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明細書 :平行な磁場中に配置された永久磁石を有する振り子を用いた無定位回転型振動検出器

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3502911号 (P3502911)
公開番号 特開2002-357665 (P2002-357665A)
登録日 平成15年12月19日(2003.12.19)
発行日 平成16年3月2日(2004.3.2)
公開日 平成14年12月13日(2002.12.13)
発明の名称または考案の名称 平行な磁場中に配置された永久磁石を有する振り子を用いた無定位回転型振動検出器
国際特許分類 G01V  1/18      
G01H  1/00      
FI G01V 1/18
G01H 1/00
請求項の数または発明の数 10
全頁数 10
出願番号 特願2001-165488 (P2001-165488)
出願日 平成13年5月31日(2001.5.31)
審査請求日 平成13年5月31日(2001.5.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012327
【氏名又は名称】東京大学長
発明者または考案者 【氏名】大竹 雄次
個別代理人の代理人 【識別番号】100058479、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外5名)
審査官 【審査官】遠藤 孝徳
参考文献・文献 特開2000-244319(JP,A)
特開 平6-50754(JP,A)
特開 平10-38672(JP,A)
特開 平9-21696(JP,A)
特開 平9-325067(JP,A)
実開 昭55-122126(JP,U)
特公 昭61-13168(JP,B2)
特公 平4-78128(JP,B2)
特公 昭58-608(JP,B2)
大竹雄次、辻信行,“ディジタルPIDフィードバックコントローラーの高速・高ダイナミックレンジ化の提案”,東京大学地震研究所技術報告,日本,東京大学地震研究所,1999年12月24日,第5号,p.23-28
山田功夫,“最近の地震観測”,地震,日本,地震学会,1991年 9月10日,第2輯、第44巻、特集号,p.3-14
森田裕一,“ディジタルフィードバック地震計(DFS)の実用化の可能性について”,地球惑星科学関連学会合同大会予稿集,日本,1998年 5月26日,1998年、Sb-008,p.284
E. Wielandt and G. Streckeisen,”The Leaf-Spring Seismometer Design and Performance”, Bulletin of the Seismological Society of America,米国,1982年12月,第72巻、第6号,p.2349-2367
調査した分野 G01V 1/00 - 1/52
G01H 1/00 - 1/16
特許請求の範囲 【請求項1】
平行な磁場を生成する手段と、
前記平行な磁場中に回転可能に配置された振り子と、ここで前記振り子は縦長の形状の第1の永久磁石とこの1の永久磁石に結合された錘とを有し、前記第1の永久磁石の中心は前記振り子の回転中心と一致しており、そして
前記錘の位置を検出する手段とを含み、
前記磁場により前記第1の永久磁石に生ずる回転モーメントと前記振り子にかかる重力による回転モーメントが互いに打ち消されるように形成されることを特徴とする振動検出器。

【請求項2】
前記磁場を生成する手段は、第2の永久磁石によって磁場を生成することを特徴とする請求項1記載の振動検出器。

【請求項3】
前記錘は前記縦長の形状の第1の永久磁石の一方の端部と結合されていることを特徴とする請求項記載の振動検出器。

【請求項4】
前記錘は前記縦長の形状の第1の永久磁石の長軸に対し垂直方向に延在するように結合されていることを特徴とする請求項記載の振動検出器。

【請求項5】
前記振り子は振り子の振動を制御する手段を含むことを特徴とする請求項1からのいずれか1項記載の振動検出器。

【請求項6】
前記振り子は磁気バネによりその振動が制御されることを特徴とする請求項記載の振動検出器。

【請求項7】
前記磁気バネは静止して配置されたソレノイドコイルと、前記錘に結合され前記ソレノイドコイル内に移動可能に配置された第3の永久磁石を含むことを特徴とする請求項記載の振動検出器。

【請求項8】
前記振り子は、前記錘の位置を検出する位置検出器と、この位置検出器からの検出信号に基づき、錘の移動を制御して錘を所定の静止位置に留めるように制御電流を流す制御回路を含むフィードバック手段によりその振動が制御されることを特徴とする請求項記載の振動検出器。

