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明細書 :化学発光in situハイブリダイゼーションと免疫組織化学的染色とを組合わせた二重標識検出法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3127244号 (P3127244)
公開番号 特開2000-310637 (P2000-310637A)
登録日 平成12年11月10日(2000.11.10)
発行日 平成13年1月22日(2001.1.22)
公開日 平成12年11月7日(2000.11.7)
発明の名称または考案の名称 化学発光in situハイブリダイゼーションと免疫組織化学的染色とを組合わせた二重標識検出法
国際特許分類 G01N 33/536     
C12N 15/09      
C12Q  1/68      
G01N 33/566     
G02B 21/34      
FI G01N 33/536 D
C12Q 1/68
G01N 33/566
G02B 21/34
C12N 15/00
請求項の数または発明の数 3
全頁数 10
出願番号 特願平11-121519 (P1999-121519)
出願日 平成11年4月28日(1999.4.28)
審査請求日 平成11年4月28日(1999.4.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012523
【氏名又は名称】鹿児島大学長
発明者または考案者 【氏名】納 光弘
個別代理人の代理人 【識別番号】100058479、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外5名)
審査官 【審査官】亀田 宏之
参考文献・文献 特開 平8-119998(JP,A)
特開 昭63-19532(JP,A)
特開 平1-248060(JP,A)
特開 平6-3231(JP,A)
特開 平9-210881(JP,A)
特表 平8-507678(JP,A)
調査した分野 G01N 33/536
C12N 15/09
C12Q 1/68
G01N 33/566
G02B 21/34
特許請求の範囲 【請求項1】
ヒトT細胞白血病ウイルスI型に感染した患者より得た標本中でHTLV-Itax遺伝子を発現している細胞を検出し、該細胞についてその細胞表現型を決定する方法であって、
(1)標本中の組織切片又は細胞に、前記遺伝子に対するプローブを用いて化学発光in situハイブリダイゼーションを行なう工程と、
(2)前記標本の透過光画像を得た後に発光画像を得る工程と、
(3)該標本において発光を生じている位置を記憶する工程と、
(4)次に、細胞関連物質に対する抗体を用いて、免疫組織化学的染色を行なう工程と、および
(5)前記記憶した位置において、前記免疫組織化学染色を施した標本の透過光画像を得る工程と、
を具備する方法。

【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記(2)から(5)の工程を以下の要素;
(1)目的とする標本上の全ての位置について画像を得ることができ、且つ検出位置の記憶及び記憶された検出位置の再現を行なうことができるXYステージを備えた落射蛍光顕微鏡と;
(2)前記2台のCCDカメラと;
(3)前記カメラに接続したデータ解析装置と;および
(4)前記データ解析装置に接続したモニタ解析装置と、
を具備する装置を用いることにより行なうことを特徴とする方法。

【請求項3】
請求項1または2の何れか1項に記載の方法であって、前記組織切片又は細胞がスライドグラスに具備されるチャンバー内に固定されることによって標本とされ、前記発光画像を得る工程における該標本には、ポリビニルアルコールを含有する染色液が具備されることを特徴とする方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、化学発光in situハイブリダイゼーション(chemiluminescent in situ hybridization)と発色による免疫組織化学的染色(immunohistochemistry)とを組合わせた二重標識検出方法に関する。

【0002】
【従来の技術】細胞内において発現された物質の検出、並びに細胞の表現型の同定は、種々の疾患の病態機序を解明するための重要な手段である。

【0003】
核酸、タンパク等の細胞内において発現される物質を検出する手段として、mRNAをin situで検出する方法が広汎に使用されている。mRNAは、標識化プローブによるin situハイブリダイゼーション(in situ hybridization)で一般的に検出される。近年では、このようなmRNAの検出に、化学発光を指標として用いる試みが行われているが、化学発光物質を標識として用いたin situハイブリダイゼーション法には測定感度に限界がある。

