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明細書 :バッテリレス電子デバイス及び伝送システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-198396 (P2020-198396A)
公開日 令和2年12月10日(2020.12.10)
発明の名称または考案の名称 バッテリレス電子デバイス及び伝送システム
国際特許分類 H01L  23/14        (2006.01)
H04B  13/00        (2006.01)
H02J  50/05        (2016.01)
H01L  23/12        (2006.01)
H05K   1/09        (2006.01)
A61B   5/0408      (2006.01)
FI H01L 23/14 R
H04B 13/00 500
H02J 50/05
H01L 23/12 Q
H05K 1/09 A
A61B 5/04 300C
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 16
出願番号 特願2019-104866 (P2019-104866)
出願日 令和元年6月4日(2019.6.4)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り http://robomech.org/2019/wp-content/uploads/2019/05/RM19_program_v05.pdf 平成31年4月2日 http://www.iwaselab.amech.waseda.ac.jp/publications/conference/ 平成31年4月26日
発明者または考案者 【氏名】岩田 浩康
【氏名】和▲崎▼ 海里
出願人 【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110002675、【氏名又は名称】特許業務法人ドライト国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C127
4E351
Fターム 4C127LL02
4C127LL21
4C127LL22
4E351AA01
4E351BB01
4E351BB31
4E351CC11
4E351DD04
4E351DD05
4E351DD06
4E351DD19
4E351DD29
4E351DD40
4E351GG20
要約 【課題】従来よりも装着性の向上を図りつつ、電子素子を安定して動作させることができ、かつ小型化可能なバッテリレス電子デバイスと、それを用いた伝送システムを提案する。
【解決手段】バッテリレス電子デバイス3では、膜厚が薄い高分子ナノシート10により電極6,7を人体100に貼着させることから、その分、装着性の向上を図ることができる。また、膜厚が薄い高分子ナノシート10を用いることで、バッテリレス電子デバイス3が分子間力によって人体100に密着し易くなり、電極6,7と人体100との間の空気層の形成を防止し、静電容量Cの低下を抑制できる。従って、バッテリレス電子デバイス3では、インピーダンス整合におけるインダクタの設計を特に行わずに静電容量Cを大きくでき、電子素子8を安定して動作させることができる。また、電極6,7の表面積Sや電極間距離Lを小さくした状態でも電子素子8を動作させることが可能となる。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
電子素子と、
前記電子素子と電気的に接続した、少なくとも2つ以上の電極と、
伝送媒体と密着し、前記電極を前記伝送媒体に貼着させる高分子ナノシートと、
を備え、
外部から前記伝送媒体に誘起された電界に基づいて、前記伝送媒体と前記電極との間の静電結合により前記電子素子に電力が供給される、バッテリレス電子デバイス。
【請求項2】
前記伝送媒体が人体であり、前記高分子ナノシートが分子間力により、前記人体の皮膚の表面形状に追従し前記皮膚に密着して貼着される、請求項1に記載のバッテリレス電子デバイス。
【請求項3】
前記電極及び前記電子素子を接続する配線と、前記電極とが、導電性インクにより形成されている、請求項1又は2に記載のバッテリレス電子デバイス。
【請求項4】
前記高分子ナノシート上に第2の高分子ナノシートが貼着されており、前記電子素子と前記電極とが、前記高分子ナノシートと前記第2の高分子ナノシートとの間に挟み込まれている、請求項1~3のいずれか1項に記載のバッテリレス電子デバイス。
【請求項5】
前記高分子ナノシートの厚さが2μm未満である、請求項1~4のいずれか1項に記載のバッテリレス電子デバイス。
【請求項6】
前記伝送媒体に貼着される前記電極の表面積Sが400mm以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載のバッテリレス電子デバイス。
【請求項7】
第1の前記電極と第2の前記電極との電極間距離Lが30mm以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載のバッテリレス電子デバイス。
【請求項8】
所定箇所に設置され電界を発生させる伝送装置と、伝送媒体に設けられるバッテリレス電子デバイスと、を備える伝送システムであって、
前記バッテリレス電子デバイスは、
請求項1~7のいずれか1項に記載のバッテリレス電子デバイスであり、
前記伝送媒体が前記伝送装置に接触することで前記伝送媒体に誘起された電界に基づいて、前記伝送媒体と電極との間の静電結合により電子素子に電力が供給される、伝送システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリレス電子デバイス及び伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体情報の連続的計測や個人認証等を目的としたウェアラブルエレクトロニクスの開発が進みつつある。腕や脚等に電子デバイスを直接固定する方法として、柔軟性を有する基板を用いる技術が開発されつつあり、皮膚のような伸縮性の高い生体組織に貼り付けることが可能なデバイスの研究も行なわれている。中でも、膜厚が薄い高分子ナノシートを用いた電子デバイスは、簡易な工程により電子素子を構成要素とする電子デバイスを製造可能であり、皮膚等の貼付対象物に追随して接着剤なしで貼り付けることが可能である(特許文献1参照)。
【0003】
上記した、近年のウェアラブルエレクトロニクスに関して、電池等を接続することなく、バッテリレスで電子デバイスに電力の供給や信号の伝送を行なう方法として様々な手法が考えられている。例えば、ワイヤレス電力伝送システムの一つとして、アンテナコイルを用いたNFC(Near Field Communication)が知られている。また、その他のワイヤレス電力伝送システムとしては、高周波信号を磁界から電界に変換して人体に電界を伝え、当該電界に基づいて、人体に取り付けた送受信部の結合電極と人体とを静電結合によって電気的に接続し、高周波信号と電力を、人体を通じて送受信部に伝える電界式NFCが考えられている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】国際公開第2016/181958号
【0005】

