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明細書 :光デバイス

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第3038383号 (P3038383)
登録日 平成12年3月3日(2000.3.3)
発行日 平成12年5月8日(2000.5.8)
発明の名称または考案の名称 光デバイス
国際特許分類 G02F  1/025     
G02F  2/02      
H01S  5/50      
FI G02F 1/025
G02F 2/02
H01S 5/50
請求項の数または発明の数 11
全頁数 8
出願番号 特願平11-160311 (P1999-160311)
出願日 平成11年6月8日(1999.6.8)
審査請求日 平成11年6月8日(1999.6.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012327
【氏名又は名称】東京大学長
発明者または考案者 【氏名】中野 義昭
【氏名】馬 炳眞
個別代理人の代理人 【識別番号】100059258、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 暁秀 (外2名)
審査官 【審査官】日夏 貴史
参考文献・文献 特開 昭60-17717(JP,A)
特開 平7-326823(JP,A)
応用物理学関係連合講演会講演予稿集 Vol.45,No.3,pp.1135(1998年)中津原克己 他
Electronics Letters,Vol.28,No.18,pp.1714-1715(1992年)B.Glance et al.
IEEE Photonics Technology Letters,Vol.6,No.1,pp.53-55(1994年)T.Durhuus et al.
調査した分野 G02F 1/015 - 1/025
G02F 1/313
G02F 1/35 - 1/365
G02F 2/02
H01S 5/50
要約 【課題】 大きな消光比が得られると共にディジタル的に動作するのに好適な光デバイスを実現する。
【解決手段】 導波路構造体の両側に第1及び第2の電極(7,8)を形成し、これら電極により導波路構造体にキャリァ注入領域(3a)及びこれに隣接する非キャリァ注入領域(3b)を形成する。キャリァ注入領域(3a)に大量のキャリァが蓄積されると、この領域の屈折率は隣接する非キャリァ注入領域の屈折率よりも相対的に低下する。この状態において、エネルギーレベルの低い光波が入射してもこの光波により消費されるキャリァ量は少ないため、この領域の屈折率は依然として非キャリァ注入領域の屈折率よりも低い状態に維持され、入射した信号光は外部に放射する。一方、エネルギーレベルの高い光波が伝搬すると、この光波により消費されるキャリァ量が増大し、この領域(3a)の屈折率は非キャリァ注入領域(3b)の屈折率よりも相対的に高くなり、入射面から出射面に至る光誘導導波路が形成される。この結果、ガイディング効果と光増幅効果の相乗効果により光増幅された信号光を出射させることができる。
特許請求の範囲 【請求項1】
層形成すべき面を有する半導体基板と、この半導体基板の層形成面上に形成した複数の半導体層を具え、これら半導体層と直交するように延在し信号光が入射する入射面及びこの入射面と対向する出射面を有する導波路構造体と、前記半導体基板の層形成面とは反対側の面に形成した第1の電極と、前記導波路構造体の上側に形成され前記第1の電極と対向する第2の電極と、これら第1の電極と第2の電極との間に接続され、前記導波路構造体にキャリァを注入するための直流バイアス源とを具え、入射した信号光を前記導波路構造体に注入されたキャリァにより光増幅して出射面から出射させる光デバイスにおいて、
前記導波路構造体を、前記第1及び第2の電極から注入され内部に蓄積されたキャリァの量に応じて屈折率が変化する半導体材料で構成し、
前記第1及び第2の電極は、これらの電極を介して導波路構造体にキャリァが注入されるキャリァ注入領域とキャリァが注入されない非キャリァ注入領域とが隣接して形成されるように形成され、
前記直流バイアス源から第1及び第2の電極を介して導波路構造体にキャリァが注入されている動作状態において、前記キャリァ注入領域の屈折率が前記非キャリァ注入領域の屈折率よりも低くなるように構成し、
前記導波路構造体にキャリァが注入されている動作状態において、第1のパワーレベルの信号光が前記キャリァ注入領域を伝搬する際、誘導放射によるキャリァの減衰効果により、このキャリァ注入領域の屈折率が非キャリァ注入領域の屈折率よりも高くなり、キャリァ注入領域が入射した光波を前記入射面から出射面までガイディングする光導波路を構成し、前記第1のパワーレベルよりも低い第2のパワーレベルの信号光がキャリァ注入領域を伝搬する際、キャリァ注入領域の屈折率が非キャリァ注入領域の屈折率よりも低く維持され、入射した信号光が前記非キャリァ注入領域を介して外部に放射しアンチガイディングモードで動作するように構成したことを特徴とする光デバイス。

