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明細書 :土壌中有害元素由来判別法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第6833221号 (P6833221)
登録日 令和3年2月5日(2021.2.5)
発行日 令和3年2月24日(2021.2.24)
発明の名称または考案の名称 土壌中有害元素由来判別法
国際特許分類 G01N  33/24        (2006.01)
B09C   1/00        (2006.01)
FI G01N 33/24 B
B09C 1/00
請求項の数または発明の数 8
全頁数 12
出願番号 特願2019-178143 (P2019-178143)
出願日 令和元年9月28日(2019.9.28)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 公開のタイトル「土壌中の有害物質の由来を判別する新手法 1.国立環境研究所公開シンポジウム2019「変わりゆく環境と私たちの健康」(1)令和元年6月14日(北九州会場)で発表(2)令和元年6月21日(東京会場)で発表 2.国立環境研究所公開シンポジウム2019要旨集第13頁 令和元年6月14日発行で発表 3.http://nies.go.jp/event/sympo/2019/pdf/p.06.pdf 令和元年7月11日掲載
特許法第30条第1項適用 令和元年5月27日の平成30年度環境研究総合推進費成果報告会(5-1606)のonline公開における出願人の意に反した発表
審査請求日 令和2年7月16日(2020.7.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501273886
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立環境研究所
発明者または考案者 【氏名】上島 雅人
【氏名】肴倉 宏史
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100093816、【弁理士】、【氏名又は名称】中川 邦雄
審査官 【審査官】大瀧 真理
参考文献・文献 特開2016-218016(JP,A)
特開2016-061768(JP,A)
特開2013-050427(JP,A)
特開2005-249584(JP,A)
機器分析と溶出特性化試験を組合せた自然・人為由来汚染土壌の判定法の開発_成果報告会,平成30年度_環境研究総合推進費成果報告会(5-1606),2019年 5月27日,URL,https://www.erca.go.jp/suishinhi/seika/pdf/seika_5_06/5-1606.pdf
板橋智彦,他,自然由来汚染土壌に含まれるヒ素の化学形態の解明,第12回環境地盤工学シンポジウム 発表論文集,2017年,pp.357-362
新家淳治,他,土壌中重金属の自然由来または人為由来の判別に関する研究,全国環境研会誌,2014年,Vol.39, No.1,pp.39-48
Andre Desaules,Critical evaluation of soil contamination assessment methods for trace metals,Science of the Total Environment,2012年,Vol.426,pp.120-131
丸茂克美,土壌・地質汚染問題に対する資源地質の役割,資源地質,2003年,Vol.53, No.2,pp.113-123
調査した分野 G01N 31/00
G01N 33/20
G01N 33/24
B09C 1/00