【非特許文献1】Takanori Washiro,"HF RFID Transponder with Capacitive Coupling"2017 IEEE International Conference on RFID Technology & Application (RFID-TA)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、高分子ナノシートを用いた電子デバイスにバッテリレスで電力供給を行なうために、アンテナコイルを有するNFC技術を用いたワイヤレス電力伝送を試みた。しかし、高分子ナノシートを用いた電子デバイスを皮膚に貼付すると所望の電力が供給されず、動作性が低下することを発見した。これはナノシートの膜厚が薄いため、皮膚に貼付すると静電容量が大きくなり起電力が減少するためと考えられる。そのため、ワイヤレスで電力を電子素子に供給し、安定して動作させるためには、基板の膜厚を厚くせざるを得ず、人体等への装着性の向上が図れないという問題があった。
【0007】
一方、従来の電界式NFCのワイヤレス電力伝送システムでは、硬質な金属板等でなる電極を硬質な樹脂材でなる筐体に設けた送受信部を、単にバンド等を使用して人体に取り付けているため、腕の曲面や皮膚の凹凸に送受信部が追従し難く、電極と皮膚との間に隙間が生じて空気層が形成される恐れがあり、静電結合が小さくなってしまう。
【0008】
そのため、電極と皮膚との間の静電容量の低下を解消する手段として、共振周波数を満たすインダクタンスをもつインダクタ(コイル)を使用してインピーダンス整合を行う必要があるが、実際に静電容量の測定は困難であるため、適切なインダクタンスの設定も難しく、インピーダンス整合の設計が困難である。また、静電容量は個人差が大きいために個人毎にインダクタンスを調整することは難しく、実際にはRFIDタグを安定して動作させることが難しいという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は以上の点を考慮してなされたもので、従来よりも装着性の向上を図りつつ、電子素子を安定して動作させることができ、かつ小型化可能なバッテリレス電子デバイスと、それを用いた伝送システムを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のバッテリレス電子デバイスでは、電子素子と、前記電子素子と電気的に接続した、少なくとも2つ以上の電極と、伝送媒体と密着し、前記電極を前記伝送媒体に貼着させる高分子ナノシートと、を備え、外部から前記伝送媒体に誘起された電界に基づいて、前記伝送媒体と前記電極との間の静電結合により前記電子素子に電力が供給される。
【0011】
また、本発明の伝送システムでは、所定箇所に設置され電界を発生させる伝送装置と、伝送媒体に設けられるバッテリレス電子デバイスと、を備える伝送システムであって、前記バッテリレス電子デバイスは、電子素子と、前記電子素子と電気的に接続した、少なくとも2つ以上の電極と、前記伝送媒体と密着し、前記電極を前記伝送媒体に貼着させる高分子ナノシートと、を備え、前記伝送媒体が前記伝送装置に接触することで前記伝送媒体に誘起された電界に基づいて、前記伝送媒体と前記電極との間の静電結合により前記電子素子に電力が供給される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、膜厚が薄い高分子ナノシートにより電極を伝送媒体に貼着させることから、その分、伝送媒体への装着性の向上を図ることができる。また、膜厚が薄い高分子ナノシートを用いることで、分子間力によって伝送媒体に密着し易くなり、電極と伝送媒体との間の空気層の形成を防止し、静電容量の低下を抑制できる。従って、インピーダンス整合におけるインダクタの設計を特に行わずに静電容量を大きくでき、電子素子を安定して動作させることができる。さらに、電子素子に電力を供給するための、電極の表面積や電極間距離を小さくした状態でも電子素子を動作させることが可能となるため、バッテリレス電子デバイスを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による伝送システムの全体構成を示した概略図である。
【図2】本発明のバッテリレス電子デバイスの構成を示した分解斜視図である。
【図3】バッテリレス電子デバイスの断面構成を示した断面図である。
【図4】図4Aは、バッテリレス電子デバイスの製造工程(1)を示した概略図であり、図4Bは、バッテリレス電子デバイスの製造工程(2)を示した概略図であり、図4Cは、バッテリレス電子デバイスの製造工程(3)を示した概略図であり、図4Dは、バッテリレス電子デバイスの製造工程(4)を示した概略図である。
【図5】図5Aは、検証試験に用いたバッテリレス電子デバイスを皮膚モデルの平板材に配置させた構成を示した概略図であり、図5Bは、皮膚モデルの平板材に配置したバッテリレス電子デバイスを電界アンテナに載置したときの断面構成を示した断面図である。
【図6】電極の表面積と電極間距離を変えたときのICタグの動作率を示したグラフである。
【図7】貼着シートの膜厚を変えたときのICタグの動作率を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面に基づいて本発明の実施の形態を詳述する。

