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明細書 :セルオートマトンを用いたデータ記録及び伝送システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3146355号 (P3146355)
公開番号 特開2000-252836 (P2000-252836A)
登録日 平成13年1月12日(2001.1.12)
発行日 平成13年3月12日(2001.3.12)
公開日 平成12年9月14日(2000.9.14)
発明の名称または考案の名称 セルオートマトンを用いたデータ記録及び伝送システム
国際特許分類 H03M  7/30      
G06F  5/00      
FI H03M 7/30 Z
G06F 5/00
請求項の数または発明の数 16
全頁数 13
出願番号 特願平11-055575 (P1999-055575)
出願日 平成11年3月3日(1999.3.3)
審査請求日 平成11年3月3日(1999.3.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012648
【氏名又は名称】広島大学長
発明者または考案者 【氏名】奈良 重俊
【氏名】黒岩 丈介
【氏名】相澤 洋二
【氏名】永井 喜則
【氏名】鬼頭 政
個別代理人の代理人 【識別番号】100058479、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外5名)
審査官 【審査官】石井 研一
参考文献・文献 電子情報通信学会論文誌 D-▲I▼ Vol.J80-D-▲I▼ No.11 pp.856-865、「スペクトル解析による1次元セルオートマトンの分類」、蜷川他、1997年11月、(社)電子情報通信学会発行(文献番号CSNT199700246001)
調査した分野 H03M 7/30
特許請求の範囲 【請求項1】
有限個の離散的状態を有し互いに連続して配置された第1のセルと、
前記第1のセルの各セルの出力の状態の所定の時刻におけるセル全体を俯瞰して得られる状態集合に関し、それぞれのセルの次の時刻における状態が、当該セルと自分自身を含めて二個以上連結している相手セルの状態の少なくともいずれかに依存してその取る状態が決定されるようなセルオートマトン機構をもって状態が時間的に変化して行くように制御する第1の制御手段と、ここで前記第1の制御手段は、任意のデータが与えられたとき、そのデータが前記セルの取りうる状態数を基数とし、前記セルの総数がその桁数を与えるような方法によって量子化されたものとして、その適切に分割されたデータ区分において初期状態を示す区分の先頭のデータと当該区分に割り当てられたセル状態更新規則によって区分内のデータが設定許容誤差範囲内で再現されるという過程の連鎖を繰り返して前記データが変換されるように制御し、
前記初期状態と前記連鎖の繰り返しを示すルール番号とを出力する手段とを有する信号圧縮符号化装置と、
有限個の離散的状態を有し互いに連続して配置された第2のセルと、
前記第2のセルの各セルの出力の状態のその時刻におけるセル全体を俯瞰して得られる状態集合に関し、それぞれのセルの次の時刻における状態が、当該セルと自分自身を含めて二個以上連結している相手セルの状態の少なくともいずれかに依存してその取る状態が決定されるようなセルオートマトン機構をもって状態が時間的に変化して行くように制御する第2の制御手段とを有し、受信された前記初期状態と前記ルール番号に基づき復符号化を行う信号復符号化装置とを有することを特徴とするデータ伝送システム。

【請求項2】
前記信号圧縮符号化装置に、アナログ信号に対し任意に設定された標本化周波数をもってサンプリングが行われた離散時間的に変化する振幅データがその振幅値が二値符号化法によって適切な桁数をもって量子化され、定まった幅のビット列の時系列信号データとして与えられた場合、前記第1の制御手段はその適切に分割された時間区分において初期状態を示す区分の先頭のデータと当接時間区分に割り当てられたセルオートマトンによって当該時間区分のデータが設定許容誤差範囲内で再現されるという過程の連鎖を繰り返して前記データが変換されるように制御し、
前記信号復符号化装置が、所定の通信手段によって送信されるか、あるいは磁気ディスク、光ディスク、または光磁気ディスクの固定記録化手段によって運搬された前記初期状態と前記ルール番号に基づき復符号化を行うことを特徴とする特許請求の範囲第1項記載のデータ伝送システム。

【請求項3】
前記信号圧縮符号化装置の前記第1の制御手段及び前記信号復符号化装置の前記第2の制御手段が、セルオートマトンによる状態更新規則に関し2状態4近傍のセルオートマトンを用いることを特徴とする特許請求の範囲第2項記載のデータ伝送システム。

【請求項4】
前記信号圧縮符号化装置の前記第1の制御手段及び前記信号復符号化装置の前記第2の制御手段が、セルオートマトンによる状態更新規則に関し2状態5近傍のセルオートマトンを用いることを特徴とする特許請求の範囲第2項記載のデータ伝送システム。

【請求項5】
前記信号圧縮符号化装置に、アナログ信号に対し設定された数値的方法によりフーリエ変換が行われてその周波数スペクトルが計算され、設定された周波数の離散的値毎に、その振幅値が二値符号化法によって適切な桁数をもって量子化され、入力信号のスペクトル分布が定まった幅のビット列の離散的信号系列データとして与えられた場合、前記第1の制御手段はその適切に分割されたデータ区分において初期状態を示す区分の先頭のデータと当該区分に割り当てられたセルオートマトンによって当該時間区分のデータが設定許容誤差範囲内で再現されるという過程の連鎖を繰り返して前記データが変換されるように制御し、
前記信号復符号化装置が、所定の通信手段によって送信されるか、あるいは磁気ディスク、光ディスク、または光磁気ディスクの固定記録化手段によって運搬された前記初期状態と前記ルール番号に基づき復符号化を行うことを特徴とする特許請求の範囲第1項記載のデータ伝送システム。

