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明細書 :チッ化ホウ素/ジルコニア‐アルミナ系コンポジットの製造方法及び、優れた硬度及び靱性を有するチッ化ホウ素/ジルコニア‐アルミナ系コンポジット

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-189759 (P2020-189759A)
公開日 令和2年11月26日(2020.11.26)
発明の名称または考案の名称 チッ化ホウ素/ジルコニア‐アルミナ系コンポジットの製造方法及び、優れた硬度及び靱性を有するチッ化ホウ素/ジルコニア‐アルミナ系コンポジット
国際特許分類 C04B  35/488       (2006.01)
C04B  35/645       (2006.01)
C04B  35/5835      (2006.01)
B23B  27/14        (2006.01)
FI C04B 35/488
C04B 35/645 500
C04B 35/5835
B23B 27/14 B
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2019-094337 (P2019-094337)
出願日 令和元年5月20日(2019.5.20)
発明者または考案者 【氏名】廣田 健
【氏名】加藤 将樹
【氏名】小菅 優太
出願人 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
個別代理人の代理人 【識別番号】110000475、【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 3C046
Fターム 3C046FF35
3C046FF42
3C046FF51
3C046FF55
要約 【課題】高硬度・強靱性チッ化ホウ素/ジルコニア‐アルミナ系コンポジット及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ジルコニア(ZrO)及びイットリア(Y)としてのモル比率が97.0:3.0~98.0:2.0であるY部分安定化ZrO粉末と、アルミナ(Al)粉末を80:20~75:25のモル比率にて混合してなるY部分安定化ZrO/Al混合粉体を準備し(工程A)、立方晶チッ化ホウ素(c-BN)粉体を準備し、当該c-BN粉体と、前記Y部分安定化ZrO/Al混合粉体を30:70~60:40の体積比率で混合し、得られた混合粉体を冷間静水圧プレスにて成形し(工程B)、前記工程Bで得られた成形体を耐熱ガラス容器内に封入し、不活性ガス雰囲気下で熱間静水圧プレスにて焼結を行う(工程C)。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の工程A~C:
工程A:ジルコニア(ZrO)及びイットリア(Y)としてのモル比率が97.0:3.0~98.0:2.0であるイットリア部分安定化ジルコニア粉末と、アルミナ(Al)粉末を80:20~75:25のモル比率にて混合してなるイットリア部分安定化ジルコニア/アルミナ混合粉体を準備する工程、
工程B:立方晶チッ化ホウ素粉体を準備し、当該立方晶チッ化ホウ素粉体と、前記イットリア部分安定化ジルコニア/アルミナ混合粉体を30:70~60:40の体積比率にて混合し、得られた混合粉体を冷間静水圧プレスにて成形する工程、及び
工程C:前記工程Bで得られた成形体を耐熱ガラス容器内に封入し、不活性ガス雰囲気下で熱間静水圧プレスにて焼結を行う工程
を含むことを特徴とするチッ化ホウ素/ジルコニア‐アルミナ系コンポジットの製造方法。
【請求項2】
前記工程Cにおける熱間静水圧プレスを、温度1200~1300℃、圧力100MPa以上、焼結時間1~4時間の条件にて行うことを特徴とする請求項1に記載のチッ化ホウ素/ジルコニア‐アルミナ系コンポジットの製造方法。
【請求項3】
