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明細書 :光無線給電装置および光無線給電移動体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2021-027683 (P2021-027683A)
公開日 令和3年2月22日(2021.2.22)
発明の名称または考案の名称 光無線給電装置および光無線給電移動体
国際特許分類 H02S  40/22        (2014.01)
G02B   6/26        (2006.01)
G02B   6/42        (2006.01)
H02J  50/30        (2016.01)
H02J  50/70        (2016.01)
FI H02S 40/22
G02B 6/26
G02B 6/42
H02J 50/30
H02J 50/70
請求項の数または発明の数 15
出願形態 OL
全頁数 25
出願番号 特願2019-143540 (P2019-143540)
出願日 令和元年8月5日(2019.8.5)
発明者または考案者 【氏名】石橋 晃
出願人 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100120640、【弁理士】、【氏名又は名称】森 幸一
審査請求 未請求
テーマコード 2H137
5F151
Fターム 2H137AA17
2H137AB11
2H137BA32
2H137BA41
2H137BA55
2H137BB12
2H137BC52
5F151AA01
5F151AA08
5F151AA09
5F151AA10
5F151AA11
5F151BA02
5F151FA02
5F151FA06
5F151JA23
5F151JA24
要約 【課題】空中、水中(特に海中)、宇宙空間あるいは月面などに滞在するドローンなどの各種の移動体にレーザービームなどの光ビームによる光無線給電により安定的かつ効率的に電力を供給することができる光無線給電装置および光無線給移動体を提供する。
【解決手段】光無線給電装置は、複数の反射鏡11が透明層12を介して一方向に周期的に配置され、一方の主面が光入射面を構成し、他方の主面が光出射面を構成する平板状の反射鏡アレイ11と、反射鏡アレイ11の他方の主面に設けられ、外部より反射鏡アレイ11の一方の主面に入射して反射鏡11で反射されることにより入射した光が一方向に導波されるように構成された非対称面状光導波路20と、非対称面状光導波路20の光出射側の端部に設けられた光電変換素子からなる発電部30とを有する。この光無線給電装置を小型無人機などの移動体に設置して光無線給電移動体とする。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
受光部と、
上記受光部と空間的に分離して設けられた光電変換素子からなる発電部と、
上記受光部と上記発電部とを結び且つ光の進行方向を変換する機能を有する空間的に非対称な導波路とを有し、
上記発電部は上記導波路の光出射側の端部に設けられている光無線給電装置。
【請求項2】
上記発電部を構成する上記光電変換素子の、上記導波路の上記光出射側の端部に面する表面の反射率が5%以下である請求項1記載の光無線給電装置。
【請求項3】
複数の反射鏡が透明層を介して一方向に周期的に配置され、一方の主面が光入射面を構成し、他方の主面が光出射面を構成する平板状の反射鏡アレイと、
上記反射鏡アレイの上記他方の主面に設けられ、外部より上記反射鏡アレイの上記一方の主面に入射して上記反射鏡で反射されることにより入射した光が一方向に導波されるように構成された非対称面状光導波路と、
上記非対称面状光導波路の光出射側の端部に設けられた光電変換素子からなる発電部と、
を有する光無線給電装置。
【請求項4】
上記非対称面状光導波路は上記光出射側の端面に向かって断面積が徐々に増加する楔状の形状を有する請求項3記載の光無線給電装置。
【請求項5】
上記反射鏡の断面が上記他方の主面の側に頂点を有する放物線状の形状を有する請求項3または4記載の光無線給電装置。
【請求項6】
上記放物線の軸は上記他方の主面にほぼ垂直である請求項5記載の光無線給電装置。
【請求項7】
上記反射鏡と上記非対称面状光導波路との幾何学的交点は直線状または上記非対称面状光導波路の上記光出射側の端面上の1点を中心とする同心円弧状の形状を有する請求項3~6のいずれか一項記載の光無線給電装置。
【請求項8】
上記反射鏡アレイの上記一方の主面にさらに光波進行方向変換層が設けられ、上記放物線の軸は、上記光波進行方向変換層による進行方向変換後の方向に平行である請求項9記載の光無線給電装置。
【請求項9】
上記発電部は光電変換用の半導体層を有する請求項3~8のいずれか一項記載の光無線給電装置。
【請求項10】
上記半導体層の互いに対向する第1の面および第2の面にそれぞれ第1の電極および第2の電極が設けられていることを特徴とする請求項9記載の光無線給電装置。
【請求項11】
上記半導体層はp型半導体層とn型半導体層とからなるpn接合であることを特徴とする請求項10記載の光無線給電装置。
【請求項12】
上記半導体層のバンドギャップまたはHOMO-LUMOギャップが光の進行方向に順に段階的および/または連続的に減少するように構成されていることを特徴とする請求項11記載の光無線給電装置。
【請求項13】
上記半導体層はバンドギャップまたはHOMO-LUMOギャップが光の進行方向に順に段階的に減少した複数の領域からなり、上記第1の電極および上記第2の電極のうちの少なくとも一方は各領域間で互いに分離して設けられていることを特徴とする請求項12記載の光無線給電装置。
【請求項14】
移動体と、
上記移動体に一体に設けられ、上記移動体に給電を行う光無線給電装置とを有し、
上記光無線給電装置が、
複数の反射鏡が透明層を介して一方向に周期的に配置され、一方の主面が光入射面を構成し、他方の主面が光出射面を構成する平板状の反射鏡アレイと、
上記反射鏡アレイの上記他方の主面に設けられ、外部より上記反射鏡アレイの上記一方の主面に入射して上記反射鏡で反射されることにより入射した光が一方向に導波されるように構成された非対称面状光導波路と、
上記非対称面状光導波路の光出射側の端部に設けられた光電変換素子からなる発電部と、
を有する光無線給電移動体。
【請求項15】
上記移動体は小型無人機、無人航空機、航空機、人工衛星、無人船舶、船舶、水中移動体、無人自動車または自動車である請求項14記載の光無線給電移動体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、光無線給電装置および光無線給電移動体に関し、例えば、空中を移動する小型無人機や無人航空機、水中特に海水中を移動する小型無人機などの移動体、更には、月面で活動する探査車(ローバー)などの移動体に光無線により給電を行うのに適用して好適な光無線給電装置および光無線給電移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空中、水中(特に海中)、宇宙空間に滞在中のドローンや衛星などへの電力供給などにおいて、光無線給電はますますその重要性が高まってきている。従来、このようなドローンなどへの光無線給電は、マイクロ波を用いたり、或いはドローンなどの本体の外面に太陽電池を設置し、この太陽電池に対してレーザービームを照射したりすることにより発電(光電変換)を行うのが一般的である(例えば、非特許文献1、2参照)。
【0003】
また、小型のUAV(Unmanned Aerial Vehicle)やUGV(Unmanned Ground Vehicle)がオーダーにして10mから1kmの距離で10Wから1000Wのパワー伝送を必要とするのに対し、今後は、大型のUAVや災害時の探査・救助装置、地上から宇宙空間の衛星へのパワー供給など数kWから100kW級のパワー伝送も必要とされてくる。また5Gなどの次世代通信のインフラとして低高度衛星を数千機オーダー打ち上げ、それら衛星間のパワー伝送や情報伝送も今後益々重要となってくる。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】国際公開第2017/061448号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2019/059342号パンフレット
【0005】

