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明細書 :Th17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤、及びTh17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤のスクリーニング方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2021-028310 (P2021-028310A)
公開日 令和3年2月25日(2021.2.25)
発明の名称または考案の名称 Th17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤、及びTh17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤のスクリーニング方法
国際特許分類 A61K  38/17        (2006.01)
C07K  14/47        (2006.01)
C12Q   1/02        (2006.01)
A61K  45/00        (2006.01)
A61P  17/06        (2006.01)
A61P  19/02        (2006.01)
A61P  25/00        (2006.01)
A61P  25/28        (2006.01)
A61P  25/16        (2006.01)
A61P  25/14        (2006.01)
A61P   3/10        (2006.01)
A61P  19/06        (2006.01)
A61P  27/02        (2006.01)
A61P  13/12        (2006.01)
A61P  25/04        (2006.01)
A61P   1/04        (2006.01)
A61P   1/16        (2006.01)
A61P   1/18        (2006.01)
A61P  11/00        (2006.01)
A61P  37/08        (2006.01)
FI A61K 38/17
C07K 14/47 ZNA
C12Q 1/02
A61K 45/00
A61P 17/06
A61P 19/02
A61P 25/00
A61P 25/28
A61P 25/16
A61P 25/14
A61P 3/10
A61P 19/06
A61P 27/02
A61P 13/12
A61P 25/04
A61P 1/04
A61P 1/16
A61P 1/18
A61P 11/00
A61P 37/08
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 18
出願番号 特願2019-148054 (P2019-148054)
出願日 令和元年8月9日(2019.8.9)
発明者または考案者 【氏名】岩倉 洋一郎
【氏名】村山 正承
【氏名】小野 貴裕
【氏名】松岡 眞子
出願人 【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100106002、【弁理士】、【氏名又は名称】正林 真之
【識別番号】100136939、【弁理士】、【氏名又は名称】岸武 弘樹
審査請求 未請求
テーマコード 4B063
4C084
4H045
Fターム 4B063QA18
4B063QQ02
4B063QQ08
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4C084BA22
4C084BA23
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4C084ZA08
4C084ZA15
4C084ZA16
4C084ZA33
4C084ZA59
4C084ZA66
4C084ZA68
4C084ZA75
4C084ZA81
4C084ZA89
4C084ZA96
4C084ZB13
4C084ZC35
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA14
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
要約 【課題】Th17細胞誘導性疾患の予防又は治療に好適に用いられる新規な予防又は治療剤、及びTh17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤のスクリーニング方法を提供する。
【解決手段】Th17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤は、アディポネクチン受容体1(PAQR1)に対するアゴニスト活性を示さず、且つ、アディポネクチン受容体2(PAQR2)に対するアゴニスト活性を示すアゴニストを有効成分として含有する。また、Th17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤のスクリーニング方法は、アディポネクチン受容体1(PAQR1)に対するアゴニスト活性を示さず、且つ、アディポネクチン受容体2(PAQR2)に対するアゴニスト活性を示す候補アゴニストをスクリーニングすることを含む。
【選択図】図2B
特許請求の範囲 【請求項1】
アディポネクチン受容体1(PAQR1)に対するアゴニスト活性を示さず、且つ、アディポネクチン受容体2(PAQR2)に対するアゴニスト活性を示すアゴニストを有効成分として含有する、Th17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤。
【請求項2】
前記アゴニストが下記(a)~(d)のいずれかである、請求項1に記載のTh17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤。
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列のgC1qドメインからなるタンパク質。
(c)配列番号1で示されるアミノ酸配列に対して80%以上の配列同一性を有し、アディポネクチン受容体1(PAQR1)に対するアゴニスト活性を示さず、且つ、アディポネクチン受容体2(PAQR2)に対するアゴニスト活性を示すタンパク質。
(d)配列番号1で示されるアミノ酸配列のgC1qドメインに対して80%以上の配列同一性を有し、アディポネクチン受容体1(PAQR1)に対するアゴニスト活性を示さず、且つ、アディポネクチン受容体2(PAQR2)に対するアゴニスト活性を示すタンパク質。
【請求項3】
前記Th17細胞誘導性疾患が関節リウマチ及び多発性硬化症でない、請求項1又は2に記載のTh17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤。
【請求項4】
前記Th17細胞誘導性疾患が自己免疫疾患でない、請求項1又は2に記載のTh17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤。
【請求項5】
前記Th17細胞誘導性疾患が、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎症、視神経脊髄炎、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、1型糖尿病、2型糖尿病、痛風、白斑、ぶどう膜炎、急性及び慢性腎炎、急性及び慢性疼痛、炎症性腸疾患、肝線維症、膵線維症、炎症性肺疾患、又はアレルギー性疾患である、請求項1又は2に記載のTh17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のTh17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤を製造するための、前記アゴニストの使用。
【請求項7】
アディポネクチン受容体1(PAQR1)に対するアゴニスト活性を示さず、且つ、アディポネクチン受容体2(PAQR2)に対するアゴニスト活性を示す候補アゴニストをスクリーニングすることを含む、Th17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤のスクリーニング方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、Th17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤、及びTh17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Th17細胞は、IL-17やIL-22等のサイトカインを産生し、好中球や上皮細胞を活性化させるエフェクターT細胞である。Th17細胞は、関節リウマチ、多発性硬化症、炎症性腸疾患等の自己免疫疾患;喘息や接触性過敏症、遅延型過敏症等のアレルギー疾患;乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎症;等の様々な疾患の病態形成において重要な役割を果たしていることが知られている。
【0003】
本発明者らは、以前、C1q/TNF-related protein 3(CTRP3)が関節リウマチや多発性硬化症に関与していることを報告した(例えば、特許文献1参照)。CTRP3は、短いN末端可変領域、コラーゲンドメイン、及びC末端補体C1qドメインからなる可溶性分泌タンパク質であり、TNF及び補体C1qに類似した結晶構造を有する。しかし、CTRP3の受容体及びその受容体を発現する細胞は未だ同定されていない。
【0004】
C1qドメインは、分泌タンパク質のアディポネクチンも有している。アディポネクチンは、アディポネクチン受容体1(AdipoR1)及びアディポネクチン受容体2(AdipoR2)等へ結合することで作用を及ぼすことが知られているが、C1qドメインはその結合に重要であることが報告されている。
【0005】
アディポネクチンが、ナイーブT細胞からTh17細胞への分化に関与していることは多数報告されている。しかし、アディポネクチンがTh17細胞への分化を促進するという報告(例えば、非特許文献1及び2参照)がある一方で、該分化を抑制するという報告(例えば、非特許文献3及び4参照)もある。このように、Th17細胞への分化メカニズムにおけるアディポネクチンの役割は未だ明確に解明されておらず、Th17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤へのアディポネクチンの応用が容易でないという問題がある。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】国際公開第2015/072544号
【0007】

