TOP > 国内特許検索 > 光触媒粒子及びその製造方法、当該粒子を含む材料、並びに当該材料を含む製品 > 明細書

明細書 :光触媒粒子及びその製造方法、当該粒子を含む材料、並びに当該材料を含む製品

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第6628271号 (P6628271)
登録日 令和元年12月13日(2019.12.13)
発行日 令和2年1月8日(2020.1.8)
発明の名称または考案の名称 光触媒粒子及びその製造方法、当該粒子を含む材料、並びに当該材料を含む製品
国際特許分類 B01J  35/02        (2006.01)
B01J  35/10        (2006.01)
B01J  37/04        (2006.01)
B01J  37/08        (2006.01)
B01J  27/18        (2006.01)
B01J  29/00        (2006.01)
FI B01J 35/02 ZABJ
B01J 35/10 301J
B01J 37/04 102
B01J 37/08
B01J 27/18 M
B01J 29/00 A
請求項の数または発明の数 15
全頁数 25
出願番号 特願2019-520667 (P2019-520667)
出願日 平成31年2月15日(2019.2.15)
国際出願番号 PCT/JP2019/005679
優先権出願番号 2018026386
優先日 平成30年2月16日(2018.2.16)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成31年4月16日(2019.4.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
発明者または考案者 【氏名】楊 英男
【氏名】祝 キ
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100099759、【弁理士】、【氏名又は名称】青木 篤
【識別番号】100123582、【弁理士】、【氏名又は名称】三橋 真二
【識別番号】100117019、【弁理士】、【氏名又は名称】渡辺 陽一
【識別番号】100141977、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 勝
【識別番号】100150810、【弁理士】、【氏名又は名称】武居 良太郎
審査官 【審査官】壷内 信吾
参考文献・文献 中国特許出願公開第102500426(CN,A)
特開2016-059878(JP,A)
米国特許出願公開第2011/0028311(US,A1)
中国特許出願公開第104383947(CN,A)
中国特許出願公開第106492854(CN,A)
HU, X. et al.,Nonmetal-metal-semiconductor-promoted P/Ag/Ag2O/Ag3PO4/TiO2,Journal of Materials Chemistry A: Materials for Energy and Sustainability,2015年,Vol.3, No.34,p.17858-17865
調査した分野 B01J21/00-38/74
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
要約 本発明は、二酸化チタン、リン、銀、酸化銀及びリン酸銀を含む光触媒粒子及びその製造方法、当該光触媒粒子を含む材料、並びに当該材料を含む製品に関する。
特許請求の範囲 【請求項1】
二酸化チタン、銀、酸化銀及びリン酸銀を含む光触媒粒子であって、
比表面積が150~400m2/gである、
光触媒粒子。
【請求項2】
光触媒粒子中の全元素に対するチタンの比率が20mol%~30mol%であり、
光触媒粒子中の全元素に対する酸素の比率が60mol%~80mol%であり、
光触媒粒子中の全元素に対する銀の比率が0.2mol%~0.9mol%であり、
光触媒粒子中の全元素に対するリンの比率が0.2mol%~0.6mol%であり、
チタン、酸素、銀及びリンの合計量が100mol%である、請求項1に記載の光触媒粒子。
【請求項3】
結晶サイズが2.0~4.0nmである、請求項1又は2に記載の光触媒粒子。
【請求項4】
二酸化チタン、銀、酸化銀及びリン酸銀を含む光触媒粒子であって、
光触媒粒子中の全元素に対するチタンの比率が20mol%~30mol%であり、
光触媒粒子中の全元素に対する酸素の比率が60mol%~80mol%であり、
光触媒粒子中の全元素に対する銀の比率が0.2mol%~0.9mol%であり、
光触媒粒子中の全元素に対するリンの比率が0.2mol%~0.6mol%であり、 チタン、酸素、銀及びリンの合計量が100mol%である、
光触媒粒子。
【請求項5】
結晶サイズが2.0~4.0nmである、請求項4に記載の光触媒粒子。
【請求項6】
二酸化チタン、銀、酸化銀及びリン酸銀を含む光触媒粒子であって、
結晶サイズが2.0~4.0nmである、
光触媒粒子。
【請求項7】
バンドギャップエネルギーが2.4eV~3.2eVである、請求項1~6のいずれか1項に記載の光触媒粒子。
【請求項8】
0.5g/Lの前記光触媒粒子の水懸濁液を暗所にて37℃で12時間攪拌した後における、水への銀の漏出量が0.100mg/L未満である、請求項1~7のいずれか1項に記載の光触媒粒子。
【請求項9】
以下の工程を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の光触媒粒子の製造方法:
(1)Ti(OR)4(ここで、R=Cn2n+1であり、n=2~8である)で表されるアルキルチタネート、硝酸銀、リン酸銀及び硝酸を溶媒中で混合してゾル-ゲル溶液を調製する工程;及び
(2)前記工程(1)で調製したゾル-ゲル溶液に対してソルボサーマル反応を行う工程。
【請求項10】
工程(1)における溶媒がエタノールである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ソルボサーマル反応が、100℃超140℃未満で、1.0時間超4.0時間未満で行われる、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記ソルボサーマル反応が、110℃~130℃で、1.5~3.5時間行われる、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか1項に記載の光触媒粒子を含む、材料。
【請求項14】
担体をさらに含み、
ここで、前記光触媒粒子は担体に担持されている、請求項13に記載の材料。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の材料を含む、製品。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒粒子及びその製造方法、当該粒子を含む材料、並びに当該材料を含む製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化チタン(TiO2)の光触媒作用は、水および空気浄化の分野で非常に注目されている(例えば、非特許文献1、2参照)。しかしながら、例えば、電子・ホールペアの組換が速い、可視光により酸化還元反応(光触媒反応)を示さない、二酸化チタンナノ粒子の分離に非常に手間が掛かる等の問題が、二酸化チタンの実用化を阻害している(例えば、非特許文献3~5参照)。特に、従来の二酸化チタン系の光触媒は、紫外光の照射により酸化還元反応を示すものの、可視光の照射では酸化還元反応を示さないため、太陽光のみでは十分な光触媒活性を示さなかった。それゆえに、従来の光触媒を用いるには、光触媒に紫外光を照射するための光源が必要であるという問題があった。
【0003】
特許文献1において、金属銀と、リン酸銀とを含む二酸化チタンナノ粒子からなることを特徴とする光触媒が開示されている。当該文献に開示された光触媒は、可視光によって光触媒活性を示す。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2016-59878号公報
【0005】