【非特許文献1】Phillip P. Jenkins, et. al., OWPT-5-064 OWPT2019, Yokohama,Japan, Apr. 23-25, 2019
【非特許文献2】Yoshihiro Masui, et. al., OWPT-9-02 OWPT2019, Yokohama, Japan, Apr. 23-25, 2019
【非特許文献3】[令和元年7月31日検索]、インターネット〈URL:http://www.mhgopower.com/images/Cell_Datasheet _Rev _1.2 _07-09-2019.pdf〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の目標を達成するには、長距離間での制御性の良いパワー伝送、通信が必要となる。ビーム光の送達する位置決め精度とこれを受ける受光部の空間的許容範囲の掛け算で、送達効率は決まってくる。しかしながら、上述の従来の光無線給電システムでは、受光部の太陽電池でそのまま発電するので、長距離空間伝送してきたレーザービームの到達地点の場所の揺らぎのため、安定した高出力電力伝送が難しかった。特に、デバイスの高効率動作に好適な高電圧を得るべく、複数の光電変換素子を直列接続した受光器構造では、光出力が最小の光電変換素子に律速されて出力効率が決まるので、ますます高効率の駆動が難しくなる。また、レーザービームを使った長距離伝送が本来備えている特性を十分に生かすことができていない。
【0007】
そこで、この発明が解決しようとする課題は、空中、水中(特に海中)、宇宙空間あるいは月面などに滞在するドローンなどの各種の移動体にレーザービームなどの光ビームによる光無線給電により安定的かつ効率的に電力を供給することができる光無線給電装置および光無線給移動体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は、
受光部と、
上記受光部と空間的に分離して設けられた光電変換素子からなる発電部と、
上記受光部と上記発電部とを結び且つ光の進行方向を変換する機能を有する空間的に非対称な導波路とを有し、
上記発電部は上記導波路の光出射側の端部に設けられている光無線給電装置である。
【0009】
この光無線給電装置においては、受光部と発電部(光電変換部)とが互いに空間的に分離していることにより、光経路の揺らぎに対する耐性を飛躍的に向上させることができる。また、受光部と発電部とを結び且つ光の進行方向を変換する機能を有する導波路を空間的に非対称な構造とすることにより、3次元伝搬光を2次元導波光へと非可逆的に変換(3次元伝搬光から2次元導波光に行ったきりに)することができる。好適には、発電部を構成する光電変換素子の、導波路の光出射側の端部に面する表面の反射率を5%以下と低く、特に例えば1%~2%とする。こうすることで、導波路内を導波されて導波路の光出射側の端部から出射される2次元導波光が光電変換素子の表面で反射されることによる時間反転相当波の発生を抑制することができる。
【0010】
上記の光無線給電装置の発明に対し、より具体的な下位の発明として次の発明がある。即ち、この発明は、
複数の反射鏡が透明層を介して一方向に周期的に配置され、一方の主面が光入射面を構成し、他方の主面が光出射面を構成する平板状の反射鏡アレイと、
上記反射鏡アレイの上記他方の主面に設けられ、外部より上記反射鏡アレイの上記一方の主面に入射して上記反射鏡で反射されることにより入射した光が一方向に導波されるように構成された非対称面状光導波路と、
上記非対称面状光導波路の光出射側の端部に設けられた光電変換素子からなる発電部と、
を有する光無線給電装置である。
【0011】
この光無線給電装置の発明においては、反射鏡アレイおよび非対称面状光導波路がそれぞれ上記の上位概念の発明の光無線給電装置における受光部および受光部と発電部とを結び且つ光の進行方向を変換する機能を有する空間的に非対称な導波路に相当する。
【0012】
反射鏡アレイとしては、例えば特許文献1に記載のものを用いることができる。反射鏡アレイにおける反射鏡の断面形状および配置は、外部から入射するレーザービームなどの光ビームが、非対称面状光導波路を直射することなく(即ち、まず必ず反射鏡に入射して反射されてから)、かつ、一つの反射鏡で反射された光が隣の反射鏡に入射して散乱されることのないように設定される。反射鏡の断面形状は、好適には、光ビームが入射する一方の主面側から他方の主面側(非対称面状光導波路の側)に向かって凸の放物線状の形状を有する。このように反射鏡の断面が放物線状の形状を有することにより、放物線の2回対称の軸に平行な方向から当該反射鏡に入射する光は放物線の焦点に向かって反射されるようにすることができ、それによって非対称面状光導波路に入射する光の入射角度を一定範囲内に絞り込むことができる。光無線給電装置に入射する光ビームの方向が一定であり、この光ビームが光無線給電装置に垂直方向から入射する場合、好適には、放物線の軸は非対称面状光導波路にほぼ垂直に選ばれる。あるいは、反射鏡アレイ上にさらに光波進行方向変換層が設けられる場合には、放物線の軸は、好適には、この光波進行方向変換層による進行方向変換後の方向に平行に選ばれる。光波進行方向変換層としては、例えば、光波進行方向変換シートが用いられる。反射鏡と非対称面状光導波路との幾何学的交点は、好適には、直線状または円弧状の形状を有する。複数の反射鏡が設けられる場合、これらの反射鏡と非対称面状光導波路との幾何学的交点は、複数の直線状または非対称面状光導波路の光出射側の端面上の1点を中心とする同心円弧状の形状を有する。前者では、非対称面状光導波路上に反射鏡が非対称面状光導波路に平行な一方向に周期的に複数設けられて反射鏡アレイが形成される。反射鏡の材料は、この光無線給電装置で対象とする波長帯の光に対して高い反射率を得ることができる材料であれば、基本的にはどのようなものであってもよいが、好適には、例えば、銀(Ag)、銀合金(Ag-Pdなど)、アルミニウム(Al)などの金属が用いられる。典型的には、非対称面状光導波路上に反射鏡と透明層とが非対称面状光導波路の一方の主面に沿って交互に複数設けられるが、これに限定されるものではない。透明層は、好適には、非対称面状光導波路を構成する透明物質とほぼ等しい屈折率を有する透明物質(透明ガラスや透明樹脂など)からなる。
【0013】
反射鏡アレイは上記のものに限定されず、例えば、特許文献2に記載の光導波装置におけるクラッド層(特許文献2の図1のクラッド層12)を用いることができる。このクラッド層は実質的に反射鏡アレイと同様に機能する。即ち、導波コア層と、上記導波コア層を不連続に被覆するクラッド層とを有し、上記クラッド層は、上記導波コア層を被覆していない断絶部の端部と、上記断絶部に対して上記導波コア層の導波方向と反対側でかつ上記導波コア層から離れた位置との間に延在し、上記導波コア層の導波方向に向かって上記導波コア層に次第に近づき、かつ上記断絶部の上記端部における接線が上記導波コア層に平行(タンジェンシャル)またはほぼ平行になるように設けられた構造をその一部に有し、上記クラッド層の上記断絶部に上記クラッド層で被覆された光導入コア層が上記導波コア層と合流するように設けられている光導波装置におけるクラッド層を反射鏡アレイとして用いることができる。導波コア層を不連続に被覆するクラッド層は離散的併進対称性を有する。
【0014】
非対称面状光導波路は、典型的には、光出射側の端面に向かって断面積が徐々に増加する楔状の形状(あるいはテーパー形状)を有する。このような楔状の非対称面状光導波路では、この非対称面状光導波路の光入射面から内部に入射した光は、この非対称面状光導波路の二つの主面で交互に反射されながら断面積が大きくなる向きに導波され、最終的に非対称面状光導波路の光出射側の端部に設けられた発電部に入射する。非対称面状光導波路は、平面状光導波路であっても、曲面状光導波路であってもよい。また、非対称面状光導波路の平面形状は必要に応じて選ばれるが、典型的には、四角形、例えば長方形または正方形の形状を有する。この場合、必要に応じて、非対称面状光導波路の光出射端面を除いた端面、例えば、非対称面状光導波路が四角形の形状を有し、その互いに対向する一対の辺のうちの少なくとも一方の辺に相当する非対称面状光導波路の端面の全部または一部が光出射端面となる場合にはこの四角形の上記の互いに対向する一対の辺と異なる一対の辺のうちの少なくとも一方の辺に相当する非対称面状光導波路の端部に光反射機構が設けられる。この場合、非対称面状光導波路の主面に入射した光が非対称面状光導波路内を導波される際にこの光反射機構に入射すると反射され、光出射端面に向かう方向に光路が曲げられることにより、光出射端面から取り出すことができる光の量が多くなる。この光反射機構は、例えば、非対称面状光導波路の側面に設けられた光反射膜や非対称面状光導波路の側面が鏡面に構成されたものである。
【0015】
光電変換素子からなる発電部(光電変換部)の構成は特許文献1に記載のものを用いることができる。発電部は、非対称面状光導波路の光出射側の端部に設けられた光電変換用の半導体層を有する。この半導体層の上下の互いに対向する一対の面にそれぞれ第1の電極および第2の電極が設けられる。これらの第1の電極および第2の電極の一方はアノード電極、他方はカソード電極として用いられる。半導体層がpn接合を有する場合、そのpn接合面は、非対称面状光導波路の一方の主面に垂直または平行である。平行な場合は、典型的には、非対称面状光導波路の内部を導波される光の正味の進行方向と、非対称面状光導波路の端面から半導体層に入射した光により半導体層中に生成されるキャリアの正味の移動方向とのなす角度Θがほぼ直角である。Θは、具体的には、例えば、π/2-δ≦Θ≦π/2+δに選ばれる。ただし、δは、第1の電極および第2の電極のうちのアノード電極として用いられるものの、半導体層内の光の進行方向に平行な方向の幅(電極幅)に対する半導体層の厚さの比に対応し、δ~半導体層の厚さ/電極幅である。典型的には、非対称面状光導波路と半導体層とは互いに一体に設けられ、例えば、それらの端部同士が接合されて一体化される。
【0016】
好適には、光無線給電装置に光が入射する際に半導体層に光が直接入射しないように構成される。言い換えると、光無線給電装置に光が入射する場合、反射鏡アレイには光が入射するが、半導体層の面には光が直接入射しない。こうすることで、半導体層に直接入射する光により半導体層が加熱されて温度が上昇するのを防止することができるので、半導体層の特性劣化を防止することができ、ひいては、熱として散逸するエネルギーも少ないことと相まって、この発電部の光電変換効率の低下を防止することができ、高い光電変換効率を得ることができる。
【0017】
半導体層は、無機半導体または有機半導体からなり、典型的には、p型半導体層とn型半導体層とからなるpn接合であり、そのpn接合面は、上述の通り非対称面状光導波路の主面に平行または垂直である。半導体層の厚さは、この半導体層内のキャリアの拡散長の関数を勘案して適宜選ばれるが、pn接合面が非対称面状光導波路の主面に平行な場合、好適には100nm以上100μm以下、pn接合面が非対称面状光導波路の主面に垂直な場合、好適には1μm以上500μm以下である。半導体層を構成する半導体は、アモルファス(非晶質)、多結晶、単結晶のいずれの形態のものであってもよい。
【0018】
無機半導体としては、CdSe、PbS、PbSe、PbTeなどのII-VI族化合物半導体、GaSb、InAs、InN、AlInN、GaInN、GaN、AlGaN、GaAsN、GaPNなどのIII-V族化合物半導体、SiやSiGeなどのIV族半導体、Six Gey Sn1-x-y O、SiNx 、SiOx 、CIS(CuInSe)、CIGS(CuInGaSe)、CuInGaSeTeなどを用いることができる。これらの半導体は、例えば、In、GaなどのIII族元素の組成比の制御や硫黄(S)の混合などによってバンドギャップを制御することができるのが特徴である。半導体層は、これらの無機半導体からなる微粒子により構成することもできる。
【0019】