【0004】
一方、科学の進歩により、微量な疾患関連因子やこれを発現する少数細胞を検出する必要が生じてきた。例えば、ヒトT細胞白血病ウイルスI型関連脊髄症(human T-lymphotropic virus type I-associated myelopathy:HAM)の発症には、HTLV-I(human T-lymphotropic virus)の感染が深く関与している(納光弘,HTLV-1-associated Myelopathy(HAM), medicina,1988 25(10):2216-2217)。しかしながら、HAMを発症する患者の末梢血においてHTLV-Itax遺伝子(HTLV-I に特異的な mRNA の配列の一部分)を発現する細胞は非常に少なく、また、HTLV-Iの発現量自体も非常に少ないため、従来の方法を用いての研究は非常に困難なものであった。その理由は、第1に、生体から得た標本中に目的とする感染細胞を発見することが難しいことである。第2に、仮に発見し得た場合でも、この同定された細胞自体に対して免疫組織化学的染色等の第2の異なる検出法を適用できない限り、発見した感染細胞の細胞表現型を決定することさえも困難なことである。更に、発現するmRNA量が少ないため、測定は高感度に行える方法に、現実的には化学発光in situハイブリダイゼーション法に限られてしまう。従って、同一の細胞に対して化学発光in situハイブリダイゼーション法と免疫染色法等の検出方法を合わせて実施することが可能であり、且つ該検出の感度が非常に優れた検出手段の開発が要望されていた。

【0005】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、化学発光in situハイブリダイゼーションと免疫組織化学的染色とによる二重標識検出法を同一標本において行うための方法と、これらの検出を共に高感度且つ高解像度で得るための検出装置を提供することである。

【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意研究の結果、下記の手段により上記の課題を解決し、目的を達成することを見出した。即ち、化学発光in situハイブリダイゼーションと免疫組織化学的染色とを組合わせた特定の核酸を有し、且つ該核酸以外の第2の細胞関連物質を有する組織又は細胞を検出するための二重標識検出方法であって、標本中の組織切片又は細胞に、目的とする細胞内核酸に対するプローブを用いて化学発光in situハイブリダイゼーションを行うことと、前記標本の透過光画像を得た後に発光画像を得ることと、該標本において発光を生じている位置を記憶することと、次に、前記第2の細胞関連物質に対する抗体を用いて、免疫組織化学的染色を行うことと、前記記憶した位置において、前記免疫組織化学染色を施した標本の透過光画像を得る工程とを具備する方法を提供する。

【0007】
【発明の実施の形態】本発明は、化学発光in situハイブリダイゼーション(chemiluminescent in situ hybridization)と発色による免疫組織化学的染色(immunohistochemistry)とからなる二重標識検出法を同一標本に対して行うことができる検出方法及びこれに適したスライドガラスを開示する。また、本発明は、化学発光及び発色の検出を、高感度且つ高解像度で得るための検出装置を開示する。詳しくは、同一標本中の同一細胞を対象として、in situハイブリダイゼーションと免疫組織化学的染色を段階的に行うことにより、目的とする細胞について2つ以上の情報、例えば、mRNAの発現に関する情報と細胞表現型に関する情報等を得ることが可能である。

【0008】
本発明で検出可能なものは、in situハイブリダイゼーションではDNA及びRNA類、免疫組織化学的染色では、ペプチド、タンパク、ホルモン、糖鎖、情報内伝達物質等の細胞関連物質であり、これらを目的に応じて組み合わせて検出することが可能である。これらを検出することにより、DNAプロファイル、mRNA又はタンパクの発現、ウイルスの感染、細胞表現型等に関する情報が得られ、生物学的解析、生理学的解析、医学的解析、病理学学的解析等の広汎な分野の研究において使用することが可能である。特に、mRNAに対する化学発光in situハイブリダイゼーションと、細胞表面抗原に対する免疫組織化学的染色法との組み合わせは、HAMの診断等に有用である。

【0009】
本発明の検出装置、検出方法、標本作成方法について、以下に詳しく説明する。

【0010】
[検出装置]本発明の装置は、化学発光in situハイブリダイゼーション法と、発色による免疫組織学的検出法との2つ検出方法を1つの標本に段階的に行うことにより、1つの標本、特に同一の細胞に対して、mRNA発現と細胞表現型についての解析を行うことが可能な装置である。

【0011】
本装置の構造をブロック図により図1に示した。本発明の検出装置は、目的とする標本上の全ての位置について画像を得ることができ、且つ検出位置の記憶及び記憶された検出位置の再現を行うことができるXYステージを備えた落射蛍光顕微鏡と、前記落射蛍光顕微鏡にダブルポート鏡筒を介して接続したカラーCCDカメラ及び化学発光の検出が可能なモノクロCCDカメラと、前記2つのCCDカメラに接続したイメージプロセッサと、前記カメラに接続したデータ解析装置と、データ解析装置に接続したモニタとを具備した装置である。

