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明細書 :希土類錯体、放射線治療用光学イメージング剤、中性子線検出用シンチレーター及びカルボラン誘導体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 令和3年8月19日(2021.8.19)
発明の名称または考案の名称 希土類錯体、放射線治療用光学イメージング剤、中性子線検出用シンチレーター及びカルボラン誘導体
国際特許分類 C07F   5/02        (2006.01)
C07F  19/00        (2006.01)
C07F   9/547       (2006.01)
A61K  51/04        (2006.01)
C07D 471/04        (2006.01)
C07F   5/00        (2006.01)
FI C07F 5/02 CSPE
C07F 19/00
C07F 9/547
A61K 51/04 200
C07D 471/04 112T
C07F 5/00 D
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 23
出願番号 特願2020-527703 (P2020-527703)
国際出願番号 PCT/JP2019/025964
国際公開番号 WO2020/004656
国際出願日 令和元年6月28日(2019.6.28)
国際公開日 令和2年1月2日(2020.1.2)
優先権出願番号 2018122967
2019030678
優先日 平成30年6月28日(2018.6.28)
平成31年2月22日(2019.2.22)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , ST , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , KM , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DJ , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IR , IS , JO , JP , KE , KG , KH , KN , KP , KR , KW , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SA , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT
発明者または考案者 【氏名】長谷川 靖哉
【氏名】齋藤 康樹
【氏名】北川 裕一
【氏名】中西 貴之
【氏名】伏見 公志
出願人 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100124800、【弁理士】、【氏名又は名称】諏澤 勇司
【識別番号】100140578、【弁理士】、【氏名又は名称】沖田 英樹
審査請求 未請求
テーマコード 4C065
4C085
4H048
4H050
Fターム 4C065AA04
4C065AA19
4C065BB09
4C065CC09
4C065DD01
4C065EE02
4C065HH01
4C065JJ01
4C065KK01
4C065LL01
4C065PP01
4C085HH03
4C085HH11
4C085HH13
4C085KA08
4C085KA09
4C085KB12
4C085KB15
4C085KB54
4H048AA01
4H048AA03
4H048AB92
4H048VA20
4H048VA45
4H048VA77
4H048VB10
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB92
要約 1種以上の三価の希土類イオンと、該希土類イオンに配位している複数の配位子と、を有する希土類錯体が開示される。複数の配位子が、カルボラン基、及び該カルボラン基の炭素原子に結合し希土類イオンに配位可能な配位基を有する第一の配位子と、光増感作用を有する第二の配位子とを含む。
特許請求の範囲 【請求項1】
1種以上の三価の希土類イオンと、該希土類イオンに配位している複数の配位子と、を有し、
前記複数の配位子が、
カルボラン基、及び該カルボラン基の炭素原子に結合し前記希土類イオンに配位可能な配位基を有する第一の配位子と、
光増感作用を有する第二の配位子と、
を含む、
希土類錯体。
【請求項2】
前記配位基がカルボキシラート基である、請求項1に記載の希土類錯体。
【請求項3】
前記配位基がホスフィンオキシド基である、請求項1に記載の希土類錯体。
【請求項4】
前記第一の配位子が2個の前記希土類イオンに配位しており、
当該希土類錯体が、前記第一の配位子及び前記希土類イオンが交互に連結されることにより繰り返し構造を形成している、請求項1~3のいずれか一項に記載の希土類錯体。
【請求項5】
前記第二の配位子が、配位原子を含む複素芳香族基を有する複素芳香族化合物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の希土類錯体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の希土類錯体を含む、放射線治療用光学イメージング剤。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の希土類錯体を含む、中性子線検出用シンチレーター。
【請求項8】
下記式mpB10、opB10、mp10又はop10
【化1】
JP2020004656A1_000019t.gif
で表され、式中のAr、Ar、Ar及びArがそれぞれ独立に芳香族基を示す、カルボラン誘導体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類錯体、これを用いた放射線治療用光学イメージング剤及び中性子線検出用シンチレーター、並びにカルボラン誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
生体の画像診断のために用いられる造影剤に関して、MRI(核磁気共鳴イメージング)及び光学イメージングの両方の造影機能を有する二元機能造影剤が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
一方、炭素原子及びホウ素原子から構成されるクラスターであるカルボラン基を有するガドリウム錯体が、MRIの造影剤として使用できることが報告されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特表2006-511473号公報
【0005】