有機半導体としては、有機太陽電池の材料として一般的に報告されているものは全て用いることができるが、具体的には、ペンタセンなどのポリアセン、ポリアセチレン(好ましくは二置換型ポリアセチレン)、ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリ(2,5-チエニレンビニレン)、ポリピロール、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(9,9-ジアルキルフルオレン)(PDAF)、ポリ(9,9-ジオクチルフルオレン-co-ビチオフェン)(F8T2)、ポリ(1-ヘキシル-2-フェニルアセチレン)(PHX PA)(発光材料としては青色の発光を示す)、ポリ(ジフェニルアセチレン)誘導体(PDPA-nBu)(発光材料としては緑色の発光を示す)、ポリ(ピリジン)(PPy)、ポリ(ピリジルビニレン)(PPyV)、シアノ置換型ポリ(p-フェニレンビニレン)(CNPPV)、ポリ(3,9-ジ-tert-ブチルインデノ[1,2-b]フルオレン(PIF)などを用いることができる。これらの有機半導体のドーパントについては、ドナーとしてはアルカリ金属(Li、Na、K、Cs)を用いることができ、アクセプタとしてはハロゲン類(Br2 、I2 、CI2 )、ルイス酸(BF3 、PF5 、AsF5 、SbF5 、SO3 )、遷移金属ハロゲン化物(FeCl3 、MoCl5 、WCl5 、SnCl4 )、有機アクセプタ分子としてはTCNE、TCNQを用いることができる。また、電気化学ドーピングに用いられるドーパントイオンは、陽イオンとしてはテトラエチルアンモニウムイオン(TEA+ )、テトラブチルアンモニウムイオン(TBA+ )、Li+ 、Na+ 、K+ 、陰イオンとしてはClO4 - 、BF4 - 、PF6 - 、AsF6 - 、SbF6 - などを用いることができる。有機半導体としてはさらに、高分子電解質を用いることもできる。この高分子電解質の具体例を挙げると、ポリアニオンとしては、サルフォネートポリアニリン、ポリ(チオフェン-3-酢酸)、サルフォネートポリスチレン、ポリ(3-チオフェンアルカンサルフォネート)など、ポリカチオンとしては、ポリアリルアミン、ポリ(p-フェニレン-ビニレン)前駆体高分子、ポリ(p-メチルピリジニウムビニレン)、プロトン化ポリ(p-ピリジルビニレン)、ポロトン(2-N-メチルピリジニウムアセチレン)などを用いることができる。半導体層として低不純物濃度にドープされた有機半導体層を用いる場合、この有機半導体層はヘテロジャンクション型あるいはバルクヘテロジャンクション型の構造とすることができる。ヘテロジャンクション型構造の有機半導体層においては、p型有機半導体膜およびn型有機半導体膜とを第1の電極および第2の電極と接触するように接合する。バルクヘテロジャンクション型構造の有機半導体層は、p型有機半導体分子とn型有機半導体分子との混合物からなり、p型有機半導体とn型有機半導体とが互いに入り組んで互いに接触した微細構造を有する。
【0020】
半導体層を構成する半導体としては、無機半導体および有機半導体のほかに、有機無機ハイブリッド半導体を用いることもできる。このような有機無機ハイブリッド半導体としては、例えば、ペロブスカイト系半導体を用いることができる。
【0021】
好適には、第1の電極および第2の電極は半導体層とオーミック接触している。半導体層として有機半導体を用いる場合は、第1の電極および第2の電極は半導体層とオーミック接触していなくてもよい。第1の電極および第2の電極としては、金(Au)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)などの金属のほか、特にp型SiにはAl、n型SiにはAgを用いることが有効であり、インジウム-スズ酸化物(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)などの各種の透明導電性酸化物などを用いることができ、クロム、チタン、モリブデン等も合わせて用いることができるが、これに限定されるものではない。また、上記透明電極は、光電変換層である半導体層の電極として用いられた場合、その低屈折率性、ワイドギャップ性を以て、半導体層への進入光子の高導波特性、生成フォトキャリアの低表面再結合レートへと導き、結果として高光電変換効率を可能とする効果も有する。半導体層自体のバンドギャップを第1の電極および第2の電極に近づくにつれて大きくすることも少数キャリアの表面再結合を抑制するのに有効であり、同時に光の閉じ込めをする上でも効果を有するので2重に有効である。上記透明電極は、非対称面状光導波路の主面に対し垂直方向の半導体層の差し渡しの方向の両端に設ける、上記半導体層の屈折率より低屈折率の領域に相当する。
【0022】
好適には、半導体層のバンドギャップ、あるいは半導体層が有機半導体からなる場合にはHOMO(最高被占分子軌道)-LUMO(最低非占分子軌道)ギャップが光の進行方向に順に段階的および/または連続的に減少するようにする。こうすることで、例えば、光電変換装置の半導体層の主面に太陽光が入射した場合、この太陽光は、非対称面状光導波路内を導波されて半導体層に入射すると、バンドギャップあるいはHOMO-LUMOギャップが一番大きい半導体にまず入射し、最終的にバンドギャップが一番小さい半導体に入射することになり、この過程で太陽光スペクトルのうちの短い波長の光から長い波長の光に亘って順次吸収され、しかもこの吸収量は最大化される。このため、半導体層のバンドギャップあるいはHOMO-LUMOギャップの変化のさせ方および使用する半導体の種類によって、太陽光スペクトルの主要部あるいは実質的に全部の光を光電変換することができ、究極的には光電変換効率を理論最大効率に近づけることができる。典型的には、半導体層は、バンドギャップまたはHOMO-LUMOギャップが光の進行方向に順に段階的に減少した複数の領域からなり、各領域の互いに対向する一対の面に第1の電極および第2の電極が設けられ、これらの第1の電極および第2の電極のうちの少なくとも一方は各領域間で互いに分離して設けられる。
【0023】
好適には、半導体層はバンドギャップまたはHOMO-LUMOギャップが光の進行方向に順に段階的に減少した複数の領域からなり、各領域の光の進行方向の幅が、各領域のバンドギャップまたはHOMO-LUMOギャップと等しいエネルギーを有する光の各領域における吸収係数の逆数以上である。
【0024】
半導体層が、バンドギャップまたはHOMO-LUMOギャップが光の進行方向に順に段階的に減少した複数の領域からなる場合、これらの領域の例を挙げると、光の進行方向に順に、Six 1-x (0<x<1)からなる領域、Siからなる領域およびSiy Ge1-y (0<y<1)からなる領域、あるいは、Six 1-x からなる領域、Siからなる領域およびマイクロクリスタルSiy Ge1-y からなる領域、あるいは、AlGaN、GaNおよびIGZO(In、Ga、Znの酸化物)からなる群より選ばれた少なくとも一つの半導体を含む領域、Six 1-x からなる領域、Siからなる領域およびSiy Ge1-y からなる領域、あるいは、Six 1-x からなる領域、Siからなる領域、Siy Ge1-y からなる領域およびGeからなる領域である。
【0025】
光電変換素子としては、Si素子を数個から数十、数百層直列接続した偏平な素子も有効である(非特許文献3参照)。
【0026】
また、この発明は、
移動体と、
上記移動体に一体に設けられ、上記移動体に給電を行う光無線給電装置とを有し、
上記光無線給電装置が、
複数の反射鏡が透明層を介して一方向に周期的に配置され、一方の主面が光入射面を構成し、他方の主面が光出射面を構成する平板状の反射鏡アレイと、
上記反射鏡アレイの上記他方の主面に設けられ、外部より上記反射鏡アレイの上記一方の主面に入射して上記反射鏡で反射されることにより入射した光が一方向に導波されるように構成された非対称面状光導波路と、
上記非対称面状光導波路の光出射側の端部に設けられた光電変換素子からなる発電部と、
を有する光無線給電移動体である。
【0027】
移動体は、基本的にはどのようなものであってもよいが、例えば、小型無人機、無人航空機、航空機、人工衛星、無人船舶、船舶、水中移動体、探査車(ローバー)、無人自動車、自動車などである。小型無人機あるいは無人航空機には、例えばドローン、ラジコン機、農薬散布ヘリコプターなどが含まれる。
【0028】
この光無線給電移動体の発明においては、上記以外のことについては、特にその性質に反しない限り、上記の光無線給電装置の発明に関連して説明したことが成立する。
【発明の効果】
【0029】
この発明によれば、反射鏡アレイの一方の主面が光入射面となるため、光無線給電を受ける、空中、水中(特に海中)、地上、宇宙空間、月面などに滞在するドローンや無人機などの移動体、更には人工衛星、探査車などの移動体などの場所の揺らぎがあっても、光無線給電に用いる光ビームを光入射面に確実に入射させることができ、反射鏡アレイの反射鏡で光ビームを反射させて非対称面状光導波路に入射した後、この非対称面状光導波路内をこの非対称面状光導波路の非対称性により発電部に向かって導波させることができ、最終的に導波光を発電部に入射させて発電(光電変換)することができる。このため、空中などに滞在するドローンなどの各種の移動体に光ビームによる光無線給電により安定的かつ効率的に電力を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の第1の実施の形態による光無線給電装置を示す断面図である。
【図2】この発明の第1の実施の形態による光無線給電装置の平面形状の一例を示す平面図である。
【図3】この発明の第1の実施の形態による光無線給電装置の反射鏡アレイの具体例を示す平面図である。
【図4】この発明の第1の実施の形態による光無線給電装置の反射鏡アレイの他の具体例を示す平面図である。
【図5】この発明の第1の実施の形態による光無線給電装置の発電部付近の構成を拡大して示す断面図である。
【図6】この発明の第1の実施の形態による光無線給電装置の発電部の構成例を示す断面図である。
【図7】この発明の第1の実施の形態による光無線給電装置の反射鏡アレイの製造方法の具体例を示す略線図である。
【図8】この発明の第1の実施の形態による光無線給電装置の反射鏡アレイの製造方法の他の具体例を示す略線図である。
【図9】この発明の第1の実施の形態による光無線給電装置の動作を説明するための断面図である。
【図10】この発明の第1の実施の形態による光無線給電装置の動作を説明するための平面図である。
【図11】この発明の第1の実施の形態による光無線給電装置において外部から入射する光が非対称面状光導波路内を導波される2次元空間伝搬光に変換される性能を検証するために行ったシミュレーションの結果を示す略線図である。
【図12】この発明の第1の実施の形態による光無線給電装置において外部から入射する光ビームが反射鏡アレイと非対称面状光導波路との結合系に入射する際の導波状態の場所依存性を検証するために行ったシミュレーションの結果を示す略線図である。
【図13】この発明の第1の実施の形態による光無線給電装置において外部から入射するダイリューテッド光が反射鏡アレイと非対称面状光導波路との結合系に入射する際の導波状態の場所依存性を検証するために行ったシミュレーションの結果を示す略線図である。
【図14】この発明の第1の実施の形態による光無線給電装置において外部から入射するビーム光およびダイリューテッド光が反射鏡アレイと非対称面状光導波路との結合系に入射する際に空間伝搬光から導波路内伝搬光へと転化する効率の光入射位置依存性を示す略線図である。
【図15】図3に示す反射鏡アレイを実際に作製して光学的性能を評価した結果を示す略線図である。
【図16】図4に示す反射鏡アレイを実際に作製した例を示す図面代用写真である。
【図17】図16に示す反射鏡アレイの光学的性能を評価した結果を示す略線図である。
【図18】この発明の第1の実施の形態による光無線給電装置において反射鏡アレイの設計により反射鏡アレイを入射光ビームに対して見えなくする方法を示す略線図である。
【図19】図18に示す反射鏡アレイに対して光ビームを入射させた時の非対称面状光導波路の光出射端面における光強度分布を示す図面代用写真である。
【図20】市販の一般的な太陽電池の電圧-電流特性を示す略線図である。
【図21】この発明の第1の実施の形態による光無線給電装置の非対称面状光導波路の光出射端面に発電部として市販の一般的な太陽電池を結合した場合の太陽電池の電圧-電流特性を示す略線図である。
【図22】この発明の第2の実施の形態による光無線給電装置を示す断面図である。
【図23】この発明の第2の実施の形態による光無線給電装置の非対称面状光導波路の一部を拡大して示す断面図である。
【図24】この発明の第3の実施の形態による光無線給電ドローンを示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。

