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明細書 :制振用実大ダンパ—の動的応答載荷試験装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第3018192号 (P3018192)
登録日 平成12年1月7日(2000.1.7)
発行日 平成12年3月13日(2000.3.13)
発明の名称または考案の名称 制振用実大ダンパ—の動的応答載荷試験装置
国際特許分類 G01M  7/02      
FI G01M 7/00 A
請求項の数または発明の数 5
全頁数 5
出願番号 特願平11-164640 (P1999-164640)
出願日 平成11年6月11日(1999.6.11)
審査請求日 平成11年6月11日(1999.6.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012442
【氏名又は名称】京都大学長
発明者または考案者 【氏名】家村 浩和
【氏名】五十嵐 晃
個別代理人の代理人 【識別番号】100059258、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 暁秀 (外2名)
審査官 【審査官】菊井 広行
調査した分野 G01M 7/02 - 7/04
要約 【課題】 大型で大容量のアクチュエータを用いることなく、ダンパー試験システムを簡単且つ安価に構築し、試験手順も容易なものにする。
【解決手段】 門形脚柱部2間に橋渡して床版部5を設け、床版部5をその4隅に配したローラ6により脚柱部2上に図の左右方向へ変位可能に支持する。各脚柱部2の上端梁2aの中央部と床版部5との間にゴム7を交換可能に介在させ、床版部5の水平方向変位時にこれを図示の中立位置に弾性復帰させる反力を発生する。床版部5上に起振機8を固設し、この起振機8は、モータ10によるシャフト11の可逆回転時における動質量12の直線的な前後動で床版部5を起振させ、当該起振時の床版部5の慣性力が、制振用ダンパー15を用いるべき適用構造物の実物大および実時間スケールの振動を生起するようなものとなるよう床版部5および動質量12の質量を決定する。床版部5の振動はダンパー15に入力され、この時のダンパー15の動的応答をコンピュータ14で観測する。
特許請求の範囲 【請求項1】
起振機により起振される床版部を振動方向へ直線的に変位可能に、且つ、同方向中立位置へ弾性復帰可能に支持すると共に、固設した制振用ダンパーの作用端に連結して設け、
前記起振機による床版部の起振時における前記制振用ダンパーの動的応答をモニタして該制振用ダンパーの載荷試験を行うよう構成したことを特徴とする制振用実大ダンパーの動的応答載荷試験装置。

【請求項2】
請求項1において、前記起振機を動質量とこの動質量を直線的に前後動させる電動モータとで構成し、該起振機を前記床版部上に直接載置して固定したことを特徴とする制振用実大ダンパーの動的応答載荷試験装置。

【請求項3】
請求項1または2において、前記床版部と、該床版部を支持する床版部支持体との間にころがり支持部材を介在させて、該ころがり支持部材を介し床版部を前記床版部支持体上に支持したことを特徴とする制振用実大ダンパーの動的応答載荷試験装置。

【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、前記床版部を前記中立位置に弾性復帰させるための弾性材を床版部と、該床版部を支持する床版部支持体との間に交換可能に設けたことを特徴とする制振用実大ダンパーの動的応答載荷試験装置。

【請求項5】
請求項4において、制振用ダンパーが設置される実構造部位の地震や風による振動が前記床版部において生ずるよう前記起振機を作動させるよう構成したことを特徴とする制振用実大ダンパーの動的応答載荷試験装置。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建築構造物や土木構造物などへの振動を制振する制振用ダンパーの動的応答を実物大規模で載荷試験するための装置に関するものである。

【0002】
【従来の技術】建築構造物や土木構造物の制振装置に関する載荷試験方式としては従来、以下に説明する3種類のものが知られている。
その1つは、加力機により所定の載荷履歴条件のもとで制振装置の復元力特性を検出する試験法である。
他の1つは、加力機により制振装置の動的応答を載荷試験する「ハイブリッド載荷試験」と称されるもので、加力機により得られた制振装置の復元力特性を、電算機による構造物の動的応答評価に直接的に組み込むものである。
残りの1つは、制振装置および制振対象構造物の全てを振動台に載せ、両者を共に振動させて試験を行うものである。