【請求項9】
前記磁場を生成する手段は窓枠形の形状を有し、その中空部分に平行な磁場が形成されることを特徴とする請求項1からのいずれか1項記載の振動検出器。

【請求項10】
前記振り子は前記平行な磁場の外部においてその回転中心がXヒンジで固定されるように構成されることを特徴とする請求項1からのいずれか1項記載の振動検出器。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は地動検出器に関するもので、詳しくは平行磁場中に配置された永久磁石による無定位回転型振り子と、磁気バネとを使用する地動検出器に関するものである。

【0002】
【従来の技術】従来より地震計は振り子を用いて慣性不動点を作り、震動する地面とこの慣性不動点との間の変位を測定して振動を検出していた。地震計を高感度・広帯域化し、特に地震特有の低周波領域の測定のためには、地震計に関し長い自然周期を得ることが必要であり、どのようにして長い自然周期を得るかが一つの問題であった。その理由は、日本の反対側の地球上で発生した遠地地震の小さな波形を正確に捕らえる必要があることや、地震計を使って地球の内部トモグラフィー等を得るために必要だからである。

【0003】
従来、かかる問題に応えて長周期を得るために、例えば、非常に重い錘で大型化した地震計や、錘にかかる重力を機械式のバネの復元力で打ち消し弱いバネ定数を実現するための倒立振り子タイプの地震計、さらに図10に示すようなラコステ重力計で使用されているゼロ長バネ48のリーフスプリング等が考案されてきた。これらの方法は最初の地震計を除いて、例えば図10に示すように支持点49に支持部材50を介して回転可能に取付けられた錘47にかかる重力(矢印)をバネ48の復元力で打ち消し、変位測定に必要な範囲で常に平衡を保つことにより、ほぼ無定位な振り子を形成するものである。また、かかる構造にさらに他のバネを追加することにより、弱い力を加えて長周期化した振動検出器が実現化されている。

【0004】
しかし、以上のような方法で重力を打ち消して弱いバネを実現することは可能であっても、その具体的機構としては長い間、基本的に機械的なスプリングコイルや板バネが使用されてきた。このため、重い錘を用いた振動検出器のバネの材料は弾性係数を大きくする必要があり、重い錘にかかる強い重力と、それを打ち消すためのバネの材料の弾性の僅かな調整のずれが、大きな自然周期を有する振動検出器の特性変化をもたらすという問題点を有していた。

【0005】
例えば、リーフスプリングで錘にかかる重力を打ち消して弱いバネ定数を実現する広帯域・高感度を図ったSTS(速度計)の場合には、板バネのXヒンジで支えた水平振り子において錘をヒンジより少し持ち上げ、その角度を調整して倒立ポテンシャルを加えることでヒンジの強い復元力を重力で打ち消している。

【0006】
その結果、僅かな角度調整のずれが大きな特性(例えば振り子の自然周期など)の変化をもたらすことになる。また、温度や経年によるバネ常数の変化も打ち消し誤差の原因になり、特性の変化や測定値のドリフト等に直結する。加えて、以上のような機構はバネの設計と工作において非常に特殊技術を必要とし、この工作技術の困難さと上記ドリフトの問題は、地震計が広帯域化そして高感度化するほどより深刻であった。

【0007】
高感度化、長周期化を図り、さらにバネ常数等の変動を低く押さえるためには、なるべく弱いバネを使用することが重要であると考えられる。バネ常数の変動はそれが持っている弾性常数に対する比率で決まるので、変動の絶対値を低くするには柔らかいバネが必要である。例えば、20×10×0.1mmの恒弾性板バネを使用する場合でヤング率が18500kg/mm2 とすると、復元力が56.6N/mmである。変動率が約10-5/°Cで一定であるとすると、56.6×10-5/°C N/mmの変動になる。バネの復元力を落とせば、その割合で変動の絶対値も低くできる。

【0008】
しかし、柔らかい金属バネでは錘にかかる重力を支えられない。そこで、上に述べた金属バネとは異なった方法により錘に働く重力を打ち消し、自然周期が無限大に近い振り子を作ることが必要となる。そしてその錘に、弱いバネ常数の金属によりまたは別の方法を用いてバネ機構を付けることにより、長周期振り子の形成が可能となる。

【0009】
かかる錘の浮上方法を採用する場合、特に地震計のように地理的に広範囲でかつ多くの観測地点に設置する必要のある機器においては、それ自身の重量や消費電力の低減化の問題が本質的なので、重量が小さく電力を消費しない永久磁石による磁気浮上構造の採用が好適であると判断される。

