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明細書 :磁場による投影オートラジオグラフィ法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2020-165814 (P2020-165814A)
公開日 令和2年10月8日(2020.10.8)
発明の名称または考案の名称 磁場による投影オートラジオグラフィ法
国際特許分類 G01T   1/00        (2006.01)
G01T   1/29        (2006.01)
FI G01T 1/00 B
G01T 1/29 D
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 6
出願番号 特願2019-066735 (P2019-066735)
出願日 平成31年3月29日(2019.3.29)
発明者または考案者 【氏名】酒井 卓郎
【氏名】飯倉 寛
【氏名】栗田 圭輔
【氏名】河地 有木
出願人 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
個別代理人の代理人 【識別番号】110001922、【氏名又は名称】特許業務法人 日峯国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 2G188
Fターム 2G188AA23
2G188AA25
2G188BB05
2G188BB18
2G188CC39
要約 【課題】オートラジオグラフィ法で被写体内のべータ線放出核種の分布を撮影する方法において、被写体と撮影面が離れている場合でもボケの少ない画像を得る方法を提供すること。
【解決手段】ベータ線30を放射する被写体10を転写する撮影面を、前記被写体10と所定の間隔をおいて配置すると共に、前記被写体10と前記撮影面との間に磁場を印加し、前記被写体10から放出されるベータ線30を前記撮影面に投影する。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
ベータ線を放射する被写体を転写する撮影面を、前記被写体と所定の間隔をおいて配置すると共に、前記被写体と前記撮影面との間に磁場を印加し、前記被写体から放出されるベータ線を前記撮影面に投影することを特徴とする磁場による投影オートラジオグラフィ法。
【請求項2】
請求項1において、前記磁場の磁力線を、前記撮影面に対して円錐状に印加することを特徴とする磁場による投影オートラジオグラフィ法。
【請求項3】
請求項1において、前記磁場の磁力線を、前記撮影面に対して特定の方向に傾斜させて印加させることを特徴とする磁場による投影オートラジオグラフィ法。
【請求項4】
請求項1において、前記磁場の磁力線の方向に対して、前記撮影面を特定の方向に傾斜させることを特徴とする磁場による投影オートラジオグラフィ法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ベータ線を放出する放射性同位元素(RI)の分布を写真乾板やイメージングプレートなどに転写することで可視化するオートラジオグラフィ技術の高度化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
体内の元素や分子の動態を調べる方法として、ベータ線を放出する放射性同位元素(RI)をトレーサーとして投与し、その分布を放射線に感度のある写真乾板やイメージングプレートなどに転写し、可視化する方法は広く利用されている。しかしながら、転写を行う際には、得られる画像のボケを抑えるため、被写体となる試料と転写を行う撮影面である写真乾板やイメージングプレートとを基本的に密着させる必要があるが、両者を密着させずに1:1の転写を行う方法としては、これまで特許文献1に記載の方法が知られているだけである。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開平7-294655
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、1:1の転写では、非接触転写を行う方法も存在するが、撮影面に入射するβ線を制限する方法であるので、感度が大きく低下する。また、試料にある凹凸が大きいと、撮影面との間に大きな隙間ができ、得られる画像が劣化してしまうという問題点がある。さらに、実物の1:1の転写で画像を得ることから拡大や縮小した画像を得ることは原理的にできない。
【0005】
本発明の目的は、オートラジオグラフィ法において、被写体と撮影面が比較的離れている場合でも画像のボケが少ない画像を取得できる方法、さらに画像の拡大または縮小ができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る方法では、オートラジオグラフィ法で被写体内のべータ線放出核種の分布を撮影する際、被写体と撮影面に磁場を印加することで、被写体から放出されるベータ線を撮影面に投影する。磁場がない場合には、ベータ線は単調に発散するが、磁場がある場合は、撮影面への距離には依存せず、ラーマー半径で決まる広がり以下で、撮影面までベータ線を誘導することが可能である。さらに磁力線の分布を適切な形状にすることで、被写体内のべータ線の分布を拡大または縮小して投影することも可能である。
【0007】
本発明は、具体的には、ベータ線を放射する被写体を転写する撮影面を、被写体と所定の間隔をおいて配置すると共に、被写体と撮影面との間に磁場を印加し、被写体から放出されるベータ線を撮影面に投影するように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、従来は被写体となる試料と撮影面を密着させることでしか、ボケの少ない画像を得ることが出来なかったオートラジオグラフィ法において、磁場によりベータ線を誘導することで、被写体と撮影面の間に比較的距離がある場合でもボケの少ない画像を取得することが出来ることが大きな特徴である。これは、生きた状態の生体試料などに強いストレスを加えることなく、生体内の元素や分子の分布や移行過程を撮影できる利点がある。
【0009】
さらには、今まで不可能であった拡大・縮小した画像の取得も可能である。トレーサー実験が盛んに行われている医学分野や植物分野などで、従来の手法では空間分解能が足りず、見ることが出来なった試料内のトレーサー分布を撮影することが出来る画期的な方法であり、その波及効果は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の原理を説明する図で、磁場のない場合の模式図と実際の撮影例。
【図2】本発明の原理を説明する図で、磁場のある場合の模式図と実際の撮影例。
【図3】本発明の一実施例を示す模式図、
【図4】本発明の他の実施例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、オートラジオグラフィ法で被写体内のべータ線放出核種の分布を撮影する方法において、被写体と撮影面に磁場を印加することで、被写体から放出されるベータ線を投影し、撮影面が離れている場合においてもボケの少ない画像を得る方法である。ベータ線は、マイナス(ベータ+崩壊の場合は、プラス)の電荷を持つ電子(ベータ+崩壊の場合は、陽電子)であり、放出核種により決まっている最大エネルギー以下の白色スペクトルを持つ。多くの核種において、その平均のエネルギーは数10kev~1MeVの間になる。

