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明細書 :フラ—レン添加チタン酸ジルコン酸鉛およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第3035614号 (P3035614)
登録日 平成12年2月25日(2000.2.25)
発行日 平成12年4月24日(2000.4.24)
発明の名称または考案の名称 フラ—レン添加チタン酸ジルコン酸鉛およびその製造方法
国際特許分類 C04B 35/49      
H01L 41/187     
H01L 41/24      
FI C04B 35/49 Z
H01L 41/18
H01L 41/22
請求項の数または発明の数 2
全頁数 6
出願番号 特願平11-081100 (P1999-081100)
出願日 平成11年3月25日(1999.3.25)
審査請求日 平成11年3月25日(1999.3.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012327
【氏名又は名称】東京大学長
発明者または考案者 【氏名】宮沢 薫一
【氏名】伊藤 邦夫
【氏名】葛巻 徹
【氏名】関 史江
個別代理人の代理人 【識別番号】100059258、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 暁秀 (外8名)
審査官 【審査官】深草 祐一
参考文献・文献 特開 平5-254955(JP,A)
調査した分野 C04B 35/49
要約 【課題】 ゾル・ゲル法によってPZTを製造する場合に、従来よりも低い温度でペロブスカイト相を効果的に生成させることができる、PZTの新規な製造技術を提供する。
【解決手段】 有機溶媒中に、ジルコニウムとチタンのアルコキシドおよび酢酸鉛を安定化剤と共に溶解して得たコロイド溶液(ゾル)に、フラーレンを添加し、ゲル化後、乾燥ついで低温焼成する。
特許請求の範囲 【請求項1】
有機溶媒中に、ジルコニウムとチタンのアルコキシドおよび酢酸鉛を安定化剤と共に溶解して得たコロイド溶液(ゾル)に、フラーレンを添加し、ゲル化後、乾燥ついで低温焼成することを特徴とするフラーレン添加チタン酸ジルコン酸鉛の製造方法。

【請求項2】
請求項1の方法によって製造したフラーレン添加チタン酸ジルコン酸鉛。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フラーレン添加チタン酸ジルコン酸鉛およびその製造方法に関し、特に界面分極効果による高誘電率強誘電体・圧電体、計算機メモリーおよびマイクロアクチュエータ材料などの製造に有効に適用できるので、自動車産業、家電産業およびコンピュータ産業等の幅広い分野において好適に利用することができる。本発明を適用して特に好適な製品としては、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛;Pb(Zr,Ti)O3 )薄膜として従来用いられてきた圧電素子、計算機メモリー、赤外センサーおよび高誘電率コンデンサー等が挙げられる。

【0002】
【従来の技術】従来、PZT薄膜をゾル・ゲル法によって作製する場合には、通常、ペロブスカイト強誘電相を生成させるための温度として、 500~600 ℃以上が必要であった(例えば、 M.Klee et a1.,“ Deposition of Undoped and Doped Pb(Mg,Nb)O3-PbTiO3, Perovskite Thin Films on Pt and Conductive Oxide Electrodesby Spin-on Processing:Correlation of Growth and Electrical Properties”, Science and Technology of Electroceramic Thin Films, Kluwer AcademicPublishers, 1995, p.99、 K.Miyazawa et a1.“ Structure of Duplex Multilayer Pb(Zr0.53Ti0.47O3)Films Prepared by Sol-Gel Processing, J.Am.Ceram.Soc.,81(1998)2333)
【0003 】しかしながら、このような高温では、基板の電極金属がPZT膜内部に拡散して膜の組成がずれたり、大きな熱応力の発生によってPZT膜が剥離し易くなるという問題があった。また、マイクロデバイスを作製するために、圧電アクチュエータとして使用するPZT薄膜をゾル・ゲル法によって形成する場合も、焼成温度が高いと、同じ基板上に組み込まれた他の素子や電極接合部の特性の劣化原因となっていた。

【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の問題を有利に解決するもので、ゾル・ゲル法によってPZTを製造する場合に、従来よりも低い温度でペロブスカイト相を効果的に生成させることができる、PZTの新規な製造技術を提案することを目的とする。

【0005】
【課題を解決するための手段】さて、発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、PZTゾル中に、副原料としてC60に代表されるフラーレンを添加することが、所期した目的の達成に関し、極めて有効であることの知見を得た。本発明は、上記の知見に立脚するものである。