【0032】
〈第1の実施の形態〉
[光無線給電装置]
図1は第1の実施の形態による光無線給電装置を示す。図1に示すように、この光無線給電装置は、一方の主面が光入射面を構成し、他方の主面が光出射面を構成する平板状の反射鏡アレイ10と、反射鏡アレイ10の他方の主面上に設けられた楔状の形状を有する非対称面状光導波路20と、この非対称面状光導波路20の光出射側の端部に設けられた光電変換素子からなる発電部30とを有する。反射鏡アレイ10および非対称面状光導波路20の平面形状は特に限定されず、光無線給電装置などに応じて適宜選ばれるが、例えば、長方形または正方形である。図2に、一例として反射鏡アレイ10および非対称面状光導波路20の平面形状が長方形である場合を示す。

【0033】
反射鏡アレイ10は、反射鏡11と透明層12とが、反射鏡アレイ10に平行な一方向に周期的に交互に繰り返し設けられた構造を有する。反射鏡11および透明層12は、例えば、既に挙げた材料により構成される。反射鏡アレイ10に平行な一方向の透明層12の厚さは必要に応じて選ばれるが、例えば数μm~数十μmである。また、反射鏡11と透明層12との繰り返しの周期、即ち、一つの反射鏡11とこれに隣接する透明層12との、反射鏡アレイ10に平行な一方向の合計の厚さに対する反射鏡11の厚さの比は、小さい方が望ましく、少なくとも5%以下、好適には1%以下で1nm以上に選ばれる。反射鏡11は、入射光の抜け(入射光が反射鏡11で反射せず、非対称面状光導波路20を直射すること)がないように、また、図1中、互いに隣接する二つの反射鏡11に着目した場合、向かって右側の反射鏡11で反射した光が左隣の反射鏡11の裏面で反射(散乱)されないように構造および配列の設定をする。反射鏡11の間隔および反射鏡11と透明層12との繰り返し数は、光無線給電装置の用途などに応じて適宜選ばれる。反射鏡11は、光無線給電装置の外部から入射する光ビームを反射して非対称面状光導波路20の光入射面に入射させることができるように構成されている。好適には、反射鏡11は、光無線給電装置に一定方向から入射する光ビームを反射して非対称面状光導波路20に一定範囲内の入射角で入射させることができるように断面形状が選ばれる。図1においては、典型的な一例として、反射鏡アレイ10の、非対称面状光導波路20の主面に垂直な断面における反射鏡11の形状が、放物線の軸の片側の一部をなす場合が示されている。反射鏡アレイ10に対してほぼ垂直方向から3次元空間伝播光が入射する場合には、最終的に非対称面状光導波路20にできるだけ多くの光が入射するようにするために、この放物線の軸は、非対称面状光導波路20の主面に立てた法線に対して好適には±10°以内に設定され、最も好適には0°付近、つまり、非対称面状光導波路20の主面に垂直に設定される。放物線の軸に平行に入射する光は放物線の焦点に集まる性質があるため、放物線の軸を非対称面状光導波路20の主面に垂直に設定することで、反射鏡アレイ10に対してほぼ垂直に3次元空間伝播光が入射する場合、反射鏡11で反射される光の方向はほぼ同じになる。光無線給電装置に入射する入射光をできるだけ多く非対称面状光導波路20に入射させるようにするために、好適には、反射鏡11は、非対称面状光導波路20の端から端まで延在して設けられるが、これに限定されるものではない。各反射鏡11の平面形状は特に限定されず、必要に応じて選ばれるが、典型的には、反射鏡11で反射され、非対称面状光導波路20の内部に入射して導波される2次元空間伝播光の少なくとも大部分が一定方向に向かうように選ばれる。反射鏡アレイ10の具体例を図3および図4に示す。図3および図4に示すように、非対称面状光導波路20と反射鏡11との幾何学的交点(の集合)が、幾何学的対称性を有していることに留意されたい。図3は反射鏡アレイ10および非対称面状光導波路20が長方形の平面形状を有する場合に、各反射鏡11が反射鏡アレイ10の短辺の方向に直線状に延びた形状を有する場合であり、並進対称性を有する。この場合には、各反射鏡11で反射された光は、非対称面状光導波路20の内部を各反射鏡11に垂直な方向に導波される。図4は、反射鏡アレイ10および非対称面状光導波路20が長方形の平面形状を有する場合に、各反射鏡11が反射鏡アレイ10の一つの短辺の中点を中心とする同心円弧状に湾曲した形状を有し、部分的回転対称性および方位対称性を有する。この場合には、各反射鏡11で反射された光は、非対称面状光導波路20の内部を反射鏡アレイ10の一つの短辺の中点に向かって導波される。

【0034】
楔状の非対称面状光導波路20は細長い直角三角形の断面形状を有し、直角の角を挟む長い方の辺(底辺)が反射鏡アレイ10の光出射面と一致し、短い方の辺が非対称面状光導波路20の光出射面と一致する。

