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Specification :(In Japanese)電極及び金属空気電池

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)公開特許公報(A)
Publication number P2021-011627A
Date of publication of application Feb 4, 2021
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)電極及び金属空気電池
IPC (International Patent Classification) C25B  11/04        (2021.01)
H01M  12/08        (2006.01)
H01M   4/90        (2006.01)
H01M   4/86        (2006.01)
FI (File Index) C25B 11/06 A
H01M 12/08 K
H01M 4/90 B
H01M 4/86 M
Number of claims or invention 6
Filing form OL
Total pages 17
Application Number P2019-127785
Date of filing Jul 9, 2019
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】小川 哲志
【氏名】本橋 輝樹
【氏名】齋藤 美和
【氏名】鈴木 健太
【氏名】荻野 泰代
Applicant (In Japanese)【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
Representative (In Japanese)【識別番号】100106002、【弁理士】、【氏名又は名称】正林 真之
【識別番号】100120891、【弁理士】、【氏名又は名称】林 一好
Request for examination (In Japanese)未請求
Theme code 4K011
5H018
5H032
F-term 4K011AA23
4K011AA50
4K011BA08
4K011CA04
4K011DA01
5H018AA10
5H018EE02
5H018EE04
5H032AA02
5H032AS01
5H032AS02
5H032AS03
5H032AS05
5H032AS06
5H032AS11
5H032AS12
5H032CC11
5H032CC16
5H032EE15
5H032HH05
Abstract (In Japanese)【課題】例えば金属空気電池等に用いることができ、酸化還元活性に優れ、柔軟な設計が可能な新たな触媒物質を備える電極を提供すること。
【解決手段】本発明に係る電極は、鉄元素を含む第1触媒と、コバルト元素及び/又はニッケル元素を含む第2触媒と、を備え、第1触媒と、第2触媒とが、互いに離間して配置される。第1触媒と、第2触媒とが、共通の電解液溶液に浸漬されて用いられることが好ましい。
【選択図】図3
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
鉄元素を含む第1触媒と、コバルト元素及び/又はニッケル元素を含む第2触媒と、を備え、
前記第1触媒と、前記第2触媒とが、互いに離間して配置される、
電極。
【請求項2】
前記第1触媒と、前記第2触媒とが、共通の電解質溶液に浸漬されて用いられる、
請求項1に記載の電極。
【請求項3】
酸素発生反応のための
請求項1又は2に記載の電極。
【請求項4】
金属空気電池における正極反応のための
請求項1又は2に記載の電極。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の電極を正極として含む
金属空気電池。
【請求項6】
電解質として、電解質溶液をさらに含み、
前記第2触媒の近傍から前記第1触媒の近傍に向けて前記電解質溶液を流動させる流動機構をさらに備える、
請求項5に記載の金属空気電池。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、電極及び金属空気電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV)の更なる普及には、ガソリン自動車並の航続距離を実現する高エネルギー密度蓄電池の開発が必要不可欠である。現在、現状のリチウムイオン二次電池を超える「革新型蓄電池」の一つとして、金属空気電池が注目を集めている。金属空気電池とは、負極活物質として亜鉛等の金属、正極活物質として空気中の酸素を用いる二次電池をいう。このような金属空気電池は、非常に高い理論エネルギー密度を達成する可能性がある。金属空気電池、特に金属として亜鉛を用いた亜鉛空気電池は、国内外の研究機関で古くから研究開発が行われているが(例えば、非特許文献1、2)、現在のところ、本格的な実用化には至っていない。
【0003】
ところで、金属空気電池の空気極では、放電時には酸素(活物質)の4電子還元反応により水酸化物イオンが生成し、一方で、充電時には水酸化物イオンの4電子酸化反応により酸素が発生する。これら4電子の授受を伴う酸素還元反応(以下、「ORR」ということもある。)及び酸素発生反応(以下、「OER」ということもある。)は、速度論的に非常に遅い反応であることから充放電時に大きな過電圧が生じるため、ORR/OERを促進し得る高活性触媒が必要である。
【0004】
具体的に、金属空気電池の各電極における充電反応及び放電反応は、以下の(1)~(4)式のとおりである。なお、(1)~(4)式においては、便宜のため、負極として亜鉛を用いた例を示している。
(正極)
充電反応(酸素発生反応):4OH→O2+2H2O+4e ・・・(1)
放電反応(酸素還元反応):O2+2H2O+4e→4OH ・・・(2)
(負極)
充電反応:ZnO+H2O+2e→Zn+2OH ・・・(3)
放電反応:Zn+2OH→ZnO+H2O+2e ・・・(4)
【0005】
ここで、金属空気電極においては、電解液として高濃度KOH水溶液の強アルカリ水溶液等を用いて、上記(1)、(4)式に関与する水酸化物イオンを供給する。そして、正極触媒は強アルカリ水溶液に浸漬されるため、優れた化学的安定性(特に、アルカリ耐久性)が求められる。
【0006】
正極触媒として、白金、酸化ルテニウム、酸化イリジウム等の貴金属系触媒が高いORR/OER活性を示すことが知られている。しかしながら、これらに含まれる貴金属は稀少で高価であることから自動車用蓄電池等の大規模な実用化は困難である。したがって、遷移金属等、資源的に豊富な元素を主成分とする汎用的な高性能ORR/OER活性を示す正極触媒の開発が強く望まれている。
【0007】
近年では、正極触媒として、ペロブスカイト(ABO3)型遷移金属酸化物の開発が進められている。これまで、ペロブスカイトABO3構造における六配位(BO6)八面体のBサイトのエネルギー準位がt2g及びegに分裂した際、eg電子数が1でORR/OER活性が極大となることが報告されている(例えば、非特許文献3、4)。このように正極触媒として、これまでBO6八面体配位構造を有するペロブスカイト型酸化物が主として研究されてきたが、他の金属-酸素配位構造を持つ化合物群については殆ど研究されておらず、それら以外に有用な材料は見出されていない。
【0008】
一方で、金属空気電池には、上述した電気自動車以外にも、正極について柔軟な設計が可能となれば多数の分野への応用が拓ける可能性もある。
【先行技術文献】
【0009】