【0012】
本発明の装置に使用できるXYステージは、目的とする標本上の全ての位置について画像を得ることができ、且つ検出位置の記憶及び記憶された検出位置の再現を行うことができるものであればよい。カラーCCDカメラは、一般的に使用される何れのカラーCCDカメラでもよいが、カラーペルチエ冷却方式3CCDカメラが好ましいがこれに限られるものではない。モノクロCCDカメラは、化学発光を検出することができるものであれば、一般的に使用される何れのカラーCCDカメラでもよい。特に、ペルチエ冷却方式CCDカメラ又測定が好ましいがこれに限られるものではない。ペルチエ冷却方式CCDカメラにより化学発光を検出し、カラーペルチエ冷却方式3CCDカメラにより透過光による画像を捕えるように組み合わせて用いることが好ましい。

【0013】
[二重標識検出方法]本発明の二重標識検出方法は、化学発光in situハイブリダイゼーション法と、発色による免疫組織学的検出法との2つ検出方法を1つの標本に段階的に行うことにより、1つの標本、特に同一の細胞に対して、mRNA発現と細胞表現型についての解析を行うことが可能な方法である。

【0014】
本発明の方法の概略は、図4のスキームに示す通りである。先ず、ヒト又は実験動物から組織又は細胞を採取する。得られた目的とする組織又は細胞をスライドガラスに固定し、染色が可能な状態に前処理する。前処理の方法は、それ自身公知の方法により行うことが可能である。組織又は細胞の固定に使用するスライドガラスは、後述する浅薄チャンバー付きスライドガラスが好ましい。

【0015】
得られた標本に対して、標識化オリゴヌクレオチドプローブ(以下、単に標識プローブとも称する)を使用し、in situハイブリダイゼーションを行う。ハイブリダイゼーションの方法は、それ自身公知の何れの方法によっても行うことが可能である。また、本発明の標識物質は、アルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼ等の酵素を使用することが可能であるが、アルカリフォスファターゼが好ましい。前記ハイブリダイゼーションの終了後、該標本を洗浄し、化学発光反応を行う。

【0016】
化学発光は、アルカリフォスファターゼに対する化学発光性の基質を添加することにより行う。生じた化学発光の画像をCCDカメラにより取り込み、更に、細胞の位置を記憶する。該基質は、化学発光を得られる基質であれば何れも使用することが可能であるが、即効性の強い発光量と、長時間の持続した発光を得られることから、CDP-スター(TROPIX社)の使用が好ましい。また、本発明の方法では、水による発光のクエンチングを抑制する種々の増感剤を使用することも好ましく、エメラルド-II(TROPIX社)の使用が好ましい。また、CDP-スター及びエメラルド-IIの使用と共に、後述するポリビニルアルコールを存在させることにより、化学発光を安定して高感度に検出でき、解像度も向上する。

【0017】
続いて、前記標本に、免疫組織化学的染色を行い、前行程において記憶した位置の発色を観察する。本発明では、一般的な免疫組織化学法を用いることが可能である。また、目的とする抗原を検出できる何れの抗体、また、何れの染色用色素も使用することが可能である。染色に使用する標識物質は、発色色素であっても、蛍光物質であってもよい。また、エメラルド-IIには蛍光物質が含まれているため、標識物質として蛍光物質を使用する場合には、エメラルド-IIの使用は好ましくない。

【0018】
また、本発明の方法は、測定対象及び測定項目に応じ、免疫組織化学的染色を、化学発光in situハイブリダイゼーションの前に行うことも可能である。

【0019】
[標本の作製]
1.浅薄チャンバー付きスライドガラス
患者や実験動物等の被検対象から得た組織又は細胞は、図2及び図3に示す浅薄チャンバー付きスライドガラスに固定した後に、観察及び検出が行われる。

【0020】
図2及び図3に示す通り、浅薄チャンバー付きスライドガラス1は、スライドガラス2、カバーガラス3、該スライドガラス2とカバーガラス3の間に位置する壁部4、及びこれらの要素に囲まれることにより形成されるチャンバー5を具備する。

【0021】
スライドガラス2、カバーガラス3及び壁部4により形成されるチャンバー5は、内部に液体を保持することが可能である。従って、壁部4は、少なくとも測定の際にはスライドガラス2とカバーガラス3に密着して固定されていることが望ましい。

