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明細書 :触媒及びその使用方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和3年7月15日(2021.7.15)
発明の名称または考案の名称 触媒及びその使用方法
国際特許分類 B01J  23/46        (2006.01)
C25B  11/031       (2021.01)
C25B  11/063       (2021.01)
C25B  11/081       (2021.01)
C25B  11/067       (2021.01)
C25B   9/23        (2021.01)
C25B   3/25        (2021.01)
C25B   3/07        (2021.01)
C25B  11/054       (2021.01)
C25B   9/00        (2021.01)
FI B01J 23/46 M
B01J 23/46 301M
B01J 23/46 311M
C25B 11/031
C25B 11/063
C25B 11/081
C25B 11/067
C25B 9/23
C25B 3/25
C25B 3/07
C25B 11/054
C25B 9/00 G
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 39
出願番号 特願2020-525636 (P2020-525636)
国際出願番号 PCT/JP2019/023369
国際公開番号 WO2019/240200
国際出願日 令和元年6月12日(2019.6.12)
国際公開日 令和元年12月19日(2019.12.19)
優先権出願番号 2018112139
優先日 平成30年6月12日(2018.6.12)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】山内 美穂
【氏名】中嶋 直敏
【氏名】北野 翔
【氏名】程 俊芳
【氏名】福嶋 貴
【氏名】東 学
出願人 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
個別代理人の代理人 【識別番号】100149548、【弁理士】、【氏名又は名称】松沼 泰史
【識別番号】100163496、【弁理士】、【氏名又は名称】荒 則彦
【識別番号】100161207、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 和純
【識別番号】100147267、【弁理士】、【氏名又は名称】大槻 真紀子
審査請求
テーマコード 4G169
4K011
4K021
Fターム 4G169AA03
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA08A
4G169BA08B
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BC50A
4G169BC50B
4G169BC69A
4G169BC70B
4G169BC71B
4G169BC72B
4G169BC74A
4G169BC74B
4G169BC75B
4G169CB02
4G169CB72
4G169CC40
4G169DA05
4G169EC26
4K011AA11
4K011AA21
4K011AA26
4K011AA32
4K011DA01
4K011DA10
4K021AA01
4K021AC05
4K021BA02
4K021BA06
4K021BA10
4K021DB21
4K021DB43
4K021DB53
要約 本発明の複合体は、電気伝導性を有する材料と、該材料に担持された遷移金属の酸化物と、を備え、前記遷移金属の酸化物はアモルファス構造を有する。
特許請求の範囲 【請求項1】
電気伝導性を有する材料と、該材料に担持された遷移金属の酸化物と、を備え、前記遷移金属の酸化物はアモルファス構造を有する複合体。
【請求項2】
電気伝導性を有する材料と、該材料に担持された遷移金属の酸化物と、を備え、前記遷移金属の酸化物はアモルファス構造を有する複合体を含む触媒。
【請求項3】
電気伝導性を有する材料と、該材料に担持された遷移金属の酸化物とを備える複合体が、電気伝導性を有する基材に保持された構造体であって、前記遷移金属は、周期表第8~第10族の遷移金属の少なくとも1種であり、前記遷移金属の酸化物はアモルファス構造を有し、前記基材は多孔質材料である構造体。
【請求項4】
電気伝導性を有する材料と、該材料に担持された遷移金属の酸化物とを備える複合体が、電気伝導性を有する基材に保持された電極であって、前記遷移金属は、周期表第8~第10族の遷移金属の少なくとも1種であり、前記遷移金属の酸化物はアモルファス構造を有し、前記基材は多孔質材料である電極触媒。
【請求項5】
電気伝導性を有する材料と、該材料に担持された遷移金属の酸化物とを備える複合体が、電気伝導性を有する基材に保持された構造体を含む電極をアノードに用いた電気化学反応装置。
【請求項6】
電気伝導性を有する材料と、該材料に担持された遷移金属の酸化物とを備える複合体が、電気伝導性を有する基材に保持された構造体を含むアノードと、カソードと、前記アノードと前記カソードとの間に設けられた電解質膜と、を具備する膜電極接合体。
【請求項7】
請求項6に記載の膜電極接合体を備え、前記アノードに水または水蒸気を供給する第1の供給手段と、前記カソードにカルボン酸類を提供する第2の供給手段と、前記カソードにおいて生成されたアルコールを回収する手段と、を備えるアルコール合成装置。
【請求項8】
電気伝導性を有する材料と、該材料に担持された遷移金属の酸化物と、を備える複合体が、多孔質構造で電気伝導性基材に保持された構造体の製造方法であって、
電気伝導性を有する材料を、遷移金属の酸化物の前駆体の溶液に浸漬し、前記材料を浸漬した前記溶液を加熱する工程を有する構造体の製造方法。
【請求項9】
電気伝導性を有する材料と、該材料に担持された遷移金属の酸化物と、を備える複合体が、多孔質構造の電気伝導性基材に保持された電極触媒の製造方法であって、
遷移金属の酸化物の前駆体をアルカリ金属の水溶液または多価アルコール水で処理して得られた遷移金属により得られた遷移金属を固体電解質膜に塗布し、電気伝導性を有する材料を保持した基材を併せて接合する工程を有する電極触媒の製造方法。
【請求項10】
前記電気伝導性を有する材料が酸化チタンであり、前記遷移金属の酸化物が酸化イリジウムであり、前記多孔質構造の電気伝導性基材がチタンである請求項9に記載の電極触媒の製造方法。
【請求項11】
電極触媒の活性化方法であって、
電解液中に設けた請求項4に記載の電極触媒と標準電極の系において、オンセット電位に対し、印加電圧を-3.0V~1.5Vの範囲で1往復以上掃引する電極触媒の活性化方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒および電極に関し、詳しくは、水の電気分解などに対して高い活性を有する触媒、およびこの触媒を備えた電極に関する。
本願は、2018年6月12日に、日本に出願された特願2018-112139号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素低減のために再生可能エネルギーを用いることが検討されている。太陽光発電や風力発電などにより電力として生産された再生可能エネルギーは蓄電することが難しいことから、再生可能エネルギーから生じた余剰エネルギーを備蓄する手段として、水素やアンモニア、メチルシクロヘキサンなどをエネルギーキャリアとして用いる方法が提案されている。いずれの場合も余剰エネルギーから水素を得ることが必要である。効率的に水素を得る方法としては、炭化水素などの化石燃料から水蒸気改質法などにより水素を得る方法が知られている。しかし、地球環境問題を考えた場合、化石資源に依らない方法によって水素を得ることが重要である。
【0003】
そのような方法として、水の電気分解が知られている。水の電気分解は化石燃料を用いる水蒸気改質法等と同様に、工業的に確立された水素製造方法であるが、石油化学の勃興により炭化水素の水蒸気改質法が経済的に有利とされている。かかる状況下において、電気分解を水素製造方法として産業上利用するために、高温高圧水電解、固体高分子電解質(Solid Polymer Electrolytes、SPE)電解、高温水蒸気電解などの技術開発が行われている。
【0004】
水の電解槽の電圧は、理論電解電圧、電極における反応の抵抗による過電圧、および電解液や隔膜の電気抵抗のオーム損を加えたものである。理論電解電圧は、電気分解をするための電気量や必要な電気量とエンタルピー変化などから求められる電圧(1.23V)である。水の電解槽の電圧を下げるためには、前記理論電解電圧、過電圧およびオーム損のいずれかを低減させることが考えられる。このうち理論電解電圧は計算からも求められるものであるが、オーム損はセルの設計変更により最適値を求めることができ、過電圧は電気化学反応を促進する能力の強い触媒活性の高い電極を用いれば低下させる事が出来る。
【0005】
特許文献1には、酸化イリジウム触媒を用いたアノードにおいて水の電気分解を行い、生成したプロトンをカソードに供給し、カソードにおいてカルボン酸を水素化してアルコールを生成する技術が開示されている。
【0006】
非特許文献1は、電着して得られた酸化イリジウムのフィルムの電子構造を調べたところ、水の電気分解反応中にIr(III)とIr(V)の酸化状態が両方存在していることを明らかにしている。
【0007】
非特許文献2には、500℃で焼成して生成された酸化イリジウム(T-IrO)、それをさらに500℃で還元して得られた金属であるイリジウム(A-Ir)、それを電気化学的に酸化して得られたE-Irにおいて、アノードとしての性能を評価したことが記載されている。それによると、酸素発生反応が起こっている領域にはIr(III)が存在していること、Ir(III)は、T-IrOとE-IrとではE-Irの方が多く、E-Irはアモルファスであり、多孔表面でIr原子の露出が多いことが記載されている。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】国際公開第2017/154743号
【0009】