チッ化ホウ素とイットリア部分安定化ジルコニア/アルミナの体積比率が30:70~60:40で、前記イットリア部分安定化ジルコニアにおけるジルコニアとイットリアのモル比率が97.0:3.0~98.0:2.0で、前記イットリア部分安定化ジルコニアと前記アルミナのモル比率が80:20~75:25であり、20GPa以上のビッカース硬度Hと、12MPa・m1/2以上の破壊靭性値KICを有することを特徴とするチッ化ホウ素/ジルコニア‐アルミナ系コンポジット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高硬度・強靱性を有したチッ化ホウ素/ジルコニア‐アルミナ系コンポジット(c-BN/〔ZrO(Y)‐Al〕系コンポジット)及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硬質素材の加工には高硬度の炭化タングステンWCや、チッ化チタンTiNをアルミナ基材にコーティングしたコンポジット工具が使用されているが、WCやTiNでは硬度が不足し、且つ、このTiN系コンポジットの硬度では十分とは言えず、また靱性値が不足するという課題があった。
一方、立方晶チッ化ホウ素c-BNは、ダイヤモンド(ビッカース硬度H:75-100GPa)に次ぐ高硬度(H:54GPa)を有するが、高温に加熱すると容易に、柔らかい六方晶チッ化ホウ素h-BNに転移する。そこで、現在、c-BNを低温高圧焼結して緻密な多結晶を作製しているが、このような製法は高コストであり、かつ破壊靱性値(KIC:5MPa・m1/2)が不足して脆いセラミックスしか得られない。
【0003】
又、セラミックスの強靭化、すなわち破壊靱性値を向上させる方法として、例えば下記の特許文献1には、ゾル‐ゲル法によりZrO(0.3-1.7mol%Y)‐25mol%Al固溶体粉体を調製し、パルス通電加圧焼結(Pulsed Electric-Current Pressure Sintering:PECPS)を行うことにより、緻密で、しかも、15MPa・m1/2以上のKICと約1000MPa(1GPa)以上の曲げ強度(σb)を同時に示す高硬度・強靱性のセラミックスが得られることが開示されている。
しかしながら、下記の特許文献1記載の製法を用いて得られるセラミックスのビッカース硬度Hは12~15GPa程度であり、20GPa以上のビッカース硬度Hを有するセラミックスは得られていない。尚、このような方法の場合には、原料調製コストが高く、原料1gあたりの価格が数千円以上になるという問題点もあった。
更に、市販の一般的な強靭性ジルコニア作製用の3mol%Yを添加したZrO粉体と市販のAl微粒子を混合し、焼結を行うことにより得られる複合セラミックスは、σb≧1GPaの曲げ強度を示すが、KICは6~7MPa・m1/2に留まり、靭性が低いという問題点があった。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】WO 2012/153645
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術における前述の問題点を解決し、高硬度(ビッカース硬度H20GPa以上)で、しかも、強靱性(破壊靭性値KIC12MPa・m1/2以上)を有したチッ化ホウ素/ジルコニア‐アルミナ系コンポジット、及び、当該チッ化ホウ素/ジルコニア‐アルミナ系コンポジットの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者等は、種々検討を行った結果、特定量のYを添加固溶させたZrOとAlを所定の比率で均質に混合した粉体(partially stabilized zirconia alumina, PSZA微粒子)と、立方晶チッ化ホウ素(c-BN)粉体とを混合し、この混合粉体を高圧下で成形し、ついで耐熱ガラス容器(パイレックス(登録商標)ガラスカプセル)内に封入し、熱間静水圧プレス(Hot Isostatic Pressing、HIP)でArガスを加圧媒体として焼結を行うと、六方晶チッ化ホウ素がほとんど生成せずに、c-BNと正方晶ZrO(t-ZrO)を主成分とする、緻密で高い機械的特性(ビッカース硬度Hが20GPa以上、かつ、破壊靭性値KICが12MPa・m1/2以上)を示すc-BN/PSZA系コンポジットが作製できることを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決可能な本発明の高硬度・強靱性を有したチッ化ホウ素/ジルコニア‐アルミナ系コンポジットの製造方法は、以下の工程A~C:
