸を導入する方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、ポリエチレングリコール法、リポフェクション法、マイクロインジェクション法、DEAEデキストラン法、遺伝子銃法、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法などが挙げられる。

【0081】
YFU3株又はHKN1株の形質転換を行う場合、導入核酸は、核ゲノム、葉緑体ゲノム、及びミトコンドリアゲノムのいずれかに挿入してもよい。導入核酸をゲノムに挿入する場合、ゲノムの特定の位置に挿入してもよく、ランダムにゲノムに挿入してもよい。ゲノムの特定の位置に導入核酸を挿入する方法としては、相同組換えを用いることができる。

【0082】
以下に、YFU3株又はHKN1株における形質転換方法の一例を例示するが、これに限定されない。
まず、YFU3株又はHKN1株を、MA2U培地(実施例7参照)等の適切な培地に適当な濃度となるように希釈し、適切な培養条件下(例、明暗周期 12L:12D、光 50μmol/ms、温度 42℃)でエアレーションしながら、40~80時間程度培養する。次に、前記培養液に最終濃度0.002%となるようにTween-20を添加した後、遠心分離により細胞を回収し、MA2U培地等の適切な培地に懸濁する。PEG4000を含有する、450μLのMA2U培地に溶解し(95℃、10分)、60%(w/v)のPEG4000溶液を調製した。その後、PEG4000溶液を、使用するまで、ヒートブロック上で42℃に維持した。
適切な選択マーカーを含む形質転換用ベクター及びポリエチレングリコール(PEG4000等)を含む形質転換用混合液に、YFU3株又はHKN1株の細胞懸濁液を添加して撹拌し、MA2U培地等の適切な培地に移して、適切な培養条件下(例、連続光 20μmol/ms)、温度 42℃)で、40~60時間程度静置培養を行う。その後、遠心分離により細胞を回収し、塚原鉱泉培地(Hirooka et al. 2016 Front in Microbiology)または改変MA培地(実施例7参照)等の適切な培地に懸濁する。前記細胞懸濁液を、使用した選択マーカーに応じた選択培地(例、塚原鉱泉培地または改変MA培地等に特定物質を添加したもの又は前記培地等から特定物質を除去したもの)に加え、適切な培養条件下(例、連続光 20μmol/ms、温度 42℃、3%CO)で、5~10日間程度静置培養する。緑色の濃くなった部分の培養液を採取した新たな選択培地に加え、さらに5~10日間程度静置培養し、形質転換体を選抜する。形質転換体は、例えば、倒立顕微鏡下で、先端を細くしたパスツールピペットを用いて、一細胞ずつ単離し、塚原鉱泉培地または改変MA培地等の適切な培地で静置培養することにより、形質転換株を得ることができる。
上記では、ポリエチレングリコール法による形質転換の例を述べたが、リポフェクション法、マイクロインジェクション法、DEAEデキストラン法、遺伝子銃法、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法等の他の形質転換法を用いてもよい。

【0083】
YFU3株又はHKN1株の変異株の好ましい具体例としては、以下の(1)~(18)が例示されるが、これらに限定されない。
(1)野生株と比較して、γ-アミノ酪酸及びビタミンEからなる群より選択される少なくとも1種の栄養成分の細胞内含有量が高い、YFU3株又はHKN1株の形質転換体。
(2)野生株と比較して、グルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子の発現量が高い、(1)に記載のYFU3株又はHKN1株の形質転換体。
(3)グルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子を含む核酸が発現可能な状態で導入された、(2)に記載のYFU3株又はHKN1株の形質転換体。
(4)前記核酸が、イデユコゴメ綱に属する藻類の細胞内で機能するプロモーターと、前記プロモーターに機能的に連結されたグルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子を含む、(3)に記載のYFU3株又はHKN1株の形質転換体。
(5)野生株と比較して、ホモゲンチジン酸フィチルトランスフェラーゼ遺伝子及びトコフェロールシクラーゼ遺伝子からなる群より選択される少なくとも1種の発現量が高い、(1)に記載のYFU3株又はHKN1株の形質転換体。
(6)ホモゲンチジン酸フィチルトランスフェラーゼ遺伝子及びトコフェロールシクラーゼ遺伝子からなる群より選択される少なくとも1種を含む核酸が発現可能な状態で導入された、(5)に記載のYFU3株又はHKN1株の形質転換体。
(7)前記核酸が、イデユコゴメ綱に属する藻類の細胞内で機能するプロモーターと、前記プロモーターに機能的に連結されたホモゲンチジン酸フィチルトランスフェラーゼ遺伝子を含む、(6)に記載のYFU3株又はHKN1株の形質転換体。
(8)前記核酸が、イデユコゴメ綱に属する藻類の細胞内で機能するプロモーターと、前記プロモーターに機能的に連結されたトコフェロールシクラーゼ遺伝子、を含む、(6)又は(7)に記載のYFU3株又はHKN1株の形質転換体。
(9)前記プロモーターが、APCCプロモーター、CPCCプロモーター、及びCatalaseプロモーターからなる群より選択される、(4)、(7)及び(8)のいずれかに記載のYFU3株又はHKN1株の形質転換体。
(10)前記核酸が、分類学上の別種に属する細胞に由来する塩基配列を含まない、(3)、(4)、及び(6)~(9)のいずれかに記載のYFU3株又はHKN1株の形質転換体。
(11)前記核酸が、栄養要求性関連遺伝子を選択マーカーとして、細胞に導入されたものである、(10)に記載のイデユコゴメ綱に属する藻類の形質転換体。
(12)前記核酸が、栄養要求性関連遺伝子を選択マーカーとして、前記栄養要求性関連遺伝子のノックアウト細胞に導入されたものである、(10)に記載のYFU3株又はHKN1株の形質転換体。
(13)前記グルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子が、シアニディオシゾン・メロラエのグルタミン酸デカルボキシラーゼ遺伝子である、(3)、(4)及び(9)のいずれかに記載のYFU3株又はHKN1株の形質転換体。
(14)前記ホモゲンチジン酸フィチルトランスフェラーゼ遺伝子が、シアニディオシゾン・メロラエのホモゲンチジン酸フィチルトランスフェラーゼ遺伝子である、(6)、(7)及び(9)のいずれかに記載のYFU3株又はHKN1株の形質転換体。
(15)前記トコフェロールシクラーゼ遺伝子が、シアニディオシゾン・メロラエのトコフェロールシクラーゼ遺伝子である、(6)、(8)及び(9)のいずれかに記載のYFU3株又はHKN1株の形質転換体。
(16)前記プロモーターが、シアニディオシゾン・メロラエに由来するプロモーターである、(4)及び(7)~(9)のいずれかに記載のYFU3株又はHKN1株の形質転換体。
(17)1倍体の細胞形態の細胞である、(1)~(16)のいずれかに記載のYFU3株又はHKN1株の形質転換体。
(18)2倍体の細胞形態の細胞である、(1)~(16)のいずれかに記載のYFU3株又はHKN1株の形質転換体。

【0084】
また、後述する実施例で示すように、ガルデリア属に属する藻類もまた、1倍体の細胞形態と、2倍体の細胞形態とを有することが確認された。したがって、本実施形態の藻類は、ガルデリア属に属する藻類であってもよい。ガルデリア属に属する藻類としては、例えば、Galdieria sulphuraria(例えば、SAG108.79株)、及びGaldieria partita(例えば、NBRC 102759株)等が挙げられる。 さらに、本実施形態の藻類は、上記YFU3株及びHKN1株以外のシアニジウム属に属する藻類であってもよい。

【0085】
[1倍体の藻類の製造方法]
本発明は、(a)イデユコゴメ綱に属する藻類であって、2倍体の細胞形態と、1倍体の細胞形態とを有する藻類の、前記2倍体の細胞形態の細胞を培養する工程と、(b)前記培養中に生じる前記1倍体の細胞形態の細胞を単離する工程と、を含む、1倍体の細胞形態の藻類の製造方法を提供する。

【0086】
イデユコゴメ綱に属する藻類であって、2倍体の細胞形態と、1倍体の細胞形態とを有する藻類(以下、「本藻類」という場合がある。)は、上記「[2倍体の細胞形態と1倍体の細胞形態とを有する藻類]」において説明した藻類と同様である。本藻類の好ましい例としては、YFU3株及びHKN1株、並びにこれらの変異株もしくは類縁株等が挙げられる。
また、後述する実施例で示されるように、ガルデリア属に属する藻類(Galdieria sulphuraria SAG108.79、及びGaldieria partita NBRC 102759)も、2倍体の細胞形態と、1倍体の細胞形態とを有することが確認された。この結果は、イデユコゴメ綱(例えば、ガルデリア属及びシアニジウム属)には、2倍体の細胞形態と、1倍体の細胞形態と、を有する藻類が広く存在している可能性を示唆する。したがって、本実施形態の製造方法を適用可能な藻類は、ガルデリア属又はシアニジウム属に属する藻類であってもよく、上記例示したものに限定されない。ガルデリア属に属する藻類の具体例としては、例えば、Galdieria sulphuraria、及びGaldieria partitaが挙げられる。
本実施形態の製造方法によれば、2倍体の細胞形態から、1倍体の細胞形態の藻類を製造することができる。1倍体の藻類では、2倍体の藻類に比べて、形質転換を容易に行うことができる。

【0087】
(工程(a))
工程(a)は、イデユコゴメ綱に属する藻類であって、2倍体の細胞形態と、1倍体の細胞形態とを有する藻類(本藻類)の、2倍体の細胞形態の細胞を培養する工程である。

【0088】
本藻類は、特に限定されず、イデユコゴメ綱に属する藻類で、2倍体の細胞形態と1倍体の細胞形態とを有することが確認された藻類の、2倍体の細胞形態の細胞を培養すればよい。具体例としては、YFU3株(2倍体)及びHKN1株(2倍体)、並びにこれらの近縁種、変異株等が挙げられる。また、ガルデリア属に属する藻類(Galdieria sulphuraria、Galdieria partita等)の2倍体の細胞形態、シアニジウム属に属する藻類の2倍体の細胞形態等が挙げられる。

【0089】
培養条件としては、上記「[イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類]」又は「[2倍体の細胞形態と1倍体の細胞形態とを有する藻類]」に挙げた培養条件が挙げられる。具体的には、pH条件としては、pH1.0~6.0を例示することができ、pH1.0~5.0が好ましい。また、温度条件としては15~50℃を例示することができ、30~50℃が好ましい。培地は、上記「[イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類]」又は「[2倍体の細胞形態と1倍体の細胞形態とを有する藻類]」で挙げた培地が例示され、中でも、酸性温泉排水を用いた培地が好ましい。酸性温泉排水を用いた培地の具体例としては、塚原鉱泉培地(Hirooka et al. 2016 Front in Microbiology)が挙げられる。

【0090】
培養は、上記実施形態の藻類が、静止期になるまで行うことが好ましく、静止期のまま培養を任意の期間継続することがより好ましい。培養期間としては、例えば、2~60日、3~40日、又は5~35日等が挙げられる。培養開始から静止期になるまでの期間は、藻類の種類により異なるため、藻類の種類に応じて培養期間を設定することができる。また、静止期の培養液から細胞を回収して植え継ぎを行い、さらに1~5日程度培養を行ってもよい。

【0091】
(工程(b))
工程(b)は、前記培養中に生じる1倍体の細胞形態の細胞を単離する工程である。

【0092】
工程(a)における培養により、2倍体の細胞形態の本藻類が減数分裂し、1倍体の細胞形態の本藻類が生じる。光学顕微鏡観察を行った場合、1倍体の細胞形態の細胞は、2倍体の細胞形態の細胞とは細胞の形状が異なっている(例えば、2倍体の細胞形態の細胞よりも細胞サイズが小さい、強固な細胞壁が観察されない等)。そのため、細胞形状の差異に基づき、1倍体の細胞形態の細胞を見分けることができる。当該1倍体の細胞形態の細胞をパスツールピペット等により採取して単離することにより、1倍体の細胞形態の藻類を製造することができる。
単離した1倍体の細胞形態の藻類は、上記「[イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類]」又は「[2倍体の細胞形態と1倍体の細胞形態とを有する藻類]」で挙げた培地等を用いて培養すればよい。前記の2倍体の細胞形態の細胞の培養液中に出現した1倍体の細胞形態の細胞を、1細胞ずつ単離して、それぞれ増殖させることにより、単一クローンの1倍体の細胞形態の藻類を得ることができる。

【0093】
他の態様において、本発明は、イデユコゴメ綱に属する藻類であって、2倍体の細胞形態と、1倍体の細胞形態と、を有する藻類(本藻類)の、1倍体の細胞形態である、藻類(細胞)を提供する。当該藻類は、前記の1倍体の藻類の製造方法により得ることができる。また、本発明は、YFU3株の1倍体の細胞形態である藻類(細胞)、HKN1株の1倍体の細胞形態である藻類(細胞)、シアニジウム属に属する藻類の1倍体の細胞形態である藻類(細胞)、及びガルデリア属に属する藻類の1倍体の細胞形態である藻類(細胞)もまた提供する。ガルデリア属に属する藻類の具体例としては、Galdieria sulphuraria及びGaldieria partitaが挙げられる。

【0094】
[2倍体の藻類の製造方法]
本発明は、2倍体の細胞形態と、1倍体の細胞形態と、を有する藻類であって、(a)2種類以上の1倍体の細胞形態の細胞を混合し、培養する工程と、(b)前記培養中に生じた2倍体の細胞形態の細胞を単離する工程と、を含む、1倍体の藻類の製造方法を提供する。

【0095】
後述する実施例で示されるように、1倍体の細胞形態の細胞どうしを混合して培養することにより、2倍体の細胞形態の細胞を得ることができる。

【0096】
(工程(a))
工程(a)は、2倍体の細胞形態と、1倍体の細胞形態と、を有する藻類であって、2種類以上の1倍体の細胞形態の細胞を混合し、培養する工程である。

【0097】
本工程で混合する2種類以上の1倍体の細胞形態の細胞は、同種の藻類の細胞であることが好ましい。より好ましくは、同じ株の2倍体の細胞形態の細胞に由来する1倍体の細胞形態の細胞を用いる。

【0098】
培養条件としては、上記「[イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類]」又は「[2倍体の細胞形態と1倍体の細胞形態とを有する藻類]」に挙げた培養条件が挙げられる。具体的には、pH条件としては、pH1.0~6.0を例示することができ、pH1.0~5.0が好ましい。また、温度条件としては15~50℃を例示することができ、30~50℃が好ましい。培地は、上記「[イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類]」又は「[2倍体の細胞形態と1倍体の細胞形態とを有する藻類]」で挙げた培地が例示される。