【非特許文献1】F.Cheng,J.Chen,Chem.Soc.Rev.,41,2172-2192(2012).
【非特許文献2】Y.Li,H.Dai,Chem.Soc.Rev.43,5257-5275(2014).
【非特許文献3】J.Suntivich,H.A.Gasteiger,N.Yabuuchi,H.Nakanishi,J.B.Goodenough,Y.S.-Horn,Nat.Chem.,3,546-550(2011).
【非特許文献4】J.Suntivich,K.J.May,H.A.Gasteiger,J.B.Goodenough,Y.S.-Horn,Science,334,1383-1385(2011).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上のような実情に鑑みてなされたものであり、例えば金属空気電池等に用いることができ、酸化還元活性に優れ、柔軟な設計が可能な新たな触媒物質を備える電極を提供することを目的とするものである。
【0011】
本発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、酸素発生反応における触媒材料として、鉄元素を含む第1触媒と、コバルト元素及び/又はニッケル元素を含む第2触媒と、を備え、第1触媒と第2触媒とを有する電極が触媒活性に優れ、しかもそれら2種の触媒を離間しても優れた触媒活性を有すること、及びこのように2種の触媒を離間させることで柔軟に電極の構成を設計できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明は、以下のものを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明の第1の発明は、鉄元素を含む第1触媒と、コバルト元素及び/又はニッケル元素を含む第2触媒と、を備え、前記第1触媒と、前記第2触媒とが、互いに離間して配置される、電極である。
【0013】
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記第1触媒と、前記第2触媒とが、共通の電解質溶液に浸漬されて用いられる、電極である。
【0014】
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、酸素発生反応のための電極である。
【0015】
(4)本発明の第4の発明は、第1又は第2の発明において、金属空気電池における正極反応のための電極である。
【0016】
(5)本発明の第5の発明は、第1又は第2の発明に係る電極を正極として含む金属空気電池である。
【0017】
(6)本発明の第6の発明は、第5の発明において、電解質として、電解質溶液をさらに含み、前記第2触媒の近傍から前記第1触媒の近傍に向けて前記電解質溶液を流動させる流動機構をさらに備える、金属空気電池である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、例えば金属空気電池等に用いることができ、酸化還元活性に優れ、柔軟な設計が可能な新たな触媒物質を備える電極を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る空気金属電池の断面図である。
【図2】実施例で用いた回転リングディスク電極の模式図であり、(a)は回転リングディスク電極の中心軸を含む縦断面図、(b)は回転リングディスク電極の上面図である。
【図3】(a)コバルトディスク電極/鉄リング電極のOERにおける電流密度-電位曲線図である。(b)コバルトディスク電極/鉄リング電極のOERにおけるTafelプロットである。
【図4】第2サイクルのみ同期した場合の全5サイクルのコバルトディスク電極/鉄リング電極の鉄のOERにおける電流密度-電位曲線図である。
【図5】(a)鉄ディスク電極/コバルトリング電極のOERにおける電流密度-電位曲線図である。(b)鉄ディスク電極/コバルトリング電極のOERにおけるTafelプロットである。
【図6】(a)ニッケルディスク電極/鉄リング電極のOERにおける電流密度-電位曲線図である。(b)ニッケルディスク電極/鉄リング電極のOERにおけるTafelプロットである。
【図7】(a)鉄ディスク電極/ニッケルリング電極のOERにおける電流密度-電位曲線図である。(b)鉄ディスク電極/ニッケルリング電極のOERにおけるTafelプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において適宜変更を加えて実施することができる。

【0021】
<1.電極>
本実施形態に係る電極は、鉄元素を含む第1触媒と、コバルト元素及び/又はニッケル元素を含む第2触媒と、を備え、第1触媒と、第2触媒とが、互いに離間して配置される。このような電極において、第1触媒及び第2触媒は、電極触媒として作用するものである。そして、このような電極は高い触媒活性、特に、金属空気電池における正極反応において高いOER活性及びORR活性を有する。

