TOP > 国内特許検索 > 磁気記憶素子、磁気メモリ、磁気記録方法、磁気記憶素子の製造方法、及び磁気メモリの製造方法 > 明細書

明細書 :磁気記憶素子、磁気メモリ、磁気記録方法、磁気記憶素子の製造方法、及び磁気メモリの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3482469号 (P3482469)
公開番号 特開2002-343943 (P2002-343943A)
登録日 平成15年10月17日(2003.10.17)
発行日 平成15年12月22日(2003.12.22)
公開日 平成14年11月29日(2002.11.29)
発明の名称または考案の名称 磁気記憶素子、磁気メモリ、磁気記録方法、磁気記憶素子の製造方法、及び磁気メモリの製造方法
国際特許分類 H01L 27/105     
G11C 11/14      
G11C 11/15      
H01F 10/16      
H01L 43/08      
FI G11C 11/14 A
G11C 11/15
H01F 10/16
H01L 43/08
H01L 27/10
請求項の数または発明の数 18
全頁数 6
出願番号 特願2001-150456 (P2001-150456)
出願日 平成13年5月21日(2001.5.21)
審査請求日 平成13年5月21日(2001.5.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391016923
【氏名又は名称】北海道大学長
発明者または考案者 【氏名】武笠 幸一
【氏名】澤村 誠
【氏名】末岡 和久
【氏名】廣田 榮一
【氏名】中根 了昌
【氏名】中村 基訓
個別代理人の代理人 【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
審査官 【審査官】正山 旭
参考文献・文献 特開2002-280637(JP,A)
特開2001-332421(JP,A)
国際公開99/50833(WO,A1)
N.Kikuchi et al.,Vertical Magnetization Process in Sub-Micron Permalloy Dots,IEEE TRANSACTIONS ON MAGNETICS,米国,IEEE,2001年 7月,Vol.37,No.4,pp.2082-2084
調査した分野 H01L 27/105
G11C 11/14
G11C 11/15
H01F 10/16
H01L 43/08
特許請求の範囲 【請求項1】
外部磁界の印加によりスピンボルテックスを生じる第1の磁性体薄膜と、この第1の磁性体薄膜の上方において、膜面と略垂直な磁化を有する第2の磁性体薄膜とを具えることを特徴とする、磁気記憶素子。

【請求項2】
前記第1の磁性体薄膜は、円柱状であることを特徴とする、請求項1に記載の磁気記憶素子。

【請求項3】
前記第1の磁性体薄膜は、パーマロイからなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の磁気記憶素子。

【請求項4】
前記第1の磁性体薄膜の直径が、0.05μm~50μmであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一に記載の磁気記憶素子。

【請求項5】
前記第1の磁性体薄膜の厚さが、1μm以下であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一に記載の磁気記憶素子。

【請求項6】
前記第2の磁性体薄膜は、コバルトからなることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一に記載の磁気記憶素子。

【請求項7】
前記第2の磁性体薄膜の厚さが、1μm以下であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一に記載の磁気記憶素子。

【請求項8】
前記第1の磁性体薄膜と前記第2の磁性体薄膜との間に、絶縁層を具えることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一に記載の磁気記憶素子。

【請求項9】
前記絶縁層の厚さが、1nm~10nmであることを特徴とする、請求項8に記載の磁気記憶素子。

【請求項10】
請求項1~9のいずれか一に記載の磁気記憶素子を、所定の基板上において、平面状に複数配置したことを特徴とする、磁気メモリ。

【請求項11】
前記磁気記憶素子を囲むようにしてワイヤを配置したことを特徴とする、請求項10に記載の磁気メモリ。

【請求項12】
請求項1~9のいずれか一に記載の磁気記憶素子を、所定の基板上において平面状に複数配置するとともに、前記磁気記憶素子を囲むようにしてワイヤを配置し、このワイヤに所定の電流を流すことにより生じた順方向磁場によって前記磁気記憶素子中にスピンボルテックスを生じさせ、情報の磁気的な書き込みを行うようにしたことを特徴とする、磁気記録方法。

【請求項13】
前記ワイヤに所定の電流を流すことによって、前記順方向磁場と逆向きの逆方向磁場を生じさせ、この逆方向磁場によって磁気記録された前記磁気記憶素子中に逆方向のスピンボルテックスを生じさせ、情報の磁気的な書き換えを行うようにしたことを特徴とする、請求項12に記載の磁気記録方法。

