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明細書 :植物ウイルスの増殖に必須の宿主因子遺伝子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3203384号 (P3203384)
公開番号 特開2000-189172 (P2000-189172A)
登録日 平成13年6月29日(2001.6.29)
発行日 平成13年8月27日(2001.8.27)
公開日 平成12年7月11日(2000.7.11)
発明の名称または考案の名称 植物ウイルスの増殖に必須の宿主因子遺伝子
国際特許分類 C12N 15/09      
C07K 14/415     
C12P 21/02      
A01H  1/00      
A01H  5/00      
C12N  5/10      
FI C12N 15/00 ZNAA
C07K 14/415
C12P 21/02
A01H 1/00
A01H 5/00
C12N 5/00
請求項の数または発明の数 3
全頁数 11
出願番号 特願平11-232678 (P1999-232678)
出願日 平成11年8月19日(1999.8.19)
優先権出願番号 1998301810
優先日 平成10年10月23日(1998.10.23)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成11年8月19日(1999.8.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012442
【氏名又は名称】京都大学長
発明者または考案者 【氏名】古澤 巌
【氏名】石川 雅之
個別代理人の代理人 【識別番号】100059258、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 暁秀 (外2名)
審査官 【審査官】深草 亜子
参考文献・文献 J.Virol.(1993)Vol.67 No.9 p.5328-5338
Plant Physiol.(1994)Vol.106 p.1241-1255
Virology(1998)Vol.243 No.2 p.472-481
調査した分野 C12N 15/09
C07K 14/415
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(a)または(b)に示すアミノ酸配列からなることを特徴とする、ポリペプチド。
(a)配列表の配列番号1に示す、アミノ酸番号1-291で示すアミノ酸配列からなることを特徴とする、ポリペプチド。
(b)タバコモザイクウイルスの増殖に必要な宿主由来因子であり、(a)の一部が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなることを特徴とする、ポリペプチド。

【請求項2】
請求項1記載のポリペプチドをコードする、遺伝子。

【請求項3】
以下の(c)または(d)に示す塩基配列からなることを特徴とする、請求項2記載の遺伝子。
(c)配列表の配列番号2に示す、塩基番号1-876で示される塩基配列からなることを特徴とする、遺伝子。
(d)タバコモザイクウイルスの増殖に必要な宿主由来因子をコードし、(c)の一部が欠失、置換若しくは付加された塩基配列からなることを特徴とする、遺伝子。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、植物ウイルスの増殖に必須な宿主遺伝子であるシロイヌナズナTOM1遺伝子を用いたウイルス耐性植物体の作出方法に関するものであり、関連遺伝子であるシロイヌナズナTOM3遺伝子についても検討を行った。

【0002】
【従来の技術】ウイルスの複製蛋白質あるいはウイルス関連 RNAと特異的に相互作用し、ウイルスの複製に関与する宿主蛋白質が存在するのではないか、という可能性がこれまでの研究で指摘されてきた。しかし、過去に植物からウイルスの増殖に必須の宿主遺伝子が、単離・同定された例は存在しなかった。

【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来、過敏感性反応を介して植物にウイルス抵抗性を付与する、という技術が用いられてきた。その利用にあたり、抵抗性が他種植物に導入できないこと、少数のウイルスにしか有効でないこと、抵抗性を打ち破るウイルス変異株が出現しやすいことが問題となってきた。

【0004】
一方、ウイルスゲノムの一部を植物で発現させることにより、ウイルス耐性を付与する方法が最近実用化されているが、その利用にあたっては、抵抗性が少数のウイルスにしか有効でないこと、組み換えによる新規ウイルス出現の危険性があることが問題となっていた。

【0005】
【課題を解決するための手段】本発明において、植物ウイルスの増殖に必須の蛋白質をコードする遺伝子であるシロイヌナズナ遺伝子TOM1をクローニングした。TOM1遺伝子の発現制御や改変により、ウイルス抵抗性を付与することが可能である。また、やはり植物ウイルスの増殖に必須の蛋白質をコードする遺伝子であるシロイヌナズナ遺伝子TOM3についてもクローニングした。

【0006】
これまでの抗ウイルス戦略において、ウイルス耐性はウイルスの種類によって決まっており、普遍性がない。今回のターゲット遺伝子であるシロイヌナズナTOM1遺伝子は、ウイルスが植物内で増殖するために必須な植物遺伝子であり、他種植物にもTOM1と相同な遺伝子が存在すること、他の動植物アルファ様ウイルスもTOM1に類似した宿主遺伝子産物を使って増殖していることが予想される。従って、TOM1あるいはその類似遺伝子の操作によるウイルス耐性生物の作出は、広範囲の生物種の種々のアルファ様ウイルスに適用できる可能性があり、汎用性が期待できる。また、この方法は宿主植物ーウイルスに一般的にみられる相互作用を断ち切るので、抵抗性を打破するウイルスが出現しにくいと予想される。

【0007】
【発明の実施の形態】本発明者らは、タバコモザイクウイルスの感染によるウイルス外被蛋白質の増加が抑制され、ウイルス感染時においてウイルス外被蛋白質の増加が抑制されたシロイヌナズナ変異株を作成した。その変異株よりポシショナルクローニングによりウイルスの増殖に必須の遺伝子であるTOM1遺伝子を得てその塩基配列を解析し、当該遺伝子がコードするTOM1蛋白質のアミノ酸配列解析を行った。また、上記tom1変異株を更に処理することにより、tom1変異株において残存しているタバコモザイクウイルスの増殖が完全に消失したシロイヌナズナ変異株を作成し、やはりウイルスの増殖に必須の遺伝子であるTOM3遺伝子を得てその塩基配列を解析し、当該遺伝子がコードするTOM3蛋白質のアミノ酸配列解析を行った。本発明の抗ウイルス戦略は宿主遺伝子の操作のみによるので、遺伝子組み換えにより、新規ウイルスが出現する危険性はない。以上のように、本遺伝子を利用した抗ウイルス戦略は、有効かつ安全であることが予想され、農学、医学分野において大いに活用される可能性がある。

