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明細書 :タグペプチド

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2021-023225 (P2021-023225A)
公開日 令和3年2月22日(2021.2.22)
発明の名称または考案の名称 タグペプチド
国際特許分類 C12N  15/62        (2006.01)
C12N  15/63        (2006.01)
C07K  19/00        (2006.01)
C07K  14/00        (2006.01)
C12N   1/15        (2006.01)
C12N   1/19        (2006.01)
C12N   1/21        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
C12N  15/54        (2006.01)
FI C12N 15/62 ZNAZ
C12N 15/63 Z
C07K 19/00
C07K 14/00
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
C12N 15/54
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2019-144652 (P2019-144652)
出願日 令和元年8月6日(2019.8.6)
発明者または考案者 【氏名】三浦 夏子
【氏名】片岡 道彦
【氏名】内海 亮太郎
出願人 【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
個別代理人の代理人 【識別番号】100065248、【弁理士】、【氏名又は名称】野河 信太郎
【識別番号】100159385、【弁理士】、【氏名又は名称】甲斐 伸二
【識別番号】100163407、【弁理士】、【氏名又は名称】金子 裕輔
【識別番号】100166936、【弁理士】、【氏名又は名称】稲本 潔
【識別番号】100174883、【弁理士】、【氏名又は名称】冨田 雅己
【識別番号】100213849、【弁理士】、【氏名又は名称】澄川 広司
審査請求 未請求
テーマコード 4B065
4H045
Fターム 4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA87X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA60
4H045AA10
4H045BA18
4H045BA19
4H045CA10
4H045DA89
4H045EA50
要約 【課題】新規なタグペプチドを提供すること。
【解決手段】酵母のピルビン酸キナーゼ(Cdc19p)のアミノ酸配列の33位~74位サブ配列、129位~158位サブ配列、217位~243位サブ配列及び373位~404位サブ配列の少なくとも1つのサブ配列を含む450アミノ酸以下の断片からなるタグペプチドを提供する。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
配列番号2に記載のアミノ酸配列の129位~158位サブ配列、373位~404位サブ配列、217位~243位サブ配列及び33位~74位サブ配列の少なくとも1つのサブ配列を含む450アミノ酸長以下の断片からなるタグペプチド。
【請求項2】
前記断片が100アミノ酸長以下である請求項1に記載のタグペプチド。
【請求項3】
以下の(i)又は(ii)のタグペプチド:
(i)配列番号6、10、8又は4に記載のアミノ酸配列からなるタグペプチド、
(ii)アミノ酸配列(i)のN末端-及び/又はC末端-欠失配列からなり、かつ自己集合能を有するタグペプチド。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のタグペプチドを含む融合ペプチド。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載のタグペプチド又は請求項4に記載の融合ペプチドをコードする核酸配列からなる核酸分子。
【請求項6】
請求項5に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項7】
請求項5に記載の核酸分子又は請求項6に記載のベクターを含む細胞。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規タグペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
酵母において、解糖系酵素が、低酸素条件下で、G-body(Glycolytic body)と呼ばれるタンパク質集合体を形成することが知られている(非特許文献1)。
