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明細書 :異物探知システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2021-009028 (P2021-009028A)
公開日 令和3年1月28日(2021.1.28)
発明の名称または考案の名称 異物探知システム
国際特許分類 G01S  13/87        (2006.01)
G01S  13/34        (2006.01)
FI G01S 13/87
G01S 13/34
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2019-121580 (P2019-121580)
出願日 令和元年6月28日(2019.6.28)
発明者または考案者 【氏名】川西 哲也
出願人 【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100116850、【弁理士】、【氏名又は名称】廣瀬 隆行
【識別番号】100165847、【弁理士】、【氏名又は名称】関 大祐
審査請求 未請求
テーマコード 5J070
Fターム 5J070AA04
5J070AB01
5J070AB18
5J070AB19
5J070AC01
5J070AC02
5J070AF01
5J070AH31
5J070AJ13
5J070AK35
5J070BD01
要約 【課題】滑走路などに存在する異物を探知でき,レーダ間の干渉を抑圧できる複数のレーダを用いた異物探知システムを提供する。
【解決手段】第1のレーダ11と,第1のレーダとネットワーク33を介して接続された第2のレーダ21と,第1のレーダ及び第2のレーダにネットワークを介して同期信号を送信する信号源31と,を含む異物探知システムであって,信号源から同期信号が第1のレーダに伝達される時間をτ1iとし,信号源から同期信号が第2のレーダに伝達される時間をτ2jとしたときに,|τ1i-τ2j|に相当する遅延時間を制御することで,第2のレーダから出力されたレーダ信号が,反射物により反射され,第1のレーダに入力されることにより生ずる干渉を防止する,異物探知システム。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
第1のレーダと,
第1のレーダとネットワークを介して接続された第2のレーダと,
第1のレーダ及び第2のレーダに前記ネットワークを介して同期信号を送信する信号源と,を含む異物探知システムであって,
前記信号源から前記同期信号が第1のレーダに伝達される時間をτ1iとし,
前記信号源から前記同期信号が第2のレーダに伝達される時間をτ2jとしたときに,
|τ1i-τ2j|に相当する遅延時間を制御することで,
第2のレーダから出力されたレーダ信号が,反射物により反射され,第1のレーダに入力されることにより生ずる干渉を防止する,
異物探知システム。
【請求項2】
請求項1に記載の異物探知システムであって,第1のレーダ及び第2のレーダは,地上に設置されたレーダである,異物探知システム。
【請求項3】
請求項1に記載の異物探知システムであって,
第1のレーダの測定限界長をLとしたときに,前記Lを考慮して,前記 |τ1i-τ2j|を制御する,異物探知システム。
【請求項4】
請求項2に記載の異物探知システムであって,|τ1i-τ2j|>2L/c(ここでcは信号速度である)となるように,前記 |τ1i-τ2j|を制御する,異物探知システム。
【請求項5】
請求項1に記載の異物探知システムであって,
前記遅延時間を変化させる遅延時間変化部と,
前記遅延時間変化部が前記遅延時間を変化させた際に,第1のレーダによる測定位置が変動する測定対象を特定する変動対象特定部と,
前記変動対象特定部が特定した測定対象を,前記干渉であると判断する干渉判断部とをさらに有する,システム。
【請求項6】
請求項1に記載の異物探知システムであって,
第1のレーダ及び第2のレーダは,パルスレーダであって,以下の式(3)を満たす,システム。
max<mod(Δtij,T)・・・・・(3)
(式(3)中,tmaxは,2Lmax/cであり,Lmaxは第1のレーダ及び第2のレーダの最大探知距離であり,cは信号速度であり,Δtijは|τ1i-τ2j|であり,Tはパルスレーダの周期である。
【請求項7】
請求項1に記載の異物探知システムであって,
第1のレーダ及び第2のレーダは,周波数が時間に対して三角波状に変化するFMCWレーダであって,以下の式(4)を満たす,システム。
max<(2f×mod(Δτij,T))/T<2f-fmax・・・・・(4)
(式(4)中,fmaxは,FMCWレーダのIF帯回路の上限周波数(Hz)を示し,fは,FMCWレーダの周波数掃引幅(Hz)を示し,Δτijは,|τ1i-τ2j|であり,Tは,FMCWレーダの周期である。
【請求項8】
請求項1に記載の異物探知システムであって,
第1のレーダ及び第2のレーダは,周波数が時間に対してのこぎり波状に変化するFMCWレーダであって,以下の式(5)を満たす,システム。
max<(f×mod(Δτij,T))/T<f-fmax・・・・・(5)
(式(5)中,fmaxは,FMCWレーダのIF帯回路の上限周波数(Hz)を示し,fは,FMCWレーダの周波数掃引幅(Hz)を示し,Δτijは,|τ1i-τ2j|であり,Tは,FMCWレーダの周期である。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は,複数のレーダを用いた異物探知システムに関する。より詳しく説明すると,この発明は,レーダ間の干渉を抑圧したレーダを用いた異物探知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2019-055769号公報には,航空機システムにおいて障害物を検出するためのシステム及び方法が記載されている。この公報に記載されたシステムは,飛行中の障害物を検出するために,飛行機にレーダを搭載する。この公報に記載されたレーダは,第1の空域を径方向に走査するものである。