【非特許文献1】Alessandro Miguzzi,Ottavio Lugarsei,Elisabetta Achilli,Cristina Locatelli,Alberto Vetova,Paolo Ghigna and Sandra Rondinini,Chem.Scil,2014,5,3591-3597
【非特許文献2】Primoz Jovanovic,Nejc Hodnik,Francisco Ruiz-Zepeda,Iztok Arcon,Barbara Jozinovic,Milena Zorko,Marjan Bele,Martin Sala,Vid Simon Selih,Samo Hocevar and Miran Gaberseck,J.Am,Chem.Soc., 2017 139,12837-12846
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示された方法においては、酸化イリジウム触媒により水の電気分解により水素を生成し得るが、この酸化イリジウム触媒の水の電気分解活性は十分に高いとは必ずしもいえず、水の電気分解をより高活性で行い得る触媒の開発が望まれていた。
【0011】
一般に、遷移金属酸化物の中には水の電気分解活性のあるものが存在する。たとえば、酸化イリジウムの場合、電気分解における酸素発生反応には一部のIrの価数が変わることは明らかであるが、動作環境(印加電圧、温度、電解液濃度等)とIrの電子・形態構造との関係に着目し、安定かつ効率良く酸素発生しうる実用的な電極の提供には至っていなかった。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、水の電気分解を高活性で行い得る触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明者らは、電気伝導性を有する材料と遷移金属の酸化物を含む電極に対して電圧を印加したときに金属の酸化数が変化し、電圧の印加を解除したときに酸化数がさらに変化すること、その際に遷移金属の酸化物はアモルファスとなっていること、さらにその電極を水の電気分解のアノードに用いた場合に、過電圧が著しく減少することを見出し、本発明を完成させた。
[1]電気伝導性を有する材料と、該材料に担持された遷移金属の酸化物と、を備え、前記遷移金属の酸化物はアモルファス構造を有する複合体。
[2]前記遷移金属の酸化物は、印加された電圧に応じて遷移金属の酸化数がフレキシブルかつ可逆的に変化する[1]に記載の複合体。
[3]前記電気伝導性を有する材料と前記遷移金属の酸化物は、酸素を介してブリッジされている[1]または[2]に記載の複合体。
[4]前記電気伝導性を有する材料と前記遷移金属の酸化物の間に酸素原子が観測される前記[1]~[3]のいずれかに記載の複合体。
[5]前記電気伝導性を有する材料の表面に水酸基が存在する[1]~[4]のいずれかに記載の複合体。
[6]前記遷移金属の酸化物上に水酸基が存在する[1]~[5]のいずれかに記載の複合体。
[7]前記遷移金属の酸化物上に金属原子と酸素原子の二重結合(金属=O)の構造が存在する[1]~[5]のいずれかに記載の複合体。
[8]前記遷移金属は、周期表第8族~第10族の遷移金属の少なくとも1種である[1]~[7]のいずれかに記載の複合体。
[9]前記遷移金属の酸化物は、透過型電子顕微鏡(TEM)像から求められた平均粒径が100nm以下の粒子である[1]~[8]のいずれかに記載の複合体。
[10]前記遷移金属の酸化物は格子欠陥を含む[1]~[9]のいずれかに記載の複合体。
[11]前記電気伝導性を有する材料は、炭素系材料および金属化合物からなる群から選択される少なくとも1種である[1]~[10]のいずれかに記載の複合体。
[12]前記電気伝導性を有する材料の電気伝導度は、1×10-14Scm-2以上である[1]~[11]のいずれかに記載の複合体。
[13]前記電気伝導性を有する材料に用いられる金属化合物は酸化チタンである[11]または[12]に記載の複合体。
[14]前記酸化チタンの結晶構造がアナターゼ型である[13]に記載の複合体。
[15]電気伝導性を有する材料と、該材料に担持された遷移金属の酸化物と、を備え、前記遷移金属の酸化物はアモルファス構造を有する複合体を含む触媒。
[16]前記遷移金属の酸化物は、印加された電圧に応じて遷移金属の酸化数がフレキシブルかつ可逆的に変化する[15]に記載の触媒。
[17]前記電気伝導性を有する材料と前記遷移金属の酸化物は、酸素を介してブリッジされている[15]または[16]に記載の触媒。
[18]前記電気伝導性を有する材料と前記遷移金属の酸化物の間に酸素原子が観測される[15]~[17]のいずれかに記載の触媒。
[19]前記電気伝導性を有する材料の表面に水酸基が存在する[15]~[18]のいずれかに記載の触媒。
[20]前記遷移金属の酸化物上に水酸基が存在する[15]~[19]のいずれかに記載の触媒。
[21]前記遷移金属の酸化物上に金属原子と酸素原子の二重結合(金属=O)の構造が存在する[15]~[20]のいずれかに記載の触媒。
[22]前記遷移金属は、周期表第8族~第10族の遷移金属の少なくとも1種である[15]~[21]のいずれかに記載の触媒。
[23]前記遷移金属の酸化物は、透過型電子顕微鏡(TEM)像から求められた平均粒径が100nm以下の粒子である[15]~[22]のいずれかに記載の触媒。
[24]前記遷移金属の酸化物は格子欠陥を含む[15]~[23]のいずれかに記載の触媒。
[25]前記電気伝導性を有する材料は、炭素系材料および金属化合物からなる群から選択される少なくとも1種である[15]~[24]のいずれかに記載の触媒。
[26]前記電気伝導性を有する材料の電気伝導度は、1×10-14Scm-2以上である[15]~[25]のいずれかに記載の触媒。
[27]前記電気伝導性を有する材料に用いられる金属化合物は酸化チタンである[25]または[26]に記載の触媒。
[28]前記酸化チタンの結晶構造がアナターゼ型である[27]に記載の触媒。
[29]電気伝導性を有する材料と、該材料に担持された遷移金属の酸化物とを備える複合体が、電気伝導性を有する基材に保持された構造体であって、前記遷移金属は、周期表第8族~第10族の遷移金属の少なくとも1種であり、前記遷移金属の酸化物はアモルファス構造を有し、前記基材は多孔質材料である構造体。
[30]前記遷移金属の酸化物は、印加された電圧に応じてフレキシブルかつ可逆的に変化する[29]に記載の構造体。
[31]前記電気伝導性を有する材料と前記遷移金属の酸化物は、酸素を介してブリッジされている[29]または[30]に記載の構造体。
[32]前記電気伝導性を有する材料と前記遷移金属の酸化物の間に酸素原子が観測される[29]~[31]のいずれかに記載の構造体。
[33]前記電気伝導性を有する材料の表面に水酸基が存在する[29]~[32]のいずれかに記載の構造体。
[34]前記遷移金属の酸化物上に水酸基が存在する[29]~[33]のいずれかに記載の構造体。
[35]前記遷移金属の酸化物上に金属原子と酸素原子の二重結合(金属=O)の構造が存在する[29]~[34]のいずれかに記載の構造体。
[36]前記遷移金属の酸化物は、透過型電子顕微鏡(TEM)像から求められた平均粒径が100nm以下の粒子である[29]~[35]のいずれかに記載の構造体。
[37]前記遷移金属の酸化物は格子欠陥を含む[29]~[36]のいずれかに記載の構造体。
[38]前記電気伝導性を有する材料は、炭素系材料および金属化合物からなる群から選択される少なくとも1種である[29]~[37]のいずれかに記載の構造体。
[39]前記電気伝導性を有する材料の電気伝導度は、1×10-14Scm-2以上である[29]~[38]のいずれかに記載の構造体。
[40]前記電気伝導性を有する材料に用いられる金属化合物は酸化チタンである[38]または[39]に記載の構造体。
[41]前記酸化チタンの結晶構造がアナターゼ型である[40]に記載の構造体。
[42]電気伝導性を有する材料と、該材料に担持された遷移金属の酸化物とを備える複合体が、電気伝導性を有する基材に保持された触媒であって、前記遷移金属は、周期表第8族~第10族の遷移金属の少なくとも1種であり、前記遷移金属の酸化物はアモルファス構造を有し、前記基材は多孔質材料である触媒。
[43]前記遷移金属の酸化物は、印加された電圧に応じてフレキシブルかつ可逆的に変化する[42]に記載の触媒。
[44]前記電気伝導性を有する材料と前記遷移金属の酸化物は、酸素を介してブリッジされている[42]または[43]に記載の触媒。
[45]前記電気伝導性を有する材料と前記遷移金属の酸化物の間に酸素原子が観測される前記[42]~[44]のいずれかに記載の触媒。
[46]前記電気伝導性を有する材料の表面に水酸基が存在する[42]~[45]のいずれかに記載の触媒。
[47]前記遷移金属の酸化物上に水酸基が存在する[42]~[46]のいずれかに記載の触媒。
[48]前記遷移金属の酸化物上に金属原子と酸素原子の二重結合金属=O(金属カルボニル)の構造が存在する[42]~[47]のいずれかに記載の触媒。
[49]前記遷移金属の酸化物は、透過型電子顕微鏡(TEM)像から求められた平均粒径が100nm以下の粒子である[42]~[48]のいずれかに記載の触媒。
[50]前記遷移金属の酸化物は格子欠陥を含む[42]~[49]のいずれかに記載の触媒。
[51]前記電気伝導性を有する材料は、炭素系材料および金属化合物からなる群から選択される少なくとも1種である[42]~[50]のいずれかに記載の触媒。
[52]前記電気伝導性を有する材料の電気伝導度は、1×10-14Scm-2以上である[42]~[51]のいずれかに記載の触媒。
[53]前記電気伝導性を有する材料に用いられる金属化合物は酸化チタンである[51]または[52]に記載の触媒。
[54]前記酸化チタンの結晶構造がアナターゼ型である[53]に記載の触媒。
[55]前記触媒が、水の電気分解触媒である[42]~[54]のいずれかに記載の触媒。
[56]電気伝導性を有する材料と、該材料に担持された遷移金属の酸化物とを備える複合体が、電気伝導性を有する基材に保持された電極であって、前記遷移金属は、周期表第8族~第10族の遷移金属の少なくとも1種であり、前記遷移金属の酸化物はアモルファス構造を有し、前記基材は多孔質材料である電極触媒。
[57]前記遷移金属の酸化物は、印加された電圧に応じてフレキシブルかつ可逆的に変化する[56]に記載の電極触媒。
[58]前記電気伝導性を有する材料と前記遷移金属の酸化物は、酸素を介してブリッジされている[56]または[57]に記載の電極触媒。
[59]前記電気伝導性を有する材料と前記遷移金属の酸化物の間に酸素原子が観測される前記[56]~[58]のいずれかに記載の電極触媒。
[60]前記電気伝導性を有する材料の表面に水酸基が存在する[56]~[59]のいずれかに記載の電極触媒。
[61]前記遷移金属の酸化物上に水酸基が存在する[56]~[60]のいずれかに記載の電極触媒。
[62]前記遷移金属の酸化物上に金属原子と酸素原子の二重結合(金属=O)の構造が存在する[56]~[61]のいずれかに記載の電極触媒。
[63]前記遷移金属の酸化物は、透過型電子顕微鏡(TEM)像から求められた平均粒径が100nm以下の粒子である[56]~[62]のいずれかに記載の電極触媒。
[64]前記遷移金属の酸化物は格子欠陥を含む[56]~[63]のいずれかに記載の電極触媒。
[65]前記電気伝導性を有する材料は、炭素系材料および金属化合物からなる群から選択される少なくとも1種である[56]~[64]のいずれかに記載の電極触媒。
[66]前記電気伝導性を有する材料の電気伝導度は、1×10-14Scm-2以上である[56]~[65]のいずれかに記載の電極触媒。
[67]前記電気伝導性を有する材料に用いられる金属化合物は酸化チタンである[65]または[66]に記載の電極触媒。
[68]前記酸化チタンの結晶構造がアナターゼ型である[67]に記載の電極触媒。
[69]アノードである[56]~[68]のいずれかに記載の電極触媒。
[70][56]~[68]のいずれかに記載の電極をアノードに用いた電気化学反応装置。
[71]標準電極と、前記電極との間に接続され、水を含む電解液、水を酸化して酸素を発生する前記電極および前記標準電極を備えた反応槽と、前記電極と前記標準電極との間のオンセット電位に対して、印加電圧を-3.0V~1.0Vの範囲で1往復以上掃引し得る電位可変装置と、を具備する[70]に記載の電気化学反応装置。
[72]電気伝導性を有する材料と、該材料に担持された遷移金属の酸化物とを備える複合体が、電気伝導性を有する基材に保持された構造体を含む[69]に記載のアノードと、カソードと、前記アノードと前記カソードとの間に設けられた電解質膜と、を具備する膜電極接合体。
[73]アルコール合成用である[72]に記載の膜電極接合体。
[74][72]または[73]に記載の膜電極接合体を備え、前記アノードに水または水蒸気を供給する第1の供給手段と、前記カソードにカルボン酸類を提供する第2の供給手段と、前記カソードにおいて生成されたアルコールを回収する手段と、を備えるアルコール合成装置。
[75]標準電極と、前記アノードの標準電極に対するオンセット電圧の測定系、および前記アノードと前記標準電極との間のオンセット電位に対して、印加電圧を-3.0V~1.0Vの範囲で1往復以上掃引し得る電位可変装置と、を具備する[74]に記載のアルコール合成装置。
[75][29]~[41]のいずれかに記載の構造体の製造方法であって、電気伝導性を有する材料を、遷移金属の酸化物の前駆体の溶液に浸漬し、前記材料を浸漬した前記溶液を加熱する工程を有する構造体の製造方法。
[76][56]~[69]のいずれかに記載の電極触媒の製造方法であって、遷移金属の酸化物の前駆体をアルカリ金属の水溶液または多価アルコール水で処理して得られた遷移金属により得られた遷移金属を固体電解質膜に塗布し、電気伝導性を有する材料を保持した基材を併せて接合する工程を有する電極触媒の製造方法。
[77]前記電気伝導性を有する材料が酸化チタンであり、前記遷移金属の酸化物が酸化イリジウムであり、前記多孔質構造の電気伝導性基材がチタンである[76]に記載の電極触媒の製造方法
[78]電極触媒の活性化方法であって、電解液中に設けた[56]~[69]のいずれかに記載の電極触媒と標準電極の系において、オンセット電位に対し、印加電圧を-3.0V~1.5Vの範囲で1往復以上掃引する電極触媒の活性化方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の触媒は、水の電気分解反応に対する活性が高い。本発明の触媒は、電極として好適に用いることができる。本発明の触媒は、印加された電圧に応じて、前記遷移金属の酸化物に含まれる金属の酸化数がフレキシブルに変化する特徴を有する。前記遷移金属の酸化物が酸化イリジウムである場合、印加された電圧に応じて、イリジウムの酸化数はフレキシブルに変化し、+4以上の酸化数が出現する。酸化イリジウムが高電子価状態になることによって、水の電気分解反応において過電圧の減少が観測されており、高電子価状態の酸化イリジウムが活性の向上に寄与していることが確認される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1 (a)は、IrO/TiO-Tiメッシュ触媒の構造概略図であり、図1 (b) IrO/TiO-Tiメッシュ触媒のTiO針状体の局所拡大模式図であり、図1 (c)は、TiO針状体の表面上のIrOナノ粒子の拡大模式図である。
【図2】図2は、アルコール電解合成セルの構造を示す概略図である。
【図3】図3(a)は、TiO-TiメッシュのSEM像であり、図3(b)は、IrO/TiO-Tiメッシュ触媒のSEM像であり、図3(c)は、IrO-TiO-Tiメッシュ触媒の高解像度TEM像である。
【図4】図4(a)は、IrO/TiO-Tiメッシュ触媒のサイクリックボルタモグラム(CV)曲線であり、図4(b)は掃引速度10mV/sにおけるIrO/TiO-Tiメッシュ触媒(IrO担持量:0.58mg/cm)のターフェルプロットである。
【図5】図5(a)は、 異なる焼成処理後のIrO/TiO-Tiメッシュ触媒のサイクリックボルタモグラム(CV)曲線である。図5(b)は、OER性能とOH濃度との相関を示す図である。図5(c)は、異なる焼成処理後のIrO/TiO-Tiメッシュ触媒のO1s軌道における高分解能XPSスペクトルである。
【図6】図6は、in situ測定におけるセットアップを示す。
【図7】図7は、Ir-L3吸収端における電極試料および標準試料のXANESスペクトルである。
【図8】図8は、Ir-L3吸収端における電極試料および標準試料のフーリエ変換後のEXAFSスペクトルである。
【図9】図9は、 Ti-K吸収端における電極試料および標準試料のフーリエ変換後のXANESスペクトルである。
【図10】図10は、 Ti-K吸収端における電極試料および標準試料のEXAFSスペクトルである。
【図11】図11は、電圧印加時および無印加時におけるIrO/TiO-Tiメッシュ(未焼成・活性化処理後)のIr-L3吸収端のXANESスペクトルである。
【図12】図12は、IrO/TiO-Tiメッシュ(未焼成・活性化処理後)のIr-L3吸収端XのXANESスペクトルにおける変曲点の印加電圧依存性を示す図である。
【図13】図13は、電圧印加時および無印加時におけるIrO/TiO-Tiメッシュ(未焼成・活性化処理後)のIr-L3吸収端のフーリエ変換後のEXAFSスペクトルである。
【図14】図14は、IrO/TiO-Tiメッシュ(未焼成・活性化処理後)のIr-L3吸収端のフーリエ変換後のEXAFSスペクトルにおけるIr-O原子間距離の印加電圧依存性を示す図である。
【図15】図15は、電圧印加時および無印加時におけるIrO/TiO-Tiメッシュ(焼成・活性化処理後)のIr-L3吸収端のXANESスペクトルである。
【図16】図16は、IrO/TiO(焼成・活性化処理後)のIr-L3吸収端XANESスペクトルにおける変曲点の印加電圧依存性を示す図である。
【図17】図17は、電圧印加時および無印加時におけるIrO/TiO-Tiメッシュ(焼成・活性化処理後)のIr-L3吸収端のフーリエ変換後のEXAFSスペクトルである。
【図18】図18は、IrO/TiO-Tiメッシュ(焼成・活性化処理後)のIr-L3吸収端のフーリエ変換後のEXAFSスペクトルにおけるIr-O原子間距離の印加電圧依存性を示す図である。
【図19】図19は、各電極試料のIr-L3吸収端のXANESスペクトルにおける変曲点の印加電位依存性を示す図である。
【図20】図20は、各電極試料のIr-L3吸収端のフーリエ変換後のEXAFSスペクトルのIr-O原子間距離の印加電圧依存性を示す図である。
【図21】図21 (a)はTiO(市販品) のTEM像、図21 (b)はTiO-labのTEM像である。
【図22】図22は、 IrO/Tiと市販されているDSEの写真である。
【図23】図23は、IrO/C、IrO/Tiおよび市販されているIrOを使って作製したカーボン担持電極(IrO-wako/C)でのOER性能を比較する図である(0.2M NaSOaq)。
【図24】図24は、 IrO-Tiと市販品とのOER特性を比較した図である。
【図25】図25は、25PEAECに使用した場合の、IrO-Ti(図中ではIrO(Yamauchi))および市販のDSEとの性能を比較した図である。
【図26】図26は、IrO-TiのOER特性示す図である。
【図27】図27(a)は水酸化物を経たIrO微粒子の合成方法を示す図であり、図27(b)は金属Ir粒子を経たIrO微粒子の合成方法を示す図である。
【図28】図28は、IrO-large、IrO-smallおよびIrO-metalのXRDパターンを示す図である。
【図29】図29は、IrO-large、IrO-smallおよびIrO-metalのTEM像を示す図である。
【図30】図30は、Ir-RuO-smallおよびIr-RuO-metalのXRDパターンを示す図である。
【図31】図31は、評価に用いたPEAECの構造を示す概略図である。
【図32】図32は、電流密度の時間変化を示す図である。
【図33】図33は、各電位におけるシュウ酸の転化率、グリコール酸生成のファラデー効率、グリオキシル酸生成のファラデー効率を示す図である。
【図34】図34は、電流密度の時間変化を示す図である。
【図35】図35は、各電位におけるシュウ酸の転化率、グリコール酸生成のファラデー効率、グリオキシル酸生成のファラデー効率を示す図である。
【図36】図36は、電流密度の時間変化を示す図である。
【図37】図37は、各電位におけるシュウ酸の転化率、グリコール酸生成のファラデー効率、グリオキシル酸生成のファラデー効率を示す図である。
【図38】図38は、電流密度の時間変化を示す図である。
【図39】図39は、各電位におけるシュウ酸の転化率、グリコール酸生成のファラデー効率、グリオキシル酸生成のファラデー効率を示す図である。
【図40】図40は、電流密度の時間変化を示す図である。
【図41】図41は、各電位におけるシュウ酸の転化率、グリコール酸生成のファラデー効率、グリオキシル酸生成のファラデー効率を示す図である。
【図42】図42は、電流密度の時間変化を示す図である。
【図43】図43は、各電位におけるシュウ酸の転化率、グリコール酸生成のファラデー効率、グリオキシル酸生成のファラデー効率を示す図である。
【図44】図44は、電流密度の時間変化を示す図である。
【図45】図45は、各電位におけるシュウ酸の転化率、グリコール酸生成のファラデー効率、グリオキシル酸生成のファラデー効率を示す図である。
【図46】図46は、電流密度の時間変化を示す図である。
【図47】図47は、各電位におけるシュウ酸の転化率、グリコール酸生成のファラデー効率、グリオキシル酸生成のファラデー効率を示す図である。
【図48】図48は、PEAECの構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明において「酸化状態がフレキシブルに変化する」とは、本発明の複合体に電圧を印加した時に遷移金属の酸化数が変化し、電圧の印加を解除した時に酸化数がさらに変化することを言う。多くの場合は、電圧を印加したときとそれを解除した時とは逆方向に酸化数が変化する。本発明において、この変化は可逆的な電位応答性を示すものである。
本明細書においては、担体に担持された触媒の構造を「触媒/担体」と記載し、これが基材である電極などに付された構造を「触媒/担体-基材」と記載する。また、触媒/担体を「触媒」と記載することがあり、触媒/担体-基材のことを触媒と記載することがある。また、基材が電極である場合については、電極触媒と記載することがある。

