TOP > 国内特許検索 > 酸化物複合体 > 明細書

明細書 :酸化物複合体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和元年8月15日(2019.8.15)
発明の名称または考案の名称 酸化物複合体
国際特許分類 C01B  37/00        (2006.01)
B01J  37/08        (2006.01)
B01J  37/02        (2006.01)
B01J  29/03        (2006.01)
B01J  37/04        (2006.01)
C07C 209/18        (2006.01)
C07C 211/48        (2006.01)
C07C  31/13        (2006.01)
C07D 209/04        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C01B 37/00
B01J 37/08
B01J 37/02 301Z
B01J 29/03 Z
B01J 37/04 102
C07C 209/18
C07C 211/48
C07C 31/13
C07D 209/04
C07B 61/00 300
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 19
出願番号 特願2018-539797 (P2018-539797)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り (1)2016年8月1日「chemistry Select,2016,Volume 1,Issue 12,p3124-3131」に発表 (2)2016年8月1日 http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/slct.201600507/full
国際出願番号 PCT/JP2017/033378
国際公開番号 WO2018/052103
国際出願日 平成29年9月15日(2017.9.15)
国際公開日 平成30年3月22日(2018.3.22)
優先権出願番号 2016180502
優先日 平成28年9月15日(2016.9.15)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】野村 淳子
【氏名】大須賀 遼太
出願人 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
個別代理人の代理人 【識別番号】110000084、【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4C204
4G073
4G169
4H006
4H039
Fターム 4C204CB03
4C204DB01
4C204EB01
4C204FB01
4C204GB01
4G073BA17
4G073BA20
4G073BA21
4G073BA25
4G073BA26
4G073BA50
4G073BA75
4G073BA86
4G073BB03
4G073BB04
4G073BB05
4G073BB13
4G073BB24
4G073BB66
4G073BD03
4G073BD15
4G073BD18
4G073BD21
4G073CZ53
4G073DZ02
4G073DZ08
4G073FB42
4G073FC18
4G073FD23
4G073GA03
4G073GB02
4G073GB03
4G073GB07
4G073GB08
4G073UA02
4G073UA03
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BC43A
4G169BC50A
4G169BC50B
4G169BC51A
4G169BC51B
4G169BC55A
4G169BC55B
4G169BC56A
4G169BC56B
4G169BE01C
4G169BE37C
4G169CA07
4G169CA14
4G169CB25
4G169CB67
4G169EC25
4G169EC26
4G169EC27
4G169FA02
4G169FB30
4G169FB57
4G169ZA35A
4G169ZA35B
4G169ZC01
4G169ZC02
4G169ZE09
4H006AA02
4H006AC52
4H006BA12
4H006BA30
4H039CA42
4H039CA60
4H039CA71
4H039CF10
4H039CH20
要約 固体金属触媒や担体として有用な新たな形態の遷移金属酸化物の提供。
メソポーラスシリカと遷移金属酸化物とを含む酸化物複合体であって、メソポーラスシリカの表面及び細孔内表面にアモルファス状態の遷移金属酸化物が膜状に存在することを特徴とする酸化物複合体。
特許請求の範囲 【請求項1】
メソポーラスシリカと遷移金属酸化物とを含む酸化物複合体であって、メソポーラスシリカの表面及び細孔内表面にアモルファス状態の遷移金属酸化物が膜状に存在することを特徴とする酸化物複合体。
【請求項2】
前記酸化物複合体の表面で測定したX線回折測定において、2θ=20°以上50°以下の範囲に回折ピークが観測されない請求項1記載の酸化物複合体。
【請求項3】
前記酸化物複合体の表面で測定した元素分析において、λ>200nmの範囲に少なくとも1つ以上の吸収ピークが観測される請求項1又は2記載の酸化物複合体。
【請求項4】
前記メソポーラスシリカの表面水酸基量に対する前記酸化物複合体の表面水酸基量が、40モル%以上である請求項1~3のいずれか1項記載の酸化物複合体。
【請求項5】
前記遷移金属酸化物が、第4~第10族から選ばれる金属の酸化物である請求項1~4のいずれか1項記載の酸化物複合体。
【請求項6】
前記遷移金属酸化物が、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化ジルコニウム及び酸化セリウムから選ばれる酸化物である請求項1~5のいずれか1項記載の酸化物複合体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項記載の酸化物複合体を含有する触媒。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項記載の酸化物複合体を担体とする触媒。
【請求項9】
メソポーラスシリカと遷移金属アルコキシドとを非極性溶媒中で反応させる工程、及び得られた反応物を空気中で焼成する工程を含む、メソポーラスシリカと遷移金属酸化物とを含む酸化物複合体であって、メソポーラスシリカの表面及び細孔内表面にアモルファス状態の遷移金属酸化物が膜状に存在することを特徴とする酸化物複合体の製造法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、固体触媒、触媒の担体等として利用できる酸化物複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
金属を担体に固定化した固体金属触媒反応は、その担体の構造や種類によって大きく相違することが知られている。例えば、金触媒の場合、アナターゼ型酸化チタン上に担持された粒子径2nmを超える金触媒はプロピレンをエポキシ化し、アナターゼ型酸化チタン上に担持された粒子径2nm未満の金触媒はプロピレンをプロパンに還元することができる。またルチル型酸化チタン上に担持された金触媒は高温ではプロピレンを二酸化炭素に酸化し、低温ではプロピレンをアセトンに酸化する(非特許文献1)。従って、固体金属触媒の新たな触媒活性や選択性を引き出すには、触媒の担体やそれ自体が触媒になり得る金属酸化物の新たな形態を開発することが重要である。
【0003】
一方、メソポーラスシリカは、均一で規則的な細孔(メソ孔)を有することから触媒や吸着材料として研究されている。例えば、メソポーラスシリカに金属酸化物やセリア-ジルコニア固溶体を担持した触媒が報告されている(特許文献1~3等)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2009-56456号公報
【特許文献2】特開2010-51836号公報
【特許文献3】特開2010-201398号公報
【0005】