【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしの試験法では、制振装置とその適用構造物との間における動的な相互作用が不明であるため、装置の制振効果を直接的に確認できないという問題を払拭し切れない。またの方式は、装置の制振効果を検出することができるものの、制振装置をあくまでも変位制御下でのみ試験することから、加速度、速度、変位の全ての影響下での制振装置の特性を精度良く検出することができないという問題があった。更にの試験方式の場合、制振対象構造物が建築構造物や土木構造物のような大型のものであると振動台が実現不能な大きさになって実大の構造物について試験するという訳にゆかず、実物大の物を実際の振幅で振動させて試験することができないという問題があった。

【0004】
請求項1に記載の第1発明は、大地震時や強風時に構造物に作用する振動に対して制振装置が如何なる応答で如何なる振動低減効果を発揮するのかを、実物大規模且つ実時間スケールで試験し得るようにした制振用実大ダンパーの動的応答載荷試験装置を提案して、上記の問題解決を実現することを目的とする。

【0005】
請求項2に記載の第2発明は、小型で安価な装置により構造物の所定の振動波形を、実際と同じような大荷重状態および高速度条件のもとで再現させ得るようにした制振用実大ダンパーの動的応答載荷試験装置を提案することを目的とする。

【0006】
請求項3に記載の第3発明は、上記載荷試験の結果に影響が及ぶのを極力少なくした制振用実大ダンパーの動的応答載荷試験装置を提案することを目的とする。

【0007】
請求項4に記載の第4発明は、大型構造物のための制振用ダンパーでもその動的応答を繰り返し試験可能で、且つ、種々の仕様の制振用ダンパーに対して容易に適用可能であると共に、極めて広いダイナミックレンジを確実にカバーし得るようにした制振用実大ダンパーの動的応答載荷試験装置を提案することを目的とする。

【0008】
請求項5に記載の第5発明は、構造物に作用する振動を逐一リアルタイムに再現可能にした制振用実大ダンパーの動的応答載荷試験装置を提案することを目的とする。

【0009】
【課題を解決するための手段】これらの目的のため先ず第1発明による制振用実大ダンパーの動的応答載荷試験装置は、起振機により起振される床版部を振動方向へ直線的に変位可能に、且つ、同方向中立位置へ弾性復帰可能に支持すると共に、固設した制振用ダンパーの作用端に連結して設け、前記起振機による床版部の起振時における前記制振用ダンパーの動的応答をモニタして該制振用ダンパーの載荷試験を行うよう構成したことを特徴とするものである。

【0010】
第2発明による制振用実大ダンパーの動的応答載荷試験装置は、第1発明において、前記起振機を動質量とこの動質量を直線的に前後動させる電動モータとで構成し、当該起振機を前記床版部上に直接載置して固定したことを特徴とするものである。

【0011】
第3発明による制振用実大ダンパーの動的応答載荷試験装置は、第1発明または第2発明において、前記床版部と、該床版部を支持する床版部支持体との間にころがり支持部材を介在させて、該ころがり支持部材を介し床版部を前記床版部支持体上に支持したことを特徴とするものである。

【0012】
第4発明による制振用実大ダンパーの動的応答載荷試験装置は、第1発明乃至第3発明のいずれかにおいて、前記床版部を前記中立位置に弾性復帰させるための弾性材を床版部と、該床版部を支持する床版部支持体との間に交換可能に設けたことを特徴とするものである。

【0013】
第5発明による制振用実大ダンパーの動的応答載荷試験装置は、第4発明において、制振用ダンパーが設置される実構造部位の地震や風による振動が前記床版部において生ずるよう前記起振機を作動させるよう構成したことを特徴とするものである。

【0014】
【発明の効果】第1発明においては、床版部が起振機により弾性復帰力に抗して中立位置から直線的に振動され、この間、当該床版部の振動が制振用ダンパーの作用端に入力される。そして、床版部の上記振動に伴う制振用ダンパーへの入力をもとに制振用ダンパーの動的応答がモニタされ、該制振用ダンパーの載荷試験を行うことができる。このため第1発明においては、大地震時や強風時に構造物に作用する振動に対して制振用ダンパーが如何なる応答で如何なる振動低減効果を発揮するのかを、実物大規模且つ実時間スケールで試験することができ、前記の問題解決を実現することができる。