【0017】
[複合体]
本発明の複合体は、電気伝導性を有する材料と、該材料に担持された遷移金属の酸化物と、を備え、前記遷移金属の酸化物はアモルファス構造を有する。

【0018】
本発明に係る複合体は、電気伝導性を有する材料に、周期表第8族~第10族の遷移金属の酸化物を含む成分が担持してなるものであって、前記遷移金属の酸化物に含まれる金属の酸化数が、印加された電圧に応じてフレキシブルかつ可逆に変化する。

【0019】
複合体は、電気伝導性を有する材料と遷移金属の酸化物を接触させるだけでも形成させてもよく、接触させて加熱などにより化学反応を行って形成させてもよい。
本発明の複合体において、前記遷移金属酸化物と前記材料との間には酸素原子が存在していることが観測される。この酸素原子は、遷移金属酸化物の由来であるか、前記材料由来のものであるか、についてはいずれでも良い。また、発明者らは、電位中において遷移金属の酸化数が変化するとき、この酸素原子は、全体の電荷のバランスを保持するのに寄与している、と考えている。
導電性を有する材料と、遷移金属の酸化物との中間に存在する酸素原子がどのような構造で存在しているかを明確に知ることは困難であるが、XPSなどの分析により、遷移金属酸化物の表面には水酸基や遷移金属の酸化物上に金属原子と酸素原子の二重結合(金属=O)の存在が明らかとされている。例えば、計算化学的な手法により、酸化チタンと酸化イリジウムとの間には、Ti-O-H-O-Ir結合のようなブリッジ構造の存在を示すことができることから、前記遷移金属酸化物と前記材料の間に介在する酸素が、前記遷移金属酸化物と前記材料を結合している場合も考えられる。
本発明の複合体は、触媒、更には電極としての機能を有する。