【0008】
本発明のTOM1遺伝子は、配列表の配列番号2に記載した塩基配列により特定される。またTOM1遺伝子がコードするポリペプチドであるTOM1蛋白質は、配列表の配列番号1に記載したアミノ酸配列により特定される。また、やはり植物ウイルスの増殖に必須の蛋白質をコードするTOM3遺伝子は、配列表の配列番号4に記載した塩基配列により特定される。またTOM3遺伝子がコードするポリペプチドであるTOM3蛋白質は、配列表の配列番号3に記載したアミノ酸配列により特定される。上述したように、TOM1遺伝子及びTOM3遺伝子はシロイヌナズナ由来の遺伝子であり、TOM1蛋白質及びTOM3蛋白質はタバコモザイクウイルスの増殖に必須の植物因子である。そのため、本発明の遺伝子の発現を制御したり、改変する事により、植物にウイルス抵抗性を付与することが可能であり、そのような目的に本発明の遺伝子を利用する事ができる。例えば、TOM1遺伝子又はTOM3遺伝子、若しくは両遺伝子のアンチセンスRNA を利用する方法、導入したTOM1遺伝子又はTOM3遺伝子、若しくは両遺伝子によるコサプレッションを利用することにより、遺伝子の発現を制御する方法がある。又はウイルスとの相互作用はできても増殖をサポートできない変異蛋白質をコードするtom1遺伝子又はtom3遺伝子、若しくは両者を導入する事により発現するドミナントネガティブ効果を利用する事で、植物にウイルス抵抗性を付与することが可能である。

【0009】
多くのアミノ酸については、それをコードするDNA の塩基配列は複数存在する。本発明で明らかにされたTOM1蛋白質のアミノ酸配列をコードする遺伝子の場合にも、そのDNA の塩基配列として、天然の遺伝子の塩基配列以外にも、多数の塩基配列が存在する可能性がある。しかし、本発明の遺伝子は、天然のDNA 塩基配列のみに限定されるものではなく、本発明により明らかにされたTOM1蛋白質のアミノ酸配列をコードする、他のDNA 塩基配列を含むものである。

【0010】
また、遺伝子組み換え技術によれば、基本となるDNA の特定の部位に、当該DNA がコードする蛋白質の基本的な特性を変化させることなく、あるいはその特性を改善する様に、人為的に変異を起こすことができる。本発明により提供される天然の塩基配列を有する遺伝子、あるいは天然のものとは異なる塩基配列を有する遺伝子に関しても、同様に人為的に挿入、欠失、置換を行うことにより天然の遺伝子と同等のあるいは改善された特性を有するものとすることが可能であり、本発明はそのような変異遺伝子を含むものである。

【0011】
また、本発明の遺伝子を植物に導入して形質転換した植物も本発明の範囲内である。本発明の遺伝子を導入する対象として適している植物の例として、イネ、オオムギ、コムギ、トウモロコシ等の種々の単子葉植物、またナス、トマト、ジャガイモ等の種々の双子葉植物が挙げられる。本発明の遺伝子を導入する方法の例としては、本技術分野で通常用いられている種々の方法を用いる事が可能である。即ち、アグロバクテリウム法、プロトプラスト法、PEG法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン法、マイクロインジェクション法等が挙げられる。以下の実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は上述した例又は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術分野における通常の変更をする事ができる。

【0012】
【実施例】(TOM1のマップベースドクローニング)以前の研究により、tom1変異は第4染色体長腕の DNAマーカーJGB9近傍にマップされた[K. Ohshimaet al., Virology 243, 472 (1998).]。tom1変異をさらに詳細にマップするため、発明者は、 DNAマーカー g3883とT18ISXの間で染色体組み換えを起こした株を、野生型エコタイプ Col-0とtom1-3変異株(エコタイプWS由来)の交配から得られた約 3,000株のF2植物から選抜した(図1のA)。そのような組み換え体が 246株得られ、図1に示した DNAマーカーとTOM1遺伝子座の間での組み換えが調べられた。

【0013】
TOM1遺伝子のマッピングとポジショナルクローニングを図1に示す。
(図1のA)第4染色体TOM1遺伝子座近傍の遺伝子地図 白ぬき四角はCAPSマーカーを示す。数字はマーカーの相対位置と、そのマーカーとTOM1座の間で起きた染色体組み換えの数を示す。
(図1のB)と(図1のC)それぞれ ESSA II BACクローンと Mitsui P1クローンによるコンティグ(図1のD)TOM1遺伝子座近傍の物理地図 縦線は EcoRI部位を示す。白ぬき四角と数字は(図1のA)と同様。矢印はTOM1 mRNA の向きと位置を表す。矢印中白抜き部分はイントロンを示す。
(図1のE)T-DNA によるコンティグ P1クローン 8C3または 5F6由来のT-DNAクローンを互いに重複し、TOM1遺伝子座をカバーするように並べた。これらのT-DNAは tom1-1 変異植物に形質転換され、tom1-1変異の相補能が検定された。各 T-DNAクローンの右側にタバコモザイクウイルス(TMV) 増殖形質の相補をチェックした形質転換ラインの合計数に対する形質が相補されたラインの数の比を示した。
(図1のF)tom1変異の相補と T-DNAの共分離T-DNA クローン1001により形質転換されたtom1変異株由来のT2植物にTMV-Cgを接種した。接種して 2週間後、植物体から全蛋白質を調製し、SDS-PAGEで分離し、クマシーブリリアントブルーで染色した [上のパネル;M. Ishikawa, F. Obata, T. Kumagai, T. Ohno, Mol. Gen. Genet. 230, 33(1991)] 。さらに、それぞれの T2 植物から DNAを抽出し、特異的プライマーセット(NPTII 配列をポリメラーゼ連鎖反応(PCR) で増幅するのには、プライマー (5'-CTATGACTGGGCACAACAGACAATC-3')と (5'-GCGATAGAAGGCGATGCGCT-3') を用いた)を用いたPCR によって NPTII遺伝子の配列を増幅し、アガロースゲル電気泳動とエチジウムブロマイド染色により解析した(下のパネル)。TMV-Cg-CP と PCRで増幅された NPTII遺伝子由来の DNA断片の位置を示した。