【非特許文献1】A. Fujishima et. al., Nature 238 (1972) 37-38.
【非特許文献2】A.Mills,S. L. et al., Journal of Photochemistry and Photobiology A: Chemistry 108 (1997) 1-35.
【非特許文献3】J.Wang et al., J.Colloid Interface Sci.320 (1) (2008) 202-209.
【非特許文献4】Chen Shifu et al., Journal of Hazardous Materials 155 (2008) 320-326.
【非特許文献5】M.M.Viana et al., Applied Surface Science 265 (2013) 130-136.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された光触媒は、テトラブチルチタネートの水溶液に、硝酸銀、リン酸及び硝酸を含む溶液を添加して攪拌することでゾル-ゲル溶液を調製し、当該溶液を乾燥し、さらに焼結処理を行うことで調製される(以下で当該光触媒の製造方法を「ゾル-ゲル法」とも呼ぶ)。ゾル-ゲル法によって製造された当該光触媒は可視光によって光触媒活性を示すが、触媒活性のさらなる向上が望まれている。
【0007】
従って本発明は、可視光によって優れた光触媒活性を示す触媒の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、特許文献1のゾル-ゲル法において、焼結処理に代えてソルボサーマル反応 (solvothermal reaction)を行うことで、特許文献1の方法で製造された光触媒粒子と比較してより高い光触媒活性が得られることを見出し、本発明に至った。
【0009】
本発明の一以上の実施形態は、以下の<1>~<14>を含む。
<1>
二酸化チタン、銀、酸化銀及びリン酸銀を含む光触媒粒子であって、
比表面積が150~400m2/gである、
光触媒粒子。
<2>
光触媒粒子中の全元素に対するチタンの比率が20mol%~30mol%であり、
光触媒粒子中の全元素に対する酸素の比率が60mol%~80mol%であり、
光触媒粒子中の全元素に対する銀の比率が0.2mol%~0.9mol%であり、
光触媒粒子中の全元素に対するリンの比率が0.2mol%~0.6mol%であり、
チタン、酸素、銀及びリンの合計量が100mol%である、<1>に記載の光触媒粒子。
<3>
結晶サイズが2.0~4.0nmである、<1>又は<2>に記載の光触媒粒子。
<4>
二酸化チタン、銀、酸化銀及びリン酸銀を含む光触媒粒子であって、
光触媒粒子中の全元素に対するチタンの比率が20mol%~30mol%であり、
光触媒粒子中の全元素に対する酸素の比率が60mol%~80mol%であり、
光触媒粒子中の全元素に対する銀の比率が0.2mol%~0.9mol%であり、
光触媒粒子中の全元素に対するリンの比率が0.2mol%~0.6mol%であり、
チタン、酸素、銀及びリンの合計量が100mol%である、
光触媒粒子。
<5>
結晶サイズが2.0~4.0nmである、<4>に記載の光触媒粒子。
<6>
二酸化チタン、銀、酸化銀及びリン酸銀を含む光触媒粒子であって、
結晶サイズが2.0~4.0nmである、
光触媒粒子。
<7>
バンドギャップエネルギーが2.4eV~3.2eVである、<1>~<6>のいずれか1つに記載の光触媒粒子。
<8>
0.5g/Lの前記光触媒粒子の水懸濁液を暗所にて37℃で12時間攪拌した後における、水への銀の漏出量が0.100mg/L未満である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の光触媒粒子。
<9>
以下の工程を含む、<1>~<8>のいずれか1つに記載の光触媒粒子の製造方法:
(1)Ti(OR)4(ここで、R=Cn2n+1であり、n=2~8である)で表されるアルキルチタネート、硝酸銀、リン酸銀及び硝酸を溶媒中で混合してゾル-ゲル溶液を調製する工程;及び
(2)前記工程(1)で調製したゾル-ゲル溶液に対してソルボサーマル反応を行う工程。
<10>
工程(1)における溶媒がエタノールである、<9>に記載の方法。
<11>
前記ソルボサーマル反応が、100℃超140℃未満で、1.0時間超4.0時間未満で行われる、<9>又は<10>に記載の方法。
<12>
前記ソルボサーマル反応が、110℃~130℃で、1.5~3.5時間行われる、<9>~<11>のいずれか1つに記載の方法。
<13>
<1>~<8>のいずれか1つに記載の光触媒粒子を含む、材料。
<14>
<13>に記載の材料を含む、製品。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光触媒粒子は、可視光によって優れた光触媒活性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施例1で製造された光触媒を用いた光触媒反応による、ローダミンBの分解率を示す。
【図2】図2は、実施例1で製造された光触媒を用いた光触媒反応による、ローダミンBの分解率を示す。
【図3】図3は、実施例1で製造された光触媒を用いた水分解反応による、水素の生成量を示す。
【図4】図4は、実施例1で製造された光触媒を用いた水分解反応による、水素の生成量を示す。
【図5】図5は、実施例1で製造された光触媒のXRDパターンを示す。
【図6】図6は、実施例1で製造された光触媒のXRDパターンを示す。
【図7】図7は、実施例1で製造された光触媒の外観の写真を示す。
【図8】図8は、実施例1で製造された光触媒の外観の写真を示す。
【図9】図9は、実施例1で製造された光触媒のUV-visスペクトルを示す。
【図10】図10は、実施例1で製造された光触媒のUV-visスペクトルを示す。
【図11】図11は、実施例1で製造された光触媒のPLスペクトルを示す。
【図12】図12は、実施例1で製造された光触媒のPLスペクトルを示す。
【図13】図13は、実施例1において、ソルボサーマル反応を温度120℃、3.0時間行うことで得られた光触媒試料7のHRTEM画像を示す。
【図14】図14は、試料7のXPSスペクトルを示す。
【図15】図15は、試料7又は比較例1で製造された試料12を用いた光触媒反応による、ローダミンBの分解率を示す。
【図16】図16は、試料7又は12を用いた光触媒反応による、メチルオレンジの分解率を示す。
【図17】図17は、試料7及び12のXRDパターンを示す。
【図18】図18は、試料7のSEM画像である。
【図19】図19は、試料12のSEM画像である。
【図20】図20は、試料7及び12の光触媒の外観の写真を示す。
【図21】図21は、試料7及び12のUV-visスペクトルを示す。
【図22】図22は、試料7及び12を用いた水分解反応による、水素の生成量を示す。
【図23】図23は、試料7と12のバンドギャップエネルギーの比較結果を示す。
【図24】図24は、試料7のE.coliに対する抗菌活性の評価結果を示す。
【図25】図25は、試料12のE.coliに対する抗菌活性の評価結果を示す。
【図26】図26は、試料7のEnterococus・faecalisに対する抗菌活性の評価結果を示す。
【図27】図27は、実施例14で用いた装置の模式図を示す。
【図28】図28は、試料7を用いた場合におけるアセトアルデヒドの分解活性の評価結果を示す。
【図29】図29は、実施例13で製造された複合材料(光触媒粒子に対して10重量%のゼオライトを担持)を用いた場合におけるアセトアルデヒドの分解活性の評価結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<<光触媒粒子>>
本発明の光触媒粒子は、二酸化チタン、銀、酸化銀及びリン酸銀を含む、又はから成る光触媒粒子である。

