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明細書 :光アイソレ—タ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第3054707号 (P3054707)
登録日 平成12年4月14日(2000.4.14)
発行日 平成12年6月19日(2000.6.19)
発明の名称または考案の名称 光アイソレ—タ
国際特許分類 G02B  6/12      
G02B 27/28      
FI G02B 6/12 L
G02B 27/28
請求項の数または発明の数 11
全頁数 7
出願番号 特願平11-075746 (P1999-075746)
出願日 平成11年3月19日(1999.3.19)
審査請求日 平成11年3月19日(1999.3.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012327
【氏名又は名称】東京大学長
発明者または考案者 【氏名】中野 義昭
【氏名】竹中 充
個別代理人の代理人 【識別番号】100059258、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 暁秀 (外8名)
審査官 【審査官】福田 聡
参考文献・文献 特開 平7-104227(JP,A)
IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS,VOL.9,NO.5,MAY 1997,pp.631-633
第46回応用物理関係連合講演会講演予稿集、1999年春季、第3分冊(1999年3月28日発行)、第1219頁
調査した分野 G02B 6/12 - 6/14
G02B 27/28
G02F 1/00 - 1/125
G02F 1/29 - 7/00
要約 【課題】 半導体基板上に集積化できる光アイソレータを実現する。
【解決手段】 本発明による光アイソレータは、半導体基板上に形成した光導波路と、この光導波路上に形成した光吸収性磁性材料層とを有する導波路構造体を具える。磁性材料層は導波路を伝搬する光波の磁気ベクトルの振動方向と対応する方向に磁化する。導波路を伝搬する光波が導波路全体として感ずる等価屈折率は、光磁気効果により光波の伝搬方向に応じて変化するので、導波路を伝搬する光波の減衰量を一方向と反対方向とで相違させることができ、この減衰量の差を利用することにより光アイソレータを構成することができる。
特許請求の範囲 【請求項1】
層形成すべき表面を有する第1導電型の半導体基板と、この基板上に形成され、第1導電型の第1のクラッド層と、この第1のクラッド層上に形成した活性層と、活性層上に形成した第1導電型とは反対の第2導電型の第2のクラッド層と、前記半導体基板の層形成面とは反対側に形成した第1の電極と、前記第2のクラッド層の上側に形成した第2の電極とを有する半導体光増幅器構造体を具え、
前記第1及び第2のクラッド層並びに活性層が、光波が伝搬する光導波路を構成し、
前記半導体光増幅器構造体が、さらに前記光導波路を伝搬する光波に対して光吸収作用を有する光吸収性磁性材料層を具え、前記磁性材料層が前記光波の磁気ベクトルの振動方向と対応する方向の磁界成分を有するように磁化され、
前記導波路構造体が、前記光吸収性磁性材料層の光磁気効果により光導波路を伝搬する光波に対して伝搬方向に応じて等価屈折率が変化する非相反性光学特性を有し、この非相反性の等価屈折率変化により、光導波路を第1の方向に伝搬する第1の光波の当該導波路を伝搬する際に生ずる減衰量が第1の方向とは反対の第2の方向に伝搬する第2の光波の当該導波路を伝搬する際に生ずる減衰量よりも小さくなるように構成したことを特徴とする光アイソレータ。

【請求項2】
前記第1の光波を伝送系に沿って伝送すべき信号光とし、前記第2の光波を信号光とは反対の方向に伝搬する戻り光としたことを特徴とする請求項1に記載の光アイソレータ。

【請求項3】
前記信号光をTMモード波とし、前記光吸収性磁性材料層を前記基板の層形成面と平行に形成すると共に前記信号光の磁気ベクトルの振動方向と対応する方向の磁界成分を有するように磁化したことを特徴とする請求項2に記載の光アイソレータ。

【請求項4】
前記信号光をTEモード波とし、前記光吸収磁性材料層を前記基板の層形成面とほぼ直交するように形成すると共に信号光の磁気ベクトルの振動方向と対応する方向の磁界成分を有するように磁化したことを特徴とする請求項2に記載の光アイソレータ。