【0014】
エコタイプ Col-0とWSの間でXbaI断片長多型を与えるCAPSマーカーT18ISX (図1のA)はP1クローン78E9のエンドプローブ(図1のC)がエコタイプ Col-0とWSの間でXbaI断片長多型を与えるという知見と、 ESSA II BACコンティグ(図1のB)の塩基配列データー[http://muntjac.mips.biochem.mpg.de/arabi/bac/]をもとにして構築した。T18ISXのプライマー配列は、T18ISXF (5' -CTGAGAATGTTTATCCCAGCTG-3') と T18ISXR (5'-GTAATGCTTGAATCTCTTGATATC-3') である。 PCRマーカー g3883と JGB9 については Arabidopsis thaliana Database (AtDB) [http://genome-www.stanford.edu/Arabidopsis/lsd1_CAPS.html]に述べられている。シロイヌナズナtom1-3変異株は Feldmann らにより構築された T-DNA挿入ライブラリー[K.A. Feldmann and M. D. Marks, Mol. Gen. Genet. 208, 1 (1987) ]から TMV-Cg の外被蛋白質 (CP) の蓄積が低下する変異株として単離された。 tom1-3 植物はシロイヌナズナtom1-1あるいは tom1-2 変異株と同様の TMV-Cg CPの蓄積パターンを示し、遺伝解析により原因変異が TOM1遺伝子座内にあることが示された。 tom1-3 変異は挿入 T-DNAとはリンクしていなかった。TOM1遺伝子座のファインマッピングはtom1-3変異株を用いて以下のように行った:tom1-3 (エコタイプ WS 由来) とシロイヌナズナエコタイプ Col-0の交配により得られた F2 植物それぞれの各1枚の葉から NaOH 抽出法 [H. Wang, M. Qi, A. J.Cutler, Nucleic Acids Res. 21, 4153 (1993)]により DNAを調製した。次いでそれぞれの F2 植物についてマーカー g3883と T18ISX のジェノタイプを調べ、3103株の F2 植物からそれら2つのマーカー間で染色体組み換えのあった 246株を選択した。さらに選択された F2 植物それぞれから CTAB 抽出法[S. O. Rogers and J. Bendich, Plant Mol. Biol. 5, 69 (1985)]、クロロフォルム抽出、イソプロパノール、塩化マグネシウム沈殿法[T. Yamamo to and M. Horikoshi,Nucleic Acids Res. 23, 3351 (1995) ]を併用して DNAを抽出精製した。このDNAを用いて CAPS マーカー JGB9 と図1に示した RFLP マーカーのジェノタイプを決定した。RFLPマーカーは P1 ゲノミッククローンを制限酵素処理して得た。RFLPマーカーに関する情報は請求に応じて提供する。プローブの調製とサザンハイブリダイゼーションは Gene Images labelling and detection system (Amersham Pharmacia Biotech, Uppsala, Sweden) を用いて行った。F2植物の TM V増殖形質は F3 植物における TMV-Cg CPの蓄積を Ishikawa et al.[M. Ishikawa, F. Obata, T. Kumagai, T. Ohno, Mol. Gen. Genet. 230,33(1991).]に述べられた方法で SDS-PAGE により見積もることにより決定した。

【0015】
この解析により、TOM1遺伝子座は図1のDに示すとおり JGB9 マーカーを含む22 kbpの領域にマップされた。この領域は互いに重複する P1 ゲノミッククローンでカバーされ(図1のC)、次いで植物形質転換用 T-DNAベクターにサブクローンされた(図1のE)。P1 cloning system を用いて構築されたシロイヌナズナゲノミックライブラリーは Mitsui Plant Biotechnology Research Instituteより供与していただいた。JGB9配列とハイブリダイズするクローンのスクリーニングとクロモソームウオーキングは Liu et al. [Y. G. Liu, N. Mitsukawa, A. Vazquez-Tello, R. F. Whittier, Plant Journal 7, 351 (1995)]の方法に従って行った。T-DNA クローン 508と653 はそれぞれ P1 ゲノミッククローン8C3と 5F6を EcoRIで部分分解し、T-DNA ベクター pCLD04541 [http://genome-www.stanford.edu/Arabidopsis/ww/Vol4ii/home.html] にサブクローンすることにより構築した。T-DNA クローン 1001 と X1112はそれぞれ P1 ゲノミッククローン8C3を SalI + ClaIで、あるいは 5F6をXhoIで切断し、pCLD04541 にサブクローンすることにより構築した。

【0016】
(導入遺伝子による TMVの増殖効率の回復)T-DNA ベクターにサブクローンされたゲノミック DNAはアグロバクテリウムツメファシエンス( Agrobacterium tumefaciens)を用いた減圧浸潤法により tom1-1 変異株に導入された。T-DNA クローンはエレクトロポーレーションにより Agrobacterium tumefaciens C58C1 (pGV2260)に導入され、減圧浸潤法 [N. Bechtold and G. Pelletier,Methods Mol. Biol. 82, 259 (1993)]によるシロイヌナズナの形質転換に用いられた。

【0017】
クローン1001とX1112 由来の T-DNAを導入するとT1世代において TMVの増殖効率の回復がみられたが、クローン 653と508 由来の T-DNAの導入によっては回復がみられなかった。調べた限り、TMV の増殖の回復のみられた全ての T2 植物は、T-DNA 中に存在する NPTII遺伝子をもっていた(図1のF)。TMV-Cg [T. Yamanaka et al., Virus Genes 16, 173 (1998)] を TMVの増殖検定に用いた。植物の育成、TMV-Cgの感染、TMV-Cg CP 蓄積の SDS-PAGE による検定は Ishikawa et al.[ M. Ishikawa, F. Obata, T. Kumagai, T. Ohno, Mol. Gen. Genet. 230, 33(1991)] に述べられた方法で行った。形質転換ラインの TMV増殖形質の決定には各 5-8 株の T2 植物を用いた。T2植物における NPTII遺伝子の塩基配列の存在は 1001 と X1112で形質転換され、形質が相補されたそれぞれ 2あるいは 4ラインについて調べた。

