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明細書 :微小物の3次元精密配列方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第2967198号 (P2967198)
登録日 平成11年8月20日(1999.8.20)
発行日 平成11年10月25日(1999.10.25)
発明の名称または考案の名称 微小物の3次元精密配列方法
国際特許分類 B01J 19/08      
FI B01J 19/08 Z
請求項の数または発明の数 6
全頁数 6
出願番号 特願平10-281778 (P1998-281778)
出願日 平成10年10月2日(1998.10.2)
審査請求日 平成10年10月2日(1998.10.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390002901
【氏名又は名称】科学技術庁金属材料技術研究所長
発明者または考案者 【氏名】長谷 正司
【氏名】江頭 満
【氏名】新谷 紀雄
審査官 【審査官】服部 智
参考文献・文献 特開 平6-260724(JP,A)
特開 平6-158083(JP,A)
調査した分野 B01J 19/08
要約 【課題】 微細加工を可能とする、微小物の3次元精密配列法を提供する。
【解決手段】 電極の任意の位置に導体製の突起を作り、対向電極を配置して、電極間を溶媒中に粒子状あるいは繊維状の微小物が分散している溶液で満たし、電界を加えて、微小物からなる鎖状体を電界集中部となる突起の位置にのみ鎖状体の長軸方向が電界方向に一致するように形成する。
特許請求の範囲 【請求項1】
電極の任意の位置に導体製の突起を作り、対向電極を配置して、電極間を、溶媒中に粒子状あるいは繊維状の微小物が分散している溶液で満たし、電界を加えて、微小物からなる鎖状体を、電界集中部となる突起の位置にのみ、鎖状体の長軸方向が電界方向に一致するように形成することを特徴とする微小物の3次元精密配列方法。

【請求項2】
請求項1の方法において、溶媒として液状高分子を用い、鎖状体の形成配列後に、温度上昇あるいは光照射により液状高分子を硬化させて配列を固定する微小物の3次元精密配列方法。

【請求項3】
請求項1または2の微小物の3次元精密配列方法において、光、イオンビームおよび電子線の少くとも1種を用いて電極の一部分を削り、削った部分の縁にできる盛り上がり部分を突起として電界集中部を形成する電極作製方法。

【請求項4】
レーザー光の照射により電極の一部分を削り、残った部分を突起として電界集中部を形成する請求項3の電極作製方法。

【請求項5】
請求項1または2の微小物の3次元精密配列方法において、蒸着法により、あるいは導電性プローブを用いて電極の一部分に導体を付着させてその導体を突起として電界集中部を形成する電極作製方法。

【請求項6】
請求項1または2の微小物の3次元精密配列方法において、鋳型に、液体状の金属を流し込み、あるいは金属をメッキして、その後、固体化した金属を鋳型から取り出して電界集中部となる突起を形成する電極作製方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】
【発明の属する技術分野】この出願の発明は、光学デバイス、磁気デバイス、半導体デバイス、マイクロマシン、センサー等の作製に有用な、微小物の3次元精密配列方法に関するものである。

【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】産業上用いられている技術の中で最も微細な加工が出来る集積回路等の作製技術では、強い光源や電子線源などの大がかりな装置が必要で、高真空下で作製を行わなければならず、作製の工程数が多いという問題がある。また、使用後のレジスト材などの廃棄物が大量に発生をするという問題もある。そして、これらのことから当然にも費用と時間がかかるという問題点がある。また、対象とする材料も実質的にはシリコン等の特定のものに限定されて、高いアスペクト比を持つ構造の作製が難しく、作製後に保護層を作らなければならない、などの問題点もある。

【0003】
そこで、この出願の発明は、上記したとおりの従来の集積回路等の作製技術の問題点を解決して微細加工を可能とする、新しい微小物の3次元精密配列法を提供することを目的とする。

【0004】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、この出願の発明は、まず第1には、電極の任意の位置に導体製の突起を作り、対向電極を配置して、電極間を、溶媒中に粒子状あるいは繊維状の微小物が分散している溶液で満たし、電界を加えて、微小物からなる鎖状体を、電界集中部となる突起の位置にのみ、鎖状体の長軸方向が電界方向に一致するように形成することを特徴とする微小物の3次元精密配列方法を提供する。

【0005】
また、この出願の発明は、第2には、溶媒として液状高分子を用いて、鎖状体の形成配列後、温度上昇あるいは光照射により液状高分子を硬化させて、配列を固定する微小物の3次元精密配列方法を提供する。以上の第1および第2の方法によれば、微細加工が可能であって、たとえば前記の硬化させた高分子を取り外せば、電極は何度でも使用可能である。大がかりな装置が不要で、大気圧下での作製が可能で、作製の工程数が少なく、また、廃棄物がほとんどで出ないことからも、費用と時間が縮小できるという利点がある。また、ほとんどの対象材料の微細加工が可能で、材料の種類が特定のものに限られることもない。さらに、微小物からなる鎖状体を配列することになるので高いアスペクト比を持つ構造を簡単に作成することができる。鎖状配列を高分子で固める場合には、同時に保護層が形成される、などの利点もある。