【0099】
培養は、例えば、1~4週間程度行うことが好ましく、さらに植え継ぎを行って3~10日間程度培養を行ってもよい。

【0100】
(工程(b))
工程(b)は、前記培養中に生じた2倍体の細胞形態の細胞を単離する工程である。

【0101】
工程(a)における培養により、1倍体の細胞形態の細胞どうしが接合し、2倍体の細胞形態の細胞が生じる。当該2倍体の細胞形態の細胞をパスツールピペット等により採取して単離することにより、2倍体の藻類を製造することができる。
単離した2倍体の藻類は、上記「[イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類]」又は「[2倍体の細胞形態と1倍体の細胞形態とを有する藻類]」で挙げた培地(好ましくはM-Allen培地等の人工合成培地)等を用いて培養すればよい。

【0102】
他の態様において、本発明は、イデユコゴメ綱に属する藻類であって、2倍体の細胞形態と、1倍体の細胞形態と、を有する藻類(本藻類)の、2倍体の細胞形態である、藻類(細胞)を提供する。当該藻類は、前記の2倍体の藻類の製造方法により得ることができる。また、本発明は、YFU3株の2倍体の細胞形態である藻類(細胞)、HKN1株の2倍体の細胞形態である藻類(細胞)、シアニディオシゾン属に属する藻類の1倍体の細胞形態である藻類(細胞)もまた提供する。シアニディオシゾン属に属する藻類の具体例としては、シアニディオシゾン・メロラエが挙げられる。

【0103】
[本藻類の培養物]
本発明は、イデユコゴメ綱に属する藻類であって、2倍体の細胞形態と、1倍体の細胞形態と、を有する藻類(本藻類)を含む藻類培養物を提供する。本実施形態の藻類培養物では、全藻類の細胞数における、1倍体の細胞形態の藻類の細胞数の割合が、70~100%である。

【0104】
本藻類は、自然界では、2倍体の細胞形態と1倍体の細胞形態とが混在していると推測されるが、公知のガルデリア属に属する藻類、及びシアニジウム属に属する藻類は、いずれも強固な細胞壁を有する細胞として見出されていることから、自然界では、2倍体の細胞形態として存在するものがほとんどであると考えられる。
一方、上記実施形態にかかる1倍体の藻類の製造方法によれば、2倍体の細胞形態の本藻類を静止期になるまで培養し、そのまま培養を継続すると、2倍体の細胞形態の本藻類が減数分裂し、1倍体の細胞形態の本藻類が出現してくる。前記の1倍体の細胞形態の本藻類は、二分裂で増殖し、そのまま培養を継続すると、1倍体の細胞形態の本藻類の割合が大きくなっていく。そして、さらに培養を継続するか、1倍体の細胞形態のものを単離して培養することにより、1倍体の細胞形態の本藻類が70~100%の藻類培養物を得ることができる。

【0105】
本藻類は、特に限定されず、イデユコゴメ綱に属する藻類で、2倍体の細胞形態と1倍体の細胞形態とを有することが確認された藻類の、2倍体の細胞形態を培養すればよい。具体例としては、YFU3株(2倍体)及びHKN1株(2倍体)、並びにこれらの近縁種、変異株等が挙げられる。また、ガルデリア属に属する藻類(Galdieria sulphuraria、Galdieria partita等)の2倍体の細胞形態、シアニジウム属に属する藻類の2倍体の細胞形態等が挙げられる。
2倍体の細胞形態の本藻類の培養条件としては、上記「[イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類]」又は「[2倍体の細胞形態と1倍体の細胞形態とを有する藻類]」で挙げた培養条件と同様の条件が挙げられる。

【0106】
本実施形態の藻類培養物は、1倍体の細胞形態が、70~100%であるため、自然界における1倍体の細胞形態の割合とは大きく異なる。

【0107】
他の態様において、本発明は、イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類であって、2倍体の細胞形態と、1倍体の細胞形態と、を有する、藻類の、2倍体の細胞形態の細胞からなる細胞群を提供する。前記のイデユコゴメ綱に属する藻類の好ましい例としては、YFU3株、HKN1株、及びこれらの変異株、並びにシアニディオシゾン属に属する藻類が挙げられる。前記シアニディオシゾン属に属する藻類としては、シアニディオシゾン・メロラエが挙げられる。
他の態様において、本発明は、イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類であって、2倍体の細胞形態と、1倍体の細胞形態と、を有する、藻類の、1倍体の細胞形態の細胞からなる細胞群を提供する。前記のイデユコゴメ綱に属する藻類の好ましい例としては、YFU3株、HKN1株、及びこれらの変異株、並びに前記以外のシアニジウム属に属する藻類、ガルデリア属に属する藻類属に属する藻類が挙げられる。ガルデリア属に属する藻類としては、Galdieria sulphuraria及びGaldieria partitaが挙げられる。
他の態様において、本発明は、イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類であって、2倍体の細胞形態と、1倍体の細胞形態と、を有する、藻類の、2倍体の細胞形態の細胞と、1倍体の細胞形態の細胞とが、混在している、細胞群を提供する。

【0108】
[本藻類の乾燥膨潤処理物]
本発明は、イデユコゴメ綱に属する藻類であって、2倍体の細胞形態と、1倍体の細胞形態と、を有する藻類(本藻類)を、乾燥膨潤処理した、乾燥膨潤処理物を提供する。

【0109】
本藻類を、乾燥膨潤処理することにより、藻類細胞を死滅させることができる。そのため、セルフクローニングによらない形質転換体であっても、開放系で取り扱うことができる。なお、「乾燥膨潤処理」とは、藻類細胞を乾燥させた後、当該乾燥物に水性媒体等を加えて、再度湿潤させることをいう。乾燥膨潤処理の具体例としては、例えば、上記(3)の細胞破砕処理が挙げられる。
乾燥膨潤処理に供する本藻類は、2倍体の細胞形態であってもよく、1倍体の細胞形態であってもよく、2倍体の細胞形態及び1倍体の細胞形態の混合物であってもよい。例えば、上記実施形態の藻類培養物から回収した細胞であってもよい。乾燥膨潤処理に供する倍数性変化型藻類は、好ましくは、1倍体の細胞形態である。

【0110】
[本藻類の抽出物]
本藻類は、上記のように、アミノ酸類、ビタミン類、タンパク質、脂質、食物繊維等の栄養成分を豊富に含有するため、下記に説明する栄養成分組成物、又は栄養剤として用いることができる。また、食品、飼料、ペットフード、化粧品等に配合することにより、栄養成分の強化された製品を提供することができる。また、前記のような製品には、本藻類に替えて、又は本藻類共に、本藻類の抽出物を用いてもよい。そのため、本発明は、本藻類の抽出物もまた提供する。

【0111】
本明細書において、「本藻類の抽出物」とは、本藻類の細胞に対して、物理的処理又は化学的処理を行って、細胞内の成分を抽出したものをいう。例えば、本藻類の抽出物は、物理的処理又は化学的処理によって、本藻類の細胞を破壊した細胞破壊物であってもよい。また、本藻類の抽出物は、前記細胞破壊物を濃縮したものであってもよく、前記細胞破壊物から固形分を除去したものであってもよく、前記細胞破壊物から一部の成分を分離したものであってもよい。

【0112】
細胞に対する物理的処理又は化学的処理の方法は、特に限定されず、細胞の破壊に一般的に用いられる方法を用いることができる。物理的処理としては、例えば、ガラスビーズ、乳鉢、超音波処理、フレンチプレス、ホモジナイザー等による細胞破壊が挙げられる。
化学的処理としては、例えば、中和処理、低張処理、凍結融解処理、乾燥膨潤処理等が挙げられる。より具体的には、上記(A)~(C)の細胞破裂処理が例示される。
細胞破壊物を濃縮する場合、濃縮方法は特に限定されず、一般的に用いられる濃縮方法を用いればよい。細胞破壊物の濃縮方法としては、例えば、乾燥、凍結乾燥、減圧乾燥等が挙げられる。
また、細胞破壊物から固形分を除去する場合、固形分の除去方法は特に限定されず、固形分の除去等に一般的に用いられる方法を用いることができる。固形分の除去方法としては、例えば、ろ過、遠心分離等が挙げられる。
細胞破壊物から一部の成分を分離する場合、分離方法は特に限定されず、生化学物質の分離・精製等に一般的に用いられる方法を用いることができる。分離方法としては、例えば、塩析、透析、溶媒抽出、吸着、カラムクロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ等が挙げられる。これらの方法は、単独で用いてもよく、2種以上の処理を組み合わせて用いてもよい。ただし、単一の成分に精製されたものは、「本藻類の抽出物」からは除かれる。本藻類の抽出物は、好ましくは、本藻類の細胞成分を10種以上、より好ましくは15種以上、さらに好ましくは20種以上含む。
好ましくは、本藻類の抽出物は、アミノ酸類、ビタミン類、タンパク質、脂質、及び食物繊維からなる群より選択される栄養成分を含み、より好ましくは、アミノ酸類、及びビタミン類からなる群より選択される栄養成分を含む。アミノ酸類の具体例としては、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、シスチン、フェニルアラニン、チロシン、スレオニン、トリプトファン、バリン、アルギニン、ヒスチジン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリン、γ-アミノ酪酸等が挙げられる。ビタミン類の具体例としては、ビタミンA、β-カロテン、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンK、葉酸等が挙げられる。

【0113】
[栄養成分組成物]
1実施形態において、本発明は、イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類又はその抽出物を含む、栄養成分組成物を提供する。

【0114】
本実施形態の栄養成分組成物は、イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類又はその抽出物を含むため、当該藻類が豊富に含有する栄養成分を豊富に含む。例えば、アミノ酸類、ビタミン類、タンパク質、脂質、及び食物繊維からなる群より選択される栄養成分を豊富に含み、特にアミノ酸類及びビタミン類からなる群より選択される栄養成分を豊富に含み得る。そのため、後述する栄養剤、食品、飼料、ペットフード、化粧品等に配合して用いることができる。

【0115】
イデユコゴメ綱に属する藻類は、特に限定されないが、上記本藻類又はシアニディオシゾン属に属する藻類が好ましく例示される。

【0116】
本藻類は、2倍体の細胞形態であってもよく、1倍体の細胞形態であってもよく、2倍体の細胞形態及び1倍体の細胞形態の混合物であってもよい。例えば、上記実施形態の藻類培養物から回収した細胞であってもよい。本実施形態の栄養成分組成物に含まれる本藻類の例としては、上記「[2倍体の細胞形態と1倍体の細胞形態とを有する藻類]」で挙げたものが挙げられる。具体例としては、YFU3株及びHKN1株、並びにこれらの近縁種、変異株等が挙げられる。また、前記以外のシアニジウム属に属する藻類、及びガルデリア属に属する藻類も挙げられる。中でも、YFU3株、HKN1株、及びこれらの変異株、並びにガルデリア属に属する藻類が好ましく、YFU3株、HKN1株、及びこれらの変異株がより好ましい。
2倍体の細胞形態と1倍体の細胞形態のいずれかが強固な細胞壁を有さない場合、強固な細胞壁を有さない細胞形態のものを用いることが好ましい。それにより、栄養成分の抽出が容易であるという利点を有する。また、藻類細胞のまま栄養成分組成物に配合した場合であっても、栄養成分組成物摂取後に藻類細胞内の栄養成分が吸収されやすいという利点もある。例えば、YFU3株、HKN1株、又はこれらの変異株を用いる場合には、YFU3株(1倍体)、HKN1株(1倍体)、又はこれらの変異株を用いることが好ましい。また、ガルデリア属に属する藻類(例えば、Galdieria sulphuraria、Galdieria partita等)の1倍体の細胞形態、シアニジウム属に属する藻類の1倍体の細胞形態も好ましく例示される。中でも、YFU3株(1倍体)、HKN1株(1倍体)、若しくはこれらの変異株、及びガルデリア属に属する藻類の1倍体の細胞形態が好ましい。

【0117】
イデユコゴメ綱に属する藻類は、本藻類以外のイデユコゴメ綱に属する藻類であってもよい。中でも、シアニディオシゾン属に属する藻類は、強固な細胞壁を有さない。そのため、中和処理、低張処理、凍結融解処理などの比較的温和な処理により、細胞を破壊することができる。したがって、シアニディオシゾン属に属する藻類(例、シアニディオシゾン・メロラエ)は、イデユコゴメ綱に属する藻類の好ましい例である。

【0118】
イデユコゴメ綱に属する藻類は、適切な培地を用いて培養して増殖させ、遠心分離やろ過等の公知の方法により回収し、適宜、洗浄、乾燥等を行って、本実施形態の栄養剤に用いることができる。あるいは、上記実施形態の藻類培養物から藻類細胞を回収し、適宜、洗浄、乾燥等を行って本実施形態の栄養成分組成物に用いてもよい。

【0119】
また、本実施形態の栄養成分組成物は、イデユコゴメ綱に属する藻類に替えて、又はイデユコゴメ綱に属する藻類と共に、イデユコゴメ綱に属する藻類の抽出物を含んでいてもよい。

【0120】
本実施形態の栄養成分組成物は、イデユコゴメ綱に属する藻類又はその抽出物に加えて、適宜、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、特に限定されないが、薬学的に許容される担体等が挙げられる。なお、「薬学的に許容される担体」とは、イデユコゴメ綱に属する藻類が含む栄養成分の機能を阻害せず、且つ、その投与対象に対して実質的な毒性を示さない担体を意味する。また、「実質的な毒性を示さない」とは、その成分が通常使用される投与量において、投与対象に対して毒性を示さないことを意味する。薬学的に許容される担体としては、特に限定されないが、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、乳化剤、安定剤、希釈剤、油性基剤、増粘剤、酸化防止剤、還元剤、酸化剤、キレート剤、溶媒等が挙げられる。薬学的に許容される担体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。

【0121】
本実施形態の栄養成分組成物におけるイデユコゴメ綱に属する藻類又はその抽出物の含有量は、特に限定されず、例えば、1~100質量%の範囲で適宜選択可能である。本実施形態の栄養剤におけるイデユコゴメ綱に属する藻類又はその抽出物の含有量としては、50~100質量%が好ましく、60~100質量%がより好ましく、70~100質量%がさらに好ましい。
イデユコゴメ綱に属する藻類又はその抽出物は、適宜他の成分と混合し、定法に従って、乾燥粉末、顆粒剤、錠剤、ゼリー剤、液剤、カプセル剤等の形態とすることができる。