【0035】
非対称面状光導波路20を構成する物質は、この光無線給電装置が対象とする範囲の波長の光に対しできるだけ透明な物質であることが望ましい。非対称面状光導波路20を構成する物質は、一般には透明ガラス、高屈折率ガラス、透明プラスチックなどである。透明プラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフッ化ビニリデン、アセチルセルロース、ブロム化フェノキシ、アラミド類、ポリイミド類、ポリスチレン類、ポリアリレート類、ポリスルホン類、ポリオレフィン類などが挙げられる。非対称面状光導波路20を構成する物質としては、特に、プラスティックオプティカルファイバー(POF)などに用いられるフッ素系の素材が、その低光損失性により好適である。非対称面状光導波路20の厚さは必要に応じて選ばれるが、例えば1~1000μmである。非対称面状光導波路20の大きさ(縦横の長さ)は、この光無線給電装置を設置する箇所に応じて適宜選ばれるが、一般的には、例えば(1cm~1m)×(1cm~1m)である。

【0036】
発電部30の詳細を図5Aに示す。図5Aに示すように、発電部30においては、非対称面状光導波路20の光出射側の端面に接触して光電変換用の半導体層40が設けられている。半導体層40はpn接合を有し、そのpn接合面が非対称面状光導波路20の反射鏡アレイ10側の主面に平行になっている。また図5Bに示すように、電極501を挟んで複数直列接続した半導体層40(例えば、MH GoPowerの素子“5S1010.4”) を用いても良く、こうすることで高出力電圧動作が可能となる。半導体層40は、非対称面状光導波路20の光出射端面の全部または一部を覆うように設けられるが、非対称面状光導波路20の光出射端面の全体から光が出射される場合は好適にはその光出射端面の全面、少なくともほぼ全体を覆うように設けられ、光出射端面の一部から光が出射される場合には少なくともその部分を覆うように設けられる。非対称面状光導波路20と半導体層40とは互いに一体に設けられており、全体として面状の形状を有する。

【0037】
半導体層40の上下(光入射側を上とする)の互いに対向する一対の面(上面および下面)にそれぞれ第1の電極50および第2の電極60が設けられている。これらの第1の電極50および第2の電極60の一方はアノード電極、他方はカソード電極として用いられる。例えば、第1の電極50がアノード電極、第2の電極60がカソード電極として用いられる。第1の電極50および第2の電極60は、半導体層40が互いに異なる半導体からなる複数の領域に分割されている場合には各領域毎に設けられてもよいし、一方が全ての領域上に延在する全面電極であってもよい。半導体層40と第1の電極50および第2の電極60とにより光電変換素子が構成されている。

【0038】
この光無線給電装置においては、反射鏡アレイ10に入射した光ビーム(3次元空間伝播光)は、非対称面状光導波路20の内部に入って2次元空間伝播光に変換され、導波された後、非対称面状光導波路20の端面から出射されて発電部30の半導体層40に入射するように構成されている。この場合、非対称状光導波路20の内部を導波される光の正味の進行方向と、非対称面状光導波路20の端面から半導体層40に入射した光によりこの半導体層40中に生成されるキャリア(フォトキャリア)の正味の移動方向(第1の電極50と第2の電極60とを最短で結ぶ方向)とのなす角度Θはほぼ直角である。角度Θは、具体的には、第1の電極50の光の進行方向の幅あるいは半導体層40が互いに異なる半導体からなる複数の領域に分割されており第1の電極50が各領域毎に設けられる場合には各領域毎に設けられる第1の電極50の光の進行方向の幅をW´、半導体層40の厚さをdとすると、π/2-δ≦Θ≦π/2+δ(ただし、δ~d/W´)であり、典型的には80°≦Θ≦100°であり、最も好適には90°である。非対称面状光導波路20の光出射端面に面する半導体層40の表面の反射率は、非対称面状光導波路20の光出射端面から出射された光が半導体層40の表面で反射されることによる時間反転相当波の発生を抑制するために、好適には数%以下、例えば1%~2%とほぼ0にする。このために、例えば、非対称面状光導波路20と半導体層40との接合面に反射防止膜が設けられる。

【0039】
この光無線給電装置においては、好適には、外部から光が入射する際に半導体層40に光が直接入射しないように構成される。言い換えると、光無線給電装置に光が入射する場合、反射鏡アレイ10には光が入射するが、半導体層40の面には光が直接入射しないようにする。このためには、具体的には、例えば次のようにする。例えば、第1の電極50を覆うように半導体層40の上方に遮光層(図示せず)を設ける。遮光層は従来公知のものを用いることができ、必要に応じて選ばれるが、例えば、アルミ箔の両面にプラスチックフィルムが形成されたアルミラミネートフィルムなどである。この遮光層により、半導体層40に光が直接入射しないようにすることができる。

【0040】
半導体層40は、例えば、既に挙げたものの中から必要に応じて選ばれる。半導体層40は、典型的には、p型半導体層とn型半導体層とからなるpn接合である。好適には、半導体層40のうちの第1の電極50および第2の電極60が接触する部分が高不純物濃度にドープされ、これらの第1の電極50および第2の電極60が半導体層40とオーミック接触するようにする。半導体層40の一辺の長さは、典型的には、この半導体層40が設けられる非対称面状光導波路20の辺の長さと同一に選ばれるが、この辺と直角な辺の長さは、典型的には0.5μm~5mmであり、好適には2μm~1mmである。非対称面状光導波路20の大きさは上述のように例えば(1cm~1m)×(1cm~1m)であるので、この半導体層40の面積は一般的には非対称面状光導波路20の面積よりはるかに小さくて済む。即ち、この光無線給電装置は、非対称面状光導波路20が大部分を占め、半導体層40は端のわずかな部分しか占めない。例えば、非対称面状光導波路20の大きさが10cm×10cm、半導体層40の大きさが1mm×10cmとすると、非対称面状光導波路20と半導体層40との全体の面積に占める半導体層40の面積の割合は、0.1×10/10.1×10=0.0099≒1%に過ぎない。これに加えて、半導体層40の厚さは、一般的には数十μm以下と小さいので、半導体層40の体積も極めて小さい。即ち、半導体層40の使用量が極めて少なくて済む。このため、光無線給電装置の製造コストの低減を図ることができる。

【0041】
半導体層40のバンドギャップあるいはHOMO-LUMOギャップEg は、半導体層40内の光の進行方向にN段階(N≧2)に段階的に減少しており、順にEg1、Eg2、…、EgN(Eg1>Eg2>…>EgN)となっている。図6に一例としてN=4の場合を示すが、これに限定されるものではない。図6に示すように、半導体層40は、バンドギャップあるいはHOMO-LUMOギャップEg がそれぞれEg1、Eg2、Eg3、Eg4の領域41、42、43、44からなる。各領域41、42、43、44は、非対称面状光導波路20の半導体層40が設けられた辺に平行な方向に延在する細長いストライプ状の形状を有する。図6においては、各領域41、42、43、44上に互いに分離してそれぞれ第1の電極51、52、53、54が設けられている。第2の電極60は全面電極であり、各領域41、42、44、44の共通電極である。半導体層40を構成する各Egi領域の幅(光の進行方向の幅で、図6の横方向の長さ)は、各Egi領域の光電変換対象光子(各Egi領域のバンドギャップEgi以上のエネルギーを有する光子)のうち、最低エネルギーのものに対するこのEgi領域の吸収係数をαi とすると、1/αi 以上とする。

【0042】
giは次のように設定することができる。例えば、AM1.5太陽光スペクトルの全波長範囲またはその主要な波長範囲(入射エネルギーが高い部分を含む範囲)において、波長をN個の区間に分ける。そして、これらの区間に短波長側(高エネルギー側)から順に1、2、…、Nというように番号を付け、i番目の区間の最小光子エネルギーに等しくEgiを選ぶ。こうすることで、k番目の区間の光子エネルギーを有する光子がEgi領域に入射すると電子-正孔対が発生し、光電変換が行われる。また、この場合、このk番目の区間の光子エネルギーを有する光子が各Egi領域に到達して十分に吸収されるように、非対称面状光導波路20と半導体層40との接合面からこのEgi領域までの距離を選ぶ。これによって、非対称面状光導波路20の内部を導波されて半導体層40に入射する太陽光は、まずEg1領域に入射してそのスペクトルのうち光子エネルギーがEg1以上のものが吸収されて光電変換され、続いてEg2領域に入射してそのスペクトルのうち光子エネルギーがEg2以上でEg1より小さいものが吸収されて光電変換され、最終的にEgN領域に入射してそのスペクトルのうち光子エネルギーがEgN以上でEgN-1より小さいものが吸収されて光電変換される。この結果、光無線給電装置に入射する光ビームの波長がある波長帯に分布していても、そのほぼ全範囲あるいは主要な波長範囲の光を光電変換に使用することができる。

【0043】
各Egi領域の厚さdは必要に応じて選ばれるが、例えば数μm~数十μmである。各Egi領域の幅(半導体層40内の光の進行方向の幅)も必要に応じて選ばれるが、例えば数十μm~数百μmである。具体例を挙げると、図6の各領域41~44の厚さdを数μm~数十μm、各領域41~44の幅w1 ~w4 を数十μm~数百μm、例えば~100μmに選ぶ。