【0022】
上述した電極が高いOER活性及びORR活性を有する理由は必ずしも明らかではなく、また、必ずしもここに示すメカニズムを経由するか否かは明らかではないが、本発明者らは以下のように考えている。

【0023】
上記(1)式の酸素発生反応は、以下の(1-1)式及び(1-2)式の2つの素反応式に分解されると考えられる。すなわち、これらの素反応のいずれもが進行してはじめて、(1)式の酸素発生反応が進行する。なお、以下においては、便宜上、これら(1-1)式及び(1-2)式の反応をそれぞれ「酸素発生第1素反応」及び「酸素発生第2素反応」と呼ぶ。
酸素発生第1素反応:3OH→HO2+H2O+2e ・・・(1-1)
酸素発生第2素反応:HO2+OH→O2+2H2O+2e ・・・(1-2)

【0024】
鉄イオン(Fe3+)は、酸素発生第1素反応に活性を有しないが、酸素発生第2素反応に極めて高い触媒活性を有する。一方で、コバルトイオン(Co2+,Co3+)又はニッケルイオン(Ni2+,Ni3+)は、酸素発生第1素反応及び酸素発生第2素反応のいずれにも高い触媒活性を有する。したがって、これら2つの触媒を組み合わせることで、酸素発生第1素反応に際しては、コバルトイオンやニッケルイオンの高い触媒活性が寄与し、酸素発生第2素反応に際しては、鉄イオンの非常に高い触媒活性が寄与するものと考えられる。

【0025】
そして、本発明者らはこのような電極触媒において、単に電解質溶液を介して鉄イオンとコバルトイオン又はニッケルイオンとが共存していればよく、鉄元素と、コバルト元素又はニッケル元素との間に生じる何らかの相互作用(例えば鉄元素とコバルト元素やニッケル元素とが複合して特定の結晶構造を構成する等)は一切必要ない。したがって、鉄元素とコバルト元素又はニッケル元素とを複合して、例えば合金化や複合酸化物化するための合成を行う必要はなく、安価な鉄化合物等やコバルト化合物等又はニッケル化合物等を採用し得る。また、第1触媒及び第2触媒それぞれを離間して配置させることができることから、単一化合物を用いる従来の電極と比較して、より自由で柔軟な電極構造の設計が可能となる。

【0026】
第1触媒及び第2触媒の性状は、固体状であれば特に限定されず、粉末状、棒状、板状、筒状、塊状等であってよい。ただし、第1触媒及び第2触媒に、液体状及び溶液状のものは包含されない。なお、第2触媒において、コバルト化合物及びニッケル化合物が混合、複合し、又はコバルト元素及びニッケル元素が合金や複合酸化物等を形成しているものを用いることもできる。

【0027】
第1触媒に含まれる鉄元素の状態としては、特に限定されず、例えば、金属鉄、塩化鉄、硝酸鉄、酸化鉄、水酸化鉄等(鉄化合物等」ということがある。)あらゆる状態のものを用いることもできる。当該第1触媒を用いて電池を構成する場合には、その電池の通電等により、第1触媒に含まれる鉄イオンの価数を制御することができるためである。以上の鉄化合物等は、1種を単独で用いることができ、また複数種を組み合わせて用いることができる。また、第1触媒は、コバルト元素及びニッケル元素以外のあらゆる元素を含んでいてもよい。第1触媒にはコバルト元素及びニッケル元素が含まれないが、第1触媒の質量に対し5質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0.05質量%以下の不可避的不純物として、コバルト元素及びニッケル元素を含む(合計量)ことができる。また、第1触媒が、第2触媒とともに電解質溶液に浸漬して使用される場合には、これにより第2触媒がその表面に付着し得るが、このようにして意図せずに付着したコバルト元素やニッケル元素までを排除するものではない。

【0028】
第2触媒に含まれるコバルト元素の状態としては、特に限定されず、例えば、金属コバルト、塩化コバルト、硝酸コバルト、酸化コバルト、水酸化コバルト等(「コバルト化合物等」ということがある。)あらゆる状態のものを用いることができる。当該第2触媒を用いて電池を構成する場合には、その電池の通電等により、第2触媒に含まれるコバルトイオンの価数を制御することができるためである。以上のコバルト化合物等は、1種を単独で用いることができ、また複数種を組み合わせて用いることもできる。また、第2触媒は、鉄元素以外のあらゆる元素を含んでいてもよい。第2触媒には鉄元素が含まれないが、第2触媒の総質量に対し5質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0.05質量%以下の不可避的不純物として、鉄元素を含むことができる。また、第2触媒が、第1触媒とともに溶液に浸漬して使用される場合には、これにより第1触媒がその表面に付着し得るが、このようにして意図せずに付着した鉄元素までを排除するものではない。