【非特許文献1】GUOAN HAN et al, Exp. Ther. Med.,9(5), 1561, 2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一側面は、放射線治療用のホウ素薬剤としての機能を有するとともに、光学イメージングにおいて強発光を発現する、新規な希土類錯体並びにこれを含む放射線治療用光学イメージング剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、1種以上の三価の希土類イオンと、該希土類イオンに配位している複数の配位子と、を有する希土類錯体に関する。複数の配位子が、カルボラン基、及び該カルボラン基の炭素原子に結合し希土類イオンに配位可能な配位基を有する第一の配位子と、光増感作用を有する第二の配位子とを含む。
【0008】
この希土類錯体は、カルボラン基による放射線治療用のホウ素薬剤としての機能を有するとともに、光増感作用を有する配位子を有する希土類イオン錯体の蛍光特性によって、光学イメージングにおいて強発光を発現することができる。この希土類錯体は、例えば、放射線治療において蛍光を利用したモニタリングを可能にする放射線治療用光学イメージング剤として有用である。更に、この希土類錯体は、中性子線を捕捉したカルボラン基が発生させる放射線によって発光するため、中性子線検出用シンチレーターとしても有用である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、放射線治療用のホウ素薬剤としての機能を有するとともに、光学イメージングにおいて強発光を発現する、新規な希土類錯体及びこれを含む放射線治療用光学イメージング剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】Eu(mcB10(CHOH)の発光・励起スペクトルである。
【図2】[Eu(mcB10(CHOH)phen]の発光・励起スペクトルである。
【図3】Eu(mcB10(CHOH)の発光の減衰曲線である。
【図4】[Eu(mcB10(CHOH)phen]の発光の減衰曲線である。
【図5】[Eu(hfa)dpomc]及びEu(hfa)(HO)の発光・励起スペクトルである。
【図6】[Eu(hfa)dpomc]及びEu(hfa)(HO)の発光減衰曲線である。
【図7】[Tb(hfa)dpomc]及びTb(hfa)(HO)の発光・励起スペクトルである。
【図8】[Tb(hfa)dpomc]及びTb(hfa)(HO)の発光減衰曲線である。
【図9】[Tb(hfa)dpomc]の発光減衰曲線である。
【図10】[Tb(hfa)dpbp]の発光減衰曲線である。
【図11】[Gd(hfa)(dpomc)]及び[Tb(hfa)dpomc]の発光減衰曲線である。
【図12】[Eu(hfa)(dpomc)]の熱重量分析の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。

【0012】
一実施形態に係る希土類錯体は、1種以上の三価の希土類イオンと、該希土類イオンに配位している複数の配位子と、を有する。希土類イオンに配位する複数の配位子は、カルボラン基を有する第一の配位子と、光増感作用を有する第二の配位子とを含む。

【0013】
第一の配位子が有するカルボラン基は、炭素原子とホウ素原子によって形成されたクラスターである。カルボラン基は、1個の炭素原子を含むカルボランから誘導される1価の基、又は、2個の炭素原子を含むo-カルボラン、m-カルボラン又はp-カルボランから誘導される一価の基であることができる。

【0014】
カルボラン基の炭素原子に、希土類イオンに配位可能な配位基が結合している。第1の配位子は、配位基を1個有していてもよいし、カルボラン基の2個の炭素原子にそれぞれ結合した2個の配位基を有していてもよい。配位基の例としては、カルボキシラート基(-COO)、及びホスフィンオキシド基(例えばジフェニルホスフィンオキシド基(-P(=O)(C))が挙げられる。

