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明細書 :接合体、レーザ発振器、レーザ増幅器及び接合体の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6933349号 (P6933349)
登録日 令和3年8月23日(2021.8.23)
発行日 令和3年9月8日(2021.9.8)
発明の名称または考案の名称 接合体、レーザ発振器、レーザ増幅器及び接合体の製造方法
国際特許分類 H01S   3/06        (2006.01)
H01S   3/042       (2006.01)
C30B  29/20        (2006.01)
C30B  33/06        (2006.01)
H01S   3/10        (2006.01)
FI H01S 3/06
H01S 3/042
C30B 29/20
C30B 33/06
H01S 3/10
請求項の数または発明の数 12
全頁数 20
出願番号 特願2020-515541 (P2020-515541)
出願日 平成31年4月24日(2019.4.24)
国際出願番号 PCT/JP2019/017503
国際公開番号 WO2019/208658
国際公開日 令和元年10月31日(2019.10.31)
優先権出願番号 2018083878
優先日 平成30年4月25日(2018.4.25)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 令和2年10月15日(2020.10.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504238806
【氏名又は名称】国立大学法人北見工業大学
【識別番号】504261077
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人自然科学研究機構
発明者または考案者 【氏名】古瀬 裕章
【氏名】小池 悠貴
【氏名】安原 亮
個別代理人の代理人 【識別番号】100095407、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 満
【識別番号】100132883、【弁理士】、【氏名又は名称】森川 泰司
【識別番号】100202913、【弁理士】、【氏名又は名称】武山 敦史
【識別番号】100222922、【弁理士】、【氏名又は名称】和田 朋子
審査官 【審査官】村井 友和
参考文献・文献 特開2016-100359(JP,A)
特開2017-220652(JP,A)
特開2010-272712(JP,A)
特開2005-262244(JP,A)
国際公開第2014/196062(WO,A1)
国際公開第2005/011075(WO,A1)
調査した分野 H01S 3/06
H01S 3/042
H01S 3/10
C30B 29/20
C30B 33/06
特許請求の範囲 【請求項1】
光を透過可能な第1の材料と第2の材料とが接合された接合体であって、
前記第1の材料と前記第2の材料との接合界面では、前記接合体が光を透過可能であると共に、前記接合体に干渉縞が発生しない程度に、前記第1の材料に含まれる原子が前記第2の材料へ拡散侵入している接合体。
【請求項2】
前記第1の材料に含まれる原子の前記第2の材料への拡散侵入長は、約1.0nm~約10μmの範囲内である、
請求項1に記載の接合体。
【請求項3】
透過波面精度の測定に用いられるレーザ干渉計から放射されるレーザ光の波長λを633nmとした場合、前記第1の材料及び前記第2の材料の透過波面精度は、約λ以下である、
請求項1又は2に記載の接合体。
【請求項4】
前記第1の材料は、多結晶であり、前記第2の材料は、単結晶である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の接合体。
【請求項5】
前記多結晶は、YAG又は希土類イオンが添加されたYAGであり、
前記単結晶は、サファイア、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、シリコンカーバイト又はダイヤモンドである、
請求項4に記載の接合体。
【請求項6】
前記第1の材料は、蛍光体又は磁気光学材料であり、前記第2の材料は、前記第1の材料よりも熱伝導性が高い材料である、
請求項1から5のいずれか1項に記載の接合体。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の接合体と、
前記接合体を挟み込んで配置され、前記接合体で励起された光を共振させる共振器と、
前記接合体を励起させるように前記接合体に光を放射する励起用光源と、
を備えるレーザ発振器。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか1項に記載の接合体と、
前記接合体を励起させるように前記接合体に光を放射する励起用光源と、
前記接合体で増幅されるように前記接合体に光を導入する被増幅光源と、
を備えるレーザ増幅器。
【請求項9】
光を透過可能な第1の材料と第2の材料とが接合された接合体の製造方法であって、
前記第1の材料と前記第2の材料とを重ね合わせるステップと、
前記第1の材料と前記第2の材料とが密着するように所定圧力で加圧するステップと、
加圧された前記第1の材料及び前記第2の材料にパルス電流を供給することで、前記第1の材料及び前記第2の材料を所定温度に加熱するステップと、
所定時間の間、前記第1の材料及び前記第2の材料に印加される圧力を所定圧力に維持すると共に、前記第1の材料及び前記第2の材料の温度を所定温度に維持するステップと、
前記第1の材料及び前記第2の材料に印加される圧力と前記第1の材料及び前記第2の材料の温度とを徐々に低下させるステップと、
を含む接合体の製造方法。
【請求項10】
前記所定圧力は、約1MPa~約10GPの範囲内である、
請求項9に記載の接合体の製造方法。
【請求項11】
前記所定温度は、約900℃~約1500℃の範囲内である、
請求項9又は10に記載の接合体の製造方法。
【請求項12】
前記所定時間は、約5分~約20時間の範囲内である、
請求項9から11のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、接合体、レーザ発振器、レーザ増幅器及び接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザ発振器の高出力化に伴い、レーザ発振器に使用される光学材料の冷却が問題となっている。光学材料内で発生した温度勾配は、熱レンズ効果、熱収差、熱複屈折等を引き起こしてレーザ光の品質を悪化させるため、光学材料内の温度勾配をなるべく緩やかにすることが要望されている。このため、レーザ発振器において光学材料を効率的に冷却するための手法の開発が進められている。例えば、非特許文献1には、Yb:YAG(光学材料)の両端面に、熱伝導性が良好であって透明なサファイア(冷却材料)を接着した接着体が開示されている。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】S.TOKITA、APPL.PHYS.B:LASERS AND OPTICS、80、635、2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
異なる屈折率を有する物質同士が接触する境界面に光が入射した場合、その光の一部が境界面で反射することが知られている(フレネル反射)。非特許文献1の接着体は、光学材料と冷却材料とを接着しているため、光を透過させた場合にフレネル反射による損失が大きいという問題がある。このような問題は、Yb:YAGとサファイアとを接着させた接着体に光を透過させる場合のみならず、光を透過可能な材料同士を組み合わせた複合材料に光を透過させる場合にも存在している。
【0005】
本発明は、このような背景に基づいてなされたものであり、光を透過可能な材料同士を組み合わせても十分な光学品質が得られる接合体、レーザ発振器、レーザ増幅器及び接合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る接合体は、
光を透過可能な第1の材料と第2の材料とが接合された接合体であって、
前記第1の材料と前記第2の材料との接合界面では、前記接合体が光を透過可能であると共に、前記接合体に干渉縞が発生しない程度に、前記第1の材料に含まれる原子が前記第2の材料へ拡散侵入している。
【0007】
前記第1の材料に含まれる原子の前記第2の材料への拡散侵入長は、約1.0nm~約10μmの範囲内であってもよい。
【0008】
透過波面精度の測定に用いられるレーザ干渉計から放射されるレーザ光の波長λを633nmとした場合、前記第1の材料及び前記第2の材料の透過波面精度は、約λ以下であってもよい。
【0009】
前記第1の材料は、多結晶であり、前記第2の材料は、単結晶であってもよい。
【0010】
前記多結晶は、YAG又は希土類イオンが添加されたYAGであり、
前記単結晶は、サファイア、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、シリコンカーバイト又はダイヤモンドであってもよい。
【0011】
前記第1の材料は、蛍光体又は磁気光学材料であり、前記第2の材料は、前記第1の材料よりも熱伝導性が高い材料であってもよい。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の第2の観点に係るレーザ発振器は、
前記接合体と、
前記接合体を挟み込んで配置され、前記接合体で励起された光を共振させる共振器と、
前記接合体を励起させるように前記接合体に光を放射する励起用光源と、
を備える。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の第3の観点に係るレーザ増幅器は、
前記接合体と、
前記接合体を励起させるように前記接合体に光を放射する励起用光源と、
前記接合体で増幅されるように前記接合体に光を導入する被増幅光源と、
を備える。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の第4の観点に係る接合体の製造方法は、
光を透過可能な第1の材料と第2の材料とが接合された接合体の製造方法であって、
前記第1の材料と前記第2の材料とを重ね合わせるステップと、
前記第1の材料と前記第2の材料とが密着するように所定圧力で加圧するステップと、
加圧された前記第1の材料及び前記第2の材料にパルス電流を供給することで、前記第1の材料及び前記第2の材料を所定温度に加熱するステップと、
所定時間の間、前記第1の材料及び前記第2の材料に印加される圧力を所定圧力に維持すると共に、前記第1の材料及び前記第2の材料の温度を所定温度に維持するステップと、
前記第1の材料及び前記第2の材料に印加される圧力と前記第1の材料及び前記第2の材料の温度とを徐々に低下させるステップと、
を含む。
【0015】
前記所定圧力は、約1MPa~約10GPの範囲内であってもよい。
【0016】
前記所定温度は、約900℃~約1500℃の範囲内であってもよい。
【0017】
前記所定時間は、約5分~約20時間の範囲内であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、光を透過可能な材料同士を組み合わせても十分な光学品質が得られる接合体、レーザ発振器、レーザ増幅器及び接合体の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1に係る接合体を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るレーザ発振器の構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る接合体の製造装置を示す図である。
【図4】接合体の製造工程の流れを示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態2に係るレーザ発振器の構成を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態3に係るレーザ発振器の構成を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態4に係るレーザ増幅器の構成を示す図である。
【図8】実施例1における実験条件を示す図である。
【図9】実施例1における実験条件毎の接合体の成否を説明するためのグラフである。
【図10】実施例2における入射光の波長と透過率との関係を示すグラフである。
【図11】実施例3における接合界面を含むSEM画像を示す図である。
【図12】実施例3における接合体表面からの距離と特定X線の強度との関係を示すグラフである。
【図13】実施例4におけるレーザ発振の実験系の構成を示す図である。
【図14】実施例4におけるLD電流とレーザ出力との関係を示すグラフである。
【図15】実施例5における電子顕微鏡観察により取得されたイットリウム元素の一次元濃度分布を示すグラフである。
【図16】本発明の変形例に係る接合体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る接合体、レーザ発振器、レーザ増幅器及び接合体の製造方法の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面では、同一又は同等の部分に同一の符号を付す。