【0006】
そして、この出願の発明は、第3には、前記の微小物の3次元精密配列方法において、光、イオンビームあるいは電子線を用いて、電極の一部分を削り、削った部分の縁にできる盛り上がり部分を突起として電界集中部を形成する電極作製方法を、第4には、レーザー光の照射により電極の一部分を削り、残った部分を突起として電界集中部を形成する電極作製方法を、第5には、蒸着法により、あるいは導電性プローブを用いて、電極の一部分に導体を付着させ、その導体を突起として電界集中部を形成する電極作製方法を、第6には、鋳型に、液体状の金属を流し込み、あるいは金属をメッキして、その後、固体化した金属を鋳型から取り出して、電界集中部となる突起を形成する電極作製方法を提供する。

【0007】
以上の第3から第6の発明の方法で、任意の大きさの電界集中部を、電極の任意の位置に形成することができる。このようにして作成した電極を用いて、微小物の3次元精密配列が可能となる。

【0008】
【発明の実施の形態】この出願の発明は以上のとおりの特徴を有するものであるが、さらにその実施の形態について説明する。まず、この発明の3次元精密配列方法においては、電極の任意の位置に導体製の突起を作っておく。突起の大きさは、微小物としての粒子の大きさあるいは繊維の直径と比較して、同等あるいはより小さいものとする。対向電極を配置後、電極間を溶媒中に微小物が分散している溶液で満たし、電界を加える。そうすると微小物内には電界によって電気双極子が誘起される。突起の位置では電界集中が起こり電界が強くなるので、誘電泳動力などの静電気力によって、微小物は突起の位置に集まることになる。しかも、電気双極子間の相互作用のため、微小物は鎖状(1次元的)に凝集し、鎖状体の長軸方向が電界方向に一致する。つまり、突起の位置に微小物の鎖状体が電界方向に従って並ぶことになる。この際、溶液中の微小物の体積分率を調節することで、突起の位置以外には鎖状体が形成されないようにすることができる。結果として、複数の突起の位置を決めることで、微小物の色々な3次元精密配列をする。この際に、溶媒として液状高分子を用い、目的とする配列が形成された後、温度上昇あるいは光照射によって液状高分子を硬化させることで、配列を固定することができる。

【0009】
以下に実施例を示し、さらに詳しくこの発明の実施の形態について説明する。

【0010】
【実施例】(実施例1)図1(a)(b)は微小物の3次元精密配列法の例を示したものである。図中の1は突起を、2は突起1を持つ電極を、3は対向電極を、4は微小物を示し、この微小物4は、液状高分子5中に分散しているものとする。また、6は電源を、7は微小物4からなる鎖状体である。図1(a)は電界を加えていない場合の、図1(b)は電界を加えている場合の状態を例示している。図1(b)のように、電界を加えている場合には、微小物4からなる鎖状体7が、突起1の位置にのみ、鎖状体7の長軸方向が電界方向に一致するように形成され、結果として、微小物4の3次元精密配列が可能となる。また、配列後、温度上昇で液状高分子5を硬化させて、この配列を固定することも可能となる。

【0011】
電極2の表面の突起1の高さについては特に限定はないが、微小物の3次元鎖状配列の目的、用途、その機能に応じて、前記のとおり微小物4の大きさをも考慮して定めればよい。微細加工を可能とするとの観点からは、この突起1は、たとえば100μm以下、さらには60μm以下とすることができる。複数の突起1を設ける場合には、その相互の間隔も適宜に定められることになる。

【0012】
液状高分子を用いる場合、この高分子は熱硬化性または光硬化性の高分子とすることが好ましい。たとえばアクリル系、不飽和ポリエステル系、シリコーン系、エポキシ系等のうちの高分子である。また、微小物は、たとえば、ガラス、SiO2 等の酸化物や窒化物、セラミックス、樹脂、ポリペプチド蛋白質、鉱物その他各種であってよい。これらの微小物の大きさは、一般的には1mm以下、より適当には100μm以下である。

【0013】
図2(a)は電界集中部を持つ電極の例を示した光学顕微鏡写真である。銅の電極表面を、YAGレーザーの高調波(波長は266nm)を用いて、円状に削った状態として形成されたものである。円の直径は28μmで、縁に出来る盛り上がり部分の高さは電極表面から40μmである。最隣接の円間距離は200μmである。作製は大気圧下で行ない、レーザー照射部分の銅の表面に出来る薄い酸化銅の膜は、硫酸洗浄で除去した。このようにレーザーを用いて、電極の一部分を削り、削った部分の縁にできる盛り上がり部分を電界集中部とする電極を作製することが出来る。図2(b)は、電極に垂直に切った際の電界集中部の断面の模式図を示し、8は突起を、9は突起8を持つ電極を示している。図2(c)は、図2(b)の電界集中部での微小物の鎖状体形成を表す模式図で、10は微小物からなる鎖状体である。また、レーザー以外の光あるいはイオンビームあるいは電子線を用いても、電界集中部を持つ電極を作成することもできる。

