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明細書 :レナリドマイド誘導体及び医薬組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2021-020873 (P2021-020873A)
公開日 令和3年2月18日(2021.2.18)
発明の名称または考案の名称 レナリドマイド誘導体及び医薬組成物
国際特許分類 C07D 401/04        (2006.01)
A61K  31/454       (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P  37/02        (2006.01)
A61P  35/02        (2006.01)
C07K  14/47        (2006.01)
FI C07D 401/04 CSP
A61K 31/454
A61P 35/00
A61P 37/02
A61P 35/02
C07K 14/47 ZNA
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 21
出願番号 特願2019-138216 (P2019-138216)
出願日 令和元年7月26日(2019.7.26)
発明者または考案者 【氏名】箱嶋 敏雄
【氏名】柴田 哲男
出願人 【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100124431、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 順也
【識別番号】100174160、【弁理士】、【氏名又は名称】水谷 馨也
【識別番号】100175651、【弁理士】、【氏名又は名称】迫田 恭子
審査請求 未請求
テーマコード 4C063
4C086
4H045
Fターム 4C063AA01
4C063BB02
4C063CC11
4C063DD07
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC22
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB07
4C086ZB26
4C086ZB27
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA19
4H045CA40
4H045EA50
4H045FA74
4H045GA23
4H045GA26
要約 【課題】本発明の目的は、CRBNとIKZF1との相互作用を高め得る新規免疫調節薬を提供することを目的とする。
【解決手段】レナリドマイドのアミノイソインドリノン環の6位に水酸基を結合させた6-ヒドロキシレナリドマイドは、CRBNとIKZF1との相互作用を高めることができ、血液がんの治療に使用できる。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
下記構造式(A)で示される6-ヒドロキシレナリドマイド、その塩、又はその溶媒和物。
【化1】
JP2021020873A_000013t.gif

【請求項2】
請求項1に記載の6-ヒドロキシレナリドマイド、その塩、又はその溶媒和物を含む、医薬組成物。
【請求項3】
血液がんの治療に使用される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
血液がんが、多発性骨髄腫、骨髄異形性症候群、又は急性骨髄性白血病である、請求項3に記載の医薬組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、CRBNとIKZF1との相互作用を高め得るレナリドマイド誘導体に関する。また、本発明は、当該レナリドマイド誘導体を使用した医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫調節薬(Immunomodulatory drugs, 以下IMiDs)は、多発性骨髄腫、骨髄異形性症候群、急性骨髄性白血病等の血液のがん関連の治療に臨床応用されている。IMiDsはサリドマイド(thalidomide)を基本化学構造とした薬剤であり、現在、第2世代IMiDsとしてレナリドマイド(lenalidomide)、第3世代IMiDsとしてポマリドマイド(pomalidomide)が販売されており、これら3つの薬剤を組み合わせて処方されている(例えば、非特許文献1~4)。また、次世代のIMiDsとしてCC-220等の開発が進んでいる(非特許文献5)。
【0003】
IMiDsの歴史は、60年余り前のサリドマイドの開発と薬禍、そして再評価まで遡る(非特許文献1~4)。簡単に述べると、サリドマイドは、1957年から睡眠剤又はつわりの鎮静剤として処方されたが、1960年代には妊婦への処方で催奇性(アザラシ肢症)が見つかり、市場から引き上げられた。その後、サリドマイドは、1990年代に入ってからハンセン病の結節性紅斑の治療薬や多発性骨髄腫に対する抗がん剤等としての新たな薬効が見つかり、薬理学的な研究の結果、免疫調節薬、IMiDs、と呼ばれるようになった。2010年には、サリドマイドやIMiDsが直接結合するタンパク質がセレブロン(cereblon、CRBN)であることが発見されて、基礎研究とともに薬剤開発に拍車がかかった(非特許文献6)。IMiDsがCRBNにどのように結合するのかは、複合体の結晶構造解析で明らかにされている(非特許文献7~9)。これらの研究により、IMiDのCRBNへの結合様式の基本は共通しており、IMiDのグルタルイミド環がCRBNのTri-Trp ポケットと呼ばれる疎水性ポケットに結合するとともに、もう一方の二員環(サリドマイドのフタルイミド環やレナリドマイド等のアミノイソインドリノン環)がCRBN表面に突き出している。更に、IMiDsがCRBNに結合することによって、CRBNが標的タンパク質に特異的に結合してそのタンパク質分解を促進することが薬理作用の基本機構であることも解明されている。現在、このIMiD結合依存的なCRBN標的タンパク質には数種類が知られており、異なる疾病に対して異なる標的タンパク質があると考えられている。
【0004】
多発性骨髄腫におけるCRBN標的タンパク質は、転写因子であるイカロス(Ikaros、IKZF1)とアイオロス(Aiolos、IKZF3)であることが解明されている(非特許文献10及び11)。これらは、イカロスファミリ-の亜鉛-フィンガ-型転写因子に属しており、IKZF1からIKZF5の5つのメンバ-があるが、IMiD結合依存的なCRBN標的タンパク質になり得るのはIKZF1とIKZF3のみである。更に、骨髄異形成症候群のCRBN標的タンパク質であるCK1α(タンパク質キナ-ゼ)や、急性骨髄性白血病のCRBN標的タンパク質GSPT1(翻訳終結因子)も同定され、これらCRBN標的タンパク質とIMiDが結合したCRBNとの三者複合体結晶化して、三次元構造を決定した研究例も報告されている(非特許文献12~14)。また、最近では、催奇性を誘引するCRBN標的タンパク質として亜鉛-フィンガ-型転写因子SALL4であることが報告されている(非特許文献15)。これらの研究の結果、CRBN標的タンパク質が共通してもつβ-ヘアピンモチ-フが、CRBNのIMiD結合部位付近に直接結合して、CRBNやCRBNに結合したIMiDとの相互作用を通して、特異性が生じていることが分かってきている。また、CRBNへの結合したIMiDは、フタルイミド環(サリドマイド)やアミノイソインドリノン環(レナリドマイド等)をCRBN表面に突き出しており、標的タンパク質との相互作用、特にその特異性に重要であることも認識されるようになった。
【0005】
従来の研究では、IMiDとCRBNとCRBN標的タンパク質との三者複合体の結晶化は容易ではなく、たとえ、三者複合体が得られても、分解能(3~4 Å)が低く、詳細な相互作用解析に基づく特異性の検討を十分に行えないのが現状であった(非特許文献14及び16)。
【0006】
また、従来、5-ヒドロキシレナリドマイド、N-アセチルレナリドマイド等のレナリドマイド誘導体の代謝物は、レナリドマイドの薬理活性に寄与しないことが示唆されており(非特許文献17)、従来技術では、レナリドマイドのどの部位に着目して構造改変を行うと、レナリドマイドの薬効を高め得るかについても分かっていない。
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】森智行等、腫瘍内科16 (6)、科学評論社、566-572 (2015).
【非特許文献2】Ito, T. et al., Cell. Mol. Life Sci. 68, 1569-1579 (2011).
【非特許文献3】Ito, T. et al., Int. J. Hematol. 104,293-299 (2016).
【非特許文献4】Melchert, M. et al., Int J Biochem Cell Biol 39, 1489-1499 (2007).
【非特許文献5】Matyskiela ME. Et al., J Med Chem. 2018 Jan 25;61(2):535-542.
【非特許文献6】Ito, T. et al., Science. 2010 Mar 12;327(5971):1345-50.
【非特許文献7】Chamberlain PP. et al., Nat Struct Mol Biol. 2014 Sep;21(9):803-9.