【0015】
カルボキシラート基を有する第一の配位子の例としては、下記式で表されるm-カルボラン-1-カルボキシラート(mcB10)、o-カルボラン-1-カルボキシラート(ocB10)、m-カルボラン-1,7-ジカルボキシラート(mc10)、及びo-カルボラン-1,2-ジカルボキシラート(oc10)が挙げられる。
【化1】
JP2020004656A1_000003t.gif

【0016】
ホスフィンオキシド基を有する第一の配位子の例としては、下記式mpB10、opB10、mp10又はop10
【化2】
JP2020004656A1_000004t.gif
で表されるカルボラン誘導体が挙げられる。これら式中のAr、Ar、Ar及びArがそれぞれ独立に芳香族基を示す。Ar、Ar、Ar及びArがフェニル基であってもよい。

【0017】
光増感作用を有する第二の配位子は、希土類イオンに対する光増感作用を有する化合物から、任意に選択できる。第二の配位子は、単座配位子又は二座配位子であってもよい。第二の配位子は、配位原子(例えば、窒素原子)を含む複素芳香族基を有する複素芳香族化合物であってもよい。第二の配位子として用いられ得る複素芳香族化合物の例としては、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
【化3】
JP2020004656A1_000005t.gif

【0018】
式(1)中、R、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~3のアルキル基、若しくは炭素数6~12のアリール基、又は、互いに連結してこれらが結合しているピリジン環とともに縮合環を形成している基を示す。アルキル基の炭素数は1~3、又は1であってもよい。アリール基の炭素数は6~12、又は6~10であってもよい。

【0019】
式(1)で表される化合物は、下記式(1a)で表されるフェナントロリン化合物であってもよい。
【化4】
JP2020004656A1_000006t.gif

【0020】
式(1a)中、R、R、R、R、R及びRは、式(1)と同様に定義される。R及びR10は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~3のアルキル基、又は炭素数6~12のアリール基を示す。アルキル基の炭素数は1~3、又は1であってもよい。アリール基の炭素数は6~12、又は6~10であってもよい。R、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10が水素原子であってもよい。

【0021】
第二の配位子の他の例としては、下記式(2)又は(3)で表される化合物が挙げられる。
【化5】
JP2020004656A1_000007t.gif

【0022】
式(2)中、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~15のアルキル基、炭素数1~5のハロゲン化アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を示す。アルキル基及びハロゲン化アルキル基の炭素数は1~5、又は1~3であってもよい。アルキル基は、ターシャリーブチル基であってもよい。ハロゲン化アルキル基のハロゲンは、例えば、フッ素であってもよい。アリール基又はヘテロアリール基の例としては、ナフチル基、及びチエニル基が挙げられる。特に、R11及びR13がトリフルオロメチル基等のハロゲン化アルキル基であってもよい。このとき、R12が水素原子であってもよい。
【化6】
JP2020004656A1_000008t.gif

【0023】
式(3)中、R31、R32、R33、R34及びR35は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又は炭素数1~5のハロゲン化アルキル基を示す。アルキル基及びハロゲン化アルキル基の炭素数は1~5、又は1~3であってもよい。ハロゲン化アルキル基のハロゲンは、例えばフッ素であってもよい。特に、R31、R32、R33、R34及びR35が水素原子であってもよい。

【0024】
本実施形態に係る希土類錯体は、第一の配位子及び第二の配位子に加えて、他の配位子を更に有していてもよい。例えば、メタノール等のアルコールが希土類イオンに配位していてもよい。