【請求項2】
光波の伝搬方向に見て、前記非キャリァ注入領域がキャリァ注入領域の両側にそれぞれ形成され、前記第2のパワーレベルの信号光がこれら非キャリァ注入領域を介して光デバイスの側方に放射されることを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。

【請求項3】
前記導波路構造体をリッジ型導波路構造体としたことを特徴とする請求項2に記載の光デバイス。

【請求項4】
前記半導体基板を第1導電型の半導体基板とし、前記導波路構造体が、半導体基板の上側に形成した第1導電型の第1のクラッド層と、第1のクラッド層の上側に形成され、注入されたキャリァを蓄積する活性層と、この導波路層の上側に形成した第2導電型の第2のクラッド層とを具えることを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。

【請求項5】
前記活性層を構成する半導体材料を、前記第1及び第2のクラッド層を構成する半導体材料の屈折率よりも大きな屈折率を有する半導体材料で構成したことを特徴とする請求項2に記載の光デバイス。

【請求項6】
前記活性層をInGaAsPで構成し、前記第1及び第2のクラッド層をInPで構成したことを特徴とする請求項5に記載の光デバイス。

【請求項7】
前記入射面及び出射面に無反射コーティングが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。

【請求項8】
前記入射面に、波長変換されるべき第1の波長λ1 の信号光とこの信号光との波長とは異なる第2の波長λ2 の時間的に一定振幅の光波とを供給し、前記波長λ1 の信号光に応じて変調された第2の波長λ2 の光波を出力する波長変換器として動作することを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。

【請求項9】
前記入射面に、光増幅すべき信号光とこの信号光と同一波長の時間的に一定振幅の光波とを供給し、前記信号光のパワーレベルに応じて波形整形された光波を出力する波形整形器として動作することを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。

【請求項10】
前記入射面に、光増幅すべき信号だけを供給し、この信号光のパワーレベルに応じて波形整形され、情報対ノイズ比の大きい信号光を出射させる波形整形器として動作することを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。

【請求項11】
前記振幅が時間的に一定の光波の振幅が、信号光の振幅よりも大きいことを特徴とする請求項8又は9に記載の光デバイス。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、波長分割多重光通信方式のリソースとして好適な光デバイスに関するものである。

【0002】
【従来の技術】ディジタル通信方式の開発に伴い、波長分割多重通信方式の開発が強く要請されている。波長分割多重方式においては、チャネルを切り換えるために光波長変換器が必要である。従来の光波長変換器として、相互利得変調を利用したXGM型波長変換器と相互位相変調を利用したXPM型波長変換器が既知である。

【0003】
XGM型光波長変換器では、波長λ1 の変調された入力信号光と波長λ2 の時間に対して一定振幅の光波とを半導体光増幅器に供給し、半導体光増幅器の入力光パワーに対するゲインの差を利用して波長λ2 の光波の反転出力信号を発生させている。

【0004】
XPM型波長変換器はマッハツェンダ干渉計等の原理を利用するものであり、入力側の導波路を2本の導波路に分岐し、一方の導波路中に半導体光増幅器を配置し、変調されるべきλ2 の波長光に対して2本の導波路を同位相に設定している。そして、波長λ1 の入力信号光と変調されるべき波長λ2 の一定振幅の光波とが伝搬する際、入力信号光の作用ににより2本の導波路間にπ/2の位相差が生ずるように設定し、この位相差を利用して波長λ2 の光波の反転出力信号を発生させている。

