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明細書 :リンカー化合物、ダイヤモンド電極、装置、病原体又はタンパク質の検出方法、及びダイヤモンド電極の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和3年1月14日(2021.1.14)
発明の名称または考案の名称 リンカー化合物、ダイヤモンド電極、装置、病原体又はタンパク質の検出方法、及びダイヤモンド電極の製造方法
国際特許分類 C07C 245/20        (2006.01)
G01N  27/30        (2006.01)
G01N  27/416       (2006.01)
G01N  27/327       (2006.01)
G01N  33/547       (2006.01)
FI C07C 245/20 CSP
G01N 27/30 B
G01N 27/416 336G
G01N 27/327
G01N 33/547
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 27
出願番号 特願2019-564700 (P2019-564700)
国際出願番号 PCT/JP2019/000248
国際公開番号 WO2019/139009
国際出願日 平成31年1月8日(2019.1.8)
国際公開日 令和元年7月18日(2019.7.18)
優先権出願番号 2018003607
優先日 平成30年1月12日(2018.1.12)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】佐藤 智典
【氏名】松原 輝彦
【氏名】栄長 泰明
【氏名】山本 崇史
出願人 【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
個別代理人の代理人 【識別番号】100106002、【弁理士】、【氏名又は名称】正林 真之
【識別番号】100120891、【弁理士】、【氏名又は名称】林 一好
審査請求 未請求
テーマコード 4H006
Fターム 4H006AA01
4H006AA03
4H006AB80
4H006AC59
4H006BB31
4H006BE02
要約 本発明の課題は、検出対象を高感度で検出できる技術を提供することである。
本発明は、以下の式(1)で表されるリンカー化合物を提供する。
【化1】
JP2019139009A1_000024t.gif
(式(1)中、
Aは、ジアゾニオ基、アミノ基、カルボキシ基、カルボニル基、アルデヒド基、水酸基、又はニトロ基であり、
及びBは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立に以下の式(2)で表され、
【化2】
JP2019139009A1_000025t.gif
(式(2)中、
は、-NHCO-又は-CH-であり、
は、置換基を有してもよい2価の炭化水素基であり、
Rは、プロパルギル基である。)
Lは、芳香環である。)
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の式(1)で表されるリンカー化合物。
【化1】
JP2019139009A1_000020t.gif
(式(1)中、
Aは、ジアゾニオ基、アミノ基、カルボキシ基、カルボニル基、アルデヒド基、水酸基、又はニトロ基であり、
及びBは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立に以下の式(2)で表され、
【化2】
JP2019139009A1_000021t.gif
(式(2)中、
は、-NHCO-又は-CH-であり、
は、置換基を有してもよい2価の炭化水素基であり、
Rは、プロパルギル基である。)
Lは、芳香環である。)
【請求項2】
請求項1に記載のリンカー化合物が表面に固定化されたダイヤモンド電極。
【請求項3】
前記リンカー化合物におけるプロパルギル基が、検出対象を認識する分子によって修飾された、請求項2に記載のダイヤモンド電極。
【請求項4】
前記検出対象を認識する分子が糖鎖又はペプチドである、請求項3に記載のダイヤモンド電極。
【請求項5】
前記検出対象を認識する分子が、インフルエンザウイルス、DNAウイルス、RNAウイルス、2本鎖DNAウイルス、1本鎖DNAウイルス、2本鎖RNAウイルス、1本鎖RNA(+)鎖ウイルス、1本鎖RNA(-)鎖ウイルス、1本鎖RNA逆転写ウイルス、2本鎖DNA逆転写ウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、風疹ウイルス、麻疹ウイルス、RSウイルス、ヘルペスウイルス、肝炎ウイルス、アデノウイルス、口蹄疫ウイルス、狂犬病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、マイコプラズマ菌、ボツリヌス菌、百日咳菌、破傷風菌、ジフテリア菌、コレラ菌、赤痢菌、炭疽菌、病原性大腸菌、ブドウ球菌、サルモネラ菌、ウェルシュ菌又はセレウス菌を認識する、請求項3又は4に記載のダイヤモンド電極。
【請求項6】
前記検出対象を認識する分子が、インフルエンザウイルスのヘマグルチニンタンパク質(HA)、インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼ(NA)、M1タンパク質若しくはM2タンパク質、マイコプラズマ細菌のP1タンパク質、膜抗原タンパク質若しくはリボソームタンパク質L7/L12、ボツリヌス毒素、百日咳毒素、破傷風菌毒素、ジフテリア毒素、ウェルシュ菌のα毒素、コレラ菌毒素、ベロ毒素、炭疽菌毒素、大腸菌由来エンテロトキシン、ブドウ球菌由来エンテロトキシン、サルモネラ菌由来エンテロトキシン又はセレウス菌由来エンテロトキシンを認識する、請求項3又は4に記載のダイヤモンド電極。
【請求項7】
請求項2から6のいずれかに記載されたダイヤモンド電極を備えた、装置。
【請求項8】
請求項2から6のいずれかに記載された電極又は請求項7に記載された装置を用いた、病原体又はタンパク質の検出方法。
【請求項9】
ダイヤモンド電極の表面に、以下の式(1)で表されるリンカー化合物を固定化する工程を含む、ダイヤモンド電極の製造方法。
【化3】
JP2019139009A1_000022t.gif
(式(1)中、
Aは、ジアゾニオ基、アミノ基、カルボキシ基、カルボニル基、アルデヒド基、水酸基、又はニトロ基であり、
及びBは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立に以下の式(2)で表され、