【請求項6】
前記離散的信号系列データに関し前記圧縮符号化装置の第1の制御手段及び前記信号復符号化装置の第2の制御手段が、セルオートマトンによる状態更新規則に関し2状態4近傍のセルオートマトンを用いることを特徴とする特許請求の範囲第5項記載のデータ伝送システム。

【請求項7】
前記離散的信号系列データに関し前記圧縮符号化装置の第1の制御手段及び前記信号復符号化装置の第2の制御手段がセルオートマトンによる状態更新規則に関し2状態5近傍のセルオートマトンを用いることを特徴とする特許請求の範囲第5項記載のデータ伝送システム。

【請求項8】
強弱変換手段により振幅に対し設定された強弱変換が施されたアナログ信号について信号圧縮符号化及び信号復符号化が行われることを特徴とする特許請求の範囲第2項から第7項のいずれか1項に記載のデータ伝送システム。

【請求項9】
前記データがアナログ状態で抽出された音信号をディジタル化した信号である請求項1ないし8のいずれか1項に記載のデータ伝送システム。

【請求項10】
前記データがアナログ的に測定して抽出された心臓の心電信号をディジタル化した信号である請求項1ないし8のいずれか1項に記載のデータ伝送システム。

【請求項11】
前記データがアナログ的に測定して抽出された脳波信号をディジタル化した信号である請求項1ないし8のいずれか1項に記載のデータ伝送システム。

【請求項12】
セルオートマトンに係る情報を記録した記録媒体であって、前記情報は初期状態を表現するディジタル化された符号の列からなるデータと、ある時刻における符号の列全体を俯瞰して得られる状態集合に関し、それぞれの符号の次の時刻における状態が、当該符号と自分自身を含めて二個以上連結している相手符号の状態の少なくともいずれかに依存してその取る状態が決定されるセルオートマトン機構をもって状態が時間的に変化して行く連鎖の繰り返しを示すルール番号とを有し、前記データと前記ルール番号が任意のディジタル符号時系列の圧縮記述を行うものであることを特徴とする記録媒体。

【請求項13】
前記記録媒体は磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスクのいずれかであることを特徴とする請求項12に記載の記録媒体。

【請求項14】
ディジタル化された符号の列からなる所定の初期データを第1の記録手段に記録するステップと、
それぞれの符号の次の時刻における状態が、当該符号と自分自身を含めて二個以上連結している相手符号の状態の少なくともいずれかに依存してその取る状態が決定されるような所定のセルオートマトン変換を行う制御手段により前記初期データの符号の列を順次変化させるステップと、
前記符号の各変化の状態と、これに対応する変化の回数を第2の記録手段に記録するステップと、
前記データと同じ桁数を有する複数のデータについて、前記データそれぞれと前記符号の変化の状態とを比較手段により比較し、前記変化の状態が所定の許容誤差範囲内で前記各データを再現する変化の回数を求めるステップとを有し、
前記初期データとデータを再現するルール及び各適用回数により前記複数のデータを表すことを特徴とするデータ圧縮方法。

【請求項15】
前記信号圧縮符号化装置に、アナログ信号に対し任意に設定された標本化周波数をもってサンプリングが行われた離散時間的に変化する振幅データがその振幅値が二値符号化法によって適切な桁数をもって量子化され、定まった幅のビット列の時系列信号データとして与えられた場合、前記第1の制御手段はその適切に分割された時間区分において初期状態を示す区分の先頭のデータと当該時間区分に割り当てられた2状態3近傍セルオートマトンによって当該時間区分のデータが設定許容誤差範囲内で再現されるという過程の連鎖を繰り返して前記データが変換されるように制御し、
前記信号復符号化装置が、所定の通信手段によって送信されるか、あるいは磁気ディスク、光ディスク、または光磁気ディスクの固定記録化手段によって運搬された前記初期状態と前記ルール番号に基づき復符号化を行うことを特徴とする特許請求の範囲第1項記載のデータ伝送システム。

【請求項16】
前記信号圧縮符号化装置に、アナログ信号に対し設定された数値的方法によりフーリェ変換が行われてその周波数スペクトルが計算され、設定された周波数の離散的値毎に、その振幅値が二値符号化法によって適切な桁数をもって量子化され、音信号のスペクトル分布が定まった幅のビット列の離散的信号系列データとして与えられた場合、前記第1の制御手段はその適切に分割された時間区分において初期状態を示す区分の先頭のデータと当該時間区分に割り当てられた2状態3近傍セルオートマトンによって当該時間区分のデータが設定許容誤差範囲内で再現されるという過程の連鎖を繰り返して前記データが変換されるように制御し、
前記信号復符号化装置が、所定の通信手段によって送信されるか、あるいは磁気ディスク、光ディスク、または光磁気ディスクの固定記録化手段によって運搬された前記初期状態と前記ルール番号に基づき復符号化を行うことを特徴とする特許請求の範囲第1項記載のデータ伝送システム。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はディジタル信号の伝送システムに関するもので、詳しくはディジタル信号のデータ圧縮装置及び圧縮されたデータの再生装置を有するデータ伝送システムに関するものである。

