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明細書 :縞位相解析方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3475245号 (P3475245)
公開番号 特開2003-014426 (P2003-014426A)
登録日 平成15年9月26日(2003.9.26)
発行日 平成15年12月8日(2003.12.8)
公開日 平成15年1月15日(2003.1.15)
発明の名称または考案の名称 縞位相解析方法
国際特許分類 G01B 11/16      
FI G01B 11/16 G
請求項の数または発明の数 2
全頁数 10
出願番号 特願2001-195032 (P2001-195032)
出願日 平成13年6月27日(2001.6.27)
審査請求日 平成13年6月27日(2001.6.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】396019376
【氏名又は名称】和歌山大学長
発明者または考案者 【氏名】森本 吉春
【氏名】藤垣 元治
【氏名】米山 聡
【氏名】山本 裕子
個別代理人の代理人 【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
審査官 【審査官】山下 雅人
参考文献・文献 特開2001-4338(JP,A)
特開2001-108422(JP,A)
特開 昭60-195406(JP,A)
特開2003-75134(JP,A)
特開 平7-83637(JP,A)
特許2903111(JP,B2)
調査した分野 G01B 9/00 - 11/30
特許請求の範囲 【請求項1】
mとnを3以上の互いに素である整数として、位相方向が互いに異なった2つの干渉縞を、一方の干渉縞の位相を全体で整数m周期分、他方の干渉縞の位相を全体で整数n周期分だけ位相シフトするように等位相間隔で位相シフトさせながら撮影したm×n枚の画像から、前記一方の干渉縞に関してm枚ごとにn枚の画像を抽出し、前記他方の干渉縞に関してn枚ごとにm枚の画像を抽出し、各々の干渉縞に関する位相変化を各々に関して抽出したこれらの画像に位相シフト法を適用することにより得ることを特徴とする干渉縞位相解析方法。

【請求項2】
mとnを3以上の互いに素である整数として、位相方向が互いに異なった2つの干渉縞を、一方の干渉縞の位相を全体で整数m周期分、他方の干渉縞の位相を全体で整数n周期分だけ位相シフトするように等位相間隔で位相シフトさせながら撮影したm×n枚の画像から、前記一方の干渉縞に関してm枚ごとにn枚の画像を抽出し、前記他方の干渉縞に関してn枚ごとにm枚の画像を抽出し、各々の干渉縞に関する位相変化を各々に関して抽出したこれらの画像に積分型位相シフト法を適用することにより得ることを特徴とする干渉縞位相解析方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、縞の位相解析方法に関し、特に、非接触変形計測装置や微小変形ひずみ計測検査装置等において用いられるモアレ干渉法における干渉縞の位相解析方法に関する。

【0002】
【従来の技術】モアレ干渉法は、試料物体の微小な変位やひずみを非接触において計測するのに多くの研究で用いられている計測方法であり、特に、電子部品の熱変形の計測をはじめ、生体力学や圧電材料、建築用材料等の研究にも広く用いられている。このような従来の位相解析方法としては、3枚又は4枚の画像を使用する位相シフト法、特開2001-004338において開示されている積分型位相シフト法、森本吉春、瀬口靖幸および坂上英和による「モアレ法および格子法によるひずみ解析-画像処理とフーリエ変換の利用-、機械の研究」、Vol.41,No.1,224-230(1989)に記載のフーリエ変換格子法などがある。