【0013】
本発明の光触媒粒子は、可視光によって優れた光触媒活性を発揮する。本明細書において、「可視光」とは、波長380nm以上780nm以下の波長の光を意味する。本発明の光触媒粒子にバンドギャップ以上のエネルギーを有する可視光が照射されると、価電子帯の電子が伝導帯へ励起され、伝導帯に電子が生じ、価電子帯に正孔が生じる。当該電子及び正孔と光触媒粒子表面に吸着している物質との電子授受により、当該吸着物質は酸化又は還元され、分解される。本発明の光触媒粒子が有する上記機能を本明細書において「光触媒活性」と呼ぶ。また、当該吸着物質の分解反応の結果として、本発明の光触媒粒子は、消臭活性、防汚活性、抗菌活性などを有し得る。これらの活性も、本明細書において「光触媒活性」に含まれる。

【0014】
一態様において、本発明の光触媒粒子の比表面積は、150~400m2/gである。好ましくは、当該比表面積の下限は、160m2/g、170m2/g、180m2/g、190m2/g、200m2/g、210m2/g、220m2/g、230m2/g、240m2/g又は250m2/g、260m2/g、270m2/g、280m2/gであり、その上限は390m2/g、380m2/g、370m2/g、360m2/g、350m2/g、340m2/g、330m2/g、320m2/g又は310m2/gである。より好ましくは、本発明の光触媒粒子の比表面積は、150~310m2/g又は200~400m2/gであり、さらに好ましくは250~400m2/gである。上記の数値範囲内の比表面積を有する本発明の光触媒粒子は、良好な光触媒活性を示す。一般に、比表面積が大きいほど光触媒活性は高くなる。

【0015】
本明細書において「比表面積」とは、窒素ガスを用いてBET法によって測定された比表面積(BET比表面積)をいう。

【0016】
一態様において、
本発明の光触媒粒子の全元素に対するチタンの比率は20mol%~30mol%であり;
本発明の光触媒粒子の全元素に対する酸素の比率は60mol%~80mol%であり;
本発明の光触媒粒子の全元素に対する銀の比率は0.2mol%~0.9mol%であり、好ましくは0.2mol%~0.8mol%、0.2mol%~0.7mol%、0.2mol%~0.6mol%、0.3mol%~0.8mol%、0.3mol%~0.7mol%又は0.3mol%~0.6mol%であり;
本発明の光触媒粒子の全元素に対するリンの比率は0.2mol%~0.6mol%であり、好ましくは0.2mol%~0.5mol%、0.3mol%~0.6mol%又は0.3mol%~0.5mol%であり;
本発明の光触媒粒子中のチタン、酸素、銀及びリンの合計量が100mol%
である。上記数値範囲の元素組成を示す本発明の光触媒粒子は、良好な光触媒活性を示す。

【0017】
一態様において、本発明の光触媒粒子の結晶サイズは2.0~4.0nmである。好ましくは、本発明の光触媒粒子の結晶サイズの下限は2.1nm、2.2nm、2.3nm、2.4nm又は2.5nmであり、その上限は3.9nm、3.8nm、3.7nm、3.6nm、3.5nm、3.4nm又は3.3nmである。上記の数値範囲内の結晶サイズを有する本発明の光触媒粒子は、良好な光触媒活性を示す。

【0018】
本発明において、光触媒粒子の「結晶サイズ」は、当該光触媒粒子のX線回折(XRD)パターンから、以下のシェラーの式(Scherrer equation)によって計算された値である。
【数1】
JP0006628271B1_000002t.gif
[式中、
τは結晶サイズであり、
Kは形状因子(shape factor)であり、
λはX線波長であり、
βはピーク半値全幅(FWHM、ただしラジアン単位)であり、
θはブラッグ角である。]
本発明の光触媒粒子の結晶サイズは、K= 0.9 として、2θ=25.28 °± 0.2 °のピークから算出される値である。

【0019】
本発明の光触媒粒子のバンドギャップエネルギーは、好ましくは2.4eV~3.2eVであり、より好ましくは、その下限値は2.5eV、2.6eV、2.7eV又は2.8eVであり、かつその上限値は3.1eV又は3.0eVである。さらに好ましくは、本発明の光触媒粒子のバンドギャップエネルギーは2.6eV~3.1eV又は2.7eV~3.2eVである。本発明においてバンドギャップエネルギーは、紫外可視吸収スペクトル(UV-visスペクトル)の測定結果に従って、以下の式を用いて計算することができる。
【数2】
JP0006628271B1_000003t.gif
[式中、
hプランク定数であり、
cは光速であり、
λは波長であり、
n=1であり、
αは吸光度であり、
Kは定数であり、
Egはバンドギャップエネルギーである。]