【0002】
【従来の技術】音、音声、映像、医療用心電信号、脳波、脳磁波、などなどのデータは通常アナログ信号であるが、現代の電子技術によってディジタル化されて符号化されて受け手に送る方法が広く用いらている。その際にデータは時間軸ではサンプリングによるディジタル化が行われ、各離散時刻におけるデータ値そのものは、量子化の手続きを経てディジタル化する方法が広く利用されている。このようなディジタル化方法を用いた場合には、通常そのデータ量は膨大なものとなる。このため、通信ネットワークを経由してかかる信号のディジタル化情報にかかるデータ伝送を行ったり、あるいは商品として受け手に磁気記録媒体や光ディスク等の各媒体を経て供給する際に、大きな困難を引き起こすという問題点があった。

【0003】
かかる問題を解決する手段として、例えば、符号化された信号の時間軸上での有無を検出し、信号の無い区間を圧縮して高能率伝送する方式や、信号の符号化すべきパラメータをベクトルとしてとらえ、前もって準備しておいた全体の歪みが最小となるようなパターンを有するコードブックと比較し、歪みが最小となる最適なベクトルパターンを選択してブロック符号化し、このブロック符号を伝送する方式が用いられていた。

【0004】
しかし、信号の無い区間を圧縮して高能率伝送する方式は、画像等の伝送においては好適であるが、音声、医療用心電信号、脳波等、信号の無い区間が少ない信号の圧縮においては高い圧縮率を期待することができない。

【0005】
また、ベクトル符号化方式を使用する場合は、前もって専門的知識を駆使して、音声、画像、医療用心電信号、脳波等に対し、それぞれ個々の信号に対応して、発生頻度が大きくそして全体の歪みが最小となるようなパターンを有するコードブック作成し準備しておかなければならなかった。

【0006】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、例えば音、音声、映像、医療用心電信号、脳波、脳磁波、などのアナログ信号に係るディジタル化された膨大なデータを、特有のコードブック等を予め準備することなく、一定のルールに基づき適切に圧縮して高能率伝送することが可能な装置を提供するものである。

【0007】
このため、本発明は、送信側が定められた区間ごとにディジタル化されたデータの初期状態とセルオートマトンのルールと変換回数とを送り、そして、受信側では、定められたデータ区間のデータを、受信した初期状態とセルオートマトンのルールの繰り返し適用によってディジタル化されたデータを再現するものである。

【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、有限個の離散的状態を有し互いに連続して配置された第1のセルと、前記第1のセルの各セルの出力の状態の所定の時刻におけるセル全体を俯瞰して得られる状態集合に関し、それぞれのセルの次の時刻における状態が、当該セルと自分自身を含めて二個以上連結している相手セルの状態の少なくともいずれかに依存してその取る状態が決定されるようなセルオートマトン機構をもって状態が時間的に変化して行くように制御する第1の制御手段と、ここで前記第1の制御手段は、任意のデータが与えられたとき、そのデータが前記セルの取りうる状態数を基数とし、前記セルの総数がその桁数を与えるような方法によって量子化されたものとして、その適切に分割されたデータ区分において初期状態を示す区分の先頭のデータと当該区分に割り当てられたセル状態更新規則によって区分内のデータが設定許容誤差範囲内で再現されるという過程の連鎖を繰り返して前記データが変換されるように制御し、前記初期状態と前記連鎖の繰り返しを示すルール番号とを出力する手段とを有する信号圧縮符号化装置と、有限個の離散的状態を有し互いに連続して配置された第2のセルと、前記第2のセルの各セルの出力の状態のその時刻におけるセル全体を俯瞰して得られる状態集合に関し、それぞれのセルの次の時刻における状態が、当該セルと自分自身を含めて二個以上連結している相手セルの状態の少なくともいずれかに依存してその取る状態が決定されるようなセルオートマトン機構をもって状態が時間的に変化して行くように制御する第2の制御手段とを有し、受信された前記初期状態と前記ルール番号に基づき復符号化を行う信号復符号化装置とを有するデータ伝送システムである。

【0009】
さらに本発明は、前記信号圧縮符号化装置に、アナログ信号に対し任意に設定された標本化周波数をもってサンプリングが行われた離散時間的に変化する振幅データがその振幅値が二値符号化法によって適切な桁数をもって量子化され、定まった幅のビット列の時系列信号データとして与えられた場合、前記第1の制御手段はその適切に分割された時間区分において初期状態を示す区分の先頭のデータと当接時間区分に割り当てられた2状態3近傍のセルオートマトンによって当該時間区分のデータが設定許容誤差範囲内で再現されるという過程の連鎖を繰り返して前記データが変換されるように制御し、前記信号復符号化装置が、所定の通信手段によって送信されるか、あるいは磁気ディスク、光ディスク、または光磁気ディスクの固定記録化手段によって運搬された前記初期状態と前記ルール番号に基づき復符号化を行うデータ伝送システムである。