【0029】
第2触媒に含まれるニッケル元素の状態としては、特に限定されず、例えば、金属ニッケル、塩化ニッケル、硝酸ニッケル、酸化ニッケル、水酸化ニッケル等(「ニッケル化合物等」ということがある。)あらゆる状態のものを用いることができる。当該第2触媒を用いて電池を構成する場合には、その電池の通電等により、第2触媒に含まれるニッケルイオンの価数を制御することができるためである。以上のニッケル化合物等は、1種を単独で用いることができ、また複数種を組み合わせて用いることもできる。また、第2触媒は、鉄元素以外のあらゆる元素を含んでいてもよい。

【0030】
また、第1触媒及び第2触媒の具体的な組み合わせも特に限定されず、本実施形態の電極が、第1触媒及び第2触媒のあらゆる組み合わせ(特に、上述した第1触媒として用いることができる具体的な鉄化合物等と、第2触媒として用いることができる具体的なコバルト化合物等やニッケル化合物等のあらゆる組み合わせ)を包含することができる。

【0031】
ここで、「離間」とは、第1触媒及び第2触媒の固体部分が直接接触せずに一定の間隔を隔てて存在することを意味している。第1触媒及び第2触媒は、それらの一部が、例えば筐体や壁等によって区画されていてもよいが、少なくとも一部は、両者が共通した電解質溶液に浸漬されていることを要する。

【0032】
なお、電解質溶液としては、この電極の各用途に適したものを適宜選択することができる。具体的に、金属空気電極の場合にはアルカリ水溶液を用い、光触媒反応やCO2の電気化学的還元の場合には中性又はその付近の水溶液を用いることができる。

【0033】
第1触媒に含まれる鉄元素と第2触媒に含まれるコバルト及び/又はニッケルの含有量の比(Fe:Co及びNiの合計量)としては、特に限定されないが、モル比で0.01:0.99~0.99:0.01であることが好ましく、0.05:0.95~0.95:0.05であることがより好ましい。なお、鉄元素の含有量と、コバルト元素及びニッケル元素の合計含有量との比(Fe:Co及びNiの合計量)についての「A:B~C:D」(A,B,C,Dは任意の数)とは、鉄元素の含有量がA以上C以下の範囲、コバルト元素及びニッケル元素の合計含有量の比がD以上B以下の範囲で且つ鉄元素とコバルト元素とニッケル元素との和が1となる比をいう。また、鉄元素の含有量とコバルト元素及びニッケル元素の合計含有量との比は、第1触媒及び第2触媒それぞれを酸溶液に溶解させ、その溶液についてICP発光分光分析を行うことにより算出する。

【0034】
さて、電極触媒の触媒能の指標として、Tafel勾配が用いられることがある。このTafel勾配は、電流を1桁変えるために要する電圧であり、この値が小さいほど電極触媒としての性能が高い。従来用いられているCo系ペロブスカイトを用いた正極触媒の酸素発生反応のTafel勾配は約60mV・dec-1であるが、本実施形態の第1触媒及び第2触媒の2種の電極触媒を組み合わせた電極においては、最小で、この60mV・dec-1を下回る優れた触媒活性を示す。

【0035】
本発明の電極は、上述した第1電極及び第2電極を備えるものであれば、本発明の効果を損なわない範囲において、他の材料を含むことができる。具体的には、導電助剤、接着剤、プロトン伝導体等の各種材料を含むことができる。導電助剤としては、例えば、グラファイト(カーボンブラック)等を用いることができる。また、接着剤及びプロトン伝導体としては、ナフィオン(登録商標)を用いることができる。なお、触媒は、本発明の効果を損なわない範囲において、不純物を含むこともできる。

【0036】
このように、上述した電極は、酸素発生反応及び酸素還元反応の触媒能に優れる。特に、酸素発生反応の触媒能に極めて優れ、貴金属触媒RuO2をも凌駕する触媒能を示し得る。以上では、主として空気金属電池の正極としての用途について説明したが、本発明の電極は、空気電池における酸素発生反応触媒や酸素還元反応触媒用の電極に限られず、他の酸素発生反応触媒や酸素還元反応触媒用の電極として用いることができる。なお上述したとおり、本発明の電極は、特に酸素発生反応用電極として高い触媒活性を有している。また、酸素発生反応用電極のみ、又は酸素還元反応用電極のみに用いることもでき、酸素発生反応及び酸素還元反応用電極両方に用いることもできる。具体的な用途としては、例えば、酸素発生反応用電極として、水を分解して水素を製造する光触媒の助触媒、CO2の電気化学的還元、水のアルカリ電解、電解めっき、電気防食等にも用いることができる。

【0037】
<2.正極>
本実施の形態に係る正極は、上述した第1触媒及び第2触媒を活物質として、それぞれ離間した構成で備えることを特徴とするものである。

【0038】
第1触媒及び第2触媒の配置としては、第1触媒及び第2触媒が離間していれば特に限定されない。

【0039】
正極には、本発明の効果を損なわない範囲において、他の材料を含むことができる。具体的には、導電助剤、接着剤、プロトン伝導体等の各種材料を含むことができる。導電助剤としては、例えば、グラファイト(カーボンブラック)等を用いることができる。また、接着剤及びプロトン伝導体としては、ナフィオン(登録商標)を用いることができる。