Miura Nら(非特許文献1)は、解糖系酵素エノラーゼ(Eno2p)のN-末端配列(5~25アミノ酸)が低酸素条件下でのG-bodyの形成に寄与していることを見出した。
エノラーゼのN-末端配列以外には、G-bodyの形成に寄与するアミノ酸配列は特定されていない。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】Jin M, Fuller GG, Han T, Yao Y, Alessi AF, Freeberg MA, Roach NP, Moresco JJ, Karnovsky A, Baba M, Yates JR, 3rd, Gitler AD, Inoki K, Klionsky DJ, Kim JK (2017) Glycolytic Enzymes Coalesce in G Bodies under Hypoxic Stress. Cell Reports 20 (4):895-908
【非特許文献2】Miura N, Shinohara M, Tatsukami Y, Sato Y, Morisaka H, Kuroda K, Ueda M (2013) Spatial reorganization of Saccharomyces cerevisiae enolase to alter carbon metabolism under hypoxia. Eukaryotic Cell 12 (8):1106-1119
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、酵母のピルビン酸キナーゼ(Cdc19p)のアミノ酸配列の特定のサブ配列を含む断片からなるペプチドが過剰発現時に正常酸素条件下で自己集合能を示し得ることを見出した。
したがって、本発明の1つの形態によれば、配列番号2に記載のアミノ酸配列の33位~74位サブ配列、129位~158位サブ配列、217位~243位サブ配列及び373位~404位サブ配列の少なくとも1つのサブ配列を含む400アミノ酸以下の断片からなるタグペプチドが提供される。
【0005】
本発明の別の1つの形態によれば、以下の(i)又は(ii)のタグペプチド:
(i)配列番号2に記載のアミノ酸配列の33位~74位サブ配列、129位~158位サブ配列、217位~243位サブ配列若しくは373位~404位サブ配列からなるタグペプチド、
(ii)アミノ酸配列(i)のN末端-及び/若しくはC末端-欠失配列からなり、かつ自己集合能を有するタグペプチド
が提供される。
【0006】
本発明の別の1つの形態によれば、上記のタグペプチドを含む融合ペプチドが提供される。
本発明の別の1つの形態によれば、上記のタグペプチド又は上記の融合ペプチドをコードする核酸配列からなる核酸分子が提供される。
本発明の別の1つの形態によれば、上記の核酸分子を含むベクターが提供される。
本発明の別の1つの形態によれば、上記の核酸分子又は上記のベクターを含む細胞が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、新規なタグペプチドが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例(実験1)において作製したCDC19p断片を示す。
【図2】実施例においてCDC19p断片の過剰発現に用いたプラスミドの遺伝子地図を示す。
【図3】実施例(実験1)で作製したCDC19p断片-緑色蛍光タンパク質(GFP)融合タンパク質の集合体形成を示す。
【図4】実施例(実験1)で作製した融合タンパク質の集合体形成率を示す。
【図5】実施例(実験2)で作製した融合タンパク質の集合体形成率を示す。
【図6】細胞外に取り出された融合タンパク質の集合体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<タグペプチド>
本発明のタグペプチドは、配列番号2に記載のアミノ酸配列の33位~74位サブ配列、129位~158位サブ配列、217位~243位サブ配列及び373位~404位サブ配列の少なくとも1つのサブ配列を含む400アミノ酸以下の断片からなることを特徴とする。
本発明は、後述する実施例に記載されるとおり、配列番号2に記載のアミノ酸配列の33位~74位サブ配列(NPETLVALRKAGLNIVRMNFSHGSYEYHKSVIDNARKSEELY;配列番号4)、129位~158位サブ配列(DYKNITKVISAGRIIYVDDGVLSFQVLEVV;配列番号6)、217位~243位サブ配列(TANDVLTIREVLGEQGKDVKIIVKIEN;配列番号8)及び373位~404位サブ配列(PKPTSTTETVAASAVAAVFEQKAKAIIVLSTS;配列番号10)の少なくとも1つのサブ配列を含む断片からなるペプチドが、過剰発現時に正常酸素条件下で自己集合し得るという新たな知見に基づく。
本発明のタグペプチドは、例えば、組換え発現したペプチド又はタンパク質の宿主細胞からの回収に利用可能である。