【化4】
JP2019139009A1_000023t.gif
(式(2)中、
は、-NHCO-又は-CH-であり、
は、置換基を有してもよい2価の炭化水素基であり、
Rは、プロパルギル基である。)
Lは、芳香環である。)
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、リンカー化合物、ダイヤモンド電極、装置、病原体又はタンパク質の検出方法、及びダイヤモンド電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種検出系においては、検出対象(目的の病原体、病原性細菌、ウイルスやそれらのタンパク質等)を高感度で検出することが望まれてきた。
【0003】
例えば、インフルエンザウイルス(IFV)は世界的流行の可能性があり、迅速かつ正確なインフルエンザウイルスの検出が求められている。現在用いられているIFVの高感度な検出方法としては、IFVを認識する分子として抗体を用いたイムノクロマトグラフィー等が挙げられるが、抗体を用いた方法は時間やコストがかかり得る。
【0004】
本発明者らは、抗体を用いずにIFVを検出できる方法を検討し、ペプチドを提示したダイヤモンド電極を用いた、高感度な検出方法を開発した(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】国際公開第2016/175049号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、より高感度な検出方法へのニーズがある。
【0007】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、検出対象を高感度で検出できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、検出対象を認識する分子を、特定の構造を有するリンカー化合物を介してダイヤモンド電極の表面に固定化したダイヤモンド電極によれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
[1] 以下の式(1)で表されるリンカー化合物。
【化1】
JP2019139009A1_000003t.gif
(式(1)中、
Aは、ジアゾニオ基、アミノ基、カルボキシ基、カルボニル基、アルデヒド基、水酸基、又はニトロ基であり、
及びBは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立に以下の式(2)で表され、
【化2】
JP2019139009A1_000004t.gif
(式(2)中、
は、-NHCO-又は-CH-であり、
は、置換基を有してもよい2価の炭化水素基であり、
Rは、プロパルギル基である。)
Lは、芳香環である。)
【0010】
[2] [1]に記載のリンカー化合物が表面に固定化されたダイヤモンド電極。
【0011】
[3] 前記リンカー化合物におけるプロパルギル基が、検出対象を認識する分子によって修飾された、[2]に記載のダイヤモンド電極。
【0012】
[4] 前記検出対象を認識する分子が糖鎖又はペプチドである、[3]に記載のダイヤモンド電極。
【0013】
[5] 前記検出対象を認識する分子が、インフルエンザウイルス、DNAウイルス、RNAウイルス、2本鎖DNAウイルス、1本鎖DNAウイルス、2本鎖RNAウイルス、1本鎖RNA(+)鎖ウイルス、1本鎖RNA(-)鎖ウイルス、1本鎖RNA逆転写ウイルス、2本鎖DNA逆転写ウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、風疹ウイルス、麻疹ウイルス、RSウイルス、ヘルペスウイルス、肝炎ウイルス、アデノウイルス、口蹄疫ウイルス、狂犬病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、マイコプラズマ菌、ボツリヌス菌、百日咳菌、破傷風菌、ジフテリア菌、コレラ菌、赤痢菌、炭疽菌、病原性大腸菌、ブドウ球菌、サルモネラ菌、ウェルシュ菌又はセレウス菌を認識する、[3]又は[4]に記載のダイヤモンド電極。
【0014】
[6] 前記検出対象を認識する分子が、インフルエンザウイルスのヘマグルチニンタンパク質(HA)、インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼ(NA)、M1タンパク質若しくはM2タンパク質、マイコプラズマ細菌のP1タンパク質、膜抗原タンパク質若しくはリボソームタンパク質L7/L12、ボツリヌス毒素、百日咳毒素、破傷風菌毒素、ジフテリア毒素、ウェルシュ菌のα毒素、コレラ菌毒素、ベロ毒素、炭疽菌毒素、大腸菌由来エンテロトキシン、ブドウ球菌由来エンテロトキシン、サルモネラ菌由来エンテロトキシン又はセレウス菌由来エンテロトキシンを認識する、[3]又は[4]に記載のダイヤモンド電極。
【0015】
[7] [2]から[6]のいずれかに記載されたダイヤモンド電極を備えた、装置。
【0016】
[8] [2]から[6]のいずれかに記載された電極又は[7]に記載された装置を用いた、病原体又はタンパク質の検出方法。
【0017】
[9] ダイヤモンド電極の表面に、以下の式(1)で表されるリンカー化合物を固定化する工程を含む、ダイヤモンド電極の製造方法。
【化3】
JP2019139009A1_000005t.gif
(式(1)中、
Aは、ジアゾニオ基、アミノ基、カルボキシ基、カルボニル基、アルデヒド基、水酸基、又はニトロ基であり、
及びBは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立に以下の式(2)で表され、
【化4】
JP2019139009A1_000006t.gif
(式(2)中、
は、-NHCO-又は-CH-であり、
は、置換基を有してもよい2価の炭化水素基であり、
Rは、プロパルギル基である。)
Lは、芳香環である。)
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、検出対象を高感度で検出できる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ダイヤモンド電極へのリンカー化合物の固定化、及び糖鎖による修飾の方法の一例を示す図である。
【図2】本発明の一態様に係るリンカー化合物を用いた場合のEIS測定の結果である。
【図3】従来のリンカー化合物を用いた場合のEIS測定の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。