工程A:ジルコニア(ZrO)及びイットリア(Y)としてのモル比率が97.0:3.0~98.0:2.0であるイットリア部分安定化ジルコニア粉末と、アルミナ(Al)粉末を80:20~75:25のモル比率にて混合してなるイットリア部分安定化ジルコニア/アルミナ混合粉体を準備する工程、
工程B:立方晶チッ化ホウ素粉体を準備し、当該立方晶チッ化ホウ素粉体と、前記イットリア部分安定化ジルコニア/アルミナ混合粉体を30:70~60:40の体積比率にて混合し、得られた混合粉体を冷間静水圧プレスにて成形する工程、及び
工程C:前記工程Bで得られた成形体を耐熱ガラス容器内に封入し、不活性ガス雰囲気下で熱間静水圧プレスにて焼結を行う工程
を含むことを特徴とする。
尚、以下の説明及び図面において、「c-BN/〔PSZ(2.5Y)‐23A〕」、「c-BN/PSZ23A」との表記はいずれも、c-BN/〔77mol%(97.5mol%ZrO‐2.5mol%Y)‐23mol%Al〕を意味している。
【0007】
又、本発明は、上記の特徴を有するチッ化ホウ素/ジルコニア‐アルミナ系コンポジットの製造方法において、前記工程Cにおける熱間静水圧プレスを、温度1200~1300℃、圧力100MPa以上、焼結時間1~4時間の条件にて行うことを特徴とするものである。
【0008】
更に、本発明は、チッ化ホウ素とイットリア部分安定化ジルコニア/アルミナの体積比率が30:70~60:40で、前記イットリア部分安定化ジルコニアにおけるジルコニアとイットリアのモル比率が97.0:3.0~98.0:2.0で、前記イットリア部分安定化ジルコニアと前記アルミナのモル比率が80:20~75:25であり、20GPa以上のビッカース硬度Hと、12MPa・m1/2以上の破壊靭性値KICを有することを特徴とするチッ化ホウ素/ジルコニア‐アルミナ系コンポジットである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法を用いることにより、正方晶ZrOと立方晶BN相を主成分とし、緻密で、しかも、高い機械的特性を有するc-BN/PSZA系コンポジットを低コストにて製造することができ、得られたc-BN/PSZA系コンポジットのビッカース硬度Hは20GPa以上で、破壊靭性値KICは12MPa・m1/2以上であり、高硬度と強靱性を同時に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の高硬度・強靱性c-BN/〔ZrO(Y)‐Al〕系コンポジットの製造方法における工程を示すフローチャートであり、実施例で用いた各工程の製造条件が記載されている。
【図2】BN含有量を変化させた際の相対密度Dの変化(組成依存性)を示すグラフである。
【図3】c-BN/〔ZrO(Y)‐Al〕コンポジット(60/40vol%)の焼結前後の変化を示すXRDパターンである。
【図4】c-BN/〔ZrO(Y)‐Al〕の体積比率を変化させた際の、1GPaの圧力でCIP処理を施した焼結体のXRDパターンである。
【図5】c-BN/〔ZrO(Y)‐Al〕の体積比率を変化させた際の、コンポジット(成形体サイズ:15mmφ)の微細構造を示す走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図6】c-BN/〔ZrO(Y)‐Al〕の体積比率を変化させた際の、コンポジット(成形体サイズ:16mmφ)の微細構造を示すSEM画像である。
【図7】t-ZrOとc-BN体積比率の焼結温度依存性を示すグラフである。