【非特許文献8】Fischer ES. et al., Nature. 2014 Aug 7;512(7512):49-53
【非特許文献9】Mori T. et al., Sci Rep. 2018 Jan 22;8(1):1294. doi: 10.1038/s41598-018-19202-7.
【非特許文献10】Kronke J. et al., Science. 2014 Jan 17;343(6168):301-5.
【非特許文献11】Lu G. et al., Science. 2014 Jan 17;343(6168):305-9.
【非特許文献12】Kronke J. et al., Nature. 2015 Jul 9;523(7559):183-8.
【非特許文献13】Petzold G. et al., Nature. 2016 Apr 7;532(7597):127-30.
【非特許文献14】Matyskiela ME. et al., Nature. 2016 Jun 22;535(7611):252-7.
【非特許文献15】Matyskiela ME. et al., Nat Chem Biol. 2018 Oct;14(10):981-987. doi: 10.1038/s41589-018-0129-x. Epub 2018 Sep 6.
【非特許文献16】Sievers QL. et al., Science. 2018 Nov 2;362(6414). pii: eaat0572. doi: 10.1126/science.aat0572.
【非特許文献17】Nianhang C. et al., Cancer Chemother Pharmacol. 2012;69:789-797. doi 10.1007/s00280-011-1760-3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
薬剤の合理的な開発をするには、標的タンパク質とリ-ド化合物との複合体が、実験的に構造レベルで明らかになっていることが重要なポイントとなる。タンパク質の結晶化は、現在では、様々な結晶化条件を設定できる溶液キットや、微量で結晶化ができる結晶化ロボットが開発されているが、依然として、全てのタンパク質の結晶化が可能というレベルには達していない。更に、タンパク質単体ではなく、CRBN-IMiD-IKZF1複合体のように、2種類のタンパク質と小分子リガンドとの三者複合体としての結晶化は、様々な困難が発生して、複合体結晶を得るのは極めて困難であることが多い。そのため、従来、CRBNとIKZF1との相互作用を高め得る新規IMiDを開発する上で技術的障壁があった。
【0009】
そこで、本発明は、CRBNとIKZF1との相互作用を高め得る新規IMiDを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行い、結晶化に適したCRBNやIKZF1のタンパク質試料を作製して、高分解能のX線回折強度デ-タが収集できる複合体結晶を作製する方法を開発した。具体的には、ヒトCRBNのN末端側から319~427番目のアミノ酸配列からなるCRBN部分配列(CRBN(319-427))と、ヒトCRBNのN末端側から130~174番目のアミノ酸配列からなるIKZF1部分配列(IKZF1(130-174))とを作製し、これらをレナリドマイドとの三者複合体結晶を形成させ、更に大型放射光施設SPring-8にて収集して構造解析することにより、高分解能のX線回折強度デ-タを収集できた。このような手法を用いて、レナリドマイドCRBN-IKZF1の三者複合体結晶の分解能2.7 Åの構造を決定した。
【0011】
更に、本発明者等は、レナリドマイドCRBN-IKZF1の三者複合体の構造で明らかにされた相互作用の詳細を検討して、IKZF1との相互作用を増強するレナリドマイド誘導体として、レナリドマイドのアミノイソインドリノン環の6位に水酸基を結合させた6-ヒドロキシレナリドマイド(6-hydroxyl-lenalidomide)を設計した。更に、6-ヒドロキシレナリドマイドを合成して、6-ヒドロキシレナリドマイドとCRBNとIKZF1との三者複合体結晶の分解能2.5 Åで決定した。そして、6-ヒドロキシレナリドマイドとCRBNとIKZF1との三者複合体は、レナリドマイドとCRBNとIKZF1との三者複合体に比べて、CRBNとIKZF1との相互作用を高めることができ、6-ヒドロキシレナリドマイドは、薬効が向上した新規IMiDとして有用であることを見出した。また、6-ヒドロキシレナリドマイドは、実際に、血液がん細胞のアポト-シスの誘導作用や血液がん細胞におけるTNF-α産生の抑制作用を効果的に発揮し得ることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0012】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 下記構造式(A)で示される6-ヒドロキシレナリドマイド、その塩、又はその溶媒和物。
【化1】
JP2021020873A_000002t.gif
項2. 項1に記載の6-ヒドロキシレナリドマイド、その塩、又はその溶媒和物を含む、医薬組成物。
項3. 血液がんの治療に使用される、項2に記載の医薬組成物。
項4. 血液がんが、多発性骨髄腫、骨髄異形性症候群、又は急性骨髄性白血病である、項3に記載の医薬組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明の化合物(6-ヒドロキシレナリドマイド)は、CRBNとIKZF1との相互作用を高めて、これらとの三者複合体結晶を形成することができ、血液がんに対して優れた抗腫瘍効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】レナリドマイドと6-ヒドロキシレナリドマイドの化学構造式を示す図である。
【図2】Aは、レナリドマイド-IKZF1-CRBN複合体におけるレナリドマイドのスティックモデルである。スティックモデルの廻りのオミットマップはメッシュで示している。 Bは、6-ヒドロキシレナリドマイド-IKZF1-CRBN複合体におけるレナリドマイドのスティックモデルである。スティックモデルの廻りのオミットマップはメッシュで示している。 Cは、6-ヒドロキシレナリドマイド-IKZF1-CRBN複合体の全体構造である。
【図3】Aは、レナリドマイド-IKZF1-CRBN複合体において、レナリドマイド結合部位周辺の構造を示す図である。 Bは、6-ヒドロキシレナリドマイド-IKZF1-CRBN複合体において、6-ヒドロキシレナリドマイド結合部位周辺の構造を示す図である。
【図4】Aは、レナリドマイド-IKZF1-CRBN複合体の解析構造に基づいて解析した2D相互作用マップである。 Bは、6-ヒドロキシレナリドマイド-IKZF1-CRBN複合体(mol-1)の解析構造に基づいて解析した2D相互作用マップである。 Cは、6-ヒドロキシレナリドマイド-IKZF1-CRBN複合体(mol-2)の解析構造に基づいて解析した2D相互作用マップである。
【図5】Aは、レナリドマイド-IKZF1-CRBN複合体におけるCRBNのY335残基周辺の構造を示す図である。 Bは、6-ヒドロキシレナリドマイド-IKZF1-CRBN複合体におけるCRBNのY335残基周辺のクロ-ズアップビュ-である。 Cは、レナリドマイド-IKZF1-CRBN複合体において、IKZF1とCRBNとの相互作用を示す領域のクロ-ズアップビュ-である。 Dは、6-ヒドロキシレナリドマイド-IKZF1-CRBN複合体において、IKZF1とCRBNとの相互作用を示す領域のクロ-ズアップビュ-である。Eは、C及びDを重ねた図である。
【図6】6-ヒドロキシレナリドマイド存在下又は非存在下で多発性骨髄腫細胞株を24時間培養した後に、Annexine V陽性率を求めた結果を示す図である。
【図7】6-ヒドロキシレナリドマイド存在下又は非存在下で多発性骨髄腫細胞株を24時間培養した後に、Annexine V陽性細胞を検出した際のドットプロット図である。
【図8】6-ヒドロキシレナリドマイド存在下又は非存在下で白血病がん細胞株を12時間培養した後に、培養液中のTNF-α量を測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1. 6-ヒドロキシレナリドマイド
本発明の化合物は、IKZF1との相互作用を高めるレナリドマイド誘導体として新規に設計された化合物であり、下記構造式(A)で示される6-ヒドロキシレナリドマイド、その塩、又はその溶媒和物である。
【化2】
JP2021020873A_000003t.gif

【0016】
6-ヒドロキシレナリドマイドは、レナリドマイドのアミノイソインドリノン環の6位に水酸基を結合させたレナリドマイド誘導体である。

【0017】
6-ヒドロキシレナリドマイドには、S体とR体の光学異性体が存在するが、本発明において、6-ヒドロキシレナリドマイドは、S体、R体、又はこれらの混合物(ラセミ混合物等)のいずれであってもよい。