【0003】
特開2019-055769号公報に記載されたレーダは,対空障害物を検出するには適している。しかしながら,この公報に記載されたレーダは,第1の空域を径方向に走査するものなので,滑走路などに存在する異物や障害物を探知できない。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2019-055769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この明細書に記載される発明のひとつは,滑走路などに存在する異物を探知でき,レーダ間の干渉を抑圧できる複数のレーダを用いた異物探知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書に記載される発明のひとつは,以下の知見に基づく。ネットワークで接続された複数のレーダを用いて,異物を探知する場合,レーダ間の干渉波による偽像が発生するときがある。この偽像が発生する位置は,各レーダへの信号の到達時間の差(遅延量)に依存する。このため,この遅延量を制御することで,偽像を判別でき,これによりレーダ間の干渉を効果的に抑圧できる。
【0007】
この明細書に記載される発明のひとつは,異物探知システム1に関する。この異物探知システム1は,第1のレーダ11と,第2のレーダ21と,信号源31と,を含む。第2のレーダ21は,第1のレーダ11とネットワーク33を介して接続されている。信号源31は,第1のレーダ11及び第2のレーダ21とネットワーク33を介して接続され,同期信号を送信するための要素である。
【0008】
同期信号が,信号源31から第1のレーダ11に伝達される時間をτ1iとする。また,同期信号が,信号源31から第2のレーダ21に伝達される時間をτ2jとする。
そして,信号源31は,|τ1i-τ2j|に相当する遅延時間を制御する。これにより,異物探知システム1は,第2のレーダ21から出力されたレーダ信号が,反射物37により反射され,第1のレーダ11に入力されることにより生ずる干渉を防止できる。
【0009】
上記の異物探知システム1の好ましい例は,第1のレーダ11及び第2のレーダ21が,地上に設置されたレーダである。
【0010】
上記の異物探知システム1の好ましい例は,第1のレーダ11の測定限界長をLとしたときに,Lを考慮して,|τ1i-τ2j|を制御する。具体的には,|τ1i-τ2j|>2L/c(ここでcは信号速度である)となるように,|τ1i-τ2j|を制御する。
【0011】
上記の異物探知システム1の好ましい例は,遅延時間を変化させる遅延時間変化部41と,遅延時間変化部が遅延時間を変化させた際に,第1のレーダ11による測定位置が変動する測定対象を特定する変動対象特定部43と,変動対象特定部が特定した測定対象を,干渉であると判断する干渉判断部45とを有する。
【0012】
上記の異物探知システム1の好ましい例は,第1のレーダ及び第2のレーダは,パルスレーダであって,以下の式(3)を満たす,システムである。
max<mod(Δtij,T)・・・・・(3)
(式(3)中,tmaxは,2Lmax/cであり,Lmaxは第1のレーダ及び第2のレーダの最大探知距離であり,cは信号速度であり,Δtijは|τ1i-τ2j|であり,Tはパルスレーダの周期である。
【0013】
上記の異物探知システム1の好ましい例は,第1のレーダ及び第2のレーダは,周波数が時間に対して三角波状に変化するFMCWレーダであって,以下の式(4)を満たす,システムである。
max<(2f×mod(Δτij,T))/T<2f-fmax・・・・・(4)
(式(4)中,fmaxは,FMCWレーダのIF帯回路の上限周波数(Hz)を示し,fは,FMCWレーダの周波数掃引幅(Hz)を示し,Δτijは,|τ1i-τ2j|であり,Tは,FMCWレーダの周期である。
【0014】
上記の異物探知システム1の好ましい例は,第1のレーダ及び第2のレーダは,周波数が時間に対してのこぎり波状に変化するFMCWレーダであって,以下の式(5)を満たす,システム。
max<(f×mod(Δτij,T))/T<f-fmax・・・・・(5)
(式(5)中,fmaxは,FMCWレーダのIF帯回路の上限周波数(Hz)を示し,fは,FMCWレーダの周波数掃引幅(Hz)を示し,Δτijは,|τ1i-τ2j|であり,Tは,FMCWレーダの周期である。
【発明の効果】
【0015】
上記の発明によれば,各レーダに信号が到達する時間を制御することにより,レーダ間の干渉を効果的に防止できる異物探知システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は,異物探知システムの構成例を示す概念図である。
【図2】図2は,異物を検知する様子を示す概念図である。
【図3】図3は,他のレーダからの無線信号により,干渉が生ずる様子を説明するための概念図である。
【図4】図4は,信号源における遅延時間の制御システムの例を示す概念図である。
【図5】図5は,異物探知システムが,検出した信号が,異物によるものか反射体によるものかを判断するフローチャートの例である。
【図6】図6は,レーダとして時間に対し周波数がの三角波状に変化するFMCWレーダを用いた場合の送信信号と受信信号の関係を示す概念図である。
【図7】図7は,レーダとして時間に対し周波数がのこぎり波状に変化するFMCWレーダを用いた場合の送信信号と受信信号の関係を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。