【0021】
<リンカー化合物>
本発明のリンカー化合物は、以下の式(1)で表される。本発明のリンカー化合物は、後述するダイヤモンド電極の表面に固定化されることで、ダイヤモンド電極を用いた検出系の感度を高めることができる。また、本発明のダイヤモンド電極において、検出対象を認識する分子は、本発明のリンカー化合物を介して固定化される(ただし、本発明のリンカー化合物を介してダイヤモンド電極の表面に固定化された検出対象を認識する分子と、ダイヤモンド電極の表面に直接固定化された検出対象を認識する分子とが併存する態様は排除されない。)。以下、検出対象を認識する分子を「認識分子」ともいう。

【0022】
【化5】
JP2019139009A1_000007t.gif
(式(1)中、
Aは、ジアゾニオ基、アミノ基、カルボキシ基、カルボニル基、アルデヒド基、水酸基、又はニトロ基であり、
及びBは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立に以下の式(2)で表され、
【化6】
JP2019139009A1_000008t.gif
(式(2)中、
は、-NHCO-又は-CH-であり、
は、置換基を有してもよい2価の炭化水素基であり、
Rは、プロパルギル基である。)
Lは、芳香環である。)

【0023】
上記のとおり、本発明のリンカー化合物は、末端に2つのプロパルギル基を有する分岐型の構造を有する。本発明者の検討の結果、このような構造を有するリンカー化合物によれば、ダイヤモンド電極表面面積当たりのリンカー化合物の固定化量が相対的に少ない場合であっても、認識分子と検出対象との親和性を高めることができ、その結果、より高感度で検出対象を検出できることが見出された。その理由は定かではないが、以下のように推察される。すなわち、本発明のリンカー化合物は、2つのプロパルギル基を介して認識分子を提示する。そうすると、ダイヤモンド電極表面面積当たりのリンカー化合物の固定化量に関わらず、検出対象とリンカー化合物とは、少なくとも2点(2つのプロパルギル基)を介して結合する可能性が高くなる。これにより、本発明のリンカー化合物は、分岐型構造を有さないリンカー化合物と比較して、検出対象との親和性を高め得る。

【0024】
本発明のリンカー化合物と、検出対象との親和性は、例えば、本発明のリンカー化合物におけるB及びBの炭素鎖の長さ等を、検出対象の大きさ等に応じて適宜調整することで、制御し得る。

【0025】
式(1)中、Aはダイヤモンド電極と反応することができる官能基である。ダイヤモンド電極の表面との反応性が良好であるという観点から、Aはジアゾニオ基が好ましい。ジアゾニオ基は1価のカチオン性基であるので、Aがジアゾニオ基である場合、本発明のリンカー化合物とともにカウンターアニオンが併存していてもよい。このようなカウンターアニオンとしては、BF4が挙げられる。

【0026】
式(1)中、B及びBは、それぞれ、検出対象を認識する分子と反応することができる官能基を有し、式(2)で表される。B及びBのいずれもプロパルギル基を含むので、本発明のリンカー化合物は、末端に2つのプロパルギル基を有する分岐型の構造を有する。

【0027】
式(2)中、Xは、-NHCO-又は-CH-のいずれであってもよい。

【0028】
式(2)中、Xにおける2価の炭化水素基は、例えば、2価の脂肪族基であってもよく、2価のアリール基であってもよい。

【0029】
式(2)中、Xにおける2価の炭化水素基が2価の脂肪族基である場合、2価の脂肪族基は、直鎖状、分鎖状、環状のいずれの形態であってもよく、これらの構造を組み合わせた形態であってもよい。より具体的には、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、シクロアルキニレン基等であってもよく、これらが互いに結合した構造であってもよい。2価の脂肪族基は、飽和脂肪族基であってもよく、不飽和脂肪族基であってもよく、不飽和結合を分子内及び/又は末端に1つ以上(例えば、1~5)有していてもよい。

【0030】
式(2)中、Xにおける2価の炭化水素基が2価のアリール基である場合、2価のアリール基は、例えば、フェニル基、ナフチル基、ナフトイル基、フェナレニル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基等であってもよい。

【0031】
式(2)中、Xにおける2価の炭化水素基を構成する炭素原子は、ヘテロ原子で置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。置換されてもよいヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられ、ヘテロ原子で置換される態様として、ヘテロアリール基に置換されているものであってもよい。ヘテロアリール基の具体例としては、例えば、エポキシ基、チエニル基、ベンゾチエニル基、フリル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピロリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリル基、イソインドール基、キノリル基、キノキサリル基、イソキノリル基、イソキサゾリル基、テトラゾリル基、フタラジル基、イミダゾピリジル基、ナフチリジル基、キナゾリル基、アクリジニル基等が挙げられる。

【0032】
式(2)中、Xにおける2価の炭化水素基の炭素数は、例えば、1~50での範囲内であってもよく、1~30であることが好ましく、1~20であることがより好ましく、1~10であることがさらに好ましい。Xにおける2価の炭化水素基は、特に、直鎖状の炭素鎖を含むことが好ましく、直鎖状の炭素鎖の炭素数が、1~50であることが好ましく、1~30であることがより好ましく、1~20であることがさらに好ましく、1~10であることがさらにより好ましい。

【0033】
式(2)中、Rはプロパルギル基である。本発明のリンカー化合物は、このプロパルギル基を介して、認識分子と結合する。

【0034】
式(1)中、Lは芳香環であり、例えば、置換されてもよい芳香族性の炭素環や複素環であってもよい。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられる。芳香環はアルキル基、アリール基、ハロゲン基、水酸基等によって置換されていてもよい。Lが芳香環であることで、リンカー化合物における官能基A(ジアゾニオ基等)と、ダイヤモンド電極表面との反応が進行し、本発明のリンカー化合物をダイヤモンド電極表面に固定化できる。

【0035】
本発明のリンカー化合物の一例を以下に示す。

【0036】
【化7】
JP2019139009A1_000009t.gif

【0037】
(認識分子)
本発明のリンカー化合物は、官能基R(プロパルギル基)が認識分子によって修飾され得る。認識分子によって修飾された本発明のリンカー化合物を用いることで、該認識分子に対応した検出対象を特異的に検出することができる。なお、本発明において「検出対象を認識する分子」及び「認識分子」とは、検出対象と相互作用、結合、又は会合する分子を意味する。

【0038】
認識分子は、以下のような構造を有していることが好ましい。
C-rec
(式中、recは検出対象を認識する部分、Cはプロパルギル基と反応することのできる官能基を意味する。)

【0039】
上記認識分子において、Cは、アジド基等が好ましい。

【0040】
認識分子は、検出対象と相互作用したときに、ダイヤモンド電極に電流が流れるものであれば、どのようなものでもよい。例えば、認識分子は糖鎖、又はペプチドであってもよい。なお、本発明において、「ペプチド」には、抗体又はその抗原結合性ドメインが包含され得る。

【0041】
認識分子が糖鎖である場合、検出対象を認識できる糖鎖であれば、単糖、オリゴ糖、多糖のいずれであってもよい。検出対象がインフルエンザウイルスである場合には、認識分子は、シアル酸や硫酸基を含む糖を有する糖鎖(単糖、オリゴ糖又は多糖)が好ましい。

【0042】
糖鎖は、天然物からの抽出、有機合成、酵素合成、微生物による合成、細胞を用いた合成等によって作製できる。また、認識分子を構成する糖鎖の種類としては、1種類でもよく、複数種類の混合物であってもよい。