【0015】
(1)本発明の伝送システムの概要
図1は、本発明の伝送システム1の全体構成を示した概略図であり、この伝送システム1は、伝送装置2とバッテリレス電子デバイス3とを有する。この伝送システム1は、ユーザが伝送装置2に触れたときに、伝送装置2で発生させた電界が、ユーザの人体100に伝わり、人体100との静電結合によりバッテリレス電子デバイス3へ電力の供給が行われ得る。

【0016】
一方、ユーザが伝送装置2に触れていないときには、伝送装置2で発生させた電界が人体100に伝わらないため、バッテリレス電子デバイス3への電力の供給を停止させることができる。このように、伝送システム1では、ユーザが伝送装置2を触れている間だけバッテリレス電子デバイス3を動作させることができる。

【0017】
この場合、伝送装置2は、例えばリーダライタであり、机や筐体等の所定箇所に予め設置されており、設置部位において仮想的にグランドVG1に短絡している。伝送装置2は、所定の高周波信号を磁界から電界に受動的に変換し、例えばユーザが指先で伝送装置2の電界アンテナ4に触れることでユーザの人体100に電界を伝える。

【0018】
バッテリレス電子デバイス3は、例えば、腕等の皮膚に直接貼着され、人体100に取り付けられる。この実施形態の場合、バッテリレス電子デバイス3は、2つの電極6,7を有しており、これら電極6,7に電子素子8が電気的に接続された構成を有する。

【0019】
図1では、バッテリレス電子デバイス3が人体100に貼着される位置として腕が選定された例を示しており、例えば、腕において人体100の手側から肩側に沿って2つの電極6,7が一列に並ぶように取り付けられている。なお、この実施形態においては、バッテリレス電子デバイス3の2つの電極6,7を腕に取り付けるようにしたが、本発明はこれに限らず、例えば、手の甲や、手の平、手首、肩、胴体等の人体100の種々の箇所に取り付けてもよい。また、2つの電極6,7は、腕の周方向等の種々の方向に一列に並べて取り付けてもよい。

【0020】
ここで、伝送システム1は、地面と接しているユーザが手により伝送装置2を触ったとき、バッテリレス電子デバイス3の肩側(伝送装置2から遠ざかる位置)にある電極7側の人体領域ER2が仮想的にグランドVG2に短絡し、一方、バッテリレス電子デバイス3の手側(伝送装置2に近い位置)にある電極6側の人体領域ER1が伝送媒体として機能する。これにより、伝送システム1は、伝送装置2の電界アンテナ4と、バッテリレス電子デバイス3の手側(伝送装置2側)にある電極6とが、人体100を介して接続される。

【0021】
このようにして、伝送システム1は、全体として、仮想的なグランドVG1,VG2を介して、あたかも閉回路のように動作することによって、伝送装置2からバッテリレス電子デバイス3に電力を安定的に供給することができる。

【0022】
ここで、上述したように、誘電体である伝送媒体として人体100を使用する場合には、伝送装置2により生成される高周波信号の周波数は、人体100で伝送効率が高い周波数であることが望ましく、例えば、7~21MHzや、33~45MHz、さらに好ましくは13.56MHzであることが望ましい。

【0023】
(2)バッテリレス電子デバイスの詳細構成
次に、上述したバッテリレス電子デバイス3について詳細に説明する。図2は、皮膚100aに貼着させた本発明のバッテリレス電子デバイス3の分解斜視図である。バッテリレス電子デバイス3は、皮膚100aに密着するようにして貼着される高分子ナノシート10と、一対の電極6,7と、電子素子8と、これら電極6,7及び電子素子8を電気的に接続する配線9と、高分子ナノシート10上に貼着される第2の高分子ナノシート11とで構成されている。

【0024】
高分子ナノシート10には、一対の電極6,7、電子素子8及び配線9が表面に設けられており、これら電極6,7、電子素子8及び配線9の全体を覆うようにして、第2の高分子ナノシート11が表面に貼着されている。これにより、電極6,7、電子素子8及び配線9は、高分子ナノシート10と第2の高分子ナノシート11との間に挟み込まれている。

【0025】
高分子ナノシート10は、膜厚が薄く形成されており、糊等を用いずに分子間力によって皮膚100aに接着させることができる。また、高分子ナノシート10は、膜厚を薄くすることにより生じる分子間力によって皮膚100aに密着して貼着されるため、皮膚100aの曲面や、凹凸した皮膚100aの表面形状に追従して皮膚100aに沿って密着することができる。

【0026】
図2のA-A´部分の断面構成を示す図3のように、第2の高分子ナノシート11は、分子間力によって、電極6,7、電子素子8及び配線9の凹凸形状に追従して、電極6,7、電子素子8、配線9及び高分子ナノシート10に密着している。第2の高分子ナノシート11は、ハンダ付け等の化学的接合がなくても、分子間力により、電極6,7、電子素子8及び配線9に密着した状態で、高分子ナノシート10に貼着することができる。

【0027】
この場合、バッテリレス電子デバイス3は、電子素子8と配線9とを電気的に接続された状態で、電極6,7、電子素子8及び配線9を、高分子ナノシート10及び第2の高分子ナノシート11で挟み込み、高分子ナノシート10及び第2の高分子ナノシート11の分子間力により互いに密着している。これにより、分子間力により、電子素子8が配線9に圧着されて、配線9を電子素子8に強い接着力で接続することができるので、ハンダ付け等を一切行わずに、配線9を電子素子8に電気的に接続することができる。