【0005】
【発明が解決しようとする課題】XGM型波長変換器では、光増幅器の飽和利得をそのまま利用するため、消光比が小さい欠点がある。また、符号反転した出力信号しか出射させることができない本質的な欠点もある。

【0006】
XPM型波長変換器では、十分な消光比が得られるが、応答が周期的であるため、デバイス長について厳格な製造公差が要求され、製造上の歩留りが著しく低下してしまう。

【0007】
従って、本発明の目的は、上述した欠点を解消し、比較的簡単な構造で大きな消光比が得られ光デバイスを実現することにある。

【0008】
さらに、本発明の別の目的は、符号反転しない出力信号を出射させることができ、ディジタル的な動作に好適な光デバイスを提供することにある。

【0009】
さらに、本発明の別の目的は、比較的簡単な製造工程で製造でき、波長変換器や波形整形器として機能することができる。光デバイスを提供することにある。

【0010】
【課題を解決するための手段】本発明による光デバイスは、層形成すべき面を有する半導体基板と、この半導体基板の層形成面上に形成した複数の半導体層を具え、これら半導体層と直交するように延在し信号光が入射する入射面及びこの入射面と対向する出射面を有する導波路構造体と、前記半導体基板の層形成面とは反対側の面に形成した第1の電極と、前記導波路構造体の上側に形成され前記第1の電極と対向する第2の電極と、これら第1の電極と第2の電極との間に接続され、前記導波路構造体にキャリァを注入するための直流バイアス源とを具え、入射した信号光を前記導波路構造体に注入されたキャリァにより光増幅して出射面から出射させる光デバイスにおいて、前記導波路構造体を、前記第1及び第2の電極から注入され内部に蓄積されたキャリァの量に応じて屈折率が変化する半導体材料で構成し、前記第1及び第2の電極は、これらの電極を介して導波路構造体にキャリァが注入されるキャリァ注入領域とキャリァが注入されない非キャリァ注入領域とが隣接して形成されるように形成され、前記直流バイアス源から第1及び第2の電極を介して導波路構造体にキャリァが注入されている動作状態において、前記キャリァ注入領域の屈折率が前記非キャリァ注入領域の屈折率よりも低くなるように構成し、前記導波路構造体にキャリァが注入されている動作状態において、第1のパワーレベルの信号光が前記キャリァ注入領域を伝搬する際、誘導放射によるキャリァの減衰効果により、このキャリァ注入領域の屈折率が非キャリァ注入領域の屈折率よりも高くなり、キャリァ注入領域が入射した光波を前記入射面から出射面までガイディングする光導波路を構成し、前記第1のパワーレベルよりも低い第2のパワーレベルの信号光がキャリァ注入領域を伝搬する際、キャリァ注入領域の屈折率が非キャリァ注入領域の屈折率よりも低く維持され、入射した信号光が前記非キャリァ注入領域を介して外部に放射しアンチガイディングモードで動作するように構成したことを特徴とする。

【0011】
本発明は、半導体材料の屈折率は電流注入されるキャリァの密度に反比例するというフリーキャリァプラズマ効果及び光増幅効果を積極的に利用する。導波路構造体にキャリァが注入されるキャリァ注入領域とキャリァが注入されない非キャリァ注入領域とが隣接して形成されるように電極を設ける。電極を介してキャリァ注入領域に大量のキャリァが注入されると、この領域に大量のキャリァが蓄積され、当該領域の屈折率は隣接する非キャリァ注入領域の屈折率よりも相対的に低くなる。一方、光波が伝搬することにより伝搬路のキャリァは消費されるので、当該領域に存在するキャリァ密度が低下する。このキャリァ密度の低下により当該領域の屈折率は非キャリァ注入領域の屈折率よりも相対的に高くなる。しかも、蓄積しているキャリァが消費される量は伝搬する光波のパワーレベルにほぼ対応するので、より高いパワーレベルの信号光が伝搬すると、当該領域のキャリァ密度は一層低下しこの領域の屈折率は非キャリァ注入領域の屈折率よりも大幅に高くなり光閉じ込め効果も一層増強される。この結果、信号光の伝搬路には周囲媒質の屈折率よりも高い導波路が形成されることになる。このような導波路が形成されると、光閉じ込め効果及び導波路内で生ずる誘導放射も一層増強され、正帰還がかかった状態となる。従って、この導波路は、「光誘導導波路」と呼ぶことができる。