【0043】
認識分子がペプチドである場合、検出対象を認識できるペプチドであればペプチドの長さに特に限定されない。ペプチドは、標的を認識するタンパク質(抗体等)の全長配列又は部分配列、ペプチドライブラリーから探索された配列等であってもよい。例えば、ペプチドライブラリーから探索された配列として、ファージディスプレイ法により探索されたインフルエンザを認識するペプチド等が挙げられる。このようなペプチドは、特許第5093100号、特願2015-093132に記載された方法に準じて作製できる。

【0044】
認識分子が認識する検出対象としては、病原体又はタンパク質が挙げられる。具体的には、以下のものが挙げられる;インフルエンザウイルス、DNAウイルス、RNAウイルス、2本鎖DNAウイルス、1本鎖DNAウイルス、2本鎖RNAウイルス、1本鎖RNA(+)鎖ウイルス、1本鎖RNA(-)鎖ウイルス、1本鎖RNA逆転写ウイルス、2本鎖DNA逆転写ウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、風疹ウイルス、麻疹ウイルス、RSウイルス、ヘルペスウイルス、肝炎ウイルス、アデノウイルス、口蹄疫ウイルス、狂犬病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、マイコプラズマ菌、ボツリヌス菌、百日咳菌、破傷風菌、ジフテリア菌、コレラ菌、赤痢菌、炭疽菌、病原性大腸菌、ブドウ球菌、サルモネラ菌、ウェルシュ菌又はセレウス菌。

【0045】
上記の検出対象としては、より具体的には、以下のものも挙げられる;インフルエンザウイルスのヘマグルチニンタンパク質(HA)、インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼ(NA)、M1タンパク質若しくはM2タンパク質、マイコプラズマ細菌のP1タンパク質、膜抗原タンパク質若しくはリボソームタンパク質L7/L12、ボツリヌス毒素、百日咳毒素、破傷風菌毒素、ジフテリア毒素、ウェルシュ菌のα毒素、コレラ菌毒素、ベロ毒素、炭疽菌毒素、大腸菌由来エンテロトキシン、ブドウ球菌由来エンテロトキシン、サルモネラ菌由来エンテロトキシン又はセレウス菌由来エンテロトキシン。

【0046】
認識分子が認識する検出対象としては、上記のうちHAが特に好ましい。HAは、インフルエンザウイルスの表面に提示されており、かつ、宿主細胞への感染に寄与しており、インフルエンザワクチンの主要な成分として利用されているタンパク質である。そのため、HAは比較的検出されやすく、インフルエンザウイルスの特異的な指標となり得る。

【0047】
本発明のリンカー化合物を認識分子によって修飾する方法としては、任意の連結反応を採用できる。具体的には、ヒュスゲン環化付加反応(クリック反応とも呼ばれる。)、グレーサー反応、薗頭カップリング、鈴木・宮浦カップリング反応等を用いることができ、共有結合を形成するものが好ましいがこれに限らない。

【0048】
認識分子による本発明のリンカー化合物の修飾は、任意のタイミングで行うことができる。例えば、本発明のリンカー化合物を、後述するダイヤモンド電極に固定化する前又は固定化した後のいずれのタイミングで修飾してもよい。ただし、作業性の観点から、ダイヤモンド電極に固定化した後に修飾することが好ましい。

【0049】
認識分子によって修飾されたリンカー化合物が固定化されたダイヤモンド電極においては、電極に電位が印加された状態で認識分子が検出対象を認識すると、電気化学反応により電流が流れる。この電流を測定することにより、検出対象を検出することができる。なお、本発明において「検出」とは、定性的検出及び定量的検出を包含し、検出対象を特異的に見出すことができることを意味する。

【0050】
<ダイヤモンド電極>
本発明のダイヤモンド電極は、ダイヤモンド電極の表面に、本発明のリンカー化合物を固定化することで得られる。本発明のダイヤモンド電極は作用電極に相当する。

【0051】
本発明のダイヤモンド電極は、以下の構造を有する。
Electrode-Lin
(式中、Electrodeはダイヤモンド電極、Linは本発明のリンカー化合物を意味する。)

【0052】
また、リンカー化合物が認識分子によって修飾されていれば、本発明のダイヤモンド電極は、以下の構造を有する。
Electrode-Lin-REC
(式中、Electrodeはダイヤモンド電極、Linは本発明のリンカー化合物、RECは認識分子を意味する。)

【0053】
本発明のリンカー化合物を固定化させるダイヤモンド電極の構成(材料、形状、大きさ等)は特に限定されない。例えば、特開2006-98281号公報、特開2011-152324号公報又は特開2015-172401号公報等の記載に基づき作製されたダイヤモンド電極であってもよい。例えば、ダイヤモンド電極は以下の構成を備えていてもよい。

【0054】
ダイヤモンド電極は、通常、基板、該基板上のダイヤモンド層を少なくとも有する。該ダイヤモンド層において、基板とは逆側の表面に本発明のリンカー化合物が固定化される。基板上のダイヤモンド層は微量の不純物がドープされた導電性ダイヤモンドであってもよい。不純物としては、ホウ素(B)、硫黄(S)、窒素(N)、酸素(O)、ケイ素(Si)等が挙げられる。本発明の効果が奏されやすいという観点から、本発明のダイヤモンド電極はホウ素ドープダイヤモンド電極であることが好ましい。

【0055】
基板の大きさは特に限定されないが、mL単位若しくはμL単位の試料溶液を測定できる面積を有するものが好ましい。基板は例えば直径1~10cm、厚み0.1mm~5mmのものとすることができる。基板はSi基板、SiO等のガラス基板や石英基板、Al等のセラミックス基板、タングステン、モリブデン等の金属であってもよい。基板の表面の全部又は一部をダイヤモンド層とすることができる。ダイヤモンド層の全部又は一部を電気化学的測定に用いることができる。

【0056】
基板へのダイヤモンド層の蒸着は、通常のマイクロ波プラズマ化学気相成長法(MPCVD)等によって実施できる。

【0057】
本発明のリンカー化合物をダイヤモンド電極表面に固定化する方法としては、本発明のリンカー化合物における官能基L(芳香環)と、ダイヤモンド電極表面とを反応させることができる任意の方法を採用できる。このような方法としては、電解グラフトが挙げられる。なお、本発明において、「固定化」とは、本発明のリンカー化合物とダイヤモンド電極表面とが、共有結合によって連結されていることを意味する。

