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Specification :(In Japanese)筋ジストロフィー関連心筋症の治療又は予防剤

Country (In Japanese)日本国特許庁(JP)
Gazette (In Japanese)再公表特許(A1)
Date of issue Feb 25, 2021
Title of the invention, or title of the device (In Japanese)筋ジストロフィー関連心筋症の治療又は予防剤
IPC (International Patent Classification) A61K  31/165       (2006.01)
A61P  21/04        (2006.01)
A01K  67/027       (2006.01)
C12N  15/12        (2006.01)
C07K  14/47        (2006.01)
FI (File Index) A61K 31/165
A61P 21/04
A01K 67/027 ZNA
C12N 15/12
C07K 14/47
Demand for international preliminary examination (In Japanese)未請求
Total pages 17
Application Number P2020-506513
International application number PCT/JP2019/009742
International publication number WO2019/176864
Date of international filing Mar 11, 2019
Date of international publication Sep 19, 2019
Application number of the priority 2018044752
Priority date Mar 12, 2018
Claim of priority (country) (In Japanese)日本国(JP)
Designated state AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
Inventor, or creator of device (In Japanese)【氏名】片野坂 友紀
【氏名】成瀬 恵治
【氏名】氏原 嘉洋
【氏名】戸田 達史
【氏名】金川 基
Applicant (In Japanese)【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
Representative (In Japanese)【識別番号】110002206、【氏名又は名称】特許業務法人せとうち国際特許事務所
Request for examination (In Japanese)未請求
Theme code 4C206
4H045
F-term 4C206AA01
4C206AA02
4C206GA02
4C206GA30
4C206KA06
4C206KA17
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA94
4H045AA50
4H045BA10
4H045CA40
4H045EA50
Abstract (In Japanese) 式(1)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を有効成分として含有する、筋ジストロフィー関連心筋症の治療又は予防剤。
[式(1)中、R1、R2、R3、R4及びR5は、それぞれ独立に、ハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1~6のアルキル基である。]
JP2019176864A1_000009t.gif
Scope of claims (In Japanese)【請求項1】
式(1)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を有効成分として含有する、筋ジストロフィー関連心筋症の治療又は予防剤。
JP2019176864A1_000007t.gif[式(1)中、R1、R2、R3、R4及びR5は、それぞれ独立に、ハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1~6のアルキル基である。]
【請求項2】
式(1)で示される化合物が、式(2)で示されるコルヒチンである請求項1に記載の治療又は予防剤。
JP2019176864A1_000008t.gif
【請求項3】
前記筋ジストロフィーが、ジストログリカン異常症である、請求項1又は2に記載の治療又は予防剤。
【請求項4】
前記ジストログリカン異常症が、福山型先天性筋ジストロフィー、ウォーカー・ワールブルグ(Walker-Warburg)症候群、筋眼脳病又は肢帯型筋ジストロフィーである、請求項3に記載の治療又は予防剤。
Detailed description of the invention (In Japanese)【技術分野】
【0001】
本発明は、筋ジストロフィー関連心筋症の治療又は予防剤に関する。
【背景技術】
【0002】
筋ジストロフィー症は、筋繊維の壊死と再生を繰り返しながら、次第に筋萎縮と筋力低下が進行していく遺伝性疾患である。そのうち、出生時より筋力の低下を認めるものを、先天性筋ジストロフィーという。先天性筋ジストロフィーには、いくつかのタイプが知られているが、日本では、福山型先天性筋ジストロフィーの発現頻度が高い。福山型先天性筋ジストロフィーの診断に際しては、筋組織検査(筋生検)では、その他の先天性筋ジストロフィーとの区別が難しいことから、フクチン遺伝子(Fukutin)の異常の有無を調べる遺伝子診断により確定診断されている。
【0003】
現在、福山型先天性筋ジストロフィーに対する根治的治療法はなく、リハビリテーションによって運動の能力を少しでも維持することや、関節の拘縮(こうしゅく)を防止することが主体となっている。また、けいれんに対する抗けいれん薬内服、呼吸障害に対する鼻マスク式人工呼吸器使用、心機能障害に対する薬物治療、摂食嚥下障害に対する経管栄養や胃ろうの使用など、合併症に対してそれぞれの症状に応じた適切な治療を行い、日常生活をより良いものにすることが重視されている。
【0004】
このように、筋ジストロフィーの合併症である心機能障害、特に心筋症に対しては、症状に応じた治療が行われている。しかしながら、その治療は、症状を和らげるための対処療法であるため、効果は十分とはいえない。
【0005】
フクチン遺伝子の異常は、スプライシング異常によるとの報告(非特許文献1)がなされ、これをエキソントラッピングという方法で治療できる可能性が示唆されている。また、フクチンによって付加される糖鎖の実体が明らかになり(非特許文献2)、特定の糖鎖成分を標的にした治療研究が進む可能性があるものの、治療薬としての実現性には相当の年月と労力が必要と考えられる。これらはいずれも、福山型先天性筋ジストロフィーの骨格筋に対する治療を主目的とするものである。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】Taniguchi-Ikeda M, Kobayashi K, Kanagawa M, Yu CC, Mori K, Oda T, Kuga A, Kurahashi H, Akman HO, DiMauro S, Kaji R, Yokota T, Takeda S, Toda T, Pathogenic exon-trapping by SVA retrotransposon and rescue in Fukuyama muscular dystrophy,Nature, 2011 Oct 5, 478, 127-31, doi:10.1038/nature10456
【非特許文献2】Kanagawa M, Kobayashi K, Tajiri M, Manya H, Kuga A, Yamaguchi Y, Akasaka-Manya K, Furukawa JI, Mizuno M, Kawakami H, Shinohara Y, Wada Y, Endo T, Toda T, Identification of a Post-translational Modification with Ribitol-Phosphate and Its Defect in Muscular Dystrophy, Cell Rep., 2016 Mar 8, 14(9), 2209-2223, doi: 10.1016/j.celrep.2016.02.017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、現時点では、筋ジストロフィー関連心筋症に対する決定的な治療法は知られておらず、症状を和らげる対処療法が主体であるため、有効で根本的な治療法の開発が期待されている。すなわち、筋ジストロフィー関連心筋症を効果的に治療又は予防できる薬剤を提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、式(1)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を有効成分として含有する、筋ジストロフィー関連心筋症の治療又は予防剤を提供することによって解決される。
【0009】
【化1】
JP2019176864A1_000003t.gif