【非特許文献1】Sun et al.,Sci. Rep.;2015;5;11296
【非特許文献2】Jung et al.,J.Immunol.;2012;188;2592
【非特許文献3】Bao et al.,Br.J.Pharmacol.;2018;175;3379
【非特許文献4】Zhang et al.,Mol.Neurobiol.;2017:54;4908
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記に鑑みて提案されたものであり、Th17細胞誘導性疾患の予防又は治療に好適に用いられる新規な予防又は治療剤、及びTh17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤のスクリーニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的について鋭意研究した結果、アディポネクチン受容体1に対するアゴニスト活性を示さず、且つ、アディポネクチン受容体2に対するアゴニスト活性を示すアゴニストが、ナイーブT細胞からTh17細胞への分化を抑制すること、及びTh17細胞誘導性疾患の予防又は治療に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は、以下のようなものを提供する。なお、アディポネクチン受容体1(AdipoR1)及びアディポネクチン受容体2(AdipoR2)は、PAQR(progestin and AdipoQ receptors)ファミリーのClass Iに分類される受容体であり、それぞれPAQR1、PAQR2とも称される。
【0010】
<1> アディポネクチン受容体1(PAQR1)に対するアゴニスト活性を示さず、且つ、アディポネクチン受容体2(PAQR2)に対するアゴニスト活性を示すアゴニストを有効成分として含有する、Th17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤。
【0011】
<2> 上記アゴニストが下記(a)~(d)のいずれかである、<1>に記載のTh17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤。
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列のgC1qドメインからなるタンパク質。
(c)配列番号1で示されるアミノ酸配列に対して80%以上の配列同一性を有し、アディポネクチン受容体1(PAQR1)に対するアゴニスト活性を示さず、且つ、アディポネクチン受容体2(PAQR2)に対するアゴニスト活性を示すタンパク質。
(d)配列番号1で示されるアミノ酸配列のgC1qドメインに対して80%以上の配列同一性を有し、アディポネクチン受容体1(PAQR1)に対するアゴニスト活性を示さず、且つ、アディポネクチン受容体2(PAQR2)に対するアゴニスト活性を示すタンパク質。
【0012】
<3> 上記Th17細胞誘導性疾患が関節リウマチ及び多発性硬化症でない、<1>又は<2>に記載のTh17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤。
【0013】
<4> 上記Th17細胞誘導性疾患が自己免疫疾患でない、<1>又は<2>に記載のTh17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤。
【0014】
<5> 上記Th17細胞誘導性疾患が、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎症、視神経脊髄炎、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、1型糖尿病、2型糖尿病、痛風、白斑、ぶどう膜炎、急性及び慢性腎炎、急性及び慢性疼痛、炎症性腸疾患、肝線維症、膵線維症、炎症性肺疾患、又はアレルギー性疾患である、<1>又は<2>に記載のTh17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤。
【0015】
<6> <1>~<5>のいずれか一つに記載のTh17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤を製造するための、上記アゴニストの使用。
【0016】
