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明細書 :計測装置及び照射装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和2年9月17日(2020.9.17)
発明の名称または考案の名称 計測装置及び照射装置
国際特許分類 G01N  21/64        (2006.01)
G01N  21/01        (2006.01)
G02B  21/06        (2006.01)
G02B  21/36        (2006.01)
G02B   5/18        (2006.01)
FI G01N 21/64 E
G01N 21/64 B
G01N 21/01 D
G02B 21/06
G02B 21/36
G02B 5/18
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 36
出願番号 特願2019-535718 (P2019-535718)
国際出願番号 PCT/JP2018/029924
国際公開番号 WO2019/031584
国際出願日 平成30年8月9日(2018.8.9)
国際公開日 平成31年2月14日(2019.2.14)
優先権出願番号 2017154392
優先日 平成29年8月9日(2017.8.9)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】安井 武史
【氏名】岩田 哲郎
【氏名】水谷 康弘
【氏名】南川 丈夫
【氏名】水野 孝彦
【氏名】長谷 栄治
【氏名】山本 裕紹
出願人 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
個別代理人の代理人 【識別番号】100149548、【弁理士】、【氏名又は名称】松沼 泰史
【識別番号】100163496、【弁理士】、【氏名又は名称】荒 則彦
【識別番号】100161207、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 和純
【識別番号】100147267、【弁理士】、【氏名又は名称】大槻 真紀子
審査請求 未請求
テーマコード 2G043
2G059
2H052
2H249
Fターム 2G043AA03
2G043BA16
2G043BA17
2G043CA04
2G043CA05
2G043EA01
2G043FA01
2G043FA02
2G043FA03
2G043FA06
2G043GA02
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2G043GA04
2G043GA06
2G043GA08
2G043GA21
2G043GB21
2G043HA01
2G043HA02
2G043HA05
2G043HA06
2G043HA07
2G043HA09
2G043HA15
2G043JA03
2G043JA04
2G043JA05
2G043KA07
2G043KA09
2G043LA01
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2G043NA01
2G043NA04
2G059AA05
2G059BB08
2G059BB14
2G059CC16
2G059CC20
2G059EE07
2G059EE12
2G059FF01
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2G059FF04
2G059GG01
2G059GG02
2G059GG03
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2G059GG06
2G059JJ05
2G059JJ06
2G059JJ07
2G059JJ11
2G059JJ13
2G059JJ17
2G059JJ18
2G059JJ19
2G059JJ22
2G059JJ30
2G059KK01
2G059LL03
2G059MM01
2G059MM07
2G059NN10
2G059PP04
2H052AA07
2H052AA09
2H052AC14
2H052AC15
2H052AC34
2H052AD34
2H052AD35
2H052AF14
2H249AA06
2H249AA58
要約 本発明の計測装置は、互いに異なる周波数で分布しているスペクトルを2以上含むスペクトル光を、互いに隣接周波数間隔を異ならせて複数出射する光出射部と、試料の複数の異なる集光点領域のそれぞれに2以上のスペクトルを重畳領域で重ね且つ互いにずらして集光させる集光部と、前記試料における複数の重畳領域のそれぞれでの干渉光ビートにより発光し且つ前記試料の情報を含む蛍光ビートの信号を取得する検出部と、を備える。
特許請求の範囲 【請求項1】
互いに異なる周波数で分布しているスペクトルを2以上含むスペクトル光をそれぞれ発し、前記スペクトル光の隣接するスペクトルの周波数間隔である隣接周波数間隔がそれぞれ異なる複数の光源と、
前記複数の光源から発せられた複数のスペクトル光を前記スペクトルごとに互いに異なる方向にそれぞれ分散させる分散部と、
前記分散部によって分散された光源ごとの前記スペクトルを試料の複数の異なる集光点にそれぞれ集光し、且つ、1つの光源に基づく複数の集光点と他の光源に基づく複数の集光点とをそれぞれ重畳させる集光部と、
前記集光部によって集光され、前記試料における集光点が重なる複数の重畳部のそれぞれでの干渉光ビートにより発光する前記試料の情報を含む蛍光ビートを、前記重畳部と共役な位置に集光し空間フィルタリングする空間フィルタリング光学系と、
前記空間フィルタリング光学系で空間フィルタリングされ、前記試料の情報を含む前記複数の重畳部から発せられた蛍光ビートの信号を取得する検出部と、を備える、計測装置。
【請求項2】
前記複数の光源のそれぞれは、前記スペクトル光として、周波数軸で隣り合う前記スペクトルの周波数の間隔である隣接周波数間隔が互いに一致しているスペクトルを発する光周波数コム光源である、請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記分散部は、入射する光を波長分散する分散素子を備え、
前記光源から発せられた前記スペクトル光を前記分散素子によって前記スペクトルごとに異なる方向に波長分散させる、請求項1又は2に記載の計測装置。
【請求項4】
前記複数の光源は、隣接するスペクトルの周波数間隔が第1隣接周波数間隔である第1スペクトル光を発する第1の光源と、隣接するスペクトルの周波数間隔が第2隣接周波数間隔の第2スペクトル光を発する第2の光源と、を少なくとも備え、
同じ周波数軸で前記第1スペクトル光及び第2スペクトル光を並べた際に最も近くに隣り合うスペクトル同士の周波数間隔が、第1隣接周波数間隔及び前記第2隣接周波数間隔の半分未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の計測装置。
【請求項5】
前記複数の光源の少なくとも1つの光源が発するスペクトル光のキャリア・エンベロープ・オフセット周波数又は隣接周波数間隔を制御する制御部をさらに備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の計測装置。
【請求項6】
前記空間フィルタリング光学系は、前記制御部によって制御されるスペクトル光のオフセット周波数及び隣接周波数間隔に応じて透過する光の位置や形状を変更可能な空間光変調器を備える、請求項5に記載の計測装置。
【請求項7】
互いに異なる周波数で分布しているスペクトルを2以上含むスペクトル光をそれぞれ発し、前記スペクトル光の隣接するスペクトルの周波数間隔である隣接周波数間隔がそれぞれ異なる複数の光源と、
前記複数の光源から発せられた複数のスペクトル光を前記スペクトルごとに互いに異なる方向にそれぞれ分散させる分散部と、
前記分散部によって分散された光源ごとの前記スペクトルを試料の複数の異なる集光点にそれぞれ集光し、且つ、1つの光源に基づく複数の集光点と他の光源に基づく複数の集光点とをそれぞれ重畳させる集光部と、を備える照射装置。
【請求項8】
前記複数の光源は、隣接するスペクトルの周波数間隔が第1隣接周波数間隔である第1スペクトル光を発する第1の光源と、隣接するスペクトルの周波数間隔が第2隣接周波数間隔の第2スペクトル光を発する第2の光源と、を少なくとも備え、
同じ周波数軸で前記第1スペクトル光及び第2スペクトル光を並べた際に最も近くに隣り合うスペクトル同士の周波数間隔が、第1隣接周波数間隔及び前記第2隣接周波数間隔の半分未満である、請求項7に記載の照射装置。
【請求項9】
前記複数の光源は、試料の集光点に照射光をそれぞれ同時に照射し、
それぞれの光源からの前記照射光は、前記試料の集光点において互いに干渉する、請求項7又は8に記載の照射装置。
【請求項10】
離散的な複数の周波数値の周波数成分を有する第1光を発する第1光源と、
前記第1光とは異なる離散的な複数の周波数値の周波数成分を有する第2光を発する第2光源と、
前記第1光と前記第2光とを分散して、前記第1光に基づく第1周波数値の周波数成分を有する第1照射光の第1照射領域と、前記第2光に基づく第2周波数値の周波数成分を有する第2照射光の第2照射領域との、双方の領域の一部同士が重畳するように、前記第1照射光と前記第2照射光を集光する分散集光部と、を備え、
前記第1周波数値と前記第2周波数値との差分が、前記第1光の前記第1周波数値とそれに隣接する周波数値との差分以下となるように、前記第1照射光と前記第2照射光とを同時に照射する照射装置。
【請求項11】
互いに異なる周波数で分布しているスペクトルを2以上含むスペクトル光を複数出射し、複数の前記スペクトル光のそれぞれにおいて隣接するスペクトルの周波数間隔である隣接周波数間隔が異なる光出射部と、
前記光出射部から発せられた複数のスペクトル光を前記スペクトルごとに互いに異なる方向にそれぞれ分散させる分散部と、
前記分散部によって分散された前記スペクトルを試料の複数の異なる集光点にそれぞれ集光させ、且つ、1つの前記スペクトル光に基づく複数の集光点と他の前記スペクトル光に基づく複数の集光点とをそれぞれ重畳させる集光部と、
前記集光部によって集光され、前記試料における集光点が重なる複数の重畳領域のそれぞれでの干渉光ビートにより発光する前記試料の情報を含む蛍光ビートの信号を取得する検出部と、を備える、計測装置。
【請求項12】
前記光出射部は、前記2つのスペクトル光をそれぞれ発し、前記隣接周波数間隔がそれぞれ異なる複数の光源を有する請求項11に記載の計測装置。
【請求項13】
前記集光部によって集光され、前記試料における集光点が重なる複数の重畳領域のそれぞれでの干渉光ビートにより発光する前記試料の情報を含む蛍光ビートを、前記重畳領域と共役な位置に集光し空間フィルタリングする空間フィルタリング光学系をさらに備え、
前記検出部は、前記空間フィルタリング光学系で空間フィルタリングされた前記蛍光ビートの信号を取得する、請求項11に記載の計測装置。
【請求項14】
前記検出部は、前記蛍光ビートの位相情報を取得する、請求項1又は請求項11に記載の計測装置。
【請求項15】
互いに異なる周波数で分布しているスペクトルを2以上含むスペクトル光をそれぞれ発し、前記スペクトル光の隣接するスペクトルの周波数間隔である隣接周波数間隔がそれぞれ異なる光出射部と、
前記光出射部から出射された複数のスペクトル光を前記スペクトルごとに互いに異なる方向にそれぞれ分散させる分散部と、
前記分散部によって分散された光源ごとの前記スペクトルを試料の複数の異なる集光点にそれぞれ集光し、且つ、1つの光源に基づく複数の集光点と他の光源に基づく複数の集光点とをそれぞれ重畳させる集光部と、を備える照射装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、計測装置及び照射装置に関する。本願は、2017年8月9日に、日本に出願された特願2017-154392号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、蛍光イメージングを可能とする光学顕微鏡として、共焦点光学系を備えた蛍光顕微鏡(以下、共焦点蛍光顕微鏡とする)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