【0122】
[栄養剤]
1実施形態において、本発明は、イデユコゴメ綱に属する藻類又はその抽出物を含む、栄養剤を提供する。

【0123】
栄養剤とは、ヒト又はヒト以外の動物が栄養成分を補給するために使用されるものであり、剤形、精製度等は特に限定されない。上記のとおり、イデユコゴメ綱に属する藻類は、アミノ酸類、ビタミン類等の栄養成分を多く含むため、イデユコゴメ綱に属する藻類又はその抽出物を用いることにより、アミノ酸類、ビタミン類等の栄養成分を多く含む栄養剤を得ることができる。
本実施形態の栄養剤は、アミノ酸類やビタミン類等の栄養成分を多く含むため、これらの栄養成分の補給用栄養剤としてヒトやヒト以外の動物に使用することができる。本実施形態の栄養剤により供給される栄養成分としては、アミノ酸類、ビタミン類、タンパク質、脂質、食物繊維等が例示される。中でも、本実施形態の栄養剤は、アミノ酸類(イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、シスチン、フェニルアラニン、チロシン、スレオニン、トリプトファン、バリン、アルギニン、ヒスチジン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリン、γ-アミノ酪酸など)、及びビタミン類(ビタミンA、β-カロテン、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンK、ナイアシン、イノシトール、葉酸、ビオチンなど)を補給するために、好適に用いることができる。イデユコゴメ綱に属する藻類が本藻類である場合、本実施形態の栄養剤は、特に、アミノ酸類(イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、シスチン、フェニルアラニン、チロシン、スレオニン、トリプトファン、バリン、アルギニン、ヒスチジン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリン、γ-アミノ酪酸など)、及びビタミン類(ビタミンA、β-カロテン、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンK、ナイアシン、イノシトール、葉酸、ビオチンなど)を補給するために、好適に用いることができる。
本実施形態の栄養剤は、特に、γ—アミノ酪酸、β-カロテン、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンK、葉酸を補給するために、好適に用いることができる。

【0124】
本実施形態の栄養剤は、イデユコゴメ綱に属する藻類又はその抽出物に加えて、適宜、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、特に限定されないが、薬学的に許容される担体等が挙げられる。薬物的に許容される担体としては、上記「[栄養成分組成物]」で例示したものと同様のものが挙げられる。薬学的に許容される担体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。

【0125】
本実施形態の栄養剤におけるイデユコゴメ綱に属する藻類又はその抽出物の含有量は、特に限定されず、例えば、1~100質量%の範囲で適宜選択可能である。本実施形態の栄養剤におけるイデユコゴメ綱に属する藻類又はその抽出物の含有量としては、50~100質量%が好ましく、60~99質量%がより好ましく、70~99質量%がさらに好ましい。
イデユコゴメ綱に属する藻類又はその抽出物は、適宜他の成分と混合し、定法に従って、乾燥粉末、顆粒剤、錠剤、ゼリー剤、液剤、カプセル剤等の形態とすることができる。

【0126】
また、本実施形態の栄養剤は、そのままヒト又はヒト以外の生物に用いてもよく、後述する食品、飼料、ペットフード、化粧品等の栄養成分補給用組成物に配合して用いてもよい。本実施形態の栄養剤を配合することにより、アミノ酸類、ビタミン類等の栄養成分の補給に適した組成物を調製することができる。

【0127】
また、他の態様において、本発明は、イデユコゴメ綱に属する藻類を培養する工程と、培養した前記イデユコゴメ綱に属する藻類を回収する工程と、回収した前記イデユコゴメ綱に属する藻類を製剤化する工程と、を含む栄養剤の製造方法を提供する。
また、他の態様において、本発明は、イデユコゴメ綱に属する藻類を培養する工程と、培養した前記イデユコゴメ綱に属する藻類を回収する工程と、回収した前記イデユコゴメ綱に属する藻類の抽出物を得る工程と、前記イデユコゴメ綱に属する藻類の抽出物を製剤化する工程と、を含む栄養剤の製造方法を提供する。

【0128】
[栄養成分補給用組成物]
1実施形態において、本発明は、上述の栄養剤を含む、栄養成分補給用組成物を提供する。

【0129】
本明細書において、「栄養成分補給用組成物」とは、ヒト又はヒト以外の動物が栄養成分を体内に取り入れるために用いられる組成物をいう。栄養成分の体内への取り込みは、経口的なものであってもよく、非経口的なものであってもよい。

【0130】
本実施形態の栄養成分補給用組成物は、アミノ酸類、ビタミン類、タンパク質、脂質、及び食物繊維等を多く含む。これらの成分は、上述の栄養剤が多く含む栄養成分である。
これらの中でも、本実施形態の栄養成分補給用組成物は、アミノ酸類、及びビタミン類を多く含む点に特徴がある。
特に、アミノ酸類の中では、γ-アミノ酪酸を多く含む点に特徴があり、ビタミン類の中では、β-カロテン、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンK、及び葉酸を多く含む点に特徴がある。例えば、γ-アミノ酪酸は、脳機能改善効果や血圧低下効果を有することが知られている。また、βカロテン、ビタミンC、ビタミンEは、抗酸化作用を有することが知られている。また、ビタミンK、ビタミンKは、骨粗鬆症改善効果を有することが知られている。また、葉酸は、妊娠期の胎児の発育に必要であることが知られており、循環器疾患改善効果も報告されている。
したがって、本実施形態の栄養成分補給用組成物を摂取することにより、上記のような栄養成分が有する体調改善効果等を得ることができる。そのため、本実施形態の栄養成分補給用組成物は、アミノ酸類、ビタミン類、タンパク質、脂質、及び食物繊維から選択される少なくとも1種の栄養成分を補給するために好適に用いられる。また、本実施形態の栄養成分補給用組成物は、アミノ酸類、及びビタミン類からなる群より選択される少なくとも1種の栄養成分を補給するためにより好適に用いられる。

【0131】
本実施形態の栄養成分補給用組成物は、ヒト又はヒト以外の動物が栄養成分を体内に取り入れるために用いられるものであれば、特に限定されない。本実施形態の栄養成分補給用組成物としては、例えば、食品、飼料、ペットフード、化粧品等が挙げられる。

【0132】
(食品)
本実施形態の栄養成分補給用組成物は、食品であってもよい。したがって、本発明は、上記実施形態の栄養成分組成物又は栄養剤を含む、食品、もまた提供する。また、本発明は、イデユコゴメ綱に属する藻類又はその抽出物を含む、食品、もまた提供する。
本実施形態の栄養成分補給用組成物が食品である場合、上述の栄養成分組成物又は栄養剤は、食品添加剤として、食品に添加されてもよい。上述の栄養成分組成物又は栄養剤を食品に添加することにより、上述の栄養成分組成物又は栄養剤が含む栄養成分が強化された食品を調製することができる。そのため、他の態様において、本発明は、イデユコゴメ綱に属する藻類又はその抽出物を含む食品添加剤を提供する。
本実施形態の食品は、上述の栄養成分組成物又は栄養剤を食品原料に添加し、適宜他の食品添加物を添加して、食品の種類に応じた既知の方法に従って、製造することができる。

【0133】
本実施形態の食品において、食品の種類は特に限定されない。食品としては、例えば、そば、うどん、はるさめ、中華麺、即席麺、カップ麺などの各種の麺類;パン、小麦粉、米粉、ホットケーキ、マッシュポテトなどの炭水化物類;青汁、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、野菜飲料、乳酸飲料、乳飲料、スポーツ飲料、茶、コーヒーなどの飲料;豆腐、おから、納豆などの豆製品;カレールー、シチュールー、インスタントスープなどの各種スープ類;アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷などの冷菓類;飴、クッキー、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、その他の焼き菓子などの菓子類;かまぼこ、はんぺん、ハム、ソーセージなどの水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳、バター、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシングなどの油脂及び油脂加工食品;ソース、ドレッシング、味噌、醤油、たれなどの調味料;各種レトルト食品、ふりかけ、漬物などのその他加工食品、等を挙げることができるが、これらに限定されない。

【0134】
上記のような食品において、上述の栄養成分組成物又は栄養剤の含有量は特に限定されず、食品の種類に応じて適宜含有量を設定すればよい。例えば、食品の風味等を考慮し、食品における上述の栄養成分組成物又は栄養剤の含有量は、イデユコゴメ綱に属する藻類又はその抽出物の含有量として、0.01~30質量%を例示することができる。食品の風味等の観点からは、0.05~20質量%が好ましく、0.1~15質量%がより好ましく、0.1~10質量%がさらに好ましく、0.1~5質量%が特に好ましい。

【0135】
また、食品は、機能性食品又は栄養補助食品であってもよい。機能性食品又は栄養補助食品は、上述のような一般的な食品の形態であってもよく、乾燥粉末、顆粒剤、錠剤、ゼリー剤、ドリンク剤等の形態であってもよい。この場合、上述の栄養成分組成物又は栄養剤と、適宜他の成分とを混合して、定法に従って、乾燥粉末、顆粒剤、錠剤、ゼリー剤、ドリンク剤等の形態とすることができる。他の成分としては、特に限定されず、例えば、薬学的に許容される担体等が例示される。薬学的に許容される担体としては、上記「[栄養成分組成物]」で挙げたものと同様のものが挙げられる。また、風味等を改善するために、甘味剤、矯味剤、各種調味料、香料、油脂類、その他の食品添加物等を他の成分として用いてもよい。他の成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。

【0136】
上記のような機能性食品又は栄養補助食品において、上述の栄養成分組成物又は栄養剤の含有量は特に限定されず、機能性食品又は栄養補助食品の種類に応じて適宜含有量を設定すればよい。例えば、機能性食品又は栄養補助食品が乾燥粉末、顆粒剤、錠剤等の形態である場合、当該機能性食品又は栄養補助食品における上述の栄養成分組成物又は栄養剤の含有量は、イデユコゴメ綱に属する藻類又はその抽出物の含有量として、0.1~99質量%が例示される。
風味及び栄養成分の効率的補給の観点からは、1~90質量%が好ましく、10~85質量%がより好ましく、20~85質量%がさらに好ましく、25~85質量%が特に好ましい。また、機能性食品又は栄養補助食品がゼリー剤、ドリンク剤等の形態である場合、当該機能性食品又は栄養補助食品における上述の栄養剤の含有量は、イデユコゴメ綱に属する藻類又はその抽出物の含有量として、0.05~80質量%が例示される。風味及び栄養成分の効率的補給の観点からは、1~75質量%が好ましく、10~70質量%がより好ましく、15~70質量%がさらに好ましく、20~70質量%が特に好ましい。

【0137】
本実施形態の食品は、イデユコゴメ綱に属する藻類が含有する上述のような栄養成分を効率的に補給するために、摂取することができる。本実施形態の食品は、特に、アミノ酸類、ビタミン類、タンパク質、脂質、及び食物繊維からなる群より選択される栄養成分を効率的に補給するために、摂取することができる。これらの栄養成分の中でも、本実施形態の食品は、アミノ酸類、及びビタミン類からなる群より選択される栄養成分の摂取に有効である。

【0138】
(飼料、ペットフード)
本実施形態の栄養成分補給用組成物は、飼料又はペットフードであってもよい。したがって、本発明は、上記実施形態の栄養成分組成物又は栄養剤を含む、飼料又はペットフードもまた提供する。また、本発明は、イデユコゴメ綱に属する藻類又はその抽出物を含む、飼料又はペットフード、もまた提供する。
本実施形態の栄養成分補給用組成物が飼料又はペットフードである場合、上述の栄養成分組成物又は栄養剤は、飼料添加剤又はペットフード添加剤として、飼料又はペットフードに添加されてもよい。上述の栄養成分組成物又は栄養剤を飼料又はペットフードに添加することにより、上述の栄養成分組成物又は栄養剤が含む栄養成分が強化された飼料又はペットフードを調製することができる。そのため、他の態様において、本発明は、イデユコゴメ綱に属する藻類又はその抽出物を含む飼料添加剤又はペットフード添加剤を提供する。

【0139】
本実施形態の飼料又はペットフードは、上述の栄養成分組成物又は栄養剤を飼料原料又はペットフード原料に添加し、適宜他の飼料添加物又はペットフード添加物を添加して、飼料原料又はペットフードの種類に応じた既知の方法に従って、製造することができる。

【0140】
本実施形態の飼料又はペットフードが与えられる動物の種類は特に限定されない。例えば、家畜類(牛、豚、鶏、馬、ヒツジ、ヤギなど)、魚類、貝類、ペット(イヌ、ネコ、ハムスター、ウサギ、インコ、熱帯魚、爬虫類、両生類、昆虫など)等が挙げられるが、これらに限定されない。

【0141】
本実施形態の飼料又はペットフードにおいて、上述の栄養成分組成物又は栄養剤の含有量は特に限定されず、飼料又はペットフードの種類に応じて適宜含有量を設定すればよい。例えば、飼料又はペットフードにおける上述の栄養成分組成物又は栄養剤の含有量は、イデユコゴメ綱に属する藻類又はその抽出物の含有量として、0.01~90質量%が例示され、0.1~80質量%が好ましく、1~70質量%がさらに好ましく、1~60質量%が特に好ましい。

【0142】
本実施形態の飼料又はペットフードは、イデユコゴメ綱に属する藻類が含有する上述のような栄養成分を、当該動物に効率的に補給させるために用いることができる。本実施形態の飼料又はペットフードは、特に、アミノ酸類、ビタミン類、タンパク質、脂質、及び食物繊維からなる群より選択される栄養成分を、当該動物に効率的に補給させるために用いることができる。これらの栄養成分の中でも、本実施形態の飼料又はペットフードは、アミノ酸類、及びビタミン類からなる群より選択される栄養成分の摂取に有効である。

【0143】
(化粧品)
本実施形態の栄養成分補給用組成物は、化粧品であってもよい。したがって、本発明は、上記実施形態の栄養成分組成物又は栄養剤を含む、化粧品もまた提供する。また、本発明は、イデユコゴメ綱に属する藻類又はその抽出物を含む、化粧品、もまた提供する。
本実施形態の栄養成分補給用組成物が化粧品である場合、上述の栄養成分組成物又は栄養剤は、化粧品添加剤として、化粧品に添加されてもよい。上述の栄養成分組成物又は栄養剤を化粧品に添加することにより、上述の栄養成分組成物又は栄養剤が含む栄養成分を含む化粧品を調製することができる。そのため、他の態様において、本発明は、イデユコゴメ綱に属する藻類又はその抽出物を含む化粧品添加剤を提供する。

【0144】
本実施形態の化粧品は、上述の栄養成分組成物又は栄養剤と、適宜他の成分とを混合して、化粧品の種類に応じた既知の方法に従って、製造することができる。他の成分としては、特に限定されず、例えば、薬学的に許容される担体等が例示される。薬学的に許容される担体としては、上記「[栄養成分組成物]」で挙げたものと同様のものが挙げられる。また、化粧品添加物として公知の材料を他の成分として用いてもよい。他の成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。

