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明細書 :ジオポリマー用凝結遅延型活性フィラー及びその製造方法、並びにジオポリマー固化体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2021-031370 (P2021-031370A)
公開日 令和3年3月1日(2021.3.1)
発明の名称または考案の名称 ジオポリマー用凝結遅延型活性フィラー及びその製造方法、並びにジオポリマー固化体
国際特許分類 C04B  28/26        (2006.01)
C04B  12/04        (2006.01)
C04B   5/00        (2006.01)
C01B  33/24        (2006.01)
FI C04B 28/26 ZAB
C04B 12/04
C04B 5/00 C
C01B 33/24
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2019-157114 (P2019-157114)
出願日 令和元年8月29日(2019.8.29)
発明者または考案者 【氏名】李 柱国
【氏名】池田 攻
出願人 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001601、【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4G073
4G112
Fターム 4G073BA10
4G073BA11
4G073BA57
4G073BA63
4G073BD01
4G073BD02
4G073BD21
4G073CC07
4G073FA12
4G073FB45
4G073FC09
4G073FC25
4G073FD12
4G073FD24
4G073GA01
4G073GA03
4G073GA11
4G073UA20
4G073UB07
4G112JD01
4G112JE01
4G112PC11
要約 【課題】高炉水砕スラグをジオポリマーの原料として有効活用するための、新たな凝結遅延技術を提供する。
【解決手段】高炉水砕スラグを200~1000℃で加熱処理することで、ジオポリマー用凝結遅延型活性フィラーを得る。そして、この活性フィラーを使用してジオポリマー固化体を得る。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
高炉水砕スラグを200~1000℃で加熱処理して得られる、ジオポリマー用凝結遅延型活性フィラー。
【請求項2】
高炉水砕スラグを加熱処理して得られ、線源としてCuKα線を用いたX線回折分析においてハローは検出されず、ゲーレナイトのピークが検出される、ジオポリマー用凝結遅延型活性フィラー。
【請求項3】
前記ゲーレナイトの結晶子径が1000nm未満である、請求項2に記載のジオポリマー用凝結遅延型活性フィラー。
【請求項4】
高炉水砕スラグを200~1000℃で加熱処理することを特徴とするジオポリマー用凝結遅延型活性フィラーの製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の活性フィラーを含有する、ジオポリマー固化体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉水砕スラグを用いたジオポリマーの凝結遅延技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ジオポリマーは、活性フィラー(アルミノシリケート源)がアルカリ溶液(アルカリ源)で刺激されることによって、ケイ酸錯体の縮重合反応が助長されて固化し、従来のセメントクリンカーを使用せずに固化体を作製できる無機材料である。
ジオポリマーを構成する活性フィラーは、ジオポリマーの固化に必要な陽イオンの供給源となるため、構成元素としてSiとAlを多く含むものであることが望ましく、天然物であればメタカオリンなどが使用される。また、活性フィラーとしてフライアッシュや高炉水砕スラグ、都市ごみ焼却灰溶融スラグ、下水汚泥溶融スラグといった産業副産物や廃棄物も使用することができる。このためジオポリマーは、廃棄物の有効活用の観点からも、重要な技術と位置づけられる。
【0003】
ところで、常温環境におけるジオポリマーの優れた強度発現性と実用性のある強度を有させるために、活性フィラーとしてメタカオリンや高炉水砕スラグは単独で使用されるか、又は他の種類の活性フィラーと混合して使用される。日本では、カオリン資源は殆どないため、一般に、高炉水砕スラグを単独で使用する又は併用する。しかし、高炉水砕スラグを用いたジオポリマーは凝結時間が短く、高炉水砕スラグ単味では常温(20℃)で20分程度、フライアッシュを多量に混合した場合でも40分程度である。しかし、アジテーター車と呼ばれるタンクローリー車で運搬し、施工する場合はコンクリートの練混ぜから打ち込み終了までの時間は運搬距離によって異なり、60~120分かかる場合は少なくない。因みに、土木学会及び建築学会は、コンクリートを練り混ぜてから打ち終わるまでの時間は、外気温が25℃以下のときで2時間以内、25℃を超えるときで1.5時間以内を標準としている。
【0004】
従来、ジオポリマーの凝結を遅延させるために、各種ナトリウム塩の使用が試みられてきた。
例えば、非特許文献1には、高炉セメントB種と3号水ガラスを用いた場合、凝結時間が1~3分であったものが、リン酸二水素ナトリウムを1~2%添加することにより、10分程度まで遅延できることが開示されている。高炉セメントB種と3号水ガラスを用いた固化体はジオポリマーではないが、ジオポリマーの固化に寄与する縮重合反応は発生するかもしれない。
また、特許文献1には、高炉水砕スラグ粉末を含む活性フィラーに対しジオポリマー用添加剤としてクエン酸、酒石酸、グルコン酸のナトリウム塩を3%添加し、可使時間は60分前後であることが開示されている。
【0005】
しかし、非特許文献1及び特許文献1のように各種ナトリウム塩を使用する技術では、必要な凝結遅延効果が得られない。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2016-79046号公報
【0007】