【0018】
また、6-ヒドロキシレナリドマイドは、塩の形態であってもよい。6-ヒドロキシレナリドマイドの塩としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、無機塩基との塩、有機塩基との塩、有機酸又は無機酸の酸付加塩等が挙げられる。

【0019】
また、6-ヒドロキシレナリドマイドは、水和物等の溶媒和物の形態であってもよい。

【0020】
6-ヒドロキシレナリドマイドは、例えば、従来公知のレナリドマイドの合成方法において、アミノイソインドリノン環の6位に水酸基を有するように、原料化合物や反応工程等を適宜アレンジすることにより得ることができる。

【0021】
6-ヒドロキシレナリドマイドの合成方法の一例として、以下に示す反応スキ-ムが挙げられる。
【化3】
JP2021020873A_000004t.gif

【0022】
2.医薬組成物
本発明の医薬組成物は、6-ヒドロキシレナリドマイドを含有することを特徴とする。

【0023】
本発明の医薬組成物における6-ヒドロキシレナリドマイドの含有量は、剤型、投与経路、1回当たりの投与量等に応じて、適宜設定すればよい。

【0024】
6-ヒドロキシレナリドマイドは、血液がんに対して、免疫増強、血液がん細胞のアポト-シス誘導、血液がん細胞におけるTNF-α産生抑制等の効果を示すので、本発明の医薬組成物は、血液がんに対する抗腫瘍剤(血液がんの治療剤)として使用することができる。本発明の医薬組成物の適用対象となる血液がんとしては、例えば、多発性骨髄腫、骨髄異形性症候群、成人T細胞白血病リンパ腫、急性骨髄性白血病等が挙げられる。加えて、免疫学的障害に関連するらい性結節性紅斑等に対する治療剤としても使用することができる。

【0025】
本発明の医薬組成物の投与経路については、特に制限されないが、例えば、経口投与、皮下投与、皮内投与、静脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、口腔内投与、経粘膜投与等が挙げられる。

【0026】
本発明の医薬組成物の剤型については、特に制限されないが、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、丸剤、液剤、シロップ剤等の経口投与用製剤;皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤等の注射用製剤;舌下剤、口腔貼付剤等の口腔内投与用製剤;エアゾ-ル剤等の経粘膜投与用製剤等が挙げられる。

【0027】
本発明の医薬組成物は、6-ヒドロキシレナリドマイドに加えて、所望の剤型に調製等するために、薬学的に許容される基剤及び/又は添加剤を含むことができる。このような基剤及び/又は添加剤としては、例えば、生理食塩水、緩衝液、賦形剤、崩壊剤、希釈剤、滑沢剤、着香剤、着色剤、甘味剤、矯味剤、懸濁化剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、補助剤、防腐剤、緩衝剤、結合剤、安定剤、コ-ティング剤等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。

【0028】
本発明の医薬組成物の投与量については、対象疾患の種類や症状の程度、投与経路、患者の年齢や体重等に応じて治療有効量を適宜設定すればよいが、例えば、成人の場合であれば、1日1回、5~50mg程度、好ましくは15~35mg程度、更に好ましくは20~25mg程度を、10~30日間程度、好ましくは21日間程度連日投与した後に、1~14日間程度、好ましくは7日間程度休薬し、これを1サイクルとして3~12サイクル程度、好ましくは6~7サイクル程度繰り返せばよい。勿論、投与量及び投与回数は、患者の状態に応じて適宜調整できる。
【実施例】
【0029】
以下に、実施例等に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
なお、以下、タンパク質のアミノ酸残基の表記に関し、アミノ酸の一文字表記とN末端側から数えた場合のアミノ酸残基の番号を並べて表記することがある。例えば、「CRBNのI371」との表記は、CRBNのアミノ酸配列のN末端側から数えて371番目に存在するイソロイシン残基を示す。
【実施例】
【0031】
実施例1:6-ヒドロキシレナリドマイドの合成
全ての反応は、乾燥ガラス器具中で窒素の加圧下で行った。溶媒はシリンジでゴム製セプタムを通して移した。特記しない限り、商業的に入手可能な試薬は、Aldrich Chemical Co.、ナカライテスク株式会社、東京化成工業株式会社、及び和光純薬工業株式会社(現富士フィルム和光純薬株式会社)から取得して使用した。各反応は、0.25mm Merckシリカゲル(60-F254)を用いた薄層クロマトグラフィ-(TLC)によってモニタ-した。TLCプレ-トは、UVライト(254nm)を用いて可視化した。カラムクロマトグラフィ-は、シリカゲル(60M spherical neutral size 40-63 μm)を充填したカラムを用いて行った。CDCl3、DMSO-d6、又はacetone-d6中での1H (300 MHz) and 13C (126 MHz) NMRスペクトルは、Varian Mercury 300及びAvance 500USを用いて記録した。化学シフト(δ)は、テトラメチルシラン(δH = 0.00 ppm)、ジメチルスルホキシド(δH = 2.50 ppm, δC = 39.5 ppm)、アセトン(δH = 2.05 ppm, δC = 29.9 ppm)、又はCHCl3 (δC = 77.0 ppm)を基準物質として、ppmスケ-ルで記録した。多重度を示す略号は以下の通りである: s: singlet, d: doublet, brs: broad singlet, dd: doublet of doublet, qd: quartet of doublet, m: multiplet。micro-TOF分析計を備えたエレクトロスプレ-イオン化質量分析計により、高分解能質量分析(HRMS)を行った。IRシグナルの波数(ν~)は、フ-リエ変換赤外分光光度計JASCO FT/IR-4100で単位cm-1として求めた。融点は、融点測定装置BUCHI M-565を用いて求めた。
【実施例】
【0032】
以下に示す合成スキ-ムで6-ヒドロキシレナリドマイド(構造式(A)に示す化合物、6OHLen)を合成した。具体的な合成スキ-ムは以下に示す通りである。
【化4】
JP2021020873A_000005t.gif
【実施例】
【0033】
[化合物1の合成]
【化5】
JP2021020873A_000006t.gif
【実施例】
【0034】
化合物1は、国際公開第2014/18866法で報告されている手順で合成した。
【実施例】
【0035】
[化合物2(Methyl 5-((tert-butyldimethylsilyl)oxy)-2-methyl-3-nitrobenzoate)の合成]
【化6】
JP2021020873A_000007t.gif
【実施例】
【0036】
化合物1(1.06 g, 5.0 mmol)を含むアセトニトリル(10 mL)に、tert-ブチル((1-メトキシビニル)オキシ)ジメチルシラン(2.6 mL, 12.0 mmol, 2.4 eq.)を添加し、反応混合物を室温で15時間撹拌した。反応終了後、溶媒を減圧留去し、残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィ-(ヘキサン/酢酸エチル = 9/1)で精製して化合物2を得た。
Rf = 0.44. Yellow oil; >99% yield, 1.63 g. 1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ = 7.45 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 7.32 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 3.93 (s, 3H), 2.52 (s, 3H), 0.99 (s, 9H), 0.23 (s, 6H) ppm. 13C NMR (126 MHz, CDCl3): δ = 166.7, 153.5, 152.2, 134.0, 125.5, 125.2, 118.2, 52.6, 25.5, 18.1, 15.5, -4.5 ppm. IR (NaCl): ν~ = 2954, 2860, 1734, 1618, 1535, 1475, 1437, 1362, 1309, 1232, 1093, 1012, 883, 843 cm-1. HRMS (EI) m/z: [M]+ Calcd. for C15H23NO5Si 325.1346; Found 325.1361.