【0028】
電子素子8としては、例えば、発光ダイオード(LED)等の発光素子の他、トランジスタ、ダイオード、IC等の能動部品、及び、抵抗やインダクタ、コンデンサ等の受動部品を挙げることができる。また、電子素子8として、歪センサ等の各種センサや、RFIDタグを設けることもできる。さらに、本発明のバッテリレス電子デバイス3では、例えば、機能・用途が異なる2つ以上の電子素子を、一体的又は別体にして1つの電子素子8として設けるようにしてもよい。

【0029】
電極6,7及び配線9は、例えば、金属ナノ粒子、半導体ナノ粒子、導電性高分子、及び、ナノ炭素材料のうちの少なくとも一つを含有した導電性インクにより形成することができる。特に、銀、金、銅又はニッケル等の金属ナノ粒子は比較的入手が容易で抵抗率の低い材料であるため、電極6,7及び配線9の形成材料として好ましい。また、電極6,7及び配線9のパターンの形成方法として、インクジェット印刷の他、オフセット印刷、スクリーン印刷等の簡便な方法を用いて、高分子ナノシート10上に、電極6,7及び配線9を印刷して形成することができる。

【0030】
電極6,7及び配線9は、このような導電性インクにより高分子ナノシート10上に形成することで、金属板のような硬質材料に比べて柔軟性が高く、高分子ナノシート10の変形に追従して変形し得る。従って、本発明のバッテリレス電子デバイス3では、高分子ナノシート10、電極6,7及び配線9全てが皮膚100aの曲面や、皮膚100aの凹凸した表面形状に追従し、全体を皮膚100aに沿って密着させることができる。これにより、バッテリレス電子デバイス3では、皮膚100aとの間に隙間が形成され難く、皮膚100aと電極6,7との間に空気層が形成されることを防止することができる。

【0031】
なお、この実施形態の場合、図2に示すように、電極6,7は同一形状からなり、四辺状に形成されているが、本発明はこれに限らず、電極6と電極7とで異なる形状としてもよく、また、五角形状等の多角形状や円形状に形成した電極を適用してもよい。

【0032】
電極6,7は、高分子ナノシート10により皮膚100aに貼着される表面積Sが大きくなるほど、皮膚100aとの結合が強くなり、人体100から電子素子8への電力の供給が安定し、電子素子8の動作率が向上することが、本発明者らの検証試験により確認されているが、電子素子8に電力を供給可能な電極6,7の表面積Sとしては、例えば、400mm以下であることが好ましい。本実施形態では、膜厚dが薄く、かつ、人体100に沿って密着可能な高分子ナノシート10を用いるようにしたことから、電子素子8に電力を供給するための電極の表面積Sを小さくしても、電子素子8を動作させることが可能となり、その分、バッテリレス電子デバイス3を小型化することができる。なお、後述する検証試験により、電極6,7の表面積Sは100mm超であれば電子素子8に電力を供給可能である。

【0033】
また、図3に示すように、第1の電極6の端部から、第1の電極6と対をなす第2の電極7の端部までの距離L(以下、単に電極間距離とも称する)が大きくなるほど、人体100から電子素子8への電力の供給が安定し、電子素子8の動作率が向上することが、本発明者らの検証試験により確認されているが、電子素子8に電力を供給可能な電極間距離Lとしては、例えば、30mm以下であることが好ましい。本実施形態では、膜厚dが薄く、かつ、人体100に沿って密着可能な高分子ナノシート10を用いるようにしたことから、電子素子8に電力を供給するための電極間距離Lを小さくしても、電子素子8を動作させることが可能となり、その分、バッテリレス電子デバイス3を小型化することができる。なお、後述する検証試験により、電極間距離Lは10mm以上でも電子素子8に電力を供給可能である。

【0034】
この実施形態の場合、電極6,7を皮膚100aに貼着付させる高分子ナノシート10と、高分子ナノシート10上に貼着される第2の高分子ナノシート11は、同じ材料により形成されており、同一構成を有している。

【0035】
高分子ナノシート10及び第2の高分子ナノシート11としては、例えば、合成高分子や天然高分子、ゴム、エラストマー等の高分子を材料とすることができる。より具体的には、高分子ナノシート10及び第2の高分子ナノシート11は、ポリスチレンイソプレンスチレン、ポリジメチルシロキサン、シリコーン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸、ポリ乳酸、ポリ乳酸グリコール酸共重合体、ポリ酢酸ビニル、キトサン、アルギン酸、酢酸セルロース、ヒアルロン酸、ゼラチン、及び、コラーゲンのうちのいずれか一つからなることが好ましい。

【0036】
このような材料で高分子ナノシート10及び第2の高分子ナノシート11を作製することで、皮膚100a等の貼着対象物への密着性や伸縮性の高い高分子ナノシート10及び第2の高分子ナノシート11を提供することができる。なお、高分子ナノシートについては、一例として以下の文献を参考に挙げることができる。T. Fujie and S. Takeoka, in Nanobiotechnology, eds. D. A. Phoenix and A. Waqar,One Central Press, United Kingdom, 2014, pp. 68-94.