要約 【課題】本発明は、土壌中の重金属などの有害元素が、自然由来か人為由来を含むかを判別する、土壌中有害元素由来判別法に関する。また、その由来判定に基づき、有害元素を含む土壌が自然由来汚染土か、人為由来汚染土かを区別する方法を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するため、土壌に含まれる有害元素が、自然由来か人為由来か判別する、土壌中有害元素由来判別法であって、
同一の前記土壌における、
酸化相中の第一元素と第二元素の濃度比/還元相中の第一元素と第二元素の濃度比
で求められるEF値を前記土壌に含まれる有害元素の由来判別の指標として利用することを特徴とする
土壌中有害元素由来判別法の構成とした。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
土壌に含まれる有害元素が、自然由来か人為由来か判別する、土壌中有害元素由来判別法であって、
前記土壌を、
還元液に反応させたうえで濾過した第一濾液を採取し、
濾過残渣を酸化したうえで、再び還元液に反応させたうえで濾過した第二濾液を採取し、
前記第一濾液中の第一元素と第二元素の濃度比A’を求め、
前記第二濾液中の第一元素と第二元素の濃度比B’を求め
A’/B’で求められるEF値を前記土壌に含まれる有害元素の由来判別の指標として利用することを特徴とする土壌中有害元素由来判別法。
【請求項2】
前記第一元素が有害元素で、前記第二元素が基準元素であることを特徴とする請求項1に記載の土壌中有害元素由来判別法。
【請求項3】
前記土壌が、工事残土であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の土壌中有害元素由来判別法。
【請求項4】
前記土壌が、農業用土であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の土壌中有害元素由来判別法。
【請求項5】
土壌に含まれる有害元素が、自然由来か判定する自然由来有害元素判別法であって、
前記土壌を、
還元液に反応させたうえで濾過した第一濾液を採取し、
濾過残渣を酸化したうえで、再び還元液に反応させたうえで濾過した第二濾液を採取し、
前記第一濾液中の第一元素と第二元素の濃度比A’を求め、
前記第二濾液中の第一元素と第二元素の濃度比B’を求め、
A’/B’で求められるEF値を前記土壌に含まれる有害元素の由来判別の指標とし、
前記第一元素及び前記第二元素によって定まる値以下を自然由来有害元素と判定することを特徴とする自然由来有害元素判別法。
【請求項6】
請求項に記載の自然由来有害元素判別法によって、自然由来有害元素を含むと判定された土壌は、自然由来汚染土とすることを特徴とする自然由来汚染土の区別方法。
【請求項7】
土壌に含まれる有害元素が、人為由来か判定する人為由来有害元素判別法であって、
前記土壌を、
還元液に反応させたうえで濾過した第一濾液を採取し、
濾過残渣を酸化したうえで、再び還元液に反応させたうえで濾過した第二濾液を採取し、
前記第一濾液中の第一元素と第二元素の濃度比A’を求め、
前記第二濾液中の第一元素と第二元素の濃度比B’を求め、
A’/B’で求められるEF値を前記土壌に含まれる有害元素の由来判別の指標とし、
前記第一元素及び前記第二元素によって定まる値以上を人為由来有害元素と判定することを特徴とする人為由来有害元素判別法。
【請求項8】
請求項に記載の人為由来有害元素判別法によって、人為由来有害元素を含むと判定された土壌は、人為由来汚染土とすることを特徴とする人為由来汚染土の区別方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌中の重金属などの有害元素が、自然由来か人為由来を含むかを判別する、土壌中有害元素由来判別法に関する。また、その由来判定に基づき、有害元素を含む土壌が自然由来汚染土か、人為由来汚染土かを区別する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自然地層には、重金属などの有害元素が多かれ少なかれ必ず含まれる。トンネル掘削や、地下開発の大規模工事等に伴って、自然由来の有害元素を含有した土壌(自然由来汚染土)が大量に発生する。
【0003】
自然由来汚染土の大量発生問題に対応することを目的として、日本国においては、平成29年5月に土壌汚染対策法(土対法)が改正され、自然由来汚染土の有効活用を推進することが制度化された(平成31年4月1日施行)。それによって、自然由来汚染土と、人為由来の有害元素を含有した土壌(人為由来汚染土)を区別して取り扱うことが今まで以上に重要になってくる。
【0004】
土壌中の有害元素が、自然由来か人為由来かの判別があいまいなため、自然由来汚染土も人為由来汚染土と同様に、汚染土壌浄化施設での処理や管理型処分場への搬出という過剰な処理が行われている。また、人為由来汚染土を自然由来汚染土と誤って判定し利用されてしまう危険性もある。このように誤った土壌の区別がなされることによって、汚染土壌によるリスクの適切な回避や、適切な自然由来汚染土の利用や処理が行われない可能性が残されることは大きな問題である。
【0005】
他方、非特許文献1に示すように「土壌中重金属の自然または人為由来の判別に関する基礎的検討」が成されている。しかしながら、非特許文献1の報告では、各元素の(1N HCl抽出による量)/(加熱・加圧 濃硝酸分解による量)の値をプロットし、折れ線グラフの形を得て、その形から逸脱した元素が人為由来ではないかと疑われる程度の示唆であり、どのくらい逸脱すると人為由来なのかは曖昧である。
【0006】
実際、非特許文献1の最終頁「まとめ」の欄には、「・Ni,Cu,ZnおよびAsでは判別能力の多少の向上が見込まれたが,CdとPbについては,濃硝酸・加圧加熱分解法を用いても判別のための能力向上は期待できなかった. 今後,さらに検討を進め,CdとPbについて,より確度の高い判別方法を開発したい.」との記載があり、確立していないことが明示されている。他も研究も含め、いままでのところ、土壌中の有害元素の由来判別のための定まった方法は知られていない。
【0007】
自然由来汚染土と人為由来汚染土を区別できれば、自然由来の重金属などの有害元素が含まれる工事残土の有効活用が可能となり、自然由来汚染土の処理施設への搬入、処理によるコストを大幅に削減することができるようになる。
【先行技術文献】
【0008】