【0010】
[式(1)中、R1、R2、R3、R4及びR5は、それぞれ独立に、ハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1~6のアルキル基である。]
【0011】
このとき、式(1)で示される化合物が、式(2)で示されるコルヒチンであることが好ましい。
【0012】
【化2】
JP2019176864A1_000004t.gif

【0013】
前記筋ジストロフィーが、ジストログリカン異常症であることが好適な実施態様であり、福山型先天性筋ジストロフィー、ウォーカー・ワールブルグ(Walker-Warburg)症候群、筋眼脳病又は肢帯型筋ジストロフィーであることが、より好適な実施態様である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の薬剤によれば、筋ジストロフィー関連心筋症を治療又は予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】心筋特異的フクチンcKOマウスを得るための交配ストラテジーを示す図である。
【図2】(a)マウスゲノムDNAを用いたジェノタイピング方法、及び(b)cKOマウスにおけるフクチン分子の発現減少を示す図である。
【図3】タモキシフェン投与cKOマウスにおける心室の拡大を示す図である。
【図4】タモキシフェン投与cKOマウスにおける左心室収縮率の低下を示す図である。
【図5】タモキシフェン投与cKOマウスの生存率の低下を示す図である。
【図6】タモキシフェン投与cKOマウスの心臓における微小管の発現量を示す、(a)ウエスタンブロッティング分析、及び(b)グラフを示す図である。
【図7】心筋特異的フクチンcKOマウスの心臓から単離した心筋細胞へのコルヒチン処理による心筋細胞収縮能の改善を示す図である。
【図8】心筋特異的フクチンcKOマウスへのコルヒチン投与による心室拡大の改善を示す図である。
【図9】心筋特異的フクチンcKOマウスへのコルヒチン投与による心機能の改善を示す図である。
【図10】心筋特異的フクチンcKOマウスへのコルヒチン投与による生存率の上昇を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、式(1)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を有効成分として含有する、筋ジストロフィー関連心筋症の治療又は予防剤である。