<7> アディポネクチン受容体1(PAQR1)に対するアゴニスト活性を示さず、且つ、アディポネクチン受容体2(PAQR2)に対するアゴニスト活性を示す候補アゴニストをスクリーニングすることを含む、Th17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤のスクリーニング方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、Th17細胞誘導性疾患の予防又は治療に好適に用いられる新規な予防又は治療剤、及びTh17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤のスクリーニング方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】C1qtnf3-/-マウス及びWTマウスから精製したナイーブT細胞に対して、Th17細胞への分化誘導を行った場合の、IL-17T細胞(Th17細胞)のポピュレーションを示す図である。
【図1B】C1qtnf3-/-マウス及びWTマウスから精製したナイーブT細胞に対して、Th17細胞への分化誘導を行った場合の、IL-17T細胞(Th17細胞)の割合を示すグラフである。
【図1C】C1qtnf3-/-マウス及びWTマウスから精製したナイーブT細胞に対して、Th17細胞への分化誘導を行った場合の、培養上清中のIL-17タンパク質量を示す図である。
【図2A】C1qtnf3-/-マウスから精製したナイーブT細胞に対して、Th17細胞への分化誘導を行う際にCTRP3を添加した場合の、IL-17T細胞(Th17細胞)のポピュレーションを示す図である。
【図2B】C1qtnf3-/-マウスから精製したナイーブT細胞に対して、Th17細胞への分化誘導を行う際にCTRP3を添加した場合の、IL-17T細胞(Th17細胞)の割合を示すグラフである。
【図2C】C1qtnf3-/-マウスから精製したナイーブT細胞に対して、Th17細胞への分化誘導を行う際にCTRP3を添加した場合の、培養上清中のIL-17タンパク質量を示すグラフである。
【図3A】C1qtnf3-/-マウスから精製したナイーブT細胞に対して、Th1細胞への分化誘導を行った場合の、IFN-γT細胞(Th1細胞)のポピュレーションを示す図である。
【図3B】C1qtnf3-/-マウスから精製したナイーブT細胞に対して、Th1細胞への分化誘導を行った場合の、IFN-γT細胞(Th1細胞)の割合を示すグラフである。
【図3C】C1qtnf3-/-マウスから精製したナイーブT細胞に対して、Th1細胞への分化誘導を行った場合の、培養上清中のIFN-γタンパク質量を示すグラフである。
【図4A】WTマウスから精製したナイーブT細胞に対して、Th17細胞への分化誘導を行う際にAdipoRonを添加した場合の、IL-17T細胞(Th17細胞)のポピュレーションを示す図である。
【図4B】WTマウスから精製したナイーブT細胞に対して、Th17細胞への分化誘導を行う際にAdipoRonを添加した場合の、IL-17T細胞(Th17細胞)の割合を示すグラフである。
【図4C】WTマウスから精製したナイーブT細胞に対して、Th17細胞への分化誘導を行う際にAdipoRonを添加した場合の、培養上清中のIL-17タンパク質量を示すグラフである。
【図4D】WTマウスから精製したナイーブT細胞に対して、Th1細胞への分化誘導を行う際にAdipoRonを添加した場合の、IFN-γT細胞(Th1細胞)のポピュレーションを示す図である。
【図4E】WTマウスから精製したナイーブT細胞に対して、Th1細胞への分化誘導を行う際にAdipoRonを添加した場合の、IFN-γT細胞(Th1細胞)の割合を示すグラフである。
【図4F】WTマウスから精製したナイーブT細胞に対して、Th1細胞への分化誘導を行う際にAdipoRonを添加した場合の、培養上清中のIFN-γタンパク質量を示すグラフである。
【図5A】C1qtnf3-/-マウスから精製したナイーブT細胞に対して、Th17細胞への分化誘導を行う際にCTRP3を添加し、且つ、AdipoR1ブロッカー又はAdipoR2ブロッカーを添加した場合の、IL-17T細胞(Th17細胞)のポピュレーションを示す図である。
【図5B】C1qtnf3-/-マウスから精製したナイーブT細胞に対して、Th17細胞への分化誘導を行う際にCTRP3を添加し、且つ、AdipoR1ブロッカー又はAdipoR2ブロッカーを添加した場合の、IL-17T細胞(Th17細胞)の割合を示すグラフである。
【図5C】C1qtnf3-/-マウスから精製したナイーブT細胞に対して、Th17細胞への分化誘導を行う際にCTRP3を添加し、且つ、AdipoR1ブロッカー又はAdipoR2ブロッカーを添加した場合の、培養上清中のIL-17タンパク質量を示すグラフである。
【図6】C1qtnf3-/-マウス及びWTマウスにベセルナクリームを塗布した際の、マウスの耳の腫れ(耳の厚さ)を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。