【0018】
これらの結果は、TOM1遺伝子がクローン 1001 とX1112 に共通した 6 kbpの領域内に位置することを示唆する(図1)。この6 kbp の領域をプローブとしてノザン解析を行うと、非感染の野生型植物由来の全 RNA中に約 1.4 kb の単一の RNAバンドが検出された(データは示さないが、図2と同様; )。シロイヌナズナ全 RNAは凍結植物体から ISOGEN LSキット (Nippon Gene,Tokyo, Japan) を用いて使用説明書に従って抽出精製した。ノザンハイブリダイゼーションは Ishikawa et al.[M. Ishikawa, S. Naito, T. Ohno, J. Virol.67, 5328 (1993) ]に述べられた方法で行った。32P-標識プローブは Multiprime DNA labelling system (Amersham Pharmacia Biotech, Uppsala,Sweden)を用いて行った。

【0019】
tom1 mRNA の発現を示すノザンハイブリダイゼーション解析の結果を図2に示す。パネル上に示した野生型あるいは変異株植物(播種後3~4週のもの)の地上部より全 RNAを抽出し、グリオキサール変性後1%アガロースゲル電気泳動で分離し、ナイロンメンブレンに転写した。同様のメンブレンを2枚用意し、一方を 32P- 標識した TOM1 DNA プローブと、もう一方を32P-標識した UBQ5 [E. E. Rogersand F. M. Ausubel, Plant Cell 9, 305 (1997)]DNA プローブとハイブリダイズさせた。TOM1特異的プローブとしては、cDNAクローンを鋳型として PCRで増幅し、ゲル精製したTOM1 ORFに相当する DNA断片を用いた。TOM1および UBQ5 mRNAの位置を左側に示した。サイズマーカーとして用いた CMV RNA3 (2215ヌクレオチド)とRNA4 (1033ヌクレオチド)の泳動位置を右側に示した。

【0020】
tom1-1, tom1-2, tom1-3 変異株植物におけるその 1.4 kb RNA の蓄積レベルは、野生型植物においてより低かった(図2)。これは野生型植物において検出されたバンドがTOM1遺伝子座由来のものであることを示唆する。非感染植物においてその RNAが発現していることはTOM1の機能がウイルス感染後極初期に必要であることを示唆する以前の実験結果と合致する[M. Ishikawa, S. Naito, T. Ohno, J. Virol. 67, 5328 (1993)]。

【0021】
(TOM1の塩基配列の決定)6 kbの相補領域とハイブリダイズするcDNAクローンの塩基配列を決定し、EST(expressed sequence tag)およびゲノミック DNAの配列と比較したところ、11エクソンからなる1226ヌクレオチドの配列がmRNA上にあることが明らかになった。

【0022】
発明者は、10万個のプラークを含むシロイヌナズナ( Arabidopsis thaliana )5'-STRETCH cDNA library (Clontech, Palo Alto, CA, USA)をスクリーニングし、T-DNA クローン 1001 と X1112の重複領域とハイブリダイズする cDNA クローンを2個得た。それらのクローンの挿入 DNAは PCRで増幅され、シークエンスされた。cDNA挿入を増幅し、シークエンスするためには2つのオリゴヌクレオチド: 5'-CGCCTCCATCAACAAACTTTCTTG-3' and 5'-GTTCTGGTAAAAAGCGTGGTC-3' を用いた。配列決定には 377型 DNAシークエンサーと BigDye terminator sequencing kit (Perkin Elmer, Applied Biosystems division, Foster city, CA, USA) 用いた。それらの cDNA は互いにオーバーラップし、あわせて 1064 ヌクレオチドの領域をカバーした (Genbank # AB016925) 。その塩基配列をシロイヌナズナ WU-BLAST2サーチ[http://genome-www2.stan ford.edu/cgi-bin/AtDB/nph-blast2atdb]にかけると、3つの expressed sequence tag (EST) クローン[T. Newman et al., Plant Physiol. 174, 1241 (1994) ]:120J4T7 (GenBank accession number T43509), 160I24T7 (GenBank # T88633) and 119P7T7 (GenBank #T43917) がヒットした。それらの塩基配列を総合して、計 1226 ヌクレオチドの領域が同定された。ゲノミックシークエンス (Genbank # AB016924) との比較から、その 1226 ヌクレオチドの領域は11個のエクソンからなることが判明した。

【0023】
ノザン解析により見積もられた当該mRNAのサイズとポリA鎖の長さを考慮すると、その配列はmRNAのほぼ全長をカバーすると考えられた。そのmRNA配列上には5’末端から第1番目に存在する AUGコドンから開始する 876ヌクレオチド (291 アミノ酸)からなるオープンリーディングフレーム (ORF)が存在した。解析されたTOM1遺伝子の塩基配列を、配列表の配列番号2に示す。その ORFの上流にはインフレームの終止コドンが存在したので、cDNAとしてクローン化されていないかもしれない領域に存在する AUGコドンから翻訳が始まる可能性は否定された。

【0024】
さらに、3つのtom1アリルは、その ORFの発現に大きな影響を与えると予想される突然変異を対応するゲノミック DNA上にもっていた:すなわち、tom1-1はイントロン5のスプライシングアクセプター部位に点突然変異を、tom1-2はエクソン2にナンセンス変異を、tom1-3はエクソン4に1塩基挿入によるフレームシフト変異をもっていた(GenBank accession number AB016924 と AB016925)。これらの結果はその ORFがTOM1遺伝子産物をコードすることを示している。