【図8】BN含有量を変化させた際の、t-ZrO比率及びc-BN比率の変化(組成依存性)を示すグラフである。
【図9】BN含有量を変化させた際の、成形体の大きさの違いによる焼結体密度と相対密度の変化を示すグラフである。
【図10】BN含有量を変化させた際の、焼結体の相対密度のCIP圧力依存性を示すグラフである。
【図11】BN含有量を変化させた際の、焼結体密度の焼結温度及び組成比依存性を示すグラフである。
【図12】焼結温度を変化させた際の、相対密度と焼結体密度の変化を示すグラフである。
【図13】BN含有量を変化させた際の、ビッカース硬度Hの変化(組成依存性)を示すグラフである。
【図14】BN含有量を変化させた際の、破壊靭性値KICの変化(組成依存性)を示すグラフである。
【図15】BN含有量を変化させた際の相対密度Dの変化(組成依存性)を示すグラフであり、BN粒子径が1.0μmの場合と3.0μmの場合を比較したものである。
【図16】BN含有量を変化させた際の、コンポジットの曲げ強度σ、ビッカース硬度H、破壊靭性値KICの変化をまとめたグラフである(HIP温度:1250℃、粒子径3.0μmのc-BNを使用)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
高硬度・強靱性c-BN/〔ZrO(Y)‐Al〕系コンポジットを製造することが可能な本発明の製法における各工程について説明する。
図1は、本発明の高強度・強靱性c-BN/〔ZrO(Y)‐Al〕系コンポジットの製造方法における工程を示すフローチャートである。

【0012】
本発明の製造方法における工程A(イットリア部分安定化ジルコニア/アルミナ混合粉体の準備工程)では、ZrO及びYとしてのモル比率(mol%)が97.0:3.0~98.0:2.0であるY部分安定化ZrO粉末と、Al粉末が80:20~75:25のモル比率で混合されたY部分安定化ZrO/Al混合粉体を準備する。
本発明の製法の工程AにおいてZrO:Yのモル比率及びAlの添加割合が上記比率に限定されるのは、Yのモル比率が2.0mol%より少ない場合でも3.0mol%より多い場合でも、ビッカース硬度Hが20GPa未満、破壊靱性値KICが12MPa・m1/2未満となるからであり、特にYのモル比率が2.0mol%より小さい場合は単斜晶ZrO粒子が増えてクラックの原因となる。又、Alのモル比率が20~25mol%の範囲に限定されるのは、20mol%より少ない場合にはZrOセラミックスの性質が強くなり、逆に25mol%を超えると、Alセラミックスの性質が強くなり、破壊靭性値KICが12MPa・m1/2未満となるからである。
尚、本発明では、ジルコニアセラミックス作製用の市販のY部分安定化ZrO(3mol%Yを添加したZrO粉体等)と市販のAl粉体を混合して使用することも可能である。

【0013】
次の工程B(加圧工程)においては、立方晶チッ化ホウ素粉体(好ましくは、走査型電子顕微鏡観察で約50~100個の粒子の直径を測定する方法で測定した粒子径が1~5μmのもの、より好ましく2~4μmのもの、特に好ましくは2.5~3.5μmのもの)を準備し、当該立方晶チッ化ホウ素粉体と、前記工程Aで準備したイットリア部分安定化ジルコニア/アルミナ混合粉体を30:70~60:40(好ましくは、30:70~50:50)の体積比率にて混合し、得られた混合粉体を冷間静水圧プレス(CIP)にて成形する。立方晶チッ化ホウ素粉体とイットリア部分安定化ジルコニア/アルミナ混合粉体を混合する際、アルミナ製の乳鉢と乳棒を用いてアルコール(例えばエタノール)中で10分~30分程度(好ましくは15分間)混合を行うことが好ましいが、これに限定されるものではない。
この工程Bにおいては、上記の混合にて得られた混合粉末を仮成形し、密度及び焼結性を上げるために、得られた仮成形体を冷間静水圧プレスする。本発明における上記混合粉体の仮成形は、一般的には50~100MPa程度の圧力にて行うことが好ましく、冷間静水圧プレスの際の圧力は1GPa程度が好ましい。本発明では、冷間静水圧プレスを2段階で行ってもよく、例えば200~300MPa程度の圧力にて冷間静水圧プレスを行った後に、更に1GPa程度の圧力で冷間静水圧プレスを行ってもよい。