【請求項5】
前記磁性材料を、ニッケル、鉄、コバルト又はイットリウム鉄ガーネット(YIG)の磁性材料から選択したことを特徴とする請求項1に記載の光アイソレータ。

【請求項6】
層形成すべき表面を有する第1導電型の半導体基板と、この半導体基板の層形成すべき面の上側に形成した第1導電型の第1のクラッド層と、第1のクラッド層の上側に形成した活性層と、活性層の上側に形成した第1導電型とは反対の第2導電型の第2のクラッド層と、前記半導体基板の層形成すべき面とは反対側の面に形成した第1の電極と、前記第2のクラッド層の上側に形成した第2の電極とを有する半導体光増幅器構造体を具え、
前記第1のクラッド層、活性層及び第2のクラッド層により光導波路を構成し、前記第2の電極が、導波路を伝搬する光波の磁気ベクトルの振動方向と対応する方向の磁界成分を有するように磁化した光吸収性磁性材料層を含み、前記光導波路と第2の電極の磁性材料層とが光導波路構造体を構成し、この光導波路構造体が、前記光吸収性磁性材料層の光磁気効果により光導波路を伝搬する光波に対して伝搬方向に応じて等価屈折率が変化する非相反性光学特性を有し、この非相反性の等価屈折率の変化により、光導波路を第1の方向に伝搬する第1の光波の当該導波路を伝搬する際に生ずる減衰量が第1の方向とは反対の第2の方向に伝搬する第2の光波の当該導波路を伝搬する際に生ずる減衰量よりも小さくなるように構成したことを特徴とする光アイソレータ。

【請求項7】
さらに、前記第1の電極と第2の電極との間に接続した直流バイアス源を具え、前記第1の光波が導波路を伝搬する際に受ける減衰を補償するように光増幅を行うことを特徴とする請求項6に記載の光アイソレータ。

【請求項8】
前記第1の光波を光増幅すべき信号光とし、前記光吸収性磁性材料層が、前記信号光の磁気ベクトルの振動方向と対応する方向の磁界成分を有するように磁化されていることを特徴とする請求項6に記載の光アイソレータ。

【請求項9】
前記第2の電極が、前記第1の光波の磁気ベクトルの振動方向と対応する方向に磁化したニッケル層と金層とを有することを特徴とする請求項6に記載の光アイソレータ。

【請求項10】
前記半導体基板をInPで構成し、前記第1及び第2のクラッド層をInPで構成し、前記活性層をInGaAsPで構成したことを特徴とする請求項6に記載の光アイソレータ。

【請求項11】
前記第1導電型をn型とし、前記第2導電型をp型としたことを特徴とする請求項10に記載の光アイソレータ。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光アイソレータ、特に半導体レーザや光導波路と共に基板上に集積化することができる光アイソレータに関するものである。

【0002】
【従来の技術】光通信システムにおいては、光ファイバの端面での反射光や散乱光が光源側に戻るのを防止するため光アイソレータが用いられている。現在実用化されている光アイソレータとして、光磁気材料による偏光面の回転を利用した光アイソレータが実用化されている。例えば、ファラディ回転型の光アイソレータは偏光子、光学的に透明な材料のファラディ回転子、及び検光子で構成されており、順方向に進む円偏光のうち偏光子の偏光面と一致した偏光成分は偏光子を通過し、ファラディ回転子により偏光面が45°回転し、偏光子に対して45°傾いている検光子を通過して出射する。一方、順方向とは反対の方向に伝搬する戻り光は、検光子を通過した後ファラディ回転子により偏光面が45°の回転を受けて偏光子に戻るため、偏光子により阻止される。この従来の光アイソレータで用いられている偏光子及び検光子として偏光ビームスプリッタや複屈折プリズムが用いられている。

【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述した既知の光アイソレータは、半導体デバイス構造を有していないため、半導体レーザや光変調器のような半導体光学素子と一体的に製造することができなかった。このため、半導体レーザ等の半導体素子が集積化されている光回路基板とは別体構造として作成しなければならず、その製造工程が複雑になるばかりでなく、製造コストも高価になる欠点があった。特に、位相整合を必要とするため、精密な加工処理が必要であり製造工程が複雑になる欠点があった。一方、光アイソレータが半導体製造技術を用いて半導体レーザやフォトダイオード等の半導体素子と同一製造技術を用いて基板上に形成できれば、一層精密な製造工程で製造することができ、しかも製造コストも大幅に安価にすることが可能である。