【0022】
スライドガラス2及びカバーガラス3は、市販品を使用できる。カバーグラス3の大きさは、目的に応じて選択できる。また、壁部4は、ガラス、樹脂、金属等で形成することができる。壁部4に囲まれる面積は、目的に応じては選択することが可能であり、囲まれる部分の形は、矩形状であっても円形であってもよい。チャンバー5は、深さが0.1mmから0.3mm、好ましくは0.2mmがよい。それ以上の深さがある場合には、顕微鏡の焦点を合わせることが非常に困難になるので望ましくない。

【0023】
目的とする標本を、スライドガラス2に固定した後に、壁部4及びカバーガラス3を設置することも、或いは、予め形成された浅薄チャンバー付きスライドガラス1に標本を固定することも可能である。

【0024】
チャンバー5の内部に固定された標本に対する、検出用試薬、又は染色液を添加し観察又は検出を行う。チャンバー5は、ある程度の容積を有するため、前記の液体を保持することが可能である。従って、染色液等を処理した後に液体を除去したり、洗浄したりすることなく、観察又は測定を行うことが可能である。更に、従来では、高検出感度を得ることが非常に困難であった化学発光に関しても、チャンバー5に液体を保持することによって検出感度が向上し、且つ同時に高解像度が得られるようになる。このような効果を得られる理由は、液体を保持することにより画像の明るさが増すためであり、且つ測定対象物の輪郭を鮮明に写し出すことが可能であるためである。

【0025】
更に、1標本に対して複数の染色により検出を行う場合に使用された従来の技術では、染色と洗浄の繰り返しによって細胞又は組織の損傷が生じていた。しかし、本発明の浅薄チャンバー付きスライドグラスを使用することにより、カバーガラスが、試料(組織又は細胞)に直に接することを防止できるため、操作の繰り返しによる細胞又は組織の損傷を防止することが可能である。更に、浅薄チャンバーは密閉性が高いため、該チャンバー内の液体を保持する能力に優れている。従って、長時間に亘って試料の乾燥を防ぐことが可能である。

【0026】
2.ポリビニルアルコール
前述の浅薄チャンバー付きスライドガラス1を使用した上に、後述のようにポリビニルアルコールを使用すれば、高感度の検出と高解像度を得ることが可能になる。それと同時に、ポリビニルアルコールは安価な材料であるため、従来使用される種々の増感剤と混ぜて使用することにより、ランニングコストを低くすることも可能である。

【0027】
ポリビニルアルコールの使用は、化学発光法、蛍光法、発色による染色法等、一般的に使用される検出法に適する。特に化学発光法に使用することにより、従来に比較し、効果的に感度及び解像度を向上することができる。

【0028】
本発明のポリビニルアルコールは、13から23kdを使用することが好ましい。また、最終濃度が10%v/vになるように用いることが好ましい。ポリビニルアルコールは、適用した液体に粘度を与えることが可能である。この粘度のために、チャンバー中の液体の動きは抑制でき、更に、色素等の不均一な拡散を防止することができる。

【0029】
一方、化学発光を検出する場合には、ポリビニルアルコールと共に、一般的に使用されるエメラルド-IITM(TROPIX社)等の増感剤を使用できる。ポリビニルアルコールを併用することにより、エメラルド-IITM等の高価な増感剤の使用料を減らすことができる。

【0030】
[実施例]
I.装置
図5に示す通りの装置を用いた。以下、詳しく説明する。

【0031】
本装置は、ペルチエ冷却方式CCDカメラ(The Night OWL Molecular LightImager, EG&G, Berthold, Bad Wildbad, Germany)と、カラーペルチエ冷却方式3CCDカメラ(M-3204, Olympus, Tokyo)とをダブルポート鏡筒を介して接続し、且つレーザースキャニングサイトメータ(LSC101-H3、オリンパス社)に接続した落射蛍光顕微鏡B×50F(オリンパス社)である。