【0040】
<3.金属空気電池>
本実施の形態に係る金属空気電池は、上述した正極触媒を備えることを特徴とするものである。そして、このような金属空気電池は、充放電特性が高く、また、耐久性が高い。

【0041】
以下、具体的な金属空気電池の構成を、図を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る空気金属電池の断面図である。金属空気電池10は、上述した正極触媒を備えてなる正極1と、負極2と、電解質3とを備える。そして、正極1は、第1触媒を備える第1正極11と、第2触媒を備える第2の正極12とからなるものであり、第1正極11と、第2正極12とは、空間を隔てて離間しており、且つ第1触媒及び第2触媒は相互に接触していないが、それらの一部はいずれも電解質3に浸漬している。

【0042】
この金属空気電池10において、第1正極11及び第2正極12は、それぞれ負極2と、電解質3を隔てて対向するように配置されている。

【0043】
図示しないが、一実施形態において、第1正極11及び第2正極12のそれぞれは、正極触媒層(第1正極11では第1触媒層、第2正極では第2触媒層)及びガス拡散層により構成されている。ここで、正極触媒層はガス拡散層の電解質3側に、ガス拡散層は電解質と反対側にそれぞれ形成されている。なお、ガス拡散層は必須の態様ではない。

【0044】
正極触媒層は、上述したとおり、第1正極11では第1触媒、第2正極では第2触媒を備えて構成される。正極触媒層は、例えば、担体や後述するガス拡散層上に、スラリーコート法、スプレーコート法、焼成法等の方法によって形成することができる。

【0045】
ガス拡散層としては、導電性と通気性を併せ持つ材料であれば特に限定されず、例えば、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルト、金属メッシュ等を用いることができる。

【0046】
負極2は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第一遷移金属、亜鉛及びアルミニウムから選ばれる元素を含む負極活物質を含有する負極層で構成されている。アルカリ金属としては、例えば、Li、Na、K等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、例えば、Mg、Ca等が挙げられる。第一遷移金属としては、例えば、Fe、Ti、Ni、Co、Cu、Mn、Cr等が挙げられる。負極活物質としては、上述した元素から構成される金属、合金及び化合物等を用いることができる。負極活物質として用いることができる化合物としては、具体的には、上述した元素の酸化物、窒化物、炭酸塩等が挙げられる。

【0047】
電解質3は、電解質溶液であって、例えばKOH水溶液、NaOH水溶液、LiOH水溶液等、アルカリ水溶液等を用いることができる。この電解質溶液のアルカリの濃度としては、特に限定されず、例えば、水酸化物イオンの濃度([OH])が、1~10mol/L以上であることが好ましい。

【0048】
図示しないが、一実施形態において、正極1と負極2が接触して短絡することを防ぐために、正極と負極の間に(例えば、電解質3を隔てるようにして)セパレータを備えることができる。

【0049】
セパレータとしては、電解質の移動(透過)が可能な絶縁材料であれば特に限定されず、例えば、ポリオレフィン、フッ素樹脂等の樹脂からなる不織布又は多孔質膜を用いることができる。樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンが挙げられる。電解質が水溶液である場合には、これらの樹脂は、親水性化して用いることもできる。

【0050】
電解質3として、アルカリ金属等陽性な金属を含む水溶液を用いる場合、電解質として、水系電解液と金属負極を直接接触させることができず、負極2側については有機電解液を介する必要がある。この場合、例えば、正極1と負極2の間を固体電解質にて隔て、正極1側に水系電解液、負極2側に有機電解液を配置することができる。

【0051】
電解質3としては、上述したとおり、例えばアルカリ水溶液を用いることができるが、この場合、第2触媒の近傍から第1触媒の近傍に向けてアルカリ水溶液を流動させる流動機構をさらに備えることが好ましい。上述したとおり、第2触媒は、(1-1)式の酸素発生第1素反応に活性を示す。一方、第2触媒は、(1-1)式の酸素発生第1素反応に活性を示さないが、(1-2)式の酸素発生第2素反応に高い活性を示す。したがって、アルカリ水溶液を流動させて、第2触媒近傍で発生した(1-1)式の酸素発生第1素反応で生成した活性化学種HO2を、第1触媒近傍に積極的に移送することで、第1触媒が有する極めて優れた酸素発生第2素反応に対する活性を効率的に得ることができる。