【0145】
本実施形態の化粧品において、化粧品の種類は特に限定されない。化粧品としては、例えば、化粧水、乳液、ローション、クリーム、ジェル、サンスクリーン剤、パック、マスク、美容液などの基礎化粧品;ファンデーション類、化粧下地、口紅類、リップグロス、頬紅類などのメーキャップ化粧品;洗顔剤、ボディーシャンプー、クレンジング剤などの洗浄料;シャンプー、リンス、ヘアコンディショナー、トリートメント、整髪剤などの毛髪用化粧品;ボディーパウダー、ボディーローションなどのボディ用化粧品等が挙げられるが、これらに限定されない。

【0146】
本実施形態の化粧品において、上述の栄養成分組成物又は栄養剤の含有量は特に限定されず、化粧品の種類に応じて適宜含有量を設定すればよい。例えば、化粧品の使用感等を考慮し、化粧品における上述の栄養成分組成物又は栄養剤の含有量は、イデユコゴメ綱に属する藻類又はその抽出物の含有量として、0.01~30質量%を例示することができる。化粧品の使用感等の観点からは、0.1~20質量%が好ましく、0.1~15質量%がより好ましく、0.1~10質量%がさらに好ましく、0.1~5質量%が特に好ましい。

【0147】
本実施形態の化粧品は、イデユコゴメ綱に属する藻類が含有する上述のような栄養成分を皮膚や毛髪に補給するために、皮膚や毛髪に塗布して用いることができる。本実施形態の化粧品は、特に、アミノ酸類、ビタミン類、タンパク質、脂質、及び食物繊維からなる群より選択される栄養成分を皮膚や毛髪に補給するために、皮膚や毛髪に塗布して用いることができる。これらの栄養成分の中でも、本実施形態の化粧品は、アミノ酸類、及びビタミン類からなる群より選択される栄養成分の補給に有効である。

【0148】
また、他の態様において、本発明は、イデユコゴメ綱に属する藻類又はその抽出物を食品に配合する工程を含む、食品の製造方法を提供する。
また、他の態様において、本発明は、イデユコゴメ綱に属する藻類又はその抽出物を薬学的に許容される担体と混合する工程を含む、機能性食品又は栄養補助食品の製造方法を提供する。
また、他の態様において、本発明は、イデユコゴメ綱に属する藻類又はその抽出物を飼料又はペットフードに配合する工程を含む、飼料又はペットフードの製造方法を提供する。
また、他の態様において、本発明は、イデユコゴメ綱に属する藻類又はその抽出物を化粧品に配合する工程を含む、化粧品の製造方法を提供する。
また、他の態様において、本発明は、イデユコゴメ綱に属する藻類を培養する工程と、培養した前記イデユコゴメ綱に属する藻類を回収する工程と、回収した前記イデユコゴメ綱に属する藻類を製剤化する工程と、を含む食品添加剤、飼料添加剤、ペットフード添加剤、又は化粧品添加剤の製造方法を提供する。
また、他の態様において、本発明は、イデユコゴメ綱に属する藻類を培養する工程と、培養した前記イデユコゴメ綱に属する藻類を回収する工程と、回収した前記イデユコゴメ綱に属する藻類の抽出物を得る工程と、前記イデユコゴメ綱に属する藻類の抽出物を製剤化する工程と、を含む食品添加剤、飼料添加剤、ペットフード添加剤、又は化粧品添加剤の製造方法を提供する。

【0149】
[栄養成分の製造方法]
1実施形態において、本発明は、栄養成分の製造方法を提供する。本実施形態の栄養成分の製造方法は、(a)イデユコゴメ綱に属する藻類の細胞を破壊して細胞破壊物を得る工程と、(b)前記細胞破壊物から、少なくとも1種の栄養成分を分離する工程と、を含む。
以下、本実施形態の製造方法の各工程について説明する。

【0150】
(工程(a))
工程(a)は、イデユコゴメ綱に属する藻類の細胞を破壊して細胞破壊物を得る工程である。

【0151】
本工程で用いるイデユコゴメ綱に属する藻類の好適な例としては、上記本藻類及びシアニディオシゾン属に属する藻類(例、シアニディオシゾン・メロラエ)が挙げられる。本藻類の好適な例としては、上述の「[2倍体の細胞形態と1倍体の細胞形態とを有する藻類]」で記載したものと同様のものが挙げられる。具体例としては、YFU3株及びHKN1株、並びにこれらの近縁種、変異株等が挙げられる。また、前記以外のシアニジウム属に属する藻類、及びガルデリア属に属する藻類も挙げられる。中でも、YFU3株、HKN1株、及びこれらの変異株、並びにガルデリア属に属する藻類が好ましく、YFU3株、HKN1株、及びこれらの変異株がより好ましい。
本藻類は、2倍体の細胞形態であってもよく、1倍体の細胞形態であってもよく、2倍体の細胞形態及び1倍体の細胞形態の混合物であってもよい。
例えば、上記実施形態の藻類培養物から回収した細胞であってもよい。したがって、本実施形態の製造方法は、(a)上記実施形態の藻類培養物から、藻類を回収する工程と、(b)前記藻類の細胞を破壊して細胞破壊物を得る工程と、(c)前記細胞破壊物から、少なくとも1種の栄養成分を分離する工程と、を含む栄養成分の製造方法もまた提供する。
2倍体の細胞形態と1倍体の細胞形態のいずれかが強固な細胞壁を有さない場合、強固な細胞壁を有さない細胞形態のものを用いることが好ましい。それにより、比較的温和な処理により細胞を破壊することができる。例えば、YFU3株、HKN1株、又はこれらの変異株を用いる場合には、YFU3株(1倍体)、HKN1株(1倍体)、又はこれらの変異株を用いることが好ましい。また、ガルデリア属に属する藻類(例えば、Galdieria sulphuraria、Galdieria partita等)の1倍体の細胞形態、シアニジウム属に属する藻類の1倍体の細胞形態も好ましく例示される。中でも、YFU3株(1倍体)、HKN1株(1倍体)、若しくはこれらの変異株、及びガルデリア属に属する藻類の1倍体の細胞形態が好ましい。

【0152】
イデユコゴメ綱に属する藻類の細胞の破壊方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。細胞の破壊方法としては、例えば、ガラスビーズ、乳鉢、超音波処理、フレンチプレス、ホモジナイザーなどの物理的処理;中和処理、低張処理、凍結融解処理、乾燥膨潤処理などの化学的処理等が挙げられる。これらの処理は、単独で行ってもよく、2種以上の処理を組み合わせて行ってもよい。

【0153】
イデユコゴメ綱に属する藻類が、強固な細胞壁を有さないものである場合、中和処理、低張処理、凍結融解処理、乾燥膨潤処理などの比較的温和な処理により、細胞を破壊することができる。これらの処理は、物理的処理と比較してエネルギーコストが低く、簡易に実施可能である。そのため、イデユコゴメ綱に属する藻類として強固な細胞壁を有さないものを用いる場合、細胞破壊の方法としては、中和処理、低張処理、凍結融解処理、及び乾燥膨潤処理が好ましい。また、上記(1)~(3)のいずれかの細胞破裂処理も、細胞破壊の方法として好適な例である。

【0154】
中和処理の方法としては、pH7~10程度の中和液に、強固な細胞壁を有さないイデユコゴメ綱に属する藻類の細胞を浸漬する方法が挙げられる。イデユコゴメ綱に属する藻類は、酸性域のpHに適応しているため、強固な細胞壁を有さないものであれば、中性~塩基性の中和液に浸漬することにより、細胞が破壊される。中和液の組成は、特に限定されないが、例えば、リン酸緩衝液、トリス緩衝液などの緩衝液等を用いることができる。中和液への細胞の浸漬時間は、細胞が破壊される程度の時間とすればよく、例えば、1週間程度が例示される。好適には、上記(1)の細胞破裂処理が例示される。
低張処理の方法としては、水などの低張液に、イデユコゴメ綱に属する藻類の細胞を浸漬する方法が挙げられる。イデユコゴメ綱に属する藻類のうち、強固な細胞壁を有さないものは、水などの低張液に浸漬することにより、細胞が破裂する。低張液の組成は、特に限定されず、イデユコゴメ綱に属する藻類の細胞が破裂する程度の低張な液体であればよい。低張液としては、例えば、水、低塩濃度の緩衝液等を挙げることができる。低張液への細胞の浸漬時間は、細胞が破裂する程度の時間とすればよく、例えば、1~30分程度が例示される。また、低張液への浸漬後、遠心分離等で藻類細胞を回収し、低張液に再懸濁することを、繰り返してもよい。再懸濁回数は、特に限定されないが、1~5回が例示される。好適には、上記(2)の細胞破裂処理が例示される。
凍結融解処理の方法としては、イデユコゴメ綱に属する藻類の細胞に対して、凍結と融解のサイクルを1回以上行う方法が挙げられる。凍結と融解のサイクル回数は、特に限定されず、強固な細胞壁を有さないイデユコゴメ綱に属する藻類の細胞が破壊される程度の回数であればよい。凍結と融解のサイクル回数は、例えば、1~5回程度が例示される。凍結及び融解の各時間は、特に限定されず、例えば、各々10~30分程度が例示される。
乾燥膨潤処理の方法としては、藻類細胞に対して、乾燥と緩衝液への再懸濁のサイクルを1回以上行う方法が挙げられる。乾燥と再懸濁のサイクル回数は、特に限定されず、強固な細胞壁を有さないイデユコゴメ綱に属する藻類の細胞が破壊される程度の回数であればよい。乾燥と再懸濁のサイクル回数は、例えば、1~5回程度が例示される。好適には、上記(3)の細胞破裂処理が例示される。

【0155】
上記のような方法で、イデユコゴメ綱に属する藻類の細胞を破壊することにより、イデユコゴメ綱に属する藻類の細胞破壊物を得ることができる。

【0156】
(工程(b))
工程(b)は、イデユコゴメ綱に属する藻類の細胞破壊物から、少なくとも1種の栄養成分を分離する工程である。

【0157】
本工程において、分離対象となる栄養成分は、イデユコゴメ綱に属する藻類が有する栄養成分であれば特に限定されない。上述の「[2倍体の細胞形態と1倍体の細胞形態とを有する藻類]」において記載したように、イデユコゴメ綱に属する藻類は、アミノ酸類、ビタミン類、タンパク質、脂質、食物繊維等の栄養成分を多く含む。そのため、本工程において分離対象となる栄養成分としては、アミノ酸類、ビタミン類、タンパク質、脂質、及び食物繊維からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。

【0158】
前記栄養成分の中でも、本工程では、アミノ酸類、及びビタミン類からなる群より選択される少なくとも1種の栄養成分を分離することが好ましい。アミノ酸類の具体例としては、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、シスチン、フェニルアラニン、チロシン、スレオニン、トリプトファン、バリン、アルギニン、ヒスチジン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリン、及びγ-アミノ酪酸からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。好ましくは、アミノ酸類としては、γ-アミノ酪酸が挙げられる。
また、ビタミン類の具体例としては、ビタミンA、β-カロテン、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンK、ナイアシン、イノシトール、葉酸、及びビオチンからなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。特に、イデユコゴメ綱に属する藻類が本藻類である場合、ビタミン類の具体例としては、ビタミンA、β-カロテン、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンK、及び葉酸からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。好ましくは、ビタミン類としては、β-カロテン、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンK、葉酸からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。

【0159】
本工程において分離される栄養成分は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。また、アミノ酸類、脂溶性ビタミン類(ビタミンA、β-カロテン、ビタミンE,ビタミンK、ビタミンKなど)、水溶性ビタミン類(ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンC、ナイアシン、イノシトール、葉酸、ビオチンなど)等の種類ごとに分離してもよい。

【0160】
細胞破壊物からの栄養成分の分離方法は、特に限定されず、栄養成分の種類に応じて適切な方法を選択すればよい。栄養成分の分離方法には、生化学物質の分離・精製等に一般的に用いられる方法を適宜組み合わせて用いることができる。分離方法としては、例えば、遠心分離、洗浄、塩析、透析、再結晶、再沈殿、溶媒抽出、吸着、濃縮、ろ過、ゲルろ過、限外ろ過、各種クロマトグラフィ(薄層クロマトグラフィ、カラムクロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ、吸着クロマトグラフィなど)等が挙げられるが、これらに限定されない。

【0161】
(任意工程)
本実施形態の製造方法は、工程(a)及び(b)に加えて、他の工程を含んでいてもよい。他の工程としては、例えば、イデユコゴメ綱に属する藻類を培養する工程(培養工程)、イデユコゴメ綱に属する藻類を培養液から回収する工程(回収工程)、イデユコゴメ綱に属する藻類の細胞を洗浄する工程(洗浄工程)、イデユコゴメ綱に属する藻類を低温処理する工程(低温処理工程)、イデユコゴメ綱に属する藻類を乾燥する工程(乾燥工程)、イデユコゴメ綱に属する藻類を冷凍する工程(冷凍工程)等が挙げられる。これらの工程は、上述の工程(a)の前に行うことができる。

【0162】
培養工程は、上述の「[イデユコゴメ綱(Cyanidiophyceae)に属する藻類]」又は「[2倍体の細胞形態と1倍体の細胞形態とを有する藻類]」に記載の方法で行うことができる。また、回収工程は、ろ過や遠心分離等の公知の方法により行うことができる。また、洗浄工程は、pH1.0~6.0の洗浄液(緩衝液等)に細胞を懸濁し、次いでろ過や遠心分離等の方法で洗浄液から細胞を回収することにより行うことができる。

【0163】
低温処理工程は、イデユコゴメ綱に属する藻類を、0~5℃の温度で処理することにより行うことができる。
例えば、上記培養工程及び回収工程を経て、回収されたイデユコゴメ綱に属する藻類の細胞を、0~5℃の温度環境下に置くと、藻類細胞を死滅させることができる。そのため、セルフクローニングによらない形質転換体であっても、開放系で取り扱うことができる。低温処理の時間は、特に限定されないが、例えば、8日以上、好ましくは10日以上が挙げられる。

【0164】
乾燥工程は、イデユコゴメ綱に属する藻類を、常温乾燥機、低温乾燥機、凍結乾燥機等の乾燥機で乾燥することにより行うことができる。例えば、上記培養工程及び回収工程を経て、回収されたイデユコゴメ綱に属する藻類の細胞を、乾燥機で乾燥すると、藻類細胞を死滅させることができる。そのため、セルフクローニングによらない形質転換体であっても、開放系で取り扱うことができる。