通常の光学顕微鏡では試料の所定範囲を均一に照射するのに対し、共焦点光学系では点光源から発せられた照射光が対物レンズによって試料の一点に集光する。照射光としては、単色性及び直進性に優れているレーザ光が用いられる。また、共焦点光学系では、対物レンズの焦点位置と共役な位置にピンホールを配置することで、試料で焦点が合った位置の蛍光のみがピンホールを通過して検出される。
【0004】
このように共焦点光学系では、先ず照射光が試料の1点に集光され、試料の焦点位置からの蛍光はピンホールを通過するのに対し、焦点位置以外からの蛍光はピンホールでカットされる。従って、共焦点光学系では、通常の光学顕微鏡に比べて、焦点に隣接する横方向、及び焦点面に対して手前側や奥側からの迷光の影響を受けず、コントラストが向上する。結果、照射光の焦点位置のみの情報が検出されるので、3次元の空間分解能を有する。
【0005】
上記のように鮮明な3次元画像を形成可能とする共焦点蛍光顕微鏡は、例えば蛍光タンパク質を用いた生命機能解析等のバイオ分野をはじめ、広い分野で用いられている。また、高い分解能や定量性を有する点から、将来においても共焦点蛍光顕微鏡の重要性は増していくと考えられる。
【0006】
一方で、共焦点蛍光顕微鏡では焦点位置の点情報しか得られない。そのため、共焦点蛍光顕微鏡では、試料面内の2次元情報を画像化するために、点光源から発せられた照射光の焦点位置を試料内部で相対的に走査させる必要がある。このように照射光の焦点位置を試料に対して相対的に走査することを可能とする走査装置として、例えばガルバノミラーが知られている。ところが、これらの走査装置を用いたとしても、広範囲の高速な走査には時間がかかってしまう。
【0007】
上記事情に対処する技術として、例えば特許文献2には、点光源が発する離散スペクトルをスペクトルごとに測定試料に対して2次元的に分散させ、測定試料の各測定点に対応したモード分解スペクトルを一度に取得する計測装置が記載されている。この計測装置は、試料に入射するスペクトルの位置情報とスペクトルの周波数とを対応させて、試料の情報を得る。そのため、試料面内の2次元情報を走査せずに画像化できる。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】日本国特開2012-103379号公報
【特許文献2】国際公開第2017/002535号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2に記載の計測装置は、2次元情報を走査せずに同時に計測できる。そのため、生命機能解析等のバイオ分野において、細胞等に生じている現象をリアルタイムに同時に観察することができる。また測定領域が拡大した場合にも、この計測装置を用いると、試料の情報を短時間で計測できる。一方で、この計測装置は、レーザ透過光やレーザ反射光を用いて画像化するため、蛍光イメージを取得することはできなかった。
【0010】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、試料の蛍光イメージを高速に取得可能な計測装置を提供することを目的とする。また、本発明は、試料に所定の条件で光を照射し、この計測装置を用いた計測を可能とする照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様の計測装置は、互いに異なる周波数で分布しているスペクトルを2以上含むスペクトル光をそれぞれ発し、前記スペクトル光の隣接するスペクトルの周波数間隔である隣接周波数間隔がそれぞれ異なる複数の光源と、前記複数の光源から発せられた複数のスペクトル光を前記スペクトルごとに互いに異なる方向にそれぞれ分散させる分散部と、前記分散部によって分散された光源ごとの前記スペクトルを試料の複数の異なる集光点にそれぞれ集光し、且つ、1つの光源に基づく複数の集光点と他の光源に基づく複数の集光点とをそれぞれ重畳させる集光部と、前記集光部によって集光され、前記試料における集光点が重なる複数の重畳部のそれぞれでの干渉光ビートにより発光する前記試料の情報を含む蛍光ビートを、前記重畳部と共役な位置に集光し空間フィルタリングする空間フィルタリング光学系と、前記空間フィルタリング光学系で空間フィルタリングされ、前記試料の情報を含む前記複数の重畳部から発せられる変調された蛍光ビートの信号を取得する検出部と、を備える。
【0012】
上記態様の計測装置において、前記複数の光源のそれぞれは、前記スペクトル光として、周波数軸で隣り合う前記スペクトルの周波数の間隔である隣接周波数間隔が互いに一致している光周波数コムスペクトルを発する光周波数コム光源であってもよい。
【0013】
上記態様の計測装置において、前記分散部は、入射する光を波長分散する分散素子を備え、前記光源から発せられた前記スペクトル光を前記分散素子によって前記スペクトルごとに異なる方向に波長分散させる構成でもよい。
【0014】
上記態様の計測装置において、前記複数の光源は、隣接するスペクトルの周波数間隔が第1隣接周波数間隔である第1スペクトル光を発する第1の光源と、隣接するスペクトルの周波数間隔が第2隣接周波数間隔の第2スペクトル光を発する第2の光源と、を少なくとも備え、同じ周波数軸で前記第1スペクトル光及び第2スペクトル光を並べた際に最も近くに隣り合うスペクトル同士の周波数間隔が、第1隣接周波数間隔及び前記第2隣接周波数間隔の半分未満であってもよい。
【0015】
上記態様の計測装置において、前記複数の光源の少なくとも1つの光源が発するスペクトル光のキャリア・エンベロープ・オフセット周波数又は隣接周波数間隔を制御する制御部をさらに備えてもよい。
【0016】
上記態様の計測装置において、前記空間フィルタリング光学系は、前記制御部によって制御されるスペクトル光のオフセット周波数及び隣接周波数間隔に応じて透過する光の位置を変更可能な空間光変調器を備えてもよい。
【0017】
第2の態様の照射装置は、互いに異なる周波数で分布しているスペクトルを2以上含むスペクトル光をそれぞれ発し、前記スペクトル光の隣接するスペクトルの周波数間隔である隣接周波数間隔がそれぞれ異なる複数の光源と、前記複数の光源から発せられた複数のスペクトル光を前記スペクトルごとに互いに異なる方向にそれぞれ分散させる分散部と、前記分散部によって分散された光源ごとの前記スペクトルを試料の複数の異なる集光点にそれぞれ集光し、且つ、1つの光源に基づく複数の集光点と他の光源に基づく複数の集光点とをそれぞれ重畳させる集光部と、を備える。
【0018】
上記態様の照射装置において、前記複数の光源は、隣接するスペクトルの周波数間隔が第1隣接周波数間隔である第1スペクトル光を発する第1の光源と、隣接するスペクトルの周波数間隔が第2隣接周波数間隔の第2スペクトル光を発する第2の光源と、を少なくとも備え、同じ周波数軸で前記第1スペクトル光及び第2スペクトル光を並べた際に最も近くに隣り合うスペクトル同士の周波数間隔が、第1隣接周波数間隔及び前記第2隣接周波数間隔の半分未満であってもよい。
【0019】
上記態様の照射装置において、前記複数の光源は、試料の集光点に照射光をそれぞれ同時に照射し、それぞれの光源からの前記照射光は、前記試料の集光点において互いに干渉する構成でもよい。
【0020】
第3の態様の照射装置は、離散的な複数の周波数値の周波数成分を有する第1光を発する第1光源と、前記第1光とは異なる離散的な複数の周波数値の周波数成分を有する第2光を発する第2光源と、前記第1光と前記第2光とを分散して、前記第1光に基づく第1周波数値の周波数成分を有する第1照射光の第1照射領域と、前記第2光に基づく第2周波数値の周波数成分を有する第2照射光の第2照射領域との、双方の領域の一部同士が重畳するように、前記第1照射光と前記第2照射光を集光する分散集光部と、を備え、前記第1周波数値と前記第2周波数値との差分が、前記第1光の前記第1周波数値とそれに隣接する周波数値との差分以下となるように、前記第1照射光と前記第2照射光とを同時に照射する。
【0021】
第4の態様の計測装置は、互いに異なる周波数で分布しているスペクトルを2以上含むスペクトル光を複数出射し、複数の前記スペクトル光のそれぞれにおいて隣接するスペクトルの周波数間隔である隣接周波数間隔が異なる光出射部と、前記光出射部から発せられた複数のスペクトル光を前記スペクトルごとに互いに異なる方向にそれぞれ分散させる分散部と、前記分散部によって分散された前記スペクトルを試料の複数の異なる集光点にそれぞれ集光させ、且つ、1つの前記スペクトル光に基づく複数の集光点と他の前記スペクトル光に基づく複数の集光点とをそれぞれ重畳させる集光部と、前記集光部によって集光され、前記試料における集光点が重なる複数の重畳領域のそれぞれでの干渉光ビートにより発光する前記試料の情報を含む蛍光ビートの信号を取得する検出部と、を備える。
【0022】
上記態様の計測装置において、前記光出射部は、前記2つのスペクトル光をそれぞれ発し、前記隣接周波数間隔がそれぞれ異なる複数の光源を有していてもよい。
【0023】
上記態様の計測装置において、前記集光部によって集光され、前記試料における集光点が重なる複数の重畳領域のそれぞれでの干渉光ビートにより発光する前記試料の情報を含む蛍光ビートを、前記重畳領域と共役な位置に集光し空間フィルタリングする空間フィルタリング光学系をさらに備えてもよい。前記検出部は、前記空間フィルタリング光学系で空間フィルタリングされた前記蛍光ビートの信号を取得してもよい。
【0024】
上記態様の計測装置において、前記検出部は、前記蛍光ビートの位相情報を取得してもよい。
【0025】
第5の態様の照射装置は、互いに異なる周波数で分布しているスペクトルを2以上含むスペクトル光をそれぞれ発し、前記スペクトル光の隣接するスペクトルの周波数間隔である隣接周波数間隔がそれぞれ異なる光出射部と、前記光出射部から出射された複数のスペクトル光を前記スペクトルごとに互いに異なる方向にそれぞれ分散させる分散部と、前記分散部によって分散された光源ごとの前記スペクトルを試料の複数の異なる集光点にそれぞれ集光し、且つ、1つの光源に基づく複数の集光点と他の光源に基づく複数の集光点とをそれぞれ重畳させる集光部と、を備える。
【発明の効果】
【0026】
上記態様にかかる計測装置によれば、試料の蛍光イメージを高速に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態の計測装置の模式図である。
【図2】離散スペクトル光について説明するための模式図である。
【図3】第1の点光源が発する離散スペクトル光の第1光周波数コムスペクトルと、第2の点光源が発する離散スペクトル光の第2光周波数コムスペクトルと、を示す図である。
【図4】第1実施形態の計測装置における離散スペクトル光源の第1の構成例を示す概略図である。
【図5】第1実施形態の計測装置における離散スペクトル光源の第2の構成例を示す概略図である。
【図6】第1実施形態の計測装置における離散スペクトル光源の第3の構成例を示す概略図である。
【図7】第1実施形態の計測装置における離散スペクトル光源の第4の構成例を示す概略図である。
【図8】分散素子としてVIPAと回折格子とを組み合わせて用いた場合の分散部の第1の構成例を示す模式図である。
【図9】集光部によって試料の表面に2次元的に展開された集光点を模式的に示した図である。
【図10】第1光周波数コムスペクトルと第2光周波数コムスペクトルとの干渉RFスペクトルの発生過程を説明するための図である。
【図11】試料の重畳領域と検出される蛍光ビート群スペクトルとの関係を示す図である。
【図12】試料における集光点の重畳領域とピンホールアレイ素子の開口部の位置関係を模式的に示す図である。
【図13】第2実施形態の計測装置の模式図である。
【図14】第3実施形態の計測装置の模式図である。
【図15】取得する蛍光ビートの位相情報から蛍光寿命の情報を取り出す方法について説明するための模式図である。
【図16】第1実施形態の計測装置の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を適用した計測装置の実施形態について、図面を参照して説明する。