【実施例】
【0037】
[化合物3(Methyl 2-(bromomethyl)-5-((tert-butyldimethylsilyl)oxy)-3-nitrobenzoate)の合成]
【化7】
JP2021020873A_000008t.gif
【実施例】
【0038】
化合物2(1.03 g, 3.16 mmol)、2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル) (52.5 mg, 0.32 mmol, 0.1 eq.)、及びN-ブロモスクシンイミド(676 mg, 3.8 mmol, 1.2 eq.)を、脱気したテトラクロロメタン(30 mL)に溶解させた。得られた混合液を加熱還流して15時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、濾過によりスクシンイミドを除去した。次いで、濾液を減圧濃縮し、フラッシュカラムクロマトグラフィ-(ヘキサン/アセトン = 96/4)で精製して化合物3を得た。
Slightly yellow oil; 88% yield, 1.12 g. 1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ = 7.53 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 7.38 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 5.09 (s, 2H), 3.99 (s, 3H), 1.00 (s, 9H), 0.27 (s, 6H) ppm. 13C NMR (126 MHz, CDCl3): δ = 165.8, 155.8, 151.3, 133.4, 126.4, 124.8, 119.1, 53.1, 25.4, 23.3, 18.1, -4.5ppm. IR (NaCl): ν~ = 2954, 2860, 1730, 1612, 1539, 1475, 1437, 1360, 1313, 1240, 1093, 1014, 843, 787 cm-1. HRMS (EI) m/z: [M-Br]+ Calcd. for C15H22NO5Si 324.1267; Found 324.1262.
【実施例】
【0039】
[化合物4((±)-3-(6-((tert-Butyldimethylsilyl)oxy)-4-nitro-1-oxoisoindolin-2-yl)piperidine-2,6-dione)の合成]
【化8】
JP2021020873A_000009t.gif
【実施例】
【0040】
化合物3(1.55 g, 3.8 mmol)及び3-アミノピペリジン-2,6-ジオン塩酸塩(625 mg, 3.8 mmol, 1.0 eq.)を含むN,N-ジメチルホルムアミド(3.8 mL)に、トリエチルアミン(0.64 mL, 4.6 mmol, 1.2 eq.)を滴下した。得られた混合液を50℃に加熱して15時間撹拌した。反応液を冷水で希釈して、生じた沈殿物を濾過にて回収し、ジエチルエ-テル及びエタノ-ルで洗浄、乾燥を行い、化合物4を得た。
White solid; 33yield, 520.4 mg. 1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ = 7.96 (brs, 1H), 7.87 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 7.65 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 5.22 (dd, J = 13.5, 5.3 Hz, 1H), 4.93 - 4.70 (m, 2H), 3.05 - 2.92 (m, 1H), 2.92 - 2.76 (m, 1H), 2.48 (qd, J = 13.1, 5.0 Hz, 1H), 2.34 - 2.19 (m, 1H), 1.02 (s, 9H), 0.28 (s, 6H) ppm. 13C NMR (126 MHz, CDCl3): δ = 170.7, 169.0, 166.8, 157.3, 143.8, 135.6, 129.1, 121.5, 119.2, 67.1, 52.1, 48.0, 31.5, 25.5, 23.2, 18.2, -4.5 ppm. IR (KBr): ν~ = 3095, 2935, 2860, 1716, 1682, 1579, 1533, 1452, 1352, 1319, 1290, 1254, 1225, 1194, 1122, 980, 935, 893, 845, 812, 787 cm-1. HRMS (ESI) m/z: [M+Na]+ Calcd. For C19H25N3NaO6Si 442.1410; Found 442.1408. m.p.: 212.8 - 219.6 °C.
【実施例】
【0041】
[化合物5((±)-3-(6-Hydroxy-4-nitro-1-oxoisoindolin-2-yl)piperidine-2,6-dione)の合成]
【化9】
JP2021020873A_000010t.gif
【実施例】
【0042】
化合物4(520.4 mg, 1.24 mmol)を含む1,4-ジオキサン(20 mL)に濃塩酸(0.5 mL)をゆっくりと添加した。得られた混合液を室温で15時間撹拌した。反応終了後に溶媒を減圧下で除去した。残渣をエタノ-ルで再結晶し、化合物5を得た。
Off white solid; 87% yield, 330 mg. 1H NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ = 11.02 (s, 1H), 10.87 (s, 1H), 7.78 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.47 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 5.14 (dd, J = 13.1, 4.8 Hz, 1H), 4.83 - 4.57 (m, 2H), 2.99 - 2.80 (m, 1H), 2.68 - 2.53 (m, 2H), 2.10 - 1.91 (m, 1H) ppm. 13C NMR (126 MHz, DMSO-d6): δ = 172.9, 170.8, 166.0, 158.7, 143.7, 135.7, 127.4, 115.8, 113.7, 51.9, 48.0, 31.2, 22.3 ppm. IR (KBr): ν~ = 3195, 1678, 1533, 1469, 1352, 1292, 1224, 1201, 1122, 964, 887, 796, 756 cm-1. HRMS (ESI) m/z: [M+Na]+ Calcd. for C13H11N3NaO6 328.0546; Found 328.0548. m.p.: 249.6 - 279.7 °C (decomp.).
【実施例】
【0043】
[6-ヒドロキシレナリドマイド(構造式(A)に示す化合物、6OHLen)の合成]
【化10】
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【実施例】
【0044】
化合物5(200 mg, 0.66 mmol)及びパラジウムカ-ボン(Pd/C)(70 mg, 0.066 mmol, 0.1 eq.)を含むテトラヒドロフラン(5.0 mL)を、水素雰囲気下、室温で5時間撹拌した。得られた混合液をセライトパットで濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。残渣をエタノ-ルで再結晶し、6-ヒドロキシレナリドマイド(化合物6、6OHLen)を得た。
Off white solid; 22% yield, 39.9 mg. 1H NMR (300 MHz, acetone-d6): δ = 9.76 (brs, 1H), 8.34 (s, 1H), 6.55 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 6.42 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 5.15 (dd, J = 13.2, 5.0 Hz, 1H), 4.89 (brs, 1H), 4.21 (s, 2H), 3.06 - 2.91 (m, 1H), 2.81 - 2.69 (m, 1H), 2.57 - 2.37 (m, 1H), 2.26 - 2.12 (m, 1H) ppm. 13C NMR (126 MHz, acetone-d6): δ = 172.9, 171.6, 170.0, 159.7, 145.2, 134.8, 119.2, 105.3, 99.2, 52.8, 45.7, 32.3, 24.2 ppm. IR (KBr): ν~ = 3359, 3219, 1682, 1500, 1454, 1419, 1369, 1315, 1211, 1146, 1005, 835, 769, 744 cm-1. HRMS (ESI) m/z: [M+Na]+ Calcd. for C13H13N3NaO4 298.0804; Found 298.0801. m.p.: 178.2 - 197.7 °C (decomp.).