【0020】
(電気伝導性を有する材料)
前記電気伝導性を有する材料としては、特に制限はないが、例えば、アセチレンブラック、ケッツェンブラック(登録商標)、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン等の炭素系材料、Ni、V、Ti、Co、Mo、Fe、Cu、Zn、Sn、W、Zr等の遷移金属、およびその酸化物、炭化物、窒化物、担窒化物等が挙げられる。これらの1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用してもよい。

【0021】
前記電気伝導性の材料の電気伝導度は、好ましくは1×10-14Scm-2以上、より好ましくは1×10-12Scm-2以上、さらに好ましくは5×10-12Scm-2以上である 。前記材料の電気伝導度が前記の条件を満たすと、触媒反応において電子の伝達が好適に行われ、活性が向上する。

【0022】
前記電気伝導性を有する材料は、金属酸化物であることが好ましい。また、金属酸化物の場合には、表面に水酸基を有することがより好ましい。

【0023】
前記電気伝導性を有する材料は、表面に水酸基を有する金属酸化物であると、電気伝導性を有する材料と前記遷移金属酸化物が酸素を介した構造を取りやすくなり、前記遷移金属酸化物に含まれる遷移金属の酸化数が変化するときに、前記材料が有する水酸基が前記遷移金属の電気的中性を維持し、遷移金属の高い酸化状態を維持する機能を果たすことにより、遷移金属の酸化数のフレキシブルな変化がより好適に行われるようになる。

【0024】
このような金属酸化物材料としては、 例えば、酸化チタンからなる材料が挙げられる。前記酸化チタンとしては、結晶構造がアナターゼ型であることが好ましく、表面に水酸基を有する酸化チタンがさらに好ましい。

【0025】
前記電気伝導性の材料を担体として用いる場合の形状には特に制限はなく、例えば、粒状、針状、チューブ状、シート状等を挙げることができる。また、本発明の基材として金属を用いる場合に、金属は空気中で金属酸化物を被膜のように形成する場合が多いが、このような金属酸化物に電気伝導性があれば、担体として用いることができる。このような金属としてチタン、金属酸化物として酸化チタンを挙げることができる。かかる場合、酸化チタンの厚みは薄い方が好ましい。

【0026】
(遷移金属の酸化物)
本発明の複合体において、前記材料に担持されるのは、周期表第8族~第10族の遷移金属の酸化物である。前記材料に周期表第8族~第10族の遷移金属の酸化物が担持されると、特に高い触媒活性が得られる。

【0027】
本発明の遷移金属酸化物は、印加された電圧に応じて、遷移金属酸化物中の遷移金属の酸化数がフレキシブルに変化する特徴を有する。この特徴については、実施例において詳述する。この特徴が、本発明に係る複合体の高い触媒活性に関与している。このとき、遷移金属酸化物はアモルファス構造を取る。

【0028】
前記周期表第8族~第10族の遷移金属の酸化物としては、ルテニウム、イリジウム、白金およびパラジウムから成る群から選択される1種以上の酸化物を好適に挙げることができる。

【0029】
前記材料に担持する成分は、周期表第8族~第10族の遷移金属の酸化物の他に、周期表第8族~第10族の遷移金属を含んでもよい。前記周期表第8族~第10族の遷移金属としては、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、白金およびパラジウムから成る群から選択される1種以上を好適に挙げることができる。

【0030】
前記材料に担持する遷移金属酸化物はアモルファス構造を有することが好ましい。前述のとおり、前記複合体は、印加された電圧に応じて、前記遷移金属酸化物に含まれる遷移金属の酸化数がフレキシブルに変化する特徴を有する。担持する遷移金属酸化物が結晶構造を有すると、前記遷移金属酸化物に含まれる遷移金属の酸化数が変化した場合、遷移金属酸化物の構造が維持されにくくなるため、遷移金属の酸化数のフレキシブルな変化が起こりにくいのに対し、担持する遷移金属酸化物がアモルファス構造を有すると、前記遷移金属酸化物に含まれる遷移金属の酸化数が変化しても、遷移金属酸化物の構造は維持されるため、遷移金属の酸化数のフレキシブルな変化が起こりやすいと考えられる。

【0031】
このようなアモルファス構造を有する遷移金属酸化物は、後述する電気化学反応により生成する。
一方、得られた触媒を焼成した場合には、触媒に含まれる遷移金属酸化物は結晶構造になると考えられる。

【0032】
前記材料に担持される成分は、格子欠陥を含むことが好ましい。
前記材料に担持される成分は、 例えば、酸化ルテニウム(RuO)、酸化ロジウム(Rh)、酸化白金(PtO)、酸化パラジウム(PdO)が好ましく、金属イリジウム、酸化イリジウム(IV:二酸化イリジウム(IrO))、酸化イリジウム(III:三酸化二イリジウム(Ir))及び/又はそれらの混合物がより好ましい。さらに、バルクのイリジウム酸化物から大きく乱れた不規則性な結晶構造を有する酸化物を含むことができる。前記材料に担持する成分が前記条件を満たすと、遷移金属の酸化数のフレキシブルな変化が生じやすい。

【0033】
透過型電子顕微鏡(TEM)像から得られた平均粒径は、通常1000nm以下であり、好ましくは100nm以下、より好ましくは10nm以下であり、さらに好ましくは5nm以下である。平均粒径は小さいほど高い触媒活性が得られる。触媒成分の平均粒径の下限値には特に制限はなく、例えば2nmである。平均粒径が上記好ましい範囲の場合には、特に高い触媒活性が得られる。

【0034】
前記材料に担持される成分の担持量は、前記材料の質量に対して0.01質量%~50質量%であることが好ましく、0.1質量%~30質量%であることがより好ましく、0.2質量%~20質量%であることがさらに好ましい。前記成分の担持量が前記範囲内であると、特に高い触媒活性が得られる。

【0035】
前記成分に含まれる遷移金属酸化物は、酸性条件で電圧を可逆水素電極(RHE)に対し 、電圧を1.23V以上に印加した場合に、通常の酸化物中での酸化状態よりも高い酸化状態を取りうることが好ましい。例えば、前記遷移金属酸化物として酸化イリジウムを使用した場合、酸化イリジウムは+4以上の酸化数、すなわち、5価、あるいは6価の酸化数をとることができる。なお、酸化数は、例えば、X線吸収微細構造(X-ray Absorption Fine Structure:XAFS)解析を使って求めることができる。

【0036】
(電極触媒およびその反応)
前記複合体は、電極となる基材に保持することにより電極触媒として用いることができる。
前記複合体を電極触媒として用いる場合、前記電気伝導性を有する材料は担体として機能し、前記材料に担持する遷移金属の酸化物等は触媒成分として機能する。複合体が基材に保持されると、電極触媒となる。

【0037】
本発明に用いられる電極触媒は、電極として多孔質構造であり、電気伝導性を有する基材を有し、該基材に前記電気伝導性を有する材料が担体として保持され、前記担体に前記遷移金属の酸化物が触媒成分として担持された構造体を挙げることができる。また、多孔質構造とは、一般に、細孔が非常に多く空いている材料のことをいい、細孔の大きさによってミクロポーラス材料、メソポーラス材料、マクロポーラス材料などに分けられているが、本発明の多孔質構造を有する基材には、シート状またはメッシュ状の炭素材料および金属材料も含まれる。触媒が基材を有する場合、基材、担体および触媒成分が、触媒の厚み方向において、この順に積層されている。

【0038】
さらに、前記触媒の好ましい態様として、前記多孔質構造を有する基材がTiメッシュであり、前記担体がアナターゼ型TiOであり、前記担体に触媒成分として酸化イリジウム粒子が担持してなるIrO/TiO-Tiメッシュ触媒を挙げることができる。ここで、前記xは、ここでは未知のため、xとした。ここで、0≦x≦3である。この態様の触媒は、例えば、2段階の水熱合成法によって調製したTiO-Tiメッシュ複合体を、N雰囲気下でIrClの溶液に通常1時間~24時間、好ましくは3時間~6時間浸漬した後、通常55℃~200℃、好ましくは80℃~200℃、より好ましくは100℃~200℃、さらに好ましくは120℃~150℃で加熱して作製される。IrClの溶液の濃度を調整することにより、触媒成分であるIrOの担持量を調整することができる。本発明の触媒の製造方法は、実施例において具体的に詳述する。

【0039】
この方法により得られたIrO/TiO-Tiメッシュ触媒は、Tiメッシュに針状のTiOが保持され、このTiO針状体にIrOナノ粒子が担持している。IrO/TiO-Tiメッシュ触媒の構造の一例を図1に示す。図1 (a)は、IrO/TiO-Tiメッシュ触媒の構造概略図であり、 図1(b) IrO/TiO-Tiメッシュ触媒のTiO針状体の局所拡大模式図であり、図1 (c)は、TiO針状体の表面上のIrOナノ粒子の拡大模式図である。

【0040】
このようなIrO/TiO-Tiメッシュ触媒において、触媒成分であるIrOの担持量は、Tiメッシュの単位面積当たり0.1mg/cm~1mg/cmであることが好ましく、0.4mg/cm~0.6mg/cmであることがより好ましい。

【0041】
酸化イリジウムのような触媒成分を含む触媒は、一般的に焼成して用いられるが、前述のとおり、本発明の触媒は、触媒成分に含まれる遷移金属酸化物をアモルファス構造にする観点から、非焼成体であることが好ましい。しかし、本発明においては、電極触媒として印加電圧を変化させることによりアモルファス構造とすることができる。

【0042】
本発明の触媒は、水の電気分解触媒として特に高い活性を有する。本発明の構造体は、電気伝導性を有する材料に遷移金属の酸化物を担持させたものを多孔質で電気伝導性の基材に保持させたものであるが、基材に電気伝導性があることから、電極触媒として使用することができる。この電極を用いて水の電気分解反応を行うことにより、水素および酸素を効率的に生産することができる。

【0043】
前述のとおり、本発明の触媒は、印加された電圧に応じて、触媒成分に含まれる遷移金属酸化物中の遷移金属の酸化数がフレキシブルに変化する特徴を有する。遷移金属酸化物中の遷移金属の酸化数がフレキシブルに変化する性質は、遷移金属酸化物がアモルファス構造を有することに起因する。例えば、前記担体に酸化イリジウムを担持してなる本発明の触媒を用いて得られた電極および標準電極を電解液(0.05MのHSO水溶液)中に設けた系において、標準電極に対し、印加電圧を1.0V~2.2V掃引したとき、触媒中のイリジウムの価数が0~+4以上の範囲で変化する。より具体的には、前記系において、標準電極に対し、印加電圧を1.0V~2.2V掃引した際、XAFS(X線吸収微細構造)解析によって測定されたイリジウムの価数が0~+4以上の範囲で変化する。すなわち、5価、あるいは6価の酸化数を取ることが出来る。本発明の触媒は、このように高電圧をかけなくても、遷移金属の酸化数を高くできることから、高い活性を発現できるものと推測される。このような特性を備えた触媒は、具体的には実施例に示した製造方法によって製造することができる。