【0032】
また、本発明の検出装置は、オリンパス光学工業株式会社のレーザスキャニングサイトメータ(LSC101)を具備した顕微鏡を基に構成される。詳しくは、LSC101のXYステージを有した顕微鏡と、これにダブルポート鏡筒を用いて接続したカラーチルドカメラ及びチルドカメラ、及び前記顕微鏡に設置した透過照明、並びに前記2つのカメラに接続したイメージプロセッサとデータ解析装置からなるコンピュータ(The Night OWL Molecular Light Imager, EG&G, Berthold, Bad Wildbad, Germany)に接続し、前記コンピュータには、RGBカラーモニタ(コンパック社)、及びプリンタを接続している。ソフトウエアは、前記コンピュータに装備されるソフト(The Night OWL Molecular Light Imager)を使用した。測定は、ペルチエ冷却方式CCDカメラにより化学発光を検出し、カラーペルチエ冷却方式3CCDカメラにより透過光による画像を捕えた。

【0033】
レーザスキャニングサイトメタシステムの解析システムは、コンピュータ(IBMPC/PT コンバチブルコンピュータ)、17インチマルチスキャンモニタ、カラープリンタ、パワーコントローラを具備する。

【0034】
レーザスキャニングサイトメータLSC101自体は、レーザを励起光とし、スライドガラス上の任意の指定領域内をレーザスキャニングして、標本から発せられる蛍光を定量することにより、蛍光染色された物質の生化学的成分等を定量的に測定するための装置である。更に、この装置は、蛍光量を測定すると同時に、個々の物質のX-Y座標を記憶する機能を有しているため、その記憶された座標を基に、該座標に対応する標本中の位置を顕微鏡の視野の範囲内に即座に合わせることが可能な装置である。

【0035】
発明者らは、前記レーザスキャニングサイトメータの構造を変更し、化学発光を検出すると同時に、個々の物質のX-Y座標を記憶し、記憶された座標を基に、該座標に対応する標本中の位置を顕微鏡の視野の範囲内に即座に合わせることが可能な装置を完成した。

【0036】
II.測定
1.化学発光検出装置の性能、及びポリビニルアルコールの効果
本発明の化学発光検出装置の性能、及びポリビニルアルコールの効果を明確に示すため、化学発光での免疫組織学的検出法による細胞表現型の検出を行った。化学発光を使用した免疫組織学的検出法は、現在でも広汎に使用されている。また、その検出精度はある程度確立されたものである。従って、化学発光を使用とした免疫組織学的検出方法を用いることにより、本発明の化学発光検出装置の性能、及びポリビニルアルコールの効果を証明することが可能である。詳しくは、ヒト扁桃標本に対してOPD4抗体を用い、CD45ROT細胞を化学発光により検出した。

【0037】
ヒトT細胞白血病ウイルスI型(human T-lymphotropic virus type I)に感染している患者より採取した扁桃組織から、一般的に使用される方法を用いて病理標本を製作した。この標本に対して、以下のように免疫組織学的検出を行った。

【0038】
CD45ROT細胞に対して特異的に結合するOPD4抗体(マウス、Dako社)を第1抗体として使用した。1:25で希釈したOPD4抗体を、該標本に加えてインキュベートし、続いて洗浄した。

【0039】
次に、1:25で希釈したウサギ抗マウスイムノグロブリン(Dako社)と、引き続き、1:50のアルカリホスファターゼ:抗アルカリホスファターゼ(APAAP、Dako社)複合体(APAAP 法)とを、該標本に加えてインキュベートした(CordellJL, Falini B, Erber WN, Ghosh AK, Abdulaziz Z, MacDonald S, Pulford KA,Stein H, Mason DY, Immunoenzymatic labeling of monoclonal antibodies using immune complexes of alkaline phosphatase and monoclonal anti-alkaline phosphatase(APAAP complexes). J Histochem Cytochem 1984 Feb;32(2):219-29)。

【0040】
アルカリフォスファターゼに対する化学発光基質には、CDP-スター(CDP-Star)を使用した。CDP-スターの使用により、アルカリフォスファターゼを光学的に検出可能できる。CDP-スターは、検出用緩衝液(0.1M Tris-HCl、0.1MNaCl、pH9.5)中に1:100で希釈した。この希釈の際に、必要に応じてポリビニルアルコール(13-23kd)を10%v/vで添加し粘度を増加した。この検出用混合物を、該チャンバーに添加し、カバーガラスを設置した。

【0041】
得られた標本における化学発光を、本発明の検出装置を用い、1分間、発光を累積して検出した。その結果を図6に示す。

【0042】
図6-A及びBは、10%ポリビニルアルコールの存在下で検出した標本の顕微鏡写真であり、図6-C及びDは、10%ポリビニルアルコールを含まない標本顕微鏡写真である(倍率×100)。また、A及びBは化学発光による検出を示し、C及びDは透過光による検出を示す。