【実施例】
【0045】
実施例2:セレブロン-レナリドマイド-イカロス複合体結晶の構造解析
1.実験方法
[CRBN(319-427)のIMiDs結合ドメインの発現と精製]
ヒトCRBNのアミノ酸配列においてN末端側から319~427番目のアミノ酸配列(CRBN(319-427);配列番号1)をコ-ドするcDNA領域を、プラスミドpGEX6P-3(GE healthcare)内の、ヒトライノウイルス3Cプロテア-ゼ(HRV3Cプロテア-ゼ)切断配列をコ-ドする領域と制限酵素NotIマルチクロ-ニングサイトとの間に、In-Fusion HD Cloning Kit (Ch
rontech)を用いて組み込んだ。作製した発現プラスミドは、大腸菌Rosetta2(DE3)(Merck)に形質転換した。CRBN(319-427)はGST融合タンパク質 (以下GST-CRBN)として発現する。形質転換した大腸菌は、0.5 %(W/V)グリセリン、0.05 %(W/V)グルコ-ス、0.2 %(W/V)ラクト-ス、1 mM硫酸マグネシウム、及び5 μM酢酸亜鉛を添加したLB Lenox培地(LB5052培地)に、50 mg ml-1アンピシリンと25 mg ml-1クロラムフェニコ-ルを添加して、37 ℃で培養を開始した。培地の濁度が0.6 (測定波長600 nm)に達した時点で、培地を氷水で冷却して、終濃度が0.1 mMとなるように1 M isopropyl-β-D-thio-galactopyranoside (以下、IPTG)を加えて目的タンパク質の発現を誘導した。IPTGを添加後、更に15 ℃で24時間培養を行った。菌体は4,000 rpm (Beckman J2-M1 JA10 rotor)で、4 ℃で20分遠心して集菌した。集菌した菌体は精製に使用するまで-30 ℃で保存した。
【実施例】
【0046】
CRBN(319-427)の精製方法は、以下の通りである。菌体は0.1 M Tris-HCl (pH8.0)、500 mM NaCl、5 mM 2-mercaptehtanol(以下、2-Me)に懸濁して、4 ℃で超音波破砕を行った。超音波破砕後、4 ℃、35,000 rpmで30分間、超遠心を行った。上清の可溶性画分をGlutathione-Sepharose 4B樹脂(以下、GSH)(GE healthcare)が充填されたアフィニティ-カラムへ供して、GST-CRBNを吸着させた。その後、10 mM Tris-HCl (pH8.0)、500 mM NaCl、5 mM 2-Me (以下、洗浄buffer)でGSHを洗浄した。GST-CRBNが結合したGSHを洗浄bufferで懸濁した後、懸濁液にHRV3Cプロテア-ゼ(Merck)を添加して4 ℃で18時間消化を行った。HRV3Cプロテア-ゼによってGSTが切断されて溶出されるCRBN(319-427)は、N末端にHRV3Cプロテア-ゼの認識配列の一部を含むGP配列が付加されている。樹脂から溶出したCRBN(319-427)は、10 mM BisTris-NaOH (pH 6.5)、5 mM 2-Meで透析して脱塩した。その後、HiTrap SP陽イオン交換カラム (GE healthcare)を使用して、10 mM BisTris-NaOH (pH 6.5)及び5 mM 2-Meの溶液と、10 mM BisTris-NaOH (pH 6.5)、1 M NaCl、5 mM 2-Meの溶液を用いてリニアグラジエント濃度勾配による溶出で、分離精製を行った。陽イオン交換クロマトグラフィ-による溶出画分は、Superdex 75ゲル濾過カラム(GE healthcare)を用いて、10 mM BisTris-NaOH (pH 6.5)、500 mM NaCl、5 mM 2-Meの溶液でゲル濾過精製を行った。精製したCRBN(319-427)溶液は10 mM BisTris-NaOH (pH 6.5)、0.1 mM Tris(2-carboxyethyl)phosphine hydrochloride (以下、TCEP)で透析して脱塩した。透析終了後、CRBN(319-427)溶液に0.5 MのTCEPを最終濃度10 mMになるように添加した。その後、Amicon Ultra centrifugal filter device (3,000 MWCO)(Millipore)を使用して濃縮した。濃縮したCRBN(319-427)は、0.5 mlチュ-ブ(Eppendorf)に10-20 μlずつに分注して、液体窒素で瞬間凍結後、-80 ℃で保存した。
【実施例】
【0047】
[ヒトIKZF1(130-174)の発現と精製]
ヒトCRBNのアミノ酸配列においてN末端側から130~174番目のアミノ酸配列(IKZF1(130-174);配列番号2)には、CRBN結合領域が含まれている。IKZF1(130-174)をコ-ドするcDNAの領域を、プラスミドpGEX6P-3 (GE healthcare)のHRV3Cプロテア-ゼ切断配列コ-ド領域と制限酵素NotIマルチクロ-ニングサイトの間に、In-Fusion HD Cloning Kit (Chrontech)を用いて組み込んだ。プラスミドは大腸菌Rosetta2株 (Merck)に形質転換した。IKZF1(130-174)はGST融合タンパク質(以下、GST-IKZF1)として発現する。形質転換した大腸菌をLB5052培地に50 mg ml-1アンピシリンと25 mg ml-1クロラムフェニコ-ルを添加した培地で培養した。そして、CRBN(319-427)を発現させた場合と同様の条件でGST-IKZF1の発現を行った。集菌した菌体は精製に使用するまで-30 ℃で使用するまで保存した。
【実施例】
【0048】
IKZF1(130-174)の精製方法は、以下の通りである。GST-IKZF1を発現させた菌体は0.1 M Tris-HCl (pH8.0)、500 mM NaCl、10 mM 2-Meに懸濁して、4 ℃で超音波破砕を行った。超音波破砕後、4 ℃、35,000 rpmで30分間、超遠心を行って不溶性画分を除去した。可溶性画分からのGST-IKZF1の精製は、GSHを使用したアフィニティ-カラムを用いて行った。破砕後の可溶性画分を、GSHが充填されたアフィニティ-カラムへ供して、GST-IKZF1を吸着後、10 mM Tris-HCl (pH8.0)、500 mM NaCl、及び10 mM 2-Meを含む溶液でGSHを洗浄した。その後、GST-IKZF1が結合したGSHに10 mM Tris-HCl (pH8.0)、500 mM NaCl、10 mM 2-Me、及び50mM 還元型グルタチオンを含む溶液を供してGSHからGST-IKZF1を溶出した。溶出画分は、10 mM Tris-HCl (pH8.0)、50 mM NaCl、及び10 mM 2-Meを含む溶液で透析して脱塩した。その後、HRV3Cプロテア-ゼ(Merck)を用いて4 ℃で18時間消化した。消化産物であるIKZF1(130-174)は、N末端にHRV3Cプロテア-ゼの認識配列の一部を含むGPY配列が余分に付加されている。消化後、HiTrap SP陽イオン交換カラムを使用して、10 mM Tris-HCl (pH 8.0)、50 mM NaCl、及び10 mM 2-Meを含む溶液と、10 mM Tris-HCl (pH 8.0)、800 mM NaCl 、及び10 mM 2-Meを含む溶液を用いて、リニアグラジエント濃度勾配で分離精製を行った。陽イオン交換クロマトグラフィ-による溶出画分は、更に、Superdex 75ゲル濾過カラムを用いて、10 mM BisTris-NaOH (pH 8.0)、100 mM NaCl、及び0.1 mM TCEPを含む溶液でゲル濾過精製を行った。ゲルろ過後、得られたIKZF1(130-174)溶液に0.5 MのTCEPを10 mMになるように添加した。そして、Amicon Ultra centrifugal filter device (3,000 MWCO)を使用して濃縮した。濃縮したIKZF1(130-174)は、0.5 mLチュ-ブに10-20 μlずつに分注して、液体窒素で瞬間凍結後、-80 ℃で保存した。