【0029】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の計測装置10Aの模式図である。図1に示すように、計測装置10Aは、光出射部11と、2つの点光源(光源)12と、分散部14と、集光部16と、分離部19と、空間フィルタリング光学系18と、検出部20と、を備えている。

【0030】
[光出射部]
図1に示す計測装置10Aは、2つの点光源(光源)12を有する光出射部11を備える。点光源12の数は、必ずしも2つに限られないが、第1実施形態では、2つの場合を説明する。

【0031】
[点光源]
2つの点光源12は、第1の点光源12Aと第2の点光源12Bで構成されている。第1の点光源12Aと第2の点光源12Bは、離散スペクトル光源(光周波数コム光源)22と、集光レンズ24と、を備えている。第1の点光源12Aにおける離散スペクトル光源(第1の光源)22aは、離散スペクトル光(スペクトル光,第1スペクトル光)LAを発する。第2の点光源12Bにおける離散スペクトル光源(第2の光源)22bは、離散スペクトル光(スペクトル光,第1スペクトル光)LBを発する。

【0032】
図2は、離散スペクトル光LA,LBについて説明するための模式図である。図2では、わかりやすくするため、スペクトルの本数を減らしている。図2に示すように、離散スペクトル光LA,LBは、互いに異なる周波数で分布するスペクトルMAを2以上含んでいる。
このような離散スペクトル光LA,LBとしては、光周波数コム光源のスペクトルが挙げられる。以下、光周波数コム光源のスペクトルを光周波数コムスペクトルLX0という。光周波数コムスペクトルLX0は、例えば周波数軸上で互いに所定の周波数間隔で分布するスペクトルMAを2以上含んでいる。図2では、周波数軸をf軸として示している。以下、測定時には表れないスペクトル(図2の上の図において1点鎖線で示されているスペクトル)も含めてスペクトルMAの数をnとする。周波数軸における周波数の位置が隣り合うスペクトルMAの周波数の間隔を、隣接周波数間隔frという。周波数特性で見ると、n個のスペクトルMAは、キャリア・エンベロープ・オフセット周波数f0、及び所定の光強度|E(f)|の分布を有するスペクトル・エンベロープNAを備え、周波数軸上に分布している。以下、キャリア・エンベロープ・オフセット周波数f0を、単にオフセット周波数f0と記載する。

【0033】
光周波数コムスペクトルLX0の時間特性を見ると、パルスΦ1,Φ2,…,Φmが複数分布している。隣接したパルスΦ1,Φ2,…,Φmの間の互いに中心の時間間隔が1/frである。複数のパルスΦ1,Φ2,…,Φmの光搬送波電界CAは、複数のスペクトルMAを逆フーリエ変換して得られる時間分布を有する。複数のパルスΦ1,Φ2,…,Φnのパルス包絡線WAはスペクトル・エンベロープNAを逆フーリエ変換して得られる時間分布を有する。

【0034】
オフセット周波数f0と、オフセット周波数f0を有するスペクトルMAに対する順番を決めれば、所定の順番のスペクトルMAの周波数が決まる。例えば、オフセット周波数f0を有するスペクトルMAに対してn番目のスペクトルMAの周波数νnは、下記の(1)式のように決められる。
νn=n×fr+f0 ・・・(1)

【0035】
光周波数コムスペクトルLX0では、隣接周波数間隔fr及びオフセット周波数f0が周波数標準器を基準に安定化されてスペクトルMAの周波数が周波数軸上で殆ど変化せず、固定されている。「周波数軸上で変化せず」とは、複数のスペクトルMAの互いに異なるモードが位相同期され、スペクトルMAの周波数が周波数標準器に位相同期することで達成され得る程度に、周波数軸上で変化しない状態を示す。

【0036】
第1の点光源12Aが発する離散スペクトル光LAと、第2の点光源12Bが発する離散スペクトル光LBとは、オフセット周波数f0及び隣接周波数間隔frが異なる。図3は、第1の点光源12Aが発する離散スペクトル光LAの第1光周波数コムスペクトルLX1と、第2の点光源12Bが発する離散スペクトル光LBの第2光周波数コムスペクトルLX2と、を示す図である。

【0037】
図3に示すように、光周波数コムスペクトルLX1,LX2、即ち、離散スペクトル光LA,LBはそれぞれ、周波数軸で等間隔に分布するn個のスペクトルMA1,MA2のそれぞれを備える。第1光周波数コムスペクトルLX1において、周波数軸で周波数の位置が隣り合うスペクトルMA1,MA1の周波数の間隔は、第1隣接周波数間隔fr1である。第1光周波数コムスペクトルLX1における複数の第1隣接周波数間隔fr1は、互いに一致している。これに対し、第2光周波数コムスペクトルLX2において、周波数軸で周波数の位置が隣り合うスペクトルMA2,MA2の周波数の間隔は、第2隣接周波数間隔fr2である。第2光周波数コムスペクトルLX2における複数の第2隣接周波数間隔fr2は、互いに一致している。第1隣接周波数間隔fr1と第2隣接周波数間隔fr2とは、周波数間隔Δfrだけ互いに異なる。周波数間隔Δfrは、Δfr=fr1-fr2で表される。

【0038】
図3に示すように、同じ周波数軸で第1光周波数コムスペクトルLX1及び第2光周波数コムスペクトルLX2を並べた際に、周波数軸上で互いに最も近いスペクトルMA1,MA2同士の周波数間隔は、mΔfr+fRFで表される。mΔfr+fRF=νn1-νn2=n1×fr1+f01-(n2×fr2+f02)である。周波数間隔(mΔfr+fRF)は、第1隣接周波数間隔fr1の半分(fr1/2)及び第2隣接周波数間隔fr2の半分(fr2/2)未満である。ここで、νn1は、第1光周波数コムスペクトルLX1のn1番目のスペクトルの周波数を意味する。f01は、第1光周波数コムスペクトルLX1のオフセット周波数を意味する。νn2は、第2光周波数コムスペクトルLX2のn2番目のスペクトルの周波数を意味する。f02は、第2光周波数コムスペクトルLX2のオフセット周波数を意味する。

【0039】
それぞれの離散スペクトル光源22の出射方向には、集光レンズ24が配置されている(図1参照)。集光レンズ24は、離散スペクトル光源22から発せられた離散スペクトル光LA,LBを集光位置P1に集光させる。従って、集光レンズ24の各種パラメーターは、スペクトルMA1,MA2の周波数νn、集光レンズ24の位置、集光位置P1との距離等を勘案して適宜設定され、特定の値に限定されない。

【0040】
図1に示す第1の点光源12A及び第2の点光源12Bのように、点光源12の光学系においてレンズが用いられている場合は、図示しないが、レンズをミラーに替えてもよい。ミラーは、曲率を有していてもよい。レンズに替えてミラーを用いることによって、離散スペクトル光源22から発せられた光周波数コムスペクトルLX0の各スペクトルMAの周波数に対してレンズの色収差の影響が及ぶことを避けることができる。

【0041】
光軸X上において、点光源12の前方にはピンホール素子26及びコリメートレンズ28がこの順で配置されている。

【0042】
ピンホール素子26は、所定の大きさ及び形状の開口を有する。光軸Xに沿う方向において、ピンホール素子26の開口は、集光位置P1に位置している。ピンホール素子26の開口の大きさ及び形状は、スペクトルMA1,MA2の周波数と、試料Sの情報を取得するための所望の分解能等を勘案して適宜設定され、特定の大きさに限定されない。ピンホール素子26は、レーザービームの空間モードを理想形状とし、共焦点性を付与するために設けられている。計測装置10Aで十分な共焦点性が得られれば、ピンホール素子26は省略されてもよい。

【0043】
コリメートレンズ28は、集光位置P1から発散された離散スペクトル光LA,LBをコリメートする。コリメートレンズ28の各種パラメーターは、スペクトルMA1,MA2の周波数及び集光位置P1とコリメートレンズ28の位置との距離等を勘案して設定され、特定の値に限定されない。

【0044】
ピンホール素子26、集光レンズ24及びコリメートレンズ28は、集光位置P1において離散スペクトル光LA,LBを良好に集光できれば、他の構成に置き換えられてもよい。

【0045】
コリメートレンズ28から出射された離散スペクトル光LBは、ミラー29に入射する。ミラー29で反射した離散スペクトル光LBは、ハーフミラー30に入射する。コリメートレンズ28から出射された離散スペクトル光LAと、ミラー29で反射した離散スペクトル光LBとは、ハーフミラー30で合流し、分散素子32の軸線J3に対して角度θ0で入射する。