【0004】
従って、本発明の目的は、半導体製造技術を用いて半導体基板上に集積化することができる光アイソレータを実現することにある。

【0005】
さらに、本発明の別の目的、位相整合が不要となり、複雑な製造工程を用いることなく製造できる光アイソレータを実現することにある。

【0006】
【課題を解決するための手段】本発明による光アイソレータは、層形成すべき表面を有する第1導電型の半導体基板と、この基板上に形成され、第1導電型の第1のクラッド層と、この第1のクラッド層上に形成した活性層と、活性層上に形成した第1導電型とは反対の第2導電型の第2のクラッド層と、前記半導体基板の層形成面とは反対側に形成した第1の電極と、前記第2のクラッド層の上側に形成した第2の電極とを有する半導体光増幅器構造体を具え、前記第1及び第2のクラッド層並びに活性層が、光波が伝搬する光導波路を構成し、前記半導体光増幅器構造体が、さらに前記光導波路を伝搬する光波に対して光吸収作用を有する光吸収性磁性材料層を具え、前記磁性材料層が前記光波の磁気ベクトルの振動方向と対応する方向の磁界成分を有するように磁化され、前記導波路構造体が、前記光吸収性磁性材料層の光磁気効果により光導波路を伝搬する光波に対して伝搬方向に応じて等価屈折率が変化する非相反性光学特性を有し、この非相反性の等価屈折率変化により、光導波路を第1の方向に伝搬する第1の光波の当該導波路を伝搬する際に生ずる減衰量が第1の方向とは反対の第2の方向に伝搬する第2の光波の当該導波路を伝搬する際に生ずる減衰量よりも小さくなるように構成したことを特徴とする。

【0007】
本発明は、光磁気効果を利用することにより、光導波路を伝搬する光波が導波路全体について感ずる屈折率、すなわち等価屈折率を光波の伝搬方向に応じて変化させることができると言う認識に基づいている。等価屈折率を光波の伝搬方向に応じて変化させることができれば、一方向に伝搬する光波の減衰量と反対方向に伝搬する光波の減衰量とを相違させることができ、光導波路を伝搬する際の減衰量の差異を利用することにより光アイソレータを実現できる。

【0008】
本発明は上述した認識に基づくものであり、光磁気効果による非相反性の屈折率変化を得るため、光導波路上に光吸収性の磁性材料層を形成し、この光吸収性磁性材料層を、光導波路を伝搬する光波の磁気ベクトルの振動方向と対応する方向に磁化する。光波は光導波路と共に光吸収性磁性材料層をも伝搬するため、伝搬する光波は導波路構造体全体として光吸収性磁性材料層の光磁気効果を受け、磁性材料層が光吸収性の場合屈折率の実部だけでなく虚部も非相反性となり、伝搬方向に応じて導波路を伝搬する際の減衰量を相違させることができる。この際、磁性材料層の磁化方向を適切に設定するだけで伝搬方向に応じて減衰量を相違させることができる。この結果、位相整合のための複雑な構造及び精密な加工工程が不要になる。

【0009】
次に、本発明による光導波路構造体の光磁気効果による非相反性について理論的に説明する。ここで、後述する図1に示すxyz座標系(光波の伝搬方向をz方向とし、x及びy方向を光波の伝搬方向と直交する方向とする)を想定する。一般に光磁気材料の性質は誘電テンソルで表され、導波路上に形成されている磁性材料が磁化されていないとき、その誘電率εは次式で表される。
【化1】
JP0003054707B1_000002t.gifここで、ε0 は真空中の誘電率を表す。(1)式から明らかなように、光吸収性磁性材料が磁化されていない場合、その誘電テンソルは対称性を有し、従って光波の伝搬方向に応じて等価屈折率が変化する非相反性を呈することはない。