【0010】
永久磁石は近年、希土類のものが発展して0.5T程度の磁場を発生でき、その大きさについても一辺が50cm以上ある直方体のものが形成可能になっている。また磁気浮上方式を採用する場合、かかる永久磁石を使用し、10kgの錘を3次元空間内の1軸を板バネ等で拘束することにより、安定に浮上できる能力のある事が明らかになっている。なお、アンショウの定理により、強磁場を使い浮上体として反磁性物質を使用しない限り1軸拘束が必要である。

【0011】
【発明が解決しようとする課題】通常、垂直動の振動計は、錘を単に磁気浮上させるだけでは磁場が強く自然周期の短いバネしか実現できない。そのため、以上の議論に加えて、どのようにして重力ポテンシャルを打ち消し、長い自然周期を得るかが一つの問題となる。その具体例としては前述したゼロ長バネがある。ゼロ長バネは、重力ポテンシャルに近い形のバネのポテンシャルにより、重力を打ち消すものである。

【0012】
ゼロ長バネを使用した方法は、ポテンシャルエネルギーの関数が重力に近いという利点を有する。しかし欠点として、上に述べたように、温度に依存したバネ常数の変動等により振動の検出誤差が生じることは避けられない。またこのゼロ長バネにも様々な寄生振動が存在し、ゼロ長バネを利用した地動検出器のノイズ発生につながるという問題点がある。

【0013】
さらに、今まで述べた重力打ち消し用バネのポテンシャルの特性は、錘の位置の一部分でしか重力ポテンシャルの特性と同一ではない。そのため、全ての錘の位置で重力を打ち消すことはできず、線形の広いダイナミックレンジを得ることは難しい。

【0014】
新たに既存の地震計の性能を越える高感度・広帯域地震計を設計する場合は、このような重力の影響を好適に打ち消すことがより重要である。そして原理的に広い範囲で無定位な振り子を形成可能とすることが、動作のダイナミックレンジを広げ、地震計の性能向上につながると考えられる。そのためには、振り子にかかる重力のポテンシャルエネルギーの関数と、バネポテンシャルの形が同じで、増減方向が逆でなければならない。さらに、打ち消す方法がバネを使用する方法によるものでないならば、寄生振動や、温度に依存するバネ常数の変化には影響されることがない。

【0015】
従って、本発明は、上記従来の種々の問題点に鑑みてなされたもので、バネを使用せずに平行磁場内に配置された永久磁石の回転モーメントにより、錘を含む振り子にかかる重力による振り子の回転モーメントを打ち消すものである。本発明は、かかる方法により無定位な振り子を形成し、自然周期を可変できる磁気バネ、例えばソレノイドコイル中の磁場軸に平行に円形棒磁石を挿入しバネポテンシャルを実現する機構等、で弱い復元力を加え、長周期の垂直または水平動を検出可能な地震計を実現する手法を提供することを目的とする。

【0016】
【課題を解決するための手段】本発明は、平行磁場内の永久磁石の回転モーメントにより、重力による振り子の回転モーメントを打ち消すように形成した無定位回転型の振り子である。より具体的には、図1の垂直振り子の例に示すように、平行磁場B内に、磁場の外部においてその回転中心を例えばXヒンジで固定した円柱型永久磁石1を挿入することにより、重力による振り子の回転モーメントを打ち消すものである。

【0017】
かかる構成により、永久磁石1には磁場軸とその長軸が平行のとき(永久磁石1の長軸が垂直に位置する場合)以外は回転モーメントが生じる。この回転モーメントを打ち消すように永久磁石1の片側に錘3を付け、重力で回転モーメントを加える。永久磁石に働く回転モーメントに関しては、錘にかかる重力によるものと磁場によるものとが互いに打ち消し合うようにすることができる。そして、永久磁石1の長軸と磁場軸との角度がどの状態であっても、合成された回転モーメントが常に零となり、永久磁石の角度とは無関係に、永久磁石に回転力が働かないいわゆる無定位な状態を実現できる。

【0018】
かかる構成の振り子は、錘にかかる重力のポテンシャルエネルギーの関数と磁場中の永久磁石にかかる磁力の関数とが同形でその向きが逆であり、無定位にできる範囲が広い。かかる振り子に例えば弱い機械式バネや、ソレノイドコイル内に永久棒磁石を挿入するようにして構成した磁気バネを用いて弱い力を加え、長周期の振動検出器を実現することが可能となる。なお、磁気バネを採用した場合は、振り子の復元力をコイル電流により自由に変更できる。