【0020】
本発明の光触媒粒子は、好ましくは、0.5g/Lの前記光触媒粒子の水懸濁液を暗所にて37℃で12時間攪拌した後における、水への銀の漏出量が0.100mg/L未満であり、より好ましくは、0.095mg/L以下であり、さらに好ましくは0.090mg/L以下である。

【0021】
<<光触媒粒子の製造方法>>
本発明の光触媒粒子の製造方法は、以下の工程を含む:
(1)Ti(OR)4(ここで、R=Cn2n+1であり、n=2~8であり、好ましくはn=2~6である)で表されるアルキルチタネート、硝酸銀、リン酸銀及び硝酸を溶媒中で混合してゾル-ゲル溶液を調製する工程;及び
(2)前記工程(1)で調製したゾル-ゲル溶液に対してソルボサーマル反応を行う工程。

【0022】
工程(1)において、二酸化チタン源として使用されるアルキルチタネートとしては、ゾル-ゲル溶液が調製できる限り特に限定されないが、例えば、テトラプロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネートが挙げられる。好ましくはテトラブチルチタネートである。

【0023】
工程(1)で使用される溶媒としては、ゾル-ゲル溶液が調製できる限り特に限定されないが、例えば、水、アルコール(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール)又はそれらの混合溶媒が挙げられる。エタノールが好ましい。工程(1)で使用されるアルキルチタネート1モルに対して溶媒を2000~3000mL使用することが好ましい。

【0024】
工程(1)において、硝酸銀及びリン酸銀はドーパントとして使用され、硝酸は分散剤として使用される。

【0025】
工程(1)において、
アルキルチタネートに対する硝酸銀のモル比は、好ましくは1:0.025~1:0.2であり、より好ましくは0.05~0.1であり;
アルキルチタネートに対するリン酸銀のモル比は、好ましくは1:0.008~1:0.067であり、より好ましくは0.017~0.033であり;
アルキルチタネートに対する硝酸のモル比は、好ましくは1:0.1~1:1であり、より好ましくは0.4~0.7である。

【0026】
工程(1)は、好ましくは0℃~60℃で、より好ましくは20℃~40℃で行われる。

【0027】
本明細書において「ソルボサーマル反応」とは、高温及び高圧の溶媒を用いて行われる反応のことである。ソルボサーマル反応は、オートクレーブのような耐圧容器内で行われる。溶媒が水である場合には「水熱反応」と呼ばれる。

【0028】
ソルボサーマル反応を使用することで、酸化銀及びリン酸銀が分解して過量の金属銀が生成することを抑制できる。また、光触媒の構造を適切な状態へと移行することができる。

【0029】
工程(2)のソルボサーマル反応における反応容器内の圧力は、好ましくは0.10~1.00Mpaであり、より好ましくは0.40~0.60Mpaである。

【0030】
工程(2)のソルボサーマル反応における反応容器内の温度は、良好な活性を有する光触媒を得る観点から、及び水洗浄時の銀の漏出を抑制する観点から、好ましくは100℃超140℃未満である。より好ましくは、100℃超130℃以下、110℃以上140℃未満、又は110℃以上130℃以下であり、さらに好ましくは、110℃以上130℃以下である。

【0031】
工程(2)のソルボサーマル反応の反応時間は、良好な活性を有する光触媒を得る観点から、及び水洗浄時の銀の漏出を抑制する観点から、好ましくは、1.0時間超4.0時間未満である。より好ましくは、1.0時間超3.5時間以下、1.5時間以上4時間未満、又は1.5時間以上3.5時間以下であり、さらに好ましくは、1.5時間以上3.5時間以下である。

【0032】
好ましくは、工程(2)の後に溶媒を除去し、光触媒を乾燥する工程をさらに含む。

【0033】
<<光触媒粒子を含む材料、及び当該材料を含む製品>>
本発明の一態様は、本発明の光触媒粒子を含む材料に関する。材料としては特に限定されないが、例えば、金属、タイル、ホーロー、セメント、コンクリート、ガラス、プラスチック、繊維、木材、紙、革、セラミックなどの種々の材質で形成されたものが挙げられる。また、その形状としては、板状、波板状、ハニカム状、球状、曲面状など種々の形状のものを用いることができる。一実施形態において、材料表面に本発明の光触媒粒子は固定化される。固定化方法は特に限定されず、当業者に周知の方法を適用できる。例えば、光触媒とバインダとを含む塗液を基材表面に塗布あるいは吹きつけた後、乾燥、必要に応じて加熱する方法などで行うことができる。バインダとしては、例えば無機系樹脂及び有機系樹脂を用いることができ、光触媒反応により分解され難いバインダ、例えばセメント、コンクリート、石膏、珪酸化合物、シリカ、ケイ素化合物、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などのバインダが好ましい。別の実施形態において、本発明の光触媒粒子を基材に練りこんで使用されてもよい。練りこむことによって、本発明の光触媒粒子が基材に安定に保持され、かつ本発明の光触媒粒子の効果がより長期間持続し得る。

【0034】
光触媒粒子を含む材料の一実施形態は、本発明の光触媒粒子と担体とを含み、ここで前記光触媒粒子が担体に担持されている、複合材料である。担体は、例えば光触媒粒子をその実用に応じたサイズとするために使用することができる。また担体を使用することによって、例えば光の吸収効率を上げ、光触媒粒子の活性を向上させることが可能である。特に担体としてゼオライトを用いた場合には、複合材料の吸着性が増大して、反応活性を向上させることができる。このような複合材料で使用される担体は特に限定されないが、例えば、SiO2、Al23、MgO、ZrO2、TiO2、Fe23、B23、CaO、ZnO、BaO、ThO2及びこれらの混合物、例えばシリカ-アルミナ、ゼオライト、フェライトなどが挙げられる。また、ガラス、セラミック、プラスチックなども担体として使用することができる。
前記複合材料において、前記担体に対する本発明の光触媒粒子の担持量は特に限定されず、その下限は、例えば1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%又は95重量%であり、その上限は、99重量%、95重量%、90重量%、85重量%、80重量%、75重量%、70重量%、65重量%、60重量%、55重量%、50重量%、45重量%、40重量%、35重量%、30重量%、25重量%、20重量%、15重量%又は10重量%である。好ましくは、前記担体に対する本発明の光触媒粒子の担持量は、1~99重量%、2~50重量%、2~25重量%、3~10重量%である。
前記複合材料の製造方法は任意の周知の方法に従って行うことができる。