【0058】
本発明のリンカー化合物の固定化量は、検出対象の種類や、実現しようとする検出感度等に応じて適宜設定できるが、例えば、ダイヤモンド電極表面面積当たり、0.1~80pmol/cmとなる量で固定化させてもよい。本発明のリンカー化合物は、上述のとおり分岐型の構造を有するので、相対的に低い固定化量であっても、検出対象との親和性を十分に高め得る。

【0059】
<装置>
本発明の装置は、少なくとも本発明のダイヤモンド電極を備える。本発明のダイヤモンド電極は作用電極として機能する。本発明の装置は任意の構成を採用でき、例えば、参照電極(基準電極)、対電極、電圧印加部、電流測定部及び任意の記録手段を有していてもよい。

【0060】
本発明の装置は三極電極(作用電極、対電極及び参照電極)を備えていることが好ましい。ある実施形態において本発明の装置は、さらにポテンシオスタット及びこれに接続された交流発信機並びにロックインアンプを有する。この装置は電気化学インピーダンス測定(交流インピーダンス測定)を行うことができる。

【0061】
本発明の装置が三極電極を備えている場合、参照電極側の抵抗は高く設定されており、作用電極と参照電極との間では電流は流れない。対電極は特に限定されないが、例えば銀線や白金線を使用できる。参照電極は特に限定されないが、安定性や再現性等の観点から銀-塩化銀電極(Ag/AgCl)が好ましい。作用電極、対電極及び参照電極のセンサーにおける大きさ及び位置関係は、適宜設計することができるが、作用電極、対電極及び参照電極はいずれも測定試料と同時に接触可能であるように設計、配置される。

【0062】
<検出方法>
本発明のダイヤモンド電極、又は該電極を備える装置によって、検出対象を検出することができる。「検出対象」とは、認識分子が特異的に認識する対象であり、具体的には、認識分子が認識する検出対象として上述したもの(病原体又はタンパク質等)が挙げられる。

【0063】
本発明のダイヤモンド電極を、検出対象を含む試料と接触させると、本発明のリンカー化合物を修飾する認識分子が、検出対象を認識する。このとき、電極に電位が印加されていると電流が生じる。該電流を測定することにより試料中の検出対象を検出することができる。電流は、電気化学インピーダンス測定法、サイクリックボルタンメトリーによって測定することができる。

【0064】
電気化学インピーダンス測定にはポテンシオスタットに交流発信機を接続したものを使用する。ポテンシオスタットを使用して電極に直流の一定電位を印加し、交流発信機を使用して±5~10mVの交流電位を重ねあわせて印加する。また、発信機からポテンシオスタットへ入力した交流と同じ位相の交流波をロックインアンプにも入力する。これにより流れる電流は直流電流と交流電流が合わさったものとなり、ロックインアンプは電流の交流成分と発信機からの交流とを比較してインピーダンスと両者の位相差が出力される。発信機からの交流周波数を少しずつ変化させ、それぞれの周波数で得られるインピーダンスと位相差とに基づき複素数平面プロット等を行う。この場合、既知の濃度又は量の検出対象について、ナイキストプロットにより電極のインピーダンス(電荷移動抵抗Rct)を決定して、濃度又は量とRctとの関係をプロットした検量線を作成しておき、測定試料についてのRct値から、当該試料中に含まれる検出対象の濃度又は量を算出することができる。

【0065】
サイクリックボルタンメトリーは、電位を変動(掃引)させる手法を用いて行う。具体的には、電極電位を初期電位(E)から掃引速度(v)で反転電位(Eλ)まで掃引した後逆転し、Eまで戻したときに得られる電流を観測する。初期電位Eを電極反応の起こらない電位に、また反転電位Eλを電極反応が拡散律速となるような電位に設定することで、電流電位グラフ(サイクリックボルタモグラム)を得ることができる。初期電位、掃引速度、反転電位等は適宜設定することができる。この場合、既知の濃度又は量の検出対象について、ピーク電流値を決定しておき、濃度又は量とピークの電流密度との関係をプロットした検量線を作成しておき、測定試料についてのピーク電流値から、当該試料中に含まれる検出対象の濃度又は量を算出することができる。

【0066】
本発明のダイヤモンド電極、又は該電極を用いて検出を行う対象である試料の態様は特に限定されない。試料としては、任意の溶液(例えば生物学的試料、飲料水、及びウイルス等の病原体又は毒素に汚染されている可能性のある溶液)が挙げられる。生物学的試料としては、例えば唾液、痰、涙液、体液、血液、細胞破砕液等が挙げられる。試料の由来は特に限定されないが動物、哺乳動物、マウス、ラット、ヒト、鶏卵、細胞等が挙げられる。試料の量は特に限定されず、1μL~10mLであってもよい。試料は濃縮してもよく、そのまま測定に供してもよい。