【0010】
本明細書において、配列番号2に記載のアミノ酸配列の33位~74位サブ配列(配列番号4)を含む断片は、例えば、配列番号2に記載のアミノ酸配列の33位~106位サブ配列(配列番号11)、33位~140位サブ配列(配列番号12)、33位~158位サブ配列(配列番号13)、33位~243位サブ配列(配列番号14)若しくは33位~404位サブ配列(配列番号15)からなるか又は該サブ配列を含む断片であり得、配列番号4からなる断片であってもよい。
本明細書において、配列番号2に記載のアミノ酸配列の129位~158位サブ配列(配列番号6)を含む断片は、例えば、配列番号2に記載のアミノ酸配列の33位~158位サブ配列(配列番号13)、33位~243位サブ配列(配列番号14)、33位~404位サブ配列(配列番号15)、75位~158位サブ配列(配列番号16)、107位~158位サブ配列(配列番号17)、129位~243位サブ配列(配列番号18)若しくは129位~404位サブ配列(配列番号19)からなるか又は該サブ配列を含む断片であり得、配列番号6からなる断片であってもよい。

【0011】
本明細書において、配列番号2に記載のアミノ酸配列の217位~243位サブ配列(配列番号8)を含む断片は、例えば、配列番号2に記載のアミノ酸配列の33位~243位サブ配列(配列番号14)、33位~404位サブ配列(配列番号15)、129位~243位サブ配列(配列番号18)、129位~404位サブ配列(配列番号19)、171位~257位サブ配列(配列番号20)、192位~257位サブ配列(配列番号21)若しくは217位~404位サブ配列(配列番号22)からなるか又は該サブ配列を含む断片であり得、配列番号8からなる断片であってもよい。
本明細書において、配列番号2に記載のアミノ酸配列の373位~404位サブ配列(配列番号10)を含む断片は、例えば、配列番号2に記載のアミノ酸配列の33位~404位サブ配列(配列番号15)、129位~404位サブ配列(配列番号19)、217位~404位サブ配列(配列番号22)若しくは373位~500位サブ配列(配列番号23)からなるか又は該サブ配列を含む断片であり得、配列番号10からなる断片であってもよい。

【0012】
本明細書において、配列番号2に記載のアミノ酸配列の33位~74位サブ配列、129位~158位サブ配列、217位~243位サブ配列及び373位~404位サブ配列の少なくとも1つのサブ配列を含む断片は、450アミノ酸長以下であり、例えば400アミノ酸長以下、より具体的には375アミノ酸長以下、より具体的には350アミノ酸長以下、より具体的には300アミノ酸長以下、より具体的には250アミノ酸長以下、、より具体的には200アミノ酸長以下、より具体的には150アミノ酸長以下、より具体的には100アミノ酸長以下、より具体的には90アミノ酸長以下、より具体的には80アミノ酸長以下、より具体的には70アミノ酸長以下、より具体的には60アミノ酸長以下、より具体的には50アミノ酸長以下、より具体的には45アミノ酸長以下、より具体的には40アミノ酸長以下であり得る。

【0013】
本明細書において、配列番号4、6、8又は10に記載のアミノ酸配列は、自己集合能(例えば、配列番号4、6、8又は10に記載のアミノ酸配列からなるタグペプチドと同程度の自己集合能)を有する限り、そのN末端及び/又はC末端で短縮されていてもよい。自己集合能を有する限り、N末端及び/又はC末端から欠失されるアミノ酸の数は制限されないが、例えば、配列番号4、6、8又は10のN末端-及び/又はC末端-欠失配列は、そのN末端及び/又はC末端から1~数個(例えば4個まで、より具体的には3個まで、より具体的には2個まで)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列からなる。
このような欠失配列(又は短縮配列)は、自己集合能を指標として、N末端及び/又はC末端から1個ずつアミノ酸を欠失させることにより、容易に取得可能である。

【0014】
したがって、本発明のタグペプチドは、以下:
(i)配列番号4、6、8若しくは10に記載のアミノ酸配列からなるペプチド、又は
(ii)アミノ酸配列(i)のN末端-及び/若しくはC末端-欠失配列からなり、かつ自己集合能を有するペプチド
であることを特徴とするタグペプチドでもあり得る。

【0015】
<融合ペプチド>
本発明の融合ペプチドは、上記の本発明のタグペプチドを含むことを特徴とする。
本発明の融合ペプチドにおいて、本発明のタグペプチドは任意の興味対象のペプチド又はタンパク質に融合されていてよい。本明細書において、興味対象のペプチド又はタンパク質は、特に制限されないが、例えば、酵素であり得る。
本発明の融合ペプチドにおいて、興味対象のペプチド又はタンパク質は、本発明のタグペプチドのN末端側及び/又はC末端側のいずれに融合されていてもよく、例えばN末端側に融合することができる。