【0003】
位相シフト法は、原理が単純で広く用いられている方法である。ここにその原理を簡単に説明する。位相シフト法は、格子の位相を1周期分だけ変化させながら複数枚の格子画像を撮影し、得られた複数の画像から位相分布を求める方法である。すべての画素において輝度は1周期分変化するため、その輝度変化から各点ごとに独立して、すなわち周囲の画素の輝度変化の情報を使わずに位相値を求めることができる。そのため、段差や不連続のある物体の形状計測に有効な手法と言える。ここでは、最も一般的に用いられているπ/2ずつ位相シフトされた格子の4つの画像における輝度から位相を求める位相シフト法の原理を示す。図1は、従来の位相シフト法の原理を説明する図である。図1aは元の格子で、図1b~dはそれぞれ位相がπ/2、π、3π/2だけ位相シフトされた格子である。図1aにおける格子の位相分布を図1eに示す。位相シフト量α=0における格子の位相を初期位相と呼ぶ。図1a~dの各画像において点Pの輝度を順にI、I、I、Iとし、点Pの初期位相をθとする。初期位相とは、位相シフト量0のときの格子の位相のことであり、図1gにおけるθの値である。位相シフト量αと点Pにおける輝度変化の関係を図1fに示す。IとIは、それぞれ輝度の最大値と最小値である。点Pにおける輝度I、I、I、Iは、以下のように表すことができる。
=a cosθ+b
=a cos(θ+π/2)+b
=a cos(θ+π)+b
=a cos(θ+3π/2)+b (1)
ここで、aとbは、それぞれ以下に示すように位相シフト時の輝度の振幅と輝度の平均値とする。
【数1】
JP0003475245B2_000002t.gif式(1)より、I-IとI-Iを計算すると、それぞれ以下の式が得られる
-I=-2a cosθ (3)
-I=2a sinθ (4)
これにより、以下の式が得られる。
【数2】
JP0003475245B2_000003t.gifx-y平面において、原点と点(x,y)を結ぶ直線とx軸の正の方向とが成す一般角をθとする。ここではこのθを位相と呼ぶ。図2にx-y平面における点(x,y)とその位相θの関係を示す。式(5)から位相θを算出する方法のひとつとして、xとyの値に応じて以下の表1に示すような値をとる関数arg(x,y)を定義する。
【表1】
JP0003475245B2_000004t.gifこれを用いれば、位相θを以下の式に示すようにI、I、I、Iの値を用いて求めることができる。
θ=arg(-(I-I),I-I) (6)
式(6)で得られる位相の範囲は0~2πであり、図1eに示す分布となる。しかし、2次元の干渉縞解析に適用する場合は、1方向ごとに順に位相シフトを行うことしかできず、1フレーム撮影するごとに結果を得ることはできなかった。

【0004】
積分型位相シフト法は撮影時に位相シフトのための縞の動きを停止させる必要がなく、一定速度で位相シフトを行えばいいので高速化が容易な手法である。しかし、この方法も1次元の縞の解析方法であるため、2次元の縞の解析を行うことはできなかった。

【0005】
また2次元の縞の位相解析方法としては、フーリエ変換格子法などがあるが、解析時にフーリエ変換を行うため時間がかかるという問題点があった。

【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、モアレ干渉法では試料物体の変位を表す干渉縞が得られるが、従来はx軸方向の変位を表す干渉縞とy軸方向の変位を表す干渉縞を別々に撮影し、別々にそれぞれの縞の解析を行ってきた。このような従来の方法では1フレームの撮影ごとに結果の位相分布を求めることはできない。そこで、x軸方向の変位を表す干渉縞とy軸方向の変位を表す干渉縞を同時に撮影し解析する方法が求められている。したがって、本発明の目的は、モアレ干渉法などで2方向に現れる2次元の干渉縞の位相を、これらの干渉縞を撮影した画像を用いて成分別(方向別)に分離して求める縞位相解析方法を提供することである。

【0007】
【課題を解決するための手段】本発明による縞位相解析方法は、mとnを3以上の互いに素である整数として、2つの互いに異なった方向の縞を、一方の縞の位相を全体で整数m周期分、他方の縞の位相を全体で整数n周期分だけ位相シフトするように等位相間隔で位相シフトさせながら撮影したm×n枚の画像から、前記一方の縞に関してm枚ごとにn枚の画像を抽出し、前記他方の縞に関してn枚ごとにm枚の画像を抽出し、各々の縞に関する位相変化を各々に関して抽出したこれらの画像に位相シフト法を適用することにより得ることを特徴とする。例えばm=3、n=4とした場合、カメラで12枚の画像を撮影する際に、一方の縞の位相を全体で3周期分、他方の縞の位相を全体で4周期分だけ位相シフトするように等位相間隔で位相シフトを行いながら撮影する。撮影された12枚の画像から、前者は3枚ごとに4枚の画像を、後者は4枚ごとに3枚の画像を抽出すれば、それぞれの画像は、前者については一周期あたり4回の位相シフトを、後者については3回の位相シフトを行ったのと同等になり、各々のこれらの画像に従来の位相シフト法を適用することによって成分別(方向別)の位相をそれぞれ求めることができる。

【0008】
前記異なった方向の縞の数を3以上にしても本発明による同様の原理における縞位相解析を行うことができる。この場合、本発明による縞位相解析方法は、複数pの互いに異なった方向の縞を、各々の位相を全体で全体で3以上でどの2つを取っても互いに素となる整数q(r=1,...,p)周期分だけ位相シフトするように等位相間隔で位相シフトさせながら撮影したq×q×,...,×q枚の画像から、r番目の縞に関してq枚ごとq×q×,...,×q/q枚の画像を抽出し、各々の縞に関する位相変化を各々に関して抽出したこれらの画像に位相シフト法を適用することにより得ることを特徴とする。