【非特許文献1】T. Hayashi et al., J. Catalysis 178(1998)566
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、酸化チタン等の遷移金属酸化物は、通常400℃以下の温度で結晶化するため、従来報告されているメソポーラスシリカ細孔内に固定化したとしても結晶状態で存在する。結晶状態で固定化されている場合には、メソポーラスシリカ内に固定化されていたとしても大きな特性変化は望めない。また、特許文献1~3等の触媒は、メソポーラスシリカと金属化合物との反応を水やアルコール等の溶媒中で行っているため、固定化された金属酸化物は結晶又は固溶体であり、大きな特性変化は認められない。
従って、本発明の課題は、固体金属触媒や触媒の担体として有用な新たな形態の遷移金属酸化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、メソポーラスシリカに種々の遷移金属酸化物を担持する検討をしてきたところ、非極性溶媒中でメソポーラスシリカに遷移金属アルコキシドを反応させた後、空気中で焼成して得られた複合体が、メソポーラスシリカの表面及び細孔内表面にアモルファス状態の遷移金属酸化物が膜状に存在するという特殊な形態をとり、全く意外にも、そのアモルファス状態が1000℃付近まで維持され、触媒活性が飛躍的に向上することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔8〕を提供するものである。
【0009】
〔1〕メソポーラスシリカと遷移金属酸化物とを含む酸化物複合体であって、メソポーラスシリカの表面及び細孔内表面にアモルファス状態の遷移金属酸化物が膜状に存在することを特徴とする酸化物複合体。
〔2〕前記酸化物複合体表面で測定したX線回折測定において、2θ=20°以上50°以下の範囲に回折ピークが観測されない〔1〕記載の酸化物複合体。
〔3〕前記酸化物複合体表面で測定した元素分析において、λ>200nmの範囲に少なくとも1つ以上の吸収ピークが観測される〔1〕又は〔2〕記載の酸化物複合体。
〔4〕前記メソポーラスシリカの表面水酸基量に対する前記酸化物複合体の表面水酸基量が、40モル%以上である〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の酸化物複合体。
〔5〕前記遷移金属酸化物が、第4族~第10族から選ばれる金属の酸化物である〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の酸化物複合体。
〔6〕前記遷移金属酸化物が、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化ジルコニウム及び酸化セリウムから選ばれる酸化物である〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の酸化物複合体。
〔7〕〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の酸化物複合体を含有する触媒。
〔8〕〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の酸化物複合体を担体とする触媒。
〔9〕メソポーラスシリカと遷移金属アルコキシドとを非極性溶媒中で反応させる工程、及び得られた反応物を空気中で焼成する工程を含む、メソポーラスシリカと遷移金属酸化物とを含む酸化物複合体であって、メソポーラスシリカの表面及び細孔内表面にアモルファス状態の遷移金属酸化物が膜状に存在することを特徴とする酸化物複合体の製造法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の酸化物複合体は、遷移金属酸化物がメソポーラスシリカの表面及び細孔内表面にアモルファス状態で膜状に存在するにもかかわらず、1000℃付近まで結晶化せずアモルファス状態を維持し、遷移金属酸化物では全く触媒活性を示さなかった反応に対しても優れた触媒活性を示す。また、本発明の酸化物複合体は、金ナノ粒子のような金属の担体としても有用である。また、本発明の酸化物複合体を用いればニオブ酸ナトリウムのような強誘電材料の前駆体が容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】メソポーラスシリカ-Ta25複合体のICP発光分光分析結果の例を示す。
【図2】メソポーラスシリカ-Ta25複合体のXPS分析結果の例を示す。
【図3】メソポーラスシリカ-Ta25複合体のUV-visスペクトルの例を示す。
【図4】メソポーラスシリカ-Ta25複合体のバンドギャップとTa/Si比との関係を示す。
【図5】メソポーラスシリカ-Ta25複合体のXRDパターンを示す。
【図6】メソポーラスシリカ-Ta25複合体を800℃で5時間加熱した後のXRDパターンを示す。
【図7】メソポーラスシリカ-Nb25複合体の小角XRDパターンを示す。
【図8】メソポーラスシリカ-Nb25複合体の窒素吸着等温線を示す。
【図9】メソポーラスシリカ-Nb25複合体のXRDパターンを示す。
【図10】メソポーラスシリカ-Nb25複合体のTG-DTA分析結果を示す。
【図11】メソポーラスシリカ-TiO2複合体のXRDパターンを示す。
【図12】メソポーラスシリカ-ZrO2のパターンを示す。
【図13】Au/Nb25/SBA-15のTEM像を示す。
【図14】Au/Nb25/SBA-15のCOの酸化活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の酸化物複合体は、メソポーラスシリカと遷移金属酸化物とを含む酸化物複合体であって、メソポーラスシリカの表面及び細孔内表面にアモルファス状態の遷移金属酸化物が膜状に存在することを特徴とする。