【0046】
[離散スペクトル光源]
離散スペクトル光源22として、上記説明した光周波数コムスペクトルLX0を発することが可能な公知のコム光源を用いることができる。
以下では、離散スペクトル光源22の構成例について説明する。各構成例において公知の構成要素の詳細な説明は、省略する。離散スペクトル光源22の構成は、下記の各構成例に限定されるものではない。

【0047】
図4は、離散スペクトル光源22の第1の構成例であるコム光源22Aの概略図である。図4に示すように、コム光源22Aは、モード同期ファイバレーザ77と、増幅器78と、を備えている。
モード同期ファイバレーザ77は、励起用半導体レーザ82と、光アイソレータ87Aを備えた光ファイバ80Gと、光カプラ84Aと、光ファイバ80Aと、光ファイバ80B,80Cと、光アイソレータ85Aと、を備えている。光ファイバ80Aは、希土類元素(エルビウム、イッテルビウム等)が添加された光増幅ファイバ86Aを備えている。
増幅器78は、光ファイバ80B,80Cの間に配置された光カプラ84Dを介してモード同期ファイバレーザ77に接続されている。増幅器78は、光ファイバ80Dと、光アイソレータ85Bと、光ファイバ80Eと、励起用半導体レーザ83と、光アイソレータ87Bを備えた光ファイバ80Fと、光カプラ84Cと、光ファイバ80Hと、光アイソレータ85Cと、を備えている。光ファイバ80Dは、光カプラ84Dの出力側に接続されている。光ファイバ80Hは、希土類元素(エルビウム、イッテルビウム等)が添加された光増幅ファイバ86Bを備えている。

【0048】
図4に示すモード同期ファイバレーザ77では、周波数安定度の高いパルスが光アイソレータ85Aから光カプラ84Aに向かって発振される。発振されたパルスの一部は、光カプラ84Dから光ファイバ80Dに取り出され、光ファイバ80D内を進み、増幅器78で増幅される。一方、発振されたパルスの残部は、光ファイバ80C内を進み、モード同期ファイバレーザ77の内部をループする。このような動作原理によって、光アイソレータ85Cから、高出力な光周波数コムの光周波数コムスペクトルLX0が出射される。

【0049】
図5は、離散スペクトル光源22の第2の構成例であるコム光源22Bの概略図である。図5に示すように、コム光源22Bは、光変調器90と、マイクロ波発振器93と、を備えている。光変調器90は、所定の距離だけ離間して配置された鏡92A,92Bと、2枚の鏡92A,92Bの間に配置された電気光学結晶94から構成されている。電気光学結晶94には、例えばニオブ酸リチウム(LiNbO)が用いられている。

【0050】
図5に示す構成では、光変調器90に入射した単一スペクトル光は、マイクロ波発振器93によって外部位相変調される。電気光学結晶94には、2枚の鏡92A,92Bからなるファブリ・ペロー共振器内に配置されていることで深い変調がかかる。電気光学結晶94に変調がかかることによって、約1000本以上のスペクトルMAが発生する。スペクトルMAの隣接周波数間隔frは、マイクロ波発振器93の変調周波数に一致する。光変調器90はパッシブな構成要素で構成されているので、周波数軸上で非常に安定したスペクトルMAを2以上含む光周波数コムスペクトルLX0が発生する。スペクトル・エンベロープNAの中心周波数は、不図示の入力光源から発せられる光の中心周波数に基づいて決定される。

【0051】
図6は、離散スペクトル光源22の第3の構成例であるコム光源22Cの概略図である。図6に示すように、コム光源22Cは、導波路型のマッハツェンダ変調器(MZM)型超平坦光コム発生器(MZ-FCG)95を備えている。MZ-FCG95には、入力導波路96Aと、2つの分岐導波路96B,96Cと、出力導波路96Dと、が形成されている。分岐導波路96Bには、高周波(RF)信号を入力可能とする導波路が結合されている。分岐導波路96Cには、位相変調信号を入力可能とする導波路が結合されている。

【0052】
図6に示す構成では、RF信号が所定の条件で2つの分岐導波路96B,96Cに入力されると、単一スペクトルから分岐導波路96B,96Cのそれぞれで2つの光周波数コムスペクトルが発生する。2つの分岐導波路96B,96Cの結合位置において、2つの光周波数コムスペクトルの光強度のアンバランスは、互いに補われる。従って、スペクトル・エンベロープNAの平坦性に優れた光周波数コムスペクトルLX0が発生し、出力導波路96Dから取り出される。

【0053】
図7は、離散スペクトル光源22の第4の構成例であるコム光源22Dの概略図である。コム光源22Dは、コム光源22CのMZ-FCG95を備えた広帯域コム且つ超短パルス光源である。図7に示すように、コム光源22Dは、励起用半導体レーザ98と、偏波コントローラ(PC)99と、MZM100と、シングルモードファイバ(SMF)108と、エルビウム添加ファイバ増幅器109と、分散フラット・分散減少ファイバ(DF-DDF)110と、を備えている。
図7に示す構成では、MZ-FCG95によって発生した光コム信号は、標準的なSMF108に入力された後にDF-DDFに入力することで、約20THzに及ぶ光周波数コムスペクトルLX0が発生する。

【0054】
[分散部]
分散部14は、光軸Xに沿う方向においてコリメートレンズ28と集光部16との間に配置される。分散部14は、軸線J3に対して角度θ0で入射した離散スペクトル光LA,LBをスペクトルMA1,MA2ごとに互いに異なる方向に分散させる。図1に示す分散部14は、分散素子32を備えている。図1では、分散素子32として、回折格子を用いた場合を示している。

【0055】
分散素子32は、分散面32aに直交する軸線J3を光軸Xに対して角度θ0だけ傾斜させた姿勢で配置されている。分散素子32は、角度θ0で入射した光を、それぞれn個のスペクトルMA1,MA2の周波数に応じた角度θ1,θ2,…,θnで1次元的、2次元的又は3次元的に波長分散させる。このような機能を有する分散素子32としては、例えば回折格子、プリズム、Virtual
Imaged Phased Array(VIPA:登録商標)、計算機ホログラム(Computer Generated Hologram:CGH)等が挙げられる。分散素子32として回折格子やプリズムを用いる場合は、図1に示すように、波長分散された分散ビームが1次元的に、即ち、ライン状に配置される。

【0056】
回折格子のピッチは、スペクトルMA1,MA2が入射する角度θ0、スペクトルMA1,MA2の周波数及び試料Sの情報を取得するための所望の分解能等を勘案して、公知のグレーティング方程式に基づいて設定され、特定のピッチに限定されない。分散素子32としてVIPAと回折格子とを組み合わせて用いる場合は、波長分散された分散ビームが2次元的に、即ち、平面状に配置される。分散素子32としてCGHを用いる場合は、CGHにレンズ特性を持たせることでスペクトルごとに集光位置の深さを変えることができる。

【0057】
図8は、分散素子32としてVIPAと回折格子とを組み合わせて用いた場合の分散部14の第1の構成例を示す模式図である。図8に示す分散部14Aは、分散素子32として、シリンドリカルレンズ48と、VIPA50と、球面レンズ52と、回折格子54と、を備える。VIPA50は、薄いガラス板50bで構成されている。ガラス板50bの一方の表面には、半透過膜(図示略)が形成されている。他方の表面に、反射膜50rが形成されている。VIPA50は、エタロンによる鋭い波長分散特性を有している。VIPA50を可動させると、波長分散角度が変化する。

【0058】
図8に示す構成では、先ず、シリンドリカルレンズ48によって一方向(図8に示す矢印X方向)に集光された光は、VIPA50によってさらに矢印Y方向に分散される。分散された光の分散角度は、光軸に対して角度αの範囲内となる。角度αは、離散スペクトル光LBの周波数、VIPA50の厚さ、ならびに、離散スペクトル光LBのVIPA50への入射角度によって決まる。

【0059】
VIPA50で分散された光は、球面レンズ52によってそれらの光ごとに光軸に対して平行な方向に偏向され、回折格子54に入射する。回折格子54の格子の延在方向は矢印Y方向に平行な方向であるため、回折格子54から反射した光は、反射と同時に前記一方向に直交する方向(図8に示す矢印X方向)に回折し、周波数ごとに分散される。従って、スペクトルMA1,MA2は、矢印D2方向及び矢印D3方向と矢印D1,D2,D3方向に直交する方向に、2次元展開される。

【0060】
図8に示すように、2次元に展開されたスペクトルMA1,MA2が矢印D1,D2,D3方向に直交する方向に散在する帯域d1、及び矢印D2,D3方向におけるスペクトルMA1,MA2のピッチd2は、VIPA50のFree Spectrum Range(FSR)及び回折格子54の格子ピッチに依存する。矢印D1,D2,D3方向に直交する方向のピッチd3は、VIPA50に入射する離散スペクトル光LBのスペクトルの周波数間隔に依存する。第1実施形態では、離散スペクトル光LBのスペクトルの周波数間隔は、第1隣接周波数間隔fr1及び第2隣接周波数間隔fr2の何れかである。

【0061】
[集光部]
図1に示すように、集光部16は、光軸Xに沿う方向において分散部14と試料Sとの間に配置されている。集光部16は、分散部14によって波長分散されたスペクトルMA1,MA2を試料Sの互いに異なる位置p1,p2,…,pnにそれぞれ集光させる。

【0062】
集光部16は、リレーレンズ34,36と、対物レンズ38と、を備えている。リレーレンズ34,36は、分散素子32のビーム出射状態を、対物レンズの入射瞳(図1に示す点P7)に転送するために用いられている。リレーレンズ34は、複数のスペクトルMA1,MA2を光軸Xに直交する方向(例えば、図1に示す矢印D2方向又は矢印D3方向)のそれぞれ異なる位置に集光させる。リレーレンズ36は、集光後に発散した複数のスペクトルMA1,MA2をコリメートすると共に、共通して対物レンズの入射瞳である点P7を通過させ、対物レンズ38に入射させる。対物レンズ38は、点P7のビーム入射角度に依存して異なる位置に焦点を形成する。入射角度は、スペクトルMA1,MA2ごとに異なる。スペクトルMA1,MA2ごとに、試料Sの矢印D2又はD3方向に異なる位置に集光する。

【0063】
なお、集光部16の構成は、分散部14によって分散されたスペクトルMA1,MA2を試料Sの互いに異なる位置p1,p2,…,pnにそれぞれ集光させて集光点領域(集光点)Cを形成できれば、上記構成に限定されない。