【0037】
高分子ナノシート10及び第2の高分子ナノシート11は、貼着対象物への追従性の観点から膜厚dが薄く形成されていればよい。特に、高分子ナノシート10及び第2の高分子ナノシート11の膜厚dは、2μm以上であると、電子素子8や皮膚100a等の貼着対象物に対する追従性が劣り、一方、2μm未満であると、電子素子8や皮膚100a等の貼着対象物への追従性が高くなり、密着性を高めることができるため、2μm未満であることが好ましい。また、高分子ナノシート10及び第2の高分子ナノシート11の膜厚dは、1μm未満とすると、電子素子8や皮膚100a等の貼着対象物に対する追従性がより高くなり、さらに分子間力も大きくなって密着性もより高まるため、1μm未満であることがより好ましい。さらに、高分子ナノシート10及び第2の高分子ナノシート11の膜厚が250nm以下であると、追従性がさらに一段と高くなり、密着性もさらに高まることから、250nm以下であることがより好ましい。

【0038】
このように、高分子ナノシート10は、膜厚dを極めて薄く形成できるとともに、さらには分子間力により皮膚100aと密着して空気層の形成を抑止し誘電率を高くすることができるので、その分、電極6,7と人体100との間の静電容量C(C=εo・ε・S/d、εo:真空の誘電率、ε:比誘電率、S:電極の表面積、d:高分子ナノシートの膜厚)を十分に高くすることができる。

【0039】
(3)バッテリレス電子デバイスの製造方法
次にバッテリレス電子デバイス3の製造方法について説明する。図4Aに示すように、始めに、高分子ナノシート10を作製するための基板16を準備し、基板16の表面に犠牲層15及び高分子ナノシート10を順に成膜してゆく。ここで、基板16としては、PET(ポリエチレンテレフタラート)、PP(ポリプロピレン)やPPE(ポリフェニレンエーテル)、COP(シクロオレフィン)、PI(ポリイミド)、アルミ箔、導電性高分子膜、紙、多糖膜、シリコーン樹脂、オブラート(ゼラチン)、シリコンウェハ、ガラス等を用いることができる。

【0040】
犠牲層15は、高分子ナノシート10を基板16から分離するために用いられる。この場合、犠牲層15の材料としては、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)、PNIPAM(ポリナイパム)、アルギン酸ナトリウム等を用いることができるが、その他、液体に溶ける性質(水溶性や油溶性等)を有し、かつ、生体適合性が高い(人体に害がない)材料であれば種々の材料を用いることができる。犠牲層15は、グラビアコータ(図示せず)を用いたロールツーロール技術により成膜してもよく、スピンコータ(図示せず)を用いて成膜してもよい。ロールツーロール技術では、スピンコータを用いた場合より、大きな面積で成膜することができる。

【0041】
高分子ナノシート10は、上述した犠牲層15と同様に、グラビアコータ(図示せず)を用いたロールツーロール技術やスピンコータ等の成膜方法を用いて、犠牲層15上に成膜する。

【0042】
次いで、高分子ナノシート10上にインクジェットにより導電材料を吐出して、高分子ナノシート10の表面に電極6,7及び配線9を描画することにより、図4Bに示すように、高分子ナノシート10上に所定形状の電極6,7及び配線9を形成する。

【0043】
次いで、図4Cに示すように、高分子ナノシート10上で配線9と電気的に接続するように電子素子8を配置し、電子素子8を高分子ナノシート10に密着させる。次いで、高分子ナノシート10と貼り合わせる第2の高分子ナノシート11を準備する。このとき、第2の高分子ナノシート11には、例えば、紙テープからなるフレーム17が周縁に沿って設けられている。次いで、フレーム17を持って高分子ナノシート10に第2の高分子ナノシート11を貼り合わせ、高分子ナノシート貼合体(図示せず)を作製する。

【0044】
次いで、この高分子ナノシート貼合体を、例えば水等の剥離液に浸漬し、犠牲層15を溶解させ、高分子ナノシート10から基板16を分離させる。これにより、図4Dに示すように、第2の高分子ナノシート11の周縁に沿ってフレーム17を有したバッテリレス電子デバイス3を作製することができる。なお、フレーム17は、バッテリレス電子デバイス3を人体100に貼着する際等に、必要に応じて第2の高分子ナノシート11から除去すればよい。

【0045】
なお、上述した実施形態においては、犠牲層15を形成する工程を含むが、本発明はこれに限らず、犠牲層15を形成する工程を省略して、基板16上に直接、高分子ナノシート10を成膜するようにしてもよい。この場合、基板16は高分子ナノシート10との密着性が低い材料で形成し、後の工程で設けた第2の高分子ナノシート11のフレーム17を使用する等して、最終的に高分子ナノシート10から基板16を分離することができる。

【0046】
また、電極6,7及び配線9を形成する工程の前に、高分子ナノシート10上にインク受容層(図示せず)を形成する工程を設けるようにしてもよい。導電性インクによってインク受容層上に電極6,7や配線9を印刷することで、導電性インクが弾かれることなく、微細な電極6,7及び配線9をより精確に形成することができる。

【0047】
この場合、インク受容層には、キトサン、ポリ酢酸ビニル、酢酸セルロース、ゼラチン、シリカ、および、カチオン性アクリル共重合体が望ましい。インク受容層は、上述した犠牲層15や高分子ナノシート10と同様に、グラビアコータを用いたロールツーロール技術等を使用して、高分子ナノシート10上に成膜することができる。