【0025】
三価の希土類イオンは特に限定されず、発光色等に応じて、適宜選択することができる。希土類イオンは、例えば、Eu(III)イオン、Tb(III)イオン、Gd(III)イオン、Sm(III)イオン、Yb(III)イオン、Nd(III)イオン、Er(III)イオン、Y(III)イオン、Dy(III)イオン、Ce(III)イオン、及びPr(III)イオンからなる群より選ばれる少なくとも一種であることができる。高い発光強度を得る観点から、希土類イオンは、Eu(III)イオン、Tb(III)イオン又はGd(III)イオンであってもよい。

【0026】
第一の配位子及び第二の配位子の数は、希土類錯体の配位構造が形成される限り、限られない。例えば、第一の配位子の数が希土類イオン1個あたり3個で、第二の配位子の数が希土類イオン1個あたり1個であってもよい。本実施形態に係る希土類錯体は、2個の希土類イオンを有する二核体であってもよい。二核体において、第一の配位子が2個の希土類イオンに配位することにより、2個の希土類イオンが橋かけされていてもよい。

【0027】
1個の第一の配位子が2個の希土類イオンに配位し、それにより、希土類錯体が、第一の配位子及び前記希土類イオンが交互に連結された繰り返し構造を形成していてもよい。この場合の第一の配位子は、m-カルボランから誘導される、2個のホスフィンオキシド基を有するカルボラン誘導体であってもよい。繰り返し構造は、例えば下記式(10)で表される。式(10)中のR11、R12及びR13は、式(2)中のR11、R12及びR13と同義であり、M(III)は希土類イオンを示す。nは繰り返し数を表す2以上の整数である。
【化7】
JP2020004656A1_000009t.gif

【0028】
本実施形態に係る希土類錯体は、通常の方法を組み合わせて合成することができる。例えば、第一の配位子及び第二の配位子としての化合物をそれぞれ準備し、これらを希土類化合物と反応させることにより、希土類錯体を合成することができる。

【0029】
一実施形態に係る放射線治療用光学イメージング剤は、以上説明した実施形態に係る希土類錯体を含む。このイメージング剤は、放射線治療用のホウ素薬剤としての機能を有すると同時に、蛍光を利用した光学イメージングの造影剤としても機能することができる。本実施形態に係る放射線治療用イメージング剤は、例えば、ホウ素中性子捕捉療法に用いられるホウ素薬剤としての応用が可能である。光学イメージングは、例えば、生物学的活性のレベルを推定するために利用することができる。