【非特許文献1】新家淳治,片山貴幸,巽正志,秋永克三(2012)「土壌中重金属の自然または人為由来の判別に関する基礎的検討」,三重保環研年報第14号(通巻第57号),61-66頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、土壌中の重金属などの有害元素が、自然由来か人為由来を含むかを判別する、土壌中有害元素由来判別法に関する。また、その由来判定に基づき、有害元素を含む土壌が自然由来汚染土か、人為由来汚染土かを区別する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、

土壌に含まれる有害元素が、自然由来か人為由来か判別する、土壌中有害元素由来判別法であって、
前記土壌を、
還元液に反応させたうえで濾過した第一濾液を採取し、
濾過残渣を酸化したうえで、再び還元液に反応させたうえで濾過した第二濾液を採取し、
前記第一濾液中の第一元素と第二元素の濃度比A’を求め、
前記第二濾液中の第一元素と第二元素の濃度比B’を求め
A’/B’で求められるEF値を前記土壌に含まれる有害元素の由来判別の指標として利用することを特徴とする土壌中有害元素由来判別法。

前記第一元素が有害元素で、前記第二元素が基準元素であることを特徴とする()に記載の土壌中有害元素由来判別法。

前記土壌が、工事残土であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の土壌中有害元素由来判別法。

前記土壌が、農業用土であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の土壌中有害元素由来判別法。

土壌に含まれる有害元素が、自然由来か判定する自然由来有害元素判別法であって、
前記土壌を、
還元液に反応させたうえで濾過した第一濾液を採取し、
濾過残渣を酸化したうえで、再び還元液に反応させたうえで濾過した第二濾液を採取し、
前記第一濾液中の第一元素と第二元素の濃度比A’を求め、
前記第二濾液中の第一元素と第二元素の濃度比B’を求め、
A’/B’で求められるEF値を前記土壌に含まれる有害元素の由来判別の指標とし、
前記第一元素及び前記第二元素によって定まる値以下を自然由来有害元素と判定することを特徴とする自然由来有害元素判別法。

)に記載の自然由来有害元素判別法によって、自然由来有害元素を含むと判定された土壌は、自然由来汚染土とすることを特徴とする自然由来汚染土の区別方法。

土壌に含まれる有害元素が、人為由来か判定する人為由来有害元素判別法であって、
前記土壌を、
還元液に反応させたうえで濾過した第一濾液を採取し、
濾過残渣を酸化したうえで、再び還元液に反応させたうえで濾過した第二濾液を採取し、
前記第一濾液中の第一元素と第二元素の濃度比A’を求め、
前記第二濾液中の第一元素と第二元素の濃度比B’を求め、
A’/B’で求められるEF値を前記土壌に含まれる有害元素の由来判別の指標とし、
前記第一元素及び前記第二元素によって定まる値以上を人為由来有害元素と判定することを特徴とする人為由来有害元素判別法。

