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明細書 :シリカ系無機化合物の表面修飾方法、アルカン類の分解方法及びアルコールの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2019-210187 (P2019-210187A)
公開日 令和元年12月12日(2019.12.12)
発明の名称または考案の名称 シリカ系無機化合物の表面修飾方法、アルカン類の分解方法及びアルコールの製造方法
国際特許分類 C01B  33/159       (2006.01)
FI C01B 33/159
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2018-107645 (P2018-107645)
出願日 平成30年6月5日(2018.6.5)
発明者または考案者 【氏名】水谷 義
【氏名】高橋 良光
出願人 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
個別代理人の代理人 【識別番号】100076406、【弁理士】、【氏名又は名称】杉本 勝徳
【識別番号】100117097、【弁理士】、【氏名又は名称】岡田 充浩
審査請求 未請求
テーマコード 4G072
Fターム 4G072AA26
4G072AA41
4G072BB05
4G072BB13
4G072BB15
4G072CC10
4G072GG02
4G072GG03
4G072HH16
4G072HH19
4G072JJ47
4G072LL15
4G072MM02
4G072MM11
4G072MM33
4G072QQ06
4G072RR12
4G072TT05
4G072TT08
4G072TT09
4G072UU11
要約 【課題】ハイブリッド材料をもたらす新規なシリカ系無機化合物の表面修飾方法であり、当該表面修飾方法において反応性の乏しいアルカン類を用いることでその有効利用を可能とし、さらには、アルカン類を分解する方法及びアルカン類からアルコールを製造する方法の提供。
【解決手段】表面修飾方法は、シリカ系無機化合物の表面にアルカン類を存在させた状態で加熱処理することにより、アルカン類に由来する有機物をシリカ系無機化合物の表面に吸着させる。アルカン類の分解方法は、前記加熱処理により、アルカン類をシリカ系無機化合物の表面で分解する。アルコールの製造方法は、前記加熱処理によりアルカン類に由来する有機物をシリカ系無機化合物の表面に吸着させた後、アルカリで加水分解することにより、シリカ系無機化合物からアルカン類に由来するアルコールを脱離させる。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
シリカ系無機化合物の表面にアルカン類を存在させた状態で加熱処理することにより、前記アルカン類に由来する有機物を前記シリカ系無機化合物の表面に吸着させる、シリカ系無機化合物の表面修飾方法。
【請求項2】
前記アルカン類が、アルカン、シクロアルカン及びアルキルベンゼンから選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のシリカ系無機化合物の表面修飾方法。
【請求項3】
前記加熱処理の条件が100~250℃で10分~2時間である、請求項1又は2に記載のシリカ系無機化合物の表面修飾方法。
【請求項4】
シリカ系無機化合物の表面にアルカン類を存在させた状態で加熱処理することにより、前記アルカン類を前記シリカ系無機化合物の表面で分解する、アルカン類の分解方法。
【請求項5】
シリカ系無機化合物の表面にアルカン類を存在させた状態で加熱処理することにより、前記アルカン類に由来する有機物を前記シリカ系無機化合物の表面に吸着させた後、アルカリで加水分解することにより、前記シリカ系無機化合物から前記アルカン類に由来するアルコールを脱離させる、アルコールの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ系無機化合物の表面修飾方法、アルカン類の分解方法及びアルコールの製造方法に関し、特に、反応性の乏しいアルカン類を用いて温和な条件でシリカ系無機化合物を表面修飾する方法並びにこの方法を応用してアルカン類を分解する方法及びアルコールを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、セラミックス部品は、それを用いた電子デバイスの市場の多様化により、様々な用途に使用されている。そのため、セラミックス部品はその用途に合わせ、小型化や、高強度化、長寿命化等の高い機能性と安定性が求められるようになった。しかし、トップダウン式手法が主に用いられる無機材料では耐久性や耐熱性には優れているが、小型化に限界がある。
【0003】
一方、ボトムアップ式手法が主として用いられている有機材料は加工性に優れ、柔軟性や耐衝撃性があり、分子から構成されるため、さらなる小型化および様々な機能を持たせることができる材料として期待されている。
しかし、有機材料だけで電子部品を作ることは困難である。また、セラミックス電子部品などの工場の生産プロセスにおいて、メッキ処理時などでセラミックス部品を酸性溶液につける過程があるが、実際に製品で使用されているセラミックスは混合物であるので、酸性溶液につけるとセラミックスの一部の成分が溶け出してしまう。そのため、機械強度が低くなり壊れやすくなる可能性がある。