【0020】
<Th17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤>
本実施形態に係るTh17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤は、アディポネクチン受容体1(AdipoR1)に対するアゴニスト活性を示さず、且つ、アディポネクチン受容体2(AdipoR2)に対するアゴニスト活性を示すアゴニスト(以下、「特定アゴニスト」ともいう。)を有効成分として含有する。

【0021】
上述したアディポネクチンやアディポネクチン受容体のアゴニストであるAdipoRonは、AdipoR1及びAdipoR2の双方に対してアゴニスト活性を示すことが知られている。後述する実施例で示すように、AdipoRonはTh17細胞及びTh1細胞の双方への分化を抑制したのに対し、特定アゴニストはTh17細胞への分化のみ抑制し、Th1細胞への分化には影響を及ぼさなかった。これらのことより、AdipoR1の活性化が、Th1細胞への分化を抑制することが明らかとなった。

【0022】
ここで、Th1細胞は細胞性免疫において非常に重要な役割を果たしているため、Th1細胞への分化が抑制されると、免疫機構の正常な働きが妨げられることとなる。したがって、Th17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤に含まれる有効成分は、Th1細胞への分化は抑制せず、Th17細胞への分化のみを抑制する選択的アゴニストであることが好ましい。特定アゴニストは、AdipoR1に対するアゴニスト活性は示さず、AdipoR2に対してのみアゴニスト活性を示す(換言すると、Th17細胞への分化のみ抑制し、Th1細胞への分化は抑制しない)ことから、上記選択的アゴニストとして有用である。

【0023】
本明細書において、「Th17細胞誘導性疾患」とは、Th17細胞によって誘導される疾患のことをいう。本実施形態に係るTh17細胞誘導性疾患は特に限定されないが、一実施形態では関節リウマチ及び多発性硬化症でない疾患であり、また、他の一実施形態では自己免疫疾患でない疾患である。このようなTh17細胞誘導性疾患の具体例としては、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎症、視神経脊髄炎、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、1型糖尿病、2型糖尿病、痛風、白斑、ぶどう膜炎、急性及び慢性腎炎、急性及び慢性疼痛、潰瘍性大腸炎等の炎症性腸疾患;肝線維症、膵線維症、炎症性肺疾患、又は喘息や接触性皮膚炎、遅発性過敏症等のアレルギー性疾患;等が挙げられる。

【0024】
特定アゴニストは、AdipoR1に対するアゴニスト活性を示さず、且つ、AdipoR2に対するアゴニスト活性を示すものであれば特に限定されない。本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、CTRP(C1q/TNF-related protein)ファミリーに属するタンパク質の一つであるCTRP3が、AdipoR1に対するアゴニスト活性を示さず、且つ、AdipoR2に対するアゴニスト活性を示すことが確認された。したがって、本実施形態における特定アゴニストの一例としては、CTRP3が挙げられる。

【0025】
CTRP3の由来は特に制限されず、ヒト由来であってもマウス等の他の動物由来であってもよいが、ヒト由来であることが好ましい。CTRP3のアミノ酸配列は、米国生物工学情報センター(NCBI)のGenBankデータベースに登録されている情報を参照することができる。例えば、GenBankデータベースには、ヒトCTRP3のアミノ酸配列としてアクセッション番号AAI12926等が、マウスCTRP3のアミノ酸配列としてアクセッション番号AAY21928等が登録されている。典型的なアミノ酸配列は以下のとおりである。アミノ酸配列の下線部分は球状ドメイン(gC1qドメイン)を示す。

【0026】
(ヒトCTRP3のアミノ酸配列(配列番号1))
MLWRQLIYWQLLALFFLPFCLCQDEYMESPQTGGLPPDCSKCCHGDYSFRGYQGPPGPPGPPGIPGNHGNNGNNGATGHEGAKGEKGDKGDLGPRGERGQHGPKGEKGYPGIPPELQIAFMASLATHFSNQNSGIIFSSVETNIGNFFDVMTGRFGAPVSGVYFFTFSMMKHEDVEEVYVYLMHNGNTVFSMYSYEMKGKSDTSSNHAVLKLAKGDEVWLRMGNGALHGDHQRFSTFAGFLLFETK

【0027】
(マウスCTRP3のアミノ酸配列(配列番号2))
MLGRQRIWWHLLPLLFLPFCLCQDEYMESPQAGGLPPDCSKCCHGDYGFRGYQGPPGPPGPPGIPGNHGNNGNNGATGHEGAKGEKGDKGDLGPRGERGQHGPKGEKGYPGVPPELQIAFMASLATHFSNQNSGIIFSSVETNIGNFFDVMTGRFGAPVSGVYFFTFSMMKHEDVEEVYVYLMHNGNTVFSMYSYETKGKSDTSSNHAVLKLAKGDEVWLRMGNGALHGDHQRFSTFAGFLLFETK