【0015】
第2発明においては、上記の起振機を動質量とこの動質量を直線的に前後動させる電動モータとで構成し、かかる構成とした起振機を前記床版部上に直接載置して固定したから、小型で安価な装置により構造物の所定の振動波形を、実際と同じような大荷重状態および高速度条件のもとで再現させることができ、エネルギー上およびコスト的に大いに有利である。

【0016】
第3発明においては、前記床版部と、該床版部を支持する床版部支持体との間にころがり支持部材を介在させて、該ころがり支持部材を介し床版部を前記床版部支持体上に支持したから、床版部と床版部支持体との間における摩擦抵抗が小さく、これが上記載荷試験の結果に及ぼす影響を極力少なくすることができる。

【0017】
第4発明においては、床版部を前記中立位置に弾性復帰させるための弾性材を床版部と、該床版部を支持する床版部支持体との間に交換可能に設けたから、大型構造物のための制振用ダンパーでもその動的応答を繰り返し試験可能で、且つ、種々の仕様の制振用ダンパーに対して試験装置を容易に適用可能であると共に、極めて広いダイナミックレンジを確実にカバーすることができる。

【0018】
第5発明においては、制振用ダンパーが設置される実構造部位の地震や風による振動が前記床版部において生ずるよう前記起振機を作動させるよう構成したから、構造物に作用する振動を逐一リアルタイムに再現可能で、制振用ダンパーの動的応答を一層正確に試験することができる。

【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1および図2は、本発明の一実施の形態になる制振用実大ダンパーの動的応答載荷試験装置を示し、図1はその正面図、図2はその側面図である。地面に埋設した基礎部1上に一対の門形脚柱部2を立設し、これら脚柱部2を相互に図1の左右方向へ離間させて配置する。ここで、門形脚柱部2の間隔および高さは、これら門形脚柱部2間のスペースに入って十分作業ができるような大きさに決定する。そして、これら脚柱部2間にダンパー設置台3を配置し、当該ダンパー設置台3を地面に埋設した基礎部4上に立設する。

【0020】
両脚柱部2の上端梁2a間に橋渡して床版部5を設け、各上端梁2aの両端近傍において床版部5と脚柱部2との間にそれぞれ、ころがり支持部材としてのローラ6を介在させる。これらローラ6は、その回転軸線が脚柱部2の上端梁2aと平行な方向に延在するよう配置して床版部5に取り付け、これにより床版部5を脚柱部2上に、これら脚柱部2の配列方向(図1の左右方向)へ変位可能に支持する。

【0021】
しかして、各上端梁2aの中央部と床版部5との間には弾性材としてのゴム7を介在させ、これを上端梁2aの中央部および床版部5に交換可能に取着して床版部5の水平方向変位がゴム7の弾性変形下に行われるようにするこれがためゴム7は、当該床版部5の水平方向変位時にこれを図示の中立位置に弾性復帰させるような反力を発生する。

【0022】
床版部5上には起振機8を載置し、この起振機8は、その基台9を床版部5上に固定して床版部5に取り付ける。基台8内にACサーボモータなどの電動モータ10を設け、該モータ10により回転駆動されるシャフト11を脚柱部2の配列方向(図1の左右方向)へ延在させてその先端を基台8に回転自在に支持する。そして、シャフト11にボール螺子を介して動質量12を螺合させ、この動質量12をローラ13によりシャフト11の延在方向へ走行可能にして基台8上に配置する。

【0023】
電動モータ10は、起振機制御装置としてのコンピュータ14により可逆回転可能とし、かかる電動モータ10の可逆回転により動質量12が所定周波数および所定振幅で直線的に前後動され、基台8を介して床版部5に動的荷重である慣性力を作用させるものとする。床版部5は当該慣性力に応動して対応方向へ振動するが、当該起振時の床版部5の慣性力が、制振用ダンパーを用いるべき適用構造物の実物大および実時間スケールの振動を生起するようなものとなるよう床版部5および動質量12の質量を決定する。