【実施例】
【0049】
[CRBN(319-427)とIMiDsとの複合体の調製]
レナリドマイド(R体とS体のラセミ混合物)とCRBN(319-427)の複合体の調製は、以下の方法で行った。精製したCRBN(319-427)を、30 mM HEPES-NaOH(pH6.8), 100 mM KCl, 1 mM TCEP, 100 μM レナリドマイドを含む溶液に4 ℃で24時間透析して、レナリドマイド-CRBN(319-427)複合体を形成させた。得られたレナリドミド-CRBN(319-427)複合体は、Amicon Ultra centrifugal filter device (3,000 MWCO)(Millipore)を使用して濃縮した。濃縮したレナリドマイド-CRBN(319-427)複合体は、0.5 mLチュ-ブ(Eppendorf)に10-20 μLずつに分注して液体窒素で瞬間凍結後、-80 ℃で保存した。
【実施例】
【0050】
6-ヒドロキシレナリドマイド(R体とS体のラセミ混合物)と、CRBN(319-427)複合体の調製は、以下の方法で行った。精製したCRBN(319-427)を10 mM BisTris (pH 6.5)、10 mM TCEP 緩衝液で50 μMに調製した後、ジメチルスルホキシド(以下、DMSO)に溶解させた6-ヒドロキシレナリドマイドを終濃度200 μMになるように添加した。CRBN溶液に6-ヒドロキシレナリドマイドを添加後、4 ℃で24時間静置保温して複合体を調製した。6-ヒドロキシレナリドマイドを結合させたCRBN(319-427)は、Amicon Ultra centrifugal filter device (3,000 MWCO)(Millipore)を使用して濃縮した。濃縮した6-ヒドロキシレナリドマイド-CRBN(319-427)複合体は、0.5 mlチュ-ブ(Eppendorf)に10 μlずつに分注して液体窒素で瞬間凍結後、-80 ℃で保存した。
【実施例】
【0051】
[レナリドマイド-CRBN(319-427)-IKZF1(130-174)複合体の結晶化、X線回折デ-タの収集と構造解析]
レナリドマイド存在下でのCRBN-IKZF1複合体結晶の調製は、以下の方法で行った。調製したレナリドマイド-CRBN(319-427)複合体とIKZF1(130-174)を、モル濃度比0.5 mM : 0.5 mM (1:1)となるように、30 mM HEPES-NaOH(pH6.8)、100 mM KCl、及び1 mM TCEPを含む溶液中で混合した(以下、Protein solution L1)。結晶化条件の初期スクリ-ニングは、結晶化ロボットmosquito (TTP labtech)と、市販の結晶化スクリ-ニングキットJCSG Core III Suite、JCSG Core II Suite、JCSG Core III Suite、JCSG Core IV Suite、及び
PACT Suite (QIAGEN)を沈殿剤として使用して行った。0.2 μl のProtein solution L1と、0.2 μl のスクリ-ニングキット沈殿剤を、結晶化ロボットで混合後4 ℃と20 ℃で、シッティングドロップ蒸気拡散法を適用した。その結果、0.1 M Tris-HCl (pH8.5)、0.2 M MgCl2、及び20 %(W/V) PEG8000[JCSG Core III Suite No.13]を含む溶液を使用した条件で、3日後に結晶が観察された。この条件をもとに、更に結晶化条件の最適化を進めた。結晶の大きさを改善するために、レナリドマイド-CRBN(319-427)複合体とIKZF1(130-174)を、モル濃度比1.0 mM : 1.0 mM (1:1)とタンパク質濃度をスクリ-ニング時の2倍に上げ、30 mM HEPES-NaOH(pH6.8), 100 mM KCl, 1 mM TCEPを含む緩衝液で混合して調製した(以下、Protein solution L2)。そして、5 μlのProtein solution L2と、5 μl の0.1 M Tris-HCl(pH8.5)、300 mM MgCl2、16% PEG8000、及び10 mM Praseodymium(III) acetate hydrateを含む溶液を混合して、シッティングドロップ蒸気拡散法を用い、20 ℃で8日後に柱状の単結晶を得た。得られた複合体結晶は、0.1 M Tris-HCl(pH8.5)、300 mM MgCl2、16 % PEG8000、10 mM Praseodymium(III) acetate hydrate、及び25 % ethylene glycolを含む溶液を抗凍結剤として用いて液体窒素中で凍結させた。X線回折デ-タの収集は、大型放射光施設SPring-8 BL41XUで行った。得られたX線回折デ-タはプログラムHKL2000を用いて解析を行った。初期位相は、プログラムPhaserとヒトCRBN-レナリドマイド-DDB1複合体モデル構造(PDB code: 4TZ4)とZinc finger protein Eos (IKZF4)モデル構造(PDB code: 2MA7)を用いて分子置換法で決定した。レナリドマイドの構造モデル設計とrestraint fileはプログラムPRODRGを用いた。モデル構造は、Refmac5、Phenix refine、及びcootプログラムを組み合わせて精密化した。タンパク質二次構造はプログラムDSSPを用いて解析した。三次元構造の図は、構造表示プログラムPyMOLを使用して作成した。
【実施例】
【0052】
[6-ヒドロキシレナリドマイド-CRBN(319-427)-IKZF1(130-174)複合体の結晶化、X線回折デ-タの収集、及び構造解析]
6-ヒドロキシレナリドマイド存在下でのCRBN-IKZF1複合体結晶の調製は、以下の方法で行った。調製した6-ヒドロキシレナリドマイド-CRBN(319-427)複合体とIKZF1(130-174)を、モル比1 : 1 (1 mM : 1 mM)となるように、5 mM BisTris-NaOH (pH6.5)、50 mM NaCl、及び1 mM TCEPを含む溶液中で混合した(以下、Protein solution 6OHLen)。結晶化条件の初期スクリ-ニングは、レナリドマイド複合体結晶化スクリ-ニングの場合と同様に、結晶化ロボットと市販の結晶化スクリ-ニングキットを沈殿剤として使用して行った。0.1 μlのProtein solution 6OHLenと0.1 μlのスクリ-ニングキットの沈殿剤を、結晶化ロボットで混合して、4℃と20℃の温度条件で、シッティングドロップ蒸気拡散法を適用して、結晶化条件のスクリ-ニングを行った。その結果、0.1 M Imidazole (pH8.0)、0.2 M MgCl2、及び35 %(W/V) MPD[JCSG CoreII No.16]を含む溶液を使用して2日後に結晶が観察された。この条件をもとに、さらに結晶化条件の最適化を進めた。結果、5 μlのProtein solution pomと5 μlの0.1 M Tris-HCl (pH8.6)及び0.2 M MgCl2、16 % MPDを含む溶液を混合して、4 ℃でシッティングドロップ蒸気拡散法を適用した条件で、4日後に柱状の単結晶を得た。得られた結晶は、0.1 M Tris-HCl (pH8.6)、0.2 M MgCl2、及び35 %(W/V) MPDを含む溶液を抗凍結剤として用いて凍結させた。X線回折デ-タの収集は、放射光施設SPring-8 BL41 XUで行い、得られたX線回折デ-タはプログラム HKL2000を用いて解析を行った。位相決定は、精密化したレナリドマイド-CRBN(319-427)-IKZF1(130-174)複合体構造を用いてPhaserで分子置換法を適用した。薬剤の構造モデル設計とrestraint fileは、eLBOWプログラムを用いて作成した。モデル構造の精密化は、Refmac5, Phenix refine, cootを組み合わせて用いて行った。
