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明細書 :走査型磁気検出装置、及び走査型磁気検出装置用深針

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3472828号 (P3472828)
公開番号 特開2002-257703 (P2002-257703A)
登録日 平成15年9月19日(2003.9.19)
発行日 平成15年12月2日(2003.12.2)
公開日 平成14年9月11日(2002.9.11)
発明の名称または考案の名称 走査型磁気検出装置、及び走査型磁気検出装置用深針
国際特許分類 G01N 13/12      
G01B  7/34      
G12B 21/04      
FI G01N 13/12 A
G01B 7/34
G12B 1/00
請求項の数または発明の数 31
全頁数 7
出願番号 特願2001-059440 (P2001-059440)
出願日 平成13年3月5日(2001.3.5)
審査請求日 平成13年3月5日(2001.3.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391016923
【氏名又は名称】北海道大学長
発明者または考案者 【氏名】武笠 幸一
【氏名】澤村 誠
【氏名】末岡 和久
【氏名】廣田 榮一
個別代理人の代理人 【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
審査官 【審査官】秋田 将行
参考文献・文献 特開 平1-320750(JP,A)
特開 平2-176482(JP,A)
特開 平4-116401(JP,A)
特開 平5-302965(JP,A)
特開 平6-94813(JP,A)
特開 平6-289035(JP,A)
特開 平7-320633(JP,A)
特開 平7-333233(JP,A)
特開 平8-136556(JP,A)
特開 平9-43324(JP,A)
特開 平10-106465(JP,A)
特開 平10-288620(JP,A)
特開 平10-332718(JP,A)
特開 平11-64476(JP,A)
特開 平11-108610(JP,A)
特開 平11-223637(JP,A)
特開 平11-295326(JP,A)
特開 昭62-139240(JP,A)
特開2000-9625(JP,A)
特開2000-81381(JP,A)
特開2000-131215(JP,A)
特開2001-250998(JP,A)
特開2001-264230(JP,A)
特開2002-80299(JP,A)
特開2002-202238(JP,A)
特表2000-516708(JP,A)
米国特許6476386(US,A)
米国特許出願公開2002/0149362(US,A1)
欧州特許出願公開1239294(EP,A2)
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調査した分野 G01N 13/10 - 13/24
G01B 7/34
G12B 1/00 601
G12B 21/00 - 21/24
特許請求の範囲 【請求項1】
電気伝導性の、スピン偏極を有する単結晶状固体からなる深針を具え、この深針を磁性試料の表面に近接させ、前記探針の、前記磁性材料による磁場との交換相互作用によって前記探針を磁気的に飽和させて、前記深針と前記磁性試料の前記表面との間にトンネル電流を生ぜしめ、前記トンネル電流を計測することにより、前記磁性試料の前記表面の状態を光励起を行うことなく検出するようにしたことを特徴とする、走査型磁気検出装置。

【請求項2】
前記単結晶状固体は、閃亜鉛鉱型の結晶構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の走査型磁気検出装置。

【請求項3】
前記単結晶状固体は、CuF、CuCl、AgI、ZnS、ZnSe、CdS、CdSe、BP、AlAs、AlP、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InAs、InP、InSb、及びSiCから選ばれる一種であることを特徴とする、請求項2に記載の走査型磁気検出装置。

【請求項4】
前記単結晶状固体はBNからなり、その結晶格子サイトの少なくとも一部がドナー原子で置換されていることを特徴とする、請求項2に記載の走査型磁気検出装置。

【請求項5】
前記単結晶状固体は、ダイヤモンド型の結晶構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の走査型磁気検出装置。

【請求項6】
前記単結晶状固体は、Si、Ge、及びSnから選ばれる一種であることを特徴とする、請求項5に記載の走査型磁気検出装置。

【請求項7】
前記単結晶状固体はCからなり、その結晶格子サイトの少なくとも一部がドナー原子で置換されていることを特徴とする、請求項5に記載の走査型磁気検出装置。

【請求項8】
前記単結晶状固体は、角錐状を呈することを特徴とする、請求項2~7のいずれか一に記載の走査型磁気検出装置。

【請求項9】
前記単結晶状固体の大きさが、10nm以下であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一に記載の走査型磁気検出装置。