【非特許文献1】秋田勝次・岩崎武・西村直樹,“セメント水ガラス注入材の凝固時間の制御に関する研究”,土木学会論文集F1(トンネル工学)特集号,vol.66,No.1,p.69-78,2010年10月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、高炉水砕スラグをジオポリマーの原料として有効活用するための、新たな凝結遅延技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが高炉水砕スラグをジオポリマーの原料として有効活用するために種々の試験を重ねた結果、高炉水砕スラグを加熱処理することにより、ジオポリマーの凝結を遅延させる効果が得られることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明によれば、次のジオポリマー用凝結遅延型活性フィラー及びその製造方法、並びにジオポリマー固化体が提供される。
1.
高炉水砕スラグを200~1000℃で加熱処理して得られる、ジオポリマー用凝結遅延型活性フィラー。
2.
高炉水砕スラグを加熱処理して得られ、線源としてCuKα線を用いたX線回折分析においてハローは検出されず、ゲーレナイトのピークが検出される、ジオポリマー用凝結遅延型活性フィラー。
3.
前記ゲーレナイトの結晶子径が1000nm未満である、前記2に記載のジオポリマー用凝結遅延型活性フィラー。

4.
高炉水砕スラグを200~1000℃で加熱処理することを特徴とするジオポリマー用凝結遅延型活性フィラーの製造方法。
5.
前記1から3のいずれか1項に記載の活性フィラーを含有する、ジオポリマー固化体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高炉水砕スラグを原料とするジオポリマーの凝結を遅延させることができる。これにより、高炉水砕スラグをジオポリマーの原料として有効活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】800℃以下の温度で加熱処理した高炉水砕スラグのX線回折測定結果。
【図2】800℃~1000℃で加熱処理した高炉水砕スラグのX線回折測定結果。
【図3】高炉水砕スラグの熱重量示差熱分析(TG-DTA)曲線。
【図4】加熱処理した高炉水砕スラグを使用したジオポリマーモルタル(ジオポリマー固化体)と非加熱の高炉水砕スラグを使用したジオポリマーモルタルの強度試験の結果の比較。
【図5】800℃加熱の高炉水砕スラグをベースにしたジオポリマーペーストの可使時間と非加熱や他の温度で加熱処理した高炉水砕スラグの置換割合の関係。
【図6】800℃加熱の高炉水砕スラグをベースにし、非加熱や他の温度で加熱処理した高炉水砕スラグを混合したことでジオポリマーモルタルに120分の可使時間を有させる場合の曲げ強度。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の凝結遅延技術は、高炉水砕スラグを加熱処理するという物理的手法によるもので、従来の各種ナトリウム塩を添加するという化学的手法とは全く異なる新たな凝結遅延技術である。