【0025】
(TOM1蛋白質の構造特性)推定されたTOM1のアミノ酸配列を配列表の配列番号1及び図3に示す。白ぬき四角と下線はそれぞれPredict-Proteinプログラム[B. Rost, R. Casadio, P. Fariselli, C. Sander, Protein Science 4, 521 (1995). (http://www.embl-heidelberg.de/predictprotein/predictprotein.html)] によって予測された膜貫通領域と細胞内領域を示す。同様の予測結果は SOSUIプログラム[T. Hirokawa, S. Boon-Chieng, S. Mitaku, Bioinformatics 14, 378 (1998). (http://www.tuat.ac.jp/~mitaku/adv_sosui/submit.html)]によっても得られた。グリコシレーションを受けると予測されたアスパラギン残基をアスタリスクでマークした。

【0026】
導き出されたTOM1蛋白質のアミノ酸配列には数カ所の疎水領域が存在した。蛋白質の膜貫通領域とその方向性を予測するコンピュータープログラム[PHDhtm/PredictProtein:B. Rost, R. Casadio, P. Fariselli, C. Sander, Protein Science4, 521(1995). (http://www.embl-heidelberg.de/predictprotein/predictprotein.html) ; SOSUI: T. Hirokawa, S. Boon-Chieng, S. Mitaku, Bioinformatics 14, 378 (1998). (http://www.tuat.ac.jp/ ~mitaku/adv_sosui/submit.html)] によれば、この蛋白質はC末端が細胞質側に露出した7回膜貫通型蛋白質と予測された。細胞外に露出していると予測された領域に位置するアミノ酸 28-31と 168-171にはN-グリコシレーションを受ける典型的なコンセンサス配列が存在した(図3)。N末端あるいは他の部位にも、明らかなオルガネラターゲットシグナルは見いだされなかった[PSORT: K. Nakai and M. Kanehisa, Genomics, 14, 897 (1992). (http://cookie.imcb.osaka-u.ac.jp/nakai/psort.html)] 。

【0027】
データーベースサーチを行った結果、いくつかの内在性膜蛋白質がTOM1蛋白質とアミノ酸配列の類似性をもつものとしてリストアップされた。TOM1蛋白質の予想されたアミノ酸配列と類似性のあるアミノ酸配列を以下のプログラムでデーターベースサーチした: BLAST 2.0 [S. F. Alschul et al., Nucleic Acids Res. 25, 3389 (1997), http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/] ーこれにより7回膜貫通型蛋白質と予想されるヒトの TM7SF1 蛋白質[C. Spangenberg, A . Winterpacht, B. U. Zabel, R. W. Lobbert, Genomics 48, 178 (1998)]とTOM1蛋白質のアミノ酸配列が弱い類似性をもつことが示唆された;Fasta3 [W. R. Pearson and D. J. Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85, 2444 (1988), http://www2.ebi.ac.uk/fasta3/]ーこれにより多くの生物のチトクロームbと TOM1 蛋白質のアミノ酸配列が弱い類似性をもつことが示唆された;PropSearch[U. Hobohm and C. Sander, J. Mol. Biol. 251, 390 (1995), http://www.embl-heidelberg.de/prs.html]はTOM1と類似性のある蛋白質としてサルモネラ・ティフィムリウム( Salmonella typhimurium )の7回膜貫通型蛋白質でニコチンアミドモノヌクレオチドトランスポーター PnuC 蛋白質[J. W. Foster, Y. K. Park, T. Fenger, M. P. Spector, J. Bacteriology 172, 4187 (1990)]をもっとも高いスコア (distance=8.41)で、また他のレセプターやトランスポーターを含む膜蛋白質をリストした。この結果は内在性膜蛋白質の構造的類似性を反映するものと考えられる。

【0028】
(TOM1蛋白質の機能)プロトプラストを用いた以前の解析から、tom1変異は TMVの1細胞内での増殖を、ゲノミック RNAの最初の脱外被以降の、RNA 複製を含むプロセスのどこかで阻害していると予想された[M. Ishikawa, S.Naito, T. Ohno, J. Virol. 67, 5328 (1993)] 。TMV を含めて、ほとんどのあるいは全ての高等真核プラス鎖 RNAウイルスの複製は、膜に結合した複合体で起こると考えられている[K. W. Buck,Advances in Virus Research 47, 159 (1996); T. A. Osman and K. W. Buck,J. Virol. 70, 6227 (1996)]。

【0029】
しかしながら、TMV の複製蛋白質は明らかな膜貫通ドメインも膜への結合を起こさせる修飾を受けるためのコンセンサスアミノ酸配列ももたない[B. Rost, R.Casadio, P. Fariselli, C. Sander, Protein Science 4, 521(1995). (http://www.embl-heidelberg.de/predictprotein/predictprotein.html);T. Hirokawa,S. Boon-Chieng, S. Mitaku, Bioinformatics 14, 378 (1998) (http://www.tuat.ac.jp/~mitaku/adv_sosui/submit.html); K. Nakai and M. Kanehisa, Genomics, 14, 897 (1992) (http://cookie.imcb.osaka-u.ac.jp/nakai/psort.html)]。従って、TMV にコードされた複製蛋白質は膜に局在する宿主蛋白質と結合して機能すると考えられる。TOM1蛋白質が TMV RNAの複製に直接寄与するのか、より間接的に複製に影響を与えるのか実験的には示されていないが、一つの可能性として、TOM1は複製複合体を膜に結合させる働きをしているのかもしれない。

【0030】
現在までに、いくつかの宿主蛋白質がアルファ様ウイルスの複製に寄与していることが示唆されている:例えば、BMV の複製にはオオムギの翻訳開始因子3(eIF3)のp41 サブユニット[R. Quadt et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 1498 (1993) ]と出芽酵母の MAB1 MAB2 蛋白質[M. Ishikawa, J. Diez, M. A. Restrepo-Hartwig, P. Ahlquist, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94, 13810(1997)23 , J. Diez, M. Ishikawa, M. Kaido, P. Ahlquist, 未発表] が、TMVの複製にはトマトの eIF3 のGCD10-関連サブユニット[T. A. Osman and K. W.Buck, J. Virol. 71, 6075 (1997)] が、シンドビスウイルスの複製には蚊の La抗原ホモログ[N. Pardigon and J. H. Strauss, J. Virol. 70, 1173 (1996)]が関係していると示唆されている。