【0044】
本発明では、遷移金属酸化物を触媒として用いるためには、遷移金属酸化物がアモルファス構造を有している必要がある。アモルファス構造とするためには、以下の操作を行い、本発明においてはこの操作のことを「活性化」と称する。触媒の活性化のために、電解液(例えば、0.05mmol/LのHSO水溶液)中に設けた電極触媒と標準電極の系において、オンセット電位に対し、印加電圧を-3.0V~1.5Vの範囲で1往復以上掃引する。活性化のための電圧掃引条件としては、オンセット電位に対して-3.0V~1.5Vの範囲で1往復以上掃引することが好ましく、-3.0V~0.5Vの範囲で5往復以上掃引することがより好ましく、-0.4V~0.5Vの範囲で10往復以上掃引することがさらに好ましい。
オンセット電位とは、前記電極触媒を用いたときに得られる電流電圧曲線において、酸素発生反応に由来する電流密度の増加をX軸に対して外挿したときに、電流密度が0になる電位とする。

【0045】
本発明の触媒を用いた電極は、アノードとして好適に使用することができる。その結果、水の電気分解を効率的に行うことができる。この点について、実施例1で詳述する。
本発明の触媒を用いた前記電極は、アノード触媒とカソード触媒との境目に電解質膜を用いれば、電気分解で生じたプロトンを、電解質膜を介してカソード触媒層に輸送し、適切なカソード触媒を用いれば、そのプロトンを用いて還元反応を行うことができる。例えば、カルボン酸の水素化触媒と組み合わせることにより、図2に示すようなアルコール電解合成セルを構成することができる。電解質膜には公知の電解質膜であれば特に制限はないが、図2に示すように、ナフィオン(NAFION(登録商標)、パーフルオロアルキルスルホン酸系ポリマー)膜を電解質膜とすることが好ましい。この電解質膜をカソードおよびアノードで挟み、カソード触媒層およびアノード触媒層が前記電解質膜に密着するように熱圧着して、膜電極接合体(MEA)を形成する。アノード触媒層として本発明の触媒からなる触媒層を使用する。図2においては、本発明の触媒として、炭素からなる担体に酸化イリジウムを担持してなる触媒が使用されている。カソード触媒層は、例えば、TiO層とすることができる。膜電極接合体の両側にシリコンラバーを挟んで、アノード側に電解反応槽を装着し、カソード側にカルボン酸の水素化反応槽を取り付ける。電解反応槽に水を供給し、水素化反応槽にカルボン酸を供給して、両電極間に電圧をかける。そうすると、アノード側で水の電気分解が起こり、発生したプロトンが電解質膜を通ってカソードに供給され、カソード側でカルボン酸の水素化が行われ、アルコールが生成される。本発明の触媒は、水の電気分解触媒として特に高い活性を有することから、このアルコール電解合成セルにより効率的なアルコール合成が可能である。
かかる装置を本明細書において、PEAECと称することがある。
PEAECとしては、国際公開第2017/154743号に記載されているものを用いることができる。

【0046】
なお、PEAECを用いて触媒の活性化を行う場合は、以下のように行う。
アノード側の流路に液溜めがある装置を用い、参照電極(Ag/AgCl電極)を液溜め中に挿入する(図48参照)。装置のアノード側に支持電解質(例えば、0.2mol/L NaSO)を含む水を流通させるとともに、カソード側に水を流通させて、アノードに所望の電位範囲で電位を複数サイクル掃引することで、アノード触媒を活性化することができる。その後、アノード側に水を流通させるとともに、カソード側にカルボン酸水溶液を流通させることにより、通常のアルコール電気化学合成を行うことができる。

【0047】
(構造体の製造方法)
本発明の構造体は、電極として作用する基材に電気伝導性の材料である担体を保持させた後に、触媒である遷移金属酸化物を担持させて製造することができるし、逆に、電気伝導性の材料に遷移金属酸化物を担持させ、これを基材に保持させるという工程で製造してもよい。前者の方法は、基材の表面を、積極的に化学処理を施して担体としての電気伝導性材料を生成させてもよいし、基材の表面が自然に酸化されて酸化物の被膜が生成しているのを利用してもよい。酸化物の皮膜を利用する場合、酸化物は電気伝導性が低いため薄いほど電極触媒としての性能がよい。基材にチタンメッシュを用いる場合は、アルカリ水溶液で高温処理をすると表面に針状の酸化チタンが成長し、これに遷移金属酸化物の前駆体を反応させて担持する方法を用いることができる。
また、この構造体を膜電極接合体のアノードとする場合には、遷移金属酸化物の前駆体から遷移金属酸化物を製造し、これを固体電解質膜に塗布し、表面が空気中で自然酸化したチタンペーパーを合わせて構造体とすることもできる。遷移金属酸化物は、アルカリ処理により水酸化物として焼成したものを用いてもよいし、ナノパーティクルを形成して焼成した物を用いてもよい。