【0019】
同じ原理を用いて、錘が水平方向に振動する水平振り子も可能で、錘と永久磁石および平行磁場との位置関係は異なるものの、回転モーメントの打ち消し等は上記垂直振り子と同じである。

【0020】
即ち本発明は、平行な磁場を生成する手段と、前記平行な磁場中に回転可能に配置された振り子と、ここで前記振り子は第1の永久磁石とこの永久磁石に結合された錘とを有し、前記錘の位置を検出する手段とを含み、前記第1の永久磁石にかかる磁力による回転モーメントと前記振り子にかかる重力による回転モーメントが互いに打ち消されるように形成される振動検出器である。

【0021】
また本発明は、さらに、前記磁場を生成する手段は、第2の永久磁石によって磁場を生成する振動検出器であり、前記第1の永久磁石は縦長の形状を有し、この永久磁石の中心が振り子の回転中心に一致する振動検出器であり、前記錘は前記縦長の形状の第1の永久磁石の一方の端部と結合されていることを特徴とする振動検出器であり、そして、前記錘は前記縦長の形状の第1の永久磁石の長軸に対し垂直方向に延在するように結合されている振動検出器である。

【0022】
また本発明は、前記振り子は振り子の振動を制御する手段を含む振動検出器であり、前記振り子は磁気バネによりその振動が制御される振動検出器であり、前記磁気バネは静止して配置されたソレノイドコイルと、前記錘に結合され前記ソレノイドコイル内に移動可能に配置された第3の永久磁石を含む振動検出器である。

【0023】
また本発明は、前記振り子が、前記錘の位置を検出する位置検出器と、この位置検出器からの検出信号に基づき、錘の移動を制御して錘を所定の静止位置に留めるように制御電流を流す制御回路を含むフィードバック手段によりその振動が制御される振動検出器であり、前記磁場を生成する手段は窓枠形の形状を有し、その中空部分に平行な磁場が形成される振動検出器であり、前記振り子は前記平行な磁場の外部においてその回転中心がXヒンジで固定されるように構成される振動検出器である。

【0024】
【発明の実施の形態】本発明について以下に図面を参照して説明する。以下の説明は本発明に関する一実施の形態を記載するものであり、本発明の一般的原理を図解することを目的とするものである。したがって、本発明をこの実施の形態の欄および添付図面に具体的に記載された構成のみに限定するものではない。以下の詳細な説明および図面の記載において、同様の要素は同様の参照番号により表される。

【0025】
まず、本発明において用いる平行磁場が永久棒滋石に対して働く力により振り子にかかる重力を打ち消す原理について説明する。

【0026】
図1は、垂直動の無定位回転振り子の原理を示す概略図である。垂直方向の平行磁場B内に、円柱型の永久磁石1が配置されている。永久磁石1の中心を何らかの方法で回転可能に固定すると、磁場Bと永久磁石1の長軸が平行のとき(図示せず)以外、永久磁石1には回転モーメントが生じる。図1(a)は永久磁石1が傾いて位置している場合であり、図1(b)は永久磁石1が水平に、即ち磁場Bに対し垂直に位置している場合でである。なお、図1においては便宜上永久磁石1の左側がS極、右側がN極としてある。なお、図1(b)において示すように垂直方向の平行磁場Bはソレノイドコイル4により生成される。図1(a)においては図示が省略されている。

【0027】
この永久磁石1と磁界Bの作用により生ずる回転モーメントを打ち消すように、永久磁石1の片側、図1においてはS極側、に錘3を設けることにより重力による回転モーメントを加える。このようにして、永久磁石1に働く磁場による回転モーメントは、錘3に係る重力による回転モーメントにより打ち消すことが可能となる。この場合、永久磁石1の長軸と磁場軸の角度がどのような状態であっても、回転モーメントが磁石には働かない状態を実現できる。この条件を式で表すと、
gcosθ×L1-FB1cosθ×L1-FB2cosθ×L2=0 1)
となり、Fgは錘にかかる重力で、錘3の質量をmとするとFg=mg、L1は錘3の重心(磁極Sの位置に等しい)と軸2との距離、θは振り子の磁場軸に対する角度であって、重力の方向と錘3の回転方向との角度および磁界の方向と各磁極の回転方向であり、FB1は磁界Bにより永久磁石1のS極が受ける磁力、FB2は磁界Bにより永久磁石1のN極が受ける磁力、L2は磁極Sと軸2との距離である。