【0021】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る接合体10の構成を示す斜視図である。接合体10は、光学材料11(第1の材料)と、光学材料11の両端面にそれぞれ接合された一対の冷却材料12(第2の材料)と、を備える。光学材料11と冷却材料12とは、いずれも光を透過可能な材料、より具体的には透明材料で形成されている。光学材料11と冷却材料12とは、接着剤等の材料同士を接着させるための手段を介在させることなく互いに接合している。

【0022】
「接合」は、互いに当接する材料のうち少なくとも一方の材料から他方の材料に原子が拡散するように侵入することで、材料同士を結合することを意味する。「接合」は、接着剤等の材料同士を接着させるための手段を介在して材料同士を結合する場合を含まない。接合体10の接合界面では、光学材料11の原子の一部が冷却材料12内に拡散するように侵入し、又は、冷却材料12の原子の一部が光学材料11内に拡散するように侵入している。これにより光学材料11と冷却材料12とが強固に接合されている。

【0023】
なお、「接合」は、一方の材料から他方の材料に原子を拡散するように侵入させた場合に、互いに当接する材料の間に材料を構成する原子に由来する中間層が形成され、中間層を介して材料同士が結合される場合を含む。また、一方の材料との間で原子の拡散及び侵入を引き起こすと共に、他方の材料との間でも原子の拡散及び侵入を引き起こす中間層(例えば、SiOの層)を一方の材料と他方の材料との間に配置し、当該中間層を介して材料同士を結合させる場合をも含む。

【0024】
光学材料11と冷却材料12とは、例えば、いずれも円盤形状であり、同一の外径で形成されている。後述する接合体10の製造方法を用いることで、従来にない大型の接合体10を作製することができる。接合体10の外径は、約10mm以上であってもよく、例えば、約0.5mm~約300mmであり、好ましくは約10mm~約100mmであってもよい。また、接合体10の大きさを面積で規定すると、例えば、約100mm~1.0mの範囲内であってもよい。