【0165】
冷凍工程は、イデユコゴメ綱に属する藻類を、液体窒素、冷凍庫等で冷凍することにより行うことができる。
例えば、上記培養工程及び回収工程を経て、回収されたイデユコゴメ綱に属する藻類の細胞を-4℃以下、好ましくは-20℃以下の環境下に置くと、藻類細胞を死滅させることができる。そのため、セルフクローニングによらない形質転換体であっても、開放系で取り扱うことができる。
冷凍処理の時間は、特に限定されないが、例えば、10分以上、好ましくは30分以上が挙げられる。

【0166】
本実施形態の製造方法により製造された栄養成分は、栄養剤、食品、飼料、ペットフード、化粧品、医薬品、試薬類等の各種用途に用いることができる。

【0167】
[他の態様]
イデユコゴメ綱に属する藻類は、酸耐性であるため、胃酸に対する抵抗性があると考えられる。一方、イデユコゴメ綱に属する藻類の中でも、強固な細胞壁を有さないもの(例えば、YFU3株(1倍体)、HKN1株(1倍体)、シアニディオシゾンに属する藻類(例、シアニディオシゾン・メロラエ)、ガルデリア属に属する藻類の1倍体、シアニジウム属に属する藻類の1倍体等)は、中性環境下(pH7~10程度)で細胞破裂を生じるため、腸管内で細胞破裂が生じると考えられる。さらに、形質転換系が確立されており、任意の遺伝子を導入可能である。そのため、任意の薬剤を生成する遺伝子を導入した形質転換体を作製することにより、当該形質転換体を胃酸耐性の薬剤カプセルとして用いることができる。したがって、本発明は、薬剤生成遺伝子が導入された、イデユコゴメ綱に属する藻類を含む、医薬組成物もまた提供する。
なお、「薬剤生成遺伝子」とは、イデユコゴメ綱に属する藻類の細胞内で発現する遺伝子であって、当該遺伝子の翻訳産物が、ヒト又はヒト以外の動物(哺乳類等)の疾患を治療又は予防する薬剤を生成する遺伝子を意味する。薬剤生成遺伝子の翻訳産物自体が、薬剤であってもよく、薬剤生成遺伝子の翻訳産物が、薬剤合成反応を触媒する酵素であってもよい。