【実施例】
【0053】
2.解析結果
[CRBNに結合したレナリドマイドと6-ヒドロキシレナリドマイドとの構造比較]
レナリドマイド(以下、Len)と6-ヒドロキシレナリドマイド(以下、6OHLen)それぞれの存在下において、CRBNとIKZF1との三者複合体を結晶化して、それぞれ分解能2.74Åと2.50 Åで構造決定した。X線回折強度デ-タと構造解析の統計値を表1に示す。結晶構造中で、Len及び6OHLenの明瞭な電子密度が観察された(図2AとB)。これまでに報告されているCRBN-IMiDと標的タンパク質との複合体構造と同様に、Len及び6OHLenは、CRBNとIKZF1との相互作用を仲介する位置に結合していた(図2C)。Len及び6OHLenとのいずれの複合体(Len-IKZF1-CRBN複合体、及び6OHLen-IKZF1-CRBN複合体)も結晶中では二量体を形成しており、二量体内には、Lenの複合体は結晶学的な対称があり、6OHLenの場合は非結晶学的な疑似の対称があった。従って、Len複合体は一種類であり、一方で6OHLen複合体はよく似た2種類の複合体(以下、mol-1とmol-2)があるので、詳細な複合体内の相互作用解析では、mol-1とmol-2とで差異が見出される場合にはこの点についても言及し考慮した。
【実施例】
【0054】
複合体の形成様式の基本的な特徴はLen複合体と6OHLen複合体とで共通していた。Len-IKZF1-CRBN複合体のCRBNと6OHLen-IKZF1-CRBN複合体のCRBNと主鎖のCα炭素原子を用いた構造の重ね合わせでのroot mean square deviation (r.m.s.d)は0.534 Åで、両複合体のCRBN間には大きな構造変化がなく、6OHLenはLenと類似した結合様式でCRBNとIKZF1に結合できることがわかった。
【実施例】
【0055】
【表1】
JP2021020873A_000012t.gif
【実施例】
【0056】
[Lenが結合したCRBNとIKZF1の間の相互作用]
構造解析したLen-IKZF1-CRBN複合体構造から、Len存在下でのCRBNとIKZF1相互作用様式の詳細を解析した。Len結合部位周辺の構造を図3Aに、解析した相互作用マップを図4Aに示す。先ず、Lenのグルタルイミド環は、CRBNのW380、W386、W400、F402によって形成される疎水性のポケット(以下、Tri-Trp ポケット)にはまり込み、Lenのグルタルイミド環のイミノ基と6位のカルボニル基が、CRBNのH378主鎖のカルボニル基、そしてW380主鎖のイミノ基とそれぞれ2本の水素結合を形成していた。一方、Lenのグルタルイミド環の2位のカルボニル基は、CRBNのH378側鎖イミダゾ-ル基と水素結合を形成するには距離がやや遠かった(3.6 Å)。
【実施例】
【0057】
Lenのアミノイソインドリノン環もCRBNと相互作用している。先ず、Lenのアミノイソインドリノン環の平面部分は、P352の側鎖と、また部分的にH353側鎖と疎水的な相互作用が認められた(図3 A)。また、Lenのアミノイソインドリノン環の4位のアミノ基はCRBNのE377の主鎖カルボニル基と水素結合(3.4 Å)を形成していた。一方、E377側鎖のカルボキシル基との距離はやや遠い(3.9 Å)が、弱い塩橋を形成している可能性があった。Lenのアミノイソインドリノン環の1位カルボニル基はCRBNのN351側鎖と水素結合(3.0 Å)を形成していた。
【実施例】
【0058】
次に、IKZF1とCRBNやLenとの相互作用は以下の通りである。先ず、IKZF1の亜鉛フィンガ-ドメインを形成しているβ-ヘアピンモチ-フが、CRBNのTri-Trpポケットを含むくぼみにはまり込み、Tri-Trpポケットに結合したLenのアミノイソインドリノン環やCRBNの残基と、直接的に原子間接触、及びファンデルワ-ルス(van del Waals)接触していた(図3A)。特に、IKZF1のG151は、Lenのアミノイソインドリノン環とCRBNのW386とV388の側鎖で形成される疎水性のポケットにはまり込んでおり、加えて、IKZF1のC147、N148、Q149、C150主鎖のカルボニル基、及びQ146側鎖が、Lenのアミノイソインドリノン環と接触していた。しかし、IKZF1とLenの間に直接の水素結合や塩橋はなかった。
【実施例】
【0059】
一方、複合体形成の不安定要因となる原子間接触としては、Lenのアミノイソインドリノン環のC1カルボニル基の酸素原子とIKZF1のQ149の主鎖カルボニル基の酸素原子とが接触していた(3.0 Å、図4A)。両酸素原子は負に荷電しているので、反発し合っていると考えられる。
【実施例】
【0060】
最後に、Lenが直接相互作用していない領域でのIKZF1とCRBNの直接的な相互作用は以下の通りである。先ず、IKZF1のN148側鎖とQ149側鎖が、CRBNのH353側鎖やY355側鎖とそれぞれ接触していた(図5A)。また、IKZF1のN148主鎖カルボニル基、Q149主鎖カルボニル基、C150主鎖カルボニル基、及びG141主鎖カルボニル基が、それぞれ、CRBNのN351側鎖、H357側鎖、W400側鎖、及びR373側鎖と水素結合(距離はそれぞれ2.6 Å、2.7 Å、2.9 Å、3.0 Å、3.3 Å)を形成していた(図4A)。加えて、IKZF1のR143、C150、A152、F154、H163、L166、及びH167側鎖によって形成される疎水性表面が、CRBNのI371、G372、R373、V388、A395、及びH397によって形成される疎水性表面と相互作用していた(図5C)。
【実施例】
【0061】
[6OHLenが結合したCRBNとIKZF1の間の相互作用]
構造解析した6OHLen-CRBN-IKZF1複合体構造から、6OHLen存在下でのCRBNとIKZF1相互作用様式の詳細を解析した。6OHLen結合部位周辺の構造を図3Bに、解析した相互作用マップを図4B(mol-1)と図4C(mol-2)に示す。先ず、Len複合体と同様に、6OHLenのグルタルイミド環がTri-Trpポケットにはまり込んでおり、6OHLenのグルタルイミド環のイミノ基、4位の炭素原子に結合したカルボニル基、及び6位の炭素原子に結合したカルボニル基が、それぞれ、CRBNのH378主鎖のカルボニル基、H378の側鎖、及びW380主鎖のイミノ基と3本の水素結合を形成していた(図3B、図4B、及び図4C)。
【実施例】
【0062】
6OHLenのアミノイソインドリノン環は、Lenと同様にP352、H353と疎水的な相互作用をしていた。6OHLenのアミノイソインドリノン環の6位ヒドロキシル基は、設計通り、CRBNのH353側鎖と水素結合を形成していた(mol-1で3.2 Å、mol-2では2.8 Å)。また、6OHLenアミノイソインドリノン環の4位アミノ基は、mol-2複合体ではCRBNのE377側鎖カルボキシル基と主鎖カルボニル基と水素結合(2.4 Å、2.5 Å)を形成していたが、mol-1では距離がやや遠く(3.6 Å、3.7 Å)、側鎖カルボキシル基と弱い塩橋のみ形成している可能性がある。6OHLenアミノイソインドリノン環の1位カルボニル基はCRBNのN351側鎖とは水素結合を形成していなかった(mol-1で4.2 Å、mol-2で3.8 Å)。