【0067】
検出の際に用いる溶媒は、作業性の観点から、水系が好ましい。電流の測定を行う溶液には通常、支持電解質が含まれる。支持電解質はイオン性物質であり、特に限定されないが、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、硝酸カリウム、硫酸ナトリウム等が挙げられる。これらのうち、PBSが好ましい。
【実施例】
【0068】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0069】
<略号の意味>
本明細書において、以下の略語を用いることがある。
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
HBF:テトラフルオロホウ酸水溶液
MeOH:メタノール
TBA・PF:テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスファート
TBTA:トリス[(1-ベンジル-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)メチル]アミン
【実施例】
【0070】
<実施例:本発明のリンカー化合物を用いた検討>
以下の方法に基づき、リンカー化合物を合成し、次いで、該リンカー化合物をダイヤモンド電極表面に固定した。さらに、リンカー化合物のプロパルギル基を糖鎖で修飾した。
【実施例】
【0071】
(1)リンカー化合物の合成
以下のスキームに従い、本発明のリンカー化合物の一態様である「Amide-IPA-NBF」を合成した。
【実施例】
【0072】
(1-1)IPA-NHBocの合成
5-アミノイソフタル酸水和物(スキーム1中の「1」、IPA-NH;0.906g,5.00mmol)を、水酸化ナトリウム水溶液(NaOH;0.400g,10mmol/10mL)に溶解させ、氷浴にて0℃に冷却した。この溶液に、あらかじめ氷浴にて0℃に冷却した二炭酸ジ-tert-ブチル(スキーム1中の「2」、(Boc)O)の1,4-ジオキサン溶液(約30%;10mL)を、温度が0℃を維持するように徐々に滴下し、一晩撹拌した。さらに、希塩酸を加えpHを5程度とした際の析出物をろ過し、真空下60℃にて一晩乾燥させ、白色の粉末(スキーム1中の「3」、IPA-NHBoc;収量1.131g;収率80%)を得た。以下にNMRスペクトルの分析結果と反応スキームを示す。
【実施例】
【0073】
H NMR(400MHz,(CDSO)δ 9.79(s,1H),8.31(d,2H),8.08(t,1H),1.49(s,9H)
【実施例】
【0074】
【化8】
JP2019139009A1_000010t.gif
【実施例】
【0075】
(1-2)Amide-IPA-NHBocの合成
IPA-NHBoc(スキーム2中の「3」;2.314g、8.23mmol)をジメチルホルムアミド(DMF;40mL)に溶解させた。この溶液に4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(スキーム2中の「4」、DMT-MM;5.000g、18.1mmol)を加え、室温にて2時間撹拌した後、プロパルギルアミン(スキーム2中の「5」;0.995g、18.1mmol)を加え、室温にて一晩撹拌した。得られた反応液に酢酸エチルを加え、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順番で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。無水硫酸ナトリウムをろ別した後、溶液を濃縮した。濃縮後の残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相:ヘキサン-酢酸エチル=1:1(体積比))によって精製し、白色の粉末(スキーム2中の「6」、Amide-IPA-NHBoc;収量2.178g;収率74%)を得た。以下にNMRスペクトルの分析結果と反応スキームを示す。
【実施例】
【0076】
H NMR(400MHz,CDOD)δ 8.01(m,2H),7.86(m,1H),4.12(m,4H),2.62(m,2H),1.54(s,9H)
【実施例】
【0077】
【化9】
JP2019139009A1_000011t.gif
【実施例】
【0078】
(1-3)Amide-IPA-NHの合成
Amide-IPA-NHBoc(スキーム3中の「6」;1.066g、3.00mmol)をジクロロメタン(CHCl;30mL)に懸濁させた。この懸濁液にトリフルオロ酢酸(TFA、化学式CFCOOH;3.421g,30.0mmol)を徐々に滴下し、室温にて4時間撹拌した。次いで、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液によって中和した後、CHClを加え、水、飽和食塩水の順番で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。無水硫酸ナトリウムをろ別した後、溶液を濃縮した。濃縮後の残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相:ヘキサン-酢酸エチル=2:3(体積比))によって精製し、薄黄色の粉末(スキーム3中の「7」、Amide-IPA-NH;収量0.628g;収率82%)を得た。以下にNMRスペクトルの分析結果と反応スキームを示す。
【実施例】
【0079】
H NMR(400MHz,(CDSO)δ 8.74(t,2H),7.38(t,1H),7.14(d,2H),5.49(s,2H),4.12(dd,4H),3.12(t,2H)
【実施例】
【0080】
【化10】
JP2019139009A1_000012t.gif
【実施例】
【0081】
(1-4)Amide-IPA-NBF(本発明のリンカー化合物)の合成
Amide-IPA-NH(スキーム4中の「7」;3.063g、12.0mmol)をテトラフルオロホウ酸水溶液(HBF;25%、21.6mL)に溶解させ、食塩を混合させた氷浴にて-5℃に冷却した。この溶液に、あらかじめ食塩を混合させた氷浴にて-5℃に冷却した亜硝酸ナトリウム水溶液(NaNO;1.242g、18.0mmol/2.4mL)を温度が-5℃を維持するように徐々に滴下し、1.5時間撹拌した。得られた析出物をろ過し、冷水、冷メタノールの順番で洗浄した後、真空乾燥させ、ベージュ色の粉末(スキーム4中の「8」、Amide-IPA-NBF;収量4.088g;収率96%)を得た。以下にNMRスペクトルの分析結果と反応スキームを示す。
【実施例】
【0082】
H NMR(400MHz,(CDSO)δ 9.52(t,2H),9.24(d,2H),9.01(t,H),4.16(dd,4H),3.28(t,2H)
【実施例】
【0083】
【化11】
JP2019139009A1_000013t.gif
【実施例】
【0084】