【0013】
本発明の酸化物複合体の担体であるメソポーラスシリカとは、二酸化ケイ素(シリカ)を材質として、一般に直径2~50nmの均一で規則的な細孔(メソ孔)を有する物質である。

【0014】
メソポーラスシリカとしては、例えば、SBA-15(細孔直径6~30nm)、SBA-16(細孔直径6~15nm)、MCM-41(細孔直径1.5~5.0nm)、MCM-48(細孔直径2~5nm)、FMS-16(細孔直径1.5~30nm)等を使用することができる。これらのメソポーラスシリカは、当業者に公知の任意の方法によって製造することができ、一般的には界面活性剤を鋳型としたゾルゲル法によって製造することができる。

【0015】
遷移金属酸化物としては、周期表第4族~第12族金属の酸化物が挙げられるが、第4族~第10族から選ばれる遷移金属の酸化物が好ましく、第4族及び第5族から選ばれる遷移金属の酸化物がより好ましく、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化セリウム、酸化サマリウム、酸化ランタンがさらに好ましく、Ta25、Nb25、TiO2、ZrO2がさらに好ましい。より具体的には、メソポーラスシリカの表面及び細孔内表面に薄膜を形成する観点から、原料として用いる遷移金属アルコキシドが非極性溶媒に溶解する遷移金属の酸化物が好ましく、第4族及び第5族から選ばれる遷移金属の酸化物がより好ましく、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化セレンがさらに好ましく、Ta25、Nb25、TiO2、ZrO2がさらに好ましい。