【0006】
すなわち、本発明は、有機溶媒中に、ジルコニウムとチタンのアルコキシドおよび酢酸鉛を安定化剤と共に溶解して得たコロイド溶液(ゾル)に、フラーレンを添加し、ゲル化後、乾燥ついで低温焼成することを特徴とするフラーレン添加チタン酸ジルコン酸鉛の製造方法である。

【0007】
また、本発明は、上記の方法によって製造したフラーレン添加チタン酸ジルコン酸鉛である。

【0008】
この発明において、有機溶媒としては、各種アルコールやトルエンが有利に適合する。また、安定化剤としては、ジエタノールアミンが好適である。さらに、焼成する場合の温度としては 400~500 ℃が好適である。なお、本発明において、得られるフラーレン添加チタン酸ジルコン酸鉛の形態は特に限定されることはなく、薄膜は勿論のこと、粉末やバルク体を含むものである。

【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明を具体的に説明する。本発明は、ジルコニウムとチタンのアルコキシドおよび酢酸鉛等のセラミックス前駆体を、安定化剤と共に、アルコールやトルエンなどの有機溶媒に溶解し、適量の水を用いて加水分解反応と重縮合反応を生じさせて、酸化物セラミックスのコロイド溶液(ゾル)を作り、このコロイド溶液にC60に代表されるフラーレンを添加し、ゲル化後、乾燥ついで低温焼成を施すことにより、フラーレンを含むチタン酸ジルコン酸鉛の薄膜、粉末およびバルク体を作製するものである。

【0010】
上記の方法の具体例として、ジルコニウムテトラ-n-プロポキシド(Zr(O-n-C3H7)4、以下ZNPと略記する)、チタンテトライソプロポキシド(Ti(iso-OC3H7)4、以下TIPと略記する)、酢酸鉛三水和物(Pb(OCOCH3)2・3H2O、 以下LAと略記する)、ジエタノールアミン(NH(C2H5O)2、以下DEAと略記する)およびイソプロピルアルコール(以下IPと略記する)を用いた場合について説明する。

【0011】
(1) PZTゾルの調製
アルゴン雰囲気のグローブボックス中において、図1に示すフローチャートに従って、 PZTゾルを調製する。ZrO2換算で純度:28.9mass%のZNP(n-プロピルアルコールを溶媒とする)、純度:99%のTIP(イソプロピルアルコールを溶媒とする)を用いた場合の、各原料の配合量は、 ZNPが 10.93g、 TIPが5.50g、LAが 16.69gである。各元素の配合比率はPb:Zr:Ti=110 :52:48とし、 Pbの蒸発を考慮して10at%だけ余分に添加した。なお、DEAはゾルの安定化剤である。表1に、 0.4MのPb(Zr0.52Ti0.48)O3ゾル 100 ml を作製するために必要な量を示す。

【0012】
【表1】
JP0003035614B1_000002t.gif【0013】(2) C60のトルエン(C6H5CH3) 溶液
トルエンに対するC60の溶解度は 2.2 mg/mlであり、この飽和C60トルエン溶液を用いることにした。

【0014】
(3) C60添加PZTゾルの調製
60添加PZT固体におけるC60の含有量が、体積割合で10, 20, 30 vol%になるように、上記PZTゾルとトルエン溶液との関係を求めたところ、表2のようになった。

【0015】
【表2】
JP0003035614B1_000003t.gif【0016】そこで、表3に示すような配合割合として、 C60添加PZTゾルの組成を決めた。

【0017】
【表3】
JP0003035614B1_000004t.gif【0018】表3の溶液の混合は、全てAr雰囲気グローブボックス中で行った。試験管に、PZTゾルを分取し、 DEAと酢酸を規定量加えて、十分に振とうし、均一になるまで混合した。酢酸の添加は、電極表面へのゾルのぬれ性を得るためである。

【0019】
(4) 基板
この実験では、 Pt(150nm) /Ti(50nm)/SiO2(1800nm)/Si基板を用いた。 PtとTiの薄膜は、Si基板の上に形成されたSiO2酸化膜にスパッターコートしたものである。

