TOP > 国内特許検索 > セラミックス強化金属基複合材料およびその製造方法 > 明細書

明細書 :セラミックス強化金属基複合材料およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第3041421号 (P3041421)
登録日 平成12年3月10日(2000.3.10)
発行日 平成12年5月15日(2000.5.15)
発明の名称または考案の名称 セラミックス強化金属基複合材料およびその製造方法
国際特許分類 B22D 19/00      
B22D 17/00      
B22D 19/14      
FI B22D 19/00 E
B22D 17/00
B22D 19/14
請求項の数または発明の数 3
全頁数 4
出願番号 特願平11-025082 (P1999-025082)
出願日 平成11年2月2日(1999.2.2)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用申請有り 鉄鋼第41回・金属第38回 講演大会 講演概要(平成10年8月6日-7日)PROCEEDINGS OF THE EIGHTH JAPAN-U.S.CONFERENCE ON COMPOSITE MATERIALS(1998年9月24日-25日)第579-588頁
特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人日本金属学会 1998年秋期(第123回)大会プログラム(平成10年9月28日-30日)ACCM-1 THE FIRST ASIAN-AUSTRALASIAN CONFERENCE ON COMPOSITE MATERIALS Extended Abstracts Volume ▲II▼(199年10月7日-9日)533-1—533-4において発表
審査請求日 平成11年2月2日(1999.2.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012648
【氏名又は名称】広島大学長
発明者または考案者 【氏名】福永 秀春
【氏名】吉田 誠
個別代理人の代理人 【識別番号】100059258、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 暁秀 (外8名)
審査官 【審査官】金 公彦
参考文献・文献 特開 昭62-67136(JP,A)
特開 昭61-147961(JP,A)
特開 平2-295665(JP,A)
特開 平1-202356(JP,A)
特開 平1-202355(JP,A)
特開 昭62-166069(JP,A)
特開 平11-1731(JP,A)
特開 平9-295122(JP,A)
特開 平9-66350(JP,A)
特開 平8-103858(JP,A)
調査した分野 B22D 19/00
B22D 17/00
B22D 19/14
要約 【解決手段】固相と液相が共存状態にある半溶融合金を、セラミックスウィスカーまたはセラミックス粒子からなる予備成形体に加圧含浸させる。
【効果】機械用部品の強度や耐摩耗性など機械的諸特性の有利な向上を図ることができ、その際、該部品の必要な部分のみに所望特性を付与することができる。また、完全溶融合金を用いた場合に比べて、ひけ巣などの鋳造欠陥を低減でき、さらには金型などの鋳型の長寿命化を図ることができる。
特許請求の範囲 【請求項1】
固相と液相が共存状態にある半溶融合金を、セラミックスウィスカーまたはセラミックス粒子からなる予備成形体に対し、該予備成形体の変形を招くことのない半溶融合金の固相率:10~70%でかつ、半溶融合金の加圧含浸速度:1~30cm/sの条件下で加圧含浸させて得たことを特徴とするセラミックス強化金属基複合材料。

【請求項2】
固相と液相が共存状態にある半溶融合金を、セラミックスウィスカーまたはセラミックス粒子からなる予備成形体に対し、該予備成形体の変形を招くことのない半溶融合金の固相率:10~70%でかつ、半溶融合金の加圧含浸速度:1~30cm/sの条件下で加圧含浸させることを特徴とするセラミックス強化金属基複合材料の製造方法。

【請求項3】
請求項2において、鋳型の空間の一部または全部に予備成形体を配置し、該鋳型空間に半溶融合金を加圧鋳造することを特徴とするセラミックス強化金属基複合材料の製造方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、機械用部品等の用途に用いて好適なセラミックス強化金属基複合材料およびその製造方法に関し、特に固液共存状態にある半溶融合金を、セラミックスウィスカーまたはセラミックス粒子からなる予備成形体(以下、プリフォームという)に加圧含浸させて複合化することにより、該機械用部品の強度や耐摩耗性など機械的諸特性の有利な向上を図ろうとするものである。