【0028】
図2は、振り子の磁場軸に対する角度θ[rad]に対する、重力による回転モーメントFg cosθ×L1、および磁場Bによる回転モーメント(FB1cosθ×L1+FB2cosθ×L2)の変化を示す。左端が錘3の位置が最上位にある場合であり、右端が最低位置にある場合を示す。また上部曲線が重力による振り子に対する力即ち回転モーメントを示し、下部曲線が磁場による永久磁石に対する力即ち磁場の基づく回転モーメントを示す。双方の回転モーメントによる力の和をゼロとすることができるが、この条件を満たすのは1つの磁場値だけであり、図2はこの条件を満足する場合を示す。

【0029】
図3に同様の原理の水平振り子の例を示す。錘3が腕部5を介して軸2に回転可能に取付けられている構造を有している。図1と同様に、平行磁場B内での永久磁石1の回転モーメントが、重力により錘3へ生ずる回転モーメントを打ち消すものである。錘3と永久磁石1および平行磁場Bとの位置関係は異なるものの、回転モーメントや位置エネルギーの関係は図1の垂直振子と同じである。図3(a)は永久磁石1が傾いている場合であり、図3(b)は永久磁石1が水平の場合を示している。

【0030】
回転モーメントが永久磁石1に働かない条件は、
gcosθ×L3-FB1cosθ×L4-FB2cosθ×L4=0 2)
であり、L3は錘3の重心と軸2との距離、L4は磁極Sおよび磁極Nと軸2との間の距離である。

【0031】
上記原理を用いて振動検出器を形成する場合、実際には、錘3にかかる重力を打ち消すための磁場、および回転振り子の本体を構成する例えば円柱型の永久磁石1の磁場強度は設計上の制限があり、自由に選ぶことが困難である。

【0032】
その理由を述べると、地震観測のような野外での観測を主とする検出器の場合は可搬型にする必要があり小型化が要求される。さらに、設置が予想される観測場所の電源状況の悪い場合が多く、電源としては電池しか使えない場合が多い。

【0033】
この場合、電磁石を使用することは消費電力や発熱などのために難しく、永久磁石を用いて錘にかかる重力を打ち消すための磁場を作る必要がある。したがって、磁場強度Bは使用する磁場形成用永久磁石の保持力により固定されてしまい、この条件により自然周期等の振り子の基本特性が決まってしまう。このため、振動検出器としての性能が磁場形成用永久磁石の特性により左右されることになる。かかる理由から、実際に使える磁場形成用永久磁石の磁場強度に対応してどの程度の重さを有する錘が無定位にできるかが定まる。

【0034】
実際の地動検出器内に形成された磁場中で、シーソーのような無定位の振り子運動をさせる場合、磁場の平行性および均一性が問題となる。磁場に不均一な成分があると、回転振り子である円柱型永久磁石1に回転モーメント以外の力や式1)および式2)の関数からずれた力が働くからである。一般に永久磁石はその端部の形状が平面による四角の形状であり、このため着磁が均一に行なわれたとしても、エッジ等の形状効果によりその平面の直上で均一な磁場が形成できるとは限らない。

【0035】
図4に上記問題を解決し均一な磁場を形成するための構造の一例を示す。永久磁石6に鉄の磁気回路であるヨーク7を付加して窓枠型の磁石8を形成し、図4のAで示した空間の磁場を均一化する方法である。磁場の向は矢印で示してある。この例では左右に直方体の例えばネオジウムコバルトからなる永久磁石6が配置されている。左右の磁石6の極性の配置は同一方向で、図4においては両方とも上がN極である。永久磁石5の上部および下部に純鉄のヨーク7が配置されている。磁場Bは図4において矢印のように流れ、Aの空間においては平行かつ均一にすることができる。

【0036】
図4において、窓枠の入り口においてエッジを有する磁石6を使用する場合であっても、使用領域Aで10-3以下の磁場の均一性が実現できることがわかった。さらに、磁石6のエッジ等を丸く形成すればこれ以上の均一性が可能である。この空間Aの中央部に例えば円柱型の永久磁石(一例として、直径10mmφ、長さ30mm)を挿入して安定な無定位回転型振り子を実現することができる。