【0012】
一方、パワーレベルの低い信号光が伝搬する場合、この信号光により消費されるキャリァの量は少ないため、当該領域には依然として大量のキャリァが残存し、その屈折率は低いままに維持される。この結果、当該領域の屈折率は隣接する非キャリァ注入領域の屈折率よりも相対的に低いため、パワーレベルの低い信号光は屈折率の高い周囲領域に吸収され、この周囲領域から外部に向けて放射する。

【0013】
本発明は上述した認識に基づくものであり、入射する信号光のパワーレベルに応じて導波路構造体内に光誘導導波路を形成し、信号光を出射面までガイディングするガイディングモードと信号光を非キャリァ注入領域で放射させるアンチガイディングモードとを入力光のパワーに応じて切り換える。このモード切換を利用することにより、簡単な製造工程で波長変換器や波形整形器を実現することができる。

【0014】
本発明によれば、フリーキャリァプラズマ効果と光増幅効果を利用することにより非線形な入力/出力特性を得ることができる。すなわち、入力する信号光のパワーレベルが低い場合ほとんどの入射光が非キャリァ注入領域に吸収されてしまうため、蓄積されたキャリァの消費量は極めて少量である。そして、入射した信号光のパワーレベルが増大しても、消費されるキャリァ量が増大して光波の伝搬路の屈折率が隣接する非キャリァ注入領域の屈折率に等しくなるまでこの状態が持続され、出射面まで伝搬する信号光は極めて僅かなものである。一方、消費されるキャリァ量が増大して光波の伝搬路の屈折率が非キャリァ注入領域の屈折率に等しくなると、ガイディング効果が急激に作用し、入射した信号光が出射面まで伝搬するようになり、この信号光の伝搬により光増幅効果も急激に増強され、光増幅された信号光が出射することになる。この結果、通常の半導体光増幅器では得ることのできない閾値特性を有する非線形な入力/出力特性を得ることができる。この非線形な入力/出力特性により、ディジタル的な動作を行うことができる。

【0015】
さらに重要なことは、本発明の光デバイスは、入射した信号光が「ハイ」のレベルの場合「ハイ」の信号光を出力し「ロー」レベルの場合「ロー」レベルの信号光を出力するため、符号反転されていない信号光を出力できる利点が達成される。

【0016】
本発明の非線形な入力/出力特性を利用することにより、種々の機能の光デバイスを実現することができる。例えば、波長λ1 の信号光と波長λ2 の連続波を入射させることにより、波長λ1 の信号光により変調され光増幅された波長λ2の信号光を出力することができ、簡単な構造で光増幅機能を有する波長変換器を実現することができる。

【0017】
また、波長λ1 の信号光と同一波長の連続波を入射させることにより、入力する信号光の振幅が微弱であっても、微弱な入力信号にパワーの大きな連続波を重畳することにより微弱な信号光成分を光増幅することができ、波形整形され情報対ノイズ比の大きな信号光を出力することができる。これに対して、通常の半導体光増幅器の場合、入力信号のハイの成分及びローの成分の両方が等しく光増幅されるため、ノイズ成分も同様に増幅され情報対ノイズ比の大きな光信号を出力することができない。このように、本発明の光デバイスは、通常の半導体光増幅器では達成できない異なる特有の作用効果を有するものである。

【0018】
【発明の実施の形態】図1及び図2は本発明による光デバイスの一例の構成を示し、図1は全体構成を示す斜視図であり、図2Aは光波の伝搬方向と直交する断面で切った線図的断面図であり、図2Bは光波の伝搬方向に沿った面で切った線図的断面図である。図1に示すように、光波の伝搬方向をz方向とし、半導体層が堆積されキャリァが注入される方向をy方向とし、光波の伝搬方向及びキャリァの注入方向と直交する方向をx方向とする。