【0025】
光学材料11は、レーザ発振器のレーザ媒質である。レーザ媒質は、励起用光源から放射された光を吸収して誘導放出を起こすことで光を増幅する。レーザ媒質は、特定の波長の光を吸収し、当該特定の波長に基づいた他の波長で発光する蛍光体から形成されている。

【0026】
光学材料11は、例えば、YAG(Yttrium Aluminum Garnet)、Nd:YAG等の多結晶である。Nd:YAGは、YAGと同種材料の関係にあり、YAGにネオジム(Nd)をドープしてイットリウム(Y)の一部を置き換えたものである。YAG、Nd:YAG等の多結晶は、光の吸収性が良好であるため、これらの多結晶を用いることでレーザ発振器の高出力化を実現できる。光学材料11の厚さは、例えば、約0.1mm~約100mmである。

【0027】
なお、光学材料11を構成する多結晶は、YAG、LuAG(Lutetium Aluminum Garnet)、Y、Lu、CaF等の母材に、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等の希土類イオンが添加された材料であってもよい。母材には、複数の種類の希土類イオンが共添加されてもよい。

【0028】
冷却材料12は、光を透過可能な材料であって、光学材料11で発生した熱を伝熱して外部に放出する。冷却材料12は、光学材料11で発生した熱を効率的に吸収するため、光学材料11よりも熱伝導率の高い材料で形成されている。冷却材料12は、例えば、サファイア、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、シリコンカーバイト、ダイヤモンド等の単結晶である。冷却材料12の厚さは、例えば、約0.1mm~約100mmである。

【0029】
サファイアは、YAGと比べてダメージ閾値が高いという性質を有する。ダメージ閾値は、材料に損傷を与えることなく供給可能な単位面積当たりのエネルギー量の閾値である。YAGで形成される光学材料11をサファイアで形成される冷却材料12で挟み込むことで、光学材料11がYAGで形成される場合であっても、エネルギーの印加による接合体10の損傷を効果的に防止できる。

【0030】
接合体10の接合界面における原子の拡散侵入の程度は、一方の材料と他方の材料との間に中間層を備える場合を含めて「拡散侵入長」という指標で評価される。拡散侵入長は、例えば、接合体10の一方の材料に含まれる原子が他方の材料へ拡散するように侵入した場合に得られる原子の一次元濃度分布を以下の式(1)でフィッティングした場合の√Dtで示される。

【0031】
【数1】
JP0006933349B2_000002t.gif

【0032】
ただし、Cは、距離xにおける当該原子の濃度(任意単位)、Cは、距離x=0における当該原子の濃度(任意単位)、xは、距離(m)、xは、当該原子の濃度がC/2になる位置の距離(m)、Dは、拡散係数(m/sec)、tは、時間(sec)である。

【0033】
接合体10の原子の拡散侵入長は、光学材料11と冷却材料12とが強固に接合すると共に、光学材料11及び冷却材料12の透過性や吸光性に影響を与えない程度に設定されている。上記の条件を満たす接合体10の原子の拡散侵入長は、例えば、約1.0nm~約10μmの範囲内であり、好ましくは、約1.0nm~約1.0μmの範囲内である。接合体10の原子の拡散侵入長は、約1.0nm~約100nmの範囲内であってもよく、約1.0nm~約10nmの範囲内であってもよい。

【0034】
レーザ発振器が高出力で動作する場合、光学材料11の中心部が高温になるため、径方向に温度勾配が発生する。光学材料11で発生する温度勾配は、熱膨張、屈折率勾配等を引き起こし、ビーム品質の劣化やレーザ出力の低下を引き起こす。しかし、接合体10は、レーザ光の発振方向に並べて配置された冷却材料12が光学材料11を挟み込むように構成されているため、光学材料11の中心部で発生した熱を効率的に排出できる。

【0035】
以上説明したように、実施の形態1に係る接合体10は、冷却材料12が光学材料11の両端面に接合されているため、両者を接着させた場合に比べて界面における熱抵抗が小さい。このため、光学材料11で発生した熱を冷却材料12に伝導させ、外部に効率的に排出できる。

【0036】
また、実施の形態1に係る接合体10は、光学材料11と冷却材料12とが空気や接着剤等を介在することなく接合しているため、フレネル損失を抑制して十分な光学品質を得ることができると共に、強度も十分に確保できる。

【0037】
さらに、実施の形態1に係る接合体10は、光学材料11が多結晶で形成され、冷却材料12が単結晶で形成されている。このため、光学材料11が多結晶であっても単結晶で形成された冷却材料12で挟まれることで、接合体10への損傷を防止できる。

【0038】
図2は、実施の形態1に係るレーザ発振器1の構成を示す図である。レーザ発振器1は、レーザ媒質を含む接合体10と、接合体10を挟み込むように配置される共振器20と、接合体10に励起用の光を供給し、共振器20内でレーザ光を共振させる励起用光源30と、を備える。

【0039】
共振器20は、光を全て反射する反射鏡21と、光の一部を外部に取り出すことができる出力鏡22と、を備える。反射鏡21と出力鏡22とは、接合体10を挟んで互いに対向するように配置されている。また、励起用光源30は、接合体10を挟んで、接合体10の径方向に対向して配置されている。レーザ発振器1は、反射鏡21と出力鏡22との間でレーザ光を繰り返し反射させることで、レーザ光が接合体10を通過するたびに誘導放出によりレーザ光を増幅させ、出力鏡22を通じてレーザ光の一部を放出する。

【0040】
レーザ発振器1は、接合体10を備えるため、光学材料11の中心部で発生した熱を、冷却材料12を介してレーザ光の伝搬方向に効率的に排出できる。このため、レーザ発振器1を小型化しても効果的に排熱できるため、マイクロチップレーザーのような小型レーザ装置を実現できる。

【0041】
次に、図3及び図4を参照して、接合体10の製造方法を説明する。接合体10は、パルス通電加圧焼結法(Pulse Electric Current Sintering:PECS)を用いて製造される。PECSは、互いに接合させる材料同士を機械的に加圧しつつ、直流のON/OFFで生成したパルス電流を供給して材料を加熱することで、材料同士を接合する方法である。