【0017】
【化3】
JP2019176864A1_000005t.gif

【0018】
式(1)中、R1、R2、R3、R4及びR5は、それぞれ独立に、ハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1~6のアルキル基である。

【0019】
前記アルキル基に含んでいてもよいハロゲン原子は特に限定されず、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が例示される。これらのうち、フッ素又は塩素であることが好ましい。前記アルキル基が含んでいても良いハロゲン原子の個数は特に限定されず、アルキル基中に1個でもよいし複数個であっても構わない。

【0020】
R1、R2、R3、R4及びR5の全てが、ハロゲン原子を含まない炭化水素基であることが好ましい。

【0021】
前記アルキル基の炭素数は、4以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましく、2以下であることがさらに好ましく、1であることが特に好ましい。

【0022】
R1、R2、R3、R4及びR5として好適なものとしては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基などが例示される。これらの内でも、メチル基又はエチル基であることが好ましく、メチル基であることが特に好ましい。

【0023】
R1、R2、R3、R4及びR5のすべてがメチル基である場合がコルヒチンであり、下記式(2)で示される化合物である。コルヒチンは、痛風発作の緩解及び予防薬として古くから広く用いられている薬剤であり、近年は家族性地中海熱の治療用としても用いられている。

【0024】
【化4】
JP2019176864A1_000006t.gif

【0025】
式(1)で示される化合物は、薬学的に許容される塩又は溶媒和物であってもよい。また、種々の形態の結晶を包含する。本発明の治療又は予防剤は、式(1)及び式(2)で示される化合物又はそれらの薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物をそのまま投与してもよいが、好ましくは、当該化合物を含む、経口用あるいは非経口用の医薬組成物として投与することが好ましい。経口用あるいは非経口用の医薬組成物は、当業者に利用可能な製剤用添加物、即ち薬理学的及び製剤学的に許容しうる担体を用いて製造することができる。

【0026】
経口投与に適する医薬組成物としては、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、液剤、及びシロップ剤等を挙げることができ、非経口投与に適する医薬組成物としては、例えば、注射剤、点滴剤、坐剤、吸入剤、点眼剤、点鼻剤、軟膏剤、クリーム剤、及び貼付剤等を挙げることができる。上記医薬組成物の製造に用いられる薬理学的及び製剤学的に許容しうる担体としては、例えば、賦形剤(グルコース、マルトース、トレハロース、デキストリン、デキストラン、セルロースなどの、単糖類、二糖類ないしは多糖類などを含む)、崩壊剤ないし崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、溶解剤、溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、噴射剤、粘着剤等を挙げることができる。

【0027】
式(1)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の投与量は、患者の年令、性別、体重、症状、治療目的等により決定されるが、通常、0.0001~100mg/kg/日である。

【0028】
本発明の薬剤は、筋ジストロフィー関連心筋症の治療又は予防剤として用いられる。本発明者らは、福山型先天性筋ジストロフィーモデルマウスである、フクチンノックアウト(cKO:コンディショナルノックアウト)マウスを作製し、当該マウスに対して、心筋症を発症させてから式(1)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することによって、心機能が維持され、生存率が上昇することを見出した。

【0029】
本発明者らは、福山型先天性筋ジストロフィーモデルマウスを用いた試験により、筋ジストロフィー関連心筋症による心不全の原因が、細胞内の微小管の重合による個々の心筋細胞の収縮率の低下であることを明らかにした。そして、微小管阻害剤(コルヒチン)を投与することによって、当該モデルマウスの心機能の向上と、生存率の上昇を可能にした。