)に記載の人為由来有害元素判別法によって、人為由来有害元素を含むと判定された土壌は、人為由来汚染土とすることを特徴とする人為由来汚染土の区別方法。
の構成とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上記構成であるので、土壌中の重金属などの有害元素の由来を判別することができる。従って、有害元素を含有した土壌が、自然由来汚染土か人為由来汚染土かも区別することができる。そして、閾値を境に、明瞭に両汚染土を誤判定することなく区別することができる。よって、本発明は、自然由来汚染土の有効活用に直接利用できる。
【0012】
さらに本発明は、その原理が同じであることから、農用地土壌汚染防止法における特定有害元素(カドミウム、銅およびヒ素)の汚染由来の特定(自然由来か、人為由来か)にもそのまま利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明である土壌中有害元素由来判別法の原理についての説明図である。(1)は土壌における有害元素の存在状況を示す模式図である。(2)有害元素を含む、土壌中の元素の抽出方法のポイントを説明する図である。(3)EF(Enrichment Factor)値の計算手法と、EF値に基づく有害元素の由来判定手法の概念図である。
【図2】本発明である土壌(土壌団粒)中有害元素由来判別法の元素抽出、由来判定の概要図である。(1)は自然由来の有害元素のみを含む土壌団粒からの元素抽出概念図及びEF値の比較図である。(2)は人為由来の有害元素も含む土壌団粒からの元素抽出概念図及びEF値の比較図である。(3)は(1)、(2)の図に用いた記号の説明図である。●有害元素(由来判定対象)<M>、〇基準元素<M>などである<EF値計算式における表記>。
【図3】本発明である土壌中有害元素由来判別法の元素抽出方法のフロー、試薬の詳細説明図である。
【図4】本発明である土壌中有害元素由来判別法を適用した判定結果である。第一元素:ヒ素(As)、第二元素:鉛(Pb)としたときの分析結果で、判定指標であるEF値=3であった。
【図5】本発明である土壌中有害元素由来判別法を適用した判定結果である。第一元素:ヒ素(As)、第二元素:チタン(Ti)としたときの分析結果で、判定指標であるEF値=2であった。
【図6】本発明である土壌中有害元素由来判別法を適用した判定結果である。第一元素:ヒ素(As)、第二元素:バリウム(Ba)としたときの分析結果で、判定指標であるEF値=1.8であった。
【図7】本発明である土壌中有害元素由来判別法を適用した判定結果である。第一元素:ヒ素(As)、第二元素:ストロンチウム(Sr)としたときの分析結果で、判定指標であるEF値=4であった。
【図8】本発明が、非海成土壌にも適用できるメカニズムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1(1)の1)に示すように、有害元素●(X)は、人為由来でなくとも、土壌表面付近の酸化相(風化相)及び土壌深層部の還元相(未風化相)、いずれにも一定量、同程度存在する。他方、図1(1)の2)に示すように、人為由来汚染土においては、有害元素●(X)の汚染は、酸化相に留まり、還元相における有害元素の存在量は、自然由来汚染土と同程度である。

【0015】
人為由来汚染土の還元相において自然由来汚染土と同程度に有害元素が存在すること、汚染があっても、有害元素は土壌表面への吸着、酸化相までの侵入に留まること、このような有害元素の挙動が、本発明において、有害元素の由来の判定を可能にする根幹である。

【0016】
基準元素〇は、有害元素に関係なく、自然由来汚染土、人為由来汚染土に共通して、同程度存在する。基準元素の選定基準は、「土壌の風化・変質によっても溶解度の変化が起こりにくい元素」、簡単にいうと「酸化しても溶出しない元素」である。
「酸化しても溶出しない元素」でない元素(A)を基準元素とした場合、風化(酸化)すると土壌から溶出するので、酸化相中に残存する元素(A)は少なくなる。土壌中の酸化相中の基準元素(A)が少なくなったものを還元抽出すると、EF値が相対的に高くなる。そうすると、その土壌は人為由来と誤判別されてしまう。

