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明細書 :観測画像信号解析のための濃淡画像処理方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3416736号 (P3416736)
公開番号 特開2002-269541 (P2002-269541A)
登録日 平成15年4月11日(2003.4.11)
発行日 平成15年6月16日(2003.6.16)
公開日 平成14年9月20日(2002.9.20)
発明の名称または考案の名称 観測画像信号解析のための濃淡画像処理方法
国際特許分類 G06T  1/00      
G06T  5/30      
G06T  7/60      
G11B  5/84      
FI G06T 1/00 300
G06T 5/30
G06T 7/60
G11B 5/84
請求項の数または発明の数 1
全頁数 5
出願番号 特願2001-068723 (P2001-068723)
出願日 平成13年3月12日(2001.3.12)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用申請有り 第24回日本応用磁気学会学術講演概要集,日本応用磁気学会発行,2000年9月12日,12pA-3,第11頁に発表
審査請求日 平成13年3月12日(2001.3.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391016923
【氏名又は名称】北海道大学長
発明者または考案者 【氏名】長谷山 美紀
【氏名】武笠 幸一
【氏名】末岡 和久
【氏名】武隈 育子
【氏名】本多 博之
個別代理人の代理人 【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作 (外1名)
審査官 【審査官】脇岡 剛
参考文献・文献 特開2000-322580(JP,A)
特開 平11-231031(JP,A)
特開 平10-289318(JP,A)
特開 平10-91787(JP,A)
特開 平10-40393(JP,A)
特開 平8-123963(JP,A)
特開 平8-15172(JP,A)
武隈育子ほか,遺伝的アルゴリズムを用いた磁気クラスタ構造の解析法,日本応用磁気学会誌,日本,日本応用磁気学会,2000年 4月15日,Vol.24,No.4-2,p.303-306
調査した分野 G06T 1/00 300
G06T 5/30
G06T 7/60 200
G11B 5/84
特許請求の範囲 【請求項1】
磁気記録媒体の磁極領域の直線状分布特性を解析する方法において、前記磁気記録媒体のMFM観察像に遺伝的アルゴリズムを用いて前記磁気記録媒体における磁極領域を抽出するステップと、前記抽出された磁極領域の画素値の平均値をしきい値とし、前記MFM観察像を二値化し、二値化画像を得るステップと、前記二値化画像に対して細線化アルゴリズムを適用し、線要素を抽出し、磁極領域の細線化画像を得るステップとを含むことを特徴とする方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子工学における画像処理分野に関係し、特に観察濃淡画像信号を解析する二次元定量解析方法に関し、さらに特に、磁気記録媒体のMFM観察像から磁気記録媒体の磁極領域の形状及び方向性を解析することに関する。

【0002】
【従来の技術】例えば、高密度記録に適した低ノイズ媒体を開発するためには、媒体の磁気クラスタ構造を把握し、記録磁化状態と記録再生特性との関係を明らかにする必要がある。磁気力顕微鏡(Magnetic Force Microscope:MFM)は、媒体の磁化状態を評価する手段として広く用いられており、磁気クラスタの解析にも使用されてきた。MFM信号のクラスタ抽出に用いられている従来の技術は、周波数分布や統計処理を利用して実現されていた。

【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述したような従来の方法では、MFM信号を本来の二次元信号として処理していないため、高密度な抽出が困難であった。したがって、その多くはクラスタサイズに関する解析が主であり、クラスタの形状や分布についての解析は十分に行われていなかった。この問題は、最近の高密度記録の要求が高まる現状では、より大きな問題として表面化している。

【0004】
発明者等は、磁気クラスタの形状や分布などを解析するために、MFM観察像を二次元信号としてとらえた解析方法を提案している。武隈育子、長谷山美紀、末岡和久及び武笠幸一による、日本応用磁気学会誌、24、No.4-2、303(2000)に記載のこの方法では、遺伝的アルゴリズム(GeneticAlgorithm:GA)を用いてMFM観察像から磁気クラスタ境界部に存在する磁極領域を複数の楕円によって抽出し、得られた磁極分布によりクラスタ構造を解析する。しかしながら、高密度記録を可能とするためには、より高密度な媒体の性質の解析が必要とされている。