【0028】
このように、ヒトCTRP3とマウスCTRP3のアミノ酸配列における全体の相同性は96%と高く、球状ドメイン(gC1qドメイン)部分においては、99%と更に高い相同性を有している。

【0029】
CTRP3は、市販品を使用してもよく、遺伝子組換え法又は化学合成法により製造してもよい。遺伝子組換え法によりCTRP3を製造する場合、例えば、発現ベクターを用いて大腸菌、酵母等の微生物、植物細胞、昆虫細胞、又は動物細胞にCTRP3をコードする遺伝子を導入し、タンパク質を発現させればよい。ヒトCTRP3又はマウスCTRP3を製造する場合、立体構造の保持及び翻訳後修飾の観点から、哺乳動物細胞が好ましく用いられる。化学合成法によりCTRP3を製造する場合、液相法、固相法、Boc法、Fmoc法等を単独で又は組み合わせて製造すればよい。

【0030】
CTRP3は、AdipoR1に対するアゴニスト活性を示さず、且つ、AdipoR2に対するアゴニスト活性を示す限り、野生型CTRP3のアミノ酸配列において1個又は数個のアミノ酸残基が置換、欠失、又は付加されたアミノ酸配列からなる変異型CTRP3であってもよい。

【0031】
変異型の各アミノ酸配列と野生型の各アミノ酸配列との配列同一性は、例えば、80%以上であってもよく、85%以上であってもよく、90%以上であってもよく、93%以上であってもよく、95%以上であってもよい。この場合、後述する球状ドメイン部分の配列同一性が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、93%以上であることが更に好ましく、95%以上であることが特に好ましく、100%であることが極めて好ましい。
ここで、「配列同一性」とは、2つのアミノ酸配列をアラインメントした場合の配列間の一致性を意味し、例えば、BLASTプログラム(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/Blast/cgi)を使用して算出することができる。

【0032】
なお、CTRPファミリーに属するタンパク質は、その球状ドメイン(gC1qドメイン)のみでも生体内に存在し、球状ドメインが機能部位であると考えられている(Trends. Immunol.,25(10):551-61(2004))。そこで、特定アゴニストは、CTRP3の球状ドメインを構成するペプチドであってもよい。

【0033】
また、特定アゴニストは、AdipoR1に対するアゴニスト活性を示さず、且つ、AdipoR2に対するアゴニスト活性を示す限り、CTRP3の球状ドメインのアミノ酸配列において1個又は数個のアミノ酸残基が置換、欠失、又は付加されたアミノ酸配列からなる変異型の球状ドメインを構成するペプチドであってもよい。このとき、変異型の各アミノ酸配列と野生型の各アミノ酸配列との配列同一性は、例えば、80%以上であってもよく、85%以上であってもよく、90%以上であってもよく、93%以上であってもよく、95%以上であってもよい。

【0034】
特定アゴニストとして好適なものとしては、例えば、下記(a)~(d)から選択されるものが挙げられる。
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号1で示されるアミノ酸配列のgC1qドメインからなるタンパク質。
(c)配列番号1で示されるアミノ酸配列に対して80%以上の配列同一性を有し、アディポネクチン受容体1(AdipoR1)に対するアゴニスト活性を示さず、且つ、アディポネクチン受容体2(AdipoR2)に対するアゴニスト活性を示すタンパク質。
(d)配列番号1で示されるアミノ酸配列のgC1qドメインに対して80%以上の配列同一性を有し、アディポネクチン受容体1(AdipoR1)に対するアゴニスト活性を示さず、且つ、アディポネクチン受容体2(AdipoR2)に対するアゴニスト活性を示すタンパク質。

【0035】
特定アゴニストは、AdipoR1に対するアゴニスト活性を示さず、且つ、AdipoR2に対するアゴニスト活性を示すものであれば、タンパク質やペプチド以外の形態(例えば、低分子化合物等)であってもよい。

【0036】
本実施形態に係るTh17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤は、必要に応じて、特定アゴニスト以外の成分を含有していてもよい。特定アゴニスト以外の成分としては、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、緩衝剤、溶解補助剤、安定化剤、等張化剤、懸濁化剤、乳化剤、緩衝剤、溶剤;等が挙げられる。

【0037】
本実施形態に係るTh17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤の剤形は特に制限されず、用途に応じて選択することができる。例えば、本実施形態に係るTh17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤の剤形としては、注射用液剤、注射用凍結乾燥粉末剤等の非経口剤;錠剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤等の経口剤;等が挙げられる。

【0038】
本実施形態に係るTh17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤は、医薬品の分野において採用される任意の方法や適当な改良を加えた方法によって製造することができる。

【0039】
本実施形態に係るTh17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤の投与量は、投与対象、投与経路、対象疾患、症状等に応じて適宜決定される。また、投与回数や投与間隔等も特に制限されず、単回投与であっても、複数回投与であってもよい。