【0019】
半導体基板1として第1導電型のn-InP基板を用意し、この基板1上に導波路構造体を形成する。基板1は100μmの厚さを有し、その不純物濃度は2×1018原子/cm3 とする。尚、n形の不純物としてサルファを用いることができる。基板1上に、厚さが0.4μmで不純物濃度が5×1017原子/cm3のn-InPの第1のクラッド層2を形成する。この第1のクラッド層2上に、厚さが0.2μmのi-InGaAsP(1.55μm)の活性層3を形成する。活性層3上に、厚さが0.02μmのInGaAsP(1.25μm)のエンチッグストップ層4を形成する。このエッチングストップ層4上に第2導電型の第2のクラッド層5を形成する。この第2のクラッド層5は、厚さが0.4μmで不純物濃度が5×1017原子/cm3 とする。尚、p形不純物としてZnを用いることができる。この第2のクラッド層5に、厚さが0.1μmで不純物濃度が2×1019のキャップ層6を形成し、このキャップ層上にTi-Auの第2の電極7を形成する。そして、基板1の層構造体が形成されている側とは反対側にTi-Auの第1の電極8を形成する。

【0020】
この光デバイスを製造するに際し、第2のクラッド層5を形成した後、半導体光増幅器のリッジ部分を構成する部分を除いてフォトリソグラフィにより第2のクラッド層5を除去してリッジ導波路構造体を形成する。その後、キャップ層及び第1の電極層を形成し、パターニング処理により各半導体光増幅器のリッジ部上に第2の電極を形成し半導体基板1の反対側に第1の電極8を形成する。最後に、図2Bに示すように、信号光が入射する入射面9及び光増幅された光波が出射する出射面10に無反射コーティングをそれぞれ形成する。入射面9には、光ファイバ(図示せず)を光学的に結合し、この光ファイバを介して信号光を導波路構造体に入射させる。出射面10にも同様に光ファイバ(図示せず)を光学的に結合し、光増幅された光波を出射させる。

【0021】
第1の電極8と第2の電極7との間に直流バイアス源11を接続し、このバイアス源11から活性層3に時間的に一定量のキャリァを連続的に注入する。すなわち、電子は、バイアス源11から第1電極8、n形の半導体基板1及びn形の第1のクラッド層2を経て活性層3に注入される。また、ホールは、第2の電極7、キャップ層6、第2のクラッド層5及びエッチングストップ層4を経て活性層3に注入される。注入されたキャリァは活性層3内に蓄積される。従って、図2Aに示すように、活性層3には、信号光の伝搬方向に見て、中央にキャリァが注入され蓄積するキャリァ注入領域3aとその両側にキャリァが注入されない非キャリァ注入領域3b及び3cが形成されることになる。

【0022】
次に、導波路構造体の屈折率について説明する。活性層3を構成する真性InGaAsPの屈折率は約3.50であり、第1及び第2のクラッド層2及び4を構成するInPの屈折率は約3.20である。従って、活性層3の屈折率はy方向に隣接する第1及び第2のクラッド層2及び4の屈折率よりも小さいため、導波路構造体を伝搬する光波はy方向において閉じ込められ、ガイディングされることになる。一方、活性層並びに第1及び第2のクラッド層が延在するx方向には媒質が連続した状態とする。