【0048】
(電極触媒の活性化)
本発明の電極触媒は、遷移金属をアモルファス化する必要がある。
触媒の活性化のために、電解液(例えば、0.05mmol/LのHSO水溶液)中に設けた電極触媒と標準電極の系において、オンセット電位に対し、印加電圧を-3.0V~1.5Vの範囲で1往復以上掃引する。活性化のための電圧掃引条件としては、オンセット電位に対して-3.0V~1.5Vの範囲で1往復以上掃引することが好ましく、-3.0V~0.5Vの範囲で5往復以上掃引することがより好ましく、-0.4V~0.5Vの範囲で10往復以上掃引することがさらに好ましい。
オンセット電位とは、前記電極触媒を用いたときに得られる電流電圧曲線において、酸素発生反応に由来する電流密度の増加をX軸に対して外挿したときに、電流密度が0になる電位とする。
【実施例】
【0049】
[実施例1]IrO/TiO-Tiメッシュ触媒の合成
TiO-Tiメッシュは、2段階の水熱合成法によって調製した。
まず、第1のステップとして、1M NaOH水溶液30mLを入れたオートクレーブにTiメッシュ(面積:2cm×2cm)を入れた。
次いで、オートクレーブを12時間、220℃に加熱して、Tiメッシュ上にHTi・HOを成長させた。その後、Tiメッシュを水で洗浄し、0.1M HCl水溶液に10分間浸漬した後、水とエタノールで洗浄し、空気乾燥した。
【実施例】
【0050】
第2のステップとして、処理したTiメッシュを40mLの水とともにオートクレーブに入れ、200℃で24時間保持し、HTi・HOをアナターゼ型TiOに変換した。
その後、水とエタノールで洗浄した後、TiOを保持したTiメッシュを空気中で乾燥させた。
【実施例】
【0051】
得られたTiO-Ti(1)メッシュをN雰囲気下で、IrClをエチレングリコールと脱イオン水との6:4混合物に溶解して得られた溶液(IrCl溶液)に6時間浸漬し、140℃で加熱し、IrO/TiO-Tiメッシュ触媒を合成した。IrCl溶液の濃度を調整することにより、IrOの担持量が0.58mg/cm(1A)、0.437mg/cm(1B)、0.379mg/cm、(1C)、0.33mg/cm、(1D)、0.08mg/cmで1E)である5種のIrO/TiO-Tiメッシュ触媒を製造した。
【実施例】
【0052】
(試料の同定)
得られたTiO-Ti(1)およびIrO/TiO-Tiメッシュ触媒(1A)の電子顕微鏡写真像の一例を図3に示す。図3(a)は、TiO-TiメッシュのSEM像であり、図3(b)は、IrO/TiO-Tiメッシュ触媒(1A)のSEM像であり、図3(c)は、IrO/TiO-Tiメッシュ触媒(1A)の高解像度TEM像である。
【実施例】
【0053】
図3より、得られたIrO/TiO-Tiメッシュ触媒(1A)は、Tiメッシュに針状のTiOが保持され、このTiO針状体にIrOナノ粒子が担持されている構造を有することがわかった。IrOナノ粒子はすべて粒径10nm未満であり、多孔質TiO針状体の表面に均一に堆積していることがわかった。
【実施例】
【0054】
(触媒特性)
前記IrOの担持量(単位:mg/cm)の異なる数種のIrO/TiO-Tiメッシュ触媒に対してサイクリックボルタモグラム(CV)曲線を求めた。結果を図4に示す。図4(a) は、IrO/TiO-Tiメッシュ触媒のサイクリックボルタモグラム(CV)曲線であり、図4(b)は掃引速度10mV/sにおけるIrO/TiO-Tiメッシュ触媒(IrO担持量:0.58mg/cm、(1A))のターフェルプロット である。ターフェルプロットは、電気化学反応の速度と過電圧との間の関係を記述するため、測定された電流の絶対値の対数値と印加電位の関係を示したものである。ある電流値を得るためにどれだけの電圧を印加する必要があるのかを定量的に評価することができ、この勾配が小さいことは、触媒の効率が高いことを意味する。
【実施例】
【0055】
図4より、これらのIrO/TiO-Tiメッシュ触媒は、酸性媒体中で優れた酸素発生反応(Oxygen evolution reaction、OER)性能を示すことがわかった。IrOの担持量が増加すると、OER性能は向上した。IrOの担持量が0.58mg/cmであるIrO/TiO-Tiメッシュ触媒(1A)および公知の同種の10 mAcm-2における触媒の過電圧(Overpotential,mV)、10 mAcm-2における酸素発生反応の電位 (EOER(EOER, Vvs.RHE)、ターフェルスロープ(Tafel Slope)を表1に示す。本発明のIrOの担持が0.58mg/cmであるIrO/TiO-Tiメッシュ触媒は、すでに公開された論文にて報告されたIrまたはRuベースの触媒と比較して、表1 に示すように、顕著に高いOER性能を示すことがわかった。
【実施例】
【0056】
【表1】
JP2019240200A1_000003t.gif
【実施例】
【0057】
(酸性媒体中でのOERに対するIrOx/TiO-Tiメッシュ触媒の反応機構)
(1)表面水酸(OH)基の存在
酸素発生反応(OER)は、特に酸性媒体中の複数のエネルギー変換デバイスにおいて重要である。これまで関連触媒が種々報告されているが、触媒メカニズムは依然として不明な点が多い。ここでは、前記触媒の触媒メカニズムを明らかにするために、いくつかのX線光電子分光分析(XPS)およびXAFS(X線吸収微細構造)解析を行った。
【実施例】
【0058】
図5に、350℃での焼成前後のIrO/TiO-Tiメッシュ触媒のCVおよびXPSの測定結果を示す。図5(a)は、 異なる焼成処理後のIrO/TiO-Tiメッシュ触媒のサイクリックボルタモグラム(CV)曲線である。図5(b)は、OER性能とOH濃度との相関を示す図である。図5(c)は、異なる焼成処理後のIrO/TiO-Tiメッシュ触媒の0信号に対する高分解能XPSスペクトルである。
【実施例】
【0059】
図5(a)に示したCV曲線にみられるように、活性が最も高かった、担持量が0.58mg/cmで(1A)あるIrO/TiO-Tiメッシュ触媒では、プラスとマイナスの逆方向に電圧を掃引した際の電圧に大きなギャップが観測された。これは、電極上に電荷が蓄積していることを示していると考えられる。一方、焼成時間が増加するにつれて、ギャップが減少するとともに、オンセットポテンシャルが増大することもわかった。したがって、高活性な電極上では、電荷を蓄積するメカニズムが働くものと考えられる。
【実施例】
【0060】
XPSスペクトルの焼成時間依存性を図5(c)に示す。O1s領域をみると、IrO/TiO-Tiメッシュ触媒上には、TiOの酸素(O2-)以外に、水酸(OH)基に帰属されるピークが観測された。また、水酸基のスペクトル成分は、焼成が進むと減少することがわかった。図5(b)にXPSスペクトルから求めたIrO/TiO-Tiメッシュ触媒表面での全酸素量に占める水酸基の割合と10mAcm-2における電位をプロットすると、水酸基の存在量の増大とともに電位が減少する、つまり、過電圧が減少することが明らかとなった。以上の結果から、触媒表面での水酸基の存在が活性発現には重要であると考えられる。
【実施例】
【0061】
(2)電圧印加状態での高酸化状態の存在
触媒の状態を詳細に調べるため、触媒のXAFS(X線吸収微細構造)解析実験を行なった。
【実施例】
【0062】
実験方法:
試料の測定法として、透過法、蛍光法、転換電子収量法を用い、試料形態および測定元素種に適切な方法をそれぞれ適用した。
【実施例】
【0063】
標準試料ペレットの作製においては、標準試料粉末約5mgに窒化ホウ素粉末約160mgを加えて混合し、10mm径ペレット形成器を用いて約7tの圧力を1分間かけて作製した。
【実施例】
【0064】
ロの字型のプラスチック製フレームにカプトン(登録商標)フィルムを固定し、セロハンテープを用いてカプトン(登録商標)フィルム上に電極試料を固定した。試料付プラスチックフレームをスタンドに固定し、試料にシンクロトロン光が照射される位置に調節した後、大気下293Kで測定を行った。Ir-L3吸収端の測定において、標準試料ペレット(金属Ir、IrO)は透過法、電極試料は蛍光法で測定した。Ti-K吸収端の測定においては、標準試料ペレット(アナターゼ型TiO)は透過法、電極試料は転換電子収量法で測定した。測定時間は、透過法で15分、蛍光法で90分、転換電子収量法で10分の条件で測定した。
【実施例】
【0065】
電極試料は、Ir-L3吸収端において、IrO/TiO-Tiメッシュ(未焼成・活性化処理前)、IrOx/TiO-Tiメッシュ(未焼成・活性化処理後)、IrO/TiO-Tiメッシュ(焼成・活性化処理後)、Ti-K吸収端において、IrO担持前のTiOメッシュ、IrO/TiO-Tiメッシュ(未焼成・活性化処理前)、IrO/TiO-Tiメッシュ(未焼成・活性化処理後)、IrO/TiO-Tiメッシュ(焼成・活性化処理後)の測定を行った。サイズは2cm×0.5cmとした。ここで、CV測定を数サイクル行うことを活性化処理という。焼成は350℃で所定時間行った。IrO/TiO-Tiメッシュとしては、担持量が0.58mg/cmであるIrO/TiO-Tiメッシュ触媒を用いた。
【実施例】
【0066】
補足:電極調整スキーム
・TiO-Tiメッシュ(IrO担持前)→IrO/TiO-Tiメッシュ(未焼成・活性化処理前)→IrO/TiO-Tiメッシュ(未焼成・活性化処理後)
・TiO-Tiメッシュ(IrOx担持前)→IrO/TiO-Tiメッシュ(未焼成・活性化処理前)→IrO/TiO-Tiメッシュ(焼成・活性化処理前)、IrO/TiO-Tiメッシュ(焼成・活性化処理後)
【実施例】
【0067】
・XAFS測定(in situ)
標準試料に関する操作は、全て上記と同様の条件で行った。in situ条件における測定は、全て蛍光法を用いて行った。
電極試料は、IrO/TiO-Tiメッシュ(未焼成・活性化処理後)、IrO/TiO-Tiメッシュ(焼成・活性化処理後)を用い、サイズは2cm×1cmとした。
【実施例】
【0068】
図6にin situ測定におけるセットアップの写真を示す。in situ測定における反応には、ポリエチレン製フタ付きポリプロピレン製直方体セル(120mm×80mm×70Hmm、460cm、SHINKIGOSEI Co.,LTD,Japan)を用いた。ポリプロピレン製直方体セルの一面(80mm×70Hmm)の一部を16mm×16 mmの大きさで切除し、測定窓とした。測定窓を全て被覆する範囲でカプトン(登録商標)シールをセルの内壁側に貼付した。
【実施例】
【0069】
電極試料をステンレス製ロッドに固定し、作用極とした。作用極、白金コイル対極、銀塩化銀参照極、スターラーチップをセルに設置した。セルに0.05M HSO水溶液(FUJIFILM Wako Pure Chemical corp.,Japan)を340cm加え、電極試料が水溶液に1cm×1cm浸漬するようにし、測定窓側から観察したときに浸漬部分が全て測定窓の範囲内に収まるように設置した。電極試料と測定窓のカプトン(登録商標)シールの距離は2mmとした。シンクロトロン光が測定窓を通過して45度の角度で電極試料に照射されるようにセルを設置し、検出器を照射方向に対して90度(電極試料に対して45度)になるように設置した。各電極をポテンショガルバノスタット(VersaSta4,北斗電工)に接続した。1000rpmで溶液を撹拌しながら作用極に1.0V-2.9V vsRHEの電圧を印加した状態または無印加状態でシンクロトロン光を照射し、1つの条件につき60分~120分間程度測定を行った。
【実施例】
【0070】
(結果)
・XAFS測定(電極のみ)
図7にIr-L3吸収端におけるXANES測定の結果を示す。全ての電極試料の吸収端のピークトップの位置が金属IrとIrOの中間の位置にあることから、作製した電極試料におけるIr種は、0価と4価の中間の価数を有することがわかった。活性化処理前後の未焼成IrO/TiO-Tiメッシュのスペクトルに着目すると、吸収端のピークトップの位置が活性化処理により低エネルギー側にシフトしたことから、活性化処理によりIr種が若干還元された状態に変化することが示唆された。焼成前後おけるIrO/TiO-Tiメッシュのスペクトルに着目すると、未焼成IrO/TiO-TiメッシュのスペクトルはIrOのスペクトルに近く、焼成IrO/TiO-Tiメッシュのスペクトルは金属Irに近いことから、未焼成IrO/TiO-TiメッシュにおけるIr種のほうがより高い酸化状態であることが示唆された。
【実施例】
【0071】