【0004】
そこで、近年注目されているのが、有機材料の機能性および無機材料の安定性を組み合わせ、両者の欠点を可能な限り排除した有機-無機ハイブリッド材料である。
有機材料と無機材料が分子レベルで分散したハイブリッド材料には、ボトムアップ方式の手法が適用でき、さらに、セラミックス部品の欠点である低いじん性が改善できると期待される。その応用例として、有機-無機ハイブリッド電子材料があり、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)や有機トランジスタなどがある。また、自動車のフロントガラスとして使われている合わせガラスも有機-無機ハイブリッド材料の一つである。ガラスとガラスの間に中間膜を挟むことで、割れたガラスの破片を落ちにくくする脱落防止性能や耐貫通性能などの機能に優れたガラスを作ることが可能になった。このように、多岐にわたる分野で有機-無機ハイブリッド材料は活躍している。
【0005】
ハイブリッド材料の作製方法として、表面修飾によるハイブリッド化がある。有機-無機界面の構築に関する研究成果として、末端に水酸基をもつポルフィリンの溶液をシリケートガラスにスピンコートし、加熱処理することで、シリケートガラス表面にポルフィリンの単分子膜を作製できることが報告されている(非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】N. Minamijima et. al. Bull. Chem. Soc. Jpn. 2011, 84, 794-801.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記非特許文献1に記載の研究は、有機活性層と無機電極の界面の安定化などの電子的な応用を目的としており、セラミックス部品の機械強度や耐薬品性の向上などを行うには、疎水性分子による被覆膜の形成や高分子などによる表面修飾が必要であると考えられる。
そこで、本発明は、ハイブリッド材料をもたらす新規なシリカ系無機化合物の表面修飾方法を提案するものであり、当該表面修飾方法において反応性の乏しいアルカン類を用いることでその有効利用を可能とし、さらには、アルカン類を分解する方法及びアルカン類からアルコールを製造する方法をも提案することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の構成を備える。
すなわち、本発明にかかるシリカ系無機化合物の表面修飾方法は、シリカ系無機化合物の表面にアルカン類を存在させた状態で加熱処理することにより、前記アルカン類に由来する有機物を前記シリカ系無機化合物の表面に吸着させるものである。
【0009】
また、本発明にかかるアルカン類の分解方法は、シリカ系無機化合物の表面にアルカン類を存在させた状態で加熱処理することにより、前記アルカン類を前記シリカ系無機化合物の表面で分解するものである。
【0010】
また、本発明にかかるアルコールの製造方法は、シリカ系無機化合物の表面にアルカン類を存在させた状態で加熱処理することにより、前記アルカン類に由来する有機物を前記シリカ系無機化合物の表面に吸着させた後、アルカリで加水分解することにより、前記シリカ系無機化合物から前記有機物としてアルコールを脱離させるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシリカ系無機化合物の表面修飾方法によれば、反応性の乏しいアルカン類を用いて、温和な条件で無機物の表面修飾ができる。有機物による表面修飾により、疎水性保護膜の形成や機械強度の向上などが期待できる。
また、本発明のアルカン類の分解方法では、反応性の乏しいアルカン類を低分子化することができ、プラスチックのリサイクルプロセスなどに利用することができる。
本発明のアルコールの製造方法では、反応性の乏しいアルカン類からアルコールを製造することができ、アルカン類に官能基を導入する方法としても利用可能性がある。
いずれにおいても、最も基本的な構造の有機化合物であるアルカン類を利用するという点で、汎用性が非常に高い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1~4における熱分析結果を示す図である。
【図2】実施例4におけるIR測定結果を示す図である。
【図3】実施例5における1H NMR測定結果を示す図である。
【図4】オクタデカンの各水素原子の化学シフト値を示す図である。
【図5】実施例5における13C NMR測定結果を示す図である。
【図6】オクタデカンの各炭素原子の化学シフト値を示す図である。
【図7】実施例5におけるFAB MS測定結果を示す図である。
【図8】実施例5における熱分析結果を示す図である。
【図9】実施例4,6におけるIR測定結果を示す図である。
【図10】実施例7における熱分析結果の結果を示す図である。
【図11】実施例7におけるIR測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明にかかるシリカ系無機化合物の表面修飾方法、アルカン類の分解方法及びアルコールの製造方法の好ましい実施形態について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。