【0064】
図9は、集光部16によって試料Sの表面に2次元的に展開された複数の集光点領域Cを模式的に示した図である。各集光点領域Cは、点状に存在する。図9は、図8に示すVIPA50と回折格子54とを組み合わせた分散部14Aを用いた場合の集光点領域Cの展開像を示す。集光点領域Cは2次元的に存在する。集光点領域Cは、図1における試料Sにおいて光が集光する位置p1,p2,…,pnのそれぞれに対応する。

【0065】
図9の右側は、集光点領域Cのそれぞれを拡大した図である。図3に示すように、第1の点光源12Aから照射される第1光周波数コムスペクトルLX1と、第2の点光源12Bから照射される第2光周波数コムスペクトルLX2とは、隣接周波数間隔が異なる。そのため、図9の右側に示すように、第1の点光源12Aからの離散スペクトル光LAと、第2の点光源12Bからの離散スペクトル光LBとの集光位置は、僅かに異なる。

【0066】
図3に示すように、第1の点光源12Aからの離散スペクトル光LAと、第2の点光源12Bからの離散スペクトル光LBとを同じ周波数軸で並べると、周波数軸上で互いに最も近いスペクトルMA1,MA2の周波数間隔(mΔfr+fRF)は、νn1-νn2=(n1×fr1+f01)-(n2×fr2+f02)で表され、第1隣接周波数間隔fr1の半分(fr1/2)及び第2隣接周波数間隔の半分(fr2/2)未満である。そのため、図9に示すように、集光点領域Cのそれぞれを拡大すると、第1の点光源12Aが発する離散スペクトル光LAの集光点領域C1と、第2の点光源12Bが発する離散スペクトル光LBの集光点領域C2と、が一部で重なった描像になっている。言い換えると、それぞれの集光点領域Cにおいて、集光点領域C1と集光点領域C2とは、重畳領域Inで重なりつつ、互いにずれている。

【0067】
集光部16は、分散部14によって分散された点光源12ごとのスペクトルMA1,MA2を試料Sの複数の異なる集光点領域C1,C2にそれぞれ集光させる。各集光点領域Cでは、第1の点光源12Aに基づく複数の集光点領域C1と第2の点光源12Bに基づく複数の集光点領域C2とがそれぞれ重畳領域Inで重なる。

【0068】
2つの集光点領域C1,C2の重畳領域Inでは、離散スペクトル光LAと離散スペクトル光LBが干渉する。その結果、重畳領域Inにおける光電場は、離散スペクトル光LAのスペクトルMA1と離散スペクトル光LBのスペクトルMA2との周波数差に応じたビート周波数により変調される。2つのスペクトルMA1,MA2のビート周波数に相当する変調周波数を持つ干渉光ビートによって、蛍光ビートが励起されて発生する。蛍光ビートの周波数は、干渉光のビート周波数と同じになる。つまり、2つの集光点領域C1,C2の重畳領域Inからは、2つのスペクトルMA1,MA2のビート周波数の蛍光ビートスペクトルが生じる。一方、重畳領域In以外の集光点領域C1及び集光点領域C2では、第1隣接周波数間隔fr1及び第2隣接周波数間隔fr2の周波数で変調された蛍光スペクトルが生じる。

【0069】
図10は、第1光周波数コムスペクトルLX1と第2光周波数コムスペクトルLX2との干渉RFスペクトルの発生過程を示す図である。上述のように、第1光周波数コムスペクトルLX1は、周波数軸で周波数の位置が隣り合うスペクトルMA1,MA1の周波数の間隔が第1隣接周波数間隔fr1である。周波数軸における複数の第1隣接周波数間隔fr1は、互いに一致している。これに対し、第2光周波数コムスペクトルLX2は、周波数軸で周波数の位置が隣り合うスペクトルMA2,MA2の周波数の間隔が第2隣接周波数間隔fr2である。周波数軸における複数の第2隣接周波数間隔fr2も互いに一致している。第1隣接周波数間隔fr1と第2隣接周波数間隔fr2とは、互いに異なる。

【0070】
そのため、これらの干渉光において、電磁波領域の周波数軸で周波数の位置が隣り合うスペクトルMA,MBの周波数間隔は、mΔfr+fRFとなる。周波数間隔(mΔfr+fRF)は、νn1-νn2=(n1×fr1+f01)-(n2×fr2+f02)で表される。この干渉光のRFスペクトルは、第1光周波数コムスペクトルLX1及び第2光周波数コムスペクトルLX2に対してダウンスケーリングされている。このような干渉光のRFスペクトルを持つ励起光によって励起され発生した蛍光からも、周波数間隔がΔfrのビート周波数を有する蛍光ビート群スペクトルFGが得られる(図11)。図11に示すように、蛍光ビート群スペクトルFGの周波数は、集光点領域(集光点)C1,C2のうち非重畳領域で生じる蛍光F1,F2の周波数と比べてダウンスケーリングされている。蛍光ビート群スペクトルFGは、試料Sの各重畳領域Inの情報を有する。各重畳領域Inの情報は、蛍光ビート群スペクトルFGから2次元像を画像化した際の測定点に対応する。

【0071】
集光点領域C1と集光点領域C2の重畳領域Inから発生した蛍光ビート群スペクトルは、fr1/2及びfr2/2より低周波数帯に分布している。一方、集光点領域C1における集光点領域C2との非重畳領域からの蛍光は、第1隣接周波数間隔fr1で分布している。集光点領域C2における集光点領域C1との非重畳領域からの蛍光は、第1隣接周波数間隔fr2で分布している。従って、発生する蛍光の波長が重畳領域Inと非重畳領域で同一であっても、RFスペクトルの違いを利用することにより、重畳領域Inのみの蛍光を抽出できる。蛍光ビート群スペクトルを構成する周波数多重化信号のそれぞれは、試料S上の2次元内の複数の測定点のそれぞれに一対一対応しているので、蛍光ビート群スペクトルから画像を再構成できる。

【0072】
蛍光ビート群スペクトルを得るためには、第1の点光源12Aに基づく複数の集光点領域C1と第2の点光源12Bに基づく複数の集光点領域C2とがそれぞれ少なくとも一部で重なることが重要である。即ち、重畳領域Inが形成されることが重要である。重畳領域Inの大きさは、対物レンズ38の焦点距離(fd)、対物レンズ38の開口数(NA)、集光光学系(集光部16)の各倍率(β)、第1光周波数コムスペクトルLX1と第2光周波数コムスペクトルLX2との隣接周波数間隔差(mΔfr+fRF)、分散素子32の分散特性(K[rad/Hz])等により制御できる。隣接周波数間隔差(mΔfr+fRF)は、νn1-νn2=(n1×fr1+f01)-(n2×fr2+f02)=δ[Hz]である。

【0073】
集光点領域C1,C2の中心間距離d[m]とする。以下の関係式(2)が成り立つ場合に、2つの集光点領域C1,C2は重畳領域Inを形成する。
d≒fd・β・K・δ・Nm<1.22λ/NA ・・・(2)
(2)式において、λ≒c/(f01+Nm・fr1)である。f01は、第1光周波数コムスペクトルLX1のオフセット周波数を表す。
隣り合う集光点領域C1同士の間隔は、集光点領域C同士が複数の箇所で重なることを避けるために、各集光点領域C1のスポットサイズの2倍より大きいことが好ましい。隣り合う集光点領域C2同士の間隔は、集光点領域C同士が複数の箇所で重なることを避けるために、各集光点領域C2のスポットサイズの2倍より大きいことが好ましい。

【0074】
試料Sは、照射されたスペクトル(励起光)MA1,MA2を吸収し、蛍光発光する物体であればよく、特定の物体等に限定されない。例えば、試料Sとして、生体細胞の自家蛍光、蛍光タンパク質、蛍光ビーズ等を用いることができる。

【0075】
試料Sの各測定点で発生し、後方伝搬した蛍光は、再び集光部16に入射する。集光部16の対物レンズ38によって、これらの光はコリメートされると共に、共通して点P7を通過する。その後、リレーレンズ36に入射し、リレーレンズ36によって光軸Xに直交する方向(即ち、図1に示す矢印D2又はD3方向)にそれぞれ異なる位置で集光する。集光後に発散した複数の蛍光は、リレーレンズ34によって、コリメートされると共に、分離部19に導かれる。試料Sの各点からの反射散乱光も、蛍光と同様に、集光部16に入射して概ね収束し、分離部19に導かれる。

【0076】
[分離部]
分離部19は、光軸Xに沿う方向において集光部16と空間フィルタリング光学系18との間に配置される。分離部19は、蛍光のみを反射する。そのため、分離部19は、分散部14から試料Sへ向かう光を通し、試料Sで発光した蛍光を反射させて空間フィルタリング光学系18に導く。分離部19は、試料Sからの反射散乱光と、試料Sで発光した蛍光とを分離する。

【0077】
分離部19には、例えば、ダイクロイックミラーを用いることができる。分離部19は、ハーフミラーと蛍光フィルタとを組み合わせたものでもよい。蛍光フィルタは、試料Sからの反射散乱光を遮断する。試料Sの反射散乱光と試料Sで発光した蛍光とをハーフミラーにより所定の方向に反射させた後に、蛍光フィルタを通過させることによって、試料Sで発光した蛍光のみを通過させることができる。

【0078】
[空間フィルタリング光学系]
空間フィルタリング光学系18は、光軸Xに沿う方向において分離部19と検出部20との間に配置されている。空間フィルタリング光学系18は、スペクトルMA1,MA2の試料S上の集光点領域C1,C2が重なる重畳領域Inのそれぞれと共役な複数の位置P3に集光させる。計測装置10Aでは、光軸S上において、第1の点光源12Aの集光位置P1と、第2の点光源12Bの集光位置P1と、リレーレンズ34,36の間で離散スペクトル光LA,LBが集光する位置と、試料Sで集光する位置p1,p2,…,pnと、重畳領域Inと共役な複数の位置P3~P3と、の5種類の位置は、互いに共役である。

【0079】
図1に示す空間フィルタリング光学系18は、集光レンズ40と、ピンホールアレイ素子42と、コリメートレンズ44と、を備えている。集光レンズ40、ピンホールアレイ素子42、コリメートレンズ44は、光軸X方向にこの順で配置されている。