【0040】
本実施形態に係るTh17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤の投与対象となる動物種は特に限定されず、ヒトを投与対象としてもよいし、サル、ブタ、ウシ、イヌ、ネコ、マウス等の非ヒト動物を投与対象としてもよい。

【0041】
なお、本明細書において「予防」には、発症を防ぐことのほか、発症の時期を遅らせることも含まれる。また、「治療」には、症状を消失又は軽減させることのほか、症状の進行の度合いを抑制することも含まれる。

【0042】
また、本実施形態によれば、Th17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤を製造するための特定アゴニストの使用もまた提供される。

【0043】
<Th17細胞誘導性疾患の予防又は治療方法>
本実施形態によれば、特定アゴニストを含む薬剤を、Th17細胞誘導性疾患の予防又は治療を必要とする対象に投与することを含む、Th17細胞誘導性疾患を予防又は治療するための方法が提供される。該方法における投与対象や投与回数等は、Th17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤について上述した投与対象や投与回数等を採用することができる。また、本実施形態に係るTh17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤は、他の有効成分を含む医薬品等と併用して投与してもよい。

【0044】
<Th17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤のスクリーニング方法>
本実施形態に係るTh17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤のスクリーニング方法は、アディポネクチン受容体1(AdipoR1)に対するアゴニスト活性を示さず、且つ、アディポネクチン受容体2(AdipoR2)に対するアゴニスト活性を示す候補アゴニストをスクリーニングすることを含む。上述のとおり、AdipoR1に対するアゴニスト活性を示さず、且つ、AdipoR2に対するアゴニスト活性を示す特定アゴニストは、Th17細胞への分化を抑制する。したがって、AdipoR1に対するアゴニスト活性を示さず、且つ、AdipoR2に対するアゴニスト活性を示すような活性化の有無を指標とすることにより、Th17細胞誘導性疾患の予防又は治療剤をスクリーニングすることができる。