【0002】
【従来の技術】機械用部品の製造法の一つとして、鋳型の空間(以下、キャビティーという)の一部にプリフォームを配置し、液相のみからなる完全溶融合金を加圧鋳造して複合化するプロセスが知られている。しかしながら、近年、金型を含む鋳型の長寿命化の観点および省エネルギーの観点から、合金融液の温度を低下させる必要が生じている。

【0003】
上記の問題の解決策としては、固相と液相が共存状態にある半溶融合金の使用が考えられる。かような半溶融合金を用いた複合材料の製造法としては、半溶融合金中にセラミックスのウィスカーまたは粒子を混合、攪拌して均一なスラリーとしたのち鋳造成形する、いわゆるコンポキャスティング法が知られている。

【0004】
しかしながら、このコンポキャスティング法は、機械用部品の全体を強化する方法としては有利であるものの、機械用部品中の特定部分を強化する方法としては不向きであった。また、コンポキャスティング法では、機械用部品において、強度や耐摩耗性等が必要ない部分まで高価なセラミックスの繊維または粒子を含むために、部品の製造コストが高くなるというデメリットがあった。

【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の問題を有利に解決するもので、素材合金として半溶融合金を用いることによって、鋳造のプロセス温度を低下させ得るだけでなく、キャビティー中の特定部分のみにプリフォームを配置し、このプリフォームに半溶融合金を加圧含浸することによって、機械用部品の特定部分のみに強度や耐摩耗性などの所望特性を付与することもできる、セラミックス強化金属基複合材料の有利な製造プロセスを提案することを目的とする。

【0006】
なお、従来は、半溶融合金をプリフォームに加圧含浸するとプリフォームの大幅な変形が予想されたことから、このようなプロセスの研究、開発例はない。従って、これまで、半溶融合金を加圧鋳造するプロセスで、プリフォームを用いて機械用部品を部分強化した例はない。

【0007】
【課題を解決するための手段】さて、発明者らの研究によれば、素材として半溶融合金を用いる場合であっても、プリフォームの強度や、半溶融合金の固相率および加圧含浸速度を最適化すれば、半溶融合金をプリフォームに加圧含浸する際におけるプリフォームの変形をほとんど防止することができ、その結果、所望の複合材料を製造し得ることの知見を得た。本発明は、上記の知見に立脚するものである。

【0008】
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.固相と液相が共存状態にある半溶融合金を、セラミックスウィスカーまたはセラミックス粒子からなるプリフォームに対し、該予備成形体の変形を招くことのない半溶融合金の固相率:10~70%でかつ、半溶融合金の加圧含浸速度:1~30cm/sの条件下で加圧含浸させて得たことを特徴とするセラミックス強化金属基複合材料。

【0009】
2.固相と液相が共存状態にある半溶融合金を、セラミックスウィスカーまたはセラミックス粒子からなるプリフォームに対し、該予備成形体の変形を招くことのない半溶融合金の固相率:10~70%でかつ、半溶融合金の加圧含浸速度:1~30cm/sの条件下で加圧含浸させることを特徴とするセラミックス強化金属基複合材料の製造方法。

【0010】
3.キャビティーの一部または全部にプリフォームを配置し、該キャビティーに半溶融合金を加圧鋳造することを特徴とする請求項2記載のセラミックス強化金属基複合材料の製造方法。

【0011】

【0012】

【0013】
【発明の実施の形態】本発明では、キャビティー内部の全域または一部にプリフォームを設置し、加圧鋳造プロセスによって半溶融状態の合金をプリフォームに含浸させることによって、機械用部品の全部または一部を強化した複合材料を製造することができる。

【0014】
また、本発明では、プリフォームのフィルター効果により、半溶融合金中の固相がプリフォームと合金との界面近傍に堆積した組織となるが、この堆積した固相は、溶質濃度が半溶融合金の初期濃度よりも低く、延性に富むことから、複合部と合金部の熱応力などの応力緩和層として機能させることができる。