【0010】
さらに本発明は、前記信号圧縮符号化装置の前記第1の制御手段及び前記信号復符号化装置の前記第2の制御手段が、セルオートマトンによる状態更新規則に関し2状態4近傍のセルオートマトンを用いるデータ伝送システム、または、前記信号圧縮符号化装置の前記第1の制御手段及び前記信号復符号化装置の前記第2の制御手段が、セルオートマトンによる状態更新規則に関し2状態5近傍のセルオートマトンを用いるデータ伝送システムである。

【0011】
また本発明は、前記信号圧縮符号化装置に、アナログ信号に対し設定された数値的方法によりフーリエ変換が行われてその周波数スペクトルが計算され、設定された周波数の離散的値毎に、その振幅値が二値符号化法によって適切な桁数をもって量子化され、入力信号のスペクトル分布が定まった幅のビット列の離散的信号系列データとして与えられた場合、前記第1の制御手段はその適切に分割されたデータ区分において初期状態を示す区分の先頭のデータと当該区分に割り当てられた2状態3近傍のセルオートマトンによって当該時間区分のデータが設定許容誤差範囲内で再現されるという過程の連鎖を繰り返して前記データが変換されるように制御し、前記信号復符号化装置が、所定の通信手段によって送信されるか、あるいは磁気ディスク、光ディスク、または光磁気ディスクの固定記録化手段によって運搬された前記初期状態と前記ルール番号に基づき復符号化を行うデータ伝送システムである。

【0012】
さらに本発明は、前記離散的信号系列データに関し前記圧縮符号化装置の第1の制御手段及び前記信号復符号化装置の第2の制御手段が、セルオートマトンによる状態更新規則に関し2状態4近傍のセルオートマトンを用いるデータ伝送システムであり、または、前記離散的信号系列データに関し前記圧縮符号化装置の第1の制御手段及び前記信号復符号化装置の第2の制御手段がセルオートマトンによる状態更新規則に関し2状態5近傍のセルオートマトンを用いるデータ伝送システムである。

【0013】
さらに本発明は、強弱変換手段により振幅に対し設定された強弱変換が施されたアナログ信号について信号圧縮符号化及び信号復符号化が行われるデータ伝送システムである。

【0014】
また本発明は、前記データがアナログ状態で抽出された音信号をディジタル化した信号であるデータ伝送システム、前記データがアナログ的に測定して抽出された心臓の心電信号をディジタル化した信号であるデータ伝送システム、または前記データがアナログ的に測定して抽出された脳波信号をディジタル化した信号であるデータ伝送システムである。

【0015】
また本発明は、セルオートマトンに係る情報を記録した記録媒体であって、前記情報は、初期状態を表現するディジタル化された符号の列からなるデータと、ある時刻における符号の列全体を俯瞰して得られる状態集合に関し、それぞれの符号の次の時刻における状態が、当該符号と自分自身を含めて二個以上連結している相手符号の状態の少なくともいずれかに依存してその取る状態が決定されるセルオートマトン機構をもって状態が時間的に変化して行く連鎖の繰り返しを示すルール番号とを有する記録媒体であり、この録媒体は磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスクのいずれかである記録媒体である。

【0016】
また本発明は、ディジタル化された符号の列からなる所定の初期データを第1の記録手段に記録するステップと、それぞれの符号の次の時刻における状態が、当該符号と自分自身を含めて二個以上連結している相手符号の状態の少なくともいずれかに依存してその取る状態が決定されるような所定のセルオートマトン変換を行う制御手段により前記初期データの符号の列を順次変化させるステップと、前記符号の各変化の状態と、これに対応する変化の回数を第2の記録手段に記録するステップと、前記データと同じ桁数を有する複数のデータについて、前記データそれぞれと前記符号の変化の状態とを比較手段により比較し、前記変化の状態が所定の許容誤差範囲内で前記各のデータを再現する変化の回数を求めるステップとを有し、前記初期データとデータを再現する各変化の回数により前記複数のデータを表すデータ圧縮方法である。

【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を添付図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。セルオ-トマンの概念はJ.von Neumann によって提案され(J.von Neumann:"Thery of self-reproducing automata",Univ.of Illinoise Press,1996.)、その後多くの研究者により詳細に研究された(例えば、S.Wolfram:Physica 10D,pp.1-35,1984、相沢洋二、永井喜則:物性研究 48 No.4,pp.316-320,1987など)。これらの研究により、セルオ-トマン法を使用することにより、単純なルールを用いて、例えば、カオス状態などの複雑な事象、生物や生体に類似する複雑なパターン等々を導くことが可能であることが知られている。

【0018】
本発明は、時間的に変化するディジタル化されたデータの圧縮及びこの圧縮されたデータの再生にセルオ-トマンの概念を適用するものである。セルオ-トマンの概念を適切に利用することにより、ディジタル化されたデータの圧縮、再生を効率良く行え得ることがわかった。

【0019】
まず本発明において用いる一次元セルオ-トマンの内容について説明する。一次元セルオ-トマンにおいては、横1列に並んだ一次元セルについて、時間ステップ0において各セルに初期状態が与えられると、それ以降の時間ステップ1、2、3・・・・の各セルの状態の変化は、その状態以前の近傍のセルの状態により一定のルールに基づき定まるというものである。