【0052】
このような金属空気電池の形状(ケースの形状)としては、特に限定されるものではなく、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型等の形状のものを用いることができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0054】
<試料の作製>
〔電極構造〕
BAS社の回転リングディスク電極を用いて触媒試料を作製した。以下、図を用いて具体的に説明する。図2は、実施例で用いた回転リングディスク電極の模式図であり、図2(a)は回転リングディスク電極の中心軸を含む縦断面図、図2(b)は回転リングディスク電極の上面図である。この回転リングディスクは、直径4mmφのガラス状カーボンからなるディスク電極を中心として、その周囲にこれと同心円上に、厚さ0.5mmの円筒状のテフロン(登録商標)スペーサーと、厚さ1mmのリング電極と、厚さ2.5mmの円筒状のPEEK(Poly Ether Ether Ketone)筒とをこの順に配置して構成されるものである。
【実施例】
【0055】
〔正極触媒〕
以下に示す方法により、正極触媒としての試料を作製した。原料としては、以下のものを用いた。なお、Fe(NO33、Co(NO32、Ni(NO32、KOHは純水に溶解させてそれぞれの濃度に調整して用いた。NH3水は純水で濃度を調整して用いた。
Fe源:Fe(NO33・9H2O(純度99.9%,富士フイルム和光純薬株式会社)
Co源:Co(NO32・6H2O(純度99.9%,株式会社高純度化学研究所)
Ni源:Ni(NO32・6H2O(純度99.95%,関東化学株式会社)
OH源:NH3水(純度28%,富士フイルム和光純薬株式会社)
KOH(純度85%,富士フイルム和光純薬株式会社)
【実施例】
【0056】
(鉄触媒:第1触媒)
Fe 0.1Mを含有する金属源水溶液を、40℃、500rpmで加熱攪拌しながら、アルカリ水溶液として28%のNH3水溶液を、金属源水溶液の20体積%となるように加えて沈殿を形成させた。得られた沈殿を洗浄・回収し、80℃で乾燥させて粉末試料を得た。
【実施例】
【0057】
(コバルト触媒:第2触媒)
Co 0.1Mを含有する金属源水溶液を、40℃、500rpmで加熱攪拌しながら、アルカリ水溶液として28%のNH3水溶液を、金属源水溶液の20体積%となるように加えて沈殿を形成させた。得られた沈殿を洗浄・回収し、80℃で乾燥させて粉末試料を得た。
【実施例】
【0058】
(ニッケル触媒:第2触媒)
Ni 0.1Mを含有する金属源水溶液を、40℃、500rpmで加熱攪拌しながら、アルカリ水溶液として4MのKOH水溶液を、金属源水溶液の20体積%となるように加えて沈殿を形成させた。得られた沈殿を洗浄・回収し、80℃で乾燥させて粉末試料を得た。
【実施例】
【0059】
〔電極への塗布〕
試料は、インク状にして作用電極上に塗布し、評価を行った。以下、具体的に説明する。
【実施例】
【0060】
(カーボンの前処理)
カーボンの前処理として、アセチレンブラック(Acetylene carbon black,99.99%,STREM CHEMICALS)を硝酸中で30分間超音波分散させた後、80℃で一晩加熱撹拌子し、ろ過乾燥後、粉砕した。
【実施例】
【0061】
(インク用溶媒の作製)
5%ナフィオン(商標登録)分散液(和光純薬工業)を水酸化ナトリウム・エタノール(EtOH)溶液で中和し、得られた中和液とエタノールを3:47の体積比で混合してインク用溶媒とした。
【実施例】
【0062】
(インクの作製)
サンプル瓶にインク用溶媒:アセチレンブラック:触媒(酸化物試料)=5mL:10mg:50mgの比で入れ、超音波分散させた。
【実施例】
【0063】
(作用電極へのインク塗布)
超純水とEtOHで洗浄したグラッシーカーボンリングディスク電極において、ディスク電極には126μL(触媒量:0.126mg)、リング電極には18.9μL(触媒量:0.189mg)インクを滴下し、完全に乾燥させた。ディスク電極に鉄触媒、リング電極にニッケル触媒をそれぞれ塗布した電極と、ディスク電極にニッケル触媒、リング電極に鉄触媒をそれぞれ塗布した電極とを構成した。
【実施例】
【0064】
<OER活性の評価>
対流ボルタンメトリー(Rotating Ring Disk Electrode,RRDE)法により、上述のようにして作製した作用電極試料のOER活性の評価を行った。回転電極装置(RRDE-3A,BAS製)の作用電極を1600rpmで回転させ、マルチチャンネルポテンショスタット(SP-300,Bio-Logic製)と接続し、電解液に4MのKOH水溶液を用い、サイクリックボルタンメトリー(CV)測定を行った。電極としては、以下のものを使用した。
作用電極(WE):「試料の作製」において作製した作用電極試料
対電極(CE):コイル状白金(Pt)電極
参照電極(RE):アルカリ用参照電極(Hg/HgO/4M KOH)
【実施例】
【0065】
(サイクリックボルタンメトリー(CV)測定)
サイクリックボルタンメトリー測定は次の手順に従って、適時酸素ガスフローを行った後に開始した。
【実施例】
【0066】