本発明のリンカー化合物は、Amide-IPA-NBF(スキーム4中の「8」)のように、2つのプロパルギル基(HC≡C-CH-)を有する分岐型化合物である。また、本例で作製した本発明のリンカーは、ダイヤモンド電極と反応することのできる官能基Aとしてジアゾニオ基(-N≡N)を有する。
【実施例】
【0085】
(2)糖鎖の合成と構造解析
以下の方法に従い、本発明のリンカー化合物を修飾する糖鎖を合成した。
【実施例】
【0086】
(2-1)細胞の準備
MDCK細胞(コッカー・スパニエル雄犬腎臓上皮細胞由来細胞)を、10cmディッシュ当たりの細胞数が2.0×10個になるように、各10cmディッシュに播種した。これを18時間、37℃でインキュベートして細胞をディッシュ底に接着させた。
【実施例】
【0087】
(2-2)糖鎖プライマーの作製
M.C.Z.Kasuyaらの方法(Azido glycoside primer: a versatile building block for the biocombinatorial synthesis of glycosphingolipid analogues, M. C. Z. Kasuya, L. X. Wang, Y. C. Lee, M. Mitsuki, H. Nakajima, Y. Miura, T. Sato, K. Hatanaka, S. Yamagata, T. Yamagata, Carbohydr. Res., 329, 755-763 (2000))の方法に準じ、糖鎖プライマー(Lac-C12N3)を作製した。該糖鎖プライマーの構造を以下に示す。
【実施例】
【0088】
【化12】
JP2019139009A1_000014t.gif
【実施例】
【0089】
(2-3)糖鎖の合成
糖鎖プライマーをジメチルスルホキシド(DMSO)(Wako社製)に溶解して50mMになるように調製し、0.22μLメンブレンフィルター(Millipore)に通してからバイアルに入れて-30℃にて保存した。50mM糖鎖プライマー溶液を、1% Insulin-Transerrin-Selenium-A(Gibco)を加えたDMEM/F12で希釈し、50μM Lac-C12N3プライマー含有培地を作製した。これを、MDCK細胞のディッシュ12枚にそれぞれ5mLずつ加え、48時間、37℃でインキュベートした。
培地を遠沈管に回収し、各ディッシュにPBS(-)を3mLずつ加えて、セルスクレイパーで細胞を剥がした。PBS(-)をさらに1mL加えて同様に細胞を剥がした後、遠沈管に移し、4℃、1000rpmで5分間遠心した。回収した上清を培地画分とし、残りの沈殿物を細胞画分とした。
続いてSep-Pak C18カラム(型番「WAT023635」、Waters社製)による培地画分の精製を行った。MeOHでカラムを洗浄した後、MeOH、MilliQ水を10mLずつ流し、活性化及び平衡化を行った後、培地画分を2回流した。その後、MilliQ水20mLで洗浄し、MeOH/MilliQ=2/3(v/v)溶液を5mL流し、色素成分を除去した。続いてMeOH/MilliQ=3/2(v/v)溶液、MeOHを5mLずつ流し、それぞれを酸性糖鎖、中性糖鎖として回収した。
【実施例】
【0090】
(2-4)LC-MSによる配列解析
酸性糖鎖画分、中性糖鎖画分をMeOHに溶解させ、Minisart RC4フィルター(0.2μm)を取り付けた1.5mLチューブに入れ、遠心してから氷上で回収した。回収した酸性糖鎖画分と中性糖鎖画分について、LC-MS測定を行った。
LC-MSとしては、高速液体クロマトグラフィー(HPLC、Agilent 1100 Sereis LC system)と、エレクトロスプレーイオン化法/イオントラップ質量分析装置(ESI-IT-MS、amaZon SL、Bruker Daltonics)を用いた。Sep-Pak C18カラムによって、以下の条件で分離した糖脂質の酸性成分と中性成分を、順相カラム(Imtakt UK-Silica、150mm×2mm)をつないだHPLCによって分離した。
【実施例】
【0091】
[分離条件]
移動相A:クロロホルム/メタノール/50mM 酢酸-トリエチルアミン(pH=4.2)=83/16/1(v/v/v)
移動相B:メタノール/50mM 酢酸-トリエチルアミン(pH=4.2)=3/1(v/v)
カラム:Imtakt UK-Silica(150mm×2mm)
流速:0.1mL/min
injection:5μL
ESI-MS:negative ion mode
Dry Temperature:220℃
Nebulizer:14.50psi
Dry Gas:5.00l/min
scan range:m/z=500~1500
target mass:m/z=1000
【実施例】
【0092】
LC-MS解析によって、6種類の構造が検出され、IFVが結合することが知られている硫酸化糖鎖及びシアル酸含有糖鎖の存在が確認できた。得られた酸性糖鎖を以下の試験に糖鎖として用いた。
【実施例】
【0093】
(3)ダイヤモンド電極の作製
WO2016/175049に記載された方法に準じ、ダイヤモンド電極を作製した。具体的には、マイクロ波プラズマを用いた化学蒸着によりSi基板へダイヤモンド膜を合成した。炭素源としてメタンを使用し、ホウ素源としてトリメチルボランを使用した。ドープするトリメチルボランの原料に占める濃度は0.3%w/wだった。表面形態は走査型電子顕微鏡を用いて特徴付けした。薄膜の品質はラマン分光法により確認した。このようにして作製したホウ素ドープダイヤモンド(BDD)電極を用いた。
【実施例】
【0094】
(3-1)Si基板の前処理
ダイヤモンド粉末が入ったシャーレにSi基板(直径5.08cm、厚み0.75mm)の鏡面が下向きになるように配置し、20分間Si基板を手で回転させて基板表面に傷をつけた。その後、Si基板を2-プロパノールの入ったビーカーに浸し、20分間超音波照射し洗浄した。最後にN2ガスで溶媒を揮発させ乾燥させた。
【実施例】
【0095】
(3-2)Si基板上へのダイヤモンド膜の合成
マイクロ波プラズマを用いた化学的蒸着(CVD法、化学気相合成法)によるSi基板へのダイヤモンド膜の合成は、Plasma Deposition System(AX6500、セキテクノトロン株式会社)を用いて行った。原料気体にはメタン、トリメチルボラン、水素、酸素の4種類を用いた。ホウ素の仕込み濃度が0.3%w/wとなるように設定し、5時間反応させた。合成条件を下記に示す。
【実施例】
【0096】
【表1】
JP2019139009A1_000015t.gif
【実施例】
【0097】
(3-3)電極、溶液の準備
TBA・PFを3.87g(0.01mol)量りとり、アセトニトリル(AN)を加えて100mMテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロリン酸(TBAPF)溶液を作製した。下記に示すようにセルを組んだ。CV測定には三電極法(作用電極:ダイヤモンド電極、対電極:Pt、参照電極:Ag/AgCl)を用いた。