【0042】
PECSでは、互いに接合させる材料の加圧及び加熱を同時に行うことで、材料間の原子の拡散を引き起こして材料同士を接合させる。PECSでは、材料を加圧するパンチ及びダイスを発熱させ、その熱伝導によって材料を加熱するため、電気炉等を用いた場合よりも迅速な加熱が可能である。このため、長時間、高温環境下に材料を晒すことで発生する粒成長等の組織変化を抑制できる。

【0043】
図3は、接合体10を製造する製造装置100の構成を示す図である。製造装置100は、真空中又は不活性ガス中に設置され、接合される材料同士を加圧すると共に、材料にパルス電流を供給して加熱することで、接合体10を製造する装置である。

【0044】
製造装置100は、上下に配置した一対のスペーサー110と、スペーサー110の先端部にそれぞれ固定され、互いに接合される材料を加圧する一対のパンチ120と、一対のパンチ120及び材料を内部に収容するダイス130と、一方のスペーサー110から他方のスペーサー110に向けてパルス電流を供給するパルス電流源140と、を備える。

【0045】
スペーサー110は、パンチ120を把持し、パンチ120を介して材料を上下方向から押圧する。また、スペーサー110は、それぞれパルス電流源140と電気的に接続され、一方のパンチ120から他方のパンチ120に向けてパルス電流を供給する。下部のスペーサー110は、製造装置100の土台に設置されている。上部のスペーサー110は、製造装置100の移動機構(図示せず)に固定され、下部のスペーサー110に対して上下方向に移動可能に構成されている。

【0046】
パンチ120は、材料に直接接触して材料を押圧すると共に、材料にスペーサー110からのパルス電流を供給する部材である。パンチ120は、例えば円柱形状の部材であって、例えば、グラファイトのような導電性材料で形成されている。パンチ120の直径は、接合体10の直径に対応しており、例えば、約0.5mm~約300mmであり、好ましくは約10mm~約100mmである。

【0047】
ダイス130は、内部に材料を収容すると共に、パンチ120から供給されるパルス電流を材料の外周面に供給する部材である。ダイス130は、材料を収容可能であってパンチ120を挿通可能な貫通孔を備える円筒形状の部材である。ダイス130は、例えば、グラファイトのような導電性材料で形成されている。ダイス130の内径は、材料の外周面とパンチ120の外周面とがダイス130の内周面に接触するように設定される。

【0048】
図4は、製造装置100を用いて製造される接合体10の製造工程の流れを示すフローチャートである。以下、図4を参照して、接合体10の製造工程の流れを説明する。

【0049】
まず、光学材料11と冷却材料12とが一体となるように組み立てる(ステップS1)。光学材料11の両端面にそれぞれ冷却材料12を配置し、光学材料11と冷却材料12とが接触している部分の外周面に接着剤を塗布することで、光学材料11と冷却材料12とが一体になるように組み立ててもよい。また、光学材料11及び冷却材料12の表面を活性化させた状態で貼り合わせることで、両者を接着してもよい。

【0050】
一体に組み立てられる光学材料11及び冷却材料12は、所定の透過波面精度を有するように形成されている。透過波面精度の測定に用いられるレーザ干渉計から放射されるレーザ光の波長をλ=633nmとした場合、透過波面精度は、例えば、約λ以下、好ましくは、約λ/2以下、さらに好ましくは、約λ/4以下である。透過波面精度の下限は、例えば、約λ/8以下であってもよい。

【0051】
次に、ステップS1で組み立てられた材料を製造装置100の所定の位置に配置する(ステップS2)。より詳細に説明すると、まず、光学材料11と冷却材料12とを重ね合わせた方向がダイス130の貫通孔の軸方向と一致するように、材料をダイス130の貫通孔の内部に配置する。その後、ダイス130の貫通孔に一対のパンチ120を挿通して配置することで、材料を製造装置100に配置する。

【0052】
次に、上部のスペーサー110を下方に移動させることで、所定圧力で材料を加圧する(ステップS3)。材料は、光学材料11と冷却材料12とを重ね合わせた方向に加圧される。所定圧力は、例えば、約1.0MPa~約10GPaの範囲内であり、好ましくは、約5.0MPa~約1.0GPaの範囲内であり、さらに好ましくは、約5.0MPa~約0.1GPaの範囲内である。

【0053】
次に、材料にパルス電流を供給することで、加圧された状態の材料を所定温度まで加熱する(ステップS4)。より詳細に説明すると、パンチ120にパルス電流を供給してパンチ120を発熱させ、その熱を材料に伝導させ、材料を急速に加熱する。その結果、互いに加圧された状態の光学材料11及び冷却材料12の温度が上昇するため、接合界面で原子の拡散が発生し、光学材料11及び冷却材料12の接合が進行する。

【0054】
製造装置100は、材料の温度を、例えば、500℃/minで上昇させることができる。所定温度及び昇温速度は、光学材料11及び冷却材料12の種類、形状、寸法、接触面の状態等を考慮して設定される。所定温度は、例えば、約900℃~約1500℃の範囲内であり、好ましくは、約1000℃~約1400℃の範囲内であり、さらに好ましくは、約1100℃~約1200℃の範囲内である。

【0055】
材料が所定温度まで加熱された後、材料が所定圧力で加圧されると共に所定温度で加熱された状態を所定時間だけ継続させる。所定時間は、光学材料11及び冷却材料12の種類、形状、寸法、接触面の状態等を考慮して、所望の拡散侵入長が得られるように設定される。所定時間は、例えば、約5分~約20時間の範囲内であり、好ましくは、約1時間~約2時間の範囲内である。

【0056】
次に、材料が所定温度に到達した時点から所定時間が経過したかどうかを判定する(ステップS5)。材料が所定温度に到達した時点から所定時間が経過した場合(ステップS5;Yes)、材料への圧力を徐々に減圧させると共に、材料の温度を徐々に降温させる(ステップS6)。ステップS6では、所定の降温速度及び所定の減圧速度で、材料を徐々に冷却すると共に、徐々に減圧することが好ましい。降温速度及び減圧速度は、光学材料11及び冷却材料12の種類、形状、寸法、接触面の状態等を考慮して設定される。