【実施例】
【0063】
IKZF1と6OHLenとの相互作用は以下の通りである。Len複合体同様に、IKZF1のβ-ヘアピンモチ-フが、CRBNのTri-Trp ポケットを含むくぼみにはまり込み、Tri-Trp ポケットに結合したLenのアミノイソインドリノン環や、CRBNの残基と直接に原子間接触していた(図3B)。IKZF1のG151は、6OHLenのアミノイソインドリノン環とCRBNのW386とV388側鎖で形成される疎水性のポケットにはまり込み、IKZF1のC147、N148、Q149、C150主鎖のカルボニル基、及びQ146側鎖が、Lenのアミノイソインドリノン環と接触していた。これらの相互作用に加えて、6OHLenアミノイソインドリノン環の6位ヒドロキシル基は、設計通り、IKZF1のC147主鎖のカルボニル基と水素結合を形成していた(mol-1で2.3 Å、mol-2で2.5 Å)。
【実施例】
【0064】
一方、Lenの場合と同様に、複合体形成の不安定要因となる原子間接触としては、6OHLenのアミノイソインドリノン環のC1カルボニル基の酸素原子とIKZF1のQ149の主鎖カルボニル基の酸素原子とが接触していた(図4B及び図4C)。
【実施例】
【0065】
最後に、6OHLenが介在しない領域でのIKZF1とCRBNの直接的な相互作用は以下の通りである。先ず、IKZF1のN148側鎖とQ149側鎖が、CRBNのY355側鎖と接触していた(図5B)。また、IKZF1のN148主鎖カルボニル基、Q149主鎖カルボニル基、及びC150主鎖カルボニル基が、それぞれ、CRBNのN351側鎖、H357側鎖、及びW400側鎖と水素結合(mol-1複合体で2.5 Å、3.3 Å、2.5 Å;mol-2複合体で2.5 Å、3.4 Å、2.6 Å)を形成していた(図5B)。また、mol-2複合体では、Len1複合体と同様に、R373側鎖がG141主鎖と水素結合(2.3 Å)を形成していた。これらの水素結合に加えて、IKZF1のC150、A152、L166、及びH167側鎖によって形成される疎水性面が、CRBNのI371、V388、Q390、A395、S396、及びH397によって形成される疎水性面と相互作用していた(図5D)。また、IKZF1のQ146側鎖は、結晶化条件に含まれるマグネシウムイオンを介してCRBNのE377側鎖と塩橋を形成していた(図3B)。
【実施例】
【0066】
[Len複合体と6OHLen複合体中での相互作用の比較]
Len存在下でのCRBNとIKZF1の結合様式と、6OHLen存在下でのCRBNとIKZF1の相互作用様式はよく似ているが、幾つかの相違点があった。
【実施例】
【0067】
先ず、6OHLenアミノイソインドリノン環に導入した6位ヒドロキシル基は、IKZF1の亜鉛フィンガ-ドメインを構成するC147主鎖のカルボニル基と強い水素結合(2.3 Å及び2.5Å)を形成していた。加えて、CRBNのH353とも水素結合(3.2 Å及び2.8 Å)を形成していた。これらの相互作用は、設計通り、6OHLenが、CRBNとの結合のみならず、IKZF1との結合もLenに比べてより安定化していることを示している。
【実施例】
【0068】
第二に、6OHLenのグルタルイミド環の2位カルボニル基はCRBNのH378側鎖イミダゾ-ル基との間に水素結合(3.1 Å及び3.2 Å)を形成しているが、Lenの2位カルボニル基とH378側鎖との距離は水素結合形成にはやや遠い位置関係にあった(3.6 Å)。
【実施例】
【0069】
一方、Len複合体と比べて、6OHLenのアミノイソインドリノン環の1位カルボニル基は、CRBNのN351側鎖との水素結合を形成していない。これはN351側鎖がIKZF1方向へ微少な距離(0.8 Åから1.0 Å)移動したためで、その結果、N351側鎖とIKZF1のN148主鎖カルボニル基との水素結合は強くなっている(水素結合距離が2.6 Åから2.5 Åに短縮している)。
【実施例】
【0070】
これら以外にも、6OHLen複合体では、IKZF1のQ149側鎖とCRBNのE377側鎖が、マグネシウムイオンを介して間接的に相互作用していた。Len複合体ではこの相互作用は観察されていないが、位置的には、Len複合体でも可能であるので、この差異は結晶化条件の違いが反映した可能性があり、6OHLenとLenという薬剤の違いによるものではないと考えられる。また、アミノイソインドリノン環の4位アミノ基とCRBNのE377の側鎖や主鎖カルボキシル基との相互作用や、CRBNのR373側鎖とIKZF1のG141主鎖カルボニル基との相互作用については、6OHLen複合体とLen複合体とで若干の差異は認められるが、IMiDsの差異に起因するものではないと考えられる。
【実施例】
【0071】
実施例3:6OHLenによる抗腫瘍効果の検証
1.実験方法
培地(RPMI 1640 medium (Sigma-Aldrich社製))1mLに、1×104個の多発性骨髄腫細胞株(H929:DSファ-マバイオメディカル社製)を浮遊させた。6OHLenを10 mMとなるようにDMSOに溶解した6OHLen溶液を調製した。次いで、前記多発性骨髄腫細胞株を含む培地に前記6OHLen溶液をそれぞれ1μL、3μL、5μL、又は10μL滴下して、37℃、5%CO2にて24時間静置した。その後、 MuseTM Annexin V and Dead Cell Assay Kit (Merck Millipore Corporation, Darmstadt, Germany)測定キットを用いて、アポト-シスの指標となるAnnexine V陽性率を測定した。また、比較のために、6OHLen溶液の代わりに、DMSOのみを5μL又は10μL滴下添加した場合、及び無添加の場合についても、前記と同条件で実験を行った。
【実施例】
【0072】
2.実験結果
結果を図6及び7に示す。この結果、6OHLenの添加によって多発性骨髄腫細胞株のAnnexine V陽性率の増加が認められ、6OHLenには多発性骨髄腫細胞のアポト-シスを誘導し、抗腫瘍効果を奏することが確認された。
【実施例】
【0073】
実施例4:6OHLenによるTNF-α産生抑制効果の検証
培地(RPMI 1640 medium (Sigma-Aldrich社製))1mLに、2×104個の白血病がん細胞株(THP-1:ヒト単球性白血病細胞株、DSファ-マバイオメディカル社製)を浮遊させた。6OHLenを1 mMとなるようにDMSOに溶解した6OHLen溶液を調製した。次いで、前記白血病がん細胞株に前記6OHLen溶液をそれぞれ1μL滴下し、更にLPS(リポポリサッカリド from Salmonella enterica serotype abortus equi (Sigma-Aldrich社製) L5886)を10 ng/mLの最終濃度になるように添加し、37℃、5%CO2にて12時間静置した。その後、The Quantikine ELISA kit (R&D Systems, Minneapolis, MN,USA)測定キットを用いて、培養液中のTNF-α量を測定した。また、比較のために、6OHLen溶液の無添加の場合についても、前記と同条件で実験を行った。
【実施例】
【0074】
2.実験結果
結果を図8に示す。この結果、6OHLenの添加によって白血病がん細胞におけるTNF-αに対する産生抑制効果があることが確認された。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4A】
3
【図4B】
4
【図4C】
5
【図5】
6
【図6】
7
【図7】
8
【図8】
9