【0016】
本発明の融合ペプチドにおいて、本発明のタグペプチドは、興味対象のペプチド又はタンパク質に直接又はリンカー若しくはスペーサーを介して結合していてもよい。融合ペプチド又はタンパク質中で使用可能なリンカー若しくはスペーサーは当該分野において公知である。例えば、リンカー又はスペーサーがペプチドである場合、その長さは、代表的には1~15アミノ酸であり、例えば10アミノ酸、9アミノ酸、8アミノ酸、7アミノ酸、6アミノ酸、5アミノ酸、4アミノ酸、3アミノ酸、2アミノ酸、1アミノ酸である。リンカー又はスペーサーに用いられるアミノ酸は、例えば、グリシン、セリン、アルギニン、リジン、スレオニン、ロイシン、アスパラギン及びグルタミンから選択され得る同一の又は異なるアミノ酸であり得、好ましくはグリシン及びセリンから選択される同一の又は異なるアミノ酸である。

【0017】
或いは、本発明の融合ペプチドは、本発明のタグペプチドと興味対象のペプチド又はタンパク質との間に、プロテアーゼの認識及び切断部位を含んでいてもよい。このような認識及び切断部位を含むことにより、本発明のタグペプチドを興味対象のペプチド又はタンパク質から切り離すことが可能となる。プロテアーゼとしては、当該分野において公知の任意のものを用い得るが、例えば、TEVプロテアーゼ、トロンビン、第Xa因子、エンテロキナーゼなどが挙げられる。

【0018】
本発明の融合ペプチドは、本発明のタグペプチドとは別のタグペプチドを含んでいてもよい。別のタグペプチドとしては、当該分野において公知の任意のものを用い得るが、例えば、FLAGタグ、HAタグ、mycタグ、GSTタグ、MBPタグ、蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質:GFP、EGFP;赤色蛍光タンパク質:DsRed)などが挙げられる。
別のタグペプチドは、本発明の融合ペプチドのN末端側及び/又はC末端側のいずれに位置していてもよいが、興味対象のペプチド又はタンパク質の、本発明のタグペプチドが融合されていない末端側に位置することが好ましい。別のタグペプチドは、興味対象のペプチド若しくはタンパク質又は本発明のタグペプチドに直接又はリンカー若しくはスペーサーを介して結合していてもよい。リンカー又はスペーサーについては上記のとおりである。

【0019】
本発明の融合ペプチドは、本発明のタグペプチドを含むため、自己集合性であり得る。よって、例えば、一連の反応(例えば、合成又は代謝反応)に関与する2以上の酵素をそれぞれ本発明のタグと融合して本発明の融合ペプチドとすることにより、微小環境中で該2以上の酵素を集合させることが可能となり、当該一連の反応を効率的に進行させ得る。結果として、所望の物質の効率的な生産が可能となる。

【0020】
したがって、別の観点から、本発明は、興味対象のペプチド又はタンパク質の集合体を形成するための、(i)配列番号2に記載のアミノ酸配列の33位~74位サブ配列、129位~158位サブ配列、217位~243位サブ配列及び373位~404位サブ配列の少なくとも1つのサブ配列を含む450アミノ酸長以下の断片からなるペプチド、(ii)配列番号4、6、8若しくは10に記載のアミノ酸配列からなるペプチド、又は(iii)(ii)に規定するアミノ酸配列のN末端-及び/若しくはC末端-欠失配列からなり、かつ自己集合能を有するペプチドの使用でもある。

【0021】
<核酸分子>
本発明の核酸分子は、本発明のタグペプチド又は本発明の融合ペプチドをコードする塩基配列からなる核酸分子である。
本発明において、核酸分子はDNA分子であってもRNA分子であってもよい。
本発明の核酸分子におけるコドン使用頻度は、宿主細胞における本発明のタグペプチド又は本発明の融合ペプチドの高発現のために最適化されていてもよい。

【0022】
配列番号2に記載のアミノ酸配列の217位~243位サブ配列、129位~158位サブ配列、33位~74位サブ配列及び373位~404位サブ配列の少なくとも1つのサブ配列を含む450アミノ酸長以下の断片からなるタグペプチドをコードする核酸配列は、配列番号1に記載の塩基配列又はその縮重配列の97位~222位サブ配列、385位~474位サブ配列、649位~729位サブ配列及び1117位~1212位サブ配列の少なくとも1つのサブ配列を含む1350ヌクレオチド長以下の断片からなってもよい。