【0080】
集光レンズ40は、試料Sから発せられる蛍光を、試料S上での集光点領域C1,C2が重なる複数の重畳領域Inと共役な複数の位置P3~P3に集光させる。以下、前述の位置P3~P3を、単に重畳領域Inに共役な位置P3と記載する場合がある。

【0081】
ピンホールアレイ素子42は、所定の大きさ、形状、及び間隔の開口部を複数有する。光軸Xに沿う方向において、ピンホールアレイ素子42の開口は、集光部16により集光された集光点領域C1,C2が重なる複数の重畳領域Inと共役な複数の位置P3~P3に位置している。図12は、試料Sにおける重畳領域Inとピンホールアレイ素子42の開口部との位置関係を模式的に示す図である。図12では、試料Sの位置とピンホールアレイ素子42の位置との対応関係を理解しやすくするために、試料Sとピンホールアレイ素子42の間の光学系は省略されている。

【0082】
図12に示すように、ピンホールアレイ素子42は、重畳領域Inで発光した蛍光のみを通過させることができる。ピンホールアレイ素子42の開口部の大きさ、形状、及び間隔は、試料Sから発せられる蛍光スペクトルの周波数、重畳領域Inの形状と間隔、集光レンズ40の集光性能等を勘案して適宜設定される。ピンホールアレイ素子42は、蛍光のうち集光点領域C1,C2が重なる重畳領域Inからの蛍光スペクトルのみを通過させる。

【0083】
ピンホールアレイ素子42は、金属板等からなる基板に複数の開口部を所定の位置とサイズと形状で2次元的に配列した固定ピンホールアレイ素子でもよい。固定ピンホールアレイ素子を用いる場合、固定ピンホールアレイ素子の開口部の位置を3次元的に微調整できる機構を、ピンホールアレイ素子42に接続することが望ましい。ピンホールアレイ素子42の各種パラメーターではなく、離散スペクトル光の各種パラメーター(例えば、第1隣接周波数間隔fr1,第2隣接周波数間隔fr2,オフセット周波数f01,f02)を光源側で調整してもよい。

【0084】
ピンホールアレイ素子42の調整に高いフレキシビリティを持たせるためには、ピンホールアレイ素子42として、空間的・時間的に、振幅、位相、または偏光を変調できる空間光変調器を用いてもよい。空間光変調器は、開口部の形状や位置やサイズを任意に変化することができるので、第1の点光源12A又は第2の点光源12Bから出射される光の条件が変動する場合にも、変動に合わせて開口部の形状や位置やサイズを調節し、試料Sからの所望の情報のみを検出部20に通過させることができる。

【0085】
ピンホールアレイ素子42の調整は、以下のようにして行うことができる。例えば、実際の試料Sの観察を始める前に、蛍光材料を全面塗布したガラス板を試料Sの代わりに配置する。ガラス板から発生する蛍光が空間変調器に投影されることによって形成される多数の点像を検出部20で検出する。検出した点像付近の区画を透明にすることで、ピンホールアレイ素子42に相当する空間フィルタを実現できる。例えば、2つの離散スペクトル光LA,LBにおける2次元焦点分布を予め独立に取得し、その分布の重なり状態から重畳部分を決定してもよい。

【0086】
空間変調器には、SXGA、XGA等の高精細な液晶画像表示素子を用いることができる。蛍光のスポットが投影される画素は、その画素に対応するTFTに生ずるフォトカレントを検出することによって定めることができる。このような検出過程を経れば、環境変化等で光軸が偏位しても良好な空間フィルタ特性を確保できる。

【0087】
コリメートレンズ44は、重畳領域Inと共役な複数の位置P3~P3から発散された蛍光スペクトルを集光する。従って、コリメートレンズ44の各種パラメーターは、蛍光スペクトルの周波数、重畳領域Inと共役な複数の位置P3~P3とコリメートレンズ44の位置との距離等を勘案して適宜設定され、特定の値に限定されない。コリメートレンズ44には、集光レンズを用いてもよい。

【0088】
[検出部]
検出部20は、光軸に沿うX方向において計測装置10Aの最後方に配置されている。検出部20は、少なくとも、試料Sの情報を含む蛍光スペクトルによる変調信号から、試料Sの情報を取得する。第1実施形態では、検出部20は、空間フィルタリング光学系18で空間フィルタリングされ、且つ試料Sの情報を含む蛍光スペクトルによる変調信号から、試料Sの情報を取得する。

【0089】
検出部20としては、公知の検出器を用いることができる。検出部20には、焦点近傍で集光点領域C1,C2が重なる重畳領域Inにおけるビート周波数を持つ蛍光スペクトル(蛍光ビート)が入射する。ビート周波数の蛍光スペクトルは、次に述べる工程を経て得られる。例えば、RFスペクトラムアナライザで蛍光スペクトルを直接計測し、元の光領域の周波数スケールに変換する工程を経てもよい。あるいは、蛍光ビート信号の時間変化をデジタイザで取得し、それをフーリエ変換する工程を経てもよい。フーリエ変換をする工程では、図11に示すように、蛍光ビート群スペクトルFG、即ち、各ピクセルに対応した周波数多重化信号が得られる。検出部20では、検出した蛍光スペクトルが試料Sのどの位置からどの程度の強度で発せられた蛍光であるかということについて、周波数多重化信号から再構成でき、試料Sの蛍光像を観察できる。

【0090】
[計測装置10Aを用いた計測]
次いで、図1に示す計測装置10Aを用いた計測の原理について説明する。
2つの点光源12の離散スペクトル光源22a,22bから発せられた離散スペクトル光LA,LBは、集光位置P1で集光し、ピンホール素子26の開口を通過する。集光位置P1から発散した離散スペクトル光LA,LBは、コリメートレンズ28でコリメートされ、分散部14の分散素子32に入射する。

【0091】
軸J3に対して共通の角度θ0をなし、分散素子32に入射した離散スペクトル光LA,LBの2以上(ここでは、n個とする)のスペクトルMA1,MA2は、スペクトルMA1,MA2ごとに、その周波数に応じた角度θ1,θ2,…,θnで同時に分散する。即ち、スペクトルMA1,MA2ごとに互いに異なる方向に同時に分散する。

【0092】
続いて、スペクトルごとに異なる角度θ1,θ2,…,θnで分散されたそれぞれn個のスペクトルMA1,MA2は、集光部16に入射する。入射したそれぞれn個のスペクトルMA1,MA2は、リレーレンズ34によってスペクトルごとに集光され、リレーレンズ36によって点P7に向けてコリメートされる。点P7を通ったそれぞれn個のスペクトルMA1,MA2は、対物レンズ38によって試料Sの互いに異なる位置p1,p2,…,pnにそれぞれ、同時に集光する。

【0093】
それぞれn個のスペクトルMA1,MA2は、試料Sの互いに異なる位置p1,p2,…,pnの集光点領域Cに同時に集光する。各集光点領域Cでは、スペクトルMA1による蛍光発光と、スペクトルMA2による蛍光発光が生じる。それぞれの集光点領域Cから発生した蛍光は、試料Sの各点における情報を持つ。試料Sには、スペクトルMA1の集光点領域C1とスペクトルMA2の集光点領域C2とが互いに重なった重畳領域Inがn個形成される。n箇所の重畳領域Inでは、スペクトルMA1とスペクトルMA2の干渉光による蛍光ビートが生じる。

【0094】
それぞれのサンプルの集光点領域Cからの蛍光、及び、反射散乱光は、集光部16の対物レンズ38によって、それぞれコリメートされると共に、共通して点P7を通過する。これらの光は、リレーレンズ36に入射し、リレーレンズ36によって光軸Xに直交する方向(即ち、図1に示す矢印D2又はD3方向)にそれぞれ異なる位置で集光する。集光後に発散したこれらの光はリレーレンズ34によって、コリメートされると共に、分離部19に向かって偏向される。

【0095】
互いに異なる位置p1,p2,…,pnからの反射散乱光及び互いに異なる位置p1,p2,…,pnで発生した蛍光は、分離部19に入射する。分離部19は、蛍光とそれ以外の光を分離する。すなわち、分離部19は、分離部19に入射した光のうち蛍光以外の成分を除去する。蛍光以外の成分とは、試料Sで反射した励起光の一部を意味する。なお、分離部19に波長選択性を持たせない場合は、ビームスプリッターと蛍光フィルタを用いてもよい。

【0096】
分離部19により各集光点領域Cの重畳領域Inからの蛍光は、空間フィルタリング光学系18に入射する。空間フィルタリング光学系18に入射した蛍光は、集光レンズ40で各集光点領域Cの重畳領域Inと共役な複数の位置P3~P3に集光する。さらに、蛍光は、複数の開口部を有するピンホールアレイ素子42の開口部を通過する。ピンホールアレイ素子42は、スペクトルMA1の集光点領域C1とスペクトルMA2の集光点領域C2とが互いに重なる重畳領域Inに対応して開口部を有する。そのため、ピンホールアレイ素子42は、重畳領域Inの蛍光の焦点以外の成分をカットする。重畳領域Inの蛍光の焦点以外の成分は、図9の右図における重畳領域Inの焦点外からの成分及び非重畳領域C1,C2の成分であり、例えば深さ方向等の試料の奥から発生する成分等である。

【0097】
図11に示すように、重畳領域Inからの蛍光は、スペクトルMA1と、スペクトルMA2との周波数差に相当するビート周波数群で変調された励起光ビートにより発生し、重畳領域Inごとに異なる変調周波数(ビート周波数)を有する。すなわち、ピンホールアレイ素子42は、試料Sの各点における情報が付加された所定のビート周波数の蛍光スペクトルのみを通過させる。ピンホールアレイ素子42の開口を通過したn個の蛍光スペクトルは、コリメートレンズ44でコリメートされ、検出部20に入射する。

【0098】
検出部20では、試料Sのイメージ画素情報を含み、異なるビート周波数で変調された蛍光ビート群信号から、試料Sのイメージ画素に対応したn個のモード分解スペクトルを取得できる。ビート周波数で変調された蛍光は、例えばRFスペクトラムアナライザで直接計測され、元の光領域の周波数スケールに変換される。ビート周波数で変調された蛍光は、検出信号の時間変化をデジタイザで取得することで得られてもよい。取得した蛍光をフーリエ変換することにより、図11に示すように、ビート周波数で変調された蛍光に基づいたモード分解スペクトル(蛍光ビート群スペクトルFG)が得られる。n個のモード分解スペクトルの各スペクトルは、試料Sの集光点領域Cの各重畳領域Inに対応し、蛍光ビート群スペクトルFGから2次元像を画像化した際の各測定点に対応する。