【0014】
本発明の凝結遅延技術の効果を確認するために、高炉水砕スラグ(以下「GGBS」と記す。)を加熱処理し、その加熱処理したGGBSの特性を評価した。また、加熱処理したGGBSを使用してジオポリマー(以下「GP」と記す。)を作製し、そのGPの可使時間を評価すると共に、得られたGP固化体の強度を評価した。

【0015】
実験に使用した3つのGGBSサンプルはJISA6206の高炉スラグ微粉末4000級の規格品であり、蛍光X線分析(XRF)によるそれらの化学分析値及び関連の物理定数を表1に示す。GGBSの主成分はSiO-CaO-Alであるが、MgOもかなり多く無視できない量である。なお、XRFでは、粉末プレス試料を用いFP法により微量元素を含む全岩分析を行った。

【0016】
【表1】
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【0017】
GGBSを容積約120cmのアルミナ製坩堝に70~80g採取し、マッフル型電気炉を用いて所定の温度で24時間加熱した後、炉外に取り出し空冷した。加熱は100℃から1000℃まで100℃間隔で行ったが、補助的に50℃間隔の場合もある。なお、常温から各加熱温度までの昇温速度は概ね20℃/minである。
加熱前の生のGGBS及び加熱処理後のGGBSについて、X線回折分析(XRD)による相の同定、及び偏光顕微鏡による形態観察を行った。また、TG-DTAにより加熱前の生のGGBSの熱分析を行った。
XRDでは、線源としてCuKα線を用い、モノクロメーター又はニッケルフィルターを使用した。
偏光顕微鏡観察では、十字ニコル又は平行ニコル下で粉末試料をオリーブ油(n=1.47)に浸漬して撮影した。
TG-DTAでは、常温から1000℃まで10℃/minで昇温し、空気雰囲気で測定した。

【0018】
図1に、Rigaku Rintと呼ばれるXRD装置(40kV-120mA)により分析した800℃以下の温度で加熱したGGBS-Aの結果を示す。また、図2に、Rigaku SmartLabと呼ばれるXRD装置(45kV-200mA)により分析した800~1000℃で加熱したGGBS-Aの結果を示す。図1と図2ではマーヴィナイトのピークはMで示すが、ゲーレナイトのピークは無印である。

【0019】
図1に示すように、加熱前の生のGGBS-A(RAW)では、ガラス相によるハロー(ハンプとも呼ばれる。)が検出され、それと重なり小さいピークが認められる。その位置はゲーレナイト(2CaO・Al・SiO)及びマーヴィナイト(3CaO・MgO・2SiO)の主ピークと合致するので、少量のゲーレナイトとマーヴィナイトがガラス相と共存する結果と考えられる。加熱による相変化は750℃まで特に認められず、800℃の加熱で突如結晶化する。生成物である結晶化合物はゲーレナイト及び少量のマーヴィナイトであり、ガラス相によるハローはもはや検出されない。因みに、括弧内の化学式は純相の場合であり、通常は固溶体で不純物元素を多少含む。
また、上記のXRD装置によって測定したX線反射強さ(縦軸値)は異なったが、図2の800℃で加熱したGGBSのXRDチャートの形状は図1の800℃と同じである。図2によって、加熱処理温度が900℃と1000℃の場合にも、800℃と同じように結晶化することがわかる。結晶化合物はゲーレナイト及び少量のマーヴィナイトであり同じであったが、加熱温度が高いほど、X線反射強さは大きくなる傾向が見られた。すなわち、加熱温度の高温化に伴って、結晶度が向上する。