【0023】
配列番号1に記載の塩基配列又はその縮重配列の97位~222位サブ配列、385位~474位サブ配列、649位~729位サブ配列及び1117位~1212位サブ配列の少なくとも1つのサブ配列を含む断片は、例えば1200ヌクレオチド長以下、より具体的には1125ヌクレオチド長以下、より具体的には1050ヌクレオチド長以下、より具体的には900ヌクレオチド長以下、より具体的には750ヌクレオチド長以下、より具体的には600ヌクレオチド長以下、より具体的には450ヌクレオチド長以下、より具体的には300ヌクレオチド長以下より具体的には270ヌクレオチド長以下、より具体的には240ヌクレオチド長以下、より具体的には210ヌクレオチド長以下、より具体的には180ヌクレオチド長以下、より具体的には150ヌクレオチド長以下、より具体的には120ヌクレオチド長以下であり得る。

【0024】
配列番号4に記載のアミノ酸配列をコードする核酸配列は、例えば、配列番号1に記載の塩基配列の97位~222位サブ配列(配列番号3)であってもよく、又はその縮重配列であってもよい。
配列番号6に記載のアミノ酸配列をコードする核酸配列は、例えば、配列番号1に記載の塩基配列の385位~474位サブ配列(配列番号5)であってもよく、又はその縮重配列であってもよい。
配列番号8に記載のアミノ酸配列をコードする核酸配列は、例えば、配列番号1に記載の塩基配列の649位~729位サブ配列(配列番号7)であってもよく、又はその縮重配列であってもよい。
配列番号10に記載のアミノ酸配列をコードする核酸配列は、例えば、配列番号1に記載の塩基配列の1117位~1212位サブ配列(配列番号9)であってもよく、又はその縮重配列であってもよい。

【0025】
別の観点から、本発明は、自己集合性融合ペプチドの製造のための、(i)配列番号2に記載のアミノ酸配列の33位~74位サブ配列、129位~158位サブ配列、217位~243位サブ配列及び373位~404位サブ配列の少なくとも1つのサブ配列を含む450アミノ酸長以下の断片からなるペプチド、(ii)配列番号4、6、8若しくは10に記載のアミノ酸配列からなるペプチド、又は(iii)(ii)に規定するアミノ酸配列のN末端-及び/若しくはC末端-欠失配列からなり、かつ自己集合能を有するペプチドをコードする核酸分子の使用でもある。ここで、自己集合性融合ペプチドはペプチド(i)、(ii)又は(iii)と興味対象のペプチド又はタンパク質との融合ペプチドである。融合ペプチドについては上記のとおりである。

【0026】
<ベクター>
本発明のベクターは、本発明の核酸分子を含むことを特徴とする。
ベクターの骨格は、所望の宿主細胞(例えば、原核細胞、酵母細胞、昆虫細胞、動物細胞、植物細胞など)に依存して適切に選択し得るが、例えばpULD1(Kuroda K et al., 2009, Appl. Microbiol. Biotechnol. 82(4): 713-719)及びpULSG1(Matsui K et al., 2009, Appl. Microbiol. Biotechnol. 82(1): 105-113)を用いることができる。
本発明のベクターは、プラスミドベクターであることが好ましく、大腸菌と酵母との間のシャトルベクターであることがより好ましい。

【0027】
本発明のベクターは、本発明のタグペプチドをコードする核酸配列の上流又は下流に該タグペプチドと融合させる興味対象のペプチド又はタンパク質をコードする核酸配列を導入するためのクローニングサイトを含んでいてもよい。
本発明のベクターはまた、適切な選択マーカー(例えば、薬剤耐性遺伝子、栄養要求性遺伝子)を含んでいてもよい。