【0168】
薬剤は、特に限定されないが、例えば、病原性微生物又は病原性ウイルスの抗原タンパク質等が例示される。例えば、病原性ウイルスとしては、特に限定されないが、狂犬病ウイルス、ブタサーコウイルス、ウシロタウイルス、インフルエンザウイルス、エイズウイルス等が挙げられる。これらの病原性微生物又は病原性ウイルスの抗原タンパク質を導入したイデユコゴメ綱に属する藻類は、これらによって引き起こされる感染症に対するワクチンとして用いることができる。
【実施例】
【0169】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0170】
[実施例1]イデユコゴメ綱に属する藻類の成分分析
(イデユコゴメ綱に属する藻類の培養)
シアニディオシゾン・メロラエ 10Dを、5Lの2×Allen培地を用いて、通気培養した。培養温度は約35℃とし、連続白色光(500μmol/ms)下で、2週間培養を行った。
2×Allen培地の組成を表1に示す。
【実施例】
【0171】
【表1】
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【実施例】
【0172】
(イデユコゴメ綱に属する藻類の成分分析)
〔アミノ酸類、ビタミン類等〕
上記のように培養したシアニディオシゾン・メロラエ 10Dの細胞を遠心分離にて回収し、一般財団法人 日本食品分析センターに委託して、成分分析を行った。前記成分分析によって得た湿重量当たりの分析値を、0.248で割ることにより、乾燥重量当たりの値に変換した。
【実施例】
【0173】
各成分の分析方法を表2及び3に示す。
【実施例】
【0174】
【表2】
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【実施例】
【0175】
【表3】
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【実施例】
【0176】
成分分析の結果を表4~6に示す。表4はアミノ酸類の分析結果、表5はビタミン類の分析結果、表6はその他の栄養成分の分析結果をそれぞれ示す。表4及び表5には、参考として、クロレラ、ユーグレナ、及びスピルリナにおいて公開されている分析値を併記した。表4~6中、シアニディオシゾン・メロラエ 10Dは、「シゾン」と表記した。
【実施例】
【0177】
【表4】
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【実施例】
【0178】
【表5】
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【実施例】
【0179】
【表6】
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【実施例】
【0180】
表4に示されるように、シアニディオシゾン・メロラエ 10Dは、従来食品等に利用されている他の藻類と比較して、総アミノ酸含有量が多いことが明らかになった。また、個々のアミノ酸についても、他の藻類と比較して、シゾンでの含有量が多い傾向にあった。
また、シアニディオシゾン・メロラエは、γ-アミノ酪酸を含んでいることも確認された。γ-アミノ酪酸は、抑制性の神経伝達物質として機能する物質であり、脳機能改善効果、血圧降下作用、鎮静作用等が認められている。γ-アミノ酪酸を多く含む食品としてはトマトが知られているが、トマトのγ-アミノ酪酸含有量は0.062g/100g湿重量との報告がある(広がりつつあるサプリメントを理解する—腎不全患者に活用するために[各論]8 GABA(ギャバ)、臨床透析Vol.24.No.13、2008年12月)。シゾンのγ-アミノ酪酸含有量は、トマトと比較しても、遜色のないものであるといえる。
【実施例】
【0181】
表5に示されるように、シアニディオシゾン・メロラエは、他の藻類と比較して、ビタミン類を多く含有している傾向にあった。特に、他の藻類と比較して、β-カロテン、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンK、及び葉酸の含有量が高かった。
ビタミンEを多く含む食品としてはアーモンドが知られているが、アーモンドのビタミンE含有量は30.3mg/100g湿重量との報告がある(日本食品標準成分表2015年版)。また、ビタミンKを多く含む食品としては納豆が知られているが、納豆のビタミンK含有量は600μg/100g湿重量との報告がある(日本食品標準成分表2015年版)。シゾンのビタミンE及びビタミンKの含有量は、これらの食品と比較しても、高いといえる。
【実施例】
【0182】
以上の結果より、シアニディオシゾン・メロラエは、従来食品等に利用されている他の藻類と比較しても、アミノ酸類やビタミン類等の栄養成分の含有量が高いことが確認された。
【実施例】
【0183】
[実施例2]γ-アミノ酪酸産生能増強株の作製
(形質転換用断片の作製)
形質転換用断片の作製は、Fujiwara et al.(PLoS One. 2013 Sep 5;8(9):e73608)に記載の方法で行った。形質転換用断片の作製に用いたプライマーを表7に示す。以下、使用したプライマーを、表7に記載のプライマーNo.で記載する。
【実施例】
【0184】
【表7】
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【実施例】
【0185】
<EGFP/URACm-Cm断片の作製>
URACm-Cm選択マーカーを作製するために、URA5.3遺伝子(897bp上流配列及び471下流配列を含む。)を含むDNA断片をシアニディオシゾン・メロラエ 10DのゲノムDNAを鋳型として、プライマーセットNo.1/2を用いて、PCRにより増幅した。CMD184C断片(CDC184C ORFの最後の1,961bp及び1.9kb下流配列を含む。)及びpQE80ベクター(QIAGEN)を、それぞれ、プライマーセットNo.3/4、及びプライマーセットNo.5/6を用いて、PCRにより増幅した。CMD184C断片をIn-Fusion HD Cloning Kit(Clontech)を用いて、pQE80ベクターにサブクローニングした。その結果できたpD184ベクターを、プライマーセットNo.7/8を用いて、PCRにより増幅した。CMO250Cの上流配列(-600~-1:配列番号9)、EGFP
ORF(Takara Bio Inc.,)、及びβ-チューブリンの下流配列(+1~+200)を、それぞれ、プライマーセットNo.9/10、プライマーセットNo.11/12、及びプライマーセットNo.13/14を用いて、PCRにより増幅し、In-Fusion HD Cloning Kitを用いて、pQEにサブクローニングした。その結果できたpQ250-EGFPベクターを鋳型DNAとして、アセンブリ断片(CMO250Cの上流領域[-600~-1],EGFP ORF,β-チューブリンの下流領域[+1~+200])を、プライマーセットNo.15/16を用いて、PCRにより増幅し、増幅したpD184ベクターにサブクローニングした。その結果できたpD184-O250-EGFPベクターを、プライマーセットNo.17/18を用いて、PCRにより増幅した。URACm-Cm選択マーカーを、増幅したpD184-O250-EGFPベクターにサブクローニングした。その結果としてできたpD184-O250-EGFP-URACm-Cmベクターを、プライマーセットNo.19/20を用いて、EGFP/URACm-Cm断片を増幅するための鋳型として使用した。増幅されたDNA断片(EGFP/URACm-Cm断片)を形質転換用に用いた。なお、EGFP/URACm-Cm断片は、ネガティブコントロールとして用いた。EGFP/URACm-Cm断片のコンストラクトを図1(A)に示す。
【実施例】
【0186】
<GAD/URACm-Cm断片の作製>
EGFP ORFの替わりに、シアニディオシゾン・メロラエのCMF072C(グルタミン酸デカルボキシラーゼ:GAD:配列番号3)の3’末端に3×HAタグを付加したDNA断片を用いたこと以外は、上記「<EGFP/URACm-Cm断片の作製>」と同様の方法で、pD184-O250-GAD-URACm-Cmベクターを作製した。pD184-O250-GAD-URACm-Cmベクターを鋳型として、プライマーセットNo.19/20を用いて、GAD/URACm-Cm断片をPCRにより増幅した。増幅されたDNA断片(GAD/URACm-Cm断片)を形質転換に用いた。GAD/URACm-Cm断片のコンストラクトを図1(B)に示す。
【実施例】
【0187】
<GAD/URACm-Gs断片の作製>
pD184-O250-GAD-URACm-Cmベクターから、URACm-CmのOMP-デカルボキシラーゼドメインを含む配列を除去するために、プライマーセットNo.21/22を用いて、PCRによりベクターを増幅した。ガルデリア・スルフラリア(Galdieria sulphuraria)のURA5.3のOMP-デカルボキシラーゼドメインを含む配列を、プライマーセットNo.23/24、及びURACm-Gs選択マーカーを鋳型DNAとして、PCRにより増幅し、配列をpD184-O250-GAD-URACm-Cmベクターにサブクローニングした。結果としてできたpD184-O250-EGAD-URACm-Gsベクターを、プライマーセットNo.19/20及びPrimeSTAR(登録商標) MAX(Takara)を用いて、GAD/URACm-Gs断片を増幅するための鋳型として使用した。増幅されたDNA断片(GAD/URACm-Gs断片)を形質転換に用いた。GAD/URACm-Gs断片のコンストラクトを図1(C)に示す。
【実施例】
【0188】
(形質転換)
形質転換の親株として、ウラシル栄養要求性の変異株である、シアニディオシゾン・メロラエ M4(Minoda et al., Plant Cell Physiol. 2004 Jun;45(6):667-71.)を用いた。細胞を、ウラシル(0.5mg/mL)及び5-フルオロオロチン酸(0.8mg/mL)を含むMA2培地(Ohnuma M et al. Plant Cell Physiol. 2008 Jan;49(1):117-20.)中で増殖させた。培養は、連続白色光(80μmol/ms)、40℃の条件下で、130rpmでの振とう培養とした。MA2培地を0.5%(w/v)のゲランガム(Wako)で凝固した。pHを2.3に調製するために、硫酸を最終濃度0.05%(v/v)となるように添加した。形質転換は、Ohnuma M et al(Plant Cell Physiol. 2008 Jan;49(1):117-20.)及びImamura S et al(Plant Cell Physiol. 2010 May;51(5):707-17)に記載の方法で行った。形質転換には、上記で作製した各形質転換用断片を4μg使用した。細胞を、コロニーが形成されるまで、連続白色光下、40℃で培養した。その後、コロニーを、ウラシル(0.5mg/mL)を含むMA2固体培地上のスターチに移した。
【実施例】
【0189】
(イムノブロッティング)
各形質転換用断片による各形質転換株の細胞溶解物(タンパク質量で4μg)を、SDS-PAGE(1mm厚ゲル、10%アクリルアミド、25mAで50分)により分離した。その後、ゲル内のタンパク質を、PVDF膜にトランスファーした(300V、400mA、75分)。5%スキムミルクでブロッキングを行い、一次抗体として抗HA抗体(16B12,1:2,000)を1時間反応させた。次に、二次抗体として抗マウスHRP標識抗体(1:25,000)を1時間反応させた。Immoblin Western Chemiluminescent HRP Substrate(Milipore)とLAS-3000(FUJI FILM)を用いて、化学発光シグナルを検出した。
【実施例】
【0190】
結果を図2に示す。図2中、右図は、SDS-PAGE後のゲルを染色したものである。左図は、イムノブロッティングの結果を示す。GAD/URACm-Cm断片形質転換株、及びGAD/URACm-Gs断片形質転換株では、化学発光シグナルが検出された。一方、EGFP/URACm-Cm断片で形質転換したものでは、シグナルは検出されなかった。この結果は、GAD/URACm-Cm断片形質転換株、及びGAD/URACm-Gs断片形質転換株において、HAタグ付加GADが発現していることを示す。なお、GAD/URACm-Cm断片形質転換株よりも、GAD/URACm-Gs断片形質転換株の方が、HAタグ付加GADの発現量が多かった。
また、GAD/URACm-Cm断片形質転換株と野生株(WT)とを比較した結果を図3に示す。GAD/URACm-Cm断片形質転換株では、図2同様、HAタグ付加GADの発現が確認されたが、野生株ではシグナルは検出されなかった。
【実施例】
【0191】
(形質転換株におけるGAD導入コピー数の確認)
表8に示すプライマーを用いて、Real-Time PCRを行った。シアニディオシゾン・メロラエの野生株では、GAD(CMF072C)を1コピー有することが確認されている。そこで、ネガティブコントロールとして用いたEGFP/URACm-Cm断片形質転換株において、表8のAのプライマーセットを用いて増幅された値(A値)/表8のBのプライマーセットを用いて増幅された値(B値)=1とし、他の形質転換株におけるGAD(CMF072C)のコピー数を確認した。
【実施例】
【0192】
その結果、GAD/URACm-Cm断片形質転換株では、形質転換により、GADが1コピー導入されており、内在GADと合わせて2コピー有することが確認された。一方、GAD/URACm-Gs断片形質転換株では、形質転換により、GADが9コピー導入されており、内在GADと合わせて10コピー有することが確認された。GAD/URACm-Gs断片形質転換株におけるコピー数の確認結果を図4に示す。
【実施例】
【0193】
【表8】
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【実施例】
【0194】
(形質転換株における細胞内γ-アミノ酪酸量の測定)
EGFP/URACm-Cm断片形質転換株、GAD/URACm-Cm断片形質転換株、及びGAD/URACm-Gs断片形質転換株を、MA2培地中で増殖させた。培養は、連続白色光、40℃の条件下で行った。
培養後、細胞を遠心分離により回収し、前記回収した細胞から75%エタノールにより可溶物を抽出した。抽出した可溶物中のγ-アミノ酪酸を、HPLCを用いて、OPA-ポストカラム誘導体化法により定量した。
【実施例】
【0195】
結果を表9に示す。表9では、EGFP/URACm-Cm断片形質転換株におけるγ-アミノ酪酸濃度(細胞乾重量当たり)を1.0としたときの相対値で示した。
【実施例】
【0196】
【表9】
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【実施例】
【0197】
表9に示すように、GAD/URACm-Cm断片形質転換株及びGAD/URACm-Gs断片形質転換株では、ネガティブコントロールであるEGFP/URACm-Cm断片形質転換株と比較して、γ-アミノ酪酸濃度が高かった。また、GAD/URACm-Cm断片形質転換株と比較して、GAD/URACm-Gs断片形質転換株の方が、γ-アミノ酪酸濃度が高かった。この結果は、導入されたGADコピー数に応じて、細胞内γ-アミノ酪酸濃度が高くなることを示している。
これらの結果から、シアニディオシゾン・メロラエでは、形質転換により、特定の栄養成分の細胞内濃度を高めることが可能であることが確認された。
【実施例】
【0198】
[実施例3]シアニディオシゾン属に属する藻類の細胞破裂処理(藻類細胞の乾燥膨潤処理)
シアニディオシゾン・メロラエ 10Dを実施例1と同様に培養し、培養液1mLを遠心分離(1,500×g、2分間)した。遠心分離後の上清を捨て、藻類細胞の沈殿を等張液(10%スクロース、20mM HEPES、pH7.0)に懸濁し、遠心分離(1,500×g、3分間)を行って、藻類細胞の洗浄を行った。遠心後の上清を捨て、藻類細胞の沈殿を冷蔵庫内(4℃)で3日間放置し、藻類細胞を乾燥した。
3日後、藻類細胞を45μLの等張液(10%スクロース、20mM HEPES、pH7.0)に懸濁し、遠心分離(1,500×g、3分間)を行って、遠心上清及び沈殿を回収した。
また、強固な細胞壁を有するイデユコゴメ綱に属する藻類として、シアニディウム・カルダリウム(Cyanidium caldarium)RK-1を培養し、上記と同様の乾燥膨潤処理を行い、遠心上清及び沈殿を得た。
【実施例】
【0199】
(SDS-ポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE))
SDS-PAGE用のサンプルを調製するために、上記遠心上清に、15μLの4×SDS-PAGEサンプルバッファーを添加した。また、遠心沈殿に、60μLの1×SDS-PAGEサンプルバッファーを添加した。前記のように調製した上清サンプル及び沈殿サンプルのSDS-PAGEを行った。SDS-PAGE後のゲルをクマシーブリリアントブルーで染色し、遠心上清及び沈殿中のタンパク質を確認した。
【実施例】
【0200】
結果を図5に示す。シアニディオシゾン・メロラエ 10Dでは、乾燥膨潤処理後の上清及び沈殿のいずれでも複数種類のタンパク質が検出された。この結果により、シアニディオシゾン・メロラエ 10Dの細胞は、乾燥膨潤処理により細胞破裂を生じることが確認された。一方、シアニディウム・カルダリウムRK-1では、乾燥膨潤処理後の上清において、タンパク質が全く検出されなかった。この結果は、シアニディウム・カルダリウムRK-1の細胞は、乾燥膨潤処理により細胞破裂が生じないことを示す。
【実施例】
【0201】
[実施例4]新規微細藻類の単離
(新規微細藻類の単離)
日本国大分県由布市の温泉において、高温酸性水を採取した。同様に、日本国神奈川県足柄下郡箱根町の温泉において、高温酸性水を採取した。採取した高温酸性水を、M-Allen培地で培養(40℃、pH2.0、100μmol/ms)し、微細藻類の単離を行った。由布市で採取した高温酸性水からYFU3株が単離され、箱根町で採取した高温酸性水からHKN1株が単離された。
M-Allen培地(以下、「MA培地」ともいう。)の組成を表10に示す。
【実施例】
【0202】
【表10】
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【実施例】
【0203】
(1倍体藻類の単離)
箱根町で採取した高温酸性水から単離されたHKN1株を、M-Allen培地で約1カ月静置培養した(40℃、2%CO)。約1カ月の培養により、増殖期は終了し、静止期となっていた。静止期となった時期に、HKN1株の培養液を観察すると、いずれの培養液においても、シアニディオシゾン・メロラエ様の小さな細胞が確認された。図6(A)に、HKN1株の静止期の培養液の写真(倍率:600倍)を示す。図6(A)中、矢印は、シアニディオシゾン・メロラエ様細胞を示す。
倒立顕微鏡(CKX41;Olympus)下で、先端を細くしたパスツールピペットを用いて、このシアニディオシゾン・メロラエ様細胞を、一細胞単離し、1mLの温泉培地または改変MA培地(実施例7参照)で静置培養した。なお、温泉培地には、塚原温泉(pH1.15)又は玉川温泉(pH1.14)から採取した温泉水に、10mM (NHSOを添加したものを使用した(Hirooka S and Miyagishima SY., Front Microbiol. 2016 Dec 20;7:2022.)。温泉培地で増殖させた後、静止期に入った細胞を、M-Allen培地又はMA2培地(Ohnuma M et al. Plant Cell Physiol. 2008 Jan;49(1):117-20.)で維持した。図6(B)に、HKN1株の静止期の培養液から単離されたシアニディオシゾン・メロラエ様細胞の写真(倍率:600倍)を示す。シアニディオシゾン・メロラエ様細胞は、その後培養を継続しても、そのシアニディオシゾン・メロラエ様の細胞形態が維持された。