【0016】
本発明の酸化物複合体は、メソポーラスシリカの表面及び細孔内表面にアモルファス状態の遷移金属酸化物が膜状に存在することに特徴がある。ここで、メソポーラスシリカの表面及び細孔表面に遷移金属酸化物が存在することは、例えば酸化物複合体表面で測定した元素分析において、λ>200nmの範囲に少なくとも1つ以上の吸収ピークが観測されることで確認できる。すなわち、メソポーラスシリカ表面の元素分析で遷移金属化合物であることが確認でき、酸化物であることは遷移金属酸化物のバンドギャップに対応するUV-visの吸収(λ>200nm)があることで確認できる。なお、メソポーラスシリカには紫外可視光(UV-vis)の吸収はない。従って、元素分析において、λ>200nmの範囲に少なくとも1つ以上の吸収ピークがあれば、メソポーラスシリカの表面に遷移金属酸化物が存在することがわかる。元素分析は、ICP、XPS、TEMやSEMのEDSを採用することができる。

【0017】
本発明においてメソポーラスシリカの表面に存在する遷移金属酸化物は、アモルファス状態で存在する。遷移金属酸化物がアモルファス状態で存在することは、メソポーラスシリカ表面で測定したX線回折測定において、2θ=20°以上50°以下の範囲に回折ピークが観測されないことで確認できる。すなわち、結晶相の場合、オングストローム単位のくり返し周期性を持ち、それに由来する回折ピークが2θ=20°~50°に現れる。これらのピークがないことが「不均一性」、すなわちアモルファス状態であることを表わす。なお、メソポーラス構造に由来するナノメートル単位の周期性に対応する回折ピークは、2θ<10°に現れる。従って、X線回折において、2θ=20°~50°の範囲に回折ピークが観測されなければ、メソポーラスシリカ表面上の遷移金属酸化物はアモルファス状態であると確認できる。

【0018】
また、本発明において、メソポーラスシリカの表面及び細孔表面に遷移金属酸化物が膜状に存在する。この膜状に存在するとは、単層膜か、又はその単層膜が複数積層された形態であることを意味する。
ここで、膜調製の際に、シリカ上に表面水酸基との反応により固定化する遷移金属酸化物の前駆体(遷移金属アルコキシド)の量を変化させ、一回の固定化反応で「いくら増やしてもそれ以上は固定化できない」という最大量が存在することで、その量で形成される遷移金属酸化膜を「単層膜」と定義する。量については各種元素分析にて、基板のシリカに対する相対量で確認できる(J. N. Kondo, H. Yamazaki, A. Ishikawa, R. Osuga, S. Takeo, T. Yokoi, S. Kikkawa, K. Teramura and T. Tanaka, "Nibikater tabtakyn oxide on mesoporous silica substrate", ChemstrySelect, 1, 3124-3131(2016), DOI: 10.1002/slct.201600507.)。
基板となるメソポーラスシリカの表面水酸基量密度は、室温でのピリジン吸着により見積もられ、1.0~2.0site・nm-2となっている。遷移金属酸化物薄膜を調製した際にはその表面水酸基量は、メソポーラスシリカのものの40モル%以上である。
ここで、メソポーラスシリカの表面酸点は、例えば表面にピリジンを吸着させてIR法、昇温脱離法等でブレンステッド酸点(BAS)とルイス酸点(LAS)を区別して測定する方法により測定できる。本発明においては、例えば、メソポーラスシリカの表面をピリジン処理し、シリカと弱く相互作用したピリジンを、室温付近でIRで観測する。このときのシラノールのピークの減少と、ピリジンのピークの増加が一次の関係にあることを確認し、導入しているピリジンの量が分かっているので、全シラノールを覆うのに必要なピリジンの量を算出する。

【0019】
本発明の酸化物複合体は、例えば(1)メソポーラスシリカと遷移金属アルコキシドとを非極性溶媒中で反応させる工程(工程(1))、及び(2)得られた反応物を空気中で焼成する工程(工程(2))を含む方法により製造できる。