【0020】
一次元セルオ-トマンの上記概念を一般化して数式化すると以下のようになる。一次元セルのうちi番目のセルのステップtの状態ai t は、その前の状態により下記の数式(1)により表現される。

【0021】
i t =f(ai-r t-1 、ai-r+1 t-1 、・・・ai t-1 ・・・
i+r-1 t-1 、ai+r t-1 ) (1)
ここで、i はセルの位置座標であり、t は時間ステップである。ai t は位置iのセルの時間ステップtでの状態を表す。

【0022】
セルiの時間ステップtの状態ai t は、セルi自身を含め近傍のセルとしてai-r t-1 からai+r t-1 までの2r+1個を考慮し、2r+1個の近傍のセルの状態を変数とする遷移関数fとして与えられる。すなわちセルiの時間ステップtの状態は、2r+1個の近傍のセルの時間ステップt-1の状態により決定される。各セルの取り得る状態は例えば0と1の2状態とするのが一般的であるが、必要があれば3状態等の多値状態とすることも可能である。近傍のセルの数は任意に取り得るが、ディジタル化データの圧縮には計算機の処理能力または処理速度に対応して例えば3~5個の範囲とすることができる。

【0023】
一次元2状態3近傍セルオ-トマンの場合、離散時刻t(t=0,1,2・・)、位置i(i=1,・・・・N)での状態ai t (=0、または1)は数式(2)により表現される。

【0024】
i t =f(ai-1 t-1 、ai t 、ai+1 t-1 ) (2)
例えば変換のルールをai t =ai-1 t-1 +ai+1 t-1 とし、両隣りの状態値の和を2で割ったあまりを整数化して次の時間ステップの値とすると、時刻t-1のデータが 110100101 と並んでいる場合、
時刻t-1 110 101 010 100 001 010 101
時刻t 1 0 0 1 1 0 0
と変換され、時刻tにおいては2値信号 01011010 に変換される。この場合、時刻t-1における左端および右端のデータは、左隣または右隣のデータがないので上記のように桁数が減少しないよう、特別の処理ルールを定めておく。例えば例示のデータが連続するデータの一部である場合は、連続する両隣の各データを用いるなどである。またこのデータが連続していない場合には、例えば、その端部については別の規則を設けるとか、またはデータがリング状であると仮定して互いに他の端部のデータを用いるなどである。

【0025】
初期状態の選択と、変換ルールによる変換を繰り返すことにより所望の数列に変換することが可能となる。従って所望の数列を初期状態と変換の規則及び変換の回数により表すことが可能となる。

【0026】
一般的に2状態3近傍セルオ-トマンの遷移関数は式(2)より8(=23 )種類あり、それらをfi (i=0、1、・・・、7)とすると、各fi は0または1である。式(2)で示す遷移関数を用いてルール番号を式(3)のように定義する。

【0027】
0 +2f1 +22 2 +・・・・・+27 7 (3)
このように定義するとルール番号は0~255までの256通りとなる。そしてこのようにしてルール番号を与えることにより、データ変換の遷移関数が規定できる。

【0028】
音声のデータ圧縮に利用した場合について以下述べる。図1は本発明の一実施の形態によるデータ処理の流れと装置の模式的構成を示す図である。例えばオーケストラ演奏などの音源1から音信号2が生成されると受信器3により電気信号に変換される。

【0029】
音信号2はアナログ信号であるが、空間的にも時間的にも離散化して取り扱うことができる。例えば時間的に離散化する場合AD変換機4は、離散時刻t(標本化)、振幅量子化数I 、(I=0,1,...,P-1 、(P は量子化数))のi番目のビット値をai t (=0または1)とすると、離散化された音信号はP個の成分を持つベクトルat の時系列として変換する。音信号を含むアナログ信号については、周知の強弱変換手段により、振幅に対し設定された強弱変換をした後の信号を使用することもできる。

【0030】
このようにして得られた音信号の振幅を表現するベクトルat は時系列的に並べられる。データの配列の一例を5に示す。データはその他、音信号に対し設定された数値的方法によりフーリエ変換を行い、その周波数スペクトルを計算し、設定された周波数の離散的値毎に、その振幅値が二値符号化法によって適切な桁数をもって量子化し、音信号のスペクトル分布が定まった幅のビット列の離散的信号系列データとして与えられるフーリエスペクトルデータでも良い。

【0031】
かかるデータを一次元2状態3近傍のセルオ-トマンの状態ベクトルとルール番号により記述する。なお記述の方法は2状態3近傍セルオ-トマンに限定するものではなく任意の方法が可能で、例えば、2状態2近傍のセルオートマトン、2状態4近傍のセルオートマトン、2状態5近傍のセルオートマトンを用いることも可能である。これらの例を図2の(a)~(e)に示す。これらの例では各近傍のセルは連続したものが用いられているが、例えば近傍のセルをとびとびに選ぶことも可能であり、また自分自身の前の状態は考慮しないような選択も可能である。