【実施例】
【0204】
上記で単離したシアニディオシゾン・メロラエ様細胞と、HKN1株との関係を確認するために、これらの細胞について、MiSeq(Illumina)により、ゲノムの一領域の配列解析を行った。その結果、HKN1株の静止期の培養液からそれぞれ単離されたシアニディオシゾン・メロラエ様細胞(HKN1株由来シゾン様細胞)は、いずれも、前記解析領域について1つのアレル配列しか有さず、1倍体の細胞であることが確認された。一方、HKN1株は、前記解析領域について2つのアレル配列を有し、2倍体の細胞であることが確認された。同様に、HKN1株由来シゾン様細胞のアレル配列は、HKN1の2つのアレル配列が交差した配列であった。図7に、HKN1株の2つのアレル配列(HKN1_allele 1:配列番号12、HKN1_allele 2:配列番号13)と、HKN1株由来シゾン様細胞のアレル配列(HKN1シゾン様_allele 1:配列番号14)を示す。なお、図7中、矢尻は、アレル間で多型の見られる塩基を示す。
これらの結果から、HKN1株由来シゾン様細胞は、2倍体のHKN1株が減数分裂して生じた1倍体細胞であることが確認された。
【実施例】
【0205】
なお、由布市で採取した高温酸性水から単離されたYFU3株は、シアニディオシゾン様細胞であり、1倍体細胞であった。
【実施例】
【0206】
以下、YFU3株の2倍体細胞を「YFU株(2倍体)」、1倍体のYFU3株由来シゾン様細胞を「YFU3株(1倍体)と記載し、両者をまとめて指す場合は「YFU3株」と記載する。また、HKN1株の2倍体細胞をHKN1株(2倍体)、1倍体のHKN1株由来シゾン様細胞をHKN1株(1倍体)と記載し、両者をまとめて指す場合は「HKN1株」と記載する。
【実施例】
【0207】
YFU3株(1倍体)及びHKN1株(1倍体)、並びに他のシアニジウムを顕微鏡(BX51; Olympus)で観察した写真(倍率:600倍)を図8に示す。図8中、(A)はガルデリア・スルフラリア(Galdieria sulphuraria) 074、(B)はシアニジウム・カルダリウム(Cyanidium caldarium) RK-1、(C)はシアニディオシゾン・メロラエ(Cyanidioschyzon merolae) 10D、(D)はYFU3株(1倍体)、(E)はHKN1株(1倍体)の顕微鏡写真である。図3中のスケールバーは5μmを表す。ガルデリア・スルフラリア
074(図8A)及びシアニジウム・カルダリウム RK-1(図8B)は、強固な細胞壁を有し、内生胞子を母細胞壁内に形成することで増殖する。一方、YFU3株(1倍体)(図8D)及びHKN1株(1倍体)(図8E)は、シアニディオシゾン・メロラエ 10D(図8C)と同様に、強固な細胞壁を有さず、二分裂により増殖することが確認された。また、YFU3株(1倍体)及びHKN1株(1倍体)の細胞の大きさは、いずれも、約2μmであった。
【実施例】
【0208】
(リボソームDNA ITS1のサイズ比較)
YFU3株(1倍体)と、HKN1株(1倍体)と、シアニディオシゾン・メロラエ 10Dとについて、リボソームDNA ITS1のサイズの比較を行った。
YFU3株、HKN1株、及びシアニディオシゾン・メロラエ 10Dの細胞からDNAを抽出し、リボソームDNA ITS1をPCRにより増幅した。増幅されたITS1断片を、アガロースゲル電気泳動し、各微細藻類のITS1のサイズを比較した。ITS1の増幅に使用したプライマーは、以下の通りである。
フォワードプライマー:TAGAGGAAGGAGAAGTCGTAA(配列番号15)
リバースプライマー:TTGCGTTCAAAGACTCGATGATTC(配列番号16)
【実施例】
【0209】
アガロースゲル電気泳動の結果を図9に示す。図9に示すように、YFU3株(1倍体)及びHKN1株(1倍体)のITS1のサイズは、いずれも約1.5kbであった。また、YFU3株(1倍体)及びHKN1株(1倍体)のITS1は、いずれも、シアニディオシゾン・メロラエ 10DのITS1よりも大きいサイズを有していた。
【実施例】
【0210】
(rbcL遺伝子配列に基づく系統解析)
YFU3株(1倍体)及びHKN1株(1倍体)の細胞からそれぞれ抽出したDNAを鋳型として、rbcL遺伝子をPCRで増幅し、配列解析を行った。YFU3株(1倍体)及びHKN1株(1倍体)のrbcL遺伝子の塩基配列を配列番号1及び2にそれぞれ示す。
なお、rbcLの増幅に使用したプライマーの配列は以下のとおりである。
フォワードプライマー:aaaactttccaaggrccwgc(配列番号17)
リバースプライマー:gcwgttggtgtytchacwaaatc(配列番号18)
【実施例】
【0211】
YFU3株(1倍体)及びHKN1株(1倍体)のrbcL遺伝子の塩基配列に基づき、最尤法による分子系解析を行った。rbcL遺伝子の塩基配列に基づく分子系統樹を図10に示す。
【実施例】
【0212】
上記分子系統解析の結果より、YFU3株及びHKN1株は、シアニジウム属に属すると判定された。
【実施例】
【0213】
(YFU3株(1倍体)及びHKN1株(1倍体)の酸性温泉排水培地による培養)
YFU3株(1倍体)及びHKN1株(1倍体)が、酸性温泉排水培地により培養可能であるか確認した。酸性温泉排水には、塚原温泉、または玉川温泉を用いた。塚原温泉又は玉川温泉の酸性温泉排水に、窒素源として、10mM (NHSOを添加して酸性温泉排水培地を調製した。あるいは、窒素源として10mM (NHSO、及びリン源として2mM KHPOを添加して酸性温泉排水培地を調製した。YFU3株(1倍体)又はHKN1株(1倍体)を、50mLの酸性温泉排水培地を用いて、通気培養した。培養温度は40℃とし、連続白色光(100μmol/ms)下で、2週間培養を行った。
その結果、YFU3株(1倍体)及びHKN1株(1倍体)は、いずれの酸性温泉排水培地でも培養することができた。
【実施例】
【0214】
[実施例5]新規微細藻類の栄養成分分析
YFU3株(1倍体)を、5LのM-Allen培地を用いて、通気培養した。培養温度は35℃とし、連続白色光(500μmol/ms)下で、2週間培養を行った。
【実施例】
【0215】
上記のように培養したYFU3株(1倍体)の細胞を遠心分離にて回収し、一般財団法人 日本食品分析センターに委託して、成分分析を行った。前記成分分析によって得た湿重量当たりの分析値を、0.248で割ることにより、乾燥重量当たりの値に変換した。
各成分の分析方法は、上記表2及び表3に示したとおりである。
【実施例】
【0216】
成分分析の結果を表11及び表12に示す。表11はアミノ酸類の分析結果、表12はビタミン類の分析結果をそれぞれ示す。表11及び表12には、参考として、クロレラ、ユーグレナ、及びスピルリナにおいて公開されている分析値を併記した。
【実施例】
【0217】
【表11】
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【実施例】
【0218】
【表12】
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【実施例】
【0219】
表11に示されるように、YFU3株(1倍体)は、従来食品等に利用されている他の藻類と比較して、総アミノ酸含有量が多いことが明らかになった。また、個々のアミノ酸についても、他の藻類と比較して、YFU3株(1倍体)での含有量が多い傾向にあった。
また、YFU3株(1倍体)は、γ-アミノ酪酸を含んでいることも確認された。γ-アミノ酪酸は、抑制性の神経伝達物質として機能する物質であり、脳機能改善効果、血圧降下作用、鎮静作用等が認められている。γ-アミノ酪酸を多く含む食品としてはトマトが知られているが、トマトのγ-アミノ酪酸含有量は0.062g/100g湿重量との報告がある(広がりつつあるサプリメントを理解する—腎不全患者に活用するために[各論]8 GABA(ギャバ)、臨床透析Vol.24.No.13、2008年12月)。YFU株(1倍体)のγ-アミノ酪酸含有量は、トマトと比較しても、遜色のないものであるといえる。
【実施例】
【0220】
表12に示されるように、YFU3株(1倍体)は、他の藻類と比較して、ビタミン類を多く含有している傾向にあった。特に、他の藻類と比較して、β-カロテン、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンK、及び葉酸の含有量が高かった。
ビタミンEを多く含む食品としてはアーモンドが知られているが、アーモンドのビタミンE含有量は30.3mg/100g湿重量との報告がある(日本食品標準成分表2015年版)。また、ビタミンKを多く含む食品としては納豆が知られているが、納豆のビタミンK含有量は600μg/100g湿重量との報告がある(日本食品標準成分表2015年版)。YFU株のビタミンE及びビタミンKの含有量は、これらの食品と比較しても、高いといえる。
【実施例】
【0221】
以上の結果より、YFU3株(1倍体)は、従来食品等に利用されている他の藻類と比較しても、アミノ酸類やビタミン類等の栄養成分の含有量が高いことが確認された。
【実施例】
【0222】
[実施例6]新規微細藻類(YFU3株)の形質転換
(形質転換用断片の作製)
形質転換用断片の作製は、Fujiwara et al.(Front Plant Sci. 2017 Mar 14;8:343)に記載の方法で行った。形質転換用断片の作製に用いたプライマーを表13に示す。以下、使用したプライマーを、表13に記載のプライマーNo.で記載する。
【実施例】
【0223】
【表13】
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【実施例】
【0224】
<シアニディオシゾン・メロラエ形質転換用CATベクターの作製>
シアニディオシゾン・メロラエのAPCC ORF(CMO250C)において葉緑体移行配列(60アミノ酸)をコードする1~180ヌクレオチドを、シアニディオシゾン・メロラエ 10DのゲノムDNAを鋳型として、プライマーセットNo.1/No.2を用いて、PCRにより増幅した。また、シアニディオシゾン・メロラエのβ-チューブリン ORFの下流ヌクレオチド(200bp,βt3’)を、シアニディオシゾン・メロラエ 10DのゲノムDNAを鋳型として、プライマーセットNo.3/No.4を用いて、PCRにより増幅した。CAT ORFを、pC194(pC194,Gene ID:4594904;スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)のクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子)を鋳型として、プライマーセットNo.5/No.6を用いて、PCRにより増幅した。APCCの葉緑体移行配列をコードする配列、CAT ORF、及びβ-チューブリンの下流配列を、プライマーセットNo.7/No.8を用いて増幅したpD184-O250-EGFP-URACm-Cm(Fujiwara et al., PLoS One. 2013 Sep 5;8(9):e73608)に、InFusion Cloning Kit(TAKARA)を用いてクローニングし、プラスミドpD184-CATを構築した。プラスミドpD18を鋳型として、プライマーセットNo.9/No.10を用いて、PCRによりDNA断片を増幅し、シアニディオシゾン・メロラエ形質転換用CATベクターを作製した。
【実施例】
【0225】
<新規微細藻類形質転換用CATベクターの作製>
上記で作製したプラスミドpD18を鋳型として、プライマーセットNo.11/No.12を用いて、PCRによりDNA断片を増幅し、新規微細藻類形質転換用CATベクターを作製した。
【実施例】
【0226】
(形質転換)
形質転換は、Ohnuma M et al(Plant Cell Physiol. 2008 Jan;49(1):117-20.)に記載の方法を改変して行った。シアニディオシゾン・メロラエ 10Dと、YFU3株(1倍体)と、を形質転換の親株として用いた。各親株の細胞を、50mLのMA2U培地(0.5mg/mLのウラシルを含むMA2培地)中に希釈して、OD750=0.3の濃度となるようにし、連続光(100μmol/ms)下でエアレーション(600mL ambient air/min)しながら、19時間培養した。次いで、培養液に最終濃度0.002%となるようにTween-20を添加した後、遠心分離(2,000g、5分)により細胞を回収した。回収した細胞を、270μLのMA2U培地に懸濁した。形質転換は、ポリエチレングリコール(PEG)を用いるプロトコールにより行った。
0.6gのPEG4000(Aldrich,#81240)を、450μLのMA2U培地に溶解し(95℃、10分)、60%(w/v)のPEG4000溶液を調製した。その後、PEG4000溶液を、使用するまで、ヒートブロック上で42℃に維持した。
上記で調整した各形質転換用CATベクター4μgを、90μLの水で調整した。90μLのベクター溶液、10μLの10xTF溶液(400mM (NHSO、40mM MgSO、0.3% HSO)、及び100μLのPEG4000溶液を、1.5mLチューブ中で、ピペッティングにより混合した。次いで、25μLの細胞懸濁液を、200μLのTF-CATベクター-PEG4000混合液に添加し、3~4回上下反転させて攪拌し、すぐに40mLのMA2U培地に移して、連続光(100μmol/ms)下でエアレーション(300mL ambient air/min)しながら、1日培養した。その後、遠心分離(1,500g、5分間)により細胞を回収し、2mLのMA2U培地に懸濁した。細胞を24ウェルプレート(TPP Techno Plastic Products AG)中で、連続光、42℃、5%COの条件下で、2~3日間培養した。次いで、クロラムフェニコール(CP)を培養液に添加して、10日間培養し、CP耐性形質転換体を選抜した。CP耐性形質転換体は、CPフリーのMA2U培地で洗浄して段階希釈し、MA2Uゲランガムプレート上のスターチベッドにスポットした。スターチベッド及びMA2Uゲランガムプレートは、Imamura S et al(Plant Cell Physiol. 2010 May;51(5):707-17)に記載の方法に、マイナーな改変(Fujiwara et al., PLoS One. 2013 Sep 5;8(9):e73608)を加えた方法により調製した。プレートは、5%COインキュベーター内で、コロニーが出現するまで2週間培養した。コロニーは、Fujiwara et al.(PLoS One. 2013 Sep 5;8(9):e73608)に記載の方法に従い、新たなMA2U培地プレート上のスターチベッドに移した。
【実施例】
【0227】
(クロラムフェニコール(CP)耐性の評価)
上記の形質転換後、CPを添加したMA2液体培地で培養することにより、シアニディウムシゾン・メロラエ 10D及びYFU3株(1倍体)のCP耐性形質転換体を選抜した。各CP形質転換株のCP耐性濃度を評価するために、野生株(WT)と形質転換体(TF)とを、各濃度(0,50,100,150,200,250μg/mL)のCPを含むMA2液体培地で10日間培養した。
【実施例】
【0228】
結果を図11に示す。図11中、10D_TF及び10D_WTは、それぞれ、シアニディウムシゾン・メロラエ 10DのCP耐性形質転換体及び野生株を示す。また、YFU3_TF及びYFU3_WTは、それぞれ、YFU3株(1倍体)のCP耐性形質転換体及び野生株を示す。図11に示されるように、シアニディウムシゾン・メロラエ 10D及びYFU3株(1倍体)のいずれにおいても、野生株よりも、CP耐性形質転換体の方が、高いCP濃度に耐性を示した。
【実施例】
【0229】
また、図11において培養した細胞についてCAT遺伝子の導入を確認するために、APCCの葉緑体移行配列の5’末端配列及びCAT ORFの3’末端配列に対するプライマーを設計した。プライマーの配列は、以下のとおりである。
APCC(1)フォワードプライマー:ATGTTCGTTCAGACCAGTTTCTTT(配列番号31)
CAT(650)リバースプライマー:TAAAAGCCAGTCATTAGGCCTA(配列番号32)
【実施例】
【0230】
図11において、0μg/mL、又は150μg/mLのCPで培養したシアニディウムシゾン・メロラエ 10DのCP耐性形質転換体(TF_0、TF_150)、並びに、0μg/mL、又は100μg/mLのCPで培養したYFU3株(1倍体)のCP耐性形質転換体(TF_0、TF_100)の細胞を回収し、上記プライマーセットを用いて、PCRを行った。その後、アガロースゲル電気泳動を行い、PCRによる増幅断片の有無を確認した。
【実施例】
【0231】
結果を図12に示す。図12中、「w/o TF」は、形質転換操作を行っていない細胞(野生株)を示す。図12に示すように、YFU3株(1倍体)のCP耐性形質転換体では、CP濃度0μg/mL及び100μg/mLのいずれで培養した場合でも、CAT遺伝子の増幅断片が確認された。一方、シアニディオシゾン・メロラエでは、CP濃度150μg/mLで培養したものではCAT遺伝子の増幅断片が確認されたが、CP濃度0μg/mLで培養したものではCAT遺伝子の増幅断片が確認できなかった。シアニディオシゾン・メロラエでは、CP非存在下での培養により、導入されたCAT遺伝子が脱落したものと思われる。
以上の結果より、YFU3株(1倍体)は、シアニディオシゾン・メロラエと同様に、形質転換が可能であることが示された。
【実施例】
【0232】
[実施例7]新規微細藻類(HKN1株)の形質転換
(形質転換用断片の作製)
形質転換用断片の作製に用いたプライマーを表14に示す。以下、使用したプライマーを、表14に記載のプライマーNo.で記載する。
【実施例】
【0233】
【表14】
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【実施例】
【0234】
<新規微細藻類形質転換用CATベクターの作製>
URA5.3遺伝子の上流に遺伝子導入を行うためのコンストラクトを、以下のように作製した。URA5.3遺伝子の上流配列(-2500~-501)のDNA断片を、HKN1株のゲノムDNAを鋳型として、プライマーセットNo.1/2を用いて、PCRにより増幅した。次いで、前記PCR増幅断片を、In-Fusion HD Cloning Kitを用いて、pUC19にサブクローニングした。その結果できたベクターをpURA5.3upベクターとする。
続いて、APCCの上流配列(-500~-1)のDNA断片を、HKN1株のゲノムDNAを鋳型として、プライマーセットNo.3/4を用いて、PCRにより増幅した。また、mVenus ORF(Integrated DNA Technologies株式会社で合成)を、プライマーセットNo.5/6を用いて、PCRにより増幅した。また、β-チューブリンの下流配列(+1~+250)のDNA断片を、HKN1株のゲノムDNAを鋳型として、プライマーセットNo.7/8を用いて、PCRにより増幅した。前記3つのPCR増幅断片を、In-Fusion HD Cloning Kitを用いて、pUC19にサブクローニングした。その結果できたベクターをpmVenusベクターとする。