【0020】
工程(1)に用いられる遷移金属アルコキシドとしては、遷移金属メトキシド、遷移金属エトキシド、遷移金属イソプロポキシド等の遷移金属C1-C6アルコキシドが挙げられる。原料として硝酸ジルコニル等の遷移金属無機酸塩を用いた場合には、メソポーラスシリカの表面に薄膜が形成されないため、メソポーラスシリカの表面にアモルファス状の膜が形成されない。
工程(1)の反応は、特に限定されないが、通常非極性溶媒中で行う。非極性溶媒を用いることで、極性溶媒、特に酸素を含有するような極性溶媒を使用した場合に比べて、メソポーラスシリカ表面の水酸基と溶媒との反応が起こりにくいため、メソポーラスシリカ表面の水酸基と遷移金属アルコキシドとの反応を十分に進行させることができ、薄膜を形成する上で有利である。
また溶媒中の含水量は、特に限定はされないが、極力少ないことが好ましく、無水溶媒を使用することがより好ましい。溶媒中に含まれる水は、遷移金属アルコキシドやメソポーラスシリカ表面の水酸基と反応し、遷移金属アルコキシドとメソポーラスシリカ表面の水酸基との反応の進行を阻害することがあるため、薄膜の形成には、含水量の少ない溶媒が好ましい。従って、工程(1)を行う上では、無水の非極性溶媒を用いることが好ましい。好ましい非極性溶媒としては、飽和炭化水素、芳香族炭化水素が好ましく、芳香族炭化水素がより好ましい。具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が特に好ましい。

【0021】
工程(1)に用いられる遷移金属アルコキシドとしては、前記の非極性溶媒に溶解する化合物が好ましい。具体的にはメソポーラスシリカ表面に単層膜を形成させる点から、用いる非極性溶媒に対する遷移金属アルコキシドの溶解度としては、特に限定されないが、通常1g/L以上であり、5g/L以上が好ましく、8g/L以上がより好ましい。このような遷移金属アルコキシドとしては、Nbアルコキシド、Taアルコキシド、Tiアルコキシド、Zrアルコキシド、Vアルコキシド、Yアルコキシド、Ceアルコキシド、Smアルコキシド、Laアルコキシド、Gdアルコキシド、Prアルコキシド、Snアルコキシド、Biアルコキシド、Hfアルコキシド、Geアルコキシド等が挙げられる。このうち、第4族又は第5族の金属アルコキシドが好ましく、Taアルコキシド、Nbアルコキシド、Tiアルコキシド、Zrアルコキシドが特に好ましい。

【0022】
遷移金属アルコキシドの使用量は、特に限定されないが、用いるメソポーラスシリカ1質量部に対し、通常、0.1質量部以上、好ましくは0.15質量部以上、通常1.0質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。

【0023】
工程(1)の反応条件は本発明の効果を満たす限りにおいて特に限定されず、適宜公知の方法に基づいて設定することができる。
工程(1)における反応温度は、通常、100℃以上、200℃以下、好ましくは150℃以下である。
工程(1)は、空気中でも、不活性ガス雰囲気下で行ってもよいが、不活性ガス雰囲気下で行なうことが好ましい。

【0024】
工程(1)の反応は、具体的には非極性溶媒中、メソポーラスシリカ1質量部に対して、遷移金属アルコキシド0.15質量部以上0.50質量部以下を、温度100℃以上150℃以下で、不活性ガス雰囲気下で1時間以上5時間以下反応させればよい。工程(1)により、メソポーラスシリカ表面に存在する水酸基と遷移金属アルコキシドが膜状に積層する。

【0025】
工程(2)の空気中の焼成温度は300℃~600℃が好ましく、さらに400℃~600℃がより好ましい。工程(2)により、メソポーラスシリカ表面及び細孔内表面にアモルファス状態の遷移金属酸化物が膜状に生成する。

【0026】
本発明の酸化物複合体は、メソポーラスシリカ表面及び細孔内表面にアモルファス状態の遷移金属酸化物が膜状に存在し、その遷移金属酸化物は1000℃付近まで結晶化せず、アモルファス状態を維持する。このように結晶化温度が高くなる理由は、明らかではないが、同一遷移金属酸化物のネットワークが広がっておらず、さらに一方向で(膜状で)シリカと強く結合しているため、より安定な結晶相となるための物質移動が抑制されているため、すなわち結晶化するための活性化エネルギーが大きくなっているためと考えられる。