【0031】
そのなかで、TOM1蛋白質は数少ない内在性膜蛋白質である[B. Rost, R. Casadio, P. Fariselli, C. Sander, Protein Science 4, 521(1995). (http://www.embl-heidelberg.de/predictprotein/predictprotein.html), T. Hirokawa, S.Boon-Chieng, S. Mitaku, Bioinformatics 14, 378 (1998). (http://www.tuat.ac.jp/~mitaku/adv_sosui/submit.html)]。BMV の RNA合成は小胞体(ER)膜上で起こり[M. A. Restrepo-Hartwig and P. Ahlquist, J. Virol. 70, 8908 (1996)]、一方、TYMVとアルファルファモザイクウイルスの RNA合成は葉緑体外膜の細胞質面で起こる[M. deGraaff, L. Coscoy, E. M.J. Jaspars, Virology 194, 878 (1993); M. Garnier, R. Ramoun and J. M. Bove, Virology 104, 374 (1980)] 。TMV とアルファウイルスの複製蛋白質はそれぞれ ER とエンドソーム/リソソーム膜上に局在する[M,Heinlein et al., Plant Cell 10, 1107 (1998), S.Froshauer, J. Kartenbeck, A.Helenius, J. Cell Biol. 107, 2075 (1988)]。しかしながら、後2者の RNA合成の場は決定されていない。

【0032】
従って、近縁のアルファ様ウイルスの間でさえ細胞内における RNA合成の場は多岐にわたっているかもしれない。もしそうなら、ウイルスの複製複合体の膜アンカーもウイルスによってまちまちかもしれない。TMV と近縁のアルファ様ウイルスである CMVやTYMVの複製複合体がTOM1とは別の分子によって膜に結合しており、そのためにそれらのウイルスがtom1変異の影響を受けない[M. Ishikawa, F.Obata, T. Kumagai, T. Ohno, Mol. Gen. Genet. 230, 33(1991)]という可能性も十分にありうる。

【0033】
ところで、TOM1遺伝子の機能がほぼ完全に失われていると考えられるシロイヌナズナ tom1-1 , tom1-2, tom1-3変異株のいずれにおいても TMV-Cg 株の増殖はゼロにはならない。尚、TMV-Cgを接種して16日間育成した植物における外被蛋白質蓄積濃度は野生株の約 1/4である(図4参照)。この事実は、TOM1遺伝子の機能が TMVの増殖に必須でありtom1変異株における残存 TMV増殖能がTOM1類似遺伝子によって担われている可能性を示唆した。そこで、tom1-1変異株をさらにエチルメタンスルフォン酸で突然変異誘起処理して TMVの増殖がほぼゼロになる JA11 株を得た(図4)。図4は、Col-0 野生株と各変異株にTMV-Cgを接種して、16日後の非接種上葉の全蛋白質をSDS-PAGEで分画し、クマシーブリリアントブルー染色により外被蛋白質の蓄積を検討した結果である。mockは非接種コントロール植物を、PD114 はtom1-1変異株を示す。エチルメタンスルフォン酸処理は、種子を0.3%エチルメタンスルフォン酸中で20℃で16時間処理することにより行った[Kranz, A. R. and Kirchheim, B. (1987) Genetic resources in Arabidopsis. Arabidopsis Inf. Serv. vol 24, section 4.2, pp 1-7.] 。遺伝解析の結果、JA11株にはtom1変異に加えて TMVの増殖をさらに低下させる劣性変異tom3-1が存在することが示唆された。

【0034】
(TOM3遺伝子の同定)マッピングの結果、tom3-1変異は第2染色体の上部に位置する酵母人工染色体クローン CIC11A4(インサートサイズ約 520 kbp)上、RFLPマーカー 7C11Lと 11A4Rの間に存在することがわかった(図5)。マッピングは、JA11株とtom1-3変異株の交配により得られたF2ラインのうち、tom1-1 tom3-1 形質を示した12ラインにおける各マーカーのジェノタイプを調べることにより行った。第3染色体の下に制限酵素断片長多型マーカーと、そのマーカーとtom3変異との間で生じた組み換えの数を示した。TOM3遺伝子は7C11L と11A4R との間にマップされた。尚、酵母人工染色体クローン CIC11A4とは、酵母人工染色体ベクターにクローン化されたシロイヌナズナゲノミック DNA断片であり、そのクローンの挿入 DNA断片は、図5に示したシロイヌナズナの第2染色体上部の約 520 kbpの領域に相当する。図5において、両端に黒丸のついた線が酵母人工染色体(YAC )クローンを示す。YAC の横の数字は、YAC インサートの大まかなサイズ(kbp )を示す。

【0035】
TOM1のアミノ酸配列と似た配列の、 expressed sequence tag(EST)としての登録の有無を、 BLASTにより検索した。その結果、EST クローン86D11 の配列が TOM1 と似たアミノ酸配列をコードすることを見いだした。さらに 86D11に対応するゲノミック配列が CIC11A4近傍に位置する bacterial artificial chromosome(BAC) クローンF5O4上にあることが明らかになった。F5O4は、YAC と同様に、BAC ベクターにクローン化されたシロイヌナズナゲノミック DNA断片である。F5O4の挿入 DNA断片は、シロイヌナズナの第2染色体上部、YAC CIC11A4 の挿入 DNA断片近傍に位置する事が知られている。

【0036】
このTOM1類似配列が、TOM3と関連をもつものと考えられた。しかし、86D11 の配列は短く、mRNAの全体をカバーしている可能性は低いと考えられたため、86D11 をプローブとして、プラークハイブリダイゼーション[Ausubel et al. (1994). Current protocols in molecular biology. John Wiley & Sons, Inc., New York, NY, USA. 参照] により、シロイヌナズナ( Arabidopsis thaliana )5'-STRETCH cDNA ライブラリー(Clontech, Palo Alto, CA, USA)をスクリーニングした。その結果、ハイブリダイズするクローンを5個得た。これらのcDNAクローンの挿入 DNAの塩基配列を決定し総合して、mRNAの全長に近いと考えられる1203 bp の配列を得た。得られた cDNA の塩基配列から、対応するmRNAはTOM1蛋白質と類似性をもつ 303アミノ酸の蛋白質をコードすることが明らかとなった。TOM1蛋白質とTOM3蛋白質の推定アミノ酸配列の比較を図6に示す。図6において、同一のアミノ酸残基を2つの点で、類似のアミノ酸残基を1つの点で示す。