【0030】
上記コンディショナルノックアウトマウスでは、NCBI Reference Sequence: NP_647470.1に開示されるアミノ酸配列で示されるタンパクであるフクチンをコードする遺伝子が欠損することによって、心筋細胞特異的にフクチンの発現が抑制される。そして、当該コンディショナルノックアウトマウスに対して、タモキシフェンを投与することによって、心筋症を発症させることができるので、筋ジストロフィー関連心筋症のモデルマウスとして有用である。ここで、上記と同様に用いることができるのであれば、モデル動物は、マウス以外の非ヒト動物であっても構わない。

【0031】
上記コンディショナルノックアウトマウスは、Cre-loxP組換えシステムを用いて作製することができる。まず、フクチンをコードする対象遺伝子をloxP配列とloxP配列との間にはさみこんだ非ヒト動物を作製する(flox動物)。また、Cre遺伝子を組織特異的プロモーター下流に組み込んだターゲッティングベクターを導入した非ヒト動物を作製する(Cre動物)。flox動物とCre動物を掛け合わせて所望の対象遺伝子を欠損したヘテロ型で非ヒト動物(F2)を作製し、F3でホモ型の非ヒト動物を作製することができる。

【0032】
本発明の薬剤の対象疾患は、筋ジストロフィー関連心筋症である。筋ジストロフィー症は、筋繊維の壊死と再生を繰り返しながら、次第に筋萎縮と筋力低下が進行していく遺伝性疾患である。本発明の薬剤は、骨格筋の機能低下が生じる筋ジストロフィー症において、合併症として発症する心筋症を治療し、予防するものである。

【0033】
本発明の薬剤は、筋ジストロフィー関連心筋症の治療及び予防の両方に用いられる。筋ジストロフィーを発症した患者の多くが心筋症を発症することがわかっているので、心筋症を発症する前の筋ジストロフィー患者に対し、本発明の薬剤を予防的に投与することも有効である。すなわち、遺伝性疾患である筋ジストロフィーに罹患していて、その上で、心筋症を発症した患者及び心筋症を発症するおそれのある患者に対して、本発明の薬剤が投与される。