【0020】
表2に可使時間の測定結果を示す。
現時点で、可使時間の測定法はまだ確立されておらず、研究者により様々である。今回はミニスパチュラ法によった。これは、実験室の秤量でよく使われる耳かき状の小型薬匙の平板部をGPペーストに突き刺す方法である。すなわち、GPペーストの試験容器への装填終了時間を起点とし、圧痕に液の浸出が認められなくなるまでの時間を可使時間とする方法で、練り返しが可能な最大時間に相当する。得られた可使時間はビカー針を用いて行う凝結試験の終結に近い時間である。
この可使時間の測定用のGPペーストは、加熱前の生のGGBS(RAW)及び上述の要領で加熱処理したGGBSを使用し、各GGBSとアルカリ溶液を所定の液フィラー比(液体/フィラー質量比)で練り混ぜて得た。
なお、アルカリ溶液の調製は次のとおりである。
市販のナトリウム系JIS1号水ガラス(SiO/NaOモル比:2.1、比重:1.54)をイオン交換水で2倍に希釈した。一方、純薬の苛性ソーダペレットをイオン交換水に溶解し、10モル/Lの水溶液(比重:1.32)を得た。最後に両者を容積比で3:1に混合し、一晩放置したものをアルカリ液として用いた。
このようにして調製したアルカリ液のスペックは次のとおりである。
SiO:13.5質量%,NaO:12.8質量%,HO:73.7質量%
濃度:26.3%,SiO/NaOモル比:1.1

【0021】
【表2】
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【0022】
表2に示すように、加熱前の生のGGBS(RAW)を使用したGPペーストの可使時間は、ロットによりバラツキがあるが14~48分と短い。GGBS-Aで調べた結果によると、加熱により可使時間は延びる傾向を示し、400℃で極大に達する。その後は低下する傾向を示し、600℃で極小となる。さらに加熱すると再び延びる傾向を示し、800℃に達すると結晶化の影響で活性が低下し、340分と非常に長い可使時間になる。さらに900℃以上の高温加熱では焼結が進み、硬い芯が生ずる。芯がなくなる程度まで軽く粉砕した粉体は低密度(見掛密度)で、発泡のためか、空隙が多いように見受けられる。反面、焼結が進むためか比表面積は低下する。しかし、理由は定かでないものの可使時間は800℃以上で大幅に伸びる。
なお、1000℃で加熱したGGBS-Aを使用したGPペースト以外の液フィラー比は0.40であるが、1000℃で加熱したGGBS-Aを使用したGPペーストの液フィラー比は0.45とした。1000℃で加熱したGGBS-Aはアルカリ溶液の吸い込みが大きく、液フィラー比0.40では流動性がないからである。

【0023】
GGBS-B及びGGBS-Cでも同様の傾向を示したため、詳細なデータは取っていない。しかし、ここで注目されるのは次の3点である。第1は400℃の加熱であり、それぞれについて同じ値ではないが、未加熱(RAW)の場合に比べると可使時間は大略2~4倍延びている。第2は700℃の加熱であり、可使時間は大略60~70分でほぼ一定になる。第3は800℃の加熱であり、700℃の場合と同様に可使時間はほぼ一定になり大略340分を示す。
以上より、特に700℃の加熱が高活性を保ったまま一定の可使時間を示すので応用範囲が広いと考えられる。もちろん、GGBS-Aで調べた結果によると、200℃以上の加熱で可使時間の延長効果、すなわちGPの凝結遅延効果が得られていることから、GPの凝結遅延効果を得るための加熱処理の温度は200~1000℃であれば良いと言え、400~1000℃であることが好ましく、400~800℃であることがさらに好ましい。

【0024】
偏光顕微鏡下の観察ではガラス転移点を超えるとガラス相の融着が始まり、粒子が肥大する現象が観察され、表2に示すようにこの影響で比表面積が少し低下する。同時に、最大径10μm程度の球状の粒子が出現し、特に800℃の加熱で顕著である(写真は省略)。図1に示すように、800℃加熱物のXRDチャートは明瞭な結晶相の出現を記録しているが、偏光顕微鏡下でGGBSはかなり不透明で、個々の結晶の姿は確認されない。800加熱物についてのXRDのピークにシラー式を導入して結晶子径を調べた結果では19本のピークの平均値は26.4nmで、光学顕微鏡で認識できる限界の1000nmよりも遥かに小さい値であった。
一方、900℃加熱物及び1000℃加熱物では、GGBSの大部分を構成するガラス部分が結晶化しており、800℃加熱物と同様に偏光顕微鏡下ではドットの集合体を示し、個々の結晶は識別できない。要するに、結晶子径が1000nm未満のナノ結晶で、XRDの結果は800℃加熱物と同様に大部分がゲーレナイトである。なお、900℃加熱物及び1000℃加熱物のゲーレナイトの結晶子径は、それぞれ103.5nm及び86.8nmであった。