【0057】
他方、材料が所定温度に到達した時点から所定時間が経過していない場合(ステップS5;No)、所定期間が経過するまで、所定圧力での材料への加圧及び所定温度での材料への加熱を継続する。

【0058】
次に、ステップS6で冷却された材料を製造装置100から取り外し(ステップS7)、材料の反射面への光学研磨を行うことで(ステップS8)、接合体10の製造が終了する。以上が、製造装置100を用いた接合体10の製造工程の流れである。

【0059】
材料同士を接合する方法としては、熱拡散接合法や常温接合法も知られており、これらの手法を接合体10の製造工程に適用することも考えられる。しかし、熱拡散接合法では、電気炉等を用いて材料を加熱するため、長時間の高温熱処理が必要となり、接合界面での原子の拡散浸透長を約10μm以下とすることは困難である。また、熱拡散接合法では、高温時において材料を加圧するクランプに熱膨張が発生するため、材料に実際に印加される圧力の制御が困難である。さらに、熱拡散接合法では、高温時において材料自体にも熱膨張が発生するため、熱膨張係数の異なる異種材料同士の接合が困難である。

【0060】
常温接合法では、界面同士の接合のために極めて高い面精度が要求される。より詳細に説明すると、透過波面精度の測定に使用されるレーザ干渉計から放射されるレーザ光の波長をλとした場合、材料に要求される透過波面精度は、約λ/8以下であることが要求される。広い面積を有する材料を高い面精度で形成することは困難であるため、常温接合法では、接合体の大型化(例えば、約100mm以上)は困難である。また、常温接合法では、材料を加熱しないため、接合界面での拡散侵入長を約1.0nm以上とすることは困難である。さらに、常温接合法では、高い真空度が要求されるため、製造コストが高い。

【0061】
他方、実施の形態1に係る製造方法では、パルス電流を用いて短時間で材料に加熱処理を施すことが可能であるため、材料同士を短時間で簡単に接合できる。また、実施の形態1に係る製造方法では、材料の加熱のためにパルス電流を用いているため、パンチ120及びダイス130に熱膨張が発生せず、高温時でも材料に印加される圧力を正確に制御できる。

【0062】
さらに、実施の形態1に係る製造方法では、所定圧力、所定温度及び所定時間を調整することで、材料の接合界面における原子の拡散侵入長を所望の範囲内(例えば、約1.0nm~約10μm)に制御できると共に、加熱処理中の多結晶における粒成長等の組織変化を抑制できる。しかも、実施の形態1に係る製造方法では、接合界面の透過波面精度が約λ以下であっても材料同士を接合できるため、接合体10の大型化(例えば、面積が約100mm以上)を実現できると共に、高い真空度が要求されないため、製造コストも抑制できる。

【0063】
(実施の形態2)
図5を参照して、本発明の実施の形態2に係る接合体10及びレーザ発振器1の構成を説明する。実施の形態2に係る接合体10は、光学材料11(第1の材料)に過飽和吸収体13(第2の材料)を接合している点で、実施の形態1に係る接合体10と異なっている。

【0064】
接合体10は、レーザ媒質である光学材料11と、光学材料11の一方の面に接合された過飽和吸収体13と、を備える。過飽和吸収体13は、強度が低い入射光に対して吸収体として作用し、強度が高い入射光に対して吸収体としての能力が飽和することで透明体として作用する。過飽和吸収体13は、例えば、CrをドープさせたYAG(Cr:YAG)等で形成されている。

【0065】
レーザ発振器1は、接合体10の光学材料11側に配置され、レーザ光を全反射する反射鏡21と、接合体10を挟んで反射鏡21と反対側に配置され、レーザ光を一部反射する出力鏡22と、を備える。反射鏡21及び出力鏡22は、接合体10で誘導放出されたレーザ光を共振させる共振器20を構成する。

【0066】
過飽和吸収体13に光パルスを照射させた場合、強度の強いパルスの中心部分は、過飽和吸収体13を通過するのに対し、強度の弱いパルスの裾野部分は、過飽和吸収体13で吸収される。このため、レーザ発振器1では、レーザ光のパルスの幅(時間幅)が短くなり、例えば、ピコ秒~ナノ秒幅の光パルスが放出される。

【0067】
以上説明したように、実施の形態2に係るレーザ発振器1は、光学材料11に接合された過飽和吸収体13を備える。このため、フレネル損失を抑制して十分な光学品質を得ることができると共に、レーザ光の短パルス化を実現できる。

【0068】
(実施の形態3)
図6を参照して、本発明の実施の形態3に係る接合体10及びレーザ発振器1の構成を説明する。実施の形態3に係る接合体10は、光学材料11(第1の材料)の外周を取り囲むように自然放出光吸収体14(第2の材料)を接合している点で、実施の形態1、2に係る接合体10と異なっている。

【0069】
接合体10は、レーザ媒質である光学材料11と、光学材料11の周囲に接合され、レーザ媒質からの光を吸収する自然放出光吸収体14と、を備える。自然放出光吸収体14は、例えば、Sm:YAG、Cr:YAG等で形成されている。

【0070】
光学材料11に励起用エネルギーを供給した場合、自然放射増幅光(Amplified Spontaneous Emission:ASE)が発生することがある。ASEは、レーザ媒質内で生じた自然放出光がレーザ媒質内を伝播することで発生した光である。さらに励起用エネルギーを供給した場合、ASEがレーザ光の発振方向以外の方向に共振(寄生発振)を引き起こすことがある。このASEや寄生発振が生じた場合、光の増幅に使われるエネルギーが無駄に消費されるため、レーザ発振器1のレーザ出力が低下する。

【0071】
実施の形態3に係る接合体10は、光学材料11の外周を囲むように自然放出光吸収体14が接合されているため、自然放出光吸収体14により自然放出光が吸収され、結果としてASEや寄生発振が抑制される。また、自然放出光吸収体14は、それ自体が発熱しない材料であるため、光学材料11で発生した熱を吸収して、外部に排出できる。