【0018】
図1は,異物探知システムの構成例を示す概念図である。図1に示されるように,この異物探知システム1は,第1のレーダ11と,第2のレーダ21と,信号源31と,を含む。第2のレーダ21は,第1のレーダ11とネットワーク33を介して接続されている。信号源31は,第1のレーダ11及び第2のレーダ21とネットワーク33を介して接続され,同期信号を送信するための要素である。

【0019】
異物探知システム1は,例えば,飛行機の滑走路3に存在する異物を探知するためのシステムに関する。異物の例は,飛行機の進行の妨げとなる障害物など,正常な状態では,滑走路に存在しない物であって,飛行機の安全な運転の妨げになるか,妨げになる恐れがある物を意味する。航空機の例では,異物は滑走路に存在する。つまり,異物は,通常,乗物が通常運転をする際に通過する可能性がある領域に存在する物である。以下,飛行機の滑走路の異物探知システムを中心に説明を行う。もちろん,この異物探知システム1は,道路の異物探知システムや,航海における異物探知システムといった様々な用途に用いることができる。このシステムは,また,道路に設置されることで,自動運転車両に対し,異物の存在を通知するために用いることができる。

【0020】
第1のレーダ11及び第2のレーダ21は公知のレーダを適宜採用できる。レーダは,同期信号(例えば光信号)を受信して,受信した同期信号を信号変換器により無線信号に変換,もしくは同期信号に同期した発信器で信号生成し,無線出力部から無線信号を放出できる。また,レーダは,その無線受信部により無線信号を受信し,受信した無線信号を信号変換部により信号(例えば光信号)に変換し,受信信号出力部から出力できる。レーダは,連続波(FMCW)レーダであっても,パルスレーダであってもよい。FMCWレーダでは,送信波と受信波を解析装置内のミキサに入力して,それらの周波数差を測定することで,レーダから異物の距離を算出できる。無線信号を光ファイバへ重畳するファイバ無線技術を採用してもよい。この場合,同期信号は,レーダ信号波形そのもので光を変調したものとなる。同期信号は,レーダ信号波形の発生プロセスの途中にある中間周波数帯波形を利用してもよい。複数のレーダに送信される同期信号は,同期がとられており,これによりタイミングを調整できる。ファイバ無線用ユニット及びファイバ無線用システムは,再表2010/001438号公報に記載されているとおり公知である。信号源は,このような公知のシステムを用いて同期信号を発生させ,出力させればよい。