【0043】
標本中のCD45ROT細胞の検出において、10%ポリビニルアルコールを使用した標本は、空間解像度、及び発光強度共に優れ、1つ1つの細胞までも検出できた(図6-A)。それに対して、10%ポリビニルアルコール使用していない標本における検出は、1個の細胞レベルでの解像度は得られなかった。

【0044】
以上の結果から、本発明の検出装置が非常に優れた性能を有し、更にポリビニルアルコールを使用することによりより高い性能が得られる。

【0045】
3.in situハイブリダイゼーション
HTLV-I産生T細胞株(MT-2細胞)、及びウイルス陰性B細胞株(Raji細胞)を、10%ウシ胎児血清、ペニシリンG(50ユニット/ml)及びストレプトマイシン(50μ/ml)を含有したRPMI1640培地で培養した。細胞を、リン酸緩衝食塩水(PBS)-CMFで洗浄した後、得られた細胞懸濁液をシランコートスライドガラス(Perkin Elmer社)に滴下し、4%パラホルムアルデヒドにより30分間固定した。

【0046】
続いて、得られた標本に、浅薄チャンバーを形成した。壁部の高さが0.2mm、面積が250mmとなるように、両面接着テープを前記スライドガラスに接着することにより浅薄チャンバーを形成した。

【0047】
本試験のプローブとして、DNA合成の際に単独に導入されたアミノ修飾デオキシチミジントリフォスフェート(dTTP)にアミン反応性二価性架橋化剤であるスベリン酸ジスクシンイミジル(disuccinimidyl suberate;DSS)の結合を介し、アルカリフォスファターゼに結合したオリゴヌクレオチドを使用した。得られた標識オリゴヌクレオチドを、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製した(Jablonski E, Moomaw EW, Tullis RH, Ruth JL, Preparation of oligodeoxynucleotide-alkaline phosphatase conjugates and their use as hybridization probes. Nucleic Acids Res 1986 Aug 11;14(15):6115-28、Ruth JL, Morgan C, Pasko A, Linker arm nucleotide analogs in oligonucleotide synthesis. DNA 1985;4:93、Kiyama H, Emson PC, Tohyama M, Recent progress in theuse of the technique of non-radioactive in situ hybridization histochemistry: new tools for molecular neurobiology. Neurosci Res(NY)1990 Sep;9(1):1-21)。また、プローブは、HTLV-Itax領域の配列:5' ACG CCC TACTGG CCA CCT GTC CAG AGC ATC AGA TCA CCT G 3'(7425-7464)を有するセンス鎖とアンチセンス鎖を使用した(SeiKi M, Hattori S, Hirayama Y, Yoshida M, Human adult T-cell leukemia virus: complete nucleotide sequence of the provirus genome integrated in leukemia cell DNA. Proc Natl Acad Sci USA 1983 Jun; 80(12):3618-22)。アンチセンスオリゴヌクレオチドプローブは13位のdTTPを標識し、センスプローブは29位のdTTPを標識した。更に、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のgag領域を対照として用いた。

【0048】
in situハイブリダイゼーションによりtaxメッセンジャーRNA(mRNA)を検出するために、細胞を0.2Nの塩酸で20分間処理し、5μg/mlのプロテイナーゼKで37℃で、15分間消化し、次にアセチル化した。ハイブリダイゼーションは、10%の脱イオン化ホルムアミド、10%の硫酸デキストラン、4倍の標準クエン酸食塩水(以下、SSC緩衝液という)、400μg/mlのサケ精子DNA、及び1倍のデンハーツ溶液(Denhardt's)の10fmol/μlのプローブを湿潤チャンバーにおいて37℃で、一晩アニーリングした。55℃、1倍のSSC緩衝液中で洗浄した後、結合したプローブを、10%ポリビニルアルコール(13-23kd)を含む検出用緩衝液中のCDP-スターで検出した。更に、前記基質緩衝液に、更に、10%の濃度でエメラルド-IIを添加した緩衝液と、エメラルド-II無添加緩衝液を調製し、エメラルド-IIの効果についても比較した。得られた標本について、透過光と化学発光との画像を前述した方法により得た。結果は図7に示す。