【0045】
AdipoR1及びAdipoR2の活性化を評価する方法は特に制限されず、任意の方法を採用することができる。
【実施例】
【0046】
以下に実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって制限されるものではない。なお、統計解析はスチューデントの両側t検定により行った(P<0.05;**P<0.01;***P<0.001)。
【実施例】
【0047】
<材料及び方法>(マウス)
CTRP3をコードする遺伝子であるC1qtnf3をノックアウトしたKOマウス(C1qtnf3-/-マウス)を作製した。C1qtnf3-/-マウスは、C57BL/6マウスをもとに既報(Biochem. Biophys. Res. Commun.,443:42(2014))に従って作製した。野生型(WT)のC57BL/6マウスは、日本エスエルシー株式会社から購入した。
【実施例】
【0048】
マウスは、8:00~20:00の照明サイクルのクリーンルーム内でSPF条件下にて飼育した。マウスには、γ線滅菌した通常のF1食餌(船橋農場社)及び酸性化水道水(0.002NのHClでpH2.5に調整)を与えた。以下の試験には、週齢(8~12週齢)及び性別を揃えたマウスを使用した。
【実施例】
【0049】
(ナイーブT細胞の精製)
C1qtnf3-/-マウス及びWTマウスの脾臓から、Naive CD4+ T cell Isolation Kit(Miltenyi Biotec社)を用いて、ナイーブT細胞の精製を行った。
【実施例】
【0050】
(ナイーブT細胞からTh1細胞への分化誘導)
ナイーブT細胞を、プレートコートした4μg/mLの抗CD3(クローン145-2C11、BioLegend社)並びに可溶性1μg/mLの抗CD28(クローン37.51、BioLegend社)、10μg/mLの抗CD4(クローン11B11、BioLegend社)、及び5ng/mLのrecombinant murine IL-12(PeproTech社)を含み、10%FBSを含有するX-VIVO 20 medium(Lonza社)中で3日間培養して刺激した。培養はrecombinant human CTRP3(Aviscera Bioscience社)、AdipoRon(Cayman Chemical社)、AdipoR1ブロッカー(Alpha Diagnostic社)、及びAdipoR2ブロッカー(Alpha Diagnostic)の非存在下又は存在下で行った。
【実施例】
【0051】
(ナイーブT細胞からTh17細胞への分化誘導)
ナイーブT細胞を、プレートコートした4μg/mLの抗CD3(クローン145-2C11、BioLegend社)並びに可溶性1μg/mLの抗CD28(クローン37.51、BioLegend社)、10μg/mLの抗IFNγ(クローンR4-6A2、BioLegend社)、10μg/mLの抗CD4(クローン11B11、BioLegend社)、20ng/mLのrecombinant mouse IL-6(PeproTech社)、5ng/mLのrecombinant human TGF-β1(PeproTech社)、及び10ng/mLのrecombinant mouse IL-1α(PeproTech社)を含み、10%FBSを含有するX-VIVO 20 medium(Lonza社)中で4又は5日間培養して刺激した。培養はrecombinant human CTRP3(Aviscera Bioscience社)、AdipoRon(Cayman Chemical社)、AdipoR1ブロッカー(Alpha Diagnostic社)、及びAdipoR2ブロッカー(Alpha Diagnostic)の非存在下又は存在下で行った。
【実施例】
【0052】
(フローサイトメトリー)
細胞を50ng/mLのPMA(Sigma社)、500ng/mLのイオノマイシン(Sigma社)、及び2μMのモネンシン(Sigma社)で4時間刺激した。刺激後、細胞を染色バッファー(2%FCS及び0.1%アジ化ナトリウムを含有するHBSS)中の抗マウスCD16/CD32モノクローナル抗体(2.4G2、ハイブリドーマ培養上清から精製したもの)で処理して、FcR結合をブロックした。次に、マウスIL-17A抗体(TC11-18H10.1)、マウスIFN-γ抗体(XMG1.2)、及びマウスCD4抗体(RM4-5)を用いて、4℃で30分間、既報(Nat.Commun.,6:7464(2015))に従って染色した。なお、これらの抗体は、Biolegend社から入手した。その後、FACS Canto IIサイトメーター、及びCellQuestソフトウェア(Becton Dickinson社)又はFlowJoソフトウェア(Tree Star社)により解析した。
【実施例】
【0053】
(ELISA)
培養上清中のIL-17及びIFN-γのタンパク質量は、IL-17 ELISA MAX standard(R&D Systems社)及びmouse IFN-γ ELISA MAX standard(R&D Systems社)を用いてそれぞれ解析した。
【実施例】
【0054】
<試験例1>
試験例1では、CTRP3欠損による、Th17細胞への分化における影響を確認した。上述した方法で、C1qtnf3-/-マウス及びWTマウスのナイーブT細胞からTh17細胞への分化誘導を行い、IL-17T細胞(Th17細胞)のポピュレーションを、フローサイトメトリーにより解析した。また、培養上清中のIL-17タンパク質量を、ELISAにより解析した。
【実施例】
【0055】
同様の実験を3回行い、平均値と標準偏差を求めた。フローサイトメトリーの結果を図1A及び図1Bに示し、ELISAの結果を図1Cに示す。
【実施例】
【0056】
図1A及び図1Bに示されるように、C1qtnf3-/-マウスにおいては、WTマウスと比較して、IL-17T細胞のポピュレーションが有意に増加していた。また、図1Cに示されるように、C1qtnf3-/-マウスにおいては、WTマウスと比較して、培養上清中のIL-17タンパク質量が有意に増加していた。これらの結果より、CTRP3欠損により、ナイーブT細胞からTh17細胞への分化が亢進することがわかった。
【実施例】
【0057】
<試験例2>
試験例2では、CTRP3を添加した場合の、Th17細胞への分化における影響を確認した。C1qtnf3-/-マウスから精製したナイーブT細胞からTh17細胞への分化誘導において、recombinant human CTRP3を50、100、200ng/mLの濃度となるように培地に添加して培養を行い、IL-17T細胞(Th17細胞)のポピュレーションを、フローサイトメトリーにより解析した。また、培養上清中のIL-17タンパク質量を、ELISAにより解析した。