【0024】
以上により、所定の動的特性を持った床版部5の振動系が構成されるが、該振動系の最適な剛性はゴム7の交換によって達成可能である。かかる振動系からの振動を入力すべき被試験対象物としての制振用ダンパー15はダンパー設置台3上に固設し、該制振用ダンパー15のダンパーピストン等で構成された作用端15aを、床版部5の下面に垂下させた突起部5aに連結する。

【0025】
コンピュータ14は、上記したごとく電動モータ10の可逆回転制御を介して床版部5の所定周波数および所定振幅の振動を生起させる起振機制御装置とし機能する他に、当該振動を入力された時における制振用ダンパー15の動的応答を計測する観測制御装置としても機能する。なお起振機制御アルゴリズムは、制振用ダンパー15が設置される実構造部位の地震や風による動的な応答が床版部5において実現されるよう起振機8、更に詳しくは電動モータ10をリアルタイムに制御するようなものとする。

【0026】
上記実施の形態になる試験装置の作用を次に説明する。一定振幅の繰り返し載荷を行う際には、起振機8(電動モータ10)を対応する起振力振幅が発生するよう制御する。また風や地震荷重が作用する場合の挙動試験を行う際には、適用構造物の動的応答が再現されるよう調整、計算された動質量12の加速度入力が得られるよう起振機8(電動モータ10)を制御する。

【0027】
本発明の効果は、試験の実用性、経済性の向上、および試験条件、載荷環境の向上、の2点に分類される。
試験の実用性、経済性の向上に関して
従来、構造物用制振ダンパーの実物大試験を行う際に一般的に用いられてきた方法は、変位制御モードの油圧式アクチュエータを接続し、指定された変位波形を入力する。しかし、かかる試験が可能なアクチュエータは、非常に大荷重で高速度を発揮可能な、大型で大容量のものでなければならず高価になること必至で、このような高価な装置を使用できる試験は極く限られたものになり、一般的ではない。

【0028】
これに対し上記実施の形態においては、床版部5自身の大質量によって大きな慣性力を発生させることができ、従って大型で大容量の油圧式アクチュエータ(載荷装置)を用いる必要がなく、制振用ダンパーの試験システムを簡単且つ安価に構築することができると共に、試験手順も簡単で、操作や試験システムの構築が容易であるという利点がある。また、ゴム7により床版部5が中立位置に弾性復帰される構成を採用しているため、大型の振動台を用いる大振幅載荷の場合のように構造供試体の損傷や破壊を伴うことなしに繰り返し試験が可能である。更に上記の実施の形態においては、風荷重による構造物の比較的微少振幅の領域から巨大地震による大振幅の領域に至るまで、極めて広いダイナミックレンジをカバーする試験が可能である。

【0029】
試験条件、載荷環境の向上に関して
上述の従来技術では、ダンパーの動的応答の効果により結果的に構造物の応答が低減され、この応答が変位、速度、加速度の影響を受けるという性質を考慮することができない。従って、試験結果から得られた特性が必ずしもダンパー装置の挙動を純粋に表現したものとはいえないという問題があった。変位、速度、加速度の影響を考慮した試験方法としては、実時間オンラインハイブリッド試験法が考えられつつあるが、この手法はまだ研究途上であり一般的に広く用いる試験手法として確立されているとは言えない。

【0030】
更に実時間オンラインハイブリッド試験法の場合、変位および速度に関しては地震時の載荷条件を再現し得るが、加速度条件の再現が困難であるという問題を有する。また、一般に剛性が極端に大きな実験供試体への適用が非常に困難であるという問題も指摘されている。

【0031】
これに対し上記の実施の形態においては、ダンパーが装着される構造物の地震応答時における挙動が自動的にダンパーへの載荷条件に含まれ、変位、速度、加速度を再現していることから、従来の試験法における上記の問題を解消することができる。また、ダンパー装置が高い剛性を持つ場合であっても適用性に全く影響がないことを確かめた。
図面
【図1】
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【図2】
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