【0020】
(5) 焼成
基板へのコーテングと焼成のプロセスを、図2にフローチャートで示す。焼成条件は、焼成温度を 400℃と500 ℃とした。また、昇温速度:50℃/min、保持時間:10min 、雰囲気:大気中であり、スピンコート-焼成のプロセスを3回繰り返した。

【0021】
(6) C60の熱分析
大気中での加熱によるC60の熱的安定性について調べるために、示差熱重量分析を行った。

【0022】
以下、得られたC60添加PZT薄膜の分析結果を示す。
1.X線測定
図3および図4にそれぞれ、 PZTゾルを、 Pt/Ti/SiO2/Si基板上にスピンコート(5000rpm、 20s)し、 400℃および500 ℃で焼成した、 C60無添加のPZT薄膜(PZTonly)と、C60を 10vol%添加したPZT薄膜(PZT-10 vol%C60)のX線回折図形
【数1】
JP0003035614B1_000005t.gifを示す。なお、スピンコートと焼成は3回繰り返した。

【0023】
図3に示したとおり、400 ℃焼成の場合、PZTonly薄膜においては、パイロクロア相(Py)が大量に生成しており、相対的にペロブスカイト相(Pv)の発達は弱い。これに対し、PZT-10 vol%C60薄膜においては、パイロクロア相は少量発生しているのみであり、特に[100]に配向したペロブスカイト相の発達が著しい。また、 500 ℃焼成の場合、 PZTonly薄膜では、ほとんどがペロブスカイト相であるが、[100]配向は弱いのに対して、 PZT-10 vol%C60薄膜では、強い[100]配向が生じている。

【0024】
上記の結果から、C60を添加することによって、ペロブスカイト生成温度が大幅に低下すること、また強誘電特性を発揮するのに最も都合の良い[100]配向が強く発達することが明らかになった。特に、400 ℃の温度で十分に発達したペロブスカイト相を得ることができるという上記の結果は、従来よりも 200~100 ℃低い温度でペロブスカイト相を生じさせ得るということを示しており、 C60の添加がPZT薄膜の低温作製において極めて有効であることを示唆している。

【0025】
2.C60添加PZT薄膜の表面分析
図5に、 400 ℃で焼成したPZT-10 vol%C60薄膜の表面SEM像(a) と各元素のX線分析像((b) C, (c) Pb, (d) Zr, (e) Ti)を示す
【数2】
JP0003035614B1_000006t.gif。同図に示したとおり、平滑なPZT膜表面と一様な元素分布が得られている。特に、炭素(C)が均一に分布していることが明らかであり、本発明のC60添加PZTゾルは、良好なぬれ性と優れたC60の分散性を呈することが分かる。

【0026】
3.C60のTG-DTA分析
図6,7および8にそれぞれ、昇温速度を 1.2℃/min、10.0℃/minおよび50.0℃/minと変化させた場合の、C60粉末のTG-DTA(Thermogravimetry-differential thermal analysis)曲線を示す(大気中)。図6の341.8 ℃、図7の438.4 ℃、図8の492.6 ℃で示される補外開始温度から高温部で発熱ピークが観察され、同時に、重量減少を生じていることが分かる。発熱ピークと重量の減少は、C60の酸化を反映したものである。また、昇温速度が大きくなると発熱ピークはより高温側にシフトすることが分かる。本発明においては、PZT膜の焼成は、 50℃/min程度の昇温速度で行うため、400 ~500 ℃の焼成温度では、 C60がほとんど分解されることなく、PZT膜中に取り込まれていると考えて良いことが明らかである。

【0027】
以上、主にPZTの薄膜を製造する場合について説明したが、本発明はこれだけに限るものではなく、同様にして粉末やバルク体を製造することができる。また、粉体を成形後、焼結することによってPZT焼結体を製造することもできる。

【0028】
【発明の効果】以上述べたとおり、本発明によれば、ゾル・ゲル法によってPZTを製造する場合に、従来よりも低い温度でペロブスカイト相を効果的に生成させることができ、その結果、従来焼成時に懸念された、基板金属のPZT膜内部への拡散に伴う組成のずれや、大きな熱応力に起因したPZT膜の剥離、さらには基板上に組み込まれた他の素子や電極接合部の特性劣化を効果的に防止することができる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
3
【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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