【0027】
このようにメソポーラスシリカ表面及び細孔内表面に、アモルファス状態の遷移金属酸化物が膜状に安定に存在するため、遷移金属酸化物の触媒活性が格別顕著に向上する。また、触媒担体としても有用である。例えば、後記実施例に示すように、本発明の酸化物複合体は、遷移金属酸化物単体又はメソポーラスシリカの触媒活性に比べて、例えばアニリンのN-アルキル化、酸化環化、プリンス反応等の触媒活性が飛躍的に向上している。また、本発明の酸化物複合体には、金ナノ粒子のような触媒として有用な貴金属粒子を担持することもできる。
従って、本発明の酸化物複合体は、酸化、還元、付加又は縮合反応等の触媒及び触媒担体として有用である。
さらには、本発明の酸化物複合体をアルカリ処理すると、Na7(H3O)Nb619のようなNaNbO3前駆体が容易に得られる。ここでNaNbO3等の遷移金属酸アルカリ金属塩は、強誘電材料として有用である。
【実施例】
【0028】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【実施例】
【0029】
実施例1
(1)メソポーラスシリカ(SBA-15)2.0gにTa(OEt)52.70-6.76gを添加し、125℃でトルエン200mL中で還流した。100℃で乾燥後、空気中、500℃で5時間焼成した。
(2)得られた酸化物複合体のICP発光分光分析結果を図1に示す。ICP発光分光分析は、ICP-visにより、λ>100nmの吸収を測定した。図1の結果より、メソポーラスシリカの表面及び細孔内表面にTa25の存在が確認され、Ta/Si比が約0.2で飽和することが判明した。また、得られた複合体のXPS分析結果を図2に示す。XPSでも、ICPと同様の結果が得られた。
【実施例】
【0030】
(3)得られた酸化物複合体のUV-visスペクトルを図3に、図4にバンドギャップとTa/Si比との関係を示す。
図3及び図4から、原料メソポーラスシリカにはUV-visの吸収がないのに対し遷移金属酸化物(Ta25)のバンドギャップに由来する吸収ピークが存在することがわかる。
【実施例】
【0031】
(4)図5に、酸化物複合体のXRDパターンを示す。図5より、得られた酸化物複合体は、アモルファス状態であることがわかる。
さらに、得られた酸化物複合体を800℃5時間加熱した後のXRDパターンを図6に示す。図6より、本発明の酸化物複合体は、800℃に加熱してもアモルファス状態を維持することが判明した。
【実施例】
【0032】
(5)(水酸基量の測定)
メソポーラスシリカの表面水酸基の定量は、室温で弱く相互作用したピリジンを赤外分光法で観測することで行った。孤立した状態のシラノールのピークの減少と、相互作用をしたピリジンのピークの増加が一次の関係にあることを確認し、全シラノールを覆うのに必要なピリジンの量で見積もった(J. N. Kondo, H. Yamazaki, A. Ishikawa, R. Osuga,S. Takeo, T. Yokoi, S. Kikkawa, K. Teramura and T. Tanaka, "Nibikater tabtakyn oxide on mesoporous silica substrate", ChemstrySelect, 1, 3124-3131(2016), DOI: 10.1002/slct.201600507.)。
その結果、メソポーラスシリカTa25複合体の表面水酸基量は、基材であるメソポーラスシリカの表面水酸基量の40質量%以上であることが判明した。
【実施例】
【0033】
実施例2
原料として、Nb(OEt)5、Ti(OiPr)4及びZr(OiPr)4を用い、実施例1と同様にしてメソポーラスシリカ表面及び細孔内表面にアモルファス状態の遷移金属酸化物が膜状に存在する複合体を製造した。
図7に、Nb25複合体の小角XRDパターンを示し、図8に窒素吸着等温線を示す。図7から、メソポーラスシリカ表面にNb25が積層してもメソポーラスシリカに由来する二次元ヘキサゴナル構造の崩壊が起こっていないことがわかる。
図8より、相対圧0.6~0.8の立ち上がりに由来するメソポーラスシリカに存在する均一な大きさでシリンダー状の細孔が維持されていることが確認できる。