【0010】
一方、光吸収性磁性材料がy方向に磁化されているとき、その誘電率εは次式で表される。
【化2】
JP0003054707B1_000003t.gif(2)式から明らかなように、光吸収性磁性材料層が磁化されている場合、その誘電テンソルは非対角成分を有するから、この非対角成分の存在による光磁気効果により光波の伝搬方向に応じて等価屈折率が変化する非相反性が生ずる。

【0011】
光吸収性磁性材料がy方向に磁化されている場合と磁化されていない場合との間の、z方向にTMモードで伝搬する光波に対する等価屈折率の変化分は次式で表すことができる。
【化3】
JP0003054707B1_000004t.gifここで、Δn+iΔkは、等価屈折率の変化分を表し、k0 は真空中の光の波数であり、nは導波路の各層の屈折率であり、Hy は導波路上に形成した磁性材料のTMモードの磁界成分である。

【0012】
一方、z方向とは反対の-z方向に伝搬する光波に対する等価屈折率の変化分は、(3) 式の右辺の積分項のεxzの項の符号が反転するだけで残りの要素については同一である。従って、進行波と後退波との間で等価屈折率が相違することになる。この光磁気効果による非相反性の等価屈折率の変化を積極的に利用することにより、光波が当該導波路を伝搬する際に生ずる光導波路から光吸収性磁性材料層へのエネルギー移行によるエネルギー減衰量が伝搬方向に応じて変化することになり、光アイソレータを実現することができる。この場合、光導波路構造体を半導体光増幅器構造とすることにより、入射した信号光を、導波路を伝搬する際の減衰量を補償するように光増幅して出射させることができるので、信号光を減衰させることなくアイソレーション機能を実現することができる。

【0013】
次に、アイソレーション比について説明する。アイソレーション比IR は、以下の式により表すことができる。
【化4】
R =後退波の出力強度/進行光の出力強度 (4)
(2)式を利用することにより、アイソレーション比は進行波の減衰と後退波の減衰との差2Δkで表すことができ、これを(5)式で示す。
【化5】
JP0003054707B1_000005t.gifここで、Lはデバイス長である。そして、後述する実施例で説明する光アイソレータについてシミュレーションした結果、1.58mmのデバイス長で40dBのアイソレーション比を得ることができることが確認された。

【0014】
本発明による光アイソレータの実施例は、第1の光波を伝送系に沿って伝送すべき信号光とし、前記第2の光波を信号光とは反対の方向に伝搬する戻り光としたことを特徴とする。このように構成すれば、伝送すべき信号光をあまり減衰させず、伝送路中で生じた反射光や散乱光のような戻り光を大幅に減衰させることができる。

【0015】
本発明による光アイソレータの別の実施例は、光吸収磁性材料層を、導波路を伝搬する第1の光波の磁気ベクトルの振動方向と対応する方向の磁界成分を有するように磁化した磁性材料で構成したことを特徴とする。光磁気効果による非相反性を得るためには、外部磁界の方向を導波路を伝搬する種々のモードの光波の磁気ベクトルの振動方向に対応させる必要があり、例えばTMモード光の場合基板面と平行な面に沿って磁性材料層を形成し、光波の伝搬方向と直交する方向に磁化することにより、光磁気効果による非相反性を達成することができる。

【0016】
光磁気効果を生ずる光吸収性の磁性材料として、ニッケル、鉄、コバルト等の強磁性材料やイットリウム鉄ガーネット(YIG)のような種々の磁性材料を用いることができる。

【0017】
本発明の光アイソレータの好適実施例は、基板を半導体基板とし、前記コア層並びに第1及び第2のクラッド層を半導体材料で構成したことを特徴とする。このように構成することにより、半導体製造技術を用いて半導体レーザと共に同一の半導体基板上に光アイソレータを形成することができる。