【実施例】
【0058】
同様の実験を4回行い、平均値と標準偏差を求めた。フローサイトメトリーの結果を図2A及び図2Bに示し、ELISAの結果を図2Cに示す。
【実施例】
【0059】
図2A及び図2Bに示されるように、CTRP3の濃度依存的に、IL-17T細胞のポピュレーションが有意に減少していた。また、図2Cに示されるように、CTRP3の濃度依存的に、培養上清中のIL-17タンパク質量が有意に減少していた。これらの結果より、CTRP3は、ナイーブT細胞からTh17細胞への分化を抑制することがわかった。
【実施例】
【0060】
<試験例3>
試験例3では、CTRP3を添加した場合の、Th1細胞への分化における影響を確認した。C1qtnf3-/-マウスから精製したナイーブT細胞からTh1細胞への分化誘導において、recombinant human CTRP3を50、100、200ng/mLの濃度となるように培地に添加して培養を行い、IFN-γT細胞(Th1細胞)のポピュレーションを、フローサイトメトリーにより解析した。また、培養上清中のIFN-γタンパク質量を、ELISAにより解析した。
【実施例】
【0061】
同様の実験を4回行い、平均値と標準偏差を求めた。フローサイトメトリーの結果を図3A及び図3Bに示し、ELISAの結果を図3Cに示す。
【実施例】
【0062】
図3A及びBに示されるように、CTRP3をいずれの濃度で添加しても、IFN-γT細胞のポピュレーションへの影響は示されなかった。同様に、図3Cに示されるように、CTRP3をいずれの濃度で添加しても、IFN-γタンパク質量への影響は示されなかった。これらの結果より、CTRP3は、ナイーブT細胞からTh1細胞への分化には影響しないことがわかった。
【実施例】
【0063】
<試験例4>
試験例4では、アディポネクチン受容体のアゴニストであるAdipoRonを添加した場合の、Th17細胞及びTh1細胞への分化における影響を確認した。WTマウスから精製したナイーブT細胞からTh17細胞及びTh1細胞への分化誘導において、AdipoRonを1、2、3μg/mLの濃度となるように培地に添加して培養を行い、IL-17T細胞(Th17細胞)及びIFN-γT細胞(Th1細胞)のポピュレーションを、フローサイトメトリーにより解析した。また、培養上清中のIL-17タンパク質量及びIFN-γタンパク質量を、ELISAにより解析した。
【実施例】
【0064】
同様の実験を4回行い、平均値と標準偏差を求めた。Th17細胞に関するフローサイトメトリーの結果を図4A及び図4Bに示し、ELISAの結果を図4Cに示す。また、Th1細胞に関するフローサイトメトリーの結果を図4D及び図4Eに示し、ELISAの結果を図4Fに示す。
【実施例】
【0065】
図4A及び図4Bに示されるように、AdipoRonの濃度依存的に、IL-17T細胞のポピュレーションが有意に減少していた。また、図4Cに示されるように、AdipoRonの濃度依存的に、培養上清中のIL-17タンパク質量が有意に減少していた。また、図4D及び図4Eに示されるように、AdipoRonの濃度依存的に、IFN-γT細胞のポピュレーションが有意に減少していた。また、図4Fに示されるように、AdipoRonの濃度依存的に、培養上清中のIFN-γタンパク質量が有意に減少していた。これらの結果より、AdipoRonは、Th17細胞及びTh1細胞の双方への分化を抑制することがわかった。
【実施例】
【0066】
<試験例5>
試験例5では、Th17細胞への分化における、AdipoR1及びAdipoR2に対するCTRP3のアゴニスト活性を確認した。C1qtnf3-/-マウスから精製したナイーブT細胞からTh17細胞への分化誘導において、recombinant human CTRP3を200ng/mLとなるように培地に添加し、更に、AdipoR1に対するブロッカー(AdipoR1 blocker)又はAdipoR2に対するブロッカー(AdipoR2 blocker)を10μg/mLとなるように培地に添加して培養を行い、IL-17T細胞(Th17細胞)のポピュレーションを、フローサイトメトリーにより解析した。また、培養上清中のIL-17タンパク質量を、ELISAにより解析した。
【実施例】
【0067】
同様の実験を4回行い、平均値と標準偏差を求めた。フローサイトメトリーの結果を図5A及び図5Bに示し、ELISAの結果を図5Cに示す。
【実施例】
【0068】
図5A及び図5Bに示されるように、AdipoR1ブロッカーを添加した場合には、IL-17T細胞のポピュレーションへの影響は示されず、AdipoR2ブロッカーを添加した場合には、IL-17T細胞のポピュレーションが有意に増加していた。また、図5Cに示されるように、AdipoR1ブロッカーを添加した場合には、培養上清中のIL-17タンパク質量には変化がみられなかったが、AdipoR2ブロッカーを添加した場合には、培養上清中のIL-17タンパク質量が有意に増加していた。これらの結果より、CTRP3によるTh17細胞への分化抑制作用は、AdipoR1に対するアゴニスト活性によるものではなく、AdipoR2に対するアゴニスト活性によるものであることがわかった。
【実施例】
【0069】
<試験例6>
試験例6では、CTRP3がTh17細胞誘導性疾患である乾癬に及ぼす影響を確認した。C1qtnf3-/-マウス及びWTマウス(n=6ずつ)の耳の腹側表面に、14mgのベセルナクリーム(5%イミキモド;持田製薬社)を毎日塗布した。耳の厚さは、マイクロメーターカリパスによって測定した。乾癬症状は耳の腫れを指標として確認し、塗布0日目の耳と比較した耳の厚さの百分率として示し、平均値と標準偏差を求めた。結果を図6に示す。
【実施例】
【0070】
図6に示されるように、WTマウスに比べて、C1qtnf3-/-マウスでは、耳の腫れが経時的に大きくなる症状がみられた。これらの結果より、CTRP3欠損によりTh17細胞誘導性疾患が重篤化することがわかった。
図面
【図1A】
0
【図1B】
1
【図1C】
2
【図2A】
3
【図2B】
4
【図2C】
5
【図3A】
6
【図3B】
7
【図3C】
8
【図4A】
9
【図4B】
10
【図4C】
11
【図4D】
12
【図4E】
13
【図4F】
14
【図5A】
15
【図5B】
16
【図5C】
17
【図6】
18