【0034】
本発明の薬剤の対象疾患である心筋症を引き起こす筋ジストロフィー症の種類は特に限定されないが、ジストログリカン異常症に対してより有効に適用される。ジストログリカンは、ジストロフィン-糖タンパク質複合体に含まれる成分であるが、ジストログリカンの糖鎖に異常を認める疾患がジストログリカン異常症である。具体的なジストログリカン異常症として、福山型先天性筋ジストロフィー、ウォーカー・ワールブルグ(Walker-Warburg)症候群、筋眼脳病及び肢帯型筋ジストロフィー(特に2I型)などが挙げられる。ここで、筋ジストロフィー-ジストログリカン異常症は、「muscular dystrophy-dystroglycanopathy (MDDG)」として、OMIM(Online Mendelian Inheritance in Man)に登録されている。心筋症は上記疾患の主要な死因であることから、本発明の適応によって、患者や家族のQOLを著しく改善できる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を用いて、本発明をより具体的に説明する。
【実施例】
【0036】
(1)心筋特異的Fukutinノックアウト(KO)マウスの作製
本実施例では、Cre-loxPシステムを用いて、心筋特異的Fukutin cKOマウス(フクチン・コンディショナルノックアウトマウス)(Fukutinflox/flox:αMHC-MCM-Cre+/-(cKO))を作製した。マウスはC57/BL6Jを用い、遺伝子はES細胞にエレクトロポレーション法により導入した。
【実施例】
【0037】
本実施例において欠損させた対象遺伝子は、NCBI Reference Sequence: NP_647470.1に開示されるアミノ酸配列(配列番号1)をコードする遺伝子である。該対象遺伝子をloxP配列とloxP配列との間にはさみこんだFukutinflox/floxマウス(F1)を作製した。また、Cre遺伝子をαMHC遺伝子プロモーター下流に組み込んだターゲッティングベクターを導入したαMHC-MCM-Cre+/-マウス(F1)を作製した。Fukutinflox/floxマウスとαMHC-MCM-Cre+/-マウスを交配し、ヘテロ型Fukutinflox/+:αMHC-MCM-Cre+/-マウス(F2)を作製した。Fukutinflox/+:αMHC-MCM-Cre+/-マウスをFukutinflox/floxマウスとさらに交配し、Fukutinflox/+、Fukutinflox/flox、Fukutinflox/+:αMHC-MCM-Cre+/-マウス(HET)及びFukutinflox/flox:αMHC-MCM-Cre+/-マウス(cKO)のF3マウスを作製した。図1に、心筋特異的フクチンcKOマウスを得るための交配ストラテジーを示す。
【実施例】
【0038】
上記得られたマウスのうち、Fukutinflox/flox:αMHC-MCM-Cre+/-マウス(cKO)を、本実施例における心筋特異的Fukutin KOマウスとし、Fukutinflox/floxをコントロールとした。マウス尾から抽出したゲノムDNAにおける遺伝子発現の結果(ジェノタイピング)を図2aに示した。図2a上段において、「wt」はWTフクチン遺伝子(778-bp)のバンドであり、「lox」はloxP挿入型フクチン遺伝子(870-bp)のバンドである。また、図2a下段においては、Creリコンビナーゼ遺伝子の検出が確認された。これらをもとに、マウス個体の遺伝背景を確認することができる。
【実施例】
【0039】
本実施例では、Fukutinflox/flox、Fukutinflox/+:αMHC-MCM-Cre+/-マウス(HET)及びFukutinflox/flox:αMHC-MCM-Cre+/-マウス(cKO)において、心筋細胞でのフクチンの発現を抑制するために、腹腔内に、8mg/kgのタモキシフェンを1日に1回、合計4日間投与して、Creリコンビナーゼによる組換えを誘導した。4日間タモキシフェンを投与したFukutinflox/flox:αMHC-MCM-Cre+/-マウス(cKO)は、Fukutin遺伝子を欠損するため、心筋細胞でのFukutin分子の発現が抑制されることとなる。
【実施例】
【0040】
(2)心筋特異的Fukutin KOマウスの心筋におけるFukutinの発現確認
Fukutinflox/flox、あるいはFukutinflox/flox:αMHC-MCM-Cre+/-マウス(cKO)について、心筋(左室)でのFukutin分子の発現を確認した。ジェノタイピングを終えたマウスから、心筋を摘出し、タンパク成分を可溶化し、Fukutin抗体にてウエスタンブロッティングを行い、Fukutin分子の発現を可視化した。その結果、コントロールでは心筋にFukutinの発現を認めたが、心筋特異的Fukutin KOマウスではFukutinの発現をほとんど認めなかった(図2b)。図2b上段においては、タモキシフェンを投与したcKOマウスの心臓において、フクチン分子(FKTN)が減少していることが示されている。また、図2b下段のβ-DGは、各レーンに同量の膜分子を泳動したことを示すローディングコントロールである。
【実施例】
【0041】
(3)心筋特異的Fukutinノックアウト(cKO)マウスの心臓形態・心機能・生存率
タモキシフェンを4日間投与したFukutinflox/flox、あるいはFukutinflox/flox:αMHC-MCM-Cre+/-マウス(cKO)について、HE(ヘマトキシリン-エオシン染色)によって、心形態を解析した。図3の右下が、タモキシフェンを投与したcKOマウスの心形態像である。コントロールであるFukutinflox/floxにタモキシフェンを投与した場合(図3、右上)と比較して、タモキシフェンを投与したcKOマウスでは左心室の拡大が顕著である。
【実施例】
【0042】