【0030】
一実施形態に係る中性子線検出用シンチレーターは、以上説明した実施形態に係る希土類錯体を含む。カルボラン基が中性子線を捕捉したときにα線等の放射線を発生させ、この放射線によって希土類錯体が発光する。この発光によって中性子線を検出することができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
<検討I>
I-1.合成
m-カルボラン-1-カルボン酸(mcB10)の合成
【化8】
JP2020004656A1_000010t.gif
【実施例】
【0033】
m-カルボラン(1.03g,7.14mmol)をアルゴン雰囲気下でジエチルエーテル(超脱水,50mL)に溶解させ、得られた反応溶液を-78℃に冷却した。次いで、n-ブチルリチウム(4.80mL,7.68mmol,1.6M/ヘキサン)を加え、反応溶液を2時間撹拌した。ドライアイスを昇華させて生成したCOガスを、シリカゲルに通すことで脱水した。脱水したCOガス(2.00g,45mmol)を反応溶液に1時間かけて通した。その後、反応溶液を更に1時間攪拌した。反応溶液からジエチルエーテルをエバポレーターで留去し、残渣を水に溶かし、得られた水溶液からヘキサンで生成物を2回抽出した。未反応のm-カルボランを除いてから、回収した水層にpHが2になるまで塩酸を加えた。次いで水層からヘキサンで生成物を4回抽出した。集められた有機層からヘキサンをエバポレーターで留去し、生成物(m-カルボラン-1-カルボン酸)の白色粉体を得た(収量:1.22g,収率:91%)。
IR: (ATR)2603(B=H), 1707(C=O) cm-1
1HNMR(CDCl3): δ 8.72(1H,C-H), 3.05(1H, C-H),3.70-1.20(10H, B10H10)ppm
13CNMR(CDCl3, 400MHz): δ167.58, 71.16, 54.92ppm
Elemental analysis: calculated(%) for C3B10H12O2:C,19.14, H, 6.43, found : C, 19.67, H, 6.43
【実施例】
【0034】
Eu(mcB10(CHOH)の合成
【化9】
JP2020004656A1_000011t.gif
【実施例】
【0035】
EuCl・6HO(0.892mmol)を水(5mL)に溶解させた。そこに、mcB10(336mg,1.79mmol)をメタノール(2mL)に溶解して調製した溶液を加えた。得られた反応溶液に、mcB10が完全に溶解するまでメタノールを加えた。次いで、反応溶液にアンモニア水を数滴加えると、錯形成反応が起こり、白色の沈殿物が生じた。反応溶液を更に1時間撹拌した後、沈殿物を吸引濾過により回収した。沈殿物を水、ヘキサンの順で洗浄することによりEuCl・6HO及びmcB10を除去して、生成物(Eu(mcB10(CHOH))の白色粉体を得た。
IR (KBr): 3400(O-H), 2605(B=H), 1618(C=O)cm-1
MS(ESI): m/z calculatedfor C11H41B30EuNaO8[M+Na]+=802.49 ; found = 802.43
【実施例】
【0036】
[Eu(mcB10(CHOH)phen]の合成
【化10】
JP2020004656A1_000012t.gif
【実施例】
【0037】
Eu(mcB10)(CHOH)(60.6mg,0.0808mmol)をメタノール(6mL)に溶解させ、そこに1,10-フェナントロリン(16.1mg,0.0812mmol)を加えた。得られた反応溶液を50℃で2時間、加熱還流させた。続いて、反応溶液からメタノールをエバポレーターで留去して、生成物([Eu(mcB10(CHOH)phen])の白色粉体を得た。
IR (KBr): 2600(B=H), 1635(C=O), 1375, 1420,1559,(C-N, C=C) cm-1
1H NMR(CDCl3): δ9.20 (2H,C-H), 7.42-8.60 (6H,C-H), 0.50-4.10 (30H, B-H, 2H, C-H) ppm
Elemental analysis: calculated(%) for Eu2N4O14C44B60H90:C,28.51, H, 4.91, N,3.02, found: C, 28.97, H, 4.93, N, 2.77
【実施例】
【0038】
I-2.評価
I-2-1.発光・励起スペクトル
Eu(mcB10(CHOH)