【0032】
図3はセルオートマトンを用いた圧縮符号化装置6における状態変化の動作を示す。図1において得られた2値データの並びをセルオートマトンを用い圧縮符号化する模式図である。符号として初期状態と定まった状態更新ルールを与えることによりデータの並びをセルの状態の時間変化で再現することができる。この例では図3(a)に示すように、2値データの並びが行ごとにセルオートマトン変換される。図にはn行めとn+1行めのデータの一部が示されている。

【0033】
2状態3近傍のセルオートマトンによるセルの状態の時間変化を図3(b)に示す。白は1の状態を、黒は0の状態を示している。時刻tにおける3個の近傍セルの状態に基づき、時刻t+1において所定のセルオートマトンのルールにより変換が行われた状態を示している。

【0034】
図1の5に示す2値データのデータ量は膨大であるが、セルオートマトンによる変換を採用することにより、セルの並びに関し初期状態を与えれば後は各セルが定まった状態更新ルールに従って時間変化をして行き、それがある与えられたルールにおいてデータを再現することになる。このため例えば時間変化の都度変化の状態は記憶され原データとの比較が行われる。所定の変換の後比較が行われても良い。ルールはこの場合、有限個しかないため、あらかじめルールに番号を割り振っておきルール番号を決定する。そのルール番号と初期状態を受け手側に送ることにより、膨大なデータ量を直接送ることに比べて著しい情報圧縮が達成される。

【0035】
このように圧縮符号化装置においては、各セルの取っている出力の状態のその時刻におけるセル全体を俯瞰して得られる状態集合に関し、それぞれのセルの次の時刻における状態が、当該セルと自分自身を含めて二個以上連結している相手セルの状態に依存してその取る状態が決定されるようなセルオートマトン機構をもって状態が時間的に変化する。

【0036】
そして、任意のディジタルデータが与えられたとき、そのデータがセルの取りうる状態数を基数とし、セルの総数がその桁数を与えるような方法によって量子化されたものとして、その適切に分割されたデータ区分において区分の先頭のデータと当該区分に割り当てられたセル状態更新規則によって区分内のデータが設定許容誤差範囲内で再現されるという過程の連鎖を繰り返して全データが圧縮記述される。

【0037】
図4は本発明におけるセルオートマトンを用いた圧縮符号化装置10の構成図の実施の態様の一例であり、そのルールを見いだすための処理を行う過程を具体的に示したものである。図4に基づいて本発明におけるセルオートマトンを用いた圧縮符号化装置10の構成からもたらされる機能を説明する。

【0038】
データ入力ライン14からまず一番目のデータが入力され、それが初期状態(記号)として制御計算機11の記憶装置23(図5参照)に蓄えられる。次に二番目のデータが入力され、それが制御計算機11に送られて先に入力されたデータと比較されて先に入力された状態にセルオートマトンの何番目かのルールを適用すると二番目の状態が再現されるかを判定しルールが抽出される。次に三番目のデータが入力され、それが初期状態から二番目に入力された状態を経て三番目のデータが再現されるようにルールが抽出される。

【0039】
原音を正確に再現するためには、適切な初期状態と各離散時刻でのルール番号を正確に抽出する必要がある。この場合、種々の初期状態を次々に与えることにより、正確な抽出は可能である。しかし、かかる処理には膨大な時間を必要とする場合が多く、実際の音声データの圧縮には適切とはいえない場合がある。従って以下の方法を採用することができる。

【0040】
まずセルオートマンの任意の初期状態を与える。この任意の初期状態としては例えば原音の最初の2値データをそのまま与えることができる。各離散時刻における音声の振幅を16ビットデータとして変換した場合、16桁として与えることができる。その後は、各時刻毎に、原音si t とセルオートマンによる変換データai t の誤差(差の絶対値)が最小となるようなルール番号を全数検索により求め、そのルール番号を原音を規定するルール番号とする。従ってこの場合は初期状態と変換ルールと各時刻毎のルール番号のみによりデータシーケンスが形成される。

【0041】
さらに再現の忠実度をあげる場合には、原音si t とセルオートマンによる変換データai t の誤差に対し閾値を設けておく。そして、上記方法により求めた最小となるようなルール番号における誤差が閾値以下の場合には上記と同様に処理する。しかしもし上記最小の誤差が閾値以上になった場合は、新たに次の初期状態が選択される。この初期状態は任意に選択できるが、一例としてその時刻での原音の2値データを用いることができる。以降は上記と同様の処理が繰り返される。

【0042】
また、処理速度を向上させるため、原音si t とセルオートマンによる変換データai t の誤差に対し閾値を設けておき、変換の都度誤差と閾値を比較し、最初に誤差が閾値より小さくなったときの変換により原音を規定するルール番号を定めることも可能である。一個のセルオートマンのルールで何ステップか進み、得られた状態変化が定められた許容範囲内で原データを再現するようなところまでこの過程を行い、初期条件と抽出されたルールの組及びその再現ステップ区間をもってそのデータ区間の圧縮符号化とする。

【0043】
もし全てが許容範囲を越える場合は、新たに初期条件が設定され同様のステップが繰り返される。従ってこの場合は、変換ルールと、最初の初期状態と設定されたルール番号により、そして、閾値以上になった場合に選択された各初期状態とその後の設定されたルール番号の組(初期状態が複数回選択された場合、複数の組が生ずる)により、圧縮データのデータシーケンスが形成される。