【0025】
このように、800℃以上で加熱すると、結晶化して可使時間が大幅に延びることから、本発明の好ましい一形態を結晶性の点から特定すると、「高炉水砕スラグを加熱処理して得られ、線源としてCuKα線を用いたX線回折測定においてハローは検出されず、ゲーレナイトのピークが検出される、ジオポリマー用凝結遅延型活性フィラー」である。
ここで、本発明の一形態であるジオポリマー用凝結遅延型活性フィラーのゲーレナイトの結晶子径は1000nm未満であり、徐冷高炉スラグのゲーレナイトの結晶子径(10μm程度)とは明らかに異なるものである。なお、上記実験結果からすれば、本発明の一形態であるジオポリマー用凝結遅延型活性フィラーのゲーレナイトの結晶子径は概ね200nm以下である。

【0026】
図3に3つのGGBS原料サンプル(GGBS-A,B,C)のTG-DTA曲線を示す。
加熱に伴い、TG曲線はなだらかな重量減少を示し、900℃を超えると重量が増加する傾向が見られる。途中、GGBS-Aを除き、600~700℃で急激な重量変化が認められる。最終的に大略3~4%の重量減少となる。この重量減少は水砕プロセスで製造されている点にあり、加熱によりガラス相にトラップされた水分が徐々に失われることが主な原因であると考えられる。最後に重量が増加するのは二価鉄が三価鉄に酸化されることが主な原因であると考えられる。
DTA曲線によると、2つの発熱ピークと1つの吸熱ピークが認められる。500℃付近の発熱ピークはガラス転移点に対応するもので、400℃の可使時間と密接に関係していると考えられる。すなわち、可使時間の測定は静的加熱の結果であり、DTAの結果は動的加熱の結果であるから、両者の間にズレが生じるのは自然である。このピークのオンセットは450℃辺りであることから、両者間のズレは約50℃で妥当な数値と考えられる。900℃付近の発熱ピークはガラス相の結晶化で、双峰のように見え、ピークの大きさから判断すると、温度の低いほうがマーヴィナイト、高いほうがゲーレナイトの結晶化に対応すると考えられる。650℃付近の吸熱ピークは脱炭酸と思われ、特にGGBS-Cで顕著である。GGBSの炭酸化はFTIRでも確認済みであり(測定結果は省略)、このピークが脱炭酸に対応していることは間違いないと考えられる。表2に示す加熱前の生のGGBS-C(RAW)の可使時間は通常のGGBSに比べて非常に長く、購入時期も古いので、GGBSがストック中に徐々に炭酸化したと考えられる。

【0027】
次に、加熱処理したGGBSを使用したGPモルタル(GP固化体)の強度試験を行った。
この試験では、加熱処理したGGBS、アルカリ溶液(前述の可使時間測定用のGPペーストに使用したものと同じ。)、及び砂(豊浦砂)を、液フィラー比=0.65、砂:GGBSの質量比=2:1で練り混ぜ、型枠(寸法20×20×80mmの3本取りで砲金製)に鋳込み、一晩20℃-100%RHで湿空養生を行った後に脱型し、さらに同条件で所定材齢まで養生し、曲げ強度を測定した。曲げ強度は三点曲げ試験法で測定し、各材齢における3本の平均値とした。