【0009】
上記手法を従来の積分型位相シフト法に応用して連続して変形する縞模様の位相値を求めることもできる。この場合も、例えば12枚の画像を撮影する間に連続して縞の位相をシフトさせる。上記と同様にその間に一方の干渉縞の位相を3周期分、他方の位相を4周期分だけ連続で位相をシフトさせる。上記と同様に、撮影された12枚の画像から、前者は3枚ごとに4枚の画像を、後者は4枚ごとに3枚の画像を抽出すれば、それぞれの画像は、前者については1周期あたり4回の位相シフトを、後者については3回の位相シフトを行ったのと同等になり、これらの画像から成分別(方向別)の位相をそれぞれ求めることができる。こうすることにより、過去12枚の画像を用いて連続して変形する縞画像の位相値も求めることができる。このように積分型位相シフト法と組み合わせれば、高速現象の縞解析に適用が可能になる。

【0010】
上記手法のいずれを用いる場合も、過去に撮影された例えば12枚の画像から各点のx方向とy方向の位相値をそれぞれ求めることができるため、撮影フレームごとに結果を得ることができる。

【0011】
【発明の実施の形態】本発明による縞位相解析法を位相シフト法に適用する場合について説明する。2つの重なった縞模様から、各点の2次元の位相値φ、φを求めるために、異なる速度でx方向とy方向の位相シフトを行う。本例においては12枚の画像を撮影する間にx方向の縞を3周期、y方向の縞を4周期させる。ここでは、CCDカメラで撮影する前の明るさを光の強度と呼び、撮影した結果得られる値を輝度と呼ぶ。ある1点における縞の強度のx方向成分とy方向成分をそれぞれIxn、Iynとする。IxnとIynはそれぞれ以下のように表すことができる。
【数3】
JP0003475245B2_000005t.gifここで、aとbは光の振幅、nは位相シフト回数を表す。CCDカメラで撮影される輝度は以下のように表される。
【数4】
JP0003475245B2_000006t.gifここでIbackは背景の光の強度を表す。図3は、ある点における位相シフト時の光の強度の変化を示す図である。図3a及びbは、それぞれx方向成分とy方向成分の光の強度を示し、図3cは合成した強度を示す。図3cにおいて▲印は3個ごとに抽出された輝度であり、○印は4個ごとに抽出された輝度である。▲印の輝度に注目すると、図3aに示すx成分が3π/2ずつ位相シフトされたとき、すなわちnが3ずつ増加するとき、図3(b)に示すy成分での輝度は一定値となっている。したがって、図3cでは、これらに対応する点の輝度変化は図3aの輝度変化と一致している。よって図3cにおける▲印の輝度は、3π/2ずつ位相シフトを行った場合と同じ輝度変化となる。同様に、図3cにおける○印の輝度は、π/2ずつ位相シフトを行った場合と同じ輝度変化となる。このように、撮影した12枚の画像におけるある1点の輝度(I~I11)と縞の位相値φ、φは以下の式に示す関係となり、これより位相値φ、φをそれぞれ求めることができる。
【数5】
JP0003475245B2_000007t.gif【0012】本発明における縞位相解析法を積分型位相シフト法に適用した場合について説明する。各方向の縞の位相を連続でシフトさせた場合、つまり画像を1枚撮影する間に一方の縞の位相を2π/4、他方の縞の位相を2π/3ずつ連続でシフトさせた場合、ある1点における縞の強度のx方向成分Ixnとy方向成分Iynはそれぞれ以下の式のように表すことができる。
【数6】
JP0003475245B2_000008t.gifこのとき、CCDカメラで撮影される輝度は以下の式で表される。
【数7】
JP0003475245B2_000009t.gifここで、a、b、Ibackは先ほどと同じ意味を持つ。図4は、ある1点での光の強度の変化の様子を示す図である。上述した位相シフト法のときと同様に、図4a及び4bはそれぞれx方向成分とy方向成分の縞の強度を示し、図4cは合成した強度を示す。位相シフトn回からn+1回の1/30秒間に蓄えられた光の強度の和がIとして出力される。位相シフト法のときと同様に、図4cにおいて右下がりの斜線で囲まれた部分の面積は3個ごとに抽出された輝度を表し、右上がり斜線で囲まれた部分の輝度は図4aに示すx成分が3π/2ずつ位相シフトされたとき、すなわちnが3ずつ増加するとき、図4bに示すy成分での輝度(Iy0、Iy3、Iy6およびIy9)は一定値となっている。したがって、図4cでは、これらに対応する点では図4aの輝度変化と一致している。よって右下がり斜線で囲まれた部分の輝度からx方向の位相値を求めることができる。同様に、図4cにおける右上がり斜線で囲まれた部分の輝度からy方向の位相値を求めることができる。このように、撮影された12枚の画像におけるある1点の輝度(I~I11)と縞の位相値φ、φは以下の式に示す関係となり、これにより位相値φ、φをそれぞれ求めることができる。
【数8】
JP0003475245B2_000010t.gif【0013】上述した位相シフト法及び積分型位相シフト法に関する実施形態において、nを12で割った余りをmとするとき、ある点におけるn枚目の輝度をIとする。これを式(9)または式(12)に適用すれば、過去に撮影された12枚の画像から各点の2方向の位相値をそれぞれ求めることができるため、1フレーム撮影するごとに結果を得ることができる。