【0028】
本発明のベクターはまた、宿主細胞における発現に適切なプロモーターその他の発現調節エレメント(例えばターミネーター、エンハンサー)を含んでもよい(そのようなベクターは「発現ベクター」と呼ばれる)。本発明の発現ベクターにおいて、本発明の核酸分子は、タグペプチド及び/又は興味対象のペプチド若しくはタンパク質の発現がプロモーターの制御下に誘導され得るように、該プロモーターに連結される。
プロモーターは宿主細胞に応じて適宜選択し得る。酵母を宿主細胞として用いる場合、プロモーターとしては、酵母において機能するものであればいずれのものも用い得、構成性プロモーターであっても誘導性プロモーターであってもよい。構成性プロモーターとしては、例えば、解糖系酵素遺伝子プロモーター(例えば、GAPプロモーター、ADHプロモーター、TPIプロモーター、PGKプロモーターなど)が挙げられ、誘導性プロモーターとしては、例えば、GALプロモーター及びPHOプロモーターなどが挙げられる。
本発明の発現ベクターはまた、大腸菌で機能する複製起点及び酵母で機能する複製起点を含んでいることが好ましい。

【0029】
べクタ一内での上記エレメントの配置は、所望の効果を奏し得るように適宜決定することができる。

【0030】
<細胞>
本発明の細胞は、本発明の核酸分子又は本発明のベクターを含むことを特徴とする。
細胞としては、タグペプチド/タンパク質の発現に適切な宿主細胞を用いることができ、例えば、大腸菌(Escherichia coli)細胞のような原核細胞、酵母(例えば、Saccharomyces cerevisiaeやSchizosaccharomyces pombe)、昆虫、植物細胞及び動物細胞のような真核細胞が挙げられる。形質転換された細胞は、例えば本発明の核酸分子の維持・増殖(特に、形質転換細胞が原核細胞である場合)又は本発明の融合ペプチドの発現(特に、形質転換細胞が真核細胞である場合)に有用である。

【0031】
本発明の細胞は、本発明のベクターを用いて宿主細胞を形質転換することにより取得することができる。宿主細胞を形質転換する方法は、特に限定されず、当業者に公知の方法から選択できる。具体的な例としては、コンピテント細胞法、プロトプラスト法、リン酸カルシウム共沈法、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法、マイクロインジェクション法、ウイルス感染法、リポフェクション法等が挙げられる。
核酸分子が宿主に組み込まれているか否かは、PCR法、サザンハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法等により確認することができる。