【0035】
例えば、本発明の光触媒粒子と担体とを含む材料は、上記の本発明の光触媒粒子の製造方法の工程(1)中、工程(1)と工程(2)の間、工程(3)中、又は工程(3)の後の少なくとも1つの時点で担体を添加滴下することによって行うことができる。好ましくは、工程(1)中、又は工程(1)と工程(2)の間において担体が添加される。担体の添加方法は特に限定されないが、一度に全量を添加する方法、複数回に分けて添加する方法などが挙げられる。使用する試薬の量及び反応条件は、上記の本発明の光触媒粒子の製造方法と同様である。担体の添加量は、上記の担体に対する本発明の光触媒粒子の担持量と同様であり、例えば、生成する本発明の光触媒粒子に対して、1~99重量%、2~50重量%、2~25重量%、又は3~10重量%である。

【0036】
本発明の一態様は、本発明の光触媒粒子を含む材料を含む、製品に関する。製品としては特に限定されないが、例えば、便器、洗面台、鏡、浴室(壁、天井、床等)、建材(室内壁、天井材、床、外壁)、インテリア用品(カーテン、絨毯、テーブル、椅子、ソファー、棚、ベッド、寝具等)、ガラス、サッシ、手すり、ドア、ノブ、衣服、家電製品、文房具(例えば本のカバー)、算盤、楽器、スポーツ用具(例えば剣道用具)、おもちゃなどが挙げられる。