【0037】
さらに野生株とJA11株のゲノミック DNA間でのTOM1類似配列付近の塩基配列の比較を行った。JA11変異株にはこの蛋白質の発現に致命的な影響を与えると考えられる、45番目のトリプトファンコドン (TGG)からナンセンスコドン (TAG)への変化をもたらす変異が存在した。以上の実験結果より、図6に示したオープンリーディングフレームに対応する遺伝子がTOM3であると考えられた。TOM3遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号4に、TOM3蛋白質の推定アミノ酸配列を配列表の配列番号3に示す。

【0038】
(TOM3遺伝子とTOM1遺伝子との関係)TOM3遺伝子はTOM1遺伝子とアミノ酸配列において50%以上の同一性をもつことから、TMV の増殖においてTOM1蛋白質とパラレルな機能をもつと推測される。また、tom1 tom3 二重突然変異株における TMVの増殖がほとんどゼロなので、TOM1-TOM3 により担われる機能は TMVの増殖に必須であると考えられる。しかも、両遺伝子の活性が著しく損なわれるような変異が入っていたにもかかわらず二重突然変異株が生育可能であった。従って、他の植物においてもTOM1類似遺伝子を同時不活化することにより、宿主の生育能を残して TMVにほぼ完全な耐性を付与することができる可能性が示唆された。

【0039】
【発明の効果】本発明により、配列表の配列番号2に示すTOM1遺伝子、及び当該遺伝子がコードする配列表の配列番号1に示すTOM1蛋白質が提供された。TOM1遺伝子はシロイヌナズナ由来の遺伝子であり、タバコモザイクウイルスの増殖に必須な蛋白質をコードするため、当該遺伝子を改変することによりウイルス耐性を有する植物を作成できる。更に、配列表の配列番号4に示すTOM3遺伝子、及び当該遺伝子がコードする配列表の配列番号3に示すTOM3蛋白質についても検討を行い、TOM3遺伝子もまた、タバコモザイクウイルスの増殖に必須な蛋白質をコードすることを示した。