図8にIr-L3吸収端におけるフーリエ変換後のEXAFS測定の結果を示す。IrO/TiO-Tiメッシュ(未焼成・活性化処理前)のスペクトルにおいては、IrOのスペクトルに類似した位置1.7(Ir-O),2.9(Ir-Ir),3.5(Ir-Ir)Åにピークがみられた。また、第二、第三配位圏の2.9、3.5Åのピーク強度がIrOのピークより小さかったことから、IrO/TiO-Tiメッシュ(未焼成・活性化処理前)のIrOナノ粒子はIrOに類似した構造を有しており、その結晶性はIrOよりも低いことが明らかになった。活性化処理前後おけるIrO/TiO-Tiメッシュのスペクトルに着目すると、活性化処理後の電極試料においては、2.9、3.5のピークが消失したことから、活性化処理によってIrナノ粒子の結晶性が低下しアモルファス状に変化したことが示唆された。未焼成IrO/TiO-TiメッシュにおけるIrナノ粒子は結晶性が低いアモルファス状であるため、Irと酸素のモル比が不定比となり、IrとIr4+との中間の価数を有すると考えられる。IrOx/TiO-Tiメッシュ (焼成・活性化処理後)のスペクトルにおいては、IrOのスペクトルに類似した1.7Å(Ir-O)のピーク、金属Irのスペクトルに類似した2.9Å(Ir-Ir)のピークがみられた。焼成処理によってIrナノ粒子が凝集すると共に、一部が金属的なIr種に変化し、酸化イリジウム種と金属イリジウム種が生成したことが示唆された。以上の結果から、アモルファス状の酸化イリジウム種(IrO)が本電極試料における高い活性の要因であることが示唆された。
【実施例】
【0072】
図9および図10に、Ti-K吸収端におけるXANESおよびEXAFS測定の結果を示す。全ての電極試料におけるスペクトルはアナターゼ型TiO標準試料と同様の結果を示したことから、IrOナノ粒子 の担持前後において、TiOメッシュは変化しないことが明らかとなった。
【実施例】
【0073】
・XAFS測定(電極反応中:in situ)
IrO/TiO-Tiメッシュ(未焼成・活性化処理後)を用いたときの電圧印加時および無印加時におけるIr-L3吸収端のXANES測定の結果を図11に示す。よりポジティブな電圧を印加するほどスペクトルが高エネルギー側にシフトしたことから、ポジティブな電圧の印加するほどIr種の価数がより高い酸化状態に変化することが明らかとなった。Ir-L3のXANES吸収端における変曲点を印加電圧に対してプロットしたグラフを図12に示す。電圧無印加時および1.05V vsRHEにおける変曲点は、IrOの変曲点よりも低エネルギー側にあったのに対し、1.2V vsRHE以上の電圧印加時は、IrOの変曲点よりも高エネルギー側に変曲点がシフトした。すなわち、IrO/TiO-Tiメッシュ(未焼成・活性化処理後)におけるIr種は、電圧の印加に伴って価数が変化し、1.2V vsRHE以上の電圧印加時はIr4+以上の価数を有することが明らかとなった。また、測定における電圧を印加した順序は電圧の順序とは異なるにも関わらず、Ir種の価数は印加電圧に対して比例的に依存した。これら結果から、IrO/TiO-Tiメッシュ(未焼成・活性化処理後)におけるIr種のレドックス能が非常にフレキシブルであり、可逆的な電圧応答性を有することが明らかとなった。
【実施例】
【0074】
IrO/TiO-Tiメッシュ(未焼成・活性化処理後)を用いたときの電圧印加時および無印加時におけるIr-L3吸収端のフーリエ変換後のEXAFS測定の結果を図13に示す。全ての条件において、Ir-Oに由来するピークのみが見られ、他のピークは見られなかったことから、電圧印加時もIr種はアモルファス状態のIrOであることがわかった。1.2V vs RHE以下の電圧印加時は、無印加時とほぼ同様の位置にIr-Oピークが見られたのに対し、1.5V vsRHE以上の電圧印加条件においては、よりポジティブな電圧を印加するほど、Ir-Oがより短距離側にシフトしたことが明らかとなった。電圧の印加に伴ってIrの価数がより高い酸化状態に変化し、電荷を補償するため酸素がIrに接近したと考えられる。EXAFSスペクトルにおけるIr-Oのピークトップの位置を印加電圧に対してプロットしたグラフを図14に示す。Ir-Oピークの位置が変化した電位は、OERのオンセット電位に近いことから、Ir-Oの原子間距離は反応の進行に依存することが明らかとなった。また、XANES測定の結果と同様に、測定において電圧を印加した順序は電位の序列とは異なるにも関わらず、Ir-Oピークは系統的な変化を示したことから、Ir-Oの原子間距離も可逆的な電位応答性を有することが明らかとなった。以上をまとめると、IrO/TiO-Tiメッシュ(未焼成・活性化処理後)におけるIr種の価数は印加電圧に一律に依存し、Ir-Oの原子間距離は反応の進行に起因することが明らかと成った。
【実施例】
【0075】
IrO/TiO-Tiメッシュ(焼成・活性化処理後)を用いたときの電圧印加時および無印加時におけるIr-L3吸収端のXANES測定の結果を図15に示す。印加の電圧に関わらず、ほぼ同様のスペクトルがみられた。Ir-L3のXANES吸収端における変曲点を印加電圧に対してプロットしたグラフを図16に示す。印加電圧に関わらず、変曲点のエネルギー位置は11221.7keV付近となったことから、Ir種の価数は電位に依存せず、ほぼ一定であると考えられる。
【実施例】
【0076】
IrO/TiO-Tiメッシュ(焼成・活性化処理後)を用いたときの電圧印加時および無印加時におけるIr-L3吸収端のフーリエ変換後のEXAFS測定の結果を図17に示す。全ての条件において、Ir-O、Ir-Irに由来するピークのみが見られたことから、電圧印加時もIr種の状態は変化しないことが明らかになった。EXAFSスペクトルにおけるIr-Oのピークトップの位置を印加電圧に対してプロットしたグラフを図18に示す。電圧の印加によってIr-Oの原子間距離は無印加の状態より長くなり、2.2V vsRHE以下の電圧の印加条件においてはほぼ同様の1.8Åとなった。2.9V vsRHEの電圧印加条件においては、2.2V vs RHE以下の電圧の印加条件よりもIr-Oの原子間距離は短くなった。IrO/TiO-Tiメッシュ(未焼成・活性化処理後)の結果と比較すると、焼成した電極のIr-Oの原子間距離は明確な電圧依存性を示さないと考えられる。以上より、IrO/TiO-Tiメッシュ(焼成・活性化処理後)におけるIr種の価数および原子間距離は共に電位に依存しないと考えられる。
【実施例】
【0077】
各電極における、電位依存性をまとめたグラフを図19及び図20に示す。以上のXAFS測定の結果から、TiO上の数nmのIrOナノ粒子は、アモルファス構造の酸化物IrOの状態で存在しており、小粒子径およびアモルファス構造によって可能にされると考えられる価数とIr-Oの原子間距離のフレキシブルな電圧応答性と、電圧印加時におけるIr4+以上の価数を示すIr活性種が、本電極試料における高活性・高耐久性を実現したと考えられる。
【実施例】
【0078】
[実施例2]IrO担持カーボン(IrO/C):水溶液法
既報(J Nanopart Res(2011)13:1639-1646)を参考に、HIrCl・nHO(10g),19.4mM)粉末を最初にイオン交換水200mLに溶解した。
【実施例】
【0079】
次いで、この水溶液を100℃に加熱しし、45分間攪拌した。Ir水酸化物の生成を促進するために1M水酸化ナトリウム溶液(1M,200mL)を添加し、さらに100℃で45分間攪拌した。
【実施例】
【0080】
その後、溶液を遠心分離機に15分間入れ、濾過した。沈殿物をイオン交換水で洗浄して塩化物を除去した。得られたIrO粒子を80℃で5時間乾燥させた。その後、空気中、400℃で1時間焼成した。
【実施例】
【0081】
図21に、市販のIrO(a)およびBaglioの手順により調製されたIrOナノ粒子(IrOx-lab)(b)のTEM像を示す。市販のIrO粒子とIrO-labは凝集物の存在を示した。しかしながら、実験室で調製した試料中の凝集体は、市販中の凝集体よりもはるかに小さいことがわかった。さらに、IrO-lab(図21(b))のTEM画像において、凝集体に加えて10nmより小さい多数のIrOx粒子が観察された。既報(J Nanopart Res(2011)13:1639-1646)においては、直径10nm以下のIrOの小粒子の存在は確認されていないが、我々の実験においては、IrO-labの大部分は直径10nm以下のIrOナノ粒子によって構成されていることが明らかとなった。
すなわち、上記の方法により、IrOナノ粒子を得た。
【実施例】
【0082】
4mgのIrO-lab、24μLのナフィオン(登録商標)溶液(5質量%)、240μLの2-プロパノールおよび240μLの水を含む混合物を数十分間超音波処理した。
【実施例】
【0083】
次に、4cmの面積を有するガス拡散カーボン紙上にインクを塗装した後(IrO:1mg/cm)、自然乾燥し、IrO-Cを得た。
【実施例】
【0084】
[実施例3]IrO担持Tiペーパー(IrO/TiO-Ti):水溶液法
4mgの前記IrOx-lab、24μLのナフィオン(登録商標)溶液(5質量%)、240μLの2-プロパノールおよび240μLの水を含む混合物を数十分間超音波処理した。
【実施例】
【0085】
次に、4cmの面積を有するTiペーパー(WEBTi-K(0.025mm thickness,Toho Technical Service,Co.)上にインクを塗装したのち、自然乾燥し、IrO/TiO-Tiを得た。市販のTiペーパーの表面は酸化されているため、表面にはTiOが存在する。図22に、得られたIrO/TiO-TiとOERに使用される市販品の構造安定化電極(DSE)の写真を示す。
【実施例】
【0086】
[実施例4]IrO/CとIrO/TiO-TiのOER性能の比較
0.2M NaSO水溶液中における、実施例2で得られたIrO/Cおよび実施例3で得られたIrO/TiO-TiのLSV測定結果を図23に示す。IrO-Cは、市販のIrO粒子を使って合成した電極(IrO-wako-C)と比較して高い性能を示すことがわかった。また、IrO/TiO-Tiは、IrO/Cと比較して、さらに高い触媒能を示した。IrO/TiO-Tiのより高い触媒活性は、主にカーボン紙よりもTiペーパーの電気抵抗率が低いことによると考えられる。
【実施例】
【0087】
[実施例5]IrO/TiO-Tiと市販OER電極のOER特性の比較
図24に、実施例3で得られたIrO/TiO-Ti(図中ではIrO(Yamauchi))と市販されているDSEとのOER特性を示す。IrO/TiO-Ti上での過電圧(オーバーポテンシャル)は市販されているアノードよりも低く、高い電流密度を示すことがわかった。したがって、IrO/TiO-Tiは優れたOER能を示すことが明らかとなった。
【実施例】
【0088】
[実施例6]IrO/TiO-Tiの市販OER電極のPEAECにおける触媒能の比較
図25に、実施例3で得られたIrO/TiO-Tiの、市販OER電極をポリマー電解質アルコール電解合成セル(PEAEC)に用いた場合の、PEAEC性能を示す。全て同じ条件で実験したところ、IrO/TiO-Tiが最も優れた触媒能を示すことがわかった。
【実施例】
【0089】
[実施例7]耐久性
また、本触媒の耐久性試験を行った(図26)。多くの水電解触媒が20時間以下と低いのに対して(参考論文およびそのSupporting data:T.Fujigaya,Y.Shi,J.Yang,H.Li,K.Ito、N.Nakashima,“A highly efficient and durable carbon nanotube-based anode electrocatalyst for water electrolyzers” J.Mater.Chem.A,2017,5,10584-10590.DOI:10.1039/c7ta01318c)、本触媒は、100時間後も水電解電位はほとんど変化せず、本触媒が極めて高いOER耐久性を示すことを示している。
【実施例】
【0090】
[実施例8]
実施例2で、原料としてHIrCl・nHO1.0g(1.9mmol)とし、溶媒量を実施例2の1/10としたこと以外は実施例2と同様な方法により、IrO微粒子を得た。なお、実施例8では、図27に示す方法(a)により、IrO微粒子を合成した。
【実施例】
【0091】
[実施例9]
IrCl・nHO1.0g(1.9mmol)を15mLのエチレングリコールと10mLの水の混合溶液に溶解し、窒素気流中、140℃で6時間乾留し、黒色のサスペンジョンを得た。これを濾取した後、水で洗浄し、イリジウムのナノ粒子を得た。得られたイリジウムのナノ粒子を空気中、400℃で1時間焼成して、IrO微粒子を得た。実施例9では、図27に示す方法(b)により、IrO微粒子を合成した。
【実施例】
【0092】
[実施例10]
実施例2で得られたIrOをIrO-large(a)、実施例8で得られたIrOをIrO-small(b)と表示し、実施例9で得られたIrOをIrO-metal(c)と表示し、TEMおよびXRDを比較した。IrO-large(a)、IrO-small(b)およびIrO-metal(c)のXRDパターンを図28に、TEM像を図29に示す。