【0014】
図5及び6は、各々、上述した本発明による位相シフト法及び積分型位相シフト法に関する縞位相解析法を用いて、シミュレーションを行い、位相解析結果を確認した画像である。各々の図において、aないしlは撮影した12枚の画像であり、m及びnは、各々、得られたx軸方向及びy軸方向の位相分布である。これらの図から、本発明の方法により、2種類の縞模様が混じった画像から、同時にそれぞれの位相分布が得られていることが分かる。

【0015】
本発明による縞位相解析方法をモアレ干渉法における干渉縞に適用する場合に関して説明する。図7はモアレ干渉法の光学系の概念を示す図である。モアレ干渉法では、x軸方向の変位uを表す干渉縞とy軸方向の変位vを表す干渉縞とを得る。これら2つの干渉縞を同時に計測するために、2次元格子を貼り付けた試料1に、x軸方向に関してB1及びB2、y軸方向に関してB3及びB4の合計4方向から光を入射し、それぞれの入射光の±1次光が試料1に対して垂直に反射するように光学系を調節する。B1及びB2の±1次光はレンズ2を経てスクリーンにx方向の変位uを表す干渉縞を発生し、B3及びB4の±1次光はレンズ2を経てスクリーンにy方向の変位vを表す干渉縞を発生する。本例においては、上記4つの光を試料1に同時に入射することによって得られた2方向成分の干渉縞を、例えば、CCDカメラ(図示せず)によって撮影する。得られた画像を解析することで変位u、vを表す干渉縞の位相を方向別に分離する。4方向からの光波を、
【数9】
JP0003475245B2_000011t.gifのように表すと、すべての回折光によりスクリーン上に得られる光の強度は、
【数10】
JP0003475245B2_000012t.gifとなる。式(14)の右辺において位相値を求める際に必要な項は2~3項であり、4~5項はx方向とy方向の入射光によって得られる干渉縞である。この干渉縞が発生するとモアレ干渉法に本発明の2次元位相シフト法を適用できない。したがって、次に、この不要な干渉縞を消去する方法を説明する。x方向の光B1及びB2を同じ方向に動かすことにより、不要な干渉縞のピッチをCCDカメラで撮影できないほど小さくすることによって、その影響を無視できるようにする。この結果、2~3項目のモアレ縞だけが撮影され、これらの縞に本発明による縞位相解析法を適用し、x方向及びy方向の縞の位相値を求めることができる。

【0016】
図8は、上述した本発明による縞位相解析法をモアレ干渉法に実際に用いる場合の光学系の一例を示す図である。SGは試料格子であり、DGは反射型回折格子であり、Lはレンズであり、BEはビームエキスパンダであり、PT1及びPT2はピエゾステージであり、M1及びM3は可動ミラーであり、M2及びM4は傾き調節ミラーであり、M5は両面ミラーであり、M6及びM7はミラーであり、WGはのこぎり波発生器である。試料には1200(ライン/mm)の正弦波状回折格子を用いる。干渉縞の位相シフトを行うために、図8の光学系において、ミラーM1及びM3を法線方向に移動させる。光路長がレーザの波長の距離だけ変化するようにミラーを移動することによって、2πの位相シフトを行うことができる。変位uを表す干渉縞が2π/4ずつ、変位vを表す干渉縞が2π/3ずつ位相シフトするようにミラーM1及びM3をCCDカメラで撮影するたびに移動させる。図9aないし9lは、このようにして得られた12枚の干渉縞の画像である。図10a及び10bは、各々、上述した本発明の縞位相解析法を図9の画像に用いた結果得られた、x軸及びy軸方向の位相分布である。図10aは、図9a、9d、9g及び9jから、図10bは、図9a、9e及び9iから得られたものである。このようにして、2つの干渉縞が重なった画像から、それぞれの縞の位相値が求められることが分かる。
図面
【図2】
0
【図3】
1
【図7】
2
【図1】
3
【図4】
4
【図8】
5
【図5】
6
【図10】
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【図6】
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【図9】
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