【0072】
以上説明したように、実施の形態3に係るレーザ発振器1は、光学材料11の外周を取り囲むようにして接合する自然放出光吸収体14を備える。このため、ASEが発生して光学材料11から自然放出光吸収体14へ光が入射したとしても寄生発振を抑制できると共に、光学材料11を冷却できる。その結果として、レーザ発振器1におけるレーザ出力の低下を抑制できる。

【0073】
(実施の形態4)
図7を参照して、本発明の実施の形態4に係る接合体10及びレーザ増幅器2の構成を説明する。レーザ増幅器2は、外部から入射したレーザ光をレーザ媒質で増幅して外部に放射する装置である。レーザ増幅器2は、実施の形態1~3に係るレーザ発振器1とは異なり共振器20を備えていない。

【0074】
レーザ増幅器2は、接合体10と、励起用光源30と、被増幅光源40と、を備える。励起用光源30は、接合体10を励起させるように接合体10に光を放射する。被増幅光源40は、接合体10で増幅されるように接合体10に光を導入する。被増幅光源40から放射された光は、励起用光源30により励起された接合体10の光学材料11で増幅され、接合体10から放射される。このとき、光学材料11の両側に冷却材料12が接合されているため、光学材料11の中心部で発生した熱を、冷却材料12を介してレーザ光の伝搬方向に効率的に排出できる。

【0075】
以上説明したように、レーザ増幅器2は、光学材料11と冷却材料12とが接合された接合体10を備えるため、励起用光源30により励起された光学材料11を効果的に冷却できる。このため、レーザ増幅器2を小型化した場合でも効果的に排熱できるため、レーザ増幅器2の小型化を実現できる。

【0076】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。

【0077】
(実施例1)
図8及び図9を参照して、接合体の接合の成否を評価するために実施した実験とその結果について説明する。

【0078】
本検証では、まず、1%Nd:YAG多結晶とサファイア単結晶とを同一の外径を有する円盤形状に加工した。1%Nd:YAG多結晶は、1%のネオジムをYAGにドープしたものである。次に、加工されたNd:YAG多結晶とサファイア単結晶とを重ね合わせ、外周部に接着剤を塗布することで接着体を得た。

【0079】
図8は、接合体の試料毎におけるPECS時の温度及び圧力の条件を示す。接着剤で一体化された接着体を図8の条件で処理して接合体(以下、Nd:YAG/サファイア接合体と称することがある。)の試料を作製した。次に、作製された試料毎に干渉縞の有無の確認と透過スペクトルを測定することで、試料毎の接合の成否を判定した。

【0080】
図9は、図8の条件で作製された試料における接合の成否を説明するためのグラフである。図9の縦軸は、PECS時の圧力(MPa)、横軸は、PECS時の温度(℃)である。図9の記号×は、試料1(1100℃、36MPa)を示し、記号△は、試料2(1200℃、12MPa)を示し、記号◎は、試料3(1100℃、62MPa)を示し、記号○は、試料4(1200℃、36MPa)を示す。試料1では、全体的に干渉縞が観察された。また、試料2では、その周縁部に干渉縞が観察されると共に、少し黒みを帯びていた。他方、試料3では、干渉縞が全く存在せず、最も良好な結果を示した。また、試料4では、干渉縞が全く存在しないものの、少し黒みを帯びていた。

【0081】
このため、圧力及び温度が図9の「接合良好」の領域にある場合、干渉縞のない接合状態の良好な接合体を得られると理解できる。図9の試料3を示す点と試料4を示す点をと含む直線の傾きは、(36-62)/(1200-1100)=-0.26であるため、干渉縞の存在しない接合体を得るための圧力P及び温度Tの条件は、温度T=1100℃~1200℃の範囲内で、以下の式(2)で表される。
P≧-0.26*(T-1100)+62 …(2)

【0082】
以上より、本検証では、PECS時の温度及び圧力を調整することで、干渉縞のない接合状態の良好な接合体を得られる接合体が得られることを確認できた。

【0083】
(実施例2)
次に、図10を参照して、Nd:YAG多結晶、接着体、接合体の各試料における透過スペクトルを測定する実験とその結果について説明する。なお、接着体は、サファイア単結晶及びNd:YAG多結晶を重ね合わせて外周面に接着剤を塗布したものであり、接合体は、実施例1で最も良好な結果が得られた1100℃、62MPaの条件で得られたNd:YAG/サファイア接合体である。

【0084】
透過スペクトルは、試料に入射される入射光の波長毎における試料の透過率を示したものであり、透過率は、特定の波長の入射光が試料を透過する割合である。試料に入射した入射光は、その一部が試料の表面や材料同士の接合界面等で反射する。このため、試料を透過する透過光は、試料に入射する入射光よりも強度が低下する。本検証では、入射光の波長毎に、各試料を透過した透過光の放射発散度を測定し、透過光及び入射光の放射発散度の比を算出することで、各試料の透過スペクトルを作成した。なお、放射発散度は、放射源から放射された単位面積あたりの放射束である。

【0085】
図10は、Nd:YAG多結晶、接着体、接合体における透過スペクトルを示すグラフである。図10の縦軸は、透過率(%)であり、横軸は、入射光の波長(nm)である。また、図10の実線は、実際に測定された透過率を示し、点線は、透過率の理論値を示す。図10に示すように、接合体の透過率は、全ての波長域において接着体よりも約13%高い値であると共に、Nd:YAG多結晶の透過率よりも高い値であった。接合体の透過率が接着体及びNd:YAG多結晶の透過率よりも高いのは、サファイア単結晶とNd:YAG多結晶とが接合されることで、フレネル損失が抑制されたためである。

【0086】
例えば、1064nmの波長を照射した場合、接合体の透過率(実験値)は、84.1%であるのに対し、接着体の透過率(実験値)は、71.6%であり、Nd:YAG多結晶の透過率(実験値)は、83.9%であった。接合体の透過率(理論値)は、84.7%であり、接着体の透過率(理論値)は、71.8%であり、Nd:YAG多結晶の透過率(理論値)は、83.9%であることから、透過スペクトルに関する実験結果が妥当であったことを確認できる。