【0099】
[計測装置10Aの作用効果]
次いで、第1実施形態の計測装置10Aの作用効果について説明する。
図9に示すように、第1実施形態の計測装置10Aは、離散スペクトル光LA,LBを試料Sの互いに異なる集光点Cに、1回の照射(即ち、1ショット)で同時に集光できる。これにより、レーザービームを走査せずに、離散スペクトル光LA,LBに含まれるn個のスペクトルMA1,MA2を2以上同時に多次元変換して、多次元平面にマッピングできる。

【0100】
離散スペクトル光LA,LBは互いに独立しているため、連続スペクトル光を用いた場合とは異なり、それぞれn個のスペクトルMA1,MA2の集光位置p1,p2,…,pnで、試料Sの情報を同時且つ並列に、蛍光発光として取得できる。従って、スペクトルMA1,MA2の集光点領域Cを試料Sの計測対象の範囲に合わせれば、その計測範囲の試料Sの情報を非機械的に高速取得できる。

【0101】
第1実施形態の計測装置10Aによれば、分離部19及びピンホールアレイ素子42により、試料Sで反射した励起光の一部及び蛍光発光の各成分をカットし、検出部20において計測対象である重畳領域Inの焦点近傍からの光ビートスペクトルを有する蛍光のみを検出できる。光ビートスペクトルは、2つの離散スペクトル光LA,LBが干渉した干渉光に起因して生じる。光ビートスペクトルは、光の周波数帯(数百テラヘルツ帯)からRF帯域(kHzからMHz帯)にダウンスケーリングされている。即ち、第1実施形態の計測装置10Aによれば、汎用のRF計測機器を用いて、高精度且つ高速な計測を行うことができる。

【0102】
光ビートスペクトルは、スペクトルMA1の集光点領域C1とスペクトルMA2の集光点C2とが互いに重なる重畳領域Inのみの情報を含んでいる。集光点領域C1のビームスポットのプロファイルを適宜調整及び成形することによって、重畳領域Inが占める領域をそれぞれの集光点領域C1,C2が占める領域より狭くし、より微細な領域の情報を光ビートスペクトルから得ることができる。

【0103】
第1実施形態の計測装置10Aの第1の点光源12Aが発する離散スペクトル光LAのn個のスペクトルMA1の第1隣接周波数間隔fr1、及び、第2の点光源12Bが発する離散スペクトル光LBのn個のスペクトルMA2の第2隣接周波数間隔fr2は、それぞれ周波数上で一定である。そのため、それぞれn個のスペクトルMA1,MA2は試料Sの互いに異なる位置で、一定の間隔をあけて集光する。従って、試料Sの計測範囲内の情報を等間隔に取得できる。

【0104】
第1の点光源12Aから発せられる第1離散スペクトル光LX1と第2の点光源12Bから発せられる第2離散スペクトル光LX2とを、同じ周波数軸で並べると、周波数軸上で互いに最も近いスペクトルMA1,MA2同士の周波数間隔(mΔfr+fRF)は、νn1-νn2=(n1×fr1+f01)-(n2×fr2+f02))で表される。周波数間隔(mΔfr+fRF)は、第1隣接周波数間隔fr1の半分(fr1/2)及び第2隣接周波数間隔の半分(fr2/2)未満である。そのため、集光点領域C1と集光点領域C2とが互いに重なる重畳領域Inでは、第1離散スペクトル光LX1と第2離散スペクトル光LX2とが干渉する。重畳領域Inの干渉光は、周波数軸上で最も近いスペクトルMA1,MA2同士の周波数間隔(mΔfr+fRF)に相当する周波数で変調されている。このことによって、個々の重畳領域Inごとに異なる変調周波数の蛍光ビートを得ることができる。すなわち、第1実施形態にかかる計測装置10Aでは、周波数間隔がダウンスケーリングされた蛍光ビート群信号を用いて、直接的に蛍光イメージを再構成できる。

【0105】
上述の作用効果を奏する計測装置10Aでは、従来の共焦点蛍光顕微鏡に比べて高速性と高分解能性が大幅に向上し、離散スペクトル光LA,LBの1ショットで高いコントラストの鮮明な情報を取得できる。そのため、例えば生きたままの細胞内部の分子の動きを直接観察することが可能になる。その結果、生命機能解析等のバイオ分野に関する新たな知見を取得できると考えられる。

【0106】
(第2実施形態)
図13は、第2実施形態の計測装置10Bの模式図である。第2実施形態の計測装置10Bは、試料Sから前方伝搬した蛍光を測定する点で、後方伝搬した蛍光を測定する第1実施形態の計測装置10Aと異なる。図13に示す第2実施形態の計測装置10Bの構成要素において、図1に示す第1実施形態の計測装置10Aの構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。

【0107】
[計測装置10Bの構成]
図13に示すように、計測装置10Bは、2つの点光源12と、分散部14と、第1集光部15と、第2集光部17と、反射部21と、空間フィルタリング光学系18と、検出部20と、を備えている。

【0108】
計測装置10Bでは、光軸Xに沿う方向において試料Sと反射部21との間には、第2集光部17が設けられている。第2集光部17は、試料Sを基準に第1集光部15と対称な関係にあり、試料Sを基準として第1集光部15を折り返した構成である。

【0109】
第2集光部17は、対物レンズ39と、リレーレンズ35、37とを備える。リレーレンズ35,37は、対物レンズの入射瞳(点P5)のビーム出射状態を、反射部21に転送する。対物レンズ39と、リレーレンズ35、37はそれぞれ、対物レンズ38と、リレーレンズ34,36に対応している。対物レンズ39は、互いに異なる位置p1,p2,…,pnから前方伝搬したそれぞれのスペクトルをコリメートすると共に、共通して点P5を通過させ、リレーレンズ37に入射させる。以下、位置p1,p2,…,pnから前方伝搬したそれぞれのスペクトルを、透過スペクトルという。リレーレンズ37は、点P5を通過した複数の透過スペクトルを光軸Xに直交する方向(即ち、図13に示す矢印D2又はD3方向)にそれぞれ異なる位置で集光させる。リレーレンズ35は、集光後に発散した複数の透過スペクトルをコリメートする。第2集光部17は、上記構成に限定されない。

【0110】
[計測装置10Bを用いた計測]
次いで、図13に示す計測装置10Bを用いた計測の原理について説明する。なお、2つの点光源12から発せられた離散スペクトル光LA,LBが試料Sに照射されるまでの原理は計測装置10Aを用いた計測の原理と同様であるため、離散スペクトル光LA,LBが試料Sに照射されるまでの原理の説明を省略する。

【0111】
試料Sの互いに異なる位置p1,p2,…,pnに同時に集光したそれぞれn個のスペクトルMA1,MA2には、位置p1,p2,…,pnの試料Sに関する情報が付加される。このように、離散スペクトル光LA,LBの1回の照射で、試料Sにn個の集光点領域Cが同時に形成される。集光点領域Cのそれぞれには重畳領域Inが形成されている。重畳領域Inでは、離散スペクトル光LA,LBが干渉し、干渉光と同じ周波数で変調された蛍光が発生する。それぞれの重畳領域Inで発生する蛍光ビートには、試料Sの情報が、互いに独立に付加されている。

【0112】
離散スペクトル光LA,LBおよび試料Sで発生した蛍光は、互いに異なる位置p1,p2,…,pnから前方伝搬し、第2集光部17に入射する。第2集光部17の対物レンズ39によって離散スペクトル光LA,LB及びn箇所からの蛍光はそれぞれ、収差補正又はコリメートされると共に、共通して点P5を通過する。点P5を通過した蛍光は、リレーレンズ37に入射し、リレーレンズ37によって光軸Xに直交する方向(即ち、図1に示す矢印D2又はD3方向)にそれぞれ異なる位置で集光する。集光後に発散した複数の透過スペクトル及びn箇所からの蛍光は、リレーレンズ35によって、コリメートされると共に、反射部21に向かって偏向する。

【0113】
互いに異なる位置p1,p2,…,pnからの蛍光は、反射部21によって所望の角度に反射される。

【0114】
試料Sの情報を含むn個の蛍光は、空間フィルタリング光学系18に入射する。空間フィルタリング光学系18に入射した後の原理は、計測装置10Aを用いた計測の原理と同様である。なお、リレーレンズ35と反射部21を設けずに、リレーレンズ37を通過した蛍光を空間フィルタリング光学系18に直接、入射させてもよい。

【0115】
ピンホールアレイ素子42により所定の蛍光は、重畳領域Inの焦点で生じたn個の光ビートスペクトルの蛍光であり、検出部20に入射する。そのため、検出部20では、試料Sの情報を含む光ビートスペクトルから、試料Sの蛍光イメージ画素に対応したn個のモード分解スペクトルが取得される。

【0116】
[計測装置10Bの作用効果]
第2実施形態の計測装置10Bによれば、第1実施形態の計測装置10Aと同様の作用効果が得られる。

【0117】
(第3実施形態)
図14は、第3実施形態の計測装置10Cの模式図である。第3実施形態の計測装置10Cは、第2の点光源12Bが発する離散スペクトル光LBのオフセット周波数f02又は隣接周波数間隔fr2を制御する制御部60を有する点で第1実施形態の計測装置10Aとは異なる。なお、図14に示す第3実施形態の計測装置10Cの構成要素において、図1に示す第1実施形態の計測装置10Aの構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。

【0118】
[計測装置10Cの構成]
図14に示すように、第3実施形態の計測装置10Cは、制御部60を有する。制御部60は、第2の点光源12Bが発する離散スペクトル光LBのオフセット周波数f02又は隣接周波数間隔fr2を制御する。図14に示す構成では制御部60が第2の点光源12Bに設けられているが、制御部60は、第1の点光源12Aに設けられてもよく、両方の点光源12に設けられてもよい。