【0017】
図1(2)に示すように、本発明では、同一試料における、酸化相と、還元相から有害元素、基準元素を含む元素を抽出する、「同一試料を対象とした反復還元抽出方法」で、風化相における有害元素を還元相と比較することを特徴としている。そのため、異なる土壌からの抽出、比較を採用した場合におけるサンプル間誤差を考慮する必要がなく、高精度で有害元素の由来を判定することができる。

【0018】
図1(3)に示すように、有害元素由来判定には、酸化相と還元相から抽出した有害元素の濃度を比較する。具体的には、本件出願で新たに提案するEF(Enrichment Factor)値を用いる。

【0019】
EF値は、図1の(3)の式1の通り、土壌の還元相中の有害元素の濃度に対する、土壌の酸化相中の有害元素の濃度の比率である。

EF=土壌の酸化相中の有害元素の濃度/土壌の還元相中の有害元素の濃度・・・・式1

濃度は、重量比、モル比、いずれを採用しても、同じ結果となる。

【0020】
具体的には、例えば、実測で求めることができない式1の変形である以下の式2で測定することができる。

EF=(土壌の酸化相中の有害元素の濃度/土壌の酸化相中の基準元素の濃度)
/(土壌の還元相中の有害元素の濃度/土壌の還元相中の基準元素の濃度)・・式2
(ただし土壌中の基準元素の濃度は、酸化相中でも還元相中でも一様であることが条件)


【0021】
より、具体的には、
EF
={土壌中の酸化相中の第一元素と第二元素の濃度比(第一元素濃度/第二元素濃度)}
/{土壌中の還元相中の第一元素と第二元素の濃度比(第一元素濃度/第二元素濃度)}
・・・式3
によって、求めることができる。なお、土壌中における濃度の単位は、元素mg/全土壌kgである。

【0022】
実際の測定では、式4によって求めることができる。
EF={土壌の酸化相から抽出された濾液中の有害元素の濃度(mg/L)
/土壌の酸化相から抽出された濾液中の基準元素の濃度(mg/L)}
/{土壌の還元相から抽出された濾液中の有害元素の濃度(mg/L)
/土壌の酸化相から抽出された濾液中の基準元素の濃度(mg/L)}
・・・式4
(ただし土壌中の基準元素の濃度は、酸化相中でも還元相中でも一様であることが条件)

【0023】
そして、式2において、
(土壌の酸化相中の有害元素の濃度/土壌の酸化相中の基準元素の濃度)=A
(土壌の還元相中の有害元素の濃度/土壌の還元相中の基準元素の濃度)=B
とすると、
すなわち、EF値を求めるいずれの式でも、Aは分子で、Bは分母であり、
EF=A/Bとなり、
A≒B すなわち EF≒1であれば、抽出された有害元素は自然由来のみで、それを含む土壌は、自然由来汚染土と判定できる。
他方、式1において、 A>>B すなわち EF>>1であれば(1よりだいぶ大きければ)、抽出された有害元素は人為由来を含むもので、それを含む土壌は、人為由来汚染土と判定できる。

【0024】
図2に示すように、土壌中の有害元素の由来判別は、本発明で提唱する「反復還元抽出法」によって実現する。ここでは、沖積層や海成堆積物、特に沿岸部の堆積層、酸化の進行していない陸成堆積物由来の土壌粒子を対象としている。