Eu(mcB10(CHOH)を分光分析用メタノールに溶解させて、濃度1×10—2Mの試料液を調製した。試料液を石英セルに入れて、発光・励起スペクトルを測定した。発光・励起スペクトルは、株式会社堀場製作所製の蛍光分光光度計Fluorolog-3を用いて、励起光394nm、蛍光波長610nmで測定した。
図1は、Eu(mcB10(CHOH)の発光・励起スペクトルである。発光スペクトルにおいて、Eu(III)イオンに由来するシャープな発光帯が578nm、592nm、611nm、650nm、及び700nmに観測された。これらの発光帯は、それぞれEu(III)イオンの、及び遷移に対応する。励起スペクトルにおいて、Eu(III)イオンの4f-4f遷移に対応する励起帯が観測された。これら観測結果は、近紫外(300~400nm)から可視光領域(400~700nm)の波長において、mcB10配位子(第一の配位子)からEu(III)イオンへのエネルギー移動が生じていないことを示唆する。
【実施例】
【0039】
[Eu(mcB10(CHOH)phen]
[Eu(mcB10(CHOH)phen]の発光・励起スペクトルを、Eu(mcB10(CHOH)と同様の条件で測定した。図2は、[Eu(mcB10(CHOH)phen]の発光・励起スペクトルである。発光スペクトルにおいて、Eu(mcB10(CHOH)と同様に、Eu(III)イオンに由来するシャープな発光帯が578nm、592nm、611nm、648nm及び703nmに観測された。発光スペクトルの形状は、に対応する611nmの発光帯が3つに分裂している点でEu(mcB10(CHOH)の発光スペクトルと異なっている。これは、第二の配位子(1,10-フェナントロリン)の導入により錯体の配位構造が変化したことを示唆する。励起スペクトルにおいて、Eu(III)イオンの4f-4f線移に対応する励起帯が非常に小さくなった。これは、光増感作用を有する1,10-フェナントロリンからの効率的なエネルギー移動による励起が生じていることを示唆する。
【実施例】
【0040】
I-2-2.発光寿命
Eu(mcB10(CHOH)及び[Eu(mcB10(CHOH)phen]の発光寿命を、株式会社堀場製作所製の蛍光分光光度計Fluorolog-3を用いて測定した。発光寿命測定のための光源として、株式会社堀場製作所製のnano LED(365nm)を用いた。図3及び図4は、それぞれ、Eu(mcB10(CHOH)及び[Eu(mcB10(CHOH)phen]の発光の減衰曲線を示す。[Eu(mcB10(CHOH)phen]の発光寿命はほぼ単成分であった。
【実施例】
【0041】
発光寿命τobs及び発光スペクトルから、Eu(mcB10(CHOH)及び[Eu(mcB10(CHOH)phen]の放射速度定数k、無放射速度定数knr及び4f-4f遷移の発光量子効率φf-fを算出した。表1は、これら光物性値を示す。表1には、ヘキサフルオロアセトナート及び1,10-フェナントロリンを配位子として有する希土類錯体Eu(hfa)phenの光物性値も併せて示される。
【実施例】
【0042】
【表1】
JP2020004656A1_000013t.gif
【実施例】
【0043】
[Eu(mcB10(CHOH)phen]とEu(mcB10(CHOH)の光物性値を比較すると、[Eu(mcB10(CHOH)phen]は無放射速度定数knrが抑えられたために、Eu(mcB10(CHOH)と比較して、高い発光効率で長寿命の発光を示した。すなわち、第二の配位子の導入による光増感が確認された。
【実施例】
【0044】
<検討II>
II-1.合成
ビス-ジフェニルホスフィン-m-カルボラン(dmopc)の合成
【化11】
JP2020004656A1_000014t.gif
【実施例】
【0045】
m-カルボラン(300mg,2.08mmol)をアルゴン雰囲気下でジエチルエーテル(超脱水,10mL)に溶解した。得られた反応溶液に、0℃に冷却しながらn-BuLi(3.00mL,4.8mmol,1.6M in hexane)を加え、反応溶液を1時間攪拌した。そこにクロロジフェニルホスフィン(0.95mL,5.1mmol)を加え、反応溶液を室温で1時間攪拌した。反応溶液から生成物を水及びジエチルエーテルを用いて2回抽出し、ジエチルエーテル層を回収した。回収したジエチルエーテル層から溶媒をエバポレーターで留去し、透明な粘性液体(生成物)を得た。この生成物をナスフラスコ内でジクロロメタン(5mL)に溶解した。そこにH(3mL)を加え、フラスコ内の混合液を2時間攪拌した。溶媒をエバポレーターで留去し、残渣をジクロロメタン中での再結晶により精製して、dpomcの白色粉体を得た。