【請求項14】
所定の基板上にレジスト膜を一様に形成する工程と、
前記レジスト膜に露光現像処理を施すことにより、前記所定の基板の主面が露出した開口部を有するレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンを介して成膜処理を施すことにより、前記所定の基板の前記主面上に、外部磁界の印加によりスピンボルテックスを生じる第1の磁性体薄膜と、膜面と略垂直な磁化を有する第2の磁性体薄膜とを順次に積層して、前記第1の磁性体薄膜と、前記第2の磁性体薄膜とを具える磁気記憶素子を製造する工程と、を含むことを特徴とする、磁気記憶素子の製造方法。

【請求項15】
前記第1の磁性体薄膜と前記第2の磁性体薄膜との間に絶縁層を形成する工程を含むことを特徴とする、請求項14に記載の磁気記憶素子の製造方法。

【請求項16】
所定の基板上にレジスト膜を一様に形成する工程と、
前記レジスト膜に露光現像処理を施すことにより、前記所定の基板の主面が露出した複数の開口部を有するレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンを介して成膜処理を施すことにより、前記所定の基板の前記主面上に、外部磁界の印加によりスピンボルテックスを生じる第1の磁性体薄膜と、膜面と略垂直な磁化を有する第2の磁性体薄膜とを順次に積層して、前記第1の磁性体薄膜と、前記第2の磁性体薄膜とを具える複数の磁気記憶素子を製造する工程と、を含むことを特徴とする、磁気メモリの製造方法。

【請求項17】
前記第1の磁性体薄膜と前記第2の磁性体薄膜との間に絶縁層を形成する工程を含むことを特徴とする、請求項16に記載の磁気メモリの製造方法。

【請求項18】
前記磁気記憶素子を囲むようにしてワイヤを形成する工程を含むことを特徴とする、請求項16又は17に記載の磁気メモリの製造方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ランダムアクセスメモリ(RAM)として好適に用いることのできる磁気記憶素子、磁気メモリ、並びに前記磁気記憶素子及び前記磁気メモリを用いた磁気記録方法、さらには、前記磁気記憶素子及び前記磁気メモリに対する製造方法に関する。

【0002】
【従来の技術】従来、ランダムアクセスメモリ(RAM:Random Access Memory)としては、半導体素子を用いた半導体ランダムアクセスメモリ(半導体RAM)が主流であったが、このような半導体RAMは、苛酷な条件下で使用されると、その安定性が劣化するという問題があった。そして、この傾向は、半導体素子を小型して集積密度を向上させようとする場合においてより顕著となっていた。

【0003】
したがって、例えば、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM:dynamic Random Access Memory)などの半導体RAMにおいては、安定した動作を実現するために、所定の電流を流してデータを保持するリフレッシュ動作などの余分な操作が必要とされている。また、余分な操作を必要としない半導体RAMにおいては、アクセスに長時間を要するという問題があった。

【0004】
かかる観点より、近年、磁気記憶素子を用いた磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM:Magnetic Random Access Memory)が注目されている。MRAMは、磁化の向きに対応させて“0”、“1”の信号を記録するようにしたものである。前記磁化の向きは外部磁界を加えない限り不変であるため、MRAMは極めて高い安定性を示す。

【0005】
このようなMRAMを構成する磁気記憶素子としては、GMR(巨大磁気抵抗:giant magnetoresistive)膜を用いたもの、TMR(トンネル磁気抵抗:tunneling magnetoresistive)膜を用いたものが提案されている。しかしながら、これらの磁気記憶素子は、“0”、“1”情報を読み出すために要求されるMR比などの磁気的特性が不十分であるために、実用に足るMRAMを実現することはできないでいた。

【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、実用に足るMRAMを提供することのできる新規な磁気記憶素子を提供するとともに、これを用いた磁気メモリを提供することを目的とする。さらには、前記磁気記憶素子及び前記磁気メモリに対する磁気記録方法を提供するとともに、前記磁気記憶素子及び前記磁気メモリに対する製造方法を提供することを目的とする。

【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成すべく、本発明は、外部磁界の印加によりスピンボルテックス(スピン渦)を生じる第1の磁性体薄膜と、この第1の磁性体薄膜の上方において、膜面と略垂直な磁化を有する第2の磁性体薄膜とを具えることを特徴とする、磁気記憶素子に関する。

【0008】
本発明者らは、MRAMを実現することのできる新規な構成の磁気記憶素子を得るべく鋭意検討を行った。その結果、上述したように、外部磁界の印加によりスピンボルテックスを生じる第1の磁性体薄膜と、膜面に略垂直な磁化を有する第2の磁性体薄膜とを積層させることによって、MRAMとして使用することのできる、全く新規な構成の磁気記憶素子を提供できることを見いだした。