【0040】
【配列表】
<110>出願人氏名:京都大学長
<120>発明の名称:植物ウイルスの増殖に必須の宿主因子遺伝子
<160>配列の数:4
<210>配列番号:1
<211>配列の長さ:291
<212>配列の型:アミノ酸
<213>起源:Arabidopsis thaliana heynh TOM1
<400>配列
Met Thr Asp Ser Gly Leu Met Met Pro Ala Glu Ile Ala Gly Ile Leu 16
Thr Thr Ala Ile Thr Ser Trp Trp Asp Asp Val Asn Glu Ser Thr Gln 32
Trp Gln Asp Gly Ile Phe Phe Ala Leu Cys Gly Ala Tyr Ala Leu Val 48
Ser Ala Val Ala Leu Val Gln Leu Ile Arg Ile Gln Met Arg Val Pro 64
Glu Tyr Gly Trp Thr Thr Gln Lys Val Phe His Leu Met Asn Phe Val 80
Val Asn Gly Val Arg Ala Val Leu Phe Gly Phe His Met Gln Val Phe 96
Leu Val His Pro Lys Ala Leu Cys Trp Val Leu Leu Asp Leu Pro Gly 112
Leu Leu Phe Phe Ser Ala Tyr Thr Leu Leu Val Leu Phe Trp Ala Glu 128
Ile Tyr His Gln Ala Arg Ser Leu Pro Thr Asp Lys Leu Arg Ile Thr 144
Tyr Ile Ser Val Asn Val Ala Val Tyr Leu Ala Gln Ile Gly Ile Trp 160
Ala Tyr Ile Trp Val His Asp Asn Ser Thr Val Glu Leu Val Gly Lys 176
Ile Phe Ile Ala Val Val Ser Phe Ile Ala Ala Leu Gly Phe Leu Leu 192
Tyr Gly Gly Arg Leu Phe Phe Met Leu Arg Arg Phe Pro Ile Glu Ser 208
Lys Gly Arg Arg Lys Lys Leu His Glu Val Gly Ser Val Thr Ala Ile 224
Cys Phe Thr Cys Phe Leu Ile Arg Cys Val Val Val Ala Val Ser Ala 240
Phe Asp Lys Asp Leu Thr Leu Asp Val Leu Asp His Pro Val Leu Asn 256
Leu Ile Tyr Tyr Met Val Val Glu Val Leu Pro Ser Ala Leu Val Leu 272
Phe Ile Leu Arg Lys Leu Pro Pro Lys Arg Val Ser Ala Gln Tyr His 288
Pro Ile Gln 291
<210>配列番号:2
<211>配列の長さ:876
<212>配列の型:核酸
<213>起源:Arabidopsis thaliana heynh TOM1
<400>配列
ATGACGGATT CGGGTCTAAT GATGCCGGCG GAGATTGCTG GAATTCTAAC CACGGCGATT 60
ACGAGTTGGT GGGATGATGT TAATGAGTCA ACTCAGTGGC AAGATGGGAT CTTTTTCGCT 120
CTTTGTGGTG CTTATGCTCT TGTTTCCGCC GTTGCTCTTG TTCAACTGAT AAGGATCCAA 180
ATGAGAGTGC CTGAGTATGG TTGGACTACT CAGAAGGTGT TTCATCTTAT GAACTTTGTC 240
GTCAATGGAG TTCGTGCGGT TCTGTTTGGA TTTCACATGC AAGTATTTCT TGTTCATCCC 300
AAGGCTCTTT GCTGGGTACT ATTGGATCTT CCTGGCCTTC TCTTTTTCTC GGCATACACG 360
CTGCTTGTGC TGTTCTGGGC AGAGATATAT CACCAGGCTA GAAGCTTACC TACAGATAAG 420
CTGCGGATAA CCTATATTTC TGTCAACGTG GCTGTATATT TGGCTCAGAT TGGTATCTGG 480
GCATACATCT GGGTACATGA TAACAGCACT GTGGAGTTAG TTGGAAAGAT ATTTATCGCA 540
GTTGTGTCTT TCATCGCCGC ATTAGGCTTC TTGCTGTATG GAGGAAGATT GTTTTTCATG 600
CTAAGAAGGT TCCCTATCGA GTCAAAAGGA AGAAGGAAGA AACTCCACGA GGTTGGATCT 660
GTGACAGCTA TATGCTTCAC CTGCTTCCTC ATAAGATGCG TTGTGGTGGC TGTATCAGCT 720
TTTGACAAGG ATTTAACACT TGATGTTCTT GATCATCCGG TTCTGAACTT AATCTACTAT 780
ATGGTGGTAG AAGTACTTCC ATCGGCACTA GTCCTCTTCA TTCTCCGAAA GCTACCTCCA 840
AAGAGAGTAT CAGCTCAATA CCATCCGATC CAGTAG 876
<210>配列番号:3
<211>配列の長さ:303
<212>配列の型:アミノ酸
<213>起源:Arabidopsis thaliana heynh TOM3
<400>配列
Met Arg Ile Gly Gly Val Glu Val Thr Lys Phe Ala Ser Glu Met Met 16
Ser Ser Ser Ser Ser Ser Ala Val Glu Met Leu Asn Leu Lys Glu Ala 32
Ser Asn Trp Trp Ser Asp Val Asn Glu Ser Pro Ile Trp Gln Asp Arg 48
Ile Phe His Val Leu Ala Val Leu Tyr Gly Ile Val Ser Leu Val Ala 64
Val Ile Gln Leu Val Arg Ile Gln Leu Arg Val Pro Glu Tyr Gly Trp 80
Thr Thr Gln Lys Val Phe His Phe Leu Asn Phe Val Val Asn Gly Val 96
Arg Ala Val Val Phe Val Phe Arg Arg Asn Val Gln Phe Met Gln Pro 112
Glu Ile Leu Gln His Ile Leu Leu Asp Ile Pro Ser Leu Ala Phe Phe 128
Thr Thr Tyr Ala Leu Leu Val Leu Phe Trp Ala Glu Ile Tyr Tyr Gln 144
Ala Arg Ala Val Ser Thr Asp Gly Leu Arg Pro Ser Phe Phe Thr Ile 160
Asn Ala Val Val Tyr Val Val Gln Ile Ala Leu Trp Leu Val Leu Trp 176
Trp Lys Pro Val Arg Val Met Val Ile Leu Ser Lys Met Phe Phe Ala 192
Gly Val Ser Leu Phe Ala Ala Leu Gly Phe Leu Leu Tyr Gly Gly Arg 208
Leu Phe Leu Met Leu Gln Arg Phe Pro Val Glu Ser Lys Gly Arg Arg 224
Lys Lys Leu Gln Glu Val Gly Tyr Val Thr Thr Ile Cys Phe Thr Cys 240
Phe Leu Ile Arg Cys Ile Met Met Cys Phe Ala Ala Phe Asp Glu Gly 256
Ala Asn Leu Asp Val Leu Asp His Pro Ile Leu Asn Phe Ile Tyr Tyr 272
Leu Leu Val Glu Ile Leu Pro Ser Ser Leu Val Leu Phe Ile Leu Arg 288
Lys Leu Pro Pro Lys Arg Gly Ile Thr Gln Tyr His Gln Ile Arg 303
<210>配列番号:4
<211>配列の長さ:912
<212>配列の型:核酸
<213>起源:Arabidopsis thaliana heynh TOM3
<400>配列
ATGAGAATCG GCGGCGTCGA GGTTACGAAA TTTGCGTCGG AGATGATGTC GTCGTCGTCT 60
TCGTCGGCGG TGGAGATGTT GAATCTCAAA GAAGCTTCGA ATTGGTGGTC AGACGTAAAC 120
GAATCTCCGA TTTGGCAGGA TCGTATCTTC CATGTTCTCG CTGTTCTCTA CGGAATCGTT 180
TCCCTCGTTG CTGTGATTCA ACTTGTGAGA ATACAATTGA GAGTTCCTGA ATATGGTTGG 240
ACGACGCAAA AGGTCTTTCA CTTTCTCAAT TTCGTTGTTA ATGGAGTTCG TGCTGTGGTG 300
TTTGTCTTCA GGCGAAATGT TCAGTTTATG CAACCAGAGA TTCTGCAACA TATCTTGCTT 360
GATATTCCAA GTCTTGCTTT CTTCACCACC TATGCTCTTC TGGTTCTTTT CTGGGCTGAA 420
ATTTATTATC AGGCGCGTGC AGTATCGACT GATGGACTCA GGCCAAGCTT CTTCACAATT 480
AATGCAGTTG TATATGTAGT TCAGATTGCT CTATGGTTGG TTTTGTGGTG GAAGCCTGTT 540
CGAGTTATGG TAATCCTATC TAAGATGTTC TTTGCAGGTG TTTCATTGTT CGCTGCCCTT 600
GGATTTTTAC TTTATGGTGG AAGGCTTTTC CTAATGTTGC AACGGTTTCC AGTAGAATCT 660
AAAGGGCGGC GCAAAAAGCT GCAAGAGGTT GGTTACGTGA CAACCATATG CTTTACGTGT 720
TTCCTCATCA GATGTATCAT GATGTGCTTT GCTGCTTTCG ATGAGGGGGC AAACCTTGAT 780
GTGTTAGATC ACCCCATCCT TAACTTCATA TATTACCTGT TGGTAGAGAT ATTACCCTCC 840
TCTCTGGTCC TCTTCATCTT GAGAAAGCTA CCACCAAAAC GAGGCATTAC ACAATACCAT 900
CAGATTCGCT GA 912
図面
【図2】
0
【図5】
1
【図1】
2
【図3】
3
【図4】
4
【図6】
5