【0014】
最終工程の工程C(熱間静水圧プレス工程)においては、図1のフローチャートの左下図に示されるように、前記工程Bで得られた成形体を、その外周面がh-BNによって取り囲まれた状態となるようにして耐熱ガラス容器(好ましくはパイレックス(登録商標)ガラスカプセル)内に封入し、不活性ガス雰囲気下で熱間静水圧プレス(HIP)にて焼結を行い、最終的に得られる焼結体(コンポジット)の相対密度をさらに高める。成形体の周囲にh-BNを配置させるのは、h-BNは流動性が良く、圧力を伝達することが可能であり、化学的に安定で、ガラスとの反応を防止することができるからである。
本発明における工程Cでは、圧力100MPa以上、好ましくは200MPaの不活性ガス雰囲気下で1200℃~1300℃、好ましくは1250℃の温度を一定時間(1~4時間、好ましくは2時間)維持して熱処理を行うことが好ましく、不活性ガスとしては、アルゴンガスが好ましい。

【0015】
上記の工程A~Cを含む本発明の製造方法を用いた場合には、六方晶チッ化ホウ素(h-BN)相がほとんど生成せず、正方晶ZrOとc-BN相が主成分である、緻密で高い機械的特性(ビッカース硬度Hが20GPa以上、かつ、破壊靭性値KICが12MPa・m1/2以上)を示すc-BN/PSZA系コンポジットが作製でき、このような製造方法は、高硬度・強靱性のc-BN/PSZA系コンポジットの製造に好適である。

【0016】
又、上記の工程A~Cを含む製造方法を用いて得られる本発明のチッ化ホウ素/ジルコニア‐アルミナ(c-BN/〔ZrO(Y)‐Al〕)系コンポジットは、チッ化ホウ素とイットリア部分安定化ジルコニア/アルミナの体積比率が30:70~60:40で、前記イットリア部分安定化ジルコニアにおけるジルコニアとイットリアのモル比率が97.0:3.0~98.0:2.0で、前記イットリア部分安定化ジルコニアと前記アルミナのモル比率が80:20~75:25であり、20GPa以上のビッカース硬度Hと、12MPa・m1/2以上の破壊靭性値KICを有する。

【0017】
尚、上記のチッ化ホウ素とイットリア部分安定化ジルコニア/アルミナの体積比率が30:70~50:50であるチッ化ホウ素/ジルコニア‐アルミナ系コンポジットの場合には、更に機械的特性が優れたものとなり、20GPa以上のビッカース硬度Hと、15MPa・m1/2以上の破壊靭性値KICを有する。
【実施例】
【0018】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
尚、以下の実施例等で作製した各焼結体についてはそれぞれ、嵩密度(Dobs)、XRDパターン、ビッカース硬度(H)、破壊靱性値(KIC)を測定し、SEM画像を測定・撮影し、特性評価を行った。
本明細書に記載される曲げ強度σは、JIS R 1601:2008 ファインセラミックスの室温曲げ強さ試験方法に従って測定した値であり、ビッカース硬度は、JIS R 1610:2003 ファインセラミックスの硬さ試験方法に従って測定した値であり、破壊靱性値は、JIS R 1607:2015 ファインセラミックスの室温破壊じん(靱)性試験方法のIF法を採用して測定された値である。尚、特性評価における正方晶ZrO比(t‐ZrO比、t‐率)は、X線回折装置を用いた単斜晶相の回折ピーク強度、正方晶相の回折ピーク強度、全ZrOに対する単斜晶相の存在割合から、Garvie とNicholsonによる計算式を用いて求め、立方晶BN比(c-BN比、c‐率)は、c-及びh-BNの相定量分析用検定曲線から求めた。
【実施例】
【0019】
実施例1:c-BN/〔ZrO(Y)‐Al〕系コンポジットの製造例
a)製造工程