【0087】
以上より、本検証では、PECSにより作製された接合体は、PECSを施す前の接着体に比べて透過率が高く、光学品質が良好であることを確認できた。

【0088】
(実施例3)
次に、図11及び図12を参照して、接合体の内部組織を観察するために実施した実験とその結果について説明する。本検証では、1100℃、62MPaの条件で作製されたNd:YAG/サファイア接合体の接合界面を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)で撮影し、SEM画像の接合界面を観察した。また、蛍光X線分析装置を用いて蛍光X線分析を実行することで、Nd:YAG/サファイア接合体の元素分析を行った。

【0089】
図11は、接合体の接合界面を含むSEM画像を示す図である。図11の左側は、Nd:YAG多結晶、右側は、サファイア単結晶である。図11に示すように、サファイア単結晶及びNd:YAG多結晶の接合界面には隙間がなく、ミクロレベルでも両者が良好に接合していることが確認できた。

【0090】
図12は、接合体における元素分析の結果を示すグラフである。図12の縦軸は、特性X線の強度(任意単位)であり、横軸は、Nd:YAG多結晶の表面からの距離(nm)である。図12の左側は、Nd:YAGの領域であり、中心部は、Nd:YAG及びサファイアの界面の領域であり、右側は、サファイア単結晶の領域である。図12では、イットリウム(Y)に関する特性X線の強度を示す実線が、界面領域で左上から右下に向かって傾斜している様子が見て取れる。このことは、Nd:YAG多結晶に含まれるイットリウムがサファイア単結晶内に拡散するように侵入したことを示している。

【0091】
以上より、本検証では、PECSにより得られた接合体の接合界面において、Nd:YAG多結晶からサファイア単結晶へイットリウムの拡散及び侵入が発生していると共に、サファイア単結晶とNd:YAG多結晶とが接合界面で隙間を有することなく良好に接合していることを確認できた。

【0092】
(実施例4)
次に、図13及び図14を参照して、Nd:YAG多結晶、接着体、接合体の各試料を用いて実施したレーザ発振実験とその結果について説明する。接着体及び接合体は、実施例2の場合と同様である。本検証では、各試料を組み込んだレーザ発振の実験系を動作させ、それぞれの場合のレーザ出力を測定した。

【0093】
図13は、接合体を組み込んだ場合のレーザ発振の実験系の一例を示す。実験系は、励起用半導体レーザ(LD)と、光ファイバと、レンズ系と、Nd:YAG/サファイア接合体と、ダイクロイックミラー(DM)と、出力鏡(OC)と、サーマルセンサと、を備える。LDは、波長λが808nmであってレーザ出力が18Wの連続光(CW)を放射する。光ファイバは、直径が約100μmであり、LDからのレーザ光をレンズ系に向けて伝送する。レンズ系は、光ファイバから供給されたレーザ光をNd:YAGに向けて集束させる。サーマルセンサは、OCから放射されたレーザ光を受光してレーザ出力を測定する。

【0094】
図14は、レーザ発振の実験系の入出力特性を示すグラフである。図14の縦軸は、実験系から出力されるレーザ出力(W)であり、横軸は、LDに印加される電流(A)である。図14の記号○は、Nd:YAG多結晶を用いた場合の測定値を示し、記号△は、接着体を用いた場合の測定値を示し、記号□は、接合体を用いた場合の測定値を示す。Nd:YAG多結晶をレーザ発振の実験系に組み込んだ場合のレーザ出力は、3.56Wであるのに対し、接合体をレーザ発振の実験系に組み込んだ場合のレーザ出力は、4.62Wであった。接合体をレーザ発振の実験系に組み込むことで、Nd:YAG多結晶の場合に比べて約30%レーザ出力を高めることができた。

【0095】
また、Nd:YAG多結晶を用いた場合の最大励起電流は、3.6Aであるのに対し、接合体を用いた場合の最大励起電流は、4.0Aであった。また、接着体を用いた場合の最大励起電流も4.0Aであった。このことは、接合体及び接着体が有するサファイアによる伝導冷却の効果により、最大励起電流が増大したことを示している。また、レーザ発振系に接合体を用いた場合、最大励起電流が増大したことに伴いレーザ出力も増大したことが理解できる。

【0096】
以上より、本検証では、Nd:YAG多結晶/サファイア単結晶の接合体をレーザ発振器に組み込むことで、励起用光源へ印加可能な最大励起電流を増大させ、結果としてレーザ出力を増大させることができることを確認できた。

【0097】
(実施例5)
次に、図15を参照して、Nd:YAG/サファイア接合体の接合界面におけるイットリウム元素の拡散侵入長の下限を把握するための実験とその結果について説明する。本検証では、実施例3と同一の条件で作製されたNd:YAG/サファイア接合体の接合界面に対して電子顕微鏡で電子ビームを照射し、イットリウム元素から発生する蛍光X線を計測することで、イットリウム元素の一次元濃度分布を取得した。その後、イットリウム元素の一次元濃度分布に基づいて、イットリウム元素の拡散侵入長を算出した。

【0098】
図15は、電子顕微鏡観察により取得されたイットリウム元素の一次元濃度分布を示すグラフである。図15の縦軸は、イットリウム元素の濃度(任意単位)であり、横軸は、Nd:YAGのうち接合の影響を受けていない所定の位置からの距離(nm)である。イットリウム元素の濃度は、Nd:YAGのうち接合の影響を受けていない部分で1となるように規格化されている。縦方向の点線で区切られた左側の部分は、Nd:YAGの領域であり、右側の部分は、サファイア単結晶の領域である。

【0099】
図15の実線は、イットリウム元素の一次元濃度分布を示し、波線は、実線で示されるイットリウム元素の一次元濃度分布を式(1)でフィッティングすることで得られたものである。図15の場合、イットリウム元素の濃度Cが規格化されているため、C=1である。拡散侵入長は、例えば、式(1)の√Dtで定義されるため、図15の場合、拡散侵入長√Dtは、1.6nmである。