【0023】
次に、x方向における信号光の閉じ込め及び放射について説明する。図2Bに示すように、入射面9から信号光が入射すると、この信号光は第1のクラッド層2、活性層3及び第2のクラッド層4から構成される導波路構造体をz方向に沿って伝搬し、活性層3に蓄積されたキャリァにより光増幅作用を受け、出射面10から出射する。信号光が光増幅される際、信号光のパワーレベルすなわちパワーレベルが低い場合信号光の光増幅により消費されるキャリァの量は少ないため、活性層3には大量のキャリァが残存し、従って信号光から見た導波路構造体の屈折率は相対的に低い状態に維持されることになる。一方、入射した信号光のパワーレベルが高い場合、信号光の光増幅により消費されるキャリァの量は多いため、活性層3内に存在するキャリァの量は大幅に減少し、活性層の屈折率が急激に増大し、この結果伝搬する光波に対する屈折率は相対的に増大する。この状態を図3A及びBに基づいて説明する。図3は信号光の伝搬方向であるZ方向と直交する面におけるX方向の位置と屈折率の関係を模式的に示すグラフであり、図3Aは一定量のキャリァが時間的に連続して注入されパワーレベルの低い信号光が入射した状態のx方向位置と屈折率との関係を示し、図3Bはパワーレベルの高い信号光が入射した場合のx方向位置と屈折率との関係を示す。活性層3の材料である真性InGaAsPのキャリァ強制的な注入及び強制的な放出のない状態における屈折率すなわち非キャリァ注入領域3b及び3cの屈折率は3.26である。一方、キャリァが注入されると、キャリァ注入領域3aの屈折率は例えば3.258程度まで低下する。従って、リッジ型導波路により規定されるキャリァ注入領域の屈折率は、周囲領域である非キャリァ注入領域3b及び3cの屈折率よりも低下し、図3Aに示す屈折率分布が形成される。一方、高パワーレベルの信号光が入射すると、高パワーの信号光の光増幅に伴い、大量のキャリァが消費され、活性層3のキャリァ注入領域3aに存在するキャリァの量が大幅に低下する。一方、非キャリァ注入領域3b及び3cのキャリァ量はほぼ一定に維持される。この結果、キャリァ注入領域3aの屈折率は3.262程度まで増大し、図3Bに示すように、周囲領域である非キャリァ注入領域の屈折率よりも高くなる。

【0024】
このように、パワーレベルの低い信号が入射すると、信号光の伝搬路の屈折率は側方の周囲領域3b及び3cの屈折率よりも低いため、その屈折率差により信号光は伝搬中に屈折率の高い側方の非キャリァ注入領域に吸収され、周囲領域から外部に放射することになり、この結果出射面からほとんど出射せずアンチガイディングモードで動作することになる。これに対して、パワーレベルの高い信号光が入射すると、その伝搬路の屈折率は側方の非キャリァ注入領域3b及び3cの屈折率よりも高くなり、この屈折率差に起因する光閉じ込め効果により入射面9から出射面10に至る導波路が形成されることになる。この結果、x及びy方向に光閉じ込めが生じ、光増幅された信号光はx方向及びy方向に閉じ込められた状態でz方向に伝搬し出射面10から外部に出射する。

【0025】
図4A及びBは上述した光デバイスに入力する信号光の入力パワーと出力パワーとの関係及び入力パワーに対する利得(Pout /Pin)の関係を示す模式図である。図4Aにおいて、横軸は入力パワーを示し、縦軸は出力パワーを示す。本発明による光デバイスは光増幅機能とインデックスガイディング機能の両方を具える光デバイスである。入力パワーが低い場合、インデックスガイディング効果が作用せず、入射した信号光の大部分は側方から放射し出射面からは出射せずアンチガイディングモードとなる。そして、キャリァ注入領域の屈折率が周囲領域の屈折率よりも相対的に低い状態の場合、入力パワーが増大しても出力パワーはほとんど変化しない。一方、入力パワーが増大し、キャリァ注入領域の屈折率が非キャリァ注入領域の屈折率を超えると、インデックスガイディング効果が作用し、入射した信号光がキャリァ注入領域を伝搬し始める。この信号光の伝搬により光増幅効果が急激に増強され、入力パワーに対して出力パワーは急激に増大する。すなわち、インデックスガイディング効果と光増幅作用との相乗効果により、図4Aに示す閾値特性を有する非線形な入力/出力関係を得ることができる。尚、参考として一般的な半導体光増幅器の入力パワーと出力パワーとの関係を破線で示す。通常の半導体光増幅器は製造時からキャリァ注入領域の屈折率はx及びy方向について周囲領域の屈折率よりも高く設定されているため、出力パワーは入力パワーに対してほぼ線形に増加する。