【0012】
このエネルギーのべータ線は、磁場中を運動する場合、そのエネルギーと磁場の向きと強さに依存するらせん運動をすることが知られている(参考文献:プラズマ物理入門、Francis F. Chen著、内田岱一郎訳、丸善)。具体的には、磁力線に沿って、決まった半径(ラーマー半径)のらせん運動をして進んでゆく。すなわち、磁場がない場合には、ベータ線は単調に発散するため、撮影面への距離に応じてその分布は拡大してゆく。これに対して、磁場がある場合は、撮影面への距離には依存せず、ラーマー半径で決まる広がり以下で、撮影面にベータ線を投影することが可能である。さらに磁力線の分布をコーン状(三角錐形状)にすることで、被写体内のべータ線の分布を拡大や縮小することも可能である。また、平行磁場中であっても撮影面を磁場に対して傾けることで、一方向の拡大画像を得ることが可能である。

【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例について説明する。図1は本発明の原理を説明する図で、磁場の存在しない場合の説明であり、得られた画像を紙面に向かって右側に示している。図2は本発明の原理を説明する図で、磁場の存在する場合の説明であり、実際に得られた画像を紙面に向かって右側に示している。これらの画像は、20mm離れたφ4mmの被写体(ベータ線源)をイメージングプレートで撮影したものである。

【0014】
また、図3は本発明の一実施例を示す模式図で、円錐状磁場による拡大投影の様子を示し、図4は本発明の他の実施例を示す模式図で、撮影面(イメージングプレート20)への斜入射による像の拡大の様子を示している。

【0015】
図3と図4に示された本発明の実施例の説明図から理解されるように、本発明においては、オートラジオグラフィ法において試料である被写体10から放出されるベータ線を誘導するために磁場を用いる。以下の実施例では、磁場を与えるための手段として、永久磁石(図示せず)を用いる例を示しているが、これらの実施例は本発明の一態様であり、電磁石を用いた場合も全く同様であり、本発明をいかなるようにも限定するものではない。

【0016】
本発明の理解を早めるために、以下箇条書きで説明する。なお、各実施例で使用された永久磁石はφ50mm×50mmで表面磁束密度0.37T(実測値)のものを使用した。また、イメージングプレート20としては、大きさが20cm×40cmの、富士フィルム社製の型番MS2040の製品を使用した。被写体10としては、φ4mmの濾紙に放射性セシウムを吸わせ、乾燥後にラミネートしたものを使用した。

【0017】
1)2個の永久磁石(図示せず)のN極、S極を対向させ、その間を十分な距離(通常磁石の幅と同程度以下)で、平行磁場を作成する。

【0018】
2)平行磁場中に被写体10となるベータ線30の放出核種を含んだ試料とべータ線の分布を撮影する検出器(図3及び図4の実施例ではイメージングプレート20)を挿入する。被写体10と撮影面20の距離は任意で良い。

【0019】
3)被写体から放出されたべータ線30は、図3及び図4の実施例に示されるように、磁場に沿ったらせん運動をしながら、検出器であるイメージングプレート20に入射する。

【0020】
4)典型的ならせん運動の半径(被写体10から撮影面20への法線方向に対して、45°の放出角度を想定)は、ベータ線放出核種として生物実験等でよく使われる14Cの場合、平均ベータ線エネルギー約49keV、2つの対向した永久磁石の作る磁場の強さを1T(テスラ)とした場合、0.6mm程度である。

【0021】
5)図3の実施例に示されているように、一方の磁石の幅を他方より狭い磁石を使った場合、磁力線40の分布が放射状になる。この場合にも、被写体10からのベータ線30は磁力線40に沿って進むため、得られるオートラジオグラフィ像は、被写体10を拡大もしくは縮小した像を得ることが出来る。

【0022】
6)また、図4の他の実施例に示されているように、撮影面20を磁場(磁力線40)に対して傾けて設置することで、一方向に拡大したオートラジオグラフィ像を得ることが出来る。
【符号の説明】
【0023】
10…被写体
20…イメージングプレート
30…ベータ線
40…磁力線
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3