【請求項10】
前記単結晶状固体は、バルク単結晶を劈開することによって得ることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一に記載の走査型磁気検出装置。

【請求項11】
請求項1~10のいずれか一の走査型磁気検出装置によって構成されることを特徴とする、走査型トンネル電子顕微鏡。

【請求項12】
電気伝導性の、スピン偏極を有する単結晶状固体からなり、磁性試料の表面に近接させ、前記探針の、前記磁性材料による磁場との交換相互作用によって前記探針を磁気的に飽和させて、前記深針と前記磁性試料の前記表面との間にトンネル電流を生ぜしめ、前記トンネル電流を計測することにより、前記磁性試料の前記表面の状態を光励起を行うことなく検出するようにしたことを特徴とする、走査型磁気検出装置用深針。

【請求項13】
前記単結晶状固体は、閃亜鉛鉱型の結晶構造を有することを特徴とする、請求項12に記載の走査型磁気検出装置用深針。

【請求項14】
前記単結晶状固体は、CuF、CuCl、AgI、ZnS、ZnSe、CdS、CdSe、BP、AlAs、AlP、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InAs、InP、InSb、及びSiCから選ばれる一種であることを特徴とする、請求項13に記載の走査型磁気検出装置用深針。

【請求項15】
前記単結晶状固体はBNからなり、その結晶格子サイトの少なくとも一部がドナー原子で置換されていることを特徴とする、請求項13に記載の走査型磁気検出装置用深針。

【請求項16】
前記単結晶状固体は、ダイヤモンド型の結晶構造を有することを特徴とする、請求項12に記載の走査型磁気検出装置用深針。

【請求項17】
前記単結晶状固体は、Si、Ge、及びSnから選ばれる一種であることを特徴とする、請求項16に記載の走査型磁気検出装置用深針。

【請求項18】
前記単結晶状固体はCからなり、その結晶格子サイトの少なくとも一部がドナー原子で置換されていることを特徴とする、請求項16に記載の走査型磁気検出装置用深針。

【請求項19】
前記単結晶状固体は、角錐状を呈することを特徴とする、請求項12~18のいずれか一に記載の走査型磁気検出装置用深針。

【請求項20】
前記単結晶状固体の大きさが、10nm以下であることを特徴とする、請求項12~19のいずれか一に記載の走査型磁気検出装置用深針。

【請求項21】
前記単結晶状固体は、バルク単結晶を劈開することによって得ることを特徴とする、請求項12~20のいずれか一に記載の走査型磁気検出装置用深針。

【請求項22】
電気伝導性の、スピン偏極を有する単結晶状固体からなる深針を具え、この深針を磁性試料の表面に近接させ、前記探針の、前記磁性材料による磁場との交換相互作用によって前記探針を磁気的に飽和させて、前記深針と前記磁性試料の前記表面との間にトンネル電流を生ぜしめ、前記トンネル電流を計測することにより、前記磁性試料の前記表面の状態を光励起を行うことなく検出するようにしたことを特徴とする、磁気検出方法。

【請求項23】
前記単結晶状固体は、閃亜鉛鉱型の結晶構造を有することを特徴とする、請求項22に記載の磁気検出方法。

【請求項24】
前記単結晶状固体は、CuF、CuCl、AgI、ZnS、ZnSe、CdS、CdSe、BP、AlAs、AlP、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InAs、InP、InSb、及びSiCから選ばれる一種であることを特徴とする、請求項23に記載の磁気検出方法。

【請求項25】
前記単結晶状固体はBNからなり、その結晶格子サイトの少なくとも一部がドナー原子で置換されていることを特徴とする、請求項23に記載の磁気検出方法。

【請求項26】
前記単結晶状固体は、ダイヤモンド型の結晶構造を有することを特徴とする、請求項22に記載の磁気検出方法。

【請求項27】
前記単結晶状固体は、Si、Ge、及びSnから選ばれる一種であることを特徴とする、請求項27に記載の磁気検出方法。

【請求項28】
前記単結晶状固体はCからなり、その結晶格子サイトの少なくとも一部がドナー原子で置換されていることを特徴とする、請求項27に記載の磁気検出方法。

【請求項29】
前記単結晶状固体は、角錐状を呈することを特徴とする、請求項23~28のいずれか一に記載の磁気検出方法。

【請求項30】
前記単結晶状固体の大きさが、10nm以下であることを特徴とする、請求項22~29のいずれか一に記載の磁気検出方法。

【請求項31】
前記単結晶状固体は、バルク単結晶を劈開することによって得ることを特徴とする、請求項22~30のいずれか一に記載の磁気検出方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、走査型磁気検出装置、及び走査型磁気検出装置用深針に関し、詳しくは、トンネル電子顕微鏡などとして好適に用いることのできる走査型磁気検出装置、及びこれに用いる深針に関する。