【0026】
図4Bにおいて、横軸は信号光の入力パワーを示し縦軸は利得(Pout /Pin)を示す。実線は本発明による光デバイスの特性を示し破線は半導体光増幅器の一般的な特性を示す。本発明の光デバイスでは、入力パワーが低い領域では光増幅はほとんど行われない。一方、入力パワーの増大に伴いキャリァ注入領域の屈折率が非キャリァ注入領域の屈折率に近づくとガイディング効果と光増幅効果とが相乗され、光増幅効果が急激に増大する。そして、キャリァ注入限界を超えると利得は徐々に低下する。これに対して、通常の光半導体増幅器の場合、利得は入力パワーにかかわらず一定に設定されているため、入力パワーが増大しても利得は一定に維持され、キャリァ注入限界を超えると低下する。図4Bの利得特性からも明らかなように、本発明の光デバイスは通常の半導体光増幅器とは異なる特有の利得特性を有している。このように、本発明による光デバイスは従来の半導体光増幅器では達成できない閾値特性を有しており、この特有の閾値特性を利用することにより種々の光デバイスを実現することができる。

【0027】
次に、本発明による光デバイスを波長変換器に適用した例について説明する。図5に示すように、波長λ1 の入力信号光と波長λ2 の振幅が時間的に対して一定の光波とを重畳して本発明による光デバイスに供給する。波長λ2 の一定振幅の光波のパワーは、図4の閾値よりも若干低い値に設定する。波長λ1 の信号光がハイレベルのとき、光デバイスにはハイレベルの信号光が入射するため、λ1及びλ2 の両方の波長光が光増幅されて出力される。これに対して、波長λ1 の信号光がローレベルの場合、アンチガイディングモードとなり、両方の波長光が光増幅されず、λ1 及びλ2 の両方の波長光はローレベルの信号として出力される。この結果、入力信号光により変調され光増幅された波長λ2 の信号光を出力することができる。

【0028】
図6は、本発明を波形整形器として動作させる例を示すものである。本発明による光デバイスに波長λ1 の信号光と同一波長の振幅が一定の光波を重畳して供給する。振幅が一定の光波のパワーレベルは図4の閾値よりも若干低い値に設定する。信号光がハイレベルの場合、ガイディングモードとして動作し、光増幅されたハイレベルの信号光が出力される。一方、信号光がローレベルの場合、入力した光波のパワーレベルが閾値以下であるため、ローレベルの信号が出力されることになる。この結果、本発明の光デバイスは波形整形器として動作することができる。この波形整形器は微弱入力信号を光増幅して情報対ノイズ比の大きな出力信号を発生するのに好適である。すなわち、光デバイスに微弱な光信号だけを供給しても光増幅されないが、振幅の微弱な入力信号に振幅が比較的大きな連続波を重畳して供給すれば、入力信号のパワーが閾値付近までアップさせることができるので、閾値特性を利用することにより振幅が大幅に増幅され情報対ノイズ比の大きな光信号を出力することができる。尚、図6に示す実施例において、信号光だけを供給して波形整形器として機能させることも可能である。この場合にも、パワーの低いノイズ成分及び歪みが除去されるので、情報対ノイズ比の大きな光信号として再生することができる。

【0029】
本発明は上述した実施例だけに限定されず種々の変更や変形が可能である。例えば、導波路構造体を構成する材料系はInGaAs/InP系以外に、GaAlAs/GaAs系、InGaAlAs/InP系、及びInGaAs/GaAs系の化合物半導体材料を用いることができる。

【0030】
また、活性層として量子井戸構造を用いることもできる。例えば、第1のクラッド層の上側に、厚さ200nmのInGaAsP(1.55μm)の第1の光閉じ込め層を形成し、さらにこの光閉じ込め層の上側に、厚さ10nmのInGaAsP(1.75μm)の量子井戸層と厚さ10nmのInGaAsP(1.25μm)のバリャ層とが交互に5セット形成された量子井戸構造体を形成する。さらに、量子井戸構造体の上側に厚さ200nmのInGaAsP(1.25μm)の第2の光閉じ込め層を形成する。このような量子井戸構造を活性層に用いることも可能である。
図面
【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図4】
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