【0021】
図1に示されるように,レーダは,滑走路を挟む両端側に所定間隔にて設置されているものが好ましい。この場合,レーダ群は,飛行機が滑走する部分を避けた滑走路付近に存在すればよい。例えば,滑走路の一方の端側に存在するレーダ群(第1のレーダ群)を,RAU1j(jは,1,2,・・・・),滑走路の他方の端側に存在するレーダ群(第2のレーダ群)をRAU2i(iは,1,2,・・・・)とも表記する。レーダによっては,乗物(飛行機,自動車,オートバイ,自転車,ヘリコプター,ドローン)に設置されているものがある。一方,本発明では,図1に示されるように,第1のレーダ11及び第2のレーダ21が,地上に設置されたレーダであるものが好ましい。第1のレーダ11及び第2のレーダ21は,滑走路の両端側にそれぞれ存在するレーダであることが好ましい。換言すれば,第1のレーダ11及び第2のレーダ21の間に,滑走路が存在する位置関係であることが好ましい。それぞれの群に存在するレーダの距離の例は,1m以上5km以下であり,10m以上1km以下でもよいし,100m以上1km以下でもよいし,200m以上1km以下でもよいし,10m以上100m以下でもよい。

【0022】
信号源31は,第1のレーダ11及び第2のレーダ21とネットワーク33を介して接続され,同期信号を送信するための要素である。信号源31から出力された同期信号は,ネットワーク33を介して,第1のレーダ11及び第2のレーダ21に到達し,第1のレーダ11及び第2のレーダ21から同期信号に基づくレーダ信号が出力されることとなる。

【0023】
ネットワーク33の例は,光ファイバネットワークである。光ファイバネットワークに接続された各要素は,光ファイバを介して,情報の授受を行うことができる。光ファイバネットワークには,例えば,ルータや増幅器といった公知の要素が適宜設置されていてもよい。

【0024】
図2は,異物を検知する様子を示す概念図である。例えば,第1のレーダ11から出力された無線信号13が,異物35に衝突する。そして,無線信号は,異物35により反射される。反射した無線信号15(またはその一部)は,第1のレーダ11に戻る。第1のレーダ11は,異物35において反射し,戻ってきた無線信号15を受信する。そして,第1のレーダ11は,受信した無線信号を適宜変換して,検出信号として出力する。ネットワークに接続される解析装置(これは信号源と同一の装置内にあってもよい)39は,ネットワークを介して伝搬された検出信号を受信する。そして,解析装置39は,受信した検出信号を解析する。無線信号の速度は,記憶部に記憶されている。すると,解析装置は,例えば,第1のレーダが,レーダ信号を出力した時間と,第1のレーダが無線信号15を受信した時間を用いて,第1のレーダから異物までの距離を求めることができる。このシステムには,複数のレーダが存在しているので,それぞれのレーダから異物までの距離を求めることができる。すると,複数のレーダの位置情報と,それぞれのレーダから異物までの距離情報を用いることで,異物の位置(例えば,滑走路上の異物の位置)を求めることができる。

【0025】
図3は,他のレーダからの無線信号により,干渉が生ずる様子を説明するための概念図である。この例は,反射物37が存在することにより,他のレーダからの無線信号に基づく干渉が生ずるものである。反射物37は,乗物の通常の運航には影響を与えない物であって,この物体によって反射されるレーダからの無線信号により,システムにご認識を与える恐れがあるものである。例えば,航空機37が,滑走路外に待機していることがある。すると,例えば,第2のレーダ21からの無線信号23が航空機37の機体に反射し,反射した無線信号25が第1のレーダ11に到達することがある。すると,無線信号25が第1のレーダに到達するタイミングによっては,第1のレーダ11から出力された無線信号が異物35において反射し,戻ってきた信号であるかのようなタイミングで,第1のレーダ11に到達する。すると,解析装置39は,異物が存在すると判断する場合がある。この場合,第1のレーダ11は,あたかも異物があるかのような偽像を観測することとなる。この異物は,複数のレーダにおいて,距離が正確ではない信号として受信されるので,異物の位置を特定できず,システムが混乱することが想定される。一方,例えば,信号源31から第1のレーダ11までの光路長を維持し,信号源31から第2のレーダ21までの光路長を変化させた場合を検討する。すると,第1のレーダが受信した信号が異物由来のものであれば,第1のレーダの光路長が変化していないので,異物由来の信号を受信するタイミングは変化しない。一方,第2のレーダ21から出力され,反射物37によって反射して,第1のレーダ11が受信した信号については,信号源31から第2のレーダ21までの光路長が変化したことに伴って,信号の受信タイミングが変動する。すると,第1のレーダは,偽像の第1のレーダからの距離が変化したような信号を受信することとなる。つまり,ある観測対象のレーダと他のレーダが光信号を受信するタイミングの差を変動させることで,受信した信号が偽像であるか,異物由来の信号であるかを判断できることとなる。