【実施例】
【0098】
【表2】
JP2019139009A1_000016t.gif
【実施例】
【0099】
(4)ダイヤモンド電極へのリンカー化合物の固定化、及び糖鎖による修飾
リンカー化合物を、ジアゾニオ基を介して、電解グラフトによってダイヤモンド電極の表面に固定化させた。次いで、クリック反応により、糖鎖によってリンカー化合物を修飾した。その概要を図1に示した。
【実施例】
【0100】
(4-1)電解グラフト
サンプル瓶に、リンカー化合物を17.7mg(Mw=354.09、0.05mmol)秤量し、事前に調製したTBA・PF 5mL(100mM)に溶解させ、10mMのリンカー溶液を作製した。この溶液の全量をセルに加えて、-0.7~+0.6Vで5回CV測定(電解グラフト)を行った。
【実施例】
【0101】
なお、電解グラフトの条件は下記のとおりである。
対電極:Pt
参照電極:Ag/AgCl
走査速度:50mV/s
電解液:100mM TBA・PF
【実施例】
【0102】
(4-2)クリック反応
クリック反応に用いる反応溶液の組成を表3に示した。なお、表3中、「acidic glycan」は、上記(2-3)で得られた糖鎖(酸性糖鎖)を意味する。
反応溶液は、以下の方法で作製した。まず、酸性糖鎖17.2nmolが含まれる遠沈管にMeOHを250μl加えてピペッティングした。この操作を計2本の酸性糖含有遠沈管に対して行ったのち、1つにまとめた。次いで、この遠沈管に調製済みのTBTA、CuSO、L-アスコルビン酸Naを、それぞれ500μLずつ加えて計2mLの溶液を作製し、ボルテックスを行い撹拌した。撹拌後、電解グラフト後の2つのセルに1mLずつ溶液を加え、セルにパラフィルムをかぶせて1.5時間振とうし、反応させた。
【実施例】
【0103】
【表3】
JP2019139009A1_000017t.gif
【実施例】
【0104】
(5)ヘマグルチニンタンパク質(HA)の検出
以下の方法に従い、糖鎖によって修飾されたリンカー化合物が固定化されたダイヤモンド電極を用い、電気化学インピーダンス測定(EIS測定)によってヘマグルチニンタンパク質を検出した。
【実施例】
【0105】
(5-1)酸化還元物質溶液の調製
[Fe(CN)](型番「169-03721」、Wako社製)、K[Fe(CN)](型番「161-03742」、Wako社製)を、それぞれ0.164g、0.211gずつ量りとり、別々の50mLメスフラスコに加えた。それぞれをPBS 50mLに溶解させ、10mM K[Fe(CN)]/PBS、及び、10mM K[Fe(CN)]/PBSを調製した。これらを1:1(v/v)で混合し、100mLの5mM [Fe(CN)3-/4-/PBSを調製した。
【実施例】
【0106】
(5-2)ヘマグルチニンタンパク質(HA)溶液の調製
HAとして、H1N1(A/New Caledonia/20/99)のウイルス脂質膜を分解して取り出したもの(三量体、約210kDa)を用いた。HA濃度954μg/mL(=4.54μM)の溶液を原液として、0、5、50、125、250、375、500nM(それぞれ、おおよそ、0、1、10、25、50、75、100μg/mL)のHA段階希釈溶液を氷上で調製した。溶媒にはPBS(-)を使用した。またHAと同濃度のウシ血清アルブミン(BSA)を調製し、ネガティブコントロールとした。
【実施例】
【0107】
(5-3)電気化学インピーダンス測定(EIS測定)
制御PCのパラメーターを表4のように設定し、WO2016/175049に記載された方法に準じ、各濃度のHA溶液を糖鎖固定化電極と相互作用させた。
具体的には、まず、ダイヤモンド電極を用いてセル(Oリング:φ=2.8 mm)を組み立てた。まず、PBSを5分相互作用させた。次いで、5mM[Fe(CN)3-/4-/PBSを2mLセルに加え、バックグラウンドを3サイクル測定した。その後、PBS 3mLをセルの中央付近に当てながら、3回洗い流した。続いて、PBSで希釈したHA溶液をセル内に50μL加えて30分間、相互作用させた。30分後、完全に溶液を取り除き、PBSで3回洗い流し、非特異吸着を除去した。完全にPBS溶液を取り除いた後、5mM [Fe(CN)3-/4-/PBSをセルに2mL加えて3サイクル測定した。この操作をHA溶液(0~500nM)及びBSA溶液(0~500nM)を用いて、それぞれについて行った。
【実施例】
【0108】
【表4】
JP2019139009A1_000018t.gif
【実施例】
【0109】
(6)結果及び考察
EIS測定の結果を図2に示す。HAについては、HAの濃度依存的にRct値が増加した。Rct値は抵抗値を表し、この値がHAの濃度依存的に増加したことは、HAの濃度に応じた検出ができたことを意味する。
【実施例】
【0110】
他方、BSA(対照)については、BSAの濃度とRct値に相関が認められなかった。
【実施例】
【0111】
以上のことから、本発明のリンカー化合物を用いて糖鎖を提示したダイヤモンド電極により、HAを高感度かつ特異的に検出できることがわかった。
【実施例】
【0112】
<参考例:従来のリンカー化合物を用いた検討>
参考として、本発明のリンカー化合物の代わりに、従来のリンカー化合物を用いて、上記実施例と同様の試験を行った。従来のリンカー化合物としては、「TIPS-Eth-Ar-NBF」(WO2016/175049を参照。)を用いた。このリンカー化合物は分岐構造を有さない化合物である。「TIPS-Eth-Ar-NBF」の構造を下記に示す。
【実施例】
【0113】
【化13】
JP2019139009A1_000019t.gif
【実施例】
【0114】
WO2016/175049に記載された方法に準じ、電解グラフトによって「TIPS-Eth-Ar-NBF」をダイヤモンド電極に固定化し、次いで脱保護してアルキニル基を提示させた。続いて、上記と同様にして、糖鎖の修飾、及び、EIS測定によるHAの検出を行った。EIS測定の結果を図3に示す。
【実施例】
【0115】
図3に示されるとおり、HAについては、HAの濃度依存的にRct値がやや増加した。他方、BSA(対照)については、BSAの濃度とRct値に相関が認められなかった。したがって、従来のリンカー化合物を用いて糖鎖を提示したダイヤモンド電極により、HAを特異的に検出できることがわかった。
【実施例】
【0116】
しかし、図2と図3との比較から理解されるとおり、本発明のリンカー化合物を用いた場合(図2)と比較すると、従来のリンカー化合物においては、Rct値変化率(ΔRct/Rct)が低かった。Rct値変化率が高いほど、より高い感度で検出できていることを意味する。
【実施例】
【0117】
以上のことから、本発明のリンカー化合物によれば、従来のリンカー化合物よりも高感度な検出を実現できることがわかった。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2