【0009】
図1及び図2は、本発明の磁気記憶素子の一例を示す構成図である。図1に示す磁気記憶素子10は、外部磁界の印加によりスピンボルテックスを生じる第1の磁性体薄膜1と、この第1の磁性体薄膜1の上方において、膜面と略垂直な磁化Cを有する第2の磁性体薄膜2とを具えている。また、第1の磁性体薄膜1と第2の磁性体薄膜2との間には、磁気記憶素子10全体を通じて流れる電流値を制御(抑制)するための絶縁層3が形成されている。

【0010】
第1の磁性体薄膜1に順方向の外部磁界が印加されて符号Aで示すようなスピンボルテックスが生じると、スピンボルテックスAの核部分においては垂直に立ち上がった磁化Bが形成される。一方、第1の磁性体薄膜1に逆方向の外部磁界が印加されて符号Dで示すような逆向きのスピンボルテックスが生じると、スピンボルテックスDの核部分においては、磁化Bと逆向きに立ち上がった磁化Eが形成される。

【0011】
図1においては、第1の磁性体薄膜1中の磁化Bと第2の磁性体薄膜2の磁化Cとは互いに同方向を向いており、図2においては、第1の磁性体薄膜1中の磁化Bと第2の磁性体薄膜2中の磁化Eとは互いに逆方向を向いている。したがって、磁気記憶素子10の垂直方向に所定の電場を印加した場合、第1の磁性体薄膜1と第2の磁性体薄膜2とが図1に示すような磁化状態にある場合においては、第1の磁性体薄膜1と第2の磁性体薄膜2とが図2に示す磁化状態にある場合よりも、より多くの電流が流れるようになる。

【0012】
このため、第1の磁性体薄膜1の磁化方向に対応させて“0”及び“1”の情報を記憶させておくことにより、この磁化状態を電流値の大小として読み出すことができるようになる。

【0013】
すなわち、本発明の磁気記憶素子は、第1の磁性体薄膜のスピンボルテックスの向きにより磁気的な記録を行い、従来のMRAM同様に、スピンボルテックスの向きの相違による電流値の大小を利用して記録情報を読み出すようにしている。したがって、本発明の磁気記憶素子を用いることによって、全く新規な構成のMRAMを提供できることが分かる。実用的なMRAMを構成する本発明の磁気メモリは、上述した磁気記憶素子を所定の基板上に複数配置して構成する。

【0014】
なお、「スピンボルテックス(スピン渦)」とは、上述した説明からも明らかなように、薄膜中において渦状に発生した磁化状態を意味するものである。本発明の磁気記憶素子、及び磁気メモリの好ましい態様、並びに磁気記録方法、磁気記憶素子及び磁気メモリの製造方法については、発明の実施の形態において詳述する。

【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明を発明の実施の形態に基づいて詳細に説明する。第1の磁性体薄膜の形状は特に限定されるものではないが、図1及び図2に示すように、円形状であることが好ましい。これによって、所定の外部磁界を印加することにより、第1の磁性体薄膜中にスピンボルテックスを容易に生じさせることができる。

【0016】
また、第1の磁性体薄膜は、所定の外部磁界印加によってスピンボルテックスを生じさせるものであれば、如何なる磁性材料から構成しても良い。しかしながら、パーマロイやスーパーマロイ、及び鉄などの軟磁性材料、特にパーマロイから構成することが好ましい。これによって、第1の磁性体薄膜中にスピンボルテックスを簡易に形成することができる。なお、スピンビルテックスの発生をより簡易に行うためべく、前記第1の磁性体薄膜の保磁力が、この第1の磁性体薄膜上に形成される第2の磁性体薄膜の保磁力よりも小さくなるように、その厚さ並びに前記磁性材料の組成などを制御することが好ましい。

【0017】
また、第1の磁性体薄膜の直径は、外部磁界によるスピンボルテックスの発生をより簡易かつ効果的に行うべく、0.05μm~50μmであることが好ましい。なお、第1の磁性体薄膜を上述した軟磁性材料から構成することにより、その直径を0.1μm以下とした場合においても十分大きなスピンボルテックスを得ることができる。

【0018】
また、第1の磁性体薄膜の厚さは、前記同様に、外部磁界によるスピンボルテックスの発生をより簡易かつ効果的に行うべく、1μm以下であることが好ましい。なお、第1の磁性体薄膜を上述した軟磁性材料から構成することにより、その厚さを1nmまで小さくした場合においても十分大きなスピンボルテックスを得ることができる。