【0037】
次に本発明において採用する磁気バネの作用について述べる。磁気バネは地動測定装置を基準とした場合における錘の運動を制御するために使用するものである。

【0038】
図5に磁気バネ9の基本的動作を説明するための概略図を示す。磁気バネ9はソレノイドコイル10中にその磁場軸と平行にそれと同じ長さの円柱型永久磁石11を挿入した構造を有する。ソレノイドコイル10の磁極と永久磁石11の磁極は、その磁気特性が互いに逆になるように配置されている。このため永久磁石11はソレノイドコイル10中で安定な位置を有することができ、永久磁石11がこの位置から移動しようとする場合、永久磁石11にその復元力を加算又は減少させる力が働く。

【0039】
この機構により、永久磁石11がソレノイドコイル10内にある場合が最も安定で、ソレノイドコイル10の外に出ると復元力や反発力が働く磁気バネ9が実現できる。ソレノイドコイル10の電流を変えれば振り子の自然周期も変えられ、さらに弱い復元力も実現できる。この場合のソレノイドコイル10内の永久磁石11の運動方程式を下記の式3)に示す。

【0040】
【数1】
JP0003502911B2_000002t.gif3)

【0041】
ここで、左辺のtは時間、mは永久磁石10の質量、Yはその変位、μは空気や人工的な減衰項(粘性)、MGp は永久磁石の磁荷、nはソレノイドコイルの巻き数、Iはその電流である。右辺は外力項である。

【0042】
式3)による計算によると、地動検出器に磁気バネを付属させることにより、100秒以上の自然周期も可能となることがわかった。実験によると、通常のサーボ型(負帰還制御方式)地震計のように錘に関するフィードバック回路を使用することなく、また水平の設置精度を気にしなくとも、少なくとも27秒以上の自然周期が得られることが確認されている。

【0043】
図6に以上の原理に基づく本発明による一実施形態である地動検出器すなわち垂直動振動検出器の構造の概略を示す。

【0044】
図6の右側に地動検出器の錘にかかる重力を打ち消すための磁場Bを発生する磁場形成用磁石13が示され、そして、この磁場B内に挿入された振り子本体を構成する縦長の形状の永久磁石即ち円柱型の永久磁石14が示されている。なお磁場形成用磁石としては電力の供給が不要な永久磁石を使用するのが望ましいが、永久磁石に限定するものではなく必要な場合には例えば電磁石を用いることもできる。磁場形成用磁石13は均一で平行な磁場を形成できるものであればその構成および形状は問わない。振り子本体である永久磁石14の形状は円柱型に限るものではなく、例えば、四角柱であっても良い。磁場形成用磁石13は検出器12のハウジング(図示せず)に固定され、永久磁石14はその中心軸15の回りで回転可能となるような方法で、検出器12のハウジングの所定の位置に取り付けられる。

【0045】
円柱型の永久磁石14の端部18から永久磁石の長軸と平行に延在する腕部16を介して、慣性不動点を形成するための錘17が永久磁石14と接続されている。従って、永久磁石14とともに振り子本体を形成するこの錘17は永久磁石14の回転中心の回りを永久磁石14と共に回転する。図6において錘17は簡単化のため球状で示されているが、球状に限定されるものではない。

【0046】
また、錘17は上下に分岐した腕部19を介して、コイル20、23と共に磁気バネ21またはフィードバック手段24のいずれかを構成する永久磁石22、25と結合する。コイル20、23および永久磁石22、25を磁気バネとして使用する場合には、制御回路27が磁気バネを構成するコイル20、23に流れる電流を所定の値に制御する。また、コイル20、23および永久磁石22、25をフィードッバック手段24として使用する場合には、制御回路27は錘17の位置を検出する例えば静電容量検出器のような位置検出器26からの検出信号に基づき、錘の垂直移動を制御して錘を所定の静止位置に留めるような制御電流をコイル20、23に流す。なお、この制御電流は錘を移動させようとする力に対応するので、その波形は地面の震動に対応することになる。図6においては磁気バネ21またはフィードッバック手段24のいずれかを含む構成が示されているが、本発明は磁気バネ21またはフィードッバック手段24の両方を含まなくとも良い。フィードッバック手段24を含まない場合は錘17の位置が位置検出器26によって検出され記録または表示される。