【0014】
図3は図2(a)(b)の電極を用いて作成した図2(c)の状態の配列の例を示し、硬化させた高分子を電極から取り外し、電極に垂直に切った断面の光学顕微鏡写真である。微小物は直径30μmのガラス球で、高分子は透明なシリコーンラバーである。ガラス球からなる鎖状体が、200μm間隔で作った電界集中部にのみ形成されているのが確認された。微小物の3次元精密配列が可能であることがわかる。この例の実験条件は以下の通りである。すなわち、電極は銅で大きさは40mm×40mmで厚みは1mm、電極間距離は1.4mm、高分子溶液中のガラス球の体積分率は1.3%、交流電界は、方向が重力方向と平行で、大きさ(の最大値)が7.1kV/mmで、周波数は10Hzである。また、高分子の硬化は100℃、1時間で行った。
(実施例2)図4は鎖状体形成の例を示し、硬化させた高分子を電極から取り外し、電極に垂直に切った断面の光学顕微鏡写真である。微小物は直径5μmの二酸化シリコン球、高分子は透明なシリコーンラバーである。二酸化シリコン球からなる鎖状体が電界方向(写真のほぼ縦方向)に形成されているのが確認される。これによって、5μm程度の大きさの微小物も、3次元精密配列が可能であることがわかる。この例の実験条件は以下の通りである。すなわち、電極は銅で大きさは40mm×40mmで厚みは1mm(電極の電界集中部はない)、電極間距離は1.4mm、溶液中の二酸化シリコン球の体積分率は6.8%、交流電界は、方向が重力方向と平行で、大きさ(の最大値)が1.4kV/mmで、周波数は10Hzである。また、高分子の硬化は100℃、1時間で行った。
(実施例3)図5は電界集中部を持つ電極を例を示した光学顕微鏡写真である。銅の電極表面をYAGレーザーの高調波(波長は266nm)を用いて、80μm間隔の格子パターン状に削ったものである。削られた部分(溝)の幅は28μmで、表面から測った深さは8μmである。作成は大気圧下で行い、レーザー照射部分の縁にできる盛り上がり部分とレーザー照射部分の銅の表面にできる薄い酸化銅の膜は、硝酸洗浄で除去した。このようにレーザー加工を用いて、電極の一部分を削り、残った部分を電界集中部とする電極を作製することができる。また、エッチング技術を用いても、電界集中部を持つ電極を作製することができる。
(実施例4)図6は電界集中部を持つ電極作製方法の例を示している。電極11を、タングステンヘキサカルボニルなどの金属化合物の気体12の雰囲気内に配置し、集束イオンビーム13を突起14を形成したい場所に照射する。イオンビーム13によって、気体12から金属が遊離し、電極11上の集束イオンビーム13が照射される位置に金属が選択的に蒸着され、電界集中部となる突起14が形成される。したがって電界集中部を持つ電極を作製することができる。また、他の蒸着法を用いて電極の一部分に導体を蒸着させたり、あるいは導電性プローブを用いて導体を電極上に運び、付着させることでも、電界集中部を持つ電極を作製することができる。
(実施例5)図7は電界集中部を持つ電極作製方法の例を示している。図7(a)は、鋳型15に液体状の金属16を流し込んだ状態の断面を示す模式図である。図7(b)は、金属を冷却して固体化した後、鋳型15から取り出した突起17を持つ電極18の断面を示す模式図である。この方法によって、電界集中部となる突起を持つ電極を作製することができる。また、液体状の金属16を流し込む代わりに、鋳型15に金属メッキすることによっても、電界集中部となる突起を持つ電極を作製することができる。

【0015】
【発明の効果】上記のように、この発明の方法によって、狙った位置(突起の位置)に、微小物からなる鎖状体を配列させることができ、微小物の色々な3次元精密配列が可能とされる。この発明の方法は、光学デバイス、磁気デバイス、半導体デバイス、マイクロマシン、センサーの作製に利用可能である。たとえば、光学デバイスに関しては、鎖状体を周期的に配置することで、特定の波長の光のみを反射させる鏡や透過させる光フィルター、広い波長範囲の光に適用可能なモノクロメーターが作製できる。また、鎖状体を周期的に配置して、かつ、任意の線欠陥を導入する(特定の部分には鎖状体を配置しない)ことで、特定の波長の光のみが線欠陥の部分を透過できるような光導波路を作製することができる。また、磁気デバイスに関しては、強磁性体の微小物を使用することで、垂直磁気記録媒体を作製することができる。更に、溶媒として硬化しないものを使用すれば、電界のオンとオフで特性が可逆的に変化する光学デバイスの作製も可能である。
図面
【図3】
0
【図4】
1
【図1】
2
【図2】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
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