【0014】
〔シリカ系無機化合物〕
本発明で用いるシリカ系無機化合物としては、例えば、シリカゲルやガラスなどが挙げられる。
本発明においては、シリカ系無機化合物のシラノール基が、アルカン類を活性化する触媒の作用をもたらし、温和な条件でアルカン類の分解や吸着が進行するものと推測される。

【0015】
〔アルカン類〕
本発明において、アルカン類は、飽和炭化水素を有する化合物をいい、例えば、アルカン、シクロアルカン、アルキルベンゼンなどが含まれる。

【0016】
アルカンとしては、直鎖アルカン、分岐アルカンのいずれでも良い。特に限定するわけではないが、例えば、炭素数12~18の直鎖アルカンや分岐アルカンが好ましく挙げられる。

【0017】
シクロアルカンとしては、特に限定するわけではないが、例えば、炭素数5~12のシクロアルカンが好ましく挙げられる。環上の水素がアルキル基で置換されたものであってもよく、アルキル基の炭素数、アルキル基の置換数、置換位置なども特に限定されない。

【0018】
アルキルベンゼンとしては、特に限定するわけではないが、例えば、炭素数7~18のアルキルベンゼンが好ましく挙げられる。環上のアルキル鎖は複数存在しても良く、その置換位置も特に限定されない。

【0019】
表面処理を行う上では、アルカン類は液体であることが好ましい。すなわち、沸点が低い場合は表面処理の際に揮発してしまうおそれがあり、融点が高すぎると、加熱しても液体にならずに固体どうしの反応となり反応が進みにくくなるおそれがあるため、このような観点から、アルカン類を液体状態で表面処理に供することができるように、その種類を選定することが好ましい。
表面処理における加熱温度によっても異なるが、例えば、沸点が200~400℃の範囲であることが好ましく、200~300℃の範囲であることがより好ましい。なお、沸点が低くても、オートクレーブのような加圧できる装置を用いることにより、液体状態を維持することは可能である。

【0020】
〔表面処理〕
表面処理は、シリカ系無機化合物の表面にアルカン類を存在させた状態で、加熱処理することにより行うことができる。例えば、シリカ系無機化合物をアルカン類に浸漬するなどして、シリカ系無機化合物表面にアルカン類をコーティングする方法などが挙げられる。

【0021】
表面処理における加熱温度は、特に限定するわけではないが、例えば、100~250℃であることが好ましく、120~200℃であることがより好ましい。加熱温度が低すぎると、シリカ系無機化合物とアルカン類との反応が不十分となるおそれがあり、高すぎると、アルカン類やその分解物が揮発して消滅するおそれがある。

【0022】
表面処理における加熱時間は、特に限定するわけではないが、例えば、10分~2時間であることが好ましく、10分~1時間であることがより好ましい。加熱時間が短すぎると、シリカ系無機化合物とアルカン類との反応が不十分となるおそれがあり、長すぎると、アルカン類やその分解物が揮発して消滅することにより有機物の吸着量が減少するおそれがある。

【0023】
この表面処理では、アルカン類に由来する有機物が、シリカ系無機化合物の表面に吸着する。吸着した有機物には、アルカン類がシリカ系無機化合物の触媒作用を受けて化学変化した種々の有機物が含まれる。
ここで、本発明者の検討によれば、表面処理における加熱の際に、アルカン類の沸点よりも低温度の温度条件であっても有機物の蒸発が認められた。このことから、シリカ系無機化合物の表面にアルカン類を存在させた状態で、加熱処理することで、アルカン類が分解していると考えられる。具体的には、シリカ系無機化合物が固体酸触媒となり、クラッキングが起こることで、アルケンが生成し、その後シリカ系無機化合物に吸着すると考えられる。
従って、シリカ系無機化合物の表面にアルカン類を存在させた状態で、加熱処理する方法は、アルカン類の分解方法として捉えることもでき、これにより、プラスチックのリサイクルプロセスなどへの応用が期待できる。