【0025】
図2(1)に示すように、自然由来の有害元素のみを含む土壌団粒においては、いずれの箇所(風化相、未風化相)でも、有害元素●及び基準元素〇の存在比率はそれぞれ一定である。
その土壌を還元し元素を抽出する。そうすると酸化土壌粒子(風化相)から有害元素●、基準元素〇、Fe2+などが抽出される。
なお、この還元抽出における反応過程では、不溶性の鉄(III)イオンを可溶性の鉄(II)イオンに還元させるAOAH溶媒を用いている。これにより酸化鉄および水酸化鉄が溶解し、それらに吸着あるいは結合している元素が同時に遊離する。
つづいて、当該試料土壌を酸化した後、再度還元して元素を抽出する。そうすると当初の還元性鉱物からの有害元素●と、基準元素〇が抽出される。
それぞれの還元化で抽出された有害元素●の存在量(X)と、基準元素〇の存在量(M)の比率(EF値)を比較すると、採取した状態での酸化相中の有害元素●と基準元素〇の存在比率(X/M)oxと、採取した状態での還元相中の有害元素●と基準元素〇の存在比率(X/M)redを比較すると、同程度(≒1)のEF値である。
このような場合には、抽出された有害元素は自然由来のもののみで、それを含む土壌は自然由来汚染土と判定できる。

【0026】
他方、図2(2)に示すように、人為由来の有害元素を含む土壌団粒においては、有害元素●は土壌団粒表面/界面(酸化相)に局在する。他方、基準元素〇は、風化相、未風化相において、一定である。
その土壌を還元し元素を抽出する。そうすると酸化土壌粒子(風化相)から有害元素●、基準元素〇、Fe2+などが抽出される。
つづいて、当該試料土壌を酸化し後、再度還元して元素を抽出する。そうすると当初の還元性鉱物からの有害元素●と、基準元素〇が抽出される。
それぞれの還元化で抽出された有害元素●の濃度(X)と、基準元素〇の濃度(M)の比率(EF値)を比較すると、採取した状態での酸化相中の有害元素●と基準元素〇の濃度比率(X/M)oxと、採取した状態での還元相中の有害元素●と基準元素〇の濃度比率(X/M)redを比較すると、酸化相のEF値が、還元相のEF値より、極めて大きな値となる。
このような場合には、抽出された有害元素は人為由来のものを含み、それを含む土壌は人為由来汚染土と判定できる。

【0027】
図3は、本発明である土壌中有害元素由来判別法の元素抽出方法のフロー、試薬の詳細説明図である。

【0028】
土壌から各種元素を還元抽出する試薬としてはAOAH(シュウ酸緩衝液)が、土壌の還元を酸化する試薬としてはHが例示できる。

【0029】
AOAH(シュウ酸緩衝液)500mlは、図2に示すように、
シュウ酸アンモニウム 14.21g
シュウ酸 9.0 g
アスコルビン酸 8.81g
1M 塩酸 5 mL
蒸留水 495 mL
のように調整できる。

【0030】
AOAH還元抽出(1回目)は、100mL容のバイアル瓶に、土壌(ここでは粒径250μm以下)0.8gあるいは2.0gを入れ、AOAH40mLを加え、115℃、1時間加熱する。冷却後、懸濁液を50mL遠沈管に移し、3000rpm、10分管遠心分離処理を施し、濾過する。そして、濾液をICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析装置で多元素同時濃度測定する。その結果に基づき、試料土壌の酸化相中の有害元素、基準元素の濃度比率を求め、EF値を算出する。土壌粒径は、2mm以下でも正確に判定できた。土壌重量は、いずれであっても差はない。また、もちろん、他の重量を採用してもよい。

【0031】
次に、濾過残渣土壌を酸化させる。全体を酸化することで、当初の還元相から元素が抽出できる。具体的には、1回目のAOAH還元抽出残渣土壌を水ですすいだ後、その残渣に、2mLの10%(v/v)Hを加え、40℃で乾燥させる。

【0032】
その後、濾過残渣土壌の酸化物に対して、AOAH還元抽出(2回目)を行う。そのスケール、工程は、第1回目と同じである。その後、同様に、ICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析装置で多元素同時濃度測定する。その結果に基づき、試料土壌の還元相中の有害元素、基準元素の濃度比率(モル比)を求め、EF値を算出する。