【実施例】
【0093】
IrO-small(b)は、IrO-large(a)とよく類似したXRDパターンを示したことから、結晶子サイズには大きな変化がないことが分かった。しかし、TEM像より、IrO-large(a)に比べ、IrO-small(b)では凝集体のサイズが小さくなっていることが分かった。(IrO-large(a):2μm~10μm、 IrO-small(b):0.2μm~1μm)。一方、金属Ir粒子を経て作製したIrO-metal(c)は、XRDパターンにおけるそれぞれのピーがブロード化していることから、結晶子サイズが小さくなっていることが分かった。さらに、TEM像より、IrO-metal(c)は、大きさ0.2μm~1μm程度の凝集体であるものの、これは直径2nm~3nm程度のナノ結晶の凝集で構成されていることが分かった。
【実施例】
【0094】
[実施例11]Ir-RuO-small
実施例2で、原料としてHIrCl・nHO1.0g(1.9mmol)とRuCl・nHO55mg(0.22mmol)を用いたこと以外は実施例2と同様な方法により、Ir-RuOを得た。得られたIr-RuOを、Ir-RuO-smallと記す。
【実施例】
【0095】
[実施例12]Ir-RuO-metal
実施例9で、原料としてHIrCl・nHO1.0g(1.9mmol)とRuCl・nHO55mg(0.22mmol)を用いたこと以外は実施例9と同様な方法により、Ir-RuOを得た。得られたIr-RuOを、Ir-RuO-metalと記す。
【実施例】
【0096】
[実施例13]
実施例11で得られたIr-RuOをIr-RuO-small(a)、実施例12で得られたIr-RuOをIr-RuO-metal(b)と表示し、XRDを比較した。Ir-RuO-small(a)およびIr-RuO-metal(b)のXRDパターンを図30に示す。
【実施例】
【0097】
Ir-RuO-small(a)とIr-RuO-metal(b)は、XRDパターンにおけるピークがどれも単一であることから、RuはIrO中に固溶化していると考えられる。また、28°付近に観測されるそれぞれのサンプルの110面からの反射に由来するピークの半値幅は、IrO-smallで0.31°、Ir-RuO-small(a)で0.31°、IrO-metalで1.0°、Ir-RuO-metal(b)で0.74°であった。すなわち、同じ合成法で作製したIrOとIr-RuOは同程度の結晶子サイズをもつことが示唆された。
【実施例】
【0098】
[実施例14]Ir-RhO/TiO-Tiメッシュ
実施例1で得られたTiO-Tiメッシュを、IrCl・nHO(24mg、68μmol)とRh(C・HO(2.2mg、7.6μmol)のエチレングリコール45mLと水30mLの混合液に浸漬し、窒素気流中、140℃で6時間還流し、Ir-RhO/TiO-Tiメッシュを得た。
【実施例】
【0099】
[実施例15]Ir-PdO/TiO-Tiメッシュ
実施例14で用いたRh化合物の代わりに、PdCl(1.3mg、7.6μmol)を用いたこと以外は実施例14と同様な方法により、Ir-PdO/TiO-Tiメッシュを得た。
【実施例】
【0100】
[実施例16]Ir-PtO/TiO-Tiメッシュ
実施例14で用いたRh化合物の代わりに、19.4mmol/L HPtClaq.(0.40mL、7.6μmol)を用いたこと以外は実施例14と同様な方法により、Ir-PtO/TiO-Tiメッシュを得た。
【実施例】
【0101】
[実施例17]PEAECを用いた評価(IrO-large)
IrO-largeを搭載したPEAECの性能評価を行った。
図31に評価に用いたPEAECの構造を示す。
【実施例】
【0102】
IrO-largeアノード触媒3mg~5mgをナフィオン(登録商標)膜の一方の面に2cm×2cmの範囲で塗布し、その上に多孔性Tiペーパー(2cm×2cm)を重ねた。さらに、ナフィオン(登録商標)膜の反対側の面に、カソード触媒TiO-Tiメッシュ(2cm×2cm)を重ね合わせて熱プレスすることで膜-電極接合体(membrane electrode assembly:MEA)を作製した。
【実施例】
【0103】
作製したMEAを、アノード側、カソード側両面からサンプル溶液用の流路(蛇行流路: 2cm×2cm)が掘られたTi製集電ブロックで挟み、PEAECを組み立てた。
【実施例】
【0104】
なお、溶液の気密性保持のためにMEAと両集電ブロックの間には、それぞれシリコン製のガスケットを挟んだ。カソード側の流路に1mol/Lシュウ酸水溶液を0.50mL/minの流速で、アノード側の流路に純水を1.0mL/minの流速で流し、アノード、カソードの両集電ブロックにポテンシオスタットを用いて、アノード-カソード間に1.8V~3.0Vの電位差を印加し、60℃でPEAECを駆動した。図32に、その際の電流密度の時間変化を示す。
【実施例】
【0105】
カソード側の流路を通過した溶液を回収して、高速液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatography、HPLC)で分析し、反応物であるシュウ酸、および、生成物であるグリコール酸の濃度、グリオキシル酸の濃度を定量した。図33に、各電位におけるシュウ酸の転化率、グリコール酸生成のファラデー効率、グリオキシル酸生成のファラデー効率を示す。
【実施例】
【0106】
[実施例18]PEAECを用いた評価(IrO-small)
IrO-smallを用いたこと以外は実施例17と同様な方法により、IrO-smallを搭載したPEAECの性能評価を行った。
図34に、電流密度の時間変化を示す。図35に、各電位におけるシュウ酸の転化率、グリコール酸生成のファラデー効率、グリオキシル酸生成のファラデー効率を示す。
【実施例】
【0107】
[実施例19]PEAECを用いた評価(IrO-metal)
IrO-metalを用いたこと以外は実施例17と同様な方法により、IrO-metalを搭載したPEAECの性能評価を行った。
図36に、電流密度の時間変化を示す。図37に、各電位におけるシュウ酸の転化率、グリコール酸生成のファラデー効率、グリオキシル酸生成のファラデー効率を示す。
【実施例】
【0108】
水酸化物を経て合成したIrOについて比較すると、大量合成で作製したIrO-large(図32、図33)に比べ、少量合成で作製したIrO-small(図34、図35)では、3.0V印加時において、電流密度が0.43Acm-2から0.66Acm-2へ向上し、シュウ酸の転化率が54%から70%へ向上した。さらに、金属Ir粒子を経て合成したIrO-metal(図36、図37)の場合には、3.0V印加時における電流密度が1.0 Acm-2、シュウ酸の転化率が81%まで向上した。このようなIrO-smallおよびIrO-metalの採用によるPEAECの性能向上は、これらのIrOの高い水酸化触媒活性によるものであると考えられる。一方、グリコール酸生成のファラデー効率は、IrO-large(図33)で38%~92%であったが、IrO-small(図35)で31%~91%、IrO-metal(図37)で33%~92%であり、大きな変化はなかった。これは、カソード触媒に変更がないためであると考えられる。
【実施例】
【0109】
[実施例20]PEAECを用いた評価(Ir-RuO-small)
Ir-RuO-smallを用いたこと以外は実施例17と同様な方法により、Ir-RuO-smallを搭載したPEAECの性能評価を行った。
図38に、電流密度の時間変化を示す。図39に、各電位におけるシュウ酸の転化率、グリコール酸生成のファラデー効率、グリオキシル酸生成のファラデー効率を示す。
【実施例】
【0110】
[実施例21]PEAECを用いた評価(Ir-RuO-metal)
Ir-RuO-metalを用いたこと以外は実施例17と同様な方法により、Ir-RuO-metalを搭載したPEAECの性能評価を行った。
図40に、電流密度の時間変化を示す。図41に、各電位におけるシュウ酸の転化率、グリコール酸生成のファラデー効率、グリオキシル酸生成のファラデー効率を示す。
【実施例】
【0111】
水酸化物を経て合成したIrO-small(図34、図35)とIr-RuO-small(図38、図39)を比較すると、3.0V 印加時において、電流密度が0.66cm-2から0.62cm-2へ低下し、シュウ酸の転化率が70%から49%へ低下した。さらに、金属Ir粒子を経て合成したIrO-metal(図36、図37)とIr-RuO-metal(図40、図41)を比較すると、3.0V 印加時における電流密度が1.0Acm-2から0.84Acm-2へ低下し、シュウ酸の転化率が81%から72%へ、それぞれ低下した。従って、複合酸化物Ir-RuOはIrOに比べて水酸化触媒能が劣ることが分かった。
【実施例】
【0112】
[実施例22]PEAECを用いた評価(Ir-RhO/TiO-Tiメッシュ)
Ir-RhO/TiO-Tiメッシュ(2cm×2cm)、ナフィオン(登録商標)およびTiO-Tiメッシュ(2cm×2cm)をこの順に重ね合わせて熱プレスし、MEAを作製したこと以外は実施例17と同様な方法により、Ir-RhO/TiO-Tiメッシュを搭載したPEAECの性能評価を行った。
【実施例】
【0113】
図42に、電流密度の時間変化を示す。図43に、各電位におけるシュウ酸の転化率、グリコール酸生成のファラデー効率、グリオキシル酸生成のファラデー効率を示す。
【実施例】
【0114】
[実施例23]PEAECを用いた評価(Ir-PdO/TiO-Tiメッシュ)
Ir-PdO/TiO-Tiメッシュ(2cm×2cm)、ナフィオン(登録商標)およびTiO-Tiメッシュ(2cm×2cm)をこの順に重ね合わせて熱プレスし、MEAを作製したこと以外は実施例17と同様な方法により、Ir-PdO/TiO-Tiメッシュを搭載したPEAECの性能評価を行った。
【実施例】
【0115】
図44に、電流密度の時間変化を示す。図45に、各電位におけるシュウ酸の転化率、グリコール酸生成のファラデー効率、グリオキシル酸生成のファラデー効率を示す。
【実施例】
【0116】
[実施例24]PEAECを用いた評価(Ir-PtO/TiO-Tiメッシュ)
Ir-PtO/TiO-Tiメッシュ(2cm×2cm)、ナフィオン(登録商標)およびTiO-Tiメッシュ(2cm×2cm)をこの順に重ね合わせて熱プレスし、MEAを作製したこと以外は実施例17と同様な方法により、Ir-PtO/TiO-Tiメッシュを搭載したPEAECの性能評価を行った。
【実施例】
【0117】
図46に、電流密度の時間変化を示す。図47に、各電位におけるシュウ酸の転化率、グリコール酸生成のファラデー効率、グリオキシル酸生成のファラデー効率を示す。
【実施例】
【0118】
3.0V印加時における電流密度をIrO-largeと比べると、IrO-large(図32、図33)で0.43Acm-2であったものが、Ir-RhO/TiO-Tiメッシュ(図42、図43)で0.19Acm-2、Ir-PdO/TiO-Tiメッシュ(図44、図45)で0.19Acm-2、Ir-PtO/TiO-Tiメッシュ(図46、図47)で0.21Acm-2であった。同様に、3.0V印加時におけるシュウ酸転化率は、Ir-RhO/TiO-Tiメッシュ(図42、図43)で9.6%、Ir-PdO/TiO-Tiメッシュ(図44、図45)で21%、Ir-PtO/TiO-Tiメッシュ(図46、図47)で15%であった。このように、Ir-MO/TiO-Tiメッシ(M=Rh、Pd、Pt)をアノード触媒に用いた際に性能が従来のIrOに比べて低下するものの、PEAEC性能が得られることを明らかにした。活性の低下は、実質的なIr(-M)O使用量が少なかったためであると考えられる。今後、条件の最適化により、活性を向上させることができると考えられる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
18
【図20】
19
【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
32
【図34】
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【図35】
34
【図36】
35
【図37】
36
【図38】
37
【図39】
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【図40】
39
【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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