【0119】
制御部60は、離散スペクトル光LBのオフセット周波数f02又は隣接周波数間隔fr2を制御する。例えば、制御部60は、離散スペクトル光LBのパルスΦ1,Φ2,…,Φmの間隔を制御する(図2参照)。制御部60により離散スペクトル光LBのオフセット周波数f02又は隣接周波数間隔fr2を変えると、図9における重畳領域Inの重なり具合や面積が変化する。制御部60により2つの点光源12のそれぞれのオフセット周波数f02又は隣接周波数間隔frを変化させると、試料Sに集光する集光点領域Cの位置が変化する。

【0120】
第3実施形態の計測装置10Cにおける空間フィルタリング光学系18は、透過する光の位置を変更可能とする空間光変調器を備えることが好ましい。集光点領域Cの位置が変化すると、固定型のピンホールアレイ素子42では所望の情報が空間フィルタリングによってカットされる可能性がある。透過する光の位置を任意に変更可能な空間光変調器であれば、試料Sの各点における情報が付加された所定のビート周波数の光ビートスペクトルを検出部20に向けて通過させることができる。

【0121】
[計測装置10Cの作用効果]
制御部60により離散スペクトル光LBのオフセット周波数f02又は隣接周波数間隔fr2を変え、図9に例示した重畳領域Inの重なり具合を変えると、試料Sから光ビートスペクトルが得られる範囲が変化する。計測装置10Cは、光ビートスペクトルから得られる試料Sの情報を読み取る。そのため、光ビートスペクトルが得られる範囲は、計測装置10Cの解像度に大きな影響を及ぼす。言い換えると、重畳領域Inの重なり具合を変えることで、計測装置10Cの解像度を変えることができる。

【0122】
光ビートスペクトルは、2つの点光源12の集光点領域C1,C2の重畳部Inから得られる。言い換えると、試料Sにおいて重畳領域In以外の部分の情報は計測できていない。制御部60により試料Sに集光する集光点領域Cの位置を変えた場合、必要に応じて集光点領域Cの位置をずらし、未計測の部分の情報を得ることができる。制御部60により試料Sに集光される集光点領域Cの位置を制御し、集光点領域Cの位置をずらす前の情報と、集光点領域Cを集光点領域C同士の間隔の1/4程度ずらした位置で取得した情報との2組の情報から2つの画像を得ることができる。2つの画像を得たのち、これらの画像を一般的な画像処理アルゴリズムを用いて演算すると、解像度の増加した画像を得ることができる。

【0123】
以上説明した第1実施形態から第3実施形態までの計測装置において、蛍光ビートの位相情報を取得してもよい。蛍光ビートの位相情報を取得すると、蛍光強度以外に、蛍光寿命の情報を抽出することができる。

【0124】
図15に示すように、干渉光ビートと蛍光ビートは、同じRFスペクトルを有している。図15では、周波数軸をFreq.軸として示している。周波数fのスペクトル成分の時間波形は、干渉光ビートと蛍光ビートの双方とも、周期1/fである。しかしながら、蛍光ビートは、蛍光発生過程に依存して、位相θだけずれている。位相θの遅れと蛍光寿命τの関係は、以下の(3)式で表される。
τ=tanθ/(2πf)・・・(3)

【0125】
干渉光ビートと蛍光ビートとを同時に計測し、干渉光ビートと蛍光ビートの位相差分布から蛍光寿命イメージを取得できる。蛍光寿命イメージを用いると、細胞内の蛍光分子の周囲の環境変化、蛍光分子の反応速度の変化等を高感度検出できる。蛍光やりん光の酸素イメージングやイオンイメージング、 蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によるたんぱく質間の相互作用の イメージング、蛍光相関分光測定(FCS)が可能になる。

【0126】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は特定の実施形態に限定されない。すなわち、上記の実施形態は、多数存在する本発明の実施形態の一部を記載したに過ぎない。本発明の目的や課題、あるいは効果を達成できる範囲内であれば、上記の実施形態に記載されていなくても、本発明の計測装置及び照射装置において種々の変形・変更が可能であることは言うまでもない。特に、上記の各実施形態に記載されている複数の構成あるいは機能は、組み合せられてもよく、変更(追加、削除)可能である。

【0127】
本発明の課題や目的は、本明細書の「発明が解決しようとしている課題」に総括的に記載しているが、その記載内容に限定されない。実施形態に記載されている課題や目的は、それぞれの発明について有効であることは言うまでもない。また、実施形態に記載されている効果は、課題あるいは目的の裏返しである。そのため、上記の実施形態に課題あるいは目的が直接記載されていなくてもその存在を理解すべきである。

【0128】
また、上記の実施形態では、第1実施形態から第3実施形態までの計測装置において、課題あるいは目的を達成するための発明が記載されているが、その課題あるいは目的の達成度は必ずしも100%である必要はない。本発明の課題あるいは目的は発明の構成の組合せに応じて変わるものであり、例え10%の達成度でも、目的を達成していないとしてその発明が否定されるべきではないことは言うまでもない。

【0129】
例えば、実施形態に、ある構成として「板バネ」のみ記載されている場合であっても、「バネ」としては、例えば「つる巻きバネ」が技術常識の範囲内で想定できる。そのため、「板バネ」以外の「バネ」が本発明の目的を達成することが可能であれば、本発明の構成として「バネ」が記載されているとみなせるものである。

【0130】
上記の各実施形態では、第1の点光源12Aと第2の点光源12Bは、個別に集光レンズ24を備えている。第1の点光源12A及び第2の点光源12Bのそれぞれの集光レンズ24に対して、光軸X上の前側に、個別に、ピンホール素子26及びコリメートレンズ28がこの順で配置されている。しかしながら、第1の点光源12A及び第2の点光源12Bの集光レンズ24、及び第1の点光源12A及び第2の点光源12Bに対応するピンホール素子26、コリメートレンズ28を共通にしてもよい。

【0131】
例えば、図16は、第1実施形態の計測装置10Aにおいて離散スペクトル光源22a,22bの光軸X上で集光レンズ24、ピンホール素子26、コリメートレンズ28を共通化した第3の点光源(第1の点光源,第2の点光源)12Cを備える計測装置10A´の模式図である。計測装置10A´では、離散スペクトル光源22bから出射された離散スペクトル光LBの光軸X上において離散スペクトル光源22bと集光レンズ24との間に、ハーフミラー23が配置されている。離散スペクトル光源22aは、ハーフミラー23の反射面を基準として離散スペクトル光源22bを折り返した位置に配置されている。離散スペクトル光源22aから出射された離散スペクトル光LAと、離散スペクトル光源22bから出射された離散スペクトル光LBとは、ハーフミラー23で合流し、共通の集光レンズ24、ピンホール素子26、コリメートレンズ28を通過する。

【0132】
計測装置10Aでは、前述のように互いに共役である位置は、5種類である。計測装置10A´では、光軸S上において、1つの集光位置P1と、リレーレンズ34,36の間で離散スペクトル光LA,LBが集光する位置と、試料Sで集光する位置p1,p2,…,pnと、重畳領域Inと共役な複数の位置P3~P3と、の4種類の位置は、互いに共役である。離散スペクトル光源22a,22bの光軸X上で集光レンズ24、ピンホール素子26、コリメートレンズ28を共通にすることによって、計測装置10A´では互いに共役である位置が4種類になる。計測装置10A´では、計測装置10Aで行うような離散スペクトル光源22a,22bの集光点の位置合わせが不要になり、共焦点性が向上すると共に、取り扱いが容易になる。また、計測装置10A´によれば、光出射部11の部品の数を減らし、装置全体の小型化を図ることができる。

【0133】
上記の各実施形態では、光出射部11は、第1の点光源12Aと第2の点光源12Bを備えている。しかしながら、光出射部11は、分散部14に向けて、隣接周波数間隔が互いに異なる離散スペクトル光LA,LBを出射できればよく、必ずしも2つの光源を備えていなくてもよい。例えば、光出射部11は、ループ型の共振器構造やその他の構造を有する光周波数コム源を1台だけ備えていてもよい。ループ型の共振器構造内では、レーザ光が時計回りと反時計回りのそれぞれに伝搬しつつ増幅される。ループ型の共振器構造内では、異なる2つの波長の光がそれぞれ伝搬しつつ増幅されてもよい。ループ型の共振器構造内では、互いに直交した2つの偏光がそれぞれ伝搬しつつ増幅されてもよい。レーザ光の強度が所定の強度より大きくなった時点で、共振器構造から離散スペクトル光LA,LBが出射される。光周波数コム源から出射された離散スペクトル光LA,LBを互いに同じ向きに沿って進行させ、分散部14に入射させることができる。このように光出射部11を1台の光周波数コム源で構成することによって、光出射部11の小型化及び低コスト化を図ることができる。

【0134】
上記の各実施形態では、計測装置は、空間フィルタリング光学系18を備えることによって、試料Sが細胞等のように厚みを有する場合に、光軸Xに沿う方向、即ち試料Sの厚み方向において任意の位置の試料Sに関する情報を高解像度で取得できる。但し、試料Sに試薬が加えられていて光軸Xに沿う方向において試薬が存在する位置のみの情報を得ればよい場合や、蛍光ビートの位相情報を取得する場合では、空間フィルタリング光学系18は省略可能である。

【0135】
上記のように変更可能であることをふまえると、本発明の計測装置は、少なくとも光出射部11、分散部14、集光部16又は第1集光部15、検出部20を備えていればよい。光出射部11は、互いに異なる周波数で分布しているスペクトルを2以上含むスペクトル光を複数出射する。複数のスペクトル光のそれぞれにおいて隣接周波数間隔は、異なる。光出射部11は、複数のスペクトル光を出射可能であればよく、必ずしも光源である必要はない。光出射部11は、別の測定装置から複数のスペクトル光が分岐されて本発明の計測装置に出射される構成において、別の測定装置との分岐部であってもよい。検出部20は、複数の重畳領域Inのそれぞれでの干渉光ビートにより発光し且つ試料Sの情報を含む蛍光ビートの信号を取得する。
【符号の説明】
【0136】
10A,10A´,10B,10C…計測装置
11…光出射部
14…分散部
15…第1集光部
16…集光部
17…第2集光部
19…分離部
18…空間フィルタリング光学系
20…検出部
12…点光源(光源)
32…分散素子
LA,LB…離散スペクトル光
p1,p2,…,pn…試料の互いに異なる位置、試料上の集光位置
P3…共役な位置
S…試料
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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