IR(KBr): 2599(B-H), 1201(P=O)
1HNMR(CDCl3, 400 MHz): δ 7.86-7.97(8H, C-H), 7.43-7.61(1H, C-H),3.00-1.20(10H, B-H) ppm
MS(ESI): m/z calcd. for C26H31B10P2O2[M+H]+= 547.27 ; found = 547.26
【実施例】
【0046】
[Eu(hfa)(dpomc)]の合成
【化12】
JP2020004656A1_000015t.gif
【実施例】
【0047】
dpomc(300mg)と過剰量のEu(hfa)(HO)(707mg,1.5 equiv.)をトルエン中で混合し、反応液を80℃で6時間加熱還流した。トルエンをエバポレーターで除去した。残渣をジオキサン中で2時間還流した。濾過により未反応のEu(hfa)(HO)を除去して、[Eu(hfa)(dpomc)]の白色粉体を得た。[Eu(hfa)(dpomc)]は、dpomc及びEu(III)イオンが交互に連結されることにより繰り返し構造を形成している高分子量の錯体である。
IR(ATR): 2614(B-H), 1652(C=O), 1250(P=O) cm-1
MS(ESI) : m/z calcd. for C36H32B10EuF12O8P2[M-hfa]+ = 1111.17, found = 1111.17
Elemental analysis: calcd for C41H33B10EuF18O8P2+ dioxane: C, 38.45, H: 2.94, found; C, 38.22, H2.73
【実施例】
【0048】
[Tb(hfa)(dpomc)]の合成
Eu(hfa)(HO)に代えてTb(hfa)(HO)を用いたこと以外は[Eu(hfa)(dpomc)]と同様の手順で[Tb(hfa)(dpomc)]を合成した。[Tb(hfa)(dpomc)]は、dpomc及びTb(III)イオンが交互に連結されることにより繰り返し構造を形成している高分子量の錯体である。
IR(ATR): 2614(B-H), 1652(C=O), 1250(P=O) cm-1
MS(ESI): m/z calcd. for C36H32B10TbF12O8P2[M-hfa]+ = 1117.17, found = 1117.17, [2M-hfa]+ =2441.34, found = 2441.28
Elemental analysis: calcd(%) for C41H33B10TbF18O8P2:C, 36.76, H: 2.52, found; C, 37.17, H2.52
【実施例】
【0049】
[Gd(hfa)(dpomc)]の合成
Eu(hfa)(HO)に代えてGd(hfa)(HO)を用いたこと以外は[Eu(hfa)(dpomc)]と同様の手順で[Gd(hfa)(dpomc)]を合成した。[Gd(hfa)(dpomc)]は、dpomc及びGd(III)イオンが交互に連結されることにより繰り返し構造を形成している高分子量の錯体である。
MS(ESI): m/z calcd. for C36H32B10TbF12O8P2[M+Na]+ =1346.15, found = 1346.18
【実施例】
【0050】
II-2.評価
II-2-1.[Eu(hfa)(dpomc)]の光物性
図5は、[Eu(hfa)dpomc]及びEu(hfa)(HO)の粉体の発光・励起スペクトル(λex=360nm、λem=610nm)である。測定は室温で行った。発光スペクトルでは、Eu(III)イオンのFJ(J=0,1,2,3,4)の遷移に帰属される発光帯が確認された。両錯体の励起スペクトルにおいて300~400nm付近にhfaの励起帯が観測され、これはhhaからEu(III)イオンへの光増感エネルギー移動を示唆する。の遷移に対応する発光帯の形状が両錯体で大きく異なっており、これはEu(III)イオン周りの配位環境が両錯体で大きく異なっていることを示唆する。
【実施例】
【0051】