タモキシフェンを4日間投与したFukutinflox/flox、あるいはFukutinflox/flox:αMHC-MCM-Cre+/-マウス(cKO)について、エコーを用いて、左室収縮率を測定した。この結果、cKOについて顕著な心機能低下がみられた(図4)。マウス成体の正常心においてFukutin発現が抑制されると、重篤な心不全となることが明らかとなった。
【実施例】
【0043】
タモキシフェンを4日間投与したFukutinflox/flox、あるいはFukutinflox/flox:αMHC-MCM-Cre+/-マウス(cKO)について、生存率を解析した。タモキシフェンを投与したcKOマウスは、タモキシフェン投与より2週間で生存率は40%となる。心臓におけるFukutinの生理的役割は大きく、生存に大きく関わると考えられた(図5)。
【実施例】
【0044】
(4)心筋特異的Fukutinノックアウト(cKO)マウスの心臓の微小管の発現量の増加
Fukutinflox/flox、あるいはFukutinflox/flox:αMHC-MCM-Cre+/-マウス(cKO)について、4日間のタモキシフェン投与の有無において、微小管を構成する分子であるチューブリン(α-tubulin)の発現量の変化をウエスタンブロッティング法により調べた(図6a、上段)。各レーンのローディングコントロールとして、GAPDHを使用した(図6a、下段)。α-tubulinの発現量を、GAPDHで標準化し、グラフにした(図6b)。これより、タモキシフェンを投与したFukutinflox/flox:αMHC-MCM-Cre+/-マウス(cKO)は、α-tubulinの発現量が上昇していることが明らかとなった(図6b)。
【実施例】
【0045】
(5)心筋特異的Fukutinノックアウト(cKO)マウスから単離した心筋細胞においてみられるコルヒチン処理による心筋細胞収縮能の改善
タモキシフェンを4日間投与したFukutinflox/flox、あるいはFukutinflox/flox:αMHC-MCM-Cre+/-マウス(cKO)の心臓から、心筋細胞を単離し、その収縮率を測定した。形態的にも機能的にも正常であるFukutinflox/floxマウス心臓から単離した心筋細胞は、10μMコルヒチンで1時間処理しても、収縮率は変化せず、高いままであった。一方、Fukutinflox/flox:αMHC-MCM-Cre+/-マウス(cKO)の心臓から単離した心筋細胞は、Fukutinflox/floxマウス心臓から単離した心筋細胞と比較して、収縮率が著しく低下していた。この細胞を、10μMコルヒチンで1時間処理したところ、細胞の収縮率は、正常心なみに向上した(図7)。
【実施例】
【0046】
(6)心筋特異的Fukutinノックアウト(cKO)マウスにおけるコルヒチン処理による心機能の改善
タモキシフェンを投与したFukutinflox/flox:αMHC-MCM-Cre+/-マウス(cKO)でみられる著しい心機能低下において、コルヒチンを投与することが機能改善に繋がるかを検討した。タモキシフェンの投与を開始した2日後から、コルヒチンの腹腔内投与を開始した。投与開始の初日に0.4mg/kg、2日目に0.6mg/kg、3日目に0.8mg/kgのコルヒチンを投与し、4日目以降は1日当たり1mg/kgを、最長で10日目まで連続して投与した。
【実施例】
【0047】
タモキシフェン投与開始から7日目の心形態を、コルヒチン投与の有無で比較し、図8に示した。心組織はHE染色をしている。タモキシフェンを投与したcKOマウスの心臓は、著しい心室の拡大がみられ、心室壁が薄くなっていた(図8、中央)。それに対し、タモキシフェンおよびコルヒチンを投与したマウスの心臓は、心室の拡大が抑制されており、心室壁の厚みが維持されていた(図8、右)。また、タモキシフェン投与開始から10日目のcKOマウスの心臓について、コルヒチン投与の有無による心機能変化を解析した。コルヒチン投与によって、明らかに心機能が改善されていた(図9)。さらに、タモキシフェン投与開始から10日目のcKOマウスにおいて、コルヒチン投与によって、生存率の低下が改善されたことが明らかとなった(図10)。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、既述したとおり、式(1)で示される化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を有効成分として含有する、筋ジストロフィー関連心筋症の治療又は予防剤を提供するものである。本発明によれば、骨格筋の機能低下が生じる筋ジストロフィー症において、合併症として発症する心筋症を治療又は予防することができるので、本発明が医療分野に及ぼす産業上の有用性は極めて大きい。
Drawing
(In Japanese)【図1】
0
(In Japanese)【図2】
1
(In Japanese)【図3】
2
(In Japanese)【図4】
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(In Japanese)【図5】
4
(In Japanese)【図6】
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(In Japanese)【図7】
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(In Japanese)【図8】
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(In Japanese)【図9】
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(In Japanese)【図10】
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