図1には、本発明の高硬度・強靱性c-BN/〔ZrO(Y)‐Al〕系コンポジットの製造方法のフローチャートと共に、実施例にて使用した各工程の製造条件、工程Cにて耐熱ガラス容器(パイレックス(登録商標)ガラスカプセル)内に封入された成形体の様子を示す図が記載されているが、本発明は、これら条件に限定されるものではない。
【実施例】
【0020】
b)原料粉体の調製例
部分安定化ZrO粉体として、市販のY部分安定化ZrO粉体(2.5mol%Y添加品、第一稀元素化学工業株式会社製)を準備し、このY部分安定化ZrO粉体と、市販のAl粉末(TM‐Dグレード、大明化学工業株式会社製)とを、モル比率(mol%)が77:23となるように秤量し、ボールミルを用いて均質に混合し、原料粉体(PSZ(2.5Y)‐23A、平均粒子径:0.1~0.2μm)を得た。
【実施例】
【0021】
c) 混合粉体の成形及び焼結例
立方晶チッ化ホウ素粉体として、平均粒径が3.0μmの市販品を準備し、このc-BN粒子と、上記の原料粉体(PSZ(2.5Y)‐23A)を、30/70、40/60、50/50、60/40の体積比率にてそれぞれ、アルミナ製の乳鉢と乳棒を用い、アルコールを添加して湿式混合し、得られた混合粉体を金型成形(一軸加圧75MPa)して直径15mmと16mmの2種類の円板状成形体を製造した。そして、この成形体を冷間静水圧プレス(145MPa)し、その後、超高静水圧プレス(1GPa/3分)して、成形体(焼結前)を製造した。
次いで、この成形体を、図1のフローチャートの左下側の図に示されるようにして、耐熱ガラス(パイレックス(登録商標)ガラスカプセル)内に封入し、600℃で1時間加熱し、更に真空中にて820℃で20分間加熱し、最後に、熱間静水圧プレス(HIP)でArガスを加圧媒体として1250℃/2h/196MPaの条件で焼結し、焼結体を得た。
【実施例】
【0022】
〔上記実施例1で得られた各焼結体の評価結果〕
・CIP処理前と処理後における、BN含有量と成形体の相対密度Dとの関係
図2は、BN含有量を変化させた際の相対密度Dの変化を示すグラフであり、75MPaで金型成形後、245MPaでCIP処理後、1GPaで更にCIP処理した後の成形体の相対密度が表されている。
図2のグラフから、いずれの組成においても、金型成形品よりもCIP処理品の方が相対密度が高く、処理が進むにつれて相対密度が高くなることが確認された。
【実施例】
【0023】
・c-BN/PSZ(2.5Y)‐23Aコンポジット(60/40vol%)についての焼結前後のXRDパターン比較
図3は、c-BN/PSZ(2.5Y)‐23Aコンポジット(60/40vol%)の焼結前後の変化を示すXRDパターンであり、●は正方晶ZrO(t-ZrO)の回折ピークを示し、○は単斜晶ZrO(m-ZrO)の回折ピークを示し、□は立方晶BN(c-BN)の回折ピークを示し、■は六方晶BN(h-BN)の回折ピークを示し、△はα‐Alの回折ピークを示している。
未焼結時とHIP焼結後のXRDパターンの比較から、HIP焼結後には、h-BNがほとんど生成しておらず、高硬度・強靱性をもたらすt‐ZrOとc-BNを主成分とするc-BN/PSZ(2.5Y)‐23Aコンポジットが生成していることが確認された。
【実施例】
【0024】
・1GPaの圧力でCIP処理を施した焼結体のXRDパターン比較
図4には、c-BN/PSZ(2.5Y)‐23Aの体積比率を変化させた際の、CIP処理後の焼結体のXRDパターンが示されている。
これらのXRDパターンから、いずれの組成(c-BN/PSZ(2.5Y)‐23A=40/60~60/40vol%)においても、t‐ZrOとc-BNを主成分とするc-BN/PSZ(2.5Y)‐23Aコンポジットが生成していることが確認された。
【実施例】
【0025】
・組成比の異なる各コンポジット(15mmφ)の微細構造の比較