【0037】
本明細書において言及される全ての文献はその全体が引用により本明細書に取り込まれる。

【0038】
以下に説明する本発明の実施例は例示のみを目的とし、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。本発明の趣旨を逸脱しないことを条件として、本発明の変更、例えば、本発明の構成要件の追加、削除及び置換を行うことができる。
【実施例】
【0039】
<試薬>
本実施例及び比較例で使用された試薬は、全て和光純薬工業社製である。
【実施例】
【0040】
実施例1
ソルボサーマル反応を使用した光触媒粒子の製造
テトラブチルチタネート(6mL)を、エタノール(46mL)に溶解し、25~40℃で30分間攪拌して、溶液Aを調製した。また、硝酸銀(0.1418g)及びリン酸銀(0.1165g)を1mol/lの硝酸(11ml)に溶解し、溶液Bを調製した。25~40℃で溶液Aを攪拌しながら、溶液Aに溶液Bを滴下した。その後、25~40℃で約19時間攪拌した。その後、当該溶液をソルボサーマル反応容器(製品名:水熱反応器;Shanghai Yikai Instrument Equipment Co., Ltd.製)に移し、オーブン中100、110、120、130、又は140℃にて、1、2、3又は4時間加熱した。ソルボサーマル反応中の反応容器内の圧力は0.31~0.90MPaであった。熱処理は、容器内の反応液を攪拌せずに行われた。熱処理後、上澄みを除去し、コロイド状の物質を得た。当該コロイド状物質を50mlの遠心管に移し、適量の70%エタノールを加え、8900/分で5分間遠心分離を行った後に上澄みを除去した。この操作を3回繰り返した。その後、60℃で12時間乾燥して固形物を得た。当該固形物を粉砕し、光触媒粒子試料を製造した。製造された試料及びその製造条件を以下に示す。
【表1】
JP0006628271B1_000004t.gif
【実施例】
【0041】
比較例1
ゾル-ゲル反応による光触媒粒子の製造
特許文献1に記載の方法に準じて光触媒粒子を製造した。テトラブチルチタネート(6mL)を、エタノール(46mL)に溶解し、25~40℃で30分間攪拌して、溶液Aを調製した。また、硝酸銀(0.1418g)及びリン酸銀(0.1165g)を1mol/lの硝酸(11ml)に溶解し、溶液Bを調製した。25~40℃で溶液Aを攪拌しながら、溶液Aに溶液Bを滴下した。その後、25~40℃で約19時間攪拌した。その後、当該溶液をるつぼ(製品名:蒸発皿、アズワン株式会社製)に移し、105℃で18時間乾燥させた。その後、400℃のマッフル炉(製品名:Fine卓上電気炉、東京硝子器機株式会社製)中で、400℃にて2時間焼結して、固形物を得た。当該固形物を研磨して光触媒粒子試料を製造した(「試料12」とする)。
【実施例】
【0042】
実施例2
ローダミンB(RhB)の分解率の評価
2mg/LのローダミンB水溶液(50mL)を含む透明容器(製品名:100mlビーカー、HARIO株式会社製)に、実施例1で製造された光触媒粒子試料(それぞれ0.05g)を添加した。混合液に攪拌しながら、容器外部から疑似太陽光(XC-100, SERIC., Ltd., 照射強度510W/m2)を照射した。30分後に当該混合液から光触媒粉体を遠心分離(10,000rpm)によって速やかに分離し、得られた清澄液の吸光度を分光光度計(UV-1600,島津製作所)によって分析した。ローダミンB溶液の吸光度を、ローダミンBの最大吸収波長に相当する波長554nmで測定した。
【実施例】
【0043】
各試料を用いた場合におけるローダミンBの分解率を図1及び2に示す。光触媒の活性は、ソルボサーマル反応の温度及び時間によって著しく影響を受けることが明らかとなった。
【実施例】
【0044】
図1は、ソルボサーマル反応の温度の違いによる触媒活性の評価結果を示す。反応時間はいずれも3.0時間である。試料7(ソルボサーマル反応温度120℃)を用いた場合のローダミンBの分解率が最も高く、100%であった。試料1(反応温度100℃)、試料2(反応温度110℃)、試料10(反応温度130℃)及び試料11(反応温度140℃)を用いた場合のローダミンBの分解率は、それぞれ53.7%、56.1%、72.8%及び46.4%であった。
【実施例】
【0045】
図2は、ソルボサーマル反応の時間の違いによる触媒活性の評価結果を示す。反応温度はいずれも120℃である。試料7(反応時間3.0時間)を用いた場合のローダミンBの分解率が最も高く、100%であった。試料3(反応時間1.0時間)、試料4(反応時間1.5時間)、試料5(反応時間2.0時間)、試料6(反応時間2.5時間)、試料8(反応時間3.5時間)及び試料9(反応時間4.0時間)を用いた場合のローダミンBの分解率は、それぞれ79.4%、84.2%、94.7%及び95.7%及び96.2%、31.7%であった。
【実施例】
【0046】
実施例3
水分解反応の評価
容器内の気体を採取するための通気口を備えた蓋を有する透明反応容器(製品名:ねじ口瓶、柴田科学株式会社製)中で、光触媒試料(0.15g)と5%メタノール水溶液(150mL)とを混合した。その後、反応容器外部から疑似太陽光(XC-100, SERIC., Ltd., 照射強度510W/m2)を3時間照射した。30分後に容器内の気体を採取し、熱伝導率検出器(100℃)とポラパックQカラム(83℃)を備えるガスクロマトグラフィー(GC-8A、島津製作所)により、気体中の水素濃度を測定した。結果を図3及び4に示す。
【実施例】
【0047】
図3は、ソルボサーマル反応の温度の違いによる触媒活性の評価結果を示す。ソルボサーマル反応の反応時間はいずれも3.0時間である。試料7(ソルボサーマル反応温度120℃)を用いた場合、最も高い水素生成量を示した(132.6μmol/L)。試料1(ソルボサーマル反応温度100℃)、試料11(ソルボサーマル反応温度140℃)を用いた場合の水素生成量はそれぞれ26.7μmol/L、33.3μmol/Lであった。
【実施例】
【0048】
図4は、ソルボサーマル反応の反応時間の違いによる触媒活性の評価結果を示す。ソルボサーマル反応の反応温度はいずれも120℃である。試料7(ソルボサーマル反応時間3.0時間)を用いた場合、最も高い水素生成量を示した(132.6μmol/L)。試料3(ソルボサーマル反応時間1.0時間)、試料5(ソルボサーマル反応時間2.0時間)、試料9(ソルボサーマル反応時間4.0時間)を用いた場合の水素生成量はそれぞれ18.3μmol/L、80.6μmol/L、40.9μmol/Lであった。
【実施例】
【0049】
実施例4
XRDパターンの評価
実施例1で製造された試料の、X線回折(XRD)パターンを評価した。Cu-Kα線(λ = 1.54178 Å)を用いて、X線回折装置(Ultima III Rint-2000 X線回折装置,Rigaku)によって、XRDパターンを測定した。結果を図5及び6に示す。いずれの試料も、アナターゼ型二酸化チタンに特有のピークが観察された。特に試料7(ソルボサーマル反応温度120℃、ソルボサーマル反応時間3.0時間)において、アナターゼ型二酸化チタンに特有のピークが強く確認された。アナターゼ結晶構造は、ルチル型結晶構造よりも高い光触媒活性を有することが知られている。
【実施例】
【0050】
試料9(ソルボサーマル反応温度120℃、反応時間4.0時間)及び試料11(ソルボサーマル反応温度140℃、反応時間3.0時間)のXRDパターンでは、金属銀に相当するピークが観察された(38.1o,44.0o,64.6o及び77.2o)。これは、高温かつ高圧条件をかけたことにより、酸化銀及びリン酸銀が分解したためである。金属銀は、光生成電子及び正孔のためのより多くの再結合部位を提供するため、その結果、活性フリーラジカルの生成を阻害する。
【実施例】
【0051】
実施例5
UV-visスペクトルの評価
実施例1で製造された光触媒の外観を図7及び8に示す。試料9(ソルボサーマル反応温度120℃、反応時間4.0時間)及び試料11(ソルボサーマル反応温度140℃、反応時間3.0時間)は、ソルボサーマル反応中に生成した金属銀の影響で黒色であった。一方、試料1、3、5、7は白色であった。また、これらの試料のUV-vis拡散反射スペクトルを、UV-vis-NIR分光光度計(UV-3100PC Scan UV-vis-NIR分光光度計、島津製作所)を用いて、200~800nmの範囲で測定した。結果を図9及び10に示す。
【実施例】
【0052】
試料9及び11では、可視光領域の400~780nm付近に、金属銀ナノ粒子に起因する強い吸収を有した。また、試料7は試料1、3及び5と比較して高い吸収を示した。これは、光照射によって試料7の方が試料1、3及び5よりも多くのエネルギーを獲得し、より高い活性を示すことを示唆している。試料1、3、5、7、9、11のバンドギャップエネルギーは、それぞれ3.09eV、2.94eV、2.92eV、2.91eV、2.58eV、2.64eVであった。
【実施例】
【0053】
実施例6
比表面積及び結晶サイズの評価
実施例1で製造された光触媒粒子の比表面積を、比表面積・細孔分布測定装置SA-3100 (BECKMAN COULTER株式会社製)を用いて測定した。また、光触媒粒子の結晶サイズを、Cu-Kα線(λ = 1.54178 Å)を用いて、X線回折装置(Ultima III Rint-2000 X線回折装置,Rigaku)によって測定されたXRDパターンから算出した。結果を以下の表に示す。比表面積が広いほど、光触媒表面上により多くの反応部位を有することになる。また、結晶サイズが小さいほど、良好な結晶構造及びエネルギー変換能を示し、その結果より高い光触媒活性を示すことになる。
【表2】
JP0006628271B1_000005t.gif