続いて、CPCCの上流配列(-500~-1)のDNA断片を、HKN1株のゲノムDNAを鋳型として、プライマーセットNo.9/10を用いてPCRにより増幅した。また、POPのオルガネラ移行配列のDNA断片を、シアニディオシゾン・メロラエ 10DのゲノムDNAを鋳型として、プライマーセットNo.11/12を用いて、PCRにより増幅した。また、CAT ORF(Integrated DNA Technologies株式会社で合成)を、プライマーセットNo.13/14を用いて、PCRにより増幅した。また、ユビキチンの下流配列(+1~+250)のDNA断片を、HKN1株のゲノムDNAを鋳型として、プライマーセットNo.15/16を用いて、PCRにより増幅した。前記4つのPCR増幅断片を、In-Fusion HD Cloning Kitを用いて、pUC19にサブクローニングした。その結果できたベクターをpCATベクターとする。
続いて、前記pmVenusベクターを鋳型として、プライマーセットNo.17/18を用いて、PCRによりDNA断片を増幅した。また、前記pCATベクターを鋳型として、プライマーセットNo.19/20を用いて、PCRによりDNA断片を増幅した。さらに、プライマーセットNo.21/22を用いて、pURA5.3upベクターをPCRにより増幅した。次いで、前記のpmVenusベクターの増幅断片及び前記のpCATベクターの増幅断片を、In-Fusion HD Cloning Kitを用いて、前記のように増幅したpURA5.3upベクターにクローニングした。その結果としてできたpURA5.3up-mVenus-CATベクターを鋳型として、プライマーセットNo.23/24を用いて、PCRによりDNA断片を増幅した。この増幅されたDNA断片を形質転換用CATベクターとして用いた。形質転換用CATベクターの構造を、図13にPCR Productとして示した。
【実施例】
【0235】
(形質転換)
形質転換は、Ohnuma M et al(Plant Cell Physiol. 2008 Jan;49(1):117-20.)に記載の方法を改変して行った。HKN1株(1倍体)を形質転換の親株として用いた。親株の細胞を、50mLのMA2U培地(0.5mg/mLのウラシルを含むMA2培地)中に希釈して、OD750=0.3の濃度となるようにし、明暗周期(12L:12D)、光(50μmol/m s)、温度(42℃)下でエアレーション(600mL ambient air/min)しながら、60時間培養した。次いで、培養液に最終濃度0.002%となるようにTween-20を添加した後、遠心分離(2,000g、5分)により細胞を回収した。回収した細胞を、270μLのMA2U培地に懸濁した。形質転換は、ポリエチレングリコール(PEG)を用いるプロトコールにより行った。0.6gのPEG4000(Aldrich,#81240)を、450μLのMA2U培地に溶解し(95℃、10分)、60%(w/v)のPEG4000溶液を調製した。その後、PEG4000溶液を、使用するまで、ヒートブロック上で42℃に維持した。
形質転換用CATベクター4μgを、90μLの水で調製した。90μLのベクター溶液、10μLの10xTF溶液(400mM (NHSO、40mM MgSO、0.3% HSO)、及び100μLのPEG4000溶液を、1.5mLチューブ中で、ピペッティングにより混合し、TF-CATベクター-PEG4000混合液を調製した。次いで、25μLの細胞懸濁液を、200μLのTF-CATベクター-PEG4000混合液に添加し、3~4回上下反転させて攪拌し、すぐに10mLのMA2U培地に移して、連続光(20μmol/m2s)、温度(42℃)下で、2日間静置培養した。その後、遠心分離(1,500g、5分間)により細胞を回収し、塚原鉱泉培地または改変MA培地1mLに懸濁した。100μLの細胞懸濁液を、100μg/mLのCPを含む1mLの塚原鉱泉培地または改変MA培地に加え、24ウェルプレート(TPP Techno Plastic Products AG)中で、連続光(20μmol/m2s)、42℃、3%COの条件下で、7日間静置培養した。緑色の濃くなった部分を新たな100μg/mLのCPを含む1mLの塚原鉱泉培地または改変MA培地に加え、さらに7日間静置培養し、CP耐性形質転換体を選抜した。CP耐性形質転換体は、倒立顕微鏡(CKX41;Olympus)下で、先端を細くしたパスツールピペットを用いて、一細胞単離し、1mLの塚原鉱泉培地または改変MA培地で静置培養した。
改変MA培地の組成を表15に示す。
【実施例】
【0236】
【表15】
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【実施例】
【0237】
(形質転換体の確認)
単離培養したCP耐性形質転換株の細胞についてmVenus-CAT遺伝子が目的の場所に導入されていることを確認するためのプライマーを設計した(図13参照、プライマーのおおよその位置を図13下図(Genome)中に矢印で示した。)。プライマーの配列は、以下のとおりである。
フォワードプライマー:CATTGCACAGCAATGAAAAGCG(配列番号87)
リバースプライマー:ATCGAAACTGCGTAGATAGTGTCGG(配列番号88)
【実施例】
【0238】
CP形質転換体の細胞を回収し、上記プライマーセットを用いて、PCRを行い、アガロースゲル電気泳動を行った。
その結果を図14に示す。野生株(WT)では約2.5kbに増幅断片が見えるが、CP耐性形質転換株(TF)では約5.5kbに増幅断片が検出された。この結果から、形質転換株(TF)では、目的の場所(図13参照)に、mVenus-CAT遺伝子が挿入されていることが確認された。以上の結果より、HKN1(1倍体)は遺伝子ターゲッティングが可能であることが示された。
【実施例】
【0239】
さらに、蛍光顕微鏡を用いて、CP耐性形質転換株を観察し、mVenusの緑色蛍光が観察されるかを確認した。その結果を図15に示す。図15中、左図(mVenus)はmVenusの蛍光を検出した蛍光顕微鏡写真であり、中図(Chl)は葉緑体の自家蛍光を検出した蛍光顕微鏡写真であり、右図(merged)は前記2つの蛍光顕微鏡写真をマージしたものである。図15に示すように、CP耐性形質転換株では、mVenusが細胞質中に発現しており、緑色の蛍光が検出された。以上の結果より、HKN1(1倍体)は外来遺伝子の発現が可能であることが示された。
【実施例】
【0240】
[実施例8]YFU3株、HKN1株の細胞破裂処理
(藻類細胞の乾燥膨潤処理)
YFU3株(1倍体)、HKN1株(1倍体)、及びHKN1株(2倍体)を実施例5と同様に培養し、培養液1mLを遠心分離(1,500×g、2分間)した。遠心分離後の上清を捨て、藻類細胞の沈殿を等張液(10%スクロース、20mM HEPES、pH7.0)に懸濁し、遠心分離(1,500×g、3分間)を行って、藻類細胞の洗浄を行った。遠心後の上清を捨て、藻類細胞の沈殿を冷蔵庫内(4℃)で3日間放置し、藻類細胞を乾燥した。
3日後、藻類細胞を45μLの等張液(10%スクロース、20mM HEPES、pH7.0)に懸濁し、遠心分離(1,500×g、3分間)を行って、遠心上清及び沈殿を回収した。
また、強固な細胞壁を有する藻類のコントロールとして、シアニディウム・カルダリウム(Cyanidium caldarium)RK-1、強固な細胞壁を有さない藻類のコントロールとして、シアニディウムシゾン・メロラエ 10Dを培養し、上記と同様の乾燥膨潤処理を行い、遠心上清及び沈殿を得た。
【実施例】
【0241】
(SDS-ポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE))
SDS-PAGE用のサンプルを調製するために、上記遠心上清に、15μLの4×SDS-PAGEサンプルバッファーを添加した。また、遠心沈殿に、60μLの1×SDS-PAGEサンプルバッファーを添加した。前記のように調製した上清サンプル及び沈殿サンプルのSDS-PAGEを行った。SDS-PAGE後のゲルをクマシーブリリアントブルーで染色し、遠心上清及び沈殿中のタンパク質を確認した。
【実施例】
【0242】
結果を図16に示す。YFU3株(1倍体)、HKN1株(1倍体)、及びシアニディオシゾン・メロラエ 10Dでは、乾燥膨潤処理後の上清及び沈殿のいずれでも複数種類のタンパク質が検出された。この結果により、YFU3株(1倍体)、HKN1株(1倍体)、及びシアニディオシゾン・メロラエ 10Dは、乾燥膨潤処理により細胞破裂を生じることが確認された。一方、HKN1株(2倍体)、及びシアニディウム・カルダリウムRK-1では、乾燥膨潤処理後の上清において、タンパク質が全く検出されなかった。この結果は、HKN1株(2倍体)、及びシアニディウム・カルダリウムRK-1の細胞は、乾燥膨潤処理により細胞破裂が生じないことを示す。
【実施例】
【0243】
[実施例9]1倍体の掛け合わせによる2倍体の作製
(HKN1株(1倍体)どうしの掛け合わせ)
HKN1株(1倍体)のNo.1株とNo.5株とを混合し、MA培地を用いて、40℃、光50μmol/ms、明暗周期(12L:12D)、2%COの培養条件下で、3週間培養した。3週間培養後、さらに新しい培地に植え継ぎ(20倍希釈)、1週間培養した。その後、藻類細胞を顕微鏡で観察した。その結果、強固な細胞壁を有する2倍体様の細胞が確認された(図17A)。
前記の2倍体様の細胞を採取し、DAPI染色を行って蛍光強度の定量を行った。比較のために、HKN1株(1倍体)のDAPI染色も行った。その結果を図17Bに示す。
図17Bに示されるように、2倍体様の細胞は、1倍体の株と比較し、2倍の蛍光強度を示した。この結果から、2倍体様の細胞は、2倍体であることが確認された。以上の結果から、1倍体の細胞形態を混合して培養することにより、2倍体の細胞形態を作製できることが明らかとなった。
【実施例】
【0244】
(YFU3株(1倍体)どうしの掛け合わせ)
YFU3株(1倍体)について上記と同様の操作を行ったところ、2倍体の細胞形態が出現したことを光学顕微鏡により確認した。
【実施例】
【0245】
[実施例10]ガルデリア属に属する藻類の1倍体の細胞形態の作製
(強固な細胞壁を有さない細胞形態の作出:G.sulphuraria)
(方法(a))
塚原鉱泉培地(Hirooka et al. 2016 Front in Microbiology)または改変MA培地1mLを24穴プレートに入れて、Galdieria sulphuraria SAG108.79を各ウェルに約10個程度投入し、温度42℃、光50μmol/ms,CO 2%で1週間培養した。この培地中には、オタマジャクシ様の細胞と丸い細胞が混在していた。顕微鏡下、先端を細くしたパスツールピペットを用いて、オタマジャクシ様の細胞を単離し、さらに、MA培地で42℃、光50μE/mS,CO 2%で培養した。
【実施例】
【0246】
(方法(b))(三段培養)
Galdieria sulphuraria SAG108.79を、MA培地でプラトーに達するまで培養し、この培養液から細胞群を取り出して、100倍に希釈してさらにMA培地に植え継ぎをした。3日間の培養後、オタマジャクシ様の細胞が出現したため、この培養液から顕微鏡観察下、先端を細くしたパスツールピペットを用いて、オタマジャクシ様の形をした細胞を単離し、さらに、MA培地で42℃、光50μE/mS,CO 2%で培養した。
図18Aは、Galdieria sulphuraria SAG108.79の通常の細胞形態(左図)と、前記細胞の培養後に確認された強固な細胞壁を有さない細胞形態(右図)を示す。
【実施例】
【0247】
(強固な細胞壁を有さない細胞形態の作出:G.partita)
上記(方法(a))と同様の方法で、Galdieria sulphuraria SAG108.79の代わりに、Galdieria partita NBRC 102759(NITE Biological Resource Centerから入手)を用いて一倍体を作出した。図18Bは、Galdieria partita NBRC 102759の通常の細胞形態(左図)と、前記細胞の培養後に確認された強固な細胞壁を有さない細胞形態(右図)を示す。
【実施例】
【0248】
(光学顕微鏡観察)
上記、いずれの培養においても、強固な細胞壁を有さない細胞形態は、凍結融解等で容易に細胞を破砕することができ、細胞内容物を抽出することができた。ガルデリア属に属する藻類の培養中に出現した強固な細胞壁を有さない細胞形態は、オタマジャクシ様の細胞と丸い細胞とが混在していた。図18A及び図18Bの左図中、矢印で示すものは、減数分裂後に脱ぎ捨てた母細胞壁と考えられる。
【実施例】
【0249】
(アレル解析)
Galdieria sulphuraria SAG108.79の培養により出現した強固な細胞壁を有さない細胞形態の細胞を採取し、ゲノムDNAの一領域をPCRで増幅し、サンガー法により配列解析を行った。比較のために、強固な細胞壁を有する細胞形態の細胞についても、同一領域の配列解析を行った。その結果を図19に示す。
強固な細胞壁を有する細胞形態では、2種類のアレル配列(2N_allele1(配列番号61)、2N_allele2(配列番号62))を有していた。一方、強固な細胞壁を有さない細胞形態では、2N_allele1及び2N_allele2のいずれか一方しか有さなかった。この結果から、強固な細胞壁を有さない細胞形態が、1倍体であることが確認された。したがって、ガルデリア属に属する藻類も、2倍体の細胞形態と、1倍体の細胞形態と、を有することが示された。
【実施例】
【0250】
以下、Galdieria sulphuraria SAG108.79の2倍体及び1倍体を、それぞれ、SAG108.79(2倍体)及びSAG108.79(1倍体)と記載する。Galdieria partita NBRC 102759の2倍体及び1倍体を、それぞれ、NBRC 102759株(2倍体)及びNBRC 102759(1倍体)と記載する。
【実施例】
【0251】
[実施例11]ガルデリア属に属する藻類の細胞破裂処理
YFU3株(1倍体)等に替えて、SAG108.79(2倍体)、SAG108.79(1倍体)、NBRC 102759株(2倍体)及びNBRC 102759(1倍体)を用いたこと以外は、実施例8と同様に、細胞破裂処理を行った。次いで、実施例8と同様に、SDS-PAGEを行った。SDS-PAGE後のゲルをクマシーブリリアントブルーで染色し、遠心上清及び沈殿中のタンパク質を確認した。
【実施例】
【0252】
結果を図20に示す。SAG108.79(1倍体)及びNBRC 102759株(1倍体)では、乾燥膨潤処理後の上清及び沈殿のいずれでも複数種類のタンパク質が検出された。この結果により、SAG108.79(1倍体)及びNBRC 102759株(1倍体)は、乾燥膨潤処理により細胞破裂を生じることが確認された。一方、SAG108.79(2倍体)及びNBRC 102759株(2倍体)では、乾燥膨潤理後の上清において、タンパク質が全く検出されなかった。この結果は、SAG108.79(2倍体)及びNBRC 102759株(2倍体)の細胞は、乾燥膨潤処理により細胞破裂が生じないことを示す。
【実施例】
【0253】
[実施例12]ビタミン産生能増強株の作製
(形質転換株の作製)
EGFP ORFの替わりに、シアニディオシゾン・メロラエのCML326C(トコフェロールシクラーゼ:TC)の3’末端に3×HAタグを付加したDNA断片を用いたこと以外は、上記実施例2の「<EGFP/URACm-Cm断片の作製>」と同様の方法で、pD184-O250-TC-URACm-Cmベクターを作製した。さらに、CMP166Cの上流配列(-500~-1)、CMN202C(ホモゲンチジン酸フィチルトランスフェラーゼ:HPT)の3’末端に3×FLAGタグを付加したもの、及びCMK296Cの下流配列(+1~+278)をPCRにより増幅し、In-Fusion HD Cloning Kitを用いて、pD184-O250-TC-URACm-CmのURACm-Cm選択マーカーの下流に導入し、pD184-O250-VE-URACm-Cmベクターを作製した。pD184-O250-VE-URACm-Cmベクターを鋳型として、表7のプライマーセットNo.19/20を用いて、VE/URACm-Cm断片をPCRにより増幅した。増幅されたDNA断片(VE/URACm-Cm断片)を形質転換に用いた。図21に、形質転換用のDNA断片(VE/URACm-Cm断片)の構成を示す。当該DNA断片(VE/URACm-Cm断片)を用いて、ウラシル栄養要求性の変異株である、シアニディオシゾン・メロラエ M4の形質転換を行った。形質転換及び形質転換後の培養は、実施例2と同様の方法で行った。次いで、実施例2と同様の方法で、抗HA抗体又は抗FLAG抗体を用いて、イムノブロッティングを行った。
【実施例】
【0254】
結果を図22に示す。左図は、抗HA抗体を用いてイムノブロッティングを行った結果を示し、右図は、抗FLAG抗体を用いてイムノブロッティングを行った結果を示す。図22中、「GFP」は、EGFP/URACm-Cm断片(図1A)で形質転換された細胞(EGFP/URACm-Cm断片形質転換株)を示す。「VE」は、VE/URACm-Cm断片で形質転換された細胞(VE/URACm-Cm断片形質転換株)を示す。
図22の結果から、VE/URACm-Cm断片形質転換株は、トコフェロールシクラーゼ及びホモゲンチジン酸フィチルトランスフェラーゼを発現していることが確認された。
【実施例】
【0255】
(形質転換株における細胞内ビタミンE量の測定)
EGFP/URACm-Cm断片形質転換株、及びVE/URACm-Cm断片形質転換株を、MA2培地中で増殖させた。培養は、連続白色光、40℃の条件下で行った。培養後、細胞を遠心分離により回収し、前記回収した細胞から75%エタノールにより可溶物を抽出した。抽出した可溶物中のビタミンEを定量した。ビタミンEの定量は、一般財団法人 日本食品分析センターに委託して、高速液体クロマトグラフ法により行った。
【実施例】
【0256】
結果を表16に示す。表16では、EGFP/URACm-Cm断片形質転換株におけるビタミンE濃度(細胞乾重量当たり)を1.0としたときの相対値で示した。
【実施例】
【0257】
【表16】
JP2019107385A1_000018t.gif
【実施例】
【0258】
表16に示すように、VE/URACm-Cm断片形質転換株では、ネガティブコントロールであるEGFP/URACm-Cm断片形質転換株と比較して、ビタミンE濃度が高かった。この結果から、シアニディオシゾン・メロラエでは、形質転換により、ビタミンEの細胞内濃度を高めることが可能であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0259】
本発明によれば、産業利用が可能な新規微細藻類及びその使用が提供される。本発明により提供される新規微細藻類は、栄養成分組成物、栄養剤、栄養成分補給用組成物、及び栄養成分の製造方法等に利用可能である。または、本発明により提供される新規微細藻類は、各種加工食品、機能性食品、栄養補助食品どの食品、飼料、ペットフード、化粧品等に利用可能である。
また、本発明によれば、アミノ酸類やビタミン類等の栄養成分を豊富に含む、栄養成分組成物又は栄養剤が提供される。当該栄養成分組成物又は栄養剤は、各種加工食品、機能性食品、栄養補助食品などの食品や、飼料、ペットフード、化粧品等に利用可能である。
また、本発明によれば、アミノ酸類、ビタミン類、タンパク質、脂質、食物繊維等の栄養成分の製造方法が提供される。
図面
【図1A】
0
【図1B】
1
【図1C】
2
【図2】
3
【図3】
4
【図4】
5
【図5】
6
【図6A】
7
【図6B】
8
【図7】
9
【図8】
10
【図9】
11
【図10】
12
【図11】
13
【図12】
14
【図13】
15
【図14】
16
【図15】
17
【図16】
18
【図17A】
19
【図17B】
20
【図18A】
21
【図18B】
22
【図19】
23
【図20】
24
【図21】
25
【図22】
26