【0032】
本発明に関連して必要となる遺伝子組換え/発現技術の詳細は、標準的な教科書(例えば、Ausubel,F.A.ら編(1988)、Current Protocols in Molecular Biology、 John Wiley and Sons、 New York、 NY;Sambrook,J.ら(1989)、Molecular Cloning: A Laboratory Manual,2nd Ed.、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY)に記載されている。
【実施例】
【0033】
<実験1>
酵母ピルビン酸キナーゼ(Cdc19p)のアミノ酸配列の断片を設計した(図1、表1)。
【表1】
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【実施例】
【0034】
次に、設計に基いてプライマーを作製した(表2)。フォワードプライマーは、余分な配列8bp、BamHIの配列6bp、開始コドン(ATG)3bp及び断片配列の最初から20bp以上を含んでいた。リバースプライマーは、余分な配列8bp、XhoIの配列6bp及び断片配列の最後から20bp以上を含んでいた。
【実施例】
【0035】
使用プライマー
【表2】
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【実施例】
【0036】
設計した断片を緑色蛍光タンパク質(GFP)との融合ペプチドとして酵母中に発現させるためのプラスミドを構築した。
上記で作製したプライマーを用いて、空ベクターである酵母のGFP過剰発現用プラスミド(pULGI2)にCDC19を導入したプラスミドベクターpULGI2-CDC19(Miura Nら(2013),Eukaryotic Cell 12 (8):1106-1119)を鋳型としたPCR増幅を行った。PCRの組成と条件を表3に示す。
【実施例】
【0037】
PCRの組成と条件
【表3】
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【実施例】
【0038】
PCR産物(インサート部分)を2つ合わせて100μlとし、PCR pulification Kit(New England Biolabs Japan Inc.、東京都)を用いて精製した。溶出は43μlで行った。
続いて、精製したインサート及びベクターを各々、制限酵素で37℃にて3時間処理した。制限酵素処理液の組成を表4に示す。
【実施例】
【0039】
制限酵素処理液の組成
【表4】
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【実施例】
【0040】
制限酵素での処理後のサンプルに、5μlの酢酸ナトリウム(pH5.2)及び200mlのイソプロパノールを加えた。-80℃で15分間静置し、15000rpmで30分間遠心分離した。上清を捨て、milliQ水10μl中に懸濁した後、インサートは2.5%、ベクターは0.8%のアガロースゲル(NE-AG02、日本ジェネティクス株式会社、東京都)による電気泳動及びillustra GFX PCR DNA and Gel Band Purification Kit(GEヘルスケア・ジャパン株式会社、東京都)によるゲルの切り出し及び精製を行った。回収したインサート2.5μl及びベクター2.5μlをライゲーション液(Ligation high Ver.2、東洋紡、大阪府)と混合し、16℃で2時間反応させた。ライゲーション終了後、全量をE.coli DH5αコンピテントセル(Escherichia coli DH5α [F-,Φ80d lacZΔM15,Δ(lacZYA-argF)U169,deoR,recA1,endA1,hsdR17(rK- mK+),phoA,supE44,λ-,thi-1,gyrA96,relA1])60μlと混合し、氷上で3分間静置した。37℃で3分間熱ショックを与え、氷上で5分間静置した。寒天LB培地(Miller,ナカライテスク,京都;2.0%(w/v)寒天、1.0%(w/v)トリプトン,0.5%(w/v)酵母エキス,1.0%(w/v)NaCl,終濃度100μg/mLのアンピシリン)に撒布し、37℃で24時間培養した。形成されたコロニーをコロニーPCRで確認し、その後、プライマーGAP-Pro-F(5'-CTTAAACTTCTTAAATTCTACTTTTATAGTTAGTC-3';配列番号48)及びKpn I-TGAP-R(5'-ATGCTGGTACCTCAATCAATGAATCGAAAATGTCATTAAAATAG-3';配列番号49)を用いてシーケンス解析(Eurofins,東京都)によりプラスミド配列を確認した。
【実施例】
【0041】
構築したプラスミド(図2)を、酵母形質転換用キット(Frozen - EZ Yeast Transformation II Kit,ZYMO RESEARCH,Irvine,CA,USA)を用いてS. cerevisiae BY4741株(Saccharomyces cerevisiae BY4741 [MATa his3Δ1 leu2Δ0 met15Δ0 ura3Δ0])に形質転換し、SDC+HLM寒天培地(pH6.0,2.0%(w/v)寒天,2.0%(w/v)D-グルコース,0.67%(w/v)酵母窒素ベース(アミノ酸非含有),2.0%(w/v)カザミノ酸,0.002%(w/v)L-ヒスチジン-HCl,0.006%(w/v)DL-メチオニン,0.003%(w/v)DL-ロイシン,50 mM(w/v)MES)上、正常酸素条件下で30℃にて生育させた。取得できたコロニーを直ちに4%パラホルムアルデヒド-PBS中に懸濁し、観察する直前まで4℃で保存した。