【0047】
図7は、錘と永久磁石との組合わせ部分に関する他の実施の形態を示すものである。錘17の側部から伸びた一対の梁28が、それぞれの端部部分30、31において振り子の回転軸20と一致するように延伸する構造を有する。このため永久磁石14の中心部には何の加工を施すこともなく錘17と永久磁石14を回転軸20の回りで回転可能に配置することができる。

【0048】
図8は、本発明による地動検出器の他の実施の形態を示すもので、実際に試作した検出器を示すものである。(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は背面図、(d)は正面図である。

【0049】
図8(a)において、向かって左側に、磁気バネ用コイル32およびフィードッバック用コイル33が配置されている。これらコイル内部には上下に分岐する腕部34に結合された永久磁石(図示されていない)がそれぞれ挿入されている。

【0050】
そして、右側に重力打ち消し用磁場を発生するための永久磁石35と、振り子の本体を構成する円柱型永久磁石36(図示されていない)が配置されている。

【0051】
中央に上記永久磁石36と共に振り子を構成する板形状の錘37が配置されている。図8(b)でわかるように、錘37は永久磁石35の部分の空間が四角に抜かれて、この空間を半ば取り巻いている構造を有する。錘平板35の両側ではXヒンジ38により、永久磁石36の回転中心39と同じになるように固定されている。

【0052】
円柱永久磁石36は、振り子を構成する板状部37から延在する棒部材40を介して振り子の板状部37と結合し、窓枠型の磁場発生用永久磁石35のボーア41内に配置されている。

【0053】
錘37の位置検出器26として、例えば20nm以下の変移が検出可能な静電容量位置検出器(示されていない)が、磁気バネ32とフィードバックコイル33が取り付けられている板の裏側に錘の位置を測定するように取り付けられる。

【0054】
上記振動検出器の構成要素の材質は、コイル32、33のボビンや永久磁石36の保持部材で非磁性の必要がある部分はマコールが望ましく、他の構成部分は硬質アルミが望ましい。また、セラミックとアルミの融合材の使用も考えられる。この材料は比重がアルミに近く、線膨張率がセラミックに近い10-6程度であり、振動の減衰時間もステンレスの数分の1である。構造体の熱膨張を少なくし余分な寄生振動を防止するのに、効果がある。

【0055】
図9は、図8に示した地動検出器の、重力打ち消し用磁場を発生する永久磁石35と、振り子の本体を構成する円柱型永久磁石36、および中央に永久磁石36と共に振り子を構成する板形状の錘37の部分を示す斜視図である。図9において、Xヒンジ38は薄い板バネにより形成され、磁場発生用永久磁石35は中央に穴部41を有する窓枠状に形成されている。錘37に取付けられ錘のモーメントを変更可能にするネジ42、円柱型永久磁石36の位置を調節するために錘部分に取り付けられた位置変更機構43、窓枠型磁石35の位置を調節するX-Y-Zステージ44、基板46の高さを調節する調節ネジ45、そして支持部材47が設けられている。

【0056】
以上、平行磁場による永久磁石の回転モーメントにより、重力による振り子の回転モーメントを打ち消す構造、そして磁気バネおよびフィードバック制御手段を有する振動検出器の説明を行った。予備的な実験において、図8で示した振動検出器は、その動作において10秒程度の自然周期を確認し、それ以上の自然周期を達成することも期待できる。更に、ヒンジの復元力に磁気バネの電流を変えることで力を加えバネを強くしたり、逆に倒立的な力を加え弱くすることもできることがわかった。

【0057】
この装置の用途に関しては、地震等の振動検出器の他に、長周期の慣性不動点が得られる特徴から防振システムへの応用も考えられる。

【0058】
以上説明した、本発明の実施例は単なる一例であり、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題の少なくとも1つが解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果の少なくとも1つが得られる場合には、この構成要件が削除された効果が発明として抽出され得る。

【0059】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば永久磁石の長軸と磁場軸の角度がどのような状態であっても、回転モーメントが磁石に働かない無定位な状態を実現できる。このため、この振り子は従来のものよりも無定位にできる範囲をより広くすることができ、そして自然周期を長くすることができる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図10】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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