【表3】
JP0006628271B1_000006t.gif
【実施例】
【0054】
実施例7
光ルミネセンス(PL)スペクトルの評価
実施例1で製造された光触媒粒子の、励起波長325nmでの光ルミネセンス(PL)スペクトルを、蛍光分光光度計(FP8500,JASCO)を用いて測定した。結果を図11及び12に示す。図11における光ルミネセンスの強度は、試料7<試料11<試料1の順番となった。また、図12における光ルミネセンスの強度は、試料7<試料5<試料9<試料3の順番となった。より低い光ルミネセンス強度は、より低い電子-正孔再結合速度、及びより高い光触媒活性を示唆する。
【実施例】
【0055】
実施例8
光触媒粒子中の構成成分の分析
高分解能透過型電子顕微鏡像(HRTEM)(JEM-2100F電解放出形透過電子顕微鏡、日本電子株式会社製)を利用して試料7を観察した。結果を図13に示す。試料7において、二酸化チタンの格子表面上に、銀、リン酸銀及び酸化銀が担持されていた。
【実施例】
【0056】
また、X線光電子分光分析装置(X線光電子分光システム(ARXPS)、Thermo Fisher Scientific Inc.製)を用いて、試料7のX線光電子分光(XPS)を測定した。結果を図14に示す。試料7中の銀、酸化銀及びリン酸銀の存在が確認された。
【実施例】
【0057】
実施例9
試料7と試料12との比較
(1)ローダミンBの分解率
ゾル-ゲル法で製造された試料12を用いて、実施例2に記載された方法と同様にしてローダミンBの分解率を評価した。結果を図15に示す。ソルボサーマル反応を使用して製造された試料7は、30分でローダミンBを100%分解したのに対し、ゾル-ゲル法で製造された試料12は、ローダミンBを100%分解するのに1時間を要した。
【実施例】
【0058】
(2)メチルオレンジの分解率
試料7と試料12を用いて、メチルオレンジの分解率を評価した。具体的には、ローダミンBを2mg/Lのメチルオレンジ50mLに変更した他は、実施例2と同様にして評価した。結果を図16に示す。ソルボサーマル反応を使用して製造された試料7は、30分でメチルオレンジを95.1%分解したのに対し、ゾル-ゲル法で製造された試料12は、30分でメチルオレンジを13.6%分解したのみであった。
【実施例】
【0059】
(3)XRDパターン
試料12のXRDパターンを実施例4と同様にして評価した。試料7と試料12との比較結果を図17に示す。アナターゼ型二酸化チタンに特有のピークは、試料7のほうが試料12よりも強くかつ明確に観察された。
【実施例】
【0060】
(4)SEM画像
走査型電子顕微鏡(SEM) (Hitachi FE-SEM S-4800 EDX)を利用して、試料7及び12の形態を観察した。結果を図18及び19に示す。
【実施例】
【0061】
(5)比表面積及び結晶サイズ
試料12の比表面積及び結晶サイズを、実施例6と同様にして評価した。試料7と試料12との比較結果を以下に示す。
【表4】
JP0006628271B1_000007t.gif
【実施例】
【0062】
(6)元素分布
エネルギー分散型X線分析装置(超高分解能SEM(S-4800)、日立協和エンジニアリング株式会社製)を用いてエネルギー分散型X線分析(EDS)を行い、試料7と12の元素分布を測定した。結果を以下に示す。銀含有量とリン含有量とで大きな違いが確認された。
【表5】
JP0006628271B1_000008t.gif
【実施例】
【0063】
(7)UV-visスペクトル及びバンドギャップエネルギー
試料7と試料12の外観を図20に示す。試料12は金属銀の影響で灰色であった。一方、試料7は白色であった。また、比較例1で製造された試料12を用いて、実施例5と同様にしてUV-visスペクトルを測定した。試料7と試料12との比較結果を図21に示す。試料12は、可視光領域の400~800nm付近に、銀ナノ粒子に起因する強い吸収を有した。当該UV-visスペクトルの結果にしたがって、試料12のバンドギャップエネルギーは2.29eVと計算された。これは、試料7のバンドギャップエネルギー(2.91eV)と比較して低い値であった。
【実施例】
【0064】
(8)水分解反応
比較例1で製造された試料12を用いて、実施例3に記載された方法と同様にして水分解反応を行った。試料7を用いた場合と試料12を用いた場合とを比較した場合、両者の酸素生成量はほぼ同等であった(試料7:96.0μmol/L;試料12:94.7μmol/L)。しかし、水素生成量は大きく異なった。結果を図22に示す。試料7を用いた場合、水素は132.0μmol/L生成した。一方、試料7を用いた場合は、水素が16.4μmol/L生成したのみであった。
【実施例】
【0065】
既知の光触媒を用いて水分解反応を行った場合の水素生成量を以下に示す。試料7の水素生成量は、既知の光触媒と比較しても極めて高い。
【表6】
JP0006628271B1_000009t.gif
【実施例】
【0066】
図23に、試料7と12のバンドギャップエネルギーの比較結果を示す。光触媒の価電子帯(VB)が1.2eVより高く、伝導帯(CB)が0eVより低い場合にのみ、水の分解が起こる。酸素の生成量が同等であったことは、試料7及び12の価電子帯が近いことを示唆している。しかし、試料12のバンドギャップエネルギーが非常に小さいため、試料12の伝導帯の端部(0.51eV)は、水素発生電位である0eVよりも低い位置にある。試料12において発生した光生成電子は、その不十分なポテンシャルのために、H+を還元してH2を発生させる半反応に参加できない。一方、試料7の伝導帯の端部(-0.11eV)は、水素発生電位である0eVよりも高い位置にある。したがって、試料7において発生した光生成電子は、H+を還元してH2を発生させることが可能である。
【実施例】
【0067】
(9)抗菌活性の評価
試料7及び12を用いて光触媒反応を行った場合における、E.coli(グラム陽性菌)の生存率を評価した。透明容器(製品名:25mlガラス瓶、HARIO株式会社製)に、水(20mL)、E.coli(試料7を試験した時の初期濃度:約108cfu/mL;試料12を試験した時の初期濃度:約107cfu/mL)及び光触媒試料(0.5g/L)を加えた。反応混合物を25℃で攪拌しながら、当該容器の外部からLEDランプ(製品名:LEDランプNSSW-064、日亜化学工業株式会社製、465~470nm、照射強度750W/m2)を照射した。所定の時間間隔で、1mLの反応混合物を回収し、速やかに希釈した。その後、1mLの希釈試料をニュートリエント寒天培地上に均一に広げ、37℃で24時間インキュベートした。プレート上のコロニーをカウントし、各試料中の生存細胞の数を決定した。結果を図24及び25に示す。いずれの場合も、光存在下で優れた抗菌活性を示した。