【0015】
さて、本発明において、プリフォームの素材であるセラミックスとしては、酸化物、窒化物、硼化物、又はこれらの化合物など従来公知のものいずれもが使用でき、その種類が限定されることはない。また、プリフォームの製造方法についても特に限定されることはないが、半溶融合金がプリフォーム中に含浸する際に、変形が生じないように、バインダーの種類、焼成温度および繊維体積率等の製造条件を最適化しておく必要がある。例えば、プリフォームの素材として Al18B4O33ウィスカーを用いる場合には、バインダーとしてはシリカゾルが好適であり、また焼成温度は1000~1200℃程度、繊維体積率は10~30%程度とすることが好ましい。

【0016】
次に、半溶融合金についても、その合金系が限定されることはない。また、半溶融合金の製造方法についても特に限定されることはないが、これをプリフォーム中に加圧含浸する際、プリフォームの変形が生じないような固相率としておくことが重要である。ここに、半溶融合金の固相率としては10~70%とする必要がある。さらに、半溶融合金の加圧含浸速度については1~30cm/sの範囲とする必要がある。なお、本発明において、「プリフォームの変形が生じない」という意味は、後述する実施例にも示したとおり、プリフォーム変形量が10%以内のことである。

【0017】
【実施例】蒸留水中で Al18B4O33ウィスカーを攪拌、分散させてスラリーとした後、このスラリーに対し無機バインダーとしてシリカゾルを5%添加した。ついで、これを吸引脱水整形したのち、乾燥後、1160℃の温度で焼成し、ウィスカーの空間体積率が18%程度のプリフォームを作成した。なお、このプリフォームの圧縮強度は5MPa 程度であった。

【0018】
ついで、このプリフォームを、高圧鋳造装置のキャビティー内に設置し、半溶融状態の合金をキャビティー内に加圧鋳造することにより、キャビティー形状の鋳造物が成形される。この際、プリフォームを設置した部分に関しては、半溶融合金中の液相が優先的にプリフォーム中に含浸し、結果として鋳造物の一部がウィスカーによって強化された複合材料が製造される。

【0019】
半溶融合金の一例として、固相率が50%の AZ91D合金(Mg-9mass%Al-1mass%Zn)を用い、スクイズキャスト法(加圧含浸速度:20cm/s)により、上記の加圧鋳造プロセスを実施したところ、プリフォーム変形量が10%以内で半溶融合金中の液相部分が含浸した複合材料を製造することができた。図1に、得られた複合材料の複合部、界面部および合金部(中央域およびダイス側)の金属組織写真を示す。なお、同図には、完全溶融合金を用いて、同様の加圧鋳造プロセスを実施した場合における金属組織写真も併せて示す。

【0020】
本発明に従い得られた複合材料の複合部と凝固後の合金部との界面における引張強度は、熱処理なしの状態で120 MPa 程度であった。なお、完全溶融合金を用いて同様に複合化した場合の界面強度もほぼ同等であった。従って、半溶融合金を用いても、完全溶融合金を用いた場合に比肩する界面の引張強度が得られることが確認された。図2に、本発明に従い得られた複合材料の複合部と合金部における引張強度を比較して示す。

【0021】
また、得られた複合材料の複合部分内部における合金組成を分析したところ、その組成は固相率:50%のAZ91D 合金の平衡液相組成とほぼ一致した。これにより<HAN>、</HAN> 半溶融合金では、AZ91D 合金に限らず、完全溶融合金が含浸する場合よりも、合金中の溶質強度が増加し、複合材料中のマトリックスの固溶強化、あるいは金属間化合物の析出による強化が期待できることが判る。実際、完全溶融合金を用いた場合の複合材料の硬さがHv : 150 であったのに対し、固相率:50%の半溶融合金を用いた場合はHv : 180 であり、硬さが約20%上昇した。

【0022】
【発明の効果】この発明の効果を具体的に列挙すると次のとおりである。
(1) 本発明における複合化は、半溶融合金を用いるため、完全溶融合金を用いた場合に比べて、ひけ巣などの鋳造欠陥を低減することができる。
(2) 本発明における複合化は、半溶融合金を用いるため、完全溶融合金を用いた場合に比べてプロセス温度が低く、このため金型などの鋳型の長寿命化を図ることができる。
(3) 半溶融合金プロセスの特長を活かしながら、その実施に際してプリフォームの変形を生じることがなく、また機械用部品の必要な部分のみに強度や耐摩耗性などの所望特性を付与することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1