【0005】
例えば、トランジションノイズは、媒体の記録密度を制限する重要な要因の一つである。したがって、トランジションノイズの原因となる減少を把握し、記録再生特性との関係を明らかにする必要がある。トランジション領域における記録磁化状態は、DC消去状態におけるクラスタ構造に依存すると考えられており、DC消去状態では、媒体の局所的な磁化の揺動を反映して、磁化リップルと呼ばれる磁化クラスタ構造をとることが知られている。これまでは主に磁化の瑶動の波長を反映するクラスタのサイズに着目した解析が行われてきたが、リップルのブランチに着目した磁気クラスタ構造の解析はほとんど行われていなかった。リップルのブランチは、磁気クラスタの境界部分に存在する磁極領域に相当し、媒体の局所的な磁化方向の分布などの特徴が反映されると考えられる、したがって、これらの特徴に着目してトランジション領域の磁化状態との関係を調べれば、トランジションノイズの生成メカニズムを解明するための新たな知見が得られる可能性がある。

【0006】
上述したことを鑑み、本発明は、MFM信号を本来の二次元信号として処理し、従来の方法に比べ、高精度な観測画像信号解析を可能とする濃淡画像信における特定濃度領域の形状及び方向性を得る濃淡画像処理方法を提供することと、特に、磁気記録媒体のMFM観察像から磁気記録媒体の磁極領域の分布形状及び方向性を得る方法を提供することを目的とする。

【0007】
【課題を解決するための手段】本発明による濃淡画像信における特定濃度領域の形状を得る濃淡画像処理方法は、前記濃淡画像信号を二値化し、二値化画像を得るステップと、前記二値化画像に対して細線化アルゴリズムを適用し、線要素を抽出し、細線化画像を得るステップとを含むことを特徴とする。

【0008】
本発明による濃淡画像信における特定濃度領域の方向性を特定する濃淡画像処理方法は、前記濃淡画像信号を二値化し、二値化画像を得るステップと、前記二値化画像に対して細線化アルゴリズムを適用し、線要素を抽出し、細線化画像を得るステップと、前記細線化画像における線要素にハフ変換を適用するステップとを含むことを特徴とする。

【0009】
本発明による磁気記録媒体の磁極領域の形状を得る濃淡画像処理方法は、前記磁気記録媒体のMFM観察像に遺伝的アルゴリズムを用いて前記磁気記録媒体における磁極領域を抽出するステップと、前記抽出された磁極領域の画素値の平均値をしきい値とし、前記MFM観察像を二値化し、二値化画像を得るステップと、前記二値化画像に対して細線化アルゴリズムを適用し、線要素を抽出し、磁極領域の細線化画像を得るステップとを含むことを特徴とする。

【0010】
本発明による磁気記録媒体の磁極領域の方向性を特定する濃淡画像処理方法は、前記磁気記録媒体のMFM観察像に遺伝的アルゴリズムを用いて前記磁気記録媒体における磁極領域を抽出するステップと、前記抽出された磁極領域の画素値の平均値をしきい値とし、前記MFM観察像を二値化し、二値化画像を得るステップと、前記二値化画像に対して細線化アルゴリズムを適用し、線要素を抽出し、磁極領域の細線化画像を得るステップと、前記細線化画像における線要素にハフ変換を適用するステップとを含むことを特徴とする。

【0011】
【発明の実施の形態】本発明による観測画像信号解析のための濃淡画像処理方法を、磁気記録媒体のMFM観察像の解析を例として説明する。

【0012】
磁気記録媒体媒体のMFM観察像から磁極存在領域の抽出を行う。解析に用いる例としての媒体の特性を以下の表1に示す。
【表1】
JP0003416736B2_000002t.gifこれらの媒体A及びBを、テクスチャの無いCoCrPtTa/CrMo媒体とする。本例において、記録ヘッドの書き込みギャップ長は0.3μm、書き込みトラック幅は1.5μm、浮上量は約50nmである。媒体の観察手段として、MFM(例えば、Digital Instruments社製:Nano Scope III)を用い、測定はTapping Mode、リフトハイト15nmで行う。探針はAFM専用Si探針上にCoCr系磁性膜を蒸着したものを使用し、測定に先立ち、試料に対して垂直な方向に着磁しておく。また、共振周波数を約80kHzとする。

【0013】
本例において、局所的な磁化方向の分布などの媒体の二次元クラスタ構造の特徴が反映されると考えられるブランチの方向性に着目した解析を試みる。このような解析を行うためには、ブランチに相当する磁極領域(磁気クラスタの境界部分に存在)を抽出し、その分布を解析すればよい。具体的には、以下の2つの手順により解析を行う。