酵母において発現した各断片の自己集合能は、50個以上の細胞について、各断片を含む融合ペプチドの集合体形成率を算出して評価した。融合ペプチドの集合体形成率(%)は、(集合体形成細胞数[個])/(カウントした全細胞数[個])×100とした。ここで、集合体形成細胞は、蛍光顕微鏡(オールインワン蛍光顕微鏡BZ-9000,キーエンス,大阪)観察によりGFP蛍光の局在化が認められた細胞である。再現性を確かめるために、各プラスミドは、3回それぞれ異なる日に酵母に形質転換して、融合ペプチドの集合体形成率を算出した(N=3)。
【実施例】
【0042】
結果
蛍光顕微鏡観察の代表例を図3に示す。断片ごとの集合体形成率を図4に示す。
断片2(33-140)、断片3(141-170)、断片4(171-257)及び断片11(373-500)を組み込んだプラスミドを導入した酵母では、各断片と融合されたGFPによる蛍光の局在が観察され、前記断片を含む融合ペプチドが集合体を形成し得ることが示された。ただし、断片3を含む融合ペプチドの集合体形成率は、断片2、4又は11を含む融合ペプチドの集合体形成率より有意に低かった(p<0.05)。 このことから、酵母ピルビン酸キナーゼ(Cdc19p)のアミノ酸配列(配列番号2)の33位~140位、141位~170位、171位~257位又は373位~500位のサブ配列からなるペプチドは自己集合能を有することが理解される。
【実施例】
【0043】
<実験2>
実験1の結果に基づいて、断片酵母ピルビン酸キナーゼ(Cdc19p)のアミノ酸配列の更に短い断片を設計した(表5)。
【表5】
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【実施例】
【0044】
次に、設計に基いて、実験1と同様にプライマーを作製した(表6)。
使用プライマー
【表6】
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【実施例】
【0045】
実験1と同様にして、上記で作製したプライマーを用い、設計した断片と緑色蛍光タンパク質(GFP)との融合ペプチドの酵母発現用プラスミドを構築した。
構築したプラスミドを、実験1と同様にして、S. cerevisiae BY4741株に形質転換し、SDC+HLM寒天培地上30℃で生育させ、取得したコロニーを直ちに4%パラホルムアルデヒド-PBS中に懸濁し、4℃で保存した。蛍光顕微鏡観察に基いてGFP集合体の形成率を実験1と同様にして算出した(N=3)。
【実施例】
【0046】
結果
断片ごとの集合体形成率を図5に示す。
断片2-1(33-106)、断片2-2(33-74)、断片2-3(75-140)、断片2-4(107-140)、断片4-1(171-233)、断片4-3(192-257)又は断片4-4(217-257)を含む融合ペプチドは集合体を形成し得ることが示された。ただし、断片2-3又は2-4を含む融合ペプチドの集合体形成率は、断片2-1又は2-2を含む融合ペプチドの集合体形成率より有意に低く(p<0.05)、断片4-2を含む融合ペプチドの集合体形成率は、断片4-3又は4-4を含む融合ペプチドの集合体形成率より有意に低かった(p<0.05)。【実施例】
【0047】
<実験3>
実験1、2の結果に基づいて、上記断片2及び3に跨る断片3-2(129-158)(DYKNITKVISAGRIIYVDDGVLSFQVLEVV)、上記断片4-4のC末端短縮断片である断片4-5(217-243)(TANDVLTIREVLGEQGKDVKIIVKIEN)並びに上記断片11のC末端短縮断片である断片11-3(373-404)(PKPTSTTETVAASAVAAVFEQKAKAIIVLSTS)を設計した。
設計に基いて、実験1と同様にして、融合ペプチドの酵母発現用プラスミドを構築し、S. cerevisiae BY4741株に形質転換し、形質転換体をSDC+HLM寒天培地上30℃で生育させた。取得したコロニーについて、実験1と同様にして算出したGFP集合体の形成率は、断片3-2に関して37%であり、断片4-5に関して41%であり、断片11-3に関して26%であった(N=3)。したがって、断片3-2(129-158)断片4-5(217-243)又は断片11-3(373-404)を含む融合ペプチドは集合体を形成し得ることが示された。
【実施例】
【0048】
以上の結果から、酵母ピルビン酸キナーゼ(Cdc19p)のアミノ酸配列(配列番号2)の33位~74位サブ配列、129位~158位サブ配列、217位~243位サブ配列及び373位~404位サブ配列の少なくとも1つのサブ配列を含む断片からなるペプチドは自己集合能を有することが理解される。
【実施例】
【0049】
なお、細胞内で形成された融合ペプチドの集合体は、細胞破砕により容易に細胞外に取り出すことができ、細胞外でも、集合体のままであることが観察された(図6)。図示した実験では、実験1と同様にして、本発明のタグペプチドと赤色蛍光タンパク質(DsRed)との融合タンパク質を酵母中に発現させている。
よって、本発明のタグペプチドは、組換え発現したペプチド又はタンパク質の宿主細胞からの回収に有用である。
【実施例】
【0050】
上記の実施形態および実施例は、本発明の理解を容易にするために例示として記載されたものであって、本発明は本明細書または添付図面に記載された具体的な構成および配置のみに限定されるものではないことに留意すべきである。本明細書に記載した具体的構成、手段、方法、および装置は、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、当該分野において公知の他の多くのものと置換可能であることを、当業者は理解すべきであり、そして容易に認識する。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5