【0048】
(4)作用および効果
以上の構成において、バッテリレス電子デバイス3では、電子素子8と2つの電極6,7を電気的に接続し、伝送媒体となる人体100に高分子ナノシート10を密着させることで、電極6,7を人体100に貼着させる。また、バッテリレス電子デバイス3では、外部から人体100に誘起された電界に基づいて、人体100と電極6,7との間の静電結合により電子素子8に電力を供給する。

【0049】
バッテリレス電子デバイス3では、膜厚が薄い高分子ナノシート10により電極6,7を人体100に貼着させることで、人体100への装着性の向上を図ることができる。また、膜厚が薄い高分子ナノシート10を用いることで、バッテリレス電子デバイス3が分子間力によって人体100に密着し易くなり、電極6,7と人体100との間の空気層の形成を防止し、静電容量Cの低下を抑制できる。従って、バッテリレス電子デバイス3では、インピーダンス整合におけるインダクタの設計を特に行わずに静電容量Cを大きくでき、電子素子8を安定して動作させることができる。さらに、電子素子8に電力を供給するための、電極6,7の表面積Sや電極間距離Lを小さくした状態でも、電子素子8を動作させることが可能となるため、バッテリレス電子デバイス3を小型化することができる。

【0050】
また、バッテリレス電子デバイス3は、ハンダ付け等を一切行わずに、高分子ナノシート10及び第2の高分子ナノシート11による分子間力により、電子素子8を配線9に圧着して、配線9を電子素子8に強い接着力で接続させることができる。これにより、バッテリレス電子デバイス3は、ハンダ等のような硬質な接着剤が用いられていない分、柔軟性があり、皮膚100aの曲面や、凹凸した皮膚100aの表面形状に追従して皮膚100aに沿って密着することができるので、電極6,7と人体100との間の空気層の形成を防止し、人体100と電極6,7との間において静電容量Cの低下を抑制できる。

【0051】
(5)検証試験
(5-1)高分子ナノシートを使用したバッテリレス電子デバイスの動作確認試験
ここで、図2に示したバッテリレス電子デバイス3を実際に作製し、市販のリーダライタ及び電界アンテナ(株式会社eNFC社製 製品名eNFCスターターキット)を利用して、本発明のバッテリレス電子デバイス3について動作確認を行った。

【0052】
ここで、検証試験に用いるバッテリレス電子デバイス3は、高分子ナノシート10を成膜する際に使用する基板16として、PETフィルム(Lumirror25T60,パナック社製)を使用した。犠牲層15は、水溶性のポリビニルアルコール(PVA、関東化学社製、10wt% in water)を用い、グラビアコータ(ML-120,廉井精機社製)を用いて基板16上に成膜した。

【0053】
高分子ナノシート10は、スチレンブタジエンスチレン(SBS,Sigma Aldrich Japan社製,3 wt% in tetrahydrofuran)を用い、グラビアコータを用いたロールツーロール技術を利用して犠牲層15上に成膜した。

【0054】
そして、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、基板16上の高分子ナノシート10の膜厚を測定したところ、膜厚は800nmであった。

【0055】
そして、所望する形状・大きさの電極6,7及び配線9を形成したスクリーンマスクを用い、スクリーン印刷によって、導電性銀インク(TB3303G(NEO)、Threebond製)で電極6,7及び配線9を高分子ナノシート10の表面に描画して、電極6,7及び配線9を形成した。電極6,7は20mm×20mmの正方形状に形成して表面積を400mmとし、電極6,7の電極間距離Lは30mmとした。

【0056】
電子素子8として、ICタグ(NXP Semiconductors社製、動作電圧1.5V、消費電力40μW)を用意し、第1の電極6から延びる配線9と、第2の電極7から延びる配線9とに、それぞれ電気的に接続するように当該ICタグを設置した。そして、高分子ナノシート10と同じSBSで作製した第2の高分子ナノシート11を用意し、電極6,7、配線9及び電子素子8を設けた高分子ナノシート10上に第2の高分子ナノシート11を貼着した後、剥離液である水に浸漬した。

【0057】
これにより、水により犠牲層15を溶解させ、高分子ナノシート10から基板16を分離してバッテリレス電子デバイス3を作製した。

【0058】
次に、バッテリレス電子デバイス3を人体100に貼着した状態を再現するために、皮膚100aと同じ電気的特性(比誘電率:150、導電率:0.6 S/m(参考:https://www.asahi-rubber.co.jp/products/denjiha/01.html 「人体通信用ラバーファントム/誘電率、導電率周波数特性」))を有するラバー製の平板材(株式会社朝日ラバー社製 板状ファントム。以下、皮膚モデルとも称する)を用意し、この平板材の表面にバッテリレス電子デバイス3の高分子ナノシート10を貼着させた。

【0059】
伝送装置2としては、市販のeNFCスターターキット(株式会社eNFC社製)を用いた。eNFCスターターキットのリーダライタはタカヤ株式会社製の製品名TR3X-MU01であり、周波数が13.56MHz、送信出力が300mW±20%である。