【0026】
同期信号が,信号源31から第1のレーダ11に伝達される時間をτ1iとする。また,同期信号が,信号源31から第2のレーダ21に伝達される時間をτ2jとする。そして,信号源31は,|τ1i-τ2j|に相当する遅延時間を制御する。これにより,異物探知システム1は,第2のレーダ21から出力されたレーダ信号が,反射物37により反射され,第1のレーダ11に入力されることにより生ずる干渉を防止できる。例えば,遅延時間を変動させた際に,第1のレーダ11又は第2のレーダから観測される対象物の距離が変化した場合,その信号は,異物35由来ではなくて,反射体37由来の信号であると判断し,異物が存在したように処理を行わないようにすればよい。

【0027】
第2のレーダ21から出力された無線信号が,第1のレーダにより直接受信された場合については,第1のレーダと第2のレーダとの無線信号の出力タイミングを調整することで,干渉を防止できる。つまり,各レーダの位置や,あるレーダから他のレーダまでの距離,それぞれのレーダから出力される無線信号のタイミングは,解析装置の記憶部に記憶されている。そして,記憶部には,無線信号の速度も記憶されている。このため,あるレーダが無線信号を受信した際に,そのレーダから他のレーダまでの距離及び無線信号の速度を用いて,他のレーダからあるレーダまでに無線信号が到達する時間を求め,それとあるレーダ及び他のレーダから無線信号が放出される時間に関する情報を用いて,あるレーダが受信した無線信号が他のレーダから送信され直接あるレーダが受信したものであるか否か解析できる。

【0028】
図4は,信号源における遅延時間の制御システムの例を示す概念図である。この遅延時間の制御システムは,光スイッチ51と,複数種類の遅延線53,55,57とを組み合わせたものである。それぞれの遅延線53,55,57は,例えば,長さが異なっており,光信号が通過するためにようする時間に相違がある。このため,光スイッチ51により,遅延線53,55,57を選択することで,第2のレーダ21に到達する同期信号の時間を制御できる。上記の例は,遅延制御の一例である。例えば,光ファイバに加える外力(例えば圧力や温度)を変化させて,コアの屈折率を変化させ,それにより光ファイバを伝搬する同期信号の速度を変化することで,遅延時間を制御するようにしてもよい。

【0029】
上記の異物探知システム1の好ましい例は,第1のレーダ11の測定限界長をLとしたときに,Lを考慮して,|τ1i-τ2j|を制御するものである。具体的には,|τ1i-τ2j|>2L/c(ここでcは信号速度である)となるように,|τ1i-τ2j|を制御する。信号速度は,レーダから出力される無線信号の速度を意味する。 例えば,信号源31から第1のレーダ11までの距離l(lは,例えば,スイッチングにより変動する場合がある)と,信号源31から第2のレーダまでの距離l(lは,例えば,スイッチングにより変動する場合がある)を,ネットワーク中の同期信号の伝搬速度を考慮しつつ,|τ1i-τ2j|>2L/cとなるように距離l及び距離lを制御する。このようにすると,光信号の干渉を効果的に防止できる。

【0030】
上記の異物探知システム1の好ましい例は,遅延時間を変化させる遅延時間変化部41と,遅延時間変化部が遅延時間を変化させた際に,第1のレーダ11による測定位置が変動する測定対象を特定する変動対象特定部43と,変動対象特定部が特定した測定対象を,干渉であると判断する干渉判断部45とを有する。これらの要素は,上記した解析装置に存在してもよい。この解析装置は,例えば,コンピュータに基づくものである。遅延時間変化部41の例は,解析装置の指令により光スイッチ51が接続する遅延線53,55,57を変化させるものである。