【0100】
以上から、Nd:YAG/サファイア接合体におけるイットリウム元素の拡散侵入長は、概ね1.0nm以上であることが理解できる。なお、式(1)を用いた拡散侵入長の算出は、Nd:YAG/サファイア接合体の場合に限られず、他の接合体の拡散侵入長を算出する場合にも適用可能である。

【0101】
本発明は上記実施の形態に限られず、以下に述べる変形も可能である。

【0102】
(変形例)
上記実施の形態では、異なる種類の材料(異種材料)を接合する場合を例に説明してきたが、本発明はこれに限られない。同種材料同士を接合して接合体10を構成してもよい。同種材料は、例えば、YAGに対するNd:YAGのように、基本となる材料に活性元素をドープしたものを含む。

【0103】
上記実施の形態では、光学材料11を一対の冷却材料12で挟み込んで構成していたが、本発明はこれに限られない。例えば、光学材料11の一方の面に冷却材料12を接合してもよく、光学材料11の外周面に冷却材料12を接合してもよい。また、光学材料11の前面に冷却材料12を接合してもよい。

【0104】
上記実施の形態では、光学材料11及び冷却材料12が同一の外径を有する円盤形状であったが、本発明はこれに限られない。光学材料11及び冷却材料12は、異なる外径を有する円盤形状の部材であってもよい。また、光学材料11及び冷却材料12は、例えば、矩形状又は多角形の板状部材であってもよい。さらに、光学材料11及び冷却材料12は、互いに異なる形状であってもよく、例えば、図16に示すように、細長い円柱形状を有する複数の光学材料11を一対の冷却材料12で挟み込むように接合してもよい。

【0105】
上記実施の形態では、光学材料11が多結晶で形成され、冷却材料12が単結晶で形成されていたが、本発明はこれに限られない。光学材料11及び冷却材料12は、光を透過可能な材料であれば、単結晶、多結晶、ガラス体のいずれであってもよい。例えば、冷却材料12を窒化アルミニウム等の多結晶で形成してもよい。

【0106】
上記実施の形態では、接合体10は、円柱形状に形成されていたが、本発明はこれに限られない。例えば、接合体10は端面がブリュースター角になるように切断加工されていてもよい。

【0107】
上記実施の形態では、レーザ発振器1の共振器20が反射鏡21及び出力鏡22を備え、レーザ発振器1及びレーザ増幅器2の励起用光源30が側面励起を引き起こすように構成されていたが、本発明はこれに限られない。例えば、レーザ発振器1の接合体10の両端面にAR(Anti-Reflection)コート又はHR(High-Reflection)コートを施し、接合体10内で共振器を構成してもよい。また、レーザ発振器1及びレーザ増幅器2の励起用光源30が端面励起を引き起こすように配置されてもよい。

【0108】
上記実施の形態では、光学材料11及び冷却材料12を組み合わせてから、製造装置100に装着していたが、本発明はこれに限られない。例えば、光学材料11及び冷却材料12を事前に組み合わせることなく、製造装置100の所定の位置に順番に重ねて装着してもよい。

【0109】
上記実施の形態では、所定時間経過後に、光学材料11及び冷却材料12を徐々に減圧及び降温させていたが、本発明はこれに限られない。例えば、所定時間経過後に、光学材料11及び冷却材料12への加圧及び加熱を停止させてもよい。この場合、自然空冷によって材料を冷却してもよく、空気を吹き付けることで材料を冷却してもよい。

【0110】
上記実施の形態では、光学材料11はレーザ媒質であったが、本発明はこれに限られない。例えば、光学材料11は磁気光学材料であってもよい。磁気光学材料は、例えば、光アイソレータやファラデー回転子に利用するために、ファラデー効果により偏光面を回転させるものであってもよい。また、磁気光学材料は、偏極子ガラス等に利用するために、磁気光学カー効果により反射光を楕円偏光させるものであってもよい。

【0111】
また、光学材料11は、レーザ発振器から放射されたレーザ光の色調を変化させる蛍光体であってもよい。蛍光体は、外部からの光のエネルギーを吸収して励起状態となった後、基底状態に戻る過程でエネルギーの異なる光を放出する。蛍光体は、活性元素をドープしたものであってもよい。蛍光体は、LED(Light Emitting Diode)ランプの色調を調整するために用いられてもよい。

【0112】
上記実施の形態では、製造装置100を真空中で動作させていたが、本発明はこれに限られない。例えば、製造装置100を、アルゴン、窒素等の不活性ガスの雰囲気中で動作させてもよい。

【0113】
なお、上記実施の形態3では、自然放出光吸収体14を用いていたが、本発明はこれに限られない。例えば、寄生発振を抑制するために、光学材料11の周囲に発振光を散乱する散乱体を接合してもよい。

【0114】
上記実施の形態においては、接合体10をレーザ発振器1及びレーザ増幅器2に適用する場合を例に説明してきたが、本発明はこれに限られない。例えば、接合体10をレーザ増幅器、光アイソレータ、ファラデー回転子等に適用してもよい。

【0115】
上記実施の形態は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではなく、請求の範囲に記載した発明の趣旨を逸脱しない範囲でさまざまな実施の形態が可能である。各実施の形態や変形例で記載した構成要素は自由に組み合わせることが可能である。また、請求の範囲に記載した発明と均等な発明も本発明に含まれる。

【0116】
本出願は、2018年4月25日に出願された日本国特許出願2018-83878号に基づくものであり、その明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書を含むものである。上記日本国特許出願における開示は、その全体が本明細書中に参照として含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の接合体、レーザ発振器、レーザ増幅器及び接合体の製造方法は、光を透過可能な材料同士を組み合わせても十分な光学品質が得られるため、有用である。
【符号の説明】
【0118】
1 レーザ発振器
2 レーザ増幅器
10 接合体
11 光学材料
12 冷却材料
13 過飽和吸収体
14 自然放出光吸収体
20 共振器
21 反射鏡
22 出力鏡
30 励起用光源
40 被増幅光源
100 製造装置
110 スペーサー
120 パンチ
130 ダイス
140 パルス電流源

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
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【図15】
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【図16】
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