【0018】
本発明による光アイソレータの別の実施例は、層形成すべき表面を有する第1導電型の半導体基板と、この半導体基板の層形成すべき面の上側に形成した第1導電型の第1のクラッド層と、第1のクラッド層の上側に形成した活性層と、活性層の上側に形成した第1導電型とは反対の第2導電型の第2のクラッド層と、前記半導体基板の層形成すべき面とは反対側の面に形成した第1の電極と、前記第2のクラッド層の上側に形成した第2の電極とを有する半導体光増幅器構造体を具え、前記第1のクラッド層、活性層及び第2のクラッド層により光導波路を構成し、前記第2の電極が、導波路を伝搬する光波の磁気ベクトルの振動方向と対応する方向の磁界成分を有するように磁化した光吸収性磁性材料層を含み、前記光導波路と第2の電極の磁性材料層とが光導波路構造体を構成し、この光導波路構造体が、前記光吸収性磁性材料層の光磁気効果により光導波路を伝搬する光波に対して伝搬方向に応じて等価屈折率が変化する非相反性光学特性を有し、この非相反性の等価屈折率の変化により、光導波路を第1の方向に伝搬する第1の光波の当該導波路を伝搬する際に生ずる減衰量が第1の方向とは反対の第2の方向に伝搬する第2の光波の当該導波路を伝搬する際に生ずる減衰量よりも小さくなるように構成したことを特徴とする。このように、光アイソレータを半導体光増幅器の構造とすれば、第1の電極と第2の電極との間に接続した直流バイアス源の出力電圧を調整することにより入射した信号光を光増幅して入射した際のエネルギーレベルと同一のエネルギーレベルの信号光として出射させることができる。

【0019】
光増幅器構造を有する光アイソレータの別の実施例は、光増幅器構造体の一方の電極が第1の光波の磁気ベクトルの振動方向と対応する方向に磁化したニッケル層と金層とを有することを特徴とする。この実施例では、光増幅器の電極を光吸収性磁性材料層として兼用することができる利点がある。

【0020】
【発明の実施の形態】図1は本発明による光アイソレータの一例の構成を示す線図的断面図である。本例では、入射光を光増幅して出射させる半導体光増幅器構造を有する光アイソレータについて説明する。図1において、z方向に光波が伝搬し、x方向に沿って半導体層構造体を形成するものとする。n型のInPの基板1を用意し、この基板の層形成面1a上に半導体層構造を形成する。基板1は100μmの厚さを有し、その不純物濃度は例えば1×1018原子/cm3 とする。尚、n型の不純物として、例えばサルファを用いることができる。

【0021】
InP基板1上にn型InPの第1のクラッド層2を堆積する。この第1のクラッド層2は200nmの厚さ及び3.16の屈折率を有し、その不純物濃度は1×1017原子/cm3 とする。第1のクラッド層2上にアンドープのInGaAsPの第1のガイド層3を形成する。この第1のガイド層3の厚さは例えば120nmとし、その屈折率は3.37とする。第1のガイド層3上に、アンドープのInGaAsPの活性層4を形成する。この活性層4は100nmの厚さ及び3.4132の屈折率を有する。尚、本例では、単一層の活性層を用いたが、例えばInGaAsとInGaAsPとの多重量子井戸構造を用いることもできる。活性層4上にアンドープのInGaAsPの第2のガイド層5を形成する。第2のガイド層5は120nmの厚さ及び3.37の屈折率を有する。

【0022】
第2のガイド層5上にp型のInPの第2のクラッド層6を堆積する。この第2のクラッド層は300nmの厚さ及び3.16の屈折率を有し、その不純物濃度は1×1017原子/cm3 とする。第2のクラッド層6上に、p型のInGaAsのキャップ層7を形成する。このキャップ層7は30nmの厚さを有し、その不純物濃度は1×1019原子/cm3 とする。

【0023】
キャップ層7上に第1の電極8を形成する。第1の電極8は厚さ50nmのニッケル層8aとこのニッケル層8a上に形成した厚さ100nmの金層8bとで構成する。ニッケル層8aは金層8bと共に第1の電極8を構成すると共に、導波路を伝搬する光波に対して光磁気効果を及ぼす光吸収性の磁性材料層としても機能する。基板1の層形成面1aと反対側に第2の電極9を形成する。第2の電極は厚さ50nmのチタン層9aと厚さ100nmの金層9bとで構成する。第1の電極8と第2の電極9との間には直流バイアス源10を接続し、入射した光波をそのエネルギーレベル以上のレベルまで光増幅して出射させることができる。