【0044】
典型的な場合、各領域41~44はp型半導体層とn型半導体層とからなるpn接合により構成される。

【0045】
[光無線給電装置の製造方法]
この光無線給電装置は従来公知の技術を用いて容易に製造することができる。即ち、例えば、非対称面状光導波路20を用意し、その光出射端面に発電部30を形成する。次に、この非対称面状光導波路20の底面に反射鏡アレイ10を形成する。例えば、反射鏡アレイ10を非対称面状光導波路20の底面に貼り付ける。こうして、図1に示す光無線給電装置が製造される。

【0046】
[反射鏡アレイ10の製造方法]
反射鏡アレイ10は、例えば、次のような方法により容易に製造することができる。即ち、まず、図3に示すように、反射鏡11が直線状に真っ直ぐに延在している反射鏡アレイ10を製造する場合について説明する。図7AおよびBは真空蒸着装置の真空チェンバー150の正面図および側面図、図7Cは図7Bの破線で囲んだ部分の拡大図である。図7AおよびBに示すように、角が丸まった正方形の断面形状を有する偏平なローラ151に、例えば幅が狭くて薄い平坦なテープ状の透明樹脂製のベースフィルム152を巻き付けておき、このベースフィルム152の一方の面に蒸着源153の金属154を蒸発させて薄く金属膜155を形成した後、この金属膜155付きベースフィルム152を巻き取りローラ156で巻き取っていく。図7BおよびCに示すように、巻き取りローラ156の巻き取り面は、反射鏡アレイ10の反射鏡11と同じ断面形状、例えば放物線の形状を有する。ローラ151の外周面の断面形状も巻き取りローラ156の巻き取り面の断面形状と同様にしてもよい。

【0047】
上述のようにして金属膜155付きベースフィルム152が巻き取りローラ156で巻き取られることにより、ベースフィルム152と金属膜155とが交互に積層された渦巻き構造が形成される。図7Cは図7Bの一部を拡大した図である。この渦巻き構造から図7Aの破線で示すように切り出すことにより、反射鏡アレイ10を製造することができる。ここで、金属膜155が反射鏡11に対応し、ベースフィルム152が透明層12に対応する。

【0048】
上記と同様な反射鏡アレイ10は、3Dプリンティング或いはインプリンティングの手法を用いて製造することもできる。即ち、まず、ベースフィルム152と同一の性質を有する平坦膜を用意し、この平坦膜に対し、反射鏡アレイ10の断面における反射鏡11の形状と同様な形状の曲面部とこれに連なる垂直な直線部とを有する鋸歯状断面の金型を押し付けた後、その金型を平坦膜から引き離す。金型の押し付け深さは平坦膜の厚さより小さくし、金型を押し付けたときに平坦膜を突き抜けないようにする。次に、例えば真空蒸着法により平坦膜に対して垂直な方向から型押しされた面上に例えばAgなどの金属を蒸着する。型押しされた面のうち平坦膜に対して垂直な部分には金属は蒸着されず、曲面部にのみ金属が蒸着されて金属膜が形成される。この後、平坦膜の両面を研磨して両面に金属膜が露出するようにする。この金属膜が反射鏡11に対応し、平坦膜が透明層12に対応する。

【0049】
次に、図4に示すように、反射鏡11が同心円弧状に延在している反射鏡アレイ10を製造する場合について説明する。図8AおよびBは真空蒸着装置の真空チェンバー150の正面図および側面図である。図8AおよびBに示すように、円柱状のローラ151に、例えば幅が狭くて薄い平坦なテープ状の透明樹脂製のベースフィルム152を巻き付けておき、このベースフィルム152の一方の面に蒸着源153の金属154を蒸発させて薄く金属膜155を形成した後、この金属膜155付きベースフィルム152を巻き取りローラ156で巻き取っていく。上述のようにして金属膜155付きベースフィルム152が巻き取りローラ156で巻き取られることにより、ベースフィルム152と金属膜155とが交互に積層されたスパイラル構造が形成される。図8Cは図8Bの破線で示す部分を拡大した図である。この渦巻き構造から図8Aの破線で示すように切り出すことにより、反射鏡アレイ10を製造することができる。

【0050】
[光無線給電装置の動作]
光無線給電装置の動作について説明する。図9および図10に示すように、外部から光無線給電装置の反射鏡アレイ10の光入射面のどこかにほぼ垂直方向からレーザービームなどの光ビーム200が入射する場合を考える。入射した光ビーム200は反射鏡アレイ10の各反射鏡11で反射された後、非対称面状光導波路20の内部に入る。非対称面状光導波路20の内部に入った光は、非対称面状光導波路20の底面と非対称面状光導波路20と空気層との界面で全反射を繰り返し、非対称面状光導波路20がテーパー形状であり断面積が発電部30に向かって徐々に増加しているため、非対称面状光導波路20の内部を矢印方向に導波され、非対称面状光導波路20の光出射端面から出射され、最終的に発電部30の半導体層40の端面に入射して発電(光電変換)が行われる。導波光が半導体層40内を進む過程で半導体層40中に電子-正孔対が生成される。そして、こうして生成された電子および正孔は半導体層40内をドリフトまたは拡散により移動し、第1の電極50および第2の電極60のうちの一方および他方に収集される。こうして半導体層40内で光電変換が行われ、第1の電極50と第2の電極60とから外部に電流(光電流)が取り出される。

【0051】
[光無線給電装置の検証実験]
コンピュータシミュレーションにより、光無線給電装置の性能の検証実験を行った。図11は、非対称面状光導波路20および反射鏡アレイ10の2層構造を仮定して行った光波の追跡実験をコンピュータシミュレーションにより行った結果を示す。この構造は、空間反転対称性を有しておらず(即ち、非対称面状光導波路20内を伝搬する際に光が見る景色が、時間が逆転したときと正転しているときとで同じではなく)、非対称面状光導波路20の端部に設けられた光電変換素子の半導体層40の表面反射率を数%以下とすることで、時間反転相当波の発生を抑制することができる。即ち、一旦、非対称面状光導波路20内の導波光と化した光が再び3次元空間(自由空間)伝搬光化することを抑制することが可能となる。これらの非対称面状光導波路20および反射鏡アレイ10の厚さ方向をz軸、これらの非対称面状光導波路20および反射鏡アレイ10に平行な方向をx軸、これらのx軸およびz軸に垂直な方向をy軸とした。以下、指向性のある光、即ち光ビームが直径数mm以下に絞られた場合をビーム光と、また10mm以上に制御された場合をダイリューテッド(diluted)光(指向性はあるものの、狭ビーム状ではなく空間的に一定密度で拡がった状態の光)と定義する。図11は、光波の電場のy軸方向の振幅Ey の大きさ(強度)のxz面内の分布を示したものである。シミュレーションの諸条件は下記の通りである。非対称面状光導波路20の底面に対する斜面の傾斜角は7°とした。非対称面状光導波路20の屈折率はn=1.585とした。反射鏡アレイ10を構成する放物線鏡からなる反射鏡11の材料はAgとし、透明層12の屈折率はn=1.35とした。z軸の負の方向から反射鏡アレイ10に光が入射すると設定した。図11より、図9に示すような光路で入射光が反射鏡アレイ10の反射鏡11で反射され、非対称面状光導波路20の内部に入り、外部に漏れることなく効率的にこの非対称面状光導波路20の内部をx軸方向に導波されている様子が良く分かる。図12は、外部から入射するビーム光が反射鏡アレイ10と非対称面状光導波路20との結合系に入射する際の導波状態の場所依存性を検証するために行ったシミュレーションの結果を示す略線図である。なお、図12においては、反射鏡アレイ10の反射鏡を放物線鏡と、非対称面状光導波路20をテーパー導波路と記載している(図13においても同様)。図13は、外部から入射する光が、ダイリューテッド光の場合の同様な結果である。ダイリューテッド光の方が、空間伝搬光から導波路内伝搬光へと転化する効率が高いことが示された。パワービーミングの際の光の空間分布の最適化に有用な情報である。ダイリューテッド光はビーム光に比べて空間的なエネルギー密度を下げることができるので、万が一ビーミングの経路に人や物が誤って侵入した等の際に、その被害を極小化することができ、本発明の意義が更に高まる。図14は、外部から入射する光(ビーム光およびダイリューテッド光)が反射鏡アレイ10と非対称面状光導波路20との結合系に入射する際に3次元(3D)空間伝搬光から導波路内2次元空間(2D)伝搬光へと転化する効率の光入射位置依存性を示す。図14で横軸の原点は、図11の非対称面状光導波路20(テーパー導波路)(この計算では、導波路部屈折率1.58および放物線が埋め込まれた部分の屈折率1.35に対応して7°のテーパー角を有する)の尖端であり、逆の端はそこから100μmの位置にある。導波の様子は、角度だけの関数であるので、図12および図13の結果は、非対称面状光導波路20の拡がりサイズを同導波路のテーパー厚みで規格化することができ、図14に示すような結果を得る(このようなスケーリング則の活用により、必要なサイズに応じて導波路構造を設計できる)。図14でも非対称面状光導波路20の尖端は横方向(ラテラル)位置X=0にあり、非対称面状光導波路20の他端はX=11(即ち、非対称面状光導波路20の厚みの11倍の距離)に存在する。3次元空間伝搬光から導波路内伝搬光へと転化する効率は、光の着地ポイントによらずほぼ一定であることが分かる。非対称面状光導波路20のテーパー厚みを10mm程度と取れば、図4に示す反射鏡アレイ10(同心円状周期配列放物線鏡)と非対称面状光導波路20との結合系の受光部のサイズは10cm角程度と設定できる。これは、非特許文献1、2に示された従来技術においてビーム着地点が数cm程度ふらつくことで被ってきた数分の一から数十分の一への出力減少が、この光無線給電装置では(図14に示すように場所依存性を非常に小さくできることから)ほぼ完全に抑制できることを示している。場所非依存性は、ビーム光に対してより顕著であるが、ダイリューテッド光に対してもかなり良好な結果が得られている。この光無線給電装置では、例えば、市販の光電変換素子(MH GoPowerの素子“5S1010.4”)を非対称面状光導波路20の光出射端面に張り付けることで(同素子は、10mm×10mmのサイズと厚み400μmを有し、波長915nmのレーザー光に対し入射光パワー1463.3mW時に効率40.5%を有する(非特許文献3参照)ことから)、この比較的高い効率にて(ビーム光の着地点のふらつきが数cmに亘ってしまっても、その着地場所に依らず)安定した光無線給電が行えることを意味する。