【実施例】
【0068】
(10)水洗浄試験
容器(製品名:遠心管(50ml)、アズワン株式会社製)に、0.2g/Lとなるように試料12及び蒸留水を添加し、遮光条件下、36℃で24時間振とうした。その後、上清を回収して、漏出した銀の量をICP発光分析装置(製品名:SPS3520UV-DD、日立ハイテクサイエンス株式会社製)により測定した。その後、容器に蒸留水を再度添加し、振とう及び上清の回収を行う上記洗浄サイクルをさらに3回繰り返した。結果を以下に示す。4回洗浄後であっても、1.2mg/Lの銀が漏出した。その量は、WHOが定める水質基準(<0.1mg/L)を超える量であった。また、上記(9)での抗菌活性は、水中で当該触媒から漏出した銀イオンに起因する可能性がある。
【表7】
JP0006628271B1_000010t.gif
【実施例】
【0069】
容器(製品名:25mlガラス瓶、HARIO株式会社製)に、0.5g/Lとなるように試料7及び蒸留水を添加し、遮光条件下、37℃で振とうして、試料7の水洗浄を行った。洗浄開始10分、20分、30分、40分又は12時間経過後、上清を回収して、漏出した銀の量をICP発光分析装置(製品名:SPS3520UV-DD、日立ハイテクサイエンス株式会社製)により測定した。結果を以下に示す。
【表8】
JP0006628271B1_000011t.gif
【実施例】
【0070】
実施例10
グラム陰性菌に対する抗菌活性の評価
試料7を用いて光触媒反応を行った場合における、グラム陰性菌のEnterococcus属細菌であるEnterococus・faecalisの生存率を評価した。透明容器(製品名:25mlガラス瓶、HARIO株式会社製)に、水(20mL)、Enterococus・faecalis(初期濃度:約108cfu/mL)及び光触媒試料(0.5g/L)を加えた。反応混合物を25℃で攪拌しながら、当該容器の外部からLEDランプ(製品名:LEDランプNSSW-064、日亜化学工業株式会社製、465~470nm、照射強度750W/m2)を照射した。所定の時間間隔で、1mLの反応混合物を回収し、速やかに希釈した。その後、1mLの希釈試料をEnterococcosel Agar(日本ベクトン・ティッキンソン株式会社製)上に均一に広げ、35℃で24±2時間インキュベートした。プレート上のコロニーをカウントし、各試料中の生存細胞の数を決定した。結果を図26に示す。いずれの場合も、光存在下で優れた抗菌活性を示した。
【実施例】
【0071】
実施例11
元素分布測定
実施例9(6)と同様の方法で、実施例1で製造された試料1~6、8、9、11の元素分布を測定した。結果を以下に示す。
【表9】
JP0006628271B1_000012t.gif
【実施例】
【0072】
実施例12
バンドギャップエネルギーの測定
実施例9(7)と同様の方法で、実施例1で製造された試料1~6及び8~11のバンドギャップエネルギーを計算した。結果を以下に示す。
【表10】
JP0006628271B1_000013t.gif
【実施例】
【0073】
実施例13
光触媒粒子とゼオライトとの複合材料の製造
テトラブチルチタネート(6mL)を、エタノール(46mL)に溶解し、25~40℃で30分間攪拌して、溶液Aを調製した。また、硝酸銀(0.1418g)及びリン酸銀(0.1165g)を1mol/lの硝酸(11ml)に溶解し、溶液Bを調製した。溶液A、溶液B及び合成ゼオライト(A-3、粉末、75μm)を混合し、25~40℃で約19時間攪拌した。なお合成ゼオライトは、0.0736g(生成する光触媒粒子に対して5重量%)、0.1556g(生成する光触媒粒子に対して10重量%)又は0.4667g(生成する光触媒粒子に対して25重量%)使用された。その後、得られた混合物をソルボサーマル反応容器(製品名:水熱反応器;Shanghai Yikai Instrument Equipment Co., Ltd.製)に移し、オーブン中120℃にて、3時間加熱した。ソルボサーマル反応中の反応容器内の圧力は0.31~0.90MPaであった。熱処理は、容器内の反応液を攪拌せずに行われた。熱処理後、上澄みを除去し、コロイド状の物質を得た。当該コロイド状物質を50mlの遠心管に移し、適量の70%エタノールを加え、8900/分で5分間遠心分離を行った後に上澄みを除去した。この操作を3回繰り返した。その後、60℃で12時間乾燥して固形物を得た。当該固形物を粉砕し、光触媒粒子に対してゼオライトを5重量%、10重量%、又は25重量%含む複合材料を製造した。
【実施例】
【0074】
実施例14
気相中でのアセトアルデヒドの分解評価
図27に示す装置を用いて、実施例13で製造された光触媒粒子とゼオライトとの複合材料(光触媒粒子に対して10重量%のゼオライトを担持)を用いて試験した。光源として可視光ランプを使用した。
光触媒の分散液(0.4g/超純水1mL)をガラス板(50mm x 100ml)上に展開させ、60℃で乾燥した。得られたガラス板を装置に配置し、アセトアルデヒド(初期濃度1.5ppm)を1.0L/minの流量で、相対湿度50%にて装置内に注入した。反応条件は暗条件で60分、光照射条件(可視光放射照度40W/m)で180分とした。生成したCO濃度をガスクロマトグラフィーによって測定した。結果を図28及び29に示す。図28は試料7を使用した場合の結果であり、図29は実施例13で製造された光触媒粒子とゼオライトとの複合材料(触媒粒子に対して10重量%のゼオライトを担持)を用いた場合の結果である。アセトアルデヒドが分解されて生成したCOの量は、複合材料を用いた場合の方が多かった。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の光触媒粒子は、可視光によって優れた酸化還元作用を示す。当該光触媒粒子は、水分解による水素生産に好適に利用することができる。また、当該光触媒粒子を適用することで、材料及び製品に殺菌効果を付与することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24
【図26】
25
【図27】
26
【図28】
27
【図29】
28