図5には、c-BN/PSZ(2.5Y)‐23Aの体積比率を変化させた際の、コンポジット(成形体サイズ:15mmφ)の微細構造を比較したSEM画像(FE-SEM、日本電子製、JSM7000にて測定)が示されており、これらのSEM画像から、c-BN/PSZ(2.5Y)‐23A=60/40vol%の焼結体よりも、30/70vol%の焼結体の方が緻密化された組織を有しており、これにより相対密度Dが大きくなっている。特に、eのSEM画像(PSZAが多い組成)には、隙間なく緻密なPSZA(白く写っている)の組織中に、黒く写ったc-BNが分散している様子が示されており、この場合の相対密度Dは99.9%であった。
【実施例】
【0026】
・組成比の異なる各コンポジット(16mmφ)の微細構造の比較
図6には、c-BN/PSZ(2.5Y)‐23Aの体積比率を変化させた際の、コンポジット(成形体サイズ:16mmφ)の微細構造を比較したSEM画像が示されており、これらのSEM画像から、図5の場合と同様に、c-BN/PSZ(2.5Y)‐23A=60/40vol%の焼結体よりも、40/60vol%の焼結体の方が緻密化された組織を有しており、これにより相対密度Dが大きくなっている。
【実施例】
【0027】
・t-ZrOとc-BN体積比率の焼結温度依存性
図7は、焼結温度と、t-ZrO、c-BN体積比率の関係を示すグラフであり、16mmφの金型で成形したものと、15mmφの金型で成形したものの両方が示されている。この図7のグラフから、HIP温度が1250~1300℃の場合に、高硬度・強靱性をもたらすt-ZrO及びc-BNの体積比率が高くなり、1300℃よりもHIP温度が高くなると、t-ZrOとc-BNの体積比率がいずれも低くなることが確認された。
【実施例】
【0028】
・t-ZrOとc-BN体積比率の組成依存性
図8は、BN含有量を変化させた際の、t-ZrO及びc-BN比率の変化(組成依存性)を示すグラフであり、このグラフから、HIP温度が1250~1300℃で、しかも、BN含有量が40~60vol%の場合(特に40~55vol%の場合)において、高いt-ZrO体積比率とc-BN体積比率が得られることが確認された。
【実施例】
【0029】
・成形体サイズと焼結体密度の組成依存性
図9は、BN含有量を変化させた際の、成形体の大きさの違いによる焼結体密度と相対密度の変化を示すグラフであり(HIP温度:1250℃)、直径15mmの場合と16mmの場合の相対密度Dと、かさ密度Dobsが示されている。
図9のグラフから、直径15mmの成形体の方が、直径16mmの成形体よりもBN含有量の変化による焼結体密度(D、Dobs)の変化量が小さく、いずれの直径の場合にも、BN含有量が40~50vol%の範囲にて、96.5%以上のD、4.3Mg/m以上のDobsとなることが確認された。
【実施例】
【0030】
・焼結体の相対密度のCIP圧力依存性
図10は、BN含有量を変化させた際の、焼結体の相対密度のCIP圧力依存性を示すグラフであり、仮成形体を245MPaの圧力で冷間静水圧プレスした場合と、これに更に超高静水圧プレスにて1GPaの圧力を加えた場合の相対密度Dが示されている。
図10のグラフから、仮成形体を245MPaの圧力で冷間静水圧プレスした後に更に超高静水圧プレス(1GPa)を行うことにより、BN含有量40~60vol%の範囲において、95.0%以上の大きな相対密度を有する焼結体が得られることがわかった。
【実施例】
【0031】
・焼結体密度の焼結温度及び組成比依存性
図11は、BN含有量を変化させた際の、焼結体密度の焼結温度(HIP温度)及び組成比依存性を示すグラフであり、このグラフから、HIP温度が1250~1300℃の範囲において高い焼結体の相対密度が得られ、特に好ましいHIP温度は1250℃であり、BN含有量は40~55vol%が好ましく、40~50vol%が特に好ましいことがわかる。尚、HIP温度が1400℃の場合に焼結体の相対密度が低くなっている理由は、t-ZrO比率及びc-BN比率の低下によるものと考えられる。
【実施例】
【0032】
・焼結体密度のHIP温度との関係