図9に、Nb25複合体のXRDパターンと、500℃~1000℃に加熱した後のXRDパターンを示す。図9よりNb25複合体は、Nb25がアモルファス状態で存在し、800℃~900℃までアモルファス状態を維持することがわかる。
図10に、Nb25複合体のTG-DTA分析結果を示す。図10より、Nb25複合体は、1000℃付近まで結晶化しないことがわかる。
図11に、TiO2複合体、図12にZrO2複合体のXRDパターンを示す。TiO2複合体及びZrO2複合体のいずれもアモルファス状態でメソポーラスシリカ表面に存在することがわかる。
【実施例】
【0034】
実施例3
【実施例】
【0035】
【化1】
JP2018052103A1_000003t.gif
【実施例】
【0036】
O-キシレン1.5mLに、アニリン1.0mmol、ベンジルアルコール1.2mmolを添加した。これにメソポーラスシリカ50mg、Ta2550mg又は実施例1で得たメソポーラス-Ta25複合体50mgを添加し、155℃で24時間加熱還流し、N-ベンジルアニリンを得た。
【実施例】
【0037】
実施例4
【実施例】
【0038】
【化2】
JP2018052103A1_000004t.gif
【実施例】
【0039】
トルエン5mLに、2-アミノフェネチルアルコール1.0mmolを添加した。これにメソポーラスシリカ50mg、Ta2550mg又は実施例1で得たメソポーラスシリカ-Ta25複合体50mgを添加し、24時間加熱還流し、酸化的還元反応を行い、インドールを生成させた(副生物:インドリン)。
【実施例】
【0040】
実施例5
【実施例】
【0041】
【化3】
JP2018052103A1_000005t.gif
【実施例】
【0042】
トルエン5mLに、ホルムアルデヒド2.0mmol及びピネン1.0mmolを加えた。これにメソポーラスシリカ50mg、Ta2550mg又は実施例1で得られたメソポーラスシリカ-Ta25複合体50mgを添加し80℃で12時間反応させ、ノポールを生成させた(副生物:リモネン及びカンフェン)。
【実施例】
【0043】
実施例3~5の反応結果を表1に示す。
【実施例】
【0044】
【表1】
JP2018052103A1_000006t.gif
【実施例】
【0045】
実施例6
実施例2で得られたメソポーラスシリカ-Nb25複合体(Nb25/SBA-15)0.25gに、Auドデカンチオール疎水コロイド(Auの粒径3nm)0.0025~0.025gを加え、室温で1時間撹拌した。次いで、溶媒を蒸発させ、120℃で乾燥した。次に300℃に2時間加熱し、Auナノ粒子担持Nb25/SBA-15を0.251~0.275g得た。得られた複合体(Au/Nb25/SBA-15)のTEM像を図13に示す。図13には、メソポーラスシリカ-Nb25複合体(Nb25/SBA-15)に代えて、メソポーラスNb25/アモルファス水酸化ニオブ(JRC-NBO-1)を用いて同様にAuを担持させた複合体(Au/JRC-NBO-1)のTEM像も示した。
図13から明らかなように、Au/JRC-NBO-1では、金ナノ粒子が均一に分散して担持されていなかったが、Au/Nb25/SBA-15では、メソポーラスシリカの細孔に存在するNb25膜上に、金ナノ粒子が均一に分散している。
【実施例】
【0046】
実施例7
実施例6で得られた金ナノ粒子担持メソポーラスシリカ-Nb25複合体の触媒活性を測定した。触媒0.15gに空気50mL/分供給して250℃で1時間前処理した。次いで、1%CO/空気を50mL/分供給し、CO2への変換を試みた。反応温度とCOからCO2への変換率との関係を図14に示す。
図14から明らかなように、Au/Nb25/SBA-15は、より低温でCOをCO2に変換でき、優れた触媒活性を示した。
【実施例】
【0047】
実施例8
実施例2で得られたメソポーラスシリカ-Nb25複合体をpH13の水酸化ナトリウム水溶液で24時間撹拌した。その結果、メソポーラスシリカは完全に溶解し、白色粉末が沈殿した。
得られた結晶をXRD解析したところ、得られた結晶はNa7(H3O)Nb619であった。この化合物は、加熱することにより容易に強誘電材料として有用なNaNbO3に変換できた。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13