【0052】
図15の右下の挿入図に示すように、図3に示す反射鏡アレイを試作した。図15の左下の挿入図は図3に示す反射鏡アレイの斜視図である。図15より、Z=6mmに設定通りに焦点を結んでいることが分かる。焦点のライン幅は、観測値で0.8±0.1mm程度であり、光を受けたスクリーンの厚みが0.16mm程度あること、斜め入射であることを勘案すると、実効的な焦点のライン幅は0.6mm程度と見積もられる。この焦点をこの反射鏡アレイの下に設けられる非対称面状光導波路20の内部に来るように配置することで、光は図11に示すように完全反射で効率良く、導波路端へと導かれる。

【0053】
図16に示すように、図4に示す反射鏡アレイを試作した。試作は3Dプリンタを用いて行った。この反射鏡アレイでは、図16中、破線の矢印で示すようにビーム光が入射すると、図16中、実線の矢印で示すように、反射鏡アレイの光出射側の端面の中心に向かって収束するように導波される。このため、反射鏡アレイの光出射側の端面の中心に微小な太陽電池300を結合することで十分な光電変換を行うことができる。

【0054】
図17は図4に示す回転対称性(即ち、円筒座標系におけるφ方向の対称性)を持つ反射鏡アレイについて、反射鏡アレイの光出射側の端面の中心への集光性能を評価した結果を示す。図17中、Concentric PPMは同心円状の周期配列放物線鏡、Parallel PPMは併進対称性を有する周期配列放物線鏡を意味する。図17に示すように、図14に示した併進対称性を有する反射鏡アレイのデータとほぼ同じ焦点におけるライン幅が観測され、同心円状の周期配列放物線鏡からなる反射鏡アレイも良好な光学特性を有することが実証された。

【0055】
図18は、反射鏡アレイ10の反射鏡11の設計により、反射鏡アレイ10に対するビーム光の入射側から見た時に反射鏡11が見えなくする方法を示す。即ち、隣り合う2つの反射鏡11の向かって右の反射鏡11の右端に入射した光は、この反射鏡11で反射して左隣の反射鏡11の根本ぎりぎりに進路をとり下に存在する非対称面状光導波路20に入射する。他方、隣り合う2つの反射鏡11の向かって右の反射鏡11の左端に入射した光は、当該部で反射してそのまま非対称面状光導波路20に入射する。こうして、上方から飛来する光は、そのすべてが、周期配列放物線鏡からなる反射鏡アレイ10に散乱されることなく非対称面状光導波路20へ入射する。図19AおよびBはそれぞれ、反射鏡アレイ10にビーム光を入射させた場合の反射鏡アレイ10の端面における光強度分布および非対称面状光導波路20の光出射端面における光強度分布を示す。図19Aは屈折率マッチングを取らない場合(非対称面状光導波路20の屈折率n=1.58、透明層12の屈折率n=1)、図19Bはマッチングを取った場合(非対称面状光導波路20の屈折率n=1.58、透明層12の屈折率n=1.35)であり、図11のシミュレーションの設定に一致した屈折率マッチングが成立しており、計算どおり光は非対称面状光導波路20内に閉じ込められて導波していることが実験で実証された。

【0056】
この光無線給電装置による発電性能を、一般的なSi太陽電池単体の発電性能と比較した。図20に1Sun の状態で測定した当該Si太陽電池の電圧-電流特性を示す。光電変換効率は十数%であることが分かった。これに対し、図16に示す周期配列放物線鏡からなる反射鏡アレイ10と非対称面状光導波路20とを結合した図16に示す集光光学系において、その非対称面状光導波路20の光出射端面に同じSi太陽電池を光面直入射配置で特性評価した結果を図21に示す。周期配列放物線鏡からなる反射鏡アレイ10の受光面積は、非対称面状光導波路20の光出射端面の面積より大きいので、この系は、集光光学系を構成するが、この集光性により、図21の特性は図20の特性に比べ、同じSi太陽電池を用いているにもかかわらず、発電量は約4倍の値を示している。図16に示す太陽電池300に、放物線鏡からなる反射鏡11の存在する領域(図16では矩形の領域)に入射した光が図16中の破線と実線で示すように全て集まってくる。従って、長距離伝搬してきたレーザービームなどの光ビームが空気や水など途中の媒体の揺らぎで、到達地点がばらついても図16の矩形領域にさえ入れば、当該周期配列放物線鏡からなる反射鏡アレイ10とこれと結合した非対称面状光導波路20(この場合は、扁平な円錐を切り取った構造を持つ)の作用により、上記太陽電池300へと導かれる。すなわち、光ビームの着地点の揺らぎの影響は殆どなくなる。

【0057】
この第1の実施の形態によれば、反射鏡アレイ10の一方の主面が光入射面となるため、光無線給電を受ける、空中に滞在するドローンなどの移動体の場所の揺らぎがあっても、光無線給電に用いる光ビーム200を光入射面に確実に入射させることができ、反射鏡アレイ10の反射鏡11で光ビーム200を反射させて非対称面状光導波路20に入射した後、この非対称面状光導波路20内を発電部30に向かって導波させることができ、最終的に導波光を発電部30に入射させて発電(光電変換)することができる。このため、空中、水中(特に海中)、地上、宇宙空間、月面などに滞在するドローンなどの各種の移動体に光ビーム200による光無線給電により安定的かつ効率的に電力を供給することができる。特にこの「安定的に光を発電部の光電変換素子に供給できる」ことの直接の帰結として、当該パワー伝送光[の安定性により今や時間的に一定かまたはゆっくりとしかその強度が変化しないので、この低振動成分]に高周波成分を重畳することが有意かつ可能となり、パワー伝送光そのものにより、電力のみならず同時に通信・制御の情報をも当該無人機・駆動体などに送ることが可能となることはこの光無線給電装置がもたらす別のまた大きなメリットである。更にまた、この光無線給電装置は基本的に反射光学系を形成するので、波長依存性が小さく、別の帯域の光、特に通信用の波長帯の光(電磁波)も同様に集光して非対称面状光導波路20の端部に設置した光電変換素子からなる発電部30(半導体素子)へ届けることができることから、当該移動体との情報通信のロバストネスも反射鏡アレイ10をアンテナとして用いたこの光無線給電装置の導波路システムにより同時に実現することができる。即ち、非対称面状光導波路20の端部に設置したパワービーミング用受光素子、言い換えると発電部30の裏に、相対的にバンドギャップの小さい半導体よりなる信号処理用素子を置くと、この半導体に対応する長波長光は、前面の半導体をすり抜けて後面に達することができる。こうしてこの光無線給電装置の、光の進行方向を変換しかつ良好な導波特性を有する非対称面状光導波路20は一つながらこれを共有して、パワービーミングを前面で行いつつ、後面では信号処理を同時に一括して行うことができる。