【0019】
また、第2の磁性体薄膜は、内部にスピンボルテックスを生じさせるものではないため、如何なる形状に作製することもできる。しかしながら、以下に示す本発明の磁気記憶素子の製造方法により、第1の磁性体薄膜及び第2の磁性体薄膜は、共通のレジストパターンを用いて連続的に作製されるため、第1の磁性体薄膜と第2の磁性体薄膜とは同一の形状を呈するようになる。このため、第1の磁性体薄膜が上述したように円柱状を呈する場合は、第2の磁性体薄膜も円柱状を呈するようになる。

【0020】
さらに、第2の磁性体薄膜は、膜面と略垂直な磁化を有するものであれば、如何なる磁性材料から構成しても良い。しかしながら、飽和磁化が大きく、薄膜化した際に膜面に垂直な磁化容易軸を有するようになることから、Coやコバルト系合金を用いることが好ましい。特に、入手が容易で安価であることからCoを用いることが好ましい。

【0021】
また、膜面に垂直な磁化容易軸を簡易に得るべく、第2の磁性体薄膜の厚さは、1μm以下であることが好ましい。そして、第2の磁性体薄膜を上述のようなCoなどの磁性材料から構成することにより、その厚さを0.05μmまで小さくした場合においても十分大きな飽和磁化を得ることができる。

【0022】
したがって、第1の磁性体薄膜を上述したパーマロイなどの軟磁性材料から構成し、第2の磁性体薄膜を上述したCoなどの磁性材料から構成することにより、極めて微細な磁気記憶素子を提供することができ、これらを所定の基板状に配置することによって、本発明に従った高密度の磁気メモリを提供することができる。但し、第1の磁性体薄膜及び第2の磁性体薄膜を比較的大きく形成することにより、目的に応じて数十μmオーダの磁気記憶素子を提供することもできる。

【0023】
上述したように、磁気記憶素子10から記録情報を読み出すに際しては、磁気記憶素子10の垂直方向の所定の電場を印加し、磁気記憶素子10に流れる電流値の大小関係から“0”又は“1”の情報を識別して読み出すものである。しかしながら、第1の磁性体薄膜1と第2の磁性体薄膜2とを直接積層させた場合においては、磁気記憶素子10に流れる電流値の絶対量が大きくなり過ぎ、上述した電流値の大小関係を正確に読み取ることができない場合がある。

【0024】
このような場合においては、図1及び図2に示すように、第1の磁性体薄膜1と第2の磁性体薄膜2との間に絶縁層3を設けることが好ましい。これによって、磁気記憶素子10の垂直方向に電場を印加した場合においても、実際には絶縁層3を介してトンネル電流が流れるのみであるので、電流値の絶対量を大きく低減することができる。

【0025】
なお、絶縁層3の厚さは好ましくは1nm~10nmである。そして、例えばアルミナ、シリカ、酸化マグネシウム、及びストロンチウムーチタンオキサイド(STO)などの絶縁材料から作製することができる。

【0026】
図3は、本発明の磁気メモリの概要を示す構成図である。なお、図3に示す磁気メモリ20においては、上述したような磁気記憶素子10-1~10-9が図示しない所定の基板上において、平面的に格子状に配置されている。そして、磁気記憶素子10-1~10-9のそれぞれを囲むようにしてワイヤ11-1~11-3及び12-1~12-3が配置されている。

【0027】
そして、磁気記憶素子10-1~10-9のそれぞれに所定の外部磁界を印加することによって、図1及び図2に示すようにして書き込みを行う。以下、図3に示す磁気メモリ20において、本発明の磁気記録方法を詳述する。

【0028】
例えば、磁気記憶素子10-1に対して書き込みを行う場合は、ワイヤ11-1及び11-2、並びにワイヤ12-1及び12-2に所定の電流を流し、磁気記憶素子10-1を囲むワイヤに矢印Fで示す方向に電流が流れるようにする。すると、磁気記憶素子10-1を囲むワイヤ内には、矢印Fの進む方向、すなわち上向きの磁場が生じる。したがって、磁気記憶素子10-1には、前記上向きの磁場によってスピンボルテックスが生じ、図1に示すように第1の磁性体薄膜1中には上向きの磁化Bが形成される。したがって、磁化Bの向きに応じて、情報“0”又は“1”を書き込むことができる。

【0029】
一方、磁気記憶素子10-1を囲むワイヤ内に、矢印Gで示す方向に電流が流れるようにすると、磁気記憶素子10-1を囲むワイヤ内には、矢印Gの進む方向、すなわち、下向きの磁場が生じる。したがって、磁気記憶素子10-1には、前記下向きの磁場によってスピンボルテックスが生じ、図2に示す幼に第1の磁性体薄膜1中には下向きの磁化Eが形成される。したがって、磁化Bの向きに応じて書き込まれた情報“0”又は“1”を、“1”又は“0”に書き換えることができる。