後述するそれぞれの回転リングディスク電極について、測定対象であるディスク電極の電位を走査し、同時にリング電極を測定開始時の開回路電位に保持してサイクリックボルタンメトリー測定を行い、同様にリング電極の電位を走査し、同時にディスク電極を測定開始時の開回路電位に保持してサイクリックボルタンメトリー測定を行った(この場合を、「独立CV」という)。この独立CVにおいて開回路電位は、それぞれFe:1.1V,Co:0.94V,Ni:1.0VvsRHEに設定した。また、それぞれの回転リングディスク電極について、両方の電極を同時に走査してサイクリックボルタンメトリー測定を行った(この場合を、「同期CV」という。)
【実施例】
【0067】
より具体的に、このときの測定条件は以下の通りである。
(1)クリーニング(cleaning)測定(in O2
クリーニング条件:0.176V~-0.324V vs.Hg/HgO,50mV/s,30cycles
(2)第1サイクル リング:CV・ディスク:定電位測定(独立CV)(in O2
ディスク電位:0VvsOCP(開回路電位)
リングCV条件:-0.324V~0.776V vs.Hg/HgO,2mV/s,1 cycle
(3)第2サイクル リング:CV・ディスク:CV測定(同期CV)(in O2
リング・ディスクCV条件:-0.324V~0.776V vs.Hg/HgO,2mV/s,1 cycle
(4)第3サイクル リング:CV・ディスク:定電位測定(独立CV)(in O2
ディスク電位:0VvsOCP(開回路電位)
リングCV条件:-0.324V~0.776V vs.Hg/HgO,2mV/s,3 cycles
(5)第4サイクル リング:定電位・ディスク:CV測定(独立CV)(in O2
リング電位:0VvsOCP(開回路電位)
ディスクCV条件:-0.324V~0.776V vs.Hg/HgO,2mV/s,3 cycles
(6)第5サイクル リング:定電位・ディスク:CV測定(独立CV)(in O2
リング電位:0VvsOCP(開回路電位)
ディスクCV条件:-0.324V~0.776V vs.Hg/HgO,2mV/s,3 cycles
【実施例】
【0068】
以上のようにして得られたデータから、電位と電流密度の関係を図示し、触媒活性を評価した。なお、電位(電圧値)については可逆水素電極(Reversible hydrogen electrode,RHE)電位に換算した(U vs.RHE=U vs Hg/HgO+0.924V)。
【実施例】
【0069】
<コバルトディスク電極/鉄リング電極の評価結果>
ディスク電極にコバルト酸水酸化物を、リング電極に鉄酸水酸化物をそれぞれ塗布した回転リングディスク電極について、OER活性を測定した。
【実施例】
【0070】
図3(a)は、コバルトディスク電極/鉄リング電極のOERにおける電流密度-電位曲線図である。また、図3(b)は、コバルトディスク電極/鉄リング電極のOERにおけるTafelプロットである。なお、図3(a)、(b)においては、第1サイクルの結果を示している。
【実施例】
【0071】
図3(b)に示したTafelプロットより、独立CV及び同期CVのそれぞれの場合において、鉄及びコバルトのそれぞれについて、Tafel勾配を算出し、表1に示した。
【実施例】
【0072】
【表1】
JP2021011627A_000003t.gif
【実施例】
【0073】
表1から分かるように、鉄リング電極を、コバルトディスク電極と同時に走査することにより、Tafel勾配が大幅に低下した。このことから、鉄リング電極とコバルトディスク電極との相乗効果が確認された。
【実施例】
【0074】
また、図4は、5サイクル全てのコバルトディスク電極/鉄リング電極の鉄リング電極のOERにおける電流密度-電位曲線図である。
【実施例】
【0075】
各サイクルのコバルトディスク電極/鉄リング電極の鉄リング電極のTafelプロット(図示せず)より、各サイクルにおいて、鉄について、Tafel勾配を算出し、表2に示した。
【実施例】
【0076】
【表2】
JP2021011627A_000004t.gif
【実施例】
【0077】
表2より、第2サイクルで同期CVを行った場合には、第1サイクルに比べてTafel勾配が低下するが、その後、第5サイクルまで独立CVを繰り返すと、第1サイクルと同等まで、Tafel勾配が増大することが分かった。このことから、第2サイクルにおいてTafel勾配が低下したのは、触媒の変質(例えば、鉄及びコバルトの間での化合物の形成)ではなく、電極中の鉄イオン及びコバルトイオンが同時にOER環境下で機能することで相乗効果的に高いOER活性が得られたことが分かった。
【実施例】
【0078】
<鉄ディスク電極/コバルトリング電極の評価結果>
ディスク電極に鉄酸水酸化物を、リング電極にコバルト酸水酸化物をそれぞれ塗布した回転リングディスク電極について、OER活性を測定した。
【実施例】
【0079】
図5(a)は、鉄ディスク電極/コバルトリング電極のOERにおける電流密度-電位曲線図である。また、図5(b)は、鉄ディスク電極/コバルトリング電極のOERにおけるTafelプロットである。なお、図5(a)、(b)においては、第1サイクルの結果を示している。