【0024】
〔加水分解〕
表面処理後、水酸化ナトリウムなどのアルカリで加水分解することにより、シリカ系無機化合物表面から有機物を脱離させることができる。
脱離した有機物は、表面処理に使用したアルカン類に由来する様々な化合物の混合物であるが、その中には、少なくともアルコールが含まれる。そして、このアルコールには、1級アルコール、2級アルコールや、2個以上の水酸基を有するものなど、種々のアルコールが含まれる。
従って、表面処理及び加水分解の一連の工程は、アルコールの製造方法として利用することができる。
【実施例】
【0025】
以下、実施例を用いて、本発明にかかるシリカ系無機化合物の表面修飾方法、アルカン類の分解方法及びアルコールの製造方法について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0026】
〔実施例1〕
シリカゲル「CARiACT Q-6」(富士シリシア株式会社製、比表面積450m2/g、平均細孔径6nm、細孔体積0.6mL/g)をビーカーに2g入れて、水分を飛ばすために50℃で10分間真空乾燥した。
その後、オクタデカンを8g入れて、オイルバスを180℃とし、0.5時間加熱した。加熱後、アセトンを加え、超音波洗浄して吸引濾過し、得られた粉末試料を50℃で10分間真空乾燥したのち、熱分析を行った。
【実施例】
【0027】
〔実施例2~4〕
表面処理におけるオイルバスでの加熱時間を1時間、1.5時間、2時間にそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様にして、粉末試料を得た。各粉末試料について、実施例1と同様に、熱分析を行った。実施例4の粉末試料(加熱時間2時間)については、IR測定も行った。
【実施例】
【0028】
〔実施例5〕
実施例4で得た粉末試料(加熱時間2時間)を用いて、アルカリによる加水分解を行った。
具体的には、まず、洗浄済みの粉末試料1gをサンプル瓶に入れ、0.1MのNaOH水溶液を5mL注ぎ、50℃に設定したオイルバスに入れ1時間反応させた。反応後、オイルバスから取り出し、HCl溶液で水溶液を中性にした。なお、中性かどうかはpH試験紙で確認した。
次にその中性にした水溶液を吸引ろ過し、ろ液とシリカゲルに分離した。そのろ液をクロロホルムで分液し、有機相の液体のみ集めた。集めた液体をエバポレーターにより乾燥させ、有機物を得た。そして、アルカリ加水分解により有機物が外れた状態のシリカゲルを、アセトンおよびクロロホルムで洗浄した後、50℃で10分間真空乾燥させ、熱分析を行なった。
アルカリ加水分解によって得られた有機物は、1H NMR(500MHz、CDCl3、内部標準:TMS)、13C NMR(125MHz、CDCl3、内部標準:TMS)、FAB MS測定(マトリックスなし、キャリブレーション:PEG300)を行なった。
【実施例】
【0029】
熱分析における有機物の吸着量は、水の重量を除くため約120℃の時の重量をシリカゲル+有機物の重量とし、下式により求めた。
【実施例】
【0030】
【数1】
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【実施例】
【0031】
〔実施例6〕
シリカゲル「CARiACT Q-6」をビーカーに2g入れ、水分を飛ばすために50℃で10分間真空乾燥した。その後、オクタデカンを4g加えて、80℃のオイルバスで、2時間加熱した。加熱後は、室温まで放冷後、アセトンを加え、超音波照射して吸引濾過し、得られた粉末試料を50℃で10分間真空乾燥した。この試料について、熱分析およびIRの分析を行なった。
【実施例】
【0032】
〔実施例7〕
シリカゲル「CARiACT Q-6」をビーカーに1g入れ、水分を飛ばすために50℃で10分間真空乾燥した。その後、ドデシルベンゼンを3g加えて、180℃のオイルバスで、3時間加熱した。加熱後は、室温まで放冷後、アセトンを加え、超音波照射を行い、吸引濾過し、得られた粉末試料を50℃で10分間真空乾燥した。この試料について、熱分析およびIRの分析を行なった。
【実施例】
【0033】
〔結果及び考察〕
<表面処理による有機物の吸着について>
実施例1~4の粉末試料について、熱分析結果(TG-DTA。昇温速度20℃/min、空気雰囲気)を図1(TG-DTA曲線)に示す。また、熱分析結果から算出される有機物の吸着量(重量%)を下表1に示す。
【実施例】
【0034】
【表1】
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【実施例】
【0035】
上記表1から、180℃という比較的穏やかな条件であっても官能基をもたないアルカンが反応することが分かった。また、DTAの熱分解のピークが高温にシフトしたことから、反応しやすい部分がシリカゲルに吸着することにより、熱耐性が上がったのではないかと思われる。
反応時間が0.5時間から1.5時間に長くなると有機物の吸着量が増大することが分かった。
【実施例】
【0036】