【0002】
【従来の技術】従来、トンネル電流の測定から磁性試料における表面状態を原子スケールで検出する走査型磁気検出装置としては、金属強磁性体からなる深針を用いたものや、二酸化クロム単結晶からなる深針を用いたものが使用されている。

【0003】
しかしながら、前記金属強磁性体深針を用いた走査型磁気検出装置においては、深針が磁性試料と磁気的に強く相互作用して前記磁性試料の磁気的状態を擾乱する場合があった。このため、前記磁性試料の表面状態を精度良く検出することは困難であった。一方、二酸化クロム単結晶深針を用いた走査型磁気検出装置においては、深針尖端の磁化状態(スピン電子状態)が明らかでなく、また、酸化物であるため、深針尖端の清浄性が劣化する場合が生じていた。

【0004】
このような観点より、III-V族化合物半導体からなる深針を具える走査型磁気検出装置が提案されている。この走査型磁気検出装置は、III-V族化合物半導体の光励起によるスピン偏極伝導電子のトンネル電流を利用するものである。III-V族化合物半導体は非磁性であるため、上述したような磁気的擾乱を生じることはないが、レーザ光の照射を必要とする装置自体が大型化及び複雑化するという問題があった。

【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のような問題を生じさせることのない、新規な走査型磁気検出装置、及びこれに用いる深針を提供することを目的とする。

【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成すべく、本発明の走査型磁気検出装置は、電気伝導性の、スピン偏極を有する単結晶状固体からなる深針を具え、この深針を磁性試料の表面に近接させ、前記探針の、前記磁性材料による磁場との交換相互作用によって前記探針を磁気的に飽和させて、前記深針と前記磁性試料の前記表面との間にトンネル電流を生ぜしめ、前記トンネル電流を計測することにより、前記磁性試料の前記表面の状態を光励起を行うことなく検出するようにしたことを特徴とする。

【0007】
また、本発明の走査型磁気検出装置用深針は、電気伝導性の、スピン偏極を有する単結晶状固体からなり、磁性試料の表面に近接させ、前記探針の、前記磁性材料による磁場との交換相互作用によって前記探針を磁気的に飽和させて、前記深針と前記磁性試料の前記表面との間にトンネル電流を生ぜしめ、前記トンネル電流を計測することにより、前記磁性試料の前記表面の状態を光励起を行うことなく検出するようにしたことを特徴とする。

【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を実施した結果、上述した全く新規な構成の走査型磁気検出装置及び走査型磁気検出装置用深針を見いだした。

【0009】
本発明の走査型磁気検出装置における深針を磁性試料の表面に近接させると、前記深針の先端を構成する原子の波動関数と、前記磁性試料の表面原子のS型波動関数とが重なり、前記磁性試料による磁場との交換相互作用によって、前記深針は磁気的に飽和する。この結果、両者の間にトンネル電流が流れるようになるが、このトンネル電流は、前記磁性試料表面の磁気能率の大きさ及び向きに依存する。すなわち、前記磁性試料表面の磁気能率の大きさが増大するにつれて、前記トンネル電流の絶対値が大きくなる。また、前記トンネル電流は、前記磁気能率の向きと平行に流れる。

【0010】
前記磁性試料表面を構成する原子の種類や配列が変化すると、その磁気能率も変化する。したがって、この磁気能率の特性を反映したトンネル電流を計測することによって、前記磁性試料の表面状態を検出することができる。

【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明を発明の実施の形態に基づいて詳細に説明する。本発明においては、走査型磁気検出装置を構成する深針が、電気伝導性を有するとともに、スピン偏極を有する単結晶状固体から構成されていることが必要である。このような単結晶状固体としては、結晶自体が電気伝導性を有するとともにスピン偏極を有するもの、又は、非電気伝導性の、スピン偏極を有する結晶に対してドナー原子を添加し、電気伝導性を付与したものの2種類がある。