【0014】
(1)磁極領域の抽出
前記MFM観察像をしきい値を用いて二値化し、正又は負の磁極存在領域を抽出する。ここで、最適なしきい値を決定するために、予め遺伝的アルゴリズムによる手法を用いて前記磁極領域を抽出し、この領域の平均画素値によって前記しきい値を決定する。次に、抽出した領域の方向性の特徴を抽出しやすくするために領域の細線化を行う。細線化とは芯線化とも呼ばれ、線図形の認識のために用いられる一般的な手法である。検出された線成分は、この場合において、磁化リップルのブランチに相当すると考えられる。

【0015】
(2)分布の方向性の解析
前記磁極分布の方向性について解析するために、前記細線化された画像に対し、ハフ変換を用いる。ハフ変換では、細線化によって認識された線要素から主要な直線成分を検出することが可能であり、線状に分布する傾向の度合いや、分布の方向性を定量的に評価することができる。ここでハフ変換の簡単な例を用いてその原理を説明する。図1はハフ変換の原理を説明する図である。図1aはx-y空間上の画素(x,y)(i=1,2,3)を示す。これらの画素をそれぞれ、
ρ=xcosθ+ysinθ (1)
に従って変換すると、曲線C(x,y)が得られる。これらの曲線を図1bのグラフにおいて示す。x-y空間上において(x,y)は直線L上において並んでいるため、変換されたθ-ρ空間の曲線C(x,y)は1点P(θ,ρ)において交差する。この1点P(θ,ρ)を式(1)に代入すると、対応するx-y空間上の直線Lが得られる。このようなハフ変換を上記例に適用する。具体的な手順は以下のとおりである。
1.細線化により抽出された画素のx-y座標(x,y)(i=1,...,N)(ここでNを細線化により検出された画素数とする)に対し、上記式(1)に従ってθ-ρ空間上に曲線を描く。
2.N個の(x,y)に対して上記1の手順を繰り返す。
3.最終的に得られるθ-ρ空間において、多くの曲線が交差している(θ,ρ)から、対応するx-y空間における主要な直線成分を抽出する。

【0016】
表1に示す媒体においてDC消去領域として10kFClで記録したビット領域を解析した例を説明する。実際に負(本例で用いたMFM観察像では白で表される領域に相当)の磁極領域に対し、細線化を行った例を図2に示す。a、c及びfは、各々表1に示す媒体A、B及びCのMFM画像、b、d及びfは各々の細線化画像である。この図からわかるように、本発明による方法によれば、MFM観察像上で磁極分布を把握することができるので、二次元の磁極分布の特徴がより明確になる。これらの細線化画像に見られる磁極領域の線状分布の特徴は、クラスタの形状やサイズ、また媒体ノイズの値と密接な関係があると考えられる。例えば、媒体Aでは他の媒体に比べてクラスタサイズが大きいことを反映して長い線成分が確認できる。ただし、検出されている線成分は、クラスタ領域に存在する磁極存在領域の長さを示しており、表1に示した従来手法によって得られるクラスタサイズの値との相関はあると考えられるが、厳密には異なる量である。

【0017】
次に、細線化された複数の画像に対してハフ変換を行い、抽出された線成分の傾きθの分布(ヒストグラム)を求める。図3は、このようにして求めた各々の媒体に関するヒストグラムである。図3には、θの値と、トラック方向との関係も示す。a、b及びcは、それぞれ、媒体A、B及びCに関するヒストグラムである。媒体A及びBでは、トラック方向に対してほぼ対称な方向に強いピークが現れており、クラスタ境界部に存在する磁極領域の分布に特定の方向依存性がみられる。一方、媒体Cのヒストグラムは、媒体A及びBに比べ扁平な形状をしていることが確認できる。

【0018】
【発明の効果】本発明によれば、MFM信号を本来の二次元信号として処理することによって、従来の方法に比べ、高精度な観測画像信号解析を可能とする濃淡画像信における特定濃度領域の形状及び方向性を得る濃淡画像処理方法と、磁気記録媒体のMFM観察像から磁気記録媒体の磁極領域の形状及び方向性を得る方法とが提供される。

【0019】
本発明によれば、観測画像ディジタル信号において、2値化、ハフ変換といった画像処理方法で解析することにより、特定濃度領域の方向性を特定できるようになる。本発明による方法により、分布形状の直線性が発見でき、さらに、ハフ変換のパラメータから信号の性質を解析できる。特に、本発明をMFM信号の特徴解析に用いることによって、媒体の性質を解析する上で重要な媒体ノイズに関係する記録磁化状態を評価する定量値を発見することができる。本発明は、その利用を考えた場合には、電子工学にとどまらず、画像処理一般、特に医学(自動診断)の分野にも応用することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2