【0024】
この光アイソレータは半導体光増幅器として機能すると共に単一の光導波路構造体としても機能する。すなわち、活性層4並びにその両側に形成した第1及び第2のガイド層3及び5が光導波路のコア層を構成し、第1のクラッド層2が光導波路の一方の側に形成したクラッド層を構成し、第2のクラッド層6及びキャップ層7が他方の側に形成したクラッド層を構成し、ニッケル層8aが光吸収性の磁性材料層を構成するので、コア層と第1及び第2のクラッド層とにより光導波路か構成されニッケル層8aにより光吸収性磁性材料層が構成される単一光導波路構造体を構成するものと考えることもできる。この場合、半導体レーザとほぼ同一構造の導波路型光アイソレータを同一半導体基板上に集積化することができる。

【0025】
本発明による光アイソレータは、導波路を伝搬する光波に対して非対称構造を有することが必要である。図1に示す実施例においては、y方向は無限大に拡がっているものとみなすことができる。一方、x方向については光吸収性磁性材料層が基板と反対側にだけ形成されているため、x方向において非対称構造が確保されている。

【0026】
第2のクラッド層6は、光導波路のコア層と光吸収性磁性材料層との間の距離を規定する重要な意義を有する。すなわち、第2のクラッド層6の厚さは導波路構造体を伝搬する光波の光吸収性磁性材料層8a側に滲み出すエネルギー量すなわち伝搬する光波のエバネッセント光が光吸収性磁性材料層に浸入する量を規定すると共に、光吸収性磁性材料層の伝搬する光波に対する光磁気効果を及ぼす強さを規定する重要な意義を有する。従って、第2のクラッド層6の厚さは導波路を伝搬する光波の波長や光アイソレータとしての用途を考慮して適切に設定する。

【0027】
次に、光吸収性磁性材料層8aの磁化方向について説明する。信号光として図1のz方向(紙面の左側から右側に向けて)に伝搬するTMモード波を想定する。この場合、TMモード波の磁気ベクトルはy方向に振動する。従って、磁性材料層8aはy方向に沿って延在するように形成すると共に、+y方向すなわち紙面の奥側から手前側に向くように磁化する。このような方向に磁化することにより、z方向に伝搬する信号光に対する減衰量は最小になり、反対方向(-z方向)に伝搬する反射波や散乱光に対する減衰量を最大にすることができ、大きなアイソレーション比を得ることができる。尚、磁性材料層の磁化方向は、導波路を伝搬する光波の磁気ベクトル方向に正確に対応させる必要はなく、磁気ベクトルの方向と対応する方向の磁化成分を有するように磁化するだけで所望の性能を得ることができる。

【0028】
尚、TEモード波の磁気ベクトルの振動方向は、図1のほぼx方向となるため、TEモード波が伝搬する導波路の場合、導波路構造体の側面に基板1の層形成面1aとほぼ直交する方向に延在する光吸収性磁性材料層を形成し、この光吸収性磁性材料層をほぼx方向に磁化することにより、この磁性材料層の光磁気効果を利用することができる。

【0029】
次に、図1に示す光アイソレータを光増幅作用を有する光アイソレータとして用いる場合の動作について説明する。信号光は+z方向(紙面の左側から右側に)伝搬するものとし、減衰させるべき戻り光は反対の-z方向に伝搬するものとする。この光アイソレータは、戻り光に対して強い減衰作用が生ずると共に信号光についても減衰作用がある。従って、入射した信号光に対して少なくともその減衰レベルがゼロレベルとなるように光増幅を行って出射させる。この光増幅率は直流バイアス源10の電圧レベルを調整することにより行う。この結果、伝搬すべき信号光のエネルギーレベルを低下させることなく、戻り光のエネルギーレベルを大幅に減衰させることができる。

【0030】
本発明は上述した実施例だけに限定されず種々の変形や変更が可能である。例えば、上述した実施例ではInP系の化合物半導体材料を用いたが、例えばGaAs系半導体材料やGaN系半導体材料を用いることもできる。GaAs系半導体材料を用いる場合、コアの材料としてGaAsを用いクラッド層の材料としてAlGaAsを用いることができる。また、GaN系半導体材料を用いる場合、コアの材料としてInGaNを用いクラッド層の材料としてGaNを用いることができる。
図面
【図1】
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