【0030】
図1及び図2で説明したように、第2の磁性体薄膜2は、例えば、これらの図に示されているように、膜面に垂直な磁化Cを有している。したがって、磁気記憶素子10-1に垂直方向に所定の電場を加えた場合に、第1の磁性体薄膜1の磁化状態によって、磁気記憶素子10-1を通じて流れる電流値が変化する。すなわち、第1の磁性体薄膜1が磁化Bを形成している場合は、第1の磁性体薄膜が磁化Eを形成している場合よりも、より多くの電流が流れるようになる。したがって、電流値の大小を計測することによって、書き込まれた情報を識別し、読み出すことができる。

【0031】
なお、ワイヤに流す電流値の絶対量を制御する(大きくする)ことによって、必ずしも磁気記憶素子を囲む総てのワイヤに電流を流さなくても、磁気記憶素子にスピンボルテックスを生じさせることができる。例えば、図3において、磁気記憶素子10-1、10-4、及び10-7はワイヤ11-1に接近して配置されているので、ワイヤ11-1に対して一方向に比較的絶対値の大きな、例えば矢印Hで示す方向に電流を流すことにより、この電流によって生じた磁場のみで磁気記憶素子10-1、10-4、及び10-7にスピンボルテックスを生じさせることができる。

【0032】
また、磁気記憶素子10-1~10-3はワイヤ12-1に接近して配置されているので、ワイヤ12-1に対して一方向に比較的絶対値の大きな、例えば、矢印Iで示す方向に電流を流すことによって、この電流によって生じた磁場のみで磁気記憶素子10-1~10-3にスピンボルテックスを生じさせることができる。

【0033】
さらに、例えば、磁気記憶素子10-1においては、ワイヤ11-1及び12-1に同方向、例えば、ワイヤ11-1に対して矢印Hで示す方向に比較的絶対値の大きな電流を流し、ワイヤ12-1に対して矢印Iで示す方向に比較的絶対値の大きな電流を流すことによって、磁気記憶素子10-1内により効果的にスピンボルテックスを生じさせることができる。

【0034】
次に、本発明の磁気記憶素子の製造方法について説明する。図4~図7は、本発明の磁気記憶素子の製造方法における工程図である。最初に、図4に示すように、所定の基板31上にレジスト膜32を厚さ0.1μm~5μmにスピンコータなどで塗布して形成する。次いで、レジスト膜32に対して露光現像処理を施すことにより、図5に示すように、基板31の主面31Aが露出するように形成された開口部33Aを有するレジストパターン33を形成する。

【0035】
その後、図6に示すように、レジストパターン33をマスクとして、スパッタリングや真空蒸着法などの成膜処理を施すことにより、第1の磁性体薄膜、及び第2の磁性体薄膜を順次に積層させて形成するとともに、必要に応じて絶縁層を前記第1の磁性体薄膜と前記第2の磁性体薄膜との間に形成することによって、開口部33A内に磁気記憶素子10を形成する。次いで、レジストパターンをリフトオフすることによって、図7に示すように、基板31上に形成された磁気記憶素子10を得る。

【0036】
なお、磁気メモリの製造方法においても、図5に示す工程において、複数の開口部を有するレジストパターンを形成し、図6に示す工程において、複数の磁気記憶素子を同時に形成することを除いては、上述したようにして形成する。

【0037】
また、所定の基板上に第1の磁性体薄膜及び第2の磁性体薄膜を一様に積層させた多層膜を作製するとともに、必要に応じて前記第1の磁性体薄膜及び前記第2の磁性体薄膜間に絶縁層を一様に形成する。そして、所定のマスクを介して前記多層膜に、例えば、アルゴンイオンなどのイオンミリング処理を前記基板の主面が露出するまで施すことによって、磁気記憶素子又は磁気メモリを作製することもできる。

【0038】
以上、具体例を挙げながら発明の実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明してきたが、本発明は上記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいて、あらゆる変形や変更が可能である。

【0039】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、スピンボルテックスによる磁化の向きに応じて書き込みを行う全く新規な構成の磁気記憶素子、及びこれを用いた磁気メモリを提供することができる。したがって、本発明の磁気記憶素子又は磁気メモリを用いることによって、実用に足るMRAMを提供することができる。
図面
【図4】
0
【図5】
1
【図6】
2
【図1】
3
【図2】
4
【図3】
5
【図7】
6