【0033】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0034】
図4は、第一元素:ヒ素(As)、第二元素:鉛(Pb)としたときの分析結果である。土壌試料(●に対応する横軸に配置された記号(採取地は重要でないので説明を省略する))は、あらかじめ、破線より下の試料が人為汚染由来土で、破線より上の試料が自然由来汚染土であることが知られていた。異なる組成(海成、パイライト、陸成を含む)の土壌試料で試験している。分析手法は、図3の通りである。土壌試料、分析方法は、以下の実施例についても同じである。
【実施例1】
【0035】
分析の結果、第一元素:ヒ素(As)、第二元素:鉛(Pb)の場合の、判定指標であるEF値(縦軸)は、「3」とすることができる。EF値=3を境に、自然由来汚染土と、人為由来汚染土を誤判定なく区別できる。
【実施例2】
【0036】
図5は、第一元素:ヒ素(As)、第二元素:チタン(Ti)としたときの分析結果である。
【実施例2】
【0037】
分析の結果、第一元素:ヒ素(As)、第二元素:チタン(Ti)の場合の、判定指標であるEF値(縦軸)は、「2」とすることができる。EF値=2を境に、自然由来汚染土と、人為由来汚染土を誤判定なく区別できる。
【実施例3】
【0038】
図6は、第一元素:ヒ素(As)、第二元素:バリウム(Ba)としたときの分析結果である。
【実施例3】
【0039】
分析の結果、第一元素:ヒ素(As)、第二元素:バリウム(Ba)の場合の、判定指標であるEF値(縦軸)は、「1.8」とすることができる。EF値=1.8を境に、自然由来汚染土と、人為由来汚染土を概ね区別することできる。ボーダに位置するものがあることから安全性をとって、例えばEF値1.5より上を人為由来汚染土扱いとすれば、自然由来汚染土の一部だけが人為由来汚染土として扱われるにとどまるため、現状よりはるかに処理コストの低減、自然由来汚染土の有効利用は促進され、意義ある。
【実施例4】
【0040】
図7は、第一元素:ヒ素(As)、第二元素:ストロンチウム(Sr)としたときの分析結果である。
【実施例4】
【0041】
分析の結果、第一元素:ヒ素(As)、第二元素:ストロンチウム(Sr)の場合の、判定指標であるEF値(縦軸)は、「4」とすることができる。EF値=4を境に、自然由来汚染土と、人為由来汚染土を誤判定なく区別できる。
【実施例4】
【0042】
図8は、非海成土壌にも適用できるメカニズムの説明図である。(1)は海成土壌(パイライトなどを含有)における自然由来の有機元素のみを含む自然汚染土からの本発明の元素抽出法の概念図である。(2)は非海成土壌(輝石、黒雲母などを含有)における自然由来の有機元素のみを含む自然汚染土からの本発明の元素抽出法の概念図である。(3)は(1)、(2)の図に用いた記号の説明図である。●有害元素(由来判定対象)<M>、〇基準元素<M>などである<EF値計算式における表記>。(4)化学風化の説明図である。
【実施例4】
【0043】
図8から非海成自然由来汚染土では、パイライト以外の鉱物に有害元素が含まれていることが考えられる。そのような場合でもパイライトと同様、未風化の段階では有害元素も基準元素も元々還元鉱物に取り込まれていると考えられる。
海成自然由来汚染土が一部風化すると酸化鉱物になるが、元々それは還元鉱物だったので、この酸化鉱物中の有害元素(X)および基準元素(M)の比は、未風化の還元鉱物中のそれらの比と理論上同じであると考えられる。
したがって、非海成自然汚染土のようにパイライトが土壌中に存在しなくても、海成自然由来汚染土と同様に酸化相でも還元相でも両者の比(X/M)は一定であることがわかる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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