実施例4の粉末試料について、IR測定の結果を図2に示す。
図2に示す結果から、アルキル基のピークが2850および2920cm-1から2860および2930cm-1の高波数側にシフトしていたことから、単体に比べてゴーシュ/トランス配座比が変化し、トランス配座が減少し、ゴーシュ配座が増加していると思われる。
【実施例】
【0037】
<アルカリ加水分解について>
実施例5において、アルカリ加水分解により脱離した有機物の1H NMRの結果を図3に示す。また、オクタデカンにおける各水素原子の化学シフト値を図4に示す。
図3から、1-オクタデカノールと類似したOH基と思われるピークが3.5ppmに確認された。このことから、アルカンからアルコールに変化していることが示唆された。
そこで、どのような物質が生成しているか確かめるため、次に、13C NMRによる測定を行なった。
【実施例】
【0038】
実施例5において、アルカリ加水分解により脱離した有機物の13C NMRの結果を図5に示す。また、オクタデカンにおける各炭素原子の化学シフト値を図6に示す。
図5からは、63および68ppmに1級と2級アルコールと思われるピークが確認できた。そのことから、アルカンからアルコールへの酸化反応が起きていることが示唆された。しかし、TLC分析の結果、オクタデカンと1-オクタデカノールと思われるスポット以外にも多数のスポットが確認されたことから様々な反応が起きていると思われる。
【実施例】
【0039】
実施例5において、アルカリ加水分解により脱離した有機物のFAB MSの結果を図7に示す。
図7からも、オクタデカンと1-オクタデカノール以外に、OH基が2個付いていると思われるピークやその他の生成物と思われるピークが確認された。
【実施例】
【0040】
実施例5の粉末試料について、熱分析結果(TG-DTA。昇温速度20℃/min、空気雰囲気)を図8(TG-DTA曲線)に示す。
上記実施例4の試料(反応時間2時間で表面処理したのち、アルカリによる脱離する前の試料)と、実施例5の試料(実施例4の試料をアルカリで加水分解し、アセトンおよびクロロホルムで洗浄した後の試料)について、TGによって求めた吸着量(重量%)を比較すると、表2に示すとおりとなった。
【実施例】
【0041】
【表2】
JP2019210187A_000005t.gif
【実施例】
【0042】
上記結果から、吸着した有機物はアルカリで脱離しやすく、アルカリに対して不安定であることが分かった。
【実施例】
【0043】
<吸着反応について>
オクタデカンをシリカゲルと1.5時間180℃で反応させると、有機物の蒸発が認められた。他方、オクタデカンのみを180℃で加熱しても、沸点が316℃でありほとんど蒸発しなかった。このことから、シリカゲルが固体酸触媒となり、下式に示すクラッキングが起こることでアルケンが生成し、その後シリカゲルに吸着すると考えられる。
【実施例】
【0044】
【化1】
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【実施例】
【0045】
クラッキングに関するHaag-Dessauの反応機構では、アルカンに固体酸によりプロトン化が起こり、カルボニウムイオンが生成し、これがアルカンとカルベニウムイオンに分解し、カルベニウムイオンがアルケンとなり、触媒にプロトンを戻すとされている。このようなアルケンやカルベニウムイオンが生成すれば、シリカゲルと共有結合で結合することが可能である。
ただし、ゼオライトなどの固体酸でのアルカンのクラッキング反応は500℃前後で起こる反応であり、今回のような低温で進行する反応では、どのような反応機構であるかは今後検討する必要がある。
【実施例】
【0046】
<加熱温度について>
実施例4の粉末試料と実施例6の粉末試料について、IR測定の結果を図9に示す。
図9から、180℃で加熱処理した試料(実施例4)は、2900cm-1付近にC-H伸縮振動のピークが確認でき、有機物が吸着していることが分かるのに対し、80℃で加熱処理した試料(実施例6)では、C-H伸縮のピークが確認できなかった。このことから、加熱温度が低いと有機物の吸着が起き難いことが分かった。
【実施例】
【0047】
<アルカン以外のアルカン類への適用可能性について>
実施例7の粉末試料について、熱分析(TG)結果を図10に示す。また、IRスペクトルの結果を図11に示す。
図10から、200℃から1000℃にかけて重量減少が認められ、この曲線から有機物の吸着量は12重量%であることが分かった。
また、図11から、2900cm-1付近にC-H伸縮振動のピークが確認でき、有機物が吸着していることが分かった。
実施例7の上記結果から、本発明は、アルカンだけでなく、アルキルベンゼンなどの他のアルカン類にも適用可能であることが分かった。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
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【図11】
10