【0028】
図4に加熱処理したGGBS-Aを使用したGPモルタル(GP固化体)(以下、単に「モルタル」ともいう。)の強度試験の結果を示す。比較のため、非加熱のGGBS(RAW)を使用したモルタルの強度試験も行い、その結果を図4に併示する。
結晶化した800℃加熱物を使用したモルタルを除き、事前に400℃や700℃で熱処理を施したGGBS加熱物を使用したモルタルの強度は、未処理の生のGGBS(RAW)を使用したモルタルと同等又はそれ以上の結果であった。1日材齢では凝結遅延効果の影響を受けて強度の発現が若干抑制されているが、材齢が進むにつれて生のGGBS(RAW)を使用したモルタルの強度に近づき、28日材齢では生のGGBS(RAW)を使用したモルタルよりも強度がやや高い結果であった。
なお、700℃加熱の場合は28日材齢で強度がやや下がる傾向が見られるが、この弱点はフライアッシュ(以下「FA」と記す。)を混合することにより改善できると考えられ、FAの混合は廃棄物利用のため、実際に行われている。また、800℃加熱の場合は、初期強度の発現はよくないが、28日材齢では曲げ強度5MPaを超える結果である。GP固化体の種類に依存するが、GP固化体の圧縮強度は一般的には曲げ強度の5~8倍であり、経験的に最低でも5倍は保証される。5MPa以上の曲げ強度を確保できれば、このジオポリマーを結合材としたコンクリートは20MPa以上の圧縮強度が有するため、実際のコンクリート工事に利活用できると考えられる。

【0029】
このように400℃、700℃及び800℃でGGBSを熱処理することは、強度ばかりでなく凝結遅延効果の観点からもGGBSを用いたGP固化体の応用範囲を広げ、実用化への一助となる。例をあげると次のとおりである。

【0030】
第1の応用として次のような場合に適用できる。大型工事の場合は現場にバッチャープラントを設けてコンクリートを練る場合が多く、この場合は、800℃以下の加熱処理で可使時間が1時間あれば十分に打設作業ができる。

【0031】
第2の応用として、生コンクリートの運搬施工の場合は、800℃加熱処理したGGBSと非加熱処理のGGBSや800℃より低い温度で加熱処理したGGBSを混合使用することで、実用上に要求される強度を有する共に、2時間の可使時間を達成できる。

【0032】
表3及び図5に示すように、可使時間が非常に長い800℃加熱のGGBSをベースにした場合、120分の可使時間を達成するためにはGGBS-Bの場合、非加熱の生のGGBSの置換割合(図5)の横軸では「フィラー置換量」と表記)は10%、400℃加熱のGGBSの置換割合は25%、700℃加熱のGGBSの置換割合は35%である。GGBS-Cの場合は、それぞれ20%、85%、40%である。結果として、700℃加熱の場合はGGBS-BとCの置換割合は接近している。その理由は、表2に示すように、700℃と800℃加熱のGGBSを使用した場合の可使時間は、原料としてのGGBSの種類にかかわらずほぼ一定になり安定するからである。

【0033】
【表3】
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【0034】
以上の結果を強度の観点から整理すると図6のとおりである。すなわち、図6において「〇」のプロットは、800℃加熱のGGBS-Bをベースとした場合において、可使時間が120分になる置換割合(図6の横軸では「フィラー置換量」と表記)としたときの曲げ強度を示し、「●」のプロットは、800℃加熱のGGBS-Cをベースとした場合において、可使時間が120分になる置換割合としたときの曲げ強度を示す。また、「□」のプロットは、800℃加熱物に対する置換割合が0%の場合と100%の場合との曲げ強度をGGBS-A, B,Cの平均値として示している。なお、この「□」のプロットは可使時間120分を意味するものではない。
表4は、図6の各プロットのデータを示す。

【0035】
【表4】
JP2021031370A_000005t.gif

【0036】
いずれの置換割合でも、曲げ強度は5MPaを超えている。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5