【0031】
コンピュータは,入力部,出力部,制御部,演算部及び記憶部を有しており,各要素は,バスなどによって接続され,情報の授受を行うことができるようにされている。例えば,記憶部には,制御プログラムが記憶されていてもよいし,各種情報が記憶されていてもよい。入力部から所定の情報が入力された場合,制御部は,記憶部に記憶される制御プログラムを読み出す。そして,制御部は,適宜記憶部に記憶された情報を読み出し,演算部へ伝える。また,制御部は,適宜入力された情報を演算部へ伝える。演算部は,受け取った各種情報を用いて演算処理を行い,記憶部に記憶する。制御部は,記憶部に記憶された演算結果を読み出して,出力部から出力する。このようにして,各種処理が実行される。

【0032】
図5は,異物探知システムが,検出した信号が,異物によるものか反射体によるものかを判断するフローチャートの例である。図5の例では,第1のレーダが,無線信号を受信する(S101)。

【0033】
解析装置が,受信した信号が,他のレーダから出力され直接第1のレーダに届いた無線信号であるか否か解析する(S102)。第1のレーダから他のレーダまでの距離や,信号源から第1のレーダへの同期信号の伝搬タイミングと,他のレーダへの伝搬タイミングは,解析装置の記憶部に記憶されている。このため,解析装置は,記憶部に記憶された上記のタイミングに関する情報を読み出し,第1のレーダが受信した信号が,他のレーダから出力され直接第1のレーダに届いた無線信号であるか否か解析すればよい。

【0034】
解析装置が,第1のレーダに届いた無線信号は,他のレーダから出力され直接第1のレーダに届いた無線信号であると判断した場合(S103),異物は検出されない。

【0035】
解析装置が,第1のレーダに届いた無線信号は,他のレーダから出力され直接第1のレーダに届いた無線信号でないと判断した場合,無線信号が,異物35由来の信号であるか,反射物37由来の偽像であるか検討する(S104)。この場合,例えば,信号源から第1のレーダまでの光路長と,信号源から他のレーダまでの光路長との差を変化させる。具体的な例は,遅延時間変化部41が,光スイッチ35に対して指令を出し,遅延路を変化させることで,信号源31から特定のレーダまでの光路長を変化させる。そして,第1のレーダから検出された対象物の距離が変動するか否か解析する。コンピュータは,例えば,第1のレーダからの信号に基づいて,対象物(異物の候補)の第1のレーダからの距離をモニタし,記憶部に記憶している。そして,上記の通り,信号源から他のレーダまでの距離を変化させた後の第1のレーダから対象物までの距離を求め,記憶部に記憶する。そして,解析装置は,記憶部から遅延時間を変化させる前後の,第1のレーダから対象物までの距離を読み出して,比較する。第1のレーダから対象物までの距離が変化している場合,またその変化が,上記の遅延時間の変化から求めた変化と一致している場合は,受信信号が干渉によるものであると判断する。第1のレーダ11による測定位置が変動する測定対象は,反射物であると判断される。また,第1のレーダから対象物までの距離が変化していない場合は,対象物が異物であると判断する。

【0036】
つまり,対象物の距離が変動した場合(S105),検出信号は,反射物37に由来する信号であると解析する。一方,第1のレーダから検出された対象物の距離が変動しない場合(S106),検出信号は,異物35に由来する信号であると解析する。解析装置が,異物35に由来する信号であると解析した場合,他のレーダが観測した異物までの距離の情報と,各レーダの位置情報とを用いて,異物の位置を求める。そして,適宜,アラートを出力し,注意を喚起する。

【0037】
1.複数のレーダ間の位置関係と信号の遅延
RAU1jを1行目のj番目のリモートアンテナユニット(レーダ)とし,RAU2iを2行目のi番目のリモートアンテナユニット(レーダ)とする。そして,τ1j,及びτ2iを,それぞれRAU1j及びRAU2iが発射するレーダ波の基準時刻からのずれとし,
ijをRAU1jとRAU2iの間の距離とする。

【0038】
レーダ信号がRAU1jを経てRAU2iへと到達するのにかかる時間は,電波の速度をcとしてLij/cである。信号源から出力された同期信号がRAU2iに到達する時間と,信号源から出力された同期信号がRAU1jを経て,レーダ信号として出力され,レーダ信号がRAU2iへと到達するのにかかる時間の差は,同期信号のタイミングのずれを考慮に入れると,|τ2i-τ1j+Lij/c|≡Δtijである。
一方,信号源から出力された同期信号がRAU1jに到達する時間と,信号源から出力された同期信号がRAU2iを経て,レーダ信号として出力され,レーダ信号がRAU1jへと到達するのにかかる時間の差は,同様に,|τ1j-τ2i+Lij/c|≡Δtjiである。