【0044】
制御計算機あるいは専用制御機械11は、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、汎用計算機、スーパーコンピュータ、等が利用可能であり、また専用制御機械としては汎用の大規模集積回路を用いてもよいし、状態信号及びセルオートマトンのルールをもとに次の状態を計算し、またそれを与えられた状態と比較して制御信号を発生するために設計された専用大規模集積回路でも良い。

【0045】
セル12は、上記制御計算機あるいは専用制御機械11の出す信号をもとに、有限個の状態を実現する素子であることを必要とする。したがって、セル12としてはトランジスタを用いたもの、ダイオードを用いたもの、あるいは汎用の大規模集積回路内のメモリを利用したものでも良く、さらに、セルオートマン専用の大規模集積回路にセルを組込んでも良い。さらには、多安定光素子、多安定超伝導素子などを用いても良い。

【0046】
セル12間は図3(b)に示す変換が行われるよう結線されており、その結線のためには、セル12の材料や構成にしたがって、導線、光ファイバー、空間伝播などが用いられる。データ入力ライン14に関しても上記の結線と同様の材料と構成を用いることができる。

【0047】
データの送り手による音声アナログ信号は図1のAD変換器4により2値データに変換され、このデータ入力13に対し、制御計算機あるいは専用制御機械11によってそのデータを与えられた初期状態からルールを割り出す処理を行い、初期記号列と再現用のルールを抽出する処理が行われる。

【0048】
図5に図4の機能を達成するためのブロック図の一例を示す。入力部21はAD変換機4で変換されたディジタルデータを受信する。記録部23はセルオートマトン変換データを有限個の離散的状態として定義し記録するセル領域29、受信されたディジタルデータを記録する入力データ記録部30、セル領域29の各時間変化の状態を記録する記録部31、セルオートマトン変換の変換ルールを記録する変換ルール記録部32、変換の回数を示すルール番号を記憶するルール番号記録部33などを含む。なお、セル領域29は図4においてはセル12として示されている。

【0049】
制御部22は近傍セルの選択を制御する近傍セル選択制御部27、及び選択された近傍セルに対しセルオートマトン変換を実行するセルオートマトン変換制御部28を含む。また、セルオートマトン変換制御部28は、比較部24が所定のルール番号のうち誤差を最小とするものが閾値以上と判断した場合は、他の初期状態によるセルオートマトン変換を実行することができる。

【0050】
比較部24は入力されたディジタルデータとセルオートマトン変換の各時間変化の状態を比較する。比較は例えば入力データと各時間変化の状態の誤差を計算する方法により行われる。比較部24はさらに誤差と予め定められた閾値との比較を行う。選択部25は比較部の比較データに基づき、所定の選択基準により、入力データを規定とするルール番号の組を決定する。各ルール番号の決定は、例えば誤差がゼロとなるルール番号の選択、または所定のルール番号のうち誤差を最小とするルール番号の選択等により行われる。出力部26は選択部25で決定された初期状態とルール番号の組を出力し、これらは信号復符号化装置に送信される。なお変換ルール、ルール番号の定義とうは予め信号復符号化装置に送信しておくことができる。

【0051】
上記セルオートマトン専用大規模集積回路は、図5に示す入力部21、制御部22、記録部23、比較部24、選択部25、及び出力部26を一体として形成することができる。または、セル領域29、近傍セル選択制御部27、セルオートマトン変換制御部28など一部を含む専用集積回路を作成し、汎用計算機と共に使用することにより、セルオートマトン変換処理の高速化を図ることが可能である。

【0052】
図6は本発明におけるセルオートマトンを用いた信号復符号化装置15の構成図である。圧縮符号化装置5と同様、制御計算機あるいは専用制御機械11は、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、汎用計算機、スーパーコンピュータ、等が利用可能であり、また専用制御機械としては汎用の大規模集積回路を用いてもよい。さらに、状態信号及びセルオートマトンのルールをもとに次の状態を計算し、またそれを与えられた状態と比較して制御信号を発生するために設計された専用大規模集積回路でも良い。

【0053】
図6はデータの受け手が、初期記号列及び再現用のルールをセル素子16に送り、その状態出力をもとにルールによって次の状態を生成するという再帰的な過程によってデータを再生する過程を示している。セル16としては、図4のセル12と同様、トランジスタ、ダイオード、汎用大規模集積回路、セル用に設計された専用集積回路、セルオートマトン専用の大規模集積回路、多安定光素子、多安定超伝導素子などが使用できる。セル16は制御計算機あるいは専用制御機械15の出力する制御信号をもとに有限個の状態を実現する素子であることを必要とする。データ出力ライン17に関しては、セル16の材料や構成にしたがって、導線、光ファイバー、空間伝播などを用いることができる。

【0054】
図6に基づいて、本実施の形態におけるセルオートマトンを用いた復符号化装置の機能を説明する。まず送られて来た初期状態(記号)を制御計算機15を通じてセル16に与える。そして送られて来た再現ルールを適用して次の状態を求めセル16に与える。この作業を送られてきた再現ステップ区間に至るまで継続し再現データを生成する。そして再現ステップのデータを出力ライン17から送り出す。次に二番目のデータの組を取り、上記の過程を繰り返す。上記の作業を繰り返して与えられた全データの復符号化を行う。