【実施例】
【0080】
図5(b)に示したTafelプロットより、独立CV及び同期CVのそれぞれの場合において、鉄及びコバルトのそれぞれについて、Tafel勾配を算出し、表3に示した。
【実施例】
【0081】
【表3】
JP2021011627A_000005t.gif
【実施例】
【0082】
表3から分かるように、鉄ディスク電極/コバルトリング電極の場合でも、Co系ペロブスカイトを用いた正極触媒の酸素発生反応のTafel勾配の値と同等のTafel勾配を達成することはできたが、コバルトディスク電極/鉄リング電極のように、鉄イオン及びコバルトイオンの相乗効果は確認されなかった。
【実施例】
【0083】
本実験装置では、円筒状の容器に電解質たるKOH水溶液を充填し、その円筒の中心軸に沿って、水面の上方からリングディスク電極の先端を浸漬し、リングディスク電極を回転させることでKOH水溶液を撹拌している。このような実験装置では、リングディスク電極の回転によって、溶液がリングディスク電極の中心軸から、外方の容器内壁へ向かう流れが生じる。コバルトディスク電極/鉄リング電極の場合には、コバルトディスク電極すなわち容器中心軸近傍で何らかの反応中間体が生じる。この反応中間体は、(1)式の酸素発生反応と併せて(1-1)式の酸素発生第1素反応が生じて生成する、HO2であると考えられる。このようにして生成したHO2は、撹拌によって生じたKOH水溶液の流れによって外方の容器内壁へ流される。コバルトディスク電極の外方に配置された鉄リング電極は(1-2)式の酸素発生第2素反応について非常に高い活性を有しているので、HO2が供給されて、(1-2)式の酸素発生第2素反応が進行し、合計4電子(e)を放出する(1)式の反応が効率的に進行する。これに対し、鉄ディスク電極/コバルトリング電極の場合には、鉄が(1-1)式の酸素発生第1素反応に活性を有しないので、鉄ディスク電極すなわち容器中心軸近傍で(1-1)式の酸素発生第1素反応は生じず、外方のコバルトリング電極で(1-1)式の酸素発生第1素反応が生じる。コバルトリング電極でもより容器外方への流れが生じているので、(1-1)式の酸素発生第1素反応により、コバルトリング電極近傍に発生したHO2は、容器中心軸近傍に存在する鉄ディスク電極には移送されず、(1-2)式の酸素発生第2素反応についての鉄の極めて高い触媒活性を活かすことができない。
【実施例】
【0084】
<ニッケルディスク電極/鉄リング電極の評価結果>
ディスク電極にニッケル酸水酸化物を、リング電極に鉄酸水酸化物をそれぞれ塗布した回転リングディスク電極について、OER活性を測定した。
【実施例】
【0085】
図6(a)は、ニッケルディスク電極/鉄リング電極および鉄ディスク電極/ニッケルリング電極のOERにおける電流密度-電位曲線図である。また、図6(b)は、ニッケルディスク電極/鉄リング電極および鉄ディスク電極/ニッケルリング電極のOERにおけるTafelプロットである。なお、図6(a)、(b)においては、第1サイクルの結果を示している。
【実施例】
【0086】
図6(b)に示したTafelプロットより、独立CV及び同期CVのそれぞれの場合において、鉄及びニッケルのそれぞれについて、Tafel勾配を算出し、表4に示した。
【実施例】
【0087】
【表4】
JP2021011627A_000006t.gif
【実施例】
【0088】
表4から分かるように、鉄リング電極を、ニッケルディスク電極と同時に走査することにより、Tafel勾配が低下した。このことから、鉄リング電極とニッケルディスク電極との相乗効果が確認された。
【実施例】
【0089】
<鉄ディスク電極/ニッケルリング電極の評価結果>
ディスク電極に鉄酸水酸化物を、リング電極にニッケル酸水酸化物をそれぞれ塗布した回転リングディスク電極について、OER活性を測定した。
【実施例】
【0090】
図7(a)は、鉄ディスク電極/ニッケルリング電極のOERにおける電流密度-電位曲線図である。また、図7(b)は、鉄ディスク電極/ニッケルリング電極のOERにおけるTafelプロットである。なお、図7(a)、(b)においては、第1サイクルの結果を示している。
【実施例】
【0091】
図7(b)に示したTafelプロットより、独立CV及び同期CVのそれぞれの場合において、鉄及びニッケルのそれぞれについて、Tafel勾配を算出し、表5に示した。
【実施例】
【0092】
【表5】
JP2021011627A_000007t.gif
【実施例】
【0093】
鉄ディスク電極/ニッケルリング電極においても、鉄ディスク電極/コバルトリング電極と同様に、同期CVを行った場合において、鉄のTafel勾配が、独立CVを行った場合と比較して、低下しない傾向が確認された。
【符号の説明】
【0094】
1 正極
11 第1正極
12 第2正極
2 負極
3 電解質
10 金属空気電極

Drawing
(In Japanese)【図1】
0
(In Japanese)【図2】
1
(In Japanese)【図3】
2
(In Japanese)【図4】
3
(In Japanese)【図5】
4
(In Japanese)【図6】
5
(In Japanese)【図7】
6