図12は、焼結温度を変化させた際の、相対密度と焼結体密度の変化を示すグラフであり、相対密度D、かさ密度Dobs共に、1200~1300℃の焼結温度範囲にて高くなり、HIP処理回数1回の場合も、処理回数2回、3回の場合も、相対密度、かさ密度に大きな違いは見られず、HIP処理回数は1回で充分であることがわかった。又、16mmφの金型で成形を行った試料と、15mmφの金型で成形を行った試料との間に大きな違いは見られなかった。
【実施例】
【0033】
・ビッカース硬度Hの組成依存性
図13は、BN含有量を変化させた際の、ビッカース硬度Hの変化(組成依存性)を示すグラフであり、HIP処理回数と温度の違いによる硬度を比較したものである。
図13のグラフから、HIP処理回数とHIP温度(1250℃と1275℃)の違いによる大きな差は認められなかった。
【実施例】
【0034】
・破壊靭性値KICの組成依存性
図14は、BN含有量を変化させた際の、破壊靭性値KICの変化(組成依存性)を示すグラフであり、HIP処理回数と温度の違いによる靱性を比較したものである。
図14のグラフから、BN含有量が40~60vol%の範囲において、大きな破壊靭性値KIC(11MPa・m1/2以上)を有した焼結体が得られることが確認された。
【実施例】
【0035】
・BN粒子径が1.0μmの場合と3.0μmの場合の相対密度の比較
図15は、BN含有量を変化させた際の相対密度Dの変化(組成依存性)を示すグラフであり、BN粒子径が1.0μmの場合と3.0μmの場合が比較されている。
この図15のグラフから、75MPaで金型成形後、245MPaでCIP処理後、1GPaで更にCIP処理後のいずれの場合においても、粒子径3.0μmのc-BNを用いた場合の方が、粒子径1.0μmのc-BNを用いた場合よりも相対密度Dが大きいことが確認され、このことから、本発明の製造方法に用いるc-BNの粒子径としては3μm前後(例えば2.5~3.5μm)のものがより好ましいことがわかった。
【実施例】
【0036】
・3.0μmの粒子径を有したc-BNを用いて得られた各組成のコンポジット(焼結体)の機械的特性評価
立方晶チッ化ホウ素粉体として、平均粒径が3.0μmの市販品を用い、BN含有量を変化させて得られた各焼結体(直径15mmφ)について、曲げ強度σ、ビッカース硬度H、破壊靭性値KICを測定した。上記の測定に用いた焼結体はいずれも、245MPaの圧力にてCIP処理を行った後に、更に1GPaでCIP処理し、その後、1250℃/196MPa/2時間の条件でHIP処理を行ったものである。
図16は、BN含有量を変化させた際の、コンポジットの曲げ強度σ、ビッカース硬度H、破壊靭性値KICの変化をまとめたグラフである。
図16のグラフは、30~60vol%のBN組成の範囲にて、ビッカース硬度Hが20GPa以上、かつ、破壊靱性値KICが12MPa・m1/2以上の高硬度・強靱性c-BN/〔ZrO(Y)‐Al〕系コンポジットが製造でき、30~50vol%のBN組成の範囲にて、ビッカース硬度Hが20GPa以上、かつ、破壊靱性値KICが15MPa・m1/2以上の高硬度・強靱性c-BN/〔ZrO(Y)‐Al〕系コンポジットが製造できることを示している。
又、図16のグラフは、40~57vol%のBN組成の範囲において500MPa以上の曲げ強度を有する焼結体が得られることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の製造方法を用いることによって、h-BN相がほとんど生成せずに、正方晶ZrOを主成分とする緻密で、しかも高い機械的特性を示すc-BN/〔ZrO(Y)‐Al〕系コンポジットを作製することができ、このコンポジットは、20GPa以上のビッカース硬度Hと、12MPa・m1/2以上の破壊靱性値KICを有しているので、高硬度・強靱性が要求される各種用途、例えば超硬工具やセラミックス製機械部品等に広く利用できる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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