図6は、[Eu(hfa)dpomc]及びEu(hfa)(HO)の発光減衰曲線である。表1は発光減衰曲線から算出した光物性値を示す。[Eu(hfa)dpomc]はEu(hfa)(HO)と比較して長寿命を示すとともに、高い量子収率を示した。[Eu(hfa)dpomc]の無放射速度定数knrは、Eu(hfa)(HO)のknrと比較して小さい値を示しており、これは振動数の大きいHOがdpomcで置換されたことによる振動失活の減少に起因すると考えられる。[Eu(hfa)dpomc]の放射速度定数krは、Eu(hfa)(HO)のkrと比較して大きい値を示しており、これは構造の非対称性の増大に起因すると考えられる。[Eu(hfa)dpomc]は、46%の配位子励起の発光量子収率Φtot、及び70%のエネルギー移動効率ηSENSを示した。これら結果から、[Eu(hfa)dpomc]が十分に効率的な光増感エネルギー移動を起こすことが確かめられた。
【実施例】
【0052】
【表2】
JP2020004656A1_000016t.gif
【実施例】
【0053】
II-2-2.[Tb(hfa)(dpomc)]の光物性
図7は、[Tb(hfa)dpomc]及びTb(hfa)(HO)の粉体の発光・励起スペクトル(λex=360nm、λem=610nm)である。発光スペクトルでは、Tb(III)イオンのFJ(J=6,5,4,3,2)の遷移に対応する発光帯が確認された。両錯体のスペクトルの形状が異なっており、これはEu錯体と同様にTb周りの配位環境が変化したことを示唆する。励起スペクトルから、hfaからの光増感エネルギー移動が起きていることも確認された。
【実施例】
【0054】
図8は、[Tb(hfa)dpomc]及びTb(hfa)(HO)の発光減衰曲線である。この発光減衰曲線から求めた[Tb(hfa)(dpomc)]の発光寿命は0.45msで、これはTb(hfa)(HO)の発光寿命0.86msと比較して短かった。
【実施例】
【0055】
dpomcで希土類イオンを架橋したことによる希土類イオン間のエネルギー移動への影響を調べるため、[Tb(hfa)(dpomc)]の発光寿命τを、100K~300Kまでのいくつかの測定温度において測定した。表3は、各測定温度における[Tb(hfa)(dpomc)]の発光寿命を示す。発光寿命は、低温域では0.78ms付近であった。比較的高い温度で発光寿命の変化が起こることから、この錯体では逆エネルギー移動過程が比較的起こりにくいことが示唆される。
【実施例】
【0056】
【表3】
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【実施例】
【0057】
図9は、[Tb(hfa)dpomc]の発光減衰曲線(λex=356nm、λem=545nm)である。図9には、100K、150K、200K、250K及び300Kにおける発光減衰曲線が重ねて表示されている。図10は、別途準備された、カルボラン基の代わりにビフェニレン基を有する希土類錯体[Tb(hfa)dpbp]の発光減衰曲線(λex=356nm、λem=545nm)である。図10には、100K、150K、200K、250K及び300Kにおける発光減衰曲線が表示されている。図9及び図10の比較から、カルボラン基の導入によって発光寿命の温度依存性が顕著に小さくなることが確認された。
【実施例】
【0058】
【化13】
JP2020004656A1_000018t.gif
【実施例】
【0059】
II-2-3.[Gd(hfa)(dpomc)]の光物性
図11は、室温における[Gd(hfa)(dpomc)]及び[Tb(hfa)dpomc]の発光減衰曲線(λex=250nm、λem=455nm)である。[Gd(hfa)(dpomc)]の発光寿命は0.99msであり、これは[Tb(hfa)dpomc]の発光寿命0.69msよりも大きかった。
【実施例】
【0060】
II-2-3.[Eu(hfa)(dpomc)]の熱物理的性質
図12は、[Eu(hfa)(dpomc)]の熱重量分析の結果を示すグラフである。250℃付近で急激な重量減少が見られた。
【実施例】
【0061】
II-2-3.放射線照射試験
ガラス板上に塗ったグリースに、[Eu(hfa)dpomc]、Eu(hfa)(HO)、[Tb(hfa)dpomc]、又はTb(hfa)(HO)の粉体試料を付着させた。ガラス板の反対側の面にα線源(Am241)を取り付けた。全体を暗幕で覆い、光学カメラで粉体試料を撮影した。[Eu(hfa)dpomc]、及び[Tb(hfa)dpomc]の場合、5分間の露光によって得られた画像において、Eu(III)イオンの赤色発光及びTb(III)イオンの緑色発光が見られた。このことから、各錯体が、例えば中性子線検出用シンチレーターとして用いられ得ることが示唆された。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11