【0049】
図7-AからFは、本検出装置により得られる画像である。詳しくは、図7-A、C及びEは化学発光により検出した画像であり、図7-B、D及びFは透過光により検出した画像である(倍率×200)。図7-AからDは、HTLV-Iを産生するMT-2細胞である。図から明らかであるように、該細胞は、高い強度の化学発光を生じた。それに対して、図7-E及びFは、HTLV-Iを産生しないRaji細胞を使用した標本から得られた画像である。Raji細胞は、HTLV-Itaxアンチセンスプローブでハイブリダイゼーションを行った後であっても、化学発光は生じなかった。更に、MT-2細胞では、上記センスプローブ又はHIV特異的プローブに対するハイブリダイゼーションの後で化学発光は生じなかった(図示せず)。

【0050】
従って、本発明の検出装置の使用により、目的とするmRNAのみを確実に検出できる。

【0051】
また、図7-Aは、エメラルド-IIを添加した標本の画像であり、図7-Cは、無添加の標本の画像である。図7-Aにおいては、発光のシグナルが増強され、且つバックグラウンドが測定に適したものであったのに比較し、図7-Cでは、バックグラウンドの発光が高く、発光シグナルの増加も見られなかった。従って、本発明の装置を用いる場合には、エメラルド-IIの使用がより好ましい。

【0052】
4.in situハイブリダイゼーションと免疫組織化学的染色との二重標識検出
本発明の二重標識検出方法の効果を証明するために、ウイルスのmRNAを検出することができる細胞に関して、その細胞表現型を決定した。

【0053】
本試験に使用した細胞は、HTLV-I産生T細胞株であるMT-2細胞と、ウイルス陰性B細胞株(Raji 細胞)であり、使用したプローブは、HTLV-Itaxアンチセンスプローブである。先ず、細胞を、メタノール中の3%の過酸化水素でインキュベートし、次に前処理、ハイブリダイゼーション及び洗浄を行い、続いて上述の方法と同様に化学発光を検出した。続いて、細胞を、OPD4に対する抗体(予め、既に記述した通りに希釈した)と共にインキュベートし、次に、二次抗体であるペルオキシダーゼ標識ポリマー(Dako Envision System)とインキュベートした。更に、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(horseradishperoxidase:HRP)の基質として、3-アミノ-9-エチルカルバゾール(AEC)を使用した。XYステージにより、化学発光が陽性である細胞の位置を再現し、カラーペルチエ冷却方式3CCDカメラにより透過光によるカラー画像を得た。その結果を図8に示す。

【0054】
図8-Aは、化学発光を青色の疑似色で表した化学発光を検出した写真であり、図8-Bは、AECの染色により赤色に発色した透過光により検出した写真である。中央の矢印で示した細胞が、目的のウイルス陽性細胞である。図8-Aでは、目的の細胞は青色を呈し、それ以外の細胞は青色を呈しなかった。図8-Bでも、目的の細胞は赤色を呈し、それ以外の細胞は赤色を呈しなかった。

【0055】
従って、前記ウイルス陽性細胞により生じた化学発光の位置で、青色の疑似色で表した化学発光の画像(図8-A)と透過光画像(図8-B)とで重ねあわせると、二重標識検出法を行った標本において、ウイルス性mRNAが検出された全ての細胞の細胞表現型は、CD45ROT細胞であることが確認できた。

【0056】
本発明の二重標識検出法を使用すると、高感度且つ高解像度で、化学発光insituハイブリダイゼーション及び免疫組織化学的染色を行うことが可能であることが証明された。また、レーザースキャニングサイトメータによる位置の再現精度は、+/-5μmであった。

【0057】
【発明の効果】本発明の検出装置及び検出方法により、化学発光in situハイブリダイゼーションと免疫組織化学的染色とによる二重標識検出法を同一標本において行うことが可能であり、本発明の検出装置により得られる化学発光及び透過光による画像は、共に高感度且つ高解像度であった。

【0058】
特に、浅薄チャンバー付きスライドガラス及びポリビニルアルコールを使用した本発明の標本作製方法により、化学発光及び透過光により検出される画像はより高感度且つ高解像度で得ることができる。

【0059】
HAM患者におけるHTLV-Itax遺伝子の検出、及び前記患者から得られた感染細胞の細胞表現型の解析等、出現数の少ない感染細胞において発現する少量のmRNAを高感度に検出することが可能であり、更に、検出された前記感染細胞について、その細胞表現型を容易に決定することが可能である。
図面
【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図7】
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