【0012】
前者の場合は、例えば、閃亜鉛鉱型の結晶構造を有するCuF、CuCl、AgI、ZnS、ZnSe、CdS、CdSe、BP、AlAs、AlP、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InAs、InP、InSb、及びSiCを例示することができる。また、後者の場合は、例えば、閃亜鉛鉱型の結晶構造を有するBNを例示することができる。

【0013】
また、結晶自体が電気伝導性を有するとともにスピン偏極を有する単結晶状固体として、ダイヤモンド型の結晶構造を有するSi、Ge、及びSnを例示することができる。同様に、非電気伝導性の、スピン偏極を有する結晶に対してドナー原子を添加することによって、電気伝導性を付与した単結晶状固体としては、ダイヤモンド型の結晶構造を有するCを例示することができる。

【0014】
これらの閃亜鉛鉱型結晶構造及びダイヤモンド型結晶構造を有する化合物は、その内部に電子で満たされていない不完全非結合軌道を有するため、良好なスピン偏極を示す。

【0015】
非電気伝導性の閃亜鉛鉱型結晶構造を有する化合物に対して添加するドナー原子としては、周期律表第III族のB、同じく周期律表第V族のP、Asを例示することができる。これらの元素は、前記化合物の結晶格子サイトを占める構成原子と置換して、電子供給源として機能する。その結果、前記非電気伝導性の化合物に対して電気伝導性を付与することができる。

【0016】
また、上記深針は如何なる形状をも取ることができるが、特に、深針を構成する単結晶状固体が、上記閃亜鉛鉱型の結晶構造又はダイヤモンド型の結晶構造を有する化合物から構成される場合、その形状は角錐状であることが好ましい。

【0017】
このような形状の深針は、例えば上述した閃亜鉛鉱型結晶構造又はダイヤモンド型結晶構造を呈する化合物の、結晶面が互いに交差して完成されるものである。この場合、前記化合物は、角錐の頂点部分を通る対称軸を有する。そして、前記化合物は常磁性を示し、外部磁場が存在しない場合、その磁気能率は前記対称軸に沿って存在する。このため、このような深針は、磁性表面の磁気的構造に強い影響を与えることなく、前記磁性表面の状態を正確に検出することができる。

【0018】
また、上記深針の大きさは、磁性試料表面の検出すべき情報の種類に依存して異なる。しかしながら、前記磁性試料の表面の状態を原子レベルで検出し、実用に供することのできる走査型磁気検出装置及びその深針を供するためには、深針は、100nm以下であることが好ましく、さらには10nm以下であることが好ましい。

【0019】
なお、ここでいう「深針の大きさ」とは、深針の形態を定義付ける各構成要素の大きさを意味する。例えば、上述したように、深針が角錐状である場合は、その高さ及び底辺が上記範囲を満たすことが要求される。

【0020】
また、上記深針を構成する単結晶状固体は、バルク状の固体を劈開することによって形成することが好ましい。これによって、上述したような角錐状の深針を上述したような範囲内の大きさに簡易に形成することができる。なお、上記深針は、CVD法やMOCVD法などの薄膜形成法を用いた結晶成長により作製することもできる。

【0021】
本発明の走査型磁気検出装置は、その構成及び検出原理から走査型磁気力顕微鏡や走査型トンネル電子顕微鏡などとして用いることができる。特に、従来の走査型トンネル電子顕微鏡の深針を本発明の深針で置き換えるのみで、本発明の走査型磁気検出装置からなる走査型トンネル電子顕微鏡を作製することができる。

【0022】
以上、具体例を挙げながら発明の実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明してきたが、本発明は上記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいて、あらゆる変形や変更が可能である。

【0023】
【発明の効果】本発明によれば、電気伝導性の、スピン偏極を有する単結晶状固体からなる深針より走査型磁気検出装置を構成し、前記深針と磁性試料表面との間の相互作用によって生じるトンネル電流を計測する。一方、このトンネル電流は、前記磁性試料表面の形態を反映してその大きさ及び向きが決定される。したがって、前記磁性試料表面の形態を高精度に検出することができる。