【0058】
〈第2の実施の形態〉
[光無線給電装置]
第2の実施の形態による光無線給電装置においては、第1の実施の形態による光無線給電装置と異なり、楔状の非対称面状光導波路20ではなく、全体として平板状の非対称面状光導波路20を用いる。図22は第2の実施の形態による光無線給電装置の特に反射鏡アレイ10および非対称面状光導波路20の部分を示す(特許文献2参照)。発電部30については第1の実施の形態による光無線給電装置と同様である。図22に示すように、この場合、反射鏡アレイ10および非対称面状光導波路20は、クラッド層311と導波方向に間隔δで周期的に配置された複数のクラッド層312とにより平板状の導波コア層313の上下が挟まれた構造により形成されている。クラッド層311は導波コア層313の一方の主面(上面)を連続に被覆し、クラッド層312は導波コア層313の他方の主面(下面)を不連続に被覆している。クラッド層311とクラッド層312とは全体として、導波コア層313を不連続に被覆するクラッド層を構成する。即ち、このクラッド層は、導波コア層313を被覆していない断絶部の端部(例えば、図22中、Eで示す)と、この断絶部に対して導波コア層313の導波方向と反対側でかつ導波コア層313から離れた位置(例えば、図22中、Pで示す)との間に延在し、導波コア層313の導波方向に向かって導波コア層313に次第に近づき、かつ後述のように断絶部の端部における接線が導波コア層313に平行またはほぼ平行になるように設けられた構造をその一部に有する。導波コア層313の両側面はクラッド層311の延長部により被覆してもよいし、反射面により構成してもよい。クラッド層312と導波コア層313との結合部分の詳細を図23に示す。図23においては、クラッド層312をクラッド層312-a、312-b、312-c、312-dで示す。それぞれのクラッド層312と隣のクラッド層312との間には光導入コア層314が設けられている。図23においては、光導入コア層314を光導入コア層314-a、314-b、314-c、314-dで示す。クラッド層312および光導入コア層314は図22の垂直方向(奥行き方向)に所定距離延びている。クラッド層312は導波コア層313の導波方向に凹に湾曲した形状を有し、その形状は必要に応じて選ばれるが、図22では、一例としてクラッド層12が四分の一円の形状を有する場合が示されている。クラッド層312の導波コア層313側の端部の接線は導波コア層313の面と一致しており、従って導波コア層313内の導波方向と一致している。言い換えると、クラッド層312の導波コア層313側の端部は導波コア層313にタンジェンシャルに接続している。クラッド層311、312および導波コア層313の屈折率は、クラッド層311、312により導波コア層311内に光を閉じ込めることができるように、導波コア層313の屈折率に対してクラッド層311、312の屈折率が小さく選ばれている。また、クラッド層312および光導入コア層314の屈折率は、クラッド層312により光導入コア層314内に光を閉じ込めることができるように、光導入コア層314の屈折率に対してクラッド層312の屈折率が小さく選ばれている。導波コア層313の屈折率と光導入コア層314の屈折率とは好適には等しく選ばれるが、これに限定されるものではない。この光無線給電装置においては、周期的に配列した、湾曲した断面を有する光導入コア層314とクラッド層312とにより構成される導波路集合体により反射鏡アレイ10が構成されている。この場合、図22の下面から上に向かって入射した光が、クラッド層312の機能により光導入コア層314内を全反射を繰り返しながら最終的に導波コア層313へと導かれる。この意味で反射鏡アレイ10と同様な機能を有する。こうして受光部と発電部とを結び且つ光の進行方向を変換する機能を有する空間的に非対称な導波路を形成する。

【0059】
上記の湾曲した断面形状を有するクラッド層312は、光入射面で、その接線としては、垂直のものを持つ。当該湾曲断面形状は、導波コア層313へタンジェンシャルに接すればいろいろな形状が許されるが、特に、縦長の楕円と横長の楕円を導波コア層313の近傍(望ましくは光入射面より導波コア層313に近い位置)で接続した構造が高効率の光伝搬を可能とする。この湾曲した断面形状の光入射面と反対の終端部では、クラッド層312は断絶し、そこで水平方向の接線を持つ。クラッド層312が間隔δをもって横方向に周期的に配置されるので、四分の一円の上部の終端部では、図22に示すように、導波コア層313(屈折率大の部分)がクラッド層312に閉じ切られておらず、幾何学的にオープンな構造を持つことが特徴である。これにより、図23に示すように導波方向にx軸を取る(導波コア層313の厚さ方向にz軸を取り、図23の紙面に垂直方向にy軸を取る)と、クラッド層312が不連続となる地点をx=xi と記すと、x<xi では、導波コア層313およびその下部近傍において、図23に示すように、導波方向に沿って(断面形状として)クラッド層312が4本、即ちクラッド層312-a、312-b、312-c、312-dが存在する。即ち、図23に示すクラッド層312-aが断絶した地点以降の領域(x≧xi )では、始点以外の外界より(図23では、左下側から光導入コア層314-aを通じて)、導波コア層313へ光が侵入することができる。x=xi よりδ(2δ)だけ右側にずれた地点、即ち、x=xi +δ(x=xi +2δ)では、光導入コア層314-b(光導入コア層314-c)(支流)が、導波コア層313(本流)に合流する。クラッド層312-a 、312-b、312-cの右終端部(断絶部)での接線は、導波光進行方向に平行またはほぼ平行になっている。即ち、クラッド層312-a 、312-b、312-cの終端部の導波コア層313へのタンジェンシャル接続が形成されている。このようにして、導波コア層313には進行方法に沿っての連続的併進対称性を持たせ、クラッド層312に関しては、周期δの離散的な併進対称性を持たせる。これにより、導波コア層313は、準解放構造を持つこととなる。xi -δ<x<xi において導波コア層313に最近接するクラッド層312-aは、上記終端部x=xi において不連続構造を持つものの、下方より滑らかにほぼ平行性を持ちつつ導波コア層313に近づいてくる一層下の別のクラッド層312-bが、上記最近接クラッド層の断絶をカバーするとともに自らが最近接クラッド層となることで、導波コア層313内の光が、損失を生じることなく、向かって右側へと効率良く導波される。また、この時、各非連続クラッド層312は、その上部の終端部において、幾何学的に上部のクラッド層311に平行またはほぼ平行である。導波方向はクラッド層311に平行であることから(当然ながら水平方向であるので)、断絶クラッド層312は、導波方向に沿って、その最後端において導波コア層313に対して上述の如く、タンジェンシャルに合流するような構造を持つ。x=xi において最近接クラッド層312-aが終端した地点から、ホイヘンスの原理に従って、微小球面波として導波コア層313を導波してきた光は拡がろうとするが、上記のタンジェンシャル性をもって下から近接してくる一段下の層のクラッド層312-bにより全反射される。上記の“平行またはほぼ平行であること”とは、上記過程によって全反射が生じ得る程度に平行であることにより定義される。この平行性により、上記のように導波コア層313内の光は散逸することなく、ほぼ100%効率良く導波される。x=xi +δにおいてもクラッド層312-bとクラッド層312-cについて全く同様のことが生じる。

【0060】
この第2の実施の形態によれば、楔状の非対称面状光導波路20を用いないでも、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。

【0061】
〈第3の実施の形態〉
[光無線給電ドローン]
図24は第3の実施の形態による光無線給電ドローンを示す。図24に示すように、この光無線給電ドローンにおいては、ドローン400の本体の外面に第1または第2の実施の形態による光無線給電装置500が設置されている。光無線給電装置500の出力端子はドローン400の本体の電源の入力端子に接続されている。給電時には、外部より光無線給電装置500に光ビーム200が照射される。

【0062】
第3の実施の形態によれば、ドローン400が空中に滞在する間に場所の揺らぎがあっても、光無線給電に用いる光ビーム200を光無線給電装置500の光入射面に確実に入射させることができるため、光無線給電装置500によりドローン400に安定的かつ効率的に電力を供給することができる。

【0063】
以上、この発明の実施の形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。特に、この発明の最大の特徴は、受光部と発電部との分離にあるが、これにより拡がった光(ダイリューテッド光や、その究極例としての太陽光)の入射に対しては、当該入射光を面積積分する機能(集光性、アンテナ機能)を有し、あるいはこの対極のビーム状の光に対しては、その空間的なビームゆらぎ耐性(ビームのふらつきに対するロバストネス)を有することが可能となるという点で、応用の範囲を大きく広げることができる。また、斜め方向からの光ビーム入射に対してこれを受光面に垂直方向に変換することについては、既に本発明と同一の発明者により特許文献1、2に示されているようにパラボラ断面を持つ構造体或いはパラボロイドを敷き詰めた光波進行方向変換層を用いることが有効である。更なるメリットとしては、受光部と発電部との分離の帰結として、受光部自体はたとえ苛烈な環境に置かれても光自体は荷電中性であることと発電部が相対的に非苛烈環境に置かれることとの相乗効果により、極めて良好な長期信頼性が得られ易いことが挙げられる(これと反対に在来型光電変換素子/太陽電池は、基本的に受光した地点でそのまま発電するので、その戸外設置性故に降水時、特に酸性雨などに対し長期的には常にショートなどのリスクが伴う。耐候性のあるパッシベーションなど光電変換性能とは直接関係の無い要素に足を引っ張られやすくコスト上昇につながるのと対照的である)。また、上記の苛烈な環境には、宇宙空間におけるラディエーションダメージの大きい環境、水中(特に海中における塩水環境)、電気自動車における(車内環境に比しての)車外環境、極地圏における(屋内環境に比べて温度履歴振幅の大きい)屋外環境等も含まれるのは言うまでもない。

【0064】
また、上述の実施の形態において挙げた数値、材料、形状、配置などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じて、これらと異なる数値、材料、形状、配置などを用いてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10…反射鏡アレイ、11…反射鏡、12…透明層、20…非対称面状光導波路、30…発電部、40…半導体層、50…第1の電極、60…第2の電極、200…光ビーム、400…ドローン、500…光無線給電装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
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【図4】
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【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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