【0039】
2.パルスレーダについて
レーダ信号として,パルス波を用いた場合について検討する。パルス波の周期(すなわち,レーダ送信波の繰り返し周期)をT(秒)とする。Lmaxをレーダの最大探知距離とする。cを無線信号(レーダ信号)の速度とする。そして,tmaxを2Lmax/cとする。

【0040】
すると,tmax<Δtij<T・・・・・(1)
max+NT<Δtij<T(N+1)・・・・・(2)
(ここで,Nは整数である。)
が成り立つときに,干渉信号はレーダ信号を測定する時間の範囲外になり,干渉の影響を抑えることができる。

【0041】
式(1)及び式(2)から,以下が導かれる。
max<mod(Δtij,T)・・・・・(3)
ここで,mod(A,B)は,AをBで割った余りであり,Tはパルスレーダの周期である。

【0042】
を例えば,Lmaxの3倍,5倍,10倍などの特定の整数倍とする。
すると,Lij<Lの範囲の(i,j)に対して,式(3)を満たすようにτ1j,及びτ2iを調整することが好ましい。この関係は,異なるレーダ群に存在する2つのレーダ間のみならず,同一のレーダ群に存在する2つのレーダ間にも妥当する。

【0043】
RAU1j及びRAU2iがネットワークに接続されている場合,τ2i=L2i×n/cとなり(ここでは,信号源からL2iまで光路長であり,nは,ネットワークの実効屈折率(例えば光ファイバの場合は1.5)であり,cは光速である。)上記のように,ファイバ長を調整することで,τ2iや遅延時間を調整できる。

【0044】
3.FMCWレーダ
次に,レーダとして時間に対し周波数が三角波状に変化するFMCWレーダを用いた場合について説明する。
図6は,レーダとして時間に対し周波数が三角波状に変化するFMCWレーダを用いた場合の送信信号と受信信号の関係を示す概念図である。時間に対し周波数が三角波状に変化するとは,レーダの周波数の値が,時間とともに変化し,横軸を時間,縦軸を周波数とした場合に,三角波状となる状態を意味する。

【0045】
Tは,FMCWレーダの周期(秒)を示す。fは,FMCWレーダの周波数掃引幅(Hz)である。fmaxは,FMCWレーダのIF帯回路の上限周波数(Hz)を示す。IF帯回路は,送信したレーダ信号と受信したレーダ信号をミキサでかけ算した出力のうち最も周波数が低い成分(送信信号と受信信号の差周波成分)を増幅するための回路である。tmaxは,先に説明したものと同義である。すると,fmax/tmaxは,2f/Tに等しい。よって,FMCWレーダについては,以下の式(4)を満たすようにΔτijを調整すれば,干渉による信号がIF帯回路の上限周波数を超える成分となり,その影響を抑えることができる。

【0046】
max<(2f×mod(Δτij,T))/T<2f-fmax・・・・・(4)

【0047】
次に,レーダとして時間に対し周波数がのこぎり波状に変化するFMCWレーダを用いた場合について説明する。
図7は,レーダとして時間に対し周波数がのこぎり波状に変化するFMCWレーダを用いた場合の送信信号と受信信号の関係を示す概念図である。
第1のレーダ及び第2のレーダは,周波数が時間に対してのこぎり波状に変化するFMCWレーダであって,以下の式(5)を満たす,システム。
max<(f×mod(Δτij,T))/T<f-fmax・・・・・(5)
(式(5)中,fmaxは,FMCWレーダのIF帯回路の上限周波数(Hz)を示し,fは,FMCWレーダの周波数掃引幅(Hz)を示し,Δτijは,|τ1i-τ2j|であり,Tは,FMCWレーダの周期である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
この明細書に記載される発明は,異物探知システムに関するので,例えば,情報通信産業,及び建築業において利用され得る。
【符号の説明】
【0049】
1 異物探知システム
11 第1のレーダ
21 第2のレーダ
31 信号源
33 ネットワーク33
35 異物
37 反射物
39 解析装置
41 遅延時間変化部
43 変動対象特定部
45 干渉判断部
51 光スイッチ
53,55,57 遅延線
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6