【0055】
図7に図6の上記機能を達成するためのブロック図の一例を示す。入力部41は初期状態とルール番号の組を受信する。このデータは通常任意の通信手段7によって送信されて受信側に到達する8。または、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク上7に固定記録化されて送られ、再生装置に入力されても良い8。このセルオートマトンに係る情報を記録した磁気ディスク、光ディスク、または光磁気ディスク等の記録媒体には、少なくとも初期状態を表現するディジタル化された符号の列からなるデータと、セルオートマトン機構をもって状態が時間的に変化して行く連鎖の繰り返しを示すルール番号とが記録される。記録媒体としては上記他、カード状の媒体、テープ状の媒体、又はICカード等を使用することも可能である。

【0056】
記録部43はセルオートマトン変換データを有限個の離散的状態として定義し記録するセル領域47、受信された初期状態とルール番号を記録する入力データ記録部48、セル領域47の各時間変化の状態を記録する記録部49、セルオートマトン変換の変換ルールを記録する変換ルール記録部50、変換されたデータのシーケンスを記憶するシーケンス記録部51を含む。なお、セル領域47は図6においてはセル16として示されている。

【0057】
制御部42は近傍セルの選択を制御する近傍セル選択制御部45、および選択された近傍セルに対しセルオートマトン変換を実行するセルオートマトン変換制御部46を含む。出力部44は変換されたデータのシーケンスを出力する。出力部44は例えば図1のDA変換機10に接続され音信号が再生される10。

【0058】
図8は、ある音楽用コンパクトディスクから一秒間の音楽信号をサンプリング(標本化)周波数44100ヘルツにより標本化し、音の振幅を16ビットの二値量子化を行ったデータ時系列に関し、セルオートマトン操作を1ステップ毎に行って得られたルールについて、何番目のルールが何回使われたかを、横軸をルールの番号縦軸を使われた回数としてヒストグラムのグラフとして描いたものである。これによると、使用されるルールには著しい偏りがあることがわかる。

【0059】
図示はしていないが、別の時点で採用した同様なデータに関してヒストグラムのグラフを描くと、殆ど図8と異ならない結果を得た。これは当該音楽の相当な長さの部分に関して少数のルールによる音楽信号再現が可能であることを示すものである。

【0060】
図10にセルオートマトン操作を繰り返して得られた音楽再現波形を示す。比較のために図9に原音の波形を示す。実際の聴取の限りにおいては原音と再現波との差は判別できない。

【0061】
また図12には得られた再現音に関して一秒間のデータに対して高速フーリエ変換(FFT)を施して求めた電力フーリエスペクトルを示す。比較のために図11には原音のFFTの結果を示してある。スペクトルも音波形と同様に目立った差違はなく、本手法による符号化と復符号化が有効なものであることを示している。

【0062】
下記表1には、原音と再現音の差をノイズとみなした場合の歪み率を求めて、例としてとりあげた4サンプルについて表にしたものである。

【0063】
サンプル1 サンプル2 サンプル3 サンプル4
歪み率 21.505dB 21.879dB 21.826dB 20.612dB
[表1]
表1から読み取れるように、本例の場合はいずれも20デシベル強程度を示しており、本方法の汎用性と実効性を表すものである。

【0064】
なお、上記入力信号は音信号に限定されるものではなく、例えば、アナログ的に測定して抽出された心臓の心電信号、あるいは、アナログ的に測定して抽出された脳波信号に適用することもできる。

【0065】
この方式はデータ圧縮方式としては全く新しい方式であり、任意のディジタルデータについて適用可能である。従来技術との関連で言えば、従来のデータ圧縮方式と本手法を組み合わせることにより、更なるデータ圧縮を行うことが可能となる。

【0066】
したがって、例えば、従来技術において多く用いられているところの、いわゆるFFT(高速フーリエ変換)を用いて定められた区間ごとにスペクトル分布を求め、そのスペクトルを間引いたり、スペクトル強度の強弱に依存したフィルタをかけたりして圧縮を行う方式に、本手法を更に適用することにより、圧縮率の著しい改善をもたらすことが可能になる。

【0067】
なおここ記載された本発明の実施の形態は単なる一例であり、本システムの実施例の形態は、本発明の技術的範囲を逸脱せずに、種々の変形が可能であることは明らかである。

【0068】
以上説明したように本発明によれば、従来のディジタル伝送方式に比較して、次のような効果を奏する。

【0069】
音、音声、映像、医療用心電信号、脳波、脳磁波、などなどのデータは通常アナログ信号であるが、現代の電子技術によってディジタル化されて受け手に送られる。その際にデータは時間軸ではサンプリングによるディジタル化、各離散時刻におけるデータ値そのものは量子化の手続きを経てディジタル化される。通常、そのデータ量は膨大なものとなり、通信ネットワークあるいは商品として受け手に各媒体を経て供給される際に大きな困難を引き起こす。

【0070】
本発明はその膨大なデータを定められた区間ごとに初期状態とセルオートマトンのルールを送ることで定められたデータ区間のデータを初期状態とセルオートマトンのルールの繰り返し適用によって圧縮しかつ再現する。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図5】
2
【図4】
3
【図3】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
11