【0060】
そして、リーダライタを動作させ、当該リーダライタに接続させた電界アンテナに、手で保持した平板材の裏面を単に接触させた。この際、平板材の表面に貼着したバッテリレス電子デバイス3のICタグが、電界アンテナで発生している電界により動作するか否かを確認した。ICタグが動作しているかは、リーダライタで読み取られたICタグのUID(Unique ID 固有ID番号)がパーソナルコンピュータの画面上に表示されるか否かにより確認した。その結果、平板材の裏面を電界アンテナに接触させることで、バッテリレス電子デバイス3のICタグが動作することが確認できた。

【0061】
(5-2)電極の表面積及び電極間距離を変えたときのバッテリレス電子デバイスの動作率について
次に、バッテリレス電子デバイスの電極の表面積S及び電極間距離Lを変えてバッテリレス電子デバイスの動作率がどのように変化するかについて確認する検証試験を行った。

【0062】
この検証試験では、図5A及び図5Bに示すようなバッテリレス電子デバイス20を作製した。ここで、高分子ナノシート10のみでは膜厚が薄すぎ、同じ大きさ・形状の電極6,7や、同じ電極間距離Lについて正確な寸法を再現し難い。そこで、この検証試験では、硬さを調整した支持基板23上の高分子ナノシート10の表面に所定の大きさ・形状の電極6,7や、所定の長さの電極間距離Lを正確に再現し、支持基板23を高分子ナノシート10から分離せずにそのまま使用した。

【0063】
なお、支持基板23については、高分子ナノシート10を成膜する際に用いた基板16と犠牲層15をそのまま用い、これら基板16及び犠牲層15を支持基板23として使用した。この場合、PET(ポリエチレンテレフタラート)で形成した基板16を用い、犠牲層15は、PVA(ポリビニルアルコール)により基板16上に成膜した。

【0064】
そして、上述した検証試験と同様にして高分子ナノシート10を支持基板23上に成膜し、支持基板23の表面に高分子ナノシート10を成膜した複数の貼着シート24を作製した。なお、この検証試験では、支持基板23及び高分子ナノシート10を合わせた貼着シート24の膜厚d1を全て30μmとした。

【0065】
次に、所望する大きさの電極6,7及び配線9を形成したスクリーンマスクを用い、スクリーン印刷によって、導電性銀インク(TB3303G(NEO)、Threebond製)により、正方形状の電極6,7と、帯状の配線9とを、高分子ナノシート10上に形成した、この際、スクリーンマスクを変えることで、高分子ナノシート10上の電極6,7の表面積Sと、電極間距離Lを、貼着シート24毎にそれぞれ変えた。

【0066】
電子素子8としてICタグ(NXP Semiconductors社製、動作電圧1.5V、消費電力40μW)を使用した。そして、第1の電極6に接続した配線9と、第2の電極7に接続した配線9とにICタグが電気的に接続するように、高分子ナノシート10上にICタグを設置した。

【0067】
この検証試験では、正方形状の電極6,7の表面積Sを10mm×10mmと20mm×20mmと30mm×30mmとにそれぞれ変え、これら表面積S毎にそれぞれ電極間距離Lを10mmと20mmと30mmに変えた9種類のバッテリレス電子デバイス20を、それぞれ5つずつ作製した。

【0068】
次いで、バッテリレス電子デバイス20を人体100に貼着した状態を再現するために、上述した検証試験と同様に、皮膚モデルとしてラバー製の平板材101(株式会社朝日ラバー社製板状ファントム)を複数枚用意し、平板材(皮膚モデル)101毎に、各バッテリレス電子デバイス20を平板材101の表面に貼着した。

【0069】
そして、上述した検証試験と同様に、市販のeNFCスターターキット(株式会社eNFC社製)を用い、eNFCスターターキットのリーダライタを動作させ、当該リーダライタに接続させた電界アンテナ102に、各平板材101の裏面を単に接触させた。

【0070】
この際、各平板材101の表面にそれぞれ貼着したバッテリレス電子デバイス20のICタグが、電界アンテナ102で発生している電界により動作するか否かを確認した。その結果、図6に示すような結果が得られた。図6から、貼着シート24の膜厚d1が30μmの場合、電極6,7の表面積Sが30mm×30mm(図6中、√S=30mmと表記)で電極間距離Lが20mm、30mmとしたバッテリレス電子デバイス20では、用意した5つ全てにおいてICタグが動作し、動作率が100%であった。また、電極6,7の表面積Sが20mm×20mm(図6中、√S=20mmと表記)でも電極間距離Lを30mmとしたバッテリレス電子デバイス20では、用意した5つ全てにおいてICタグが動作し、動作率が100%であった。

【0071】
図6から、バッテリレス電子デバイス20の動作率を向上させるためには、電極6,7の表面積Sを大きくし、電極間距離Lを長くすることが好ましいが、貼着シート24の膜厚d1を薄くし、かつ平板材101との間に空気層が形成されないようにして電極6,7を設けることができれば、電極6,7の表面積Sが小さい400mm以下であっても電子素子8を動作させることができることが確認できた。また、貼着シート24の膜厚d1を薄くし、かつ平板材101との間に空気層が形成されないようにして電極6,7を設けることができれば、電極間距離Lについても、電極6,7の表面積Sに依存するものの、30mm以下の10mmでも電子素子8を動作させることができることが確認できた。

【0072】
また、この検証試験の結果を解析することで、高分子ナノシート10の膜厚dを、貼着シート24の膜厚d1の10分の1となる3μmとした場合には、電極6,7の表面積Sを10mm以上100mm以下としても、貼着シート24の膜厚d1が30μmのときと同じ静電容量を確保できることが分かった。

【0073】
さらに、この検証試験の結果を解析することで、高分子ナノシート10の膜厚dを、貼着シート24の膜厚d1の10分の1となる3μmとした場合には、電極6,7の表面積Sを調整することで、電極間距離Lを2mm以上10mm以下としても、貼着シート24の膜厚d1が30μmのときと同じ容量性インピ—ダンスを確保できることが分かった。

【0074】
(5-3)貼着シートの膜厚を変えたときのバッテリレス電子デバイスの動作率について
次に、貼着シート24の膜厚d1を変えたときにバッテリレス電子デバイス20の動作率が変化するか否かについて確認した。ここでは、正方形状の電極6,7の表面積Sを20mm×20mmとし、電極間距離Lを30mmとし、貼着シート24の膜厚d1を30μmとしたバッテリレス電子デバイス20を5つ用意した。また、これとは別に、電極6,7の表面積Sと電極間距離Lを上記と同じにして、貼着シート24の膜厚d1を100μm,170μmとしたバッテリレス電子デバイス20をそれぞれ5つずつ用意した。なお、ここでは、高分子ナノシート10の単体の膜厚dは全て800nmとし、支持基板23の膜厚を変えることで貼着シート24の膜厚d1を調整した。

【0075】
次いで、バッテリレス電子デバイス20を人体100に貼着した状態を再現するために、上述した検証試験と同様に皮膚モデルとしてラバー製の平板材101を複数枚用意し、平板材101毎に、各バッテリレス電子デバイス20を平板材101の表面に貼着した。

【0076】
そして、上述した検証試験と同様に、市販のeNFCスターターキット(株式会社eNFC社製)を用い、eNFCスターターキットのリーダライタを動作させ、当該リーダライタに接続させた電界アンテナ102に、各平板材101の裏面を接触させた。

【0077】
この際、各平板材101の表面にそれぞれ貼着したバッテリレス電子デバイス20のICタグが、電界アンテナ102で発生している電界により動作するか否かを確認した。その結果、図7に示すような結果が得られた。図7から、貼着シート24の膜厚d1が30μmのとき、バッテリレス電子デバイス20の動作率が100%であったが、当該膜厚d1が厚くなるほど動作率が低下することが確認できた。

【0078】
よって、バッテリレス電子デバイス20の動作率を向上させるためには、バッテリレス電子デバイス20の貼着シート24の膜厚d1を薄くすることが望ましいことが確認できた。

【0079】
(6)他の実施の形態
なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態においては、2つの電極6,7を設けたバッテリレス電子デバイス3,20について説明したが、本発明はこれに限らず、3つや4つ等のように2つ以上の電極を設けたバッテリレス電子デバイスであってもよい。また、伝送媒体が伝送装置2と接触することで伝送媒体に貼着したバッテリレス電子デバイスが動作できれば、例えば、装置や動物等のような人体100以外を伝送媒体として適用してもよい。

【0080】
また、上述した実施形態においては、伝送装置2に伝送媒体が接触することで、伝送装置2のコイルと、伝送媒体及び電極6,7間で形成されるコンデンサと、が直列に接続して伝送装置2の周波数にバッテリレス電子デバイス3を共振させる直列共振方式を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、伝送装置2及びバッテリレス電子デバイス3に、それぞれ並列共振回路がトランス結合した構成を設け、伝送媒体及び電極6,7間での静電結合が小さくてもバッテリレス電子デバイス3への電力供給が行える並列共振方式を適用してもよく、また、これら直列共振方式及び並列共振方式を複合した方式を適用してもよい。

【0081】
また、高分子ナノシート10及び第2の高分子ナノシート11の材料は上述した実施形態で例示したものに限られず、人体100等の伝送媒体に分子間力で貼着可能な高分子ナノシート10や、高分子ナノシート10に分子間力で貼着可能な第2の高分子ナノシート11であればよく、種々の材料が適用可能である。

【0082】
さらに、電極6,7の材料や配線9の材料も、導電性の材料であり、かつ、柔軟性のある高分子ナノシート10を介して伝送媒体に密着させることができれば、種々の材料・形状が適用可能である。また、電極6,7や配線9の形成方法も、印刷により形成されるものに限定されない。

【0083】
さらに、上述した実施形態においては、高分子ナノシート10上に第2の高分子ナノシート11を貼着し、電極6,7と電子素子8と配線9とを高分子ナノシート10と第2の高分子ナノシート11との間に挟み込んだバッテリレス電子デバイス3を適用した場合について述べたが、本発明はこれに限らない。例えば、第2の高分子ナノシート11を設けずに、電極6,7と電子素子8と配線9とを単に高分子ナノシート10上に設けたバッテリレス電子デバイスとしてもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 伝送システム
2 伝送装置
3,20 バッテリレス電子デバイス
6,7 電極
8 電子素子
9 配線
10 高分子